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【発明の名称】 内歯歯車加工用ブローチ
【発明者】 【氏名】井沢 晃

【氏名】中村 和幸

【氏名】畔柳 強司

【氏名】片岡 貞敬

【氏名】田中 靖久

【氏名】平山 伸治

【要約】 【課題】ブローチが加工するワークが薄肉、ギヤ幅が短くなっても、ブローチの大径部を切削する歯底面切刃と、段部又はハカマ部を切削する切れ刃、及び/又は小径部を切削する小径部丸切刃と、が同時切削せず、加工中のワークが不安定となり、結果的に歯底面に対する小径面の同心度を悪化させることがない内歯歯車加工用ブローチを提供。

【解決手段】内歯歯車の狭幅の歯溝31の歯底面35の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃a1と、複数の第1刃a1に続く1対の肩部フランク面 eをガイドとして1対のハカマ部又は段部34を切削する複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は前記肩部フランク面 eをガイドとして狭幅の歯溝の小径部33を切削する複数の第3刃 15a〜 15bと、複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は複数の第3刃 15a〜 15bに続く狭幅の歯溝の1対のフランク面32の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃a2と、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部と前記1対のハカマ部又は段部の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車加工用ブローチにおいて、
前記内歯歯車の狭幅の歯溝の歯底面の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃と、前記複数の第1刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の下部及び頂部をすかし残る1対の肩部フランク面をガイドとして前記1対のハカマ部又は段部を切削する複数の第2刃及び/又は前記肩部フランク面をガイドとして狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃と、前記複数の第2刃及び/又は第3刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃と、を有することを特徴とする内歯歯車加工用ブローチ。
【請求項2】
前記内歯歯車の狭幅の歯溝はねじれ溝であり、前記内歯歯車加工用ブローチはヘリカルブローチであることを特徴とする請求項1記載の内歯歯車加工用ブローチ。
【請求項3】
前記内歯歯車の狭幅の歯溝はねじれがないスプライン溝であり、前記内歯歯車加工用ブローチはスプラインブローチであることを特徴とする請求項1記載の内歯歯車加工用ブローチ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物である内歯歯車の加工に用いられる内歯歯車加工用ブローチに関し、特に内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部と前記1対のハカマ部又は段部の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車を加工するブローチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部と前記1対のハカマ部又は段部の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車を加工するヘリカル内歯歯車加工用ブローチとしては、例えば特許文献1に、本願の図5、図1に示すように、複数の粗切削刃部a(図5(a))は、歯溝の歯底面の深さが順次増すように大径上がりにワークを切削する複数の歯底面切刃a1(図1)と、複数の歯底面切刃a1に続く1対の左右フランク面を歯幅方向に歯幅上がりにワークを切削する複数のフランク面切刃a2と、からなり、複数の粗切削刃aに続く歯底面切刃a1と小径部丸切刃a3とを交互に有する複数の交互丸刃部部b(図5(a)、(b))と、複数の交互丸切bに続く複数の仕上げシェル刃部c(図5(a))とからなり、複数の交互丸刃部bの最終歯底面切刃及び仕上げシェル刃cの最終フランク面切刃の各刃先面が互い共同することにより、ワークに形成される歯底面と1対のフランク面との断面形状がシャープな角部を実質的に有しない滑らかにつながる断面形状にするものが開示されている。
【特許文献1】特開2000−158230号公報
