トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 歯車の加工方法及び歯車加工装置
【発明者】 【氏名】寺本 義広

【要約】 【課題】本発明は、歯車の加工方法及び歯車加工装置において、カエリ除去等工程等を効率化して、全体としてできるだけ少ない加工工程で加工を行なうことができる歯車の加工方法及び歯車加工装置を提供することを目的とする。

【解決手段】カッター加工工程においては、カッター加工装置により、加工歯車1に歯端(エッジ)の面取り加工とカエリ取り加工を同時に行なう、いわゆるカッター加工を施す。このカッター加工した状態において、鋭角の歯面2端部のカエリ3は完全に除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車素材を歯切り加工して加工歯車の歯を形成する歯切り工程と、
次に加工歯車の歯端面取りを行なう歯端面取り刃部と該加工歯車に弾性的に押圧状態で噛合して回転することで歯面端部の加工カエリを取るカエリ取り歯部と備えたカッター工具により、加工歯車の歯端面取り加工とカエリ取り加工を同時に行うカッター加工工程と、を備える
歯車の加工方法。
【請求項2】
前記カッター工具の歯端面取り刃部とカエリ取り歯部を、周方向に交互に配置した
請求項1記載の歯車の加工方法。
【請求項3】
歯車素材を歯切り加工後、その加工歯車の歯端面取りと歯面端部に発生する加工カエリのカエリ取りとを行なう歯車加工装置において、
前記加工歯車の歯端面取りを行なう歯端面取り刃部を有する第一カッター部と、
環状の弾性部材に支持されて加工歯車に噛合して回転することで歯面端部の加工カエリを取るカエリ取り歯部を有する第二カッター部とを備えたカッター工具を有し、
該カッター工具を加工歯車と噛合させて回転させることにより、歯端面取り刃部で加工歯車の歯端面取りを行なうと共に、カエリ取り歯部を加工歯車の歯面に押圧して加工歯車のカエリを除去するように構成した
歯車加工装置。
【請求項4】
前記カッター工具の歯端面取り刃部とカエリ取り歯部を、周方向に交互に配置した
請求項3記載の歯車加工装置。
【請求項5】
前記カッター工具が、歯幅方向両端側に一対の前記第一カッター部を備え、
該一対の第一カッター部の間に前記第二カッター部を配置した
請求項3又は4記載の歯車加工装置。
【請求項6】
前記カッター工具の第一カッター部と第二カッター部の間に、該第一カッター部と第二カッター部の周方向の相対位置を調整する相対位置調整手段を設けた
請求項3〜5いずれか記載の歯車加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、歯車の加工方法及び歯車加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯車を加工する場合には、一般に、ホブ盤等で歯切り加工を施して加工歯車の歯を形成し、この加工歯車の歯面端部の面取りを行なう歯端面取り加工を施して、その後、加工歯車の歯面の粗さを小さくするシェービング加工を施して、次に、歯面強度を高める熱処理を施して、最後に、加工歯車の歯面を平滑に仕上げるホーニング加工を施すようにしている。
【0003】
もっとも、このうち、シェービング加工については、シェービングカッターが歯車状のソリッドな構造であることから、加工歯車とシェービングカッターを高い精度で噛合させる必要があり作業が複雑化するため、省略したいという要求がある。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、シェービング加工を省略した歯車加工方法が開示されている。但し、単にシェービング加工を省略した場合には、歯端面取り加工で除去できなかった加工カエリ(バリ)が残存するため、この歯車加工方法では、別途カエリ除去のため、歯面に押圧力を与えてカエリを除去するカエリ取り加工を設定している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−86017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生産加工技術では、できるだけ少ない加工工程で効率的にワークを加工することが求められる。このことは、歯車の加工方法においても同様である。
【0007】
この点、前述の特許文献1の歯車の加工方法の場合、確かにシェービング加工の工程を省略しているものの、別途カエリ取り加工の工程を追加しているため、加工工程を少なくできているとは言い難い。
【0008】
また、前述の特許文献1の加工方法の場合、歯面の歯幅方向に突出したカエリを歯端面取り加工によって切削除去した後に、別途、歯面の鉛直方向に立ち上げられたカエリを押圧して除去するため、結局、効率的なカエリ除去は行なわれていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、歯車の加工方法及び歯車加工装置において、カエリ除去工程等を効率化して、全体としてできるだけ少ない加工工程で加工を行なうことができる歯車の加工方法及び歯車加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の歯車の加工方法は、歯車素材を歯切り加工して加工歯車の歯を形成する歯切り工程と、次に加工歯車の歯端面取りを行なう歯端面取り刃部と該加工歯車に弾性的に押圧状態で噛合して回転することで歯面端部の加工カエリを取るカエリ取り歯部と備えたカッター工具により、加工歯車の歯端面取り加工とカエリ取り加工を同時に行うカッター加工工程と、を備える方法である。