【特許文献2】特開2002−113614号公報
【特許文献3】特開2002−018642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部と前記1対のハカマ部又は段部の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車を加工するヘリカル内歯歯車加工用ブローチが加工するワークは、例えばCVTにおいて、薄肉、ギヤ幅が短くなる傾向があり、従来のヘリカル内歯歯車加工用ブローチで加工すると、薄肉、ギヤ幅が短くなると加工精度の劣化となり、これを防止するためブローチ切れ刃のピッチを小さくすると、ランド幅を小さくする必要があり、ランド幅を小さくすると再研磨できる回数が少なくなり、工具費が著しく高くなった。
【0004】
従来のヘリカル内歯歯車加工用ブローチである特許文献1では、本願の図5(b)に示すような、ヘリカル内歯歯車加工用ブローチの歯底面切刃a1と小径部丸切刃a3とを交互に有する複数の交互丸刃部部bでは、その部分拡大図である図5(c)に示すように、ワーク切削長wが歯底面切刃a1と小径部丸切刃a3との交互刃ピッチP1 以下であるときは、歯底面切刃a1と小径部丸切刃a3とが同時切削しないので、加工中のワークが不安定となり、結果的に歯底面に対する小径面の同心度を悪化させていた。
特許文献2、3では、ブローチの刃溝をねじれ刃溝とすることで、ワークとの同時切削刃数を一定に保つようにしたヘリカル内歯歯車加工用ブローチを提案する。
特許文献2の明細書の段落〔0017〕では、本願の図1に示すような、ワーク30に対して前半部の歯溝加工刃 11a〜11f が歯溝31及び小径側の歯先にハカマ部と呼称される段部34を加工した後、後半部の歯溝加工刃 12a〜12d が歯面32を切削仕上げ加工するとともに、後半部の歯先面加工刃 13a〜13b が小径部33を切削仕上げ加工することにより、ワーク30にヘリカル内スプライン溝などが形成されるヘリカル内歯歯車加工用ブローチを提案するが、特許文献2では、図1でみて、大径部35とハカマと呼称される段部34を切削する歯溝加工刃 11a〜11f を前半部に、フランク歯面32を切削する歯先面加工刃 13a〜13b を後半部に配置した結果、ワーク30の大径部35に対する段部34及び小径部33の同心度が特許文献1と同様に悪くなるという課題があった。
【0005】
また特許文献3では小径側の歯先にハカマと呼称される段部を有するヘリカル内歯歯車のブローチ加工において、特許文献3の明細書の段落〔0016〕では、その明細書に添付する図5につけられた符号で、溝幅の広い段部4、4'を形成する工程と、その段部4、4'間の内壁面をガイド両段部4、4'の狭幅の歯溝5 の一部(開始部分)5'を形成する工程と、その狭幅の歯溝5 の一部5'の壁面をガイドとして、さらに、所望の深さの狭幅の歯溝5 を形成する工程とを有するブローチ加工が開示されている。しかしながら、特許文献3のブローチでは、長いヘリカル内歯歯車のブローチの軸方向の長い範囲で、ガイド両段部4、4'に倣うガイドをブローチに形成することは加工が非常に困難であり、かつ再研削されるとき、このガイド両段部4、4'に倣うガイドが再研削で研削されるおそれがあり、製作コスト増と再研削にも多大の工数を必要とした。
【0006】
本発明の課題は、かかる課題を解決した、ブローチが加工するワークが薄肉、ギヤ幅が短くなっても、ブローチの大径部を切削する歯底面切刃と、段部又はハカマ部を切削する切れ刃、及び/又は小径部を切削する小径部丸切刃と、が同時切削せず、加工中のワークが不安定となり、結果的に歯底面に対する小径面の同心度を悪化させることがない、かつ、ランド幅を小さくする必要がなく再研磨できる回数が多く、工具費が安価で、安定した加工精度を保証する内歯歯車加工用ブローチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部と前記1対のハカマ部又は段部の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車加工用ブローチにおいて、
前記内歯歯車の狭幅の歯溝の歯底面の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃と、前記複数の第1刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の下部及び頂部をすかし残る1対の肩部フランク面をガイドとして前記1対のハカマ部又は段部を切削する複数の第2刃及び/又は前記肩部フランク面をガイドとして狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃と、前記複数の第2刃及び/又は第3刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃と、を有することを特徴とする内歯歯車加工用ブローチを提供することによって上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、内歯歯車の狭幅の歯溝の歯底面の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃と、前記複数の第1刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の下部及び頂部をすかし残る1対の肩部フランク面をガイドとして前記1対のハカマ部又は段部を切削する複数の第2刃及び/又は前記肩部フランク面をガイドとして狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃と、前記複数の第2刃及び/又は第3刃に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃と、を有するので、狭幅の歯溝の1対のすかされていない1対の肩部フランク面をガイドとして1対の段部又はハカマ部を切削する複数の第2刃及び/又は前記肩部フランク面をガイドとして狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃とは、1対のすかされていない肩部フランク面に拘束されて、段部又はハカマ部を切削する切れ刃、及び/又は小径部を切削する小径部丸切刃と、が同時切削して、加工中のワークが安定し、結果的に歯底面・歯溝に対する小径面の同心度を向上させ、かつ、ランド幅を小さくする必要がなく再研磨できる回数が多く、工具費が安価で、安定した加工精度を保証する内歯歯車の仕上げ加工に用いられる内歯歯車加工用ブローチを提供するものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は軸直角刃溝ヘリカルブローチ切削方式図で多数のブローチ切れ刃のどの刃がワークのどの部分を切削するかを示す1刃とワークとの拡大断面図、図2(a)は本発明の実施の形態を示す内歯歯車加工用ブローチの狭幅の歯溝の1対のすかされていない1対のフランク面をガイドとして1対の段部及びハカマ部を切削する複数の第2刃を示す2刃の断面図、(b)は狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃を示す2刃の断面図、をそれぞれ示し、図3は図1の第2刃と第3刃の切り刃構成例を示し、図4は図2の第2刃と第3刃のワーク切削長と切り刃ピッチの関係を示す切削状態図、図5(a)は従来品の軸直角刃溝ヘリカルブローチの構成を示す全体平面図、(b)は(a)の交互丸刃部の要部拡大図、(c)は(b)の交互丸刃部がワーク切削長が短いときの切り刃ピッチとの関係を示す切削状態図である。
【0010】
本発明の実施の形態の内歯歯車加工用ブローチは、図1の軸直角刃溝ヘリカルブローチ切削方式図に示すように、内周部にその周方向に沿って先端部分に少なくとも1対のハカマ部又は段部34と1対のハカマ部又は段部34の間に所望の深さをもって形成される狭幅の歯溝31とをそれぞれ有する複数の内歯を有する内歯歯車加工用ブローチにおいて、内歯歯車の狭幅の歯溝31の歯底面35の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃a1と、複数の第1刃a1に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の下部 F及び頂部 Dをすかし残る1対の肩部フランク面 eをガイドとして1対のハカマ部又は段部34を切削する複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は前記肩部フランク面 eをガイドとして狭幅の歯溝の小径部33を切削する複数の第3刃 15a〜 15bと、複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は複数の第3刃 15a〜 15bに続く狭幅の歯溝の1対のフランク面32の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃a2と、を有する。第1刃乃至第4刃の枚数はワークにより異なる。33は小径部である。本発明の実施の形態では、複数の第4刃a2は、図5(a)の仕上げシェル刃cに対応した、図示しないシェル刃に設けられている。即ち、本発明の実施の形態では、図5(a)にそれぞれ対応させると、粗切削刃aの位置には本発明の複数の第1刃a1が、交互丸刃bの位置には本発明の複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は複数の第3刃 15a〜 15bが、仕上げシェル刃cの位置には本発明の複数の第4刃a2が配置されている。
【0011】
本発明の実施の形態では、第1刃a1のNo.1刃から円周方向に切れ刃大径を漸増させて加工し、次に、複数の第1刃a1に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の間隔を順次漸増させて加工し、No.89 刃で刃底面35と1対のフランク面32の加工を完了し、No.90 刃以降のスプライン刃形形状は図2に示すように、No.1刃からNo.89 刃で加工した歯形の肩部フランク面 eの有効ガイド面を残し、有効ガイド面以外の1対のフランク面の下部 F及び頂部 Dを逃がしてすかすことにより、フランク面の下部 Fとハカマ部又は段部34、及び/又は小径部33を切削する第2刃 14a〜 14b、及び/又は第3刃 15a〜 15bとの境界部が縁切りされ、ハカマ部又は段部34及び小径部33を高精度に切削することが可能になった。
【0012】
本発明の実施の形態の内歯歯車加工用ブローチは、内歯歯車の狭幅の歯溝31の歯底面35の深さが順次増すようにワークを切削する複数の第1刃a1と、複数の第1刃a1に続く狭幅の歯溝の1対のフランク面の下部 F及び頂部 Dをすかし残る1対の肩部フランク面 eをガイドとして1対のハカマ部又は段部34を切削する複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は前記肩部フランク面 eをガイドとして狭幅の歯溝の小径部33を切削する複数の第3刃 15a〜 15bと、複数の第2刃 14a〜 14b及び/又は複数の第3刃 15a〜 15bに続く狭幅の歯溝の1対のフランク面32の間隔を順次増すようにワークを切削する複数の第4刃a2と、を有するので、狭幅の歯溝の1対のすかされていない1対の肩部フランク面をガイドとして1対のハカマ部又は段部を切削する複数の第2刃及び/又は前記肩部フランク面をガイドとして狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃とは、1対のすかされていない肩部フランク面に拘束されて、ハカマ部又は段部、及び/又は小径部を切削し、加工中のワークが安定し、結果的に歯底面・歯溝に対する小径面の同心度を向上させ、かつ、図4に示すように、本発明品は交互切れ刃部がなく、肩部フランク面 eをガイドとしてハカマ部又は段部34、及び小径部33を切削するので、切れ刃ピッチP2 はワーク切削長w内に容易に設定でき、ランド幅を小さくする必要がなく再研磨できる回数が多く、工具費が安価で、安定した加工精度を保証する内歯歯車の仕上げ加工に用いられる内歯歯車加工用ブローチを提供するものとなった。
【0013】
本発明は内歯歯車の狭幅の歯溝はねじれ溝であり、前記内歯歯車加工用ブローチはヘリカルブローチに使用できる。又、本発明は内歯歯車の狭幅の歯溝はねじれがないスプライン溝であり、前記内歯歯車加工用ブローチはスプラインブローチにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】軸直角刃溝ヘリカルブローチ切削方式図で多数のブローチ切れ刃のどの刃がワークのどの部分を切削するかを示す1刃とワークと拡大断面図。
【図2】(a)は本発明の実施の形態を示す内歯歯車加工用ブローチの狭幅の歯溝の1対のすかされていない1対のフランク面をガイドとして1対の段部及びハカマ部を切削する複数の第2刃を示す2刃の断面図、(b)は狭幅の歯溝の小径部を切削する複数の第3刃を示す2刃の断面図、をそれぞれ示す。
【図3】図1の第2刃と第3刃の切り刃構成例を示す。
【図4】図2の第2刃と第3刃のワーク切削長と切り刃ピッチの関係を示す切削状態図である。
【図5】(a)は従来品の軸直角刃溝ヘリカルブローチの構成を示す全体平面図、(b)は(a)の交互丸刃部の要部拡大図、(c)は(b)の交互丸刃部がワーク切削長が短いときの切り刃ピッチとの関係を示す切削状態図である。
【符号の説明】
【0015】
a1 :複数の第1刃、a2:複数の第4刃、 14a〜 14b:複数の第2刃
15a〜 15b:複数の第3刃、31:狭幅の歯溝、32:フランク面、33:小径部
34:ハカマ部又は段部、35:歯底面、 F:フランク面の下部、 D:頂部
e:肩部フランク面
【出願人】 【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成19年3月14日(2007.3.14)
【代理人】 【識別番号】100077997
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 潤二


【公開番号】 特開2008−221418(P2008−221418A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−64352(P2007−64352)