【0011】
上記構成によれば、歯端面取り刃部とカエリ取り歯部とを備えたカッター工具により、加工歯車の歯端面取り加工とカエリ取り加工とを同時に行うカッター加工工程を備えたことで、歯切り工程によって生じたカエリを、歯面の歯幅方向では歯端面取り刃部が切削除去して、歯面の鉛直方向ではカエリ取り歯部が押圧除去することになる。
このため、カッター加工工程を行なうだけで、同時に歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。また、歯面の歯幅方向のカエリと歯面の鉛直方向のカエリを一度に除去することができ、カエリ取りの効率化を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記カッター工具の歯端面取り刃部とカエリ取り歯部を、周方向に交互に配置した歯車の加工方法である。
上記構成によれば、歯端面取り刃部とカエリ取り歯部とを周方向に交互に配置したカッター工具で、カッター加工工程を行なうことで、歯端面取り加工とカエリ取り加工を、一歯ごと交互に行なうことになる。
このため、一般に奇数歯で構成される加工歯車を、カッター工具と噛合回転させるだけで、各歯において、各回転ごとに歯端面取り加工とカエリ取り加工が交互に行われることになり、確実且つ安定的にカエリを除去することができる。
よって、カッター加工工程による歯端面取りとカエリ取りを、歯の噛合せを変えることなく、確実に安定して行なうことができる。
【0013】
この発明の歯車加工装置は、歯車素材を歯切り加工後、その加工歯車の歯端面取りと歯面端部に発生する加工カエリのカエリ取りとを行なう歯車加工装置において、前記加工歯車の歯端面取りを行なう歯端面取り刃部を有する第一カッター部と、環状の弾性部材に支持されて加工歯車に噛合して回転することで歯面端部の加工カエリを取るカエリ取り歯部を有する第二カッター部とを備えたカッター工具を有し、該カッター工具を加工歯車と噛合させて回転させることにより、歯端面取り刃部で加工歯車の歯端面取りを行なうと共に、カエリ取り歯部を加工歯車の歯面に押圧して加工歯車のカエリを除去するように構成したものである。
上記構成によれば、歯端面取り刃部を有する第一カッター部とカエリ取り歯部を有する第二カッター部を備えたカッター工具を、加工歯車と噛合して回転させることで、歯切り工程によって生じたカエリを、歯面の歯幅方向では歯端面取り刃部が切削除去して、歯面の鉛直方向ではカエリ取り歯部が押圧除去することになる。
このため、カッター工具で加工するだけで、同時に歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。また、歯面の歯幅方向のカエリと歯面の鉛直方向のカエリを一度に除去することができ、カエリ取りの効率化を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記カッター工具の歯端面取り刃部とカエリ取り歯部を、周方向に交互に配置した歯車加工装置である。
上記構成によれば、歯端面取り刃部とカエリ取り歯部とを周方向に交互に配置したため、このカッター工具で加工を行なうと、歯端面取り加工とカエリ取り加工を、一歯ごとに交互に行なうことができる。
このため、一般に奇数歯で構成される加工歯車を、カッター工具と噛合回転させるだけで、各歯において、各回転ごとに歯端面取り加工とカエリ取り加工が交互に行われることになり、確実且つ安定的にカエリを除去することができる。
よって、カッター工具による歯端面取りとカエリ取りを、歯の噛合せを変えることなく、確実に安定して行なうことができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記カッター工具が、歯幅方向両端側に一対の前記第一カッター部を備え、該一対の第一カッター部の間に前記第二カッター部を配置したものである。
上記構成によれば、弾性部材に支持されるカエリ取り歯部を有する第二カッター部を、歯幅方向両端側に配置した一対の第一カッター部で挟持してカッター工具を構成することになる。
このため、弾性部材が介在することで歯当り位置が変化しやすいカエリ取り歯部を、第一カッター部を利用して保持することができ、安定してカエリ取り加工を行なうことができる。
よって、簡単な構成によって、カエリ取り歯部の位置を安定させることができ、確実にカエリ取り加工と歯端面取り加工を行なうことができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記カッター工具の第一カッター部と第二カッター部の間に、該第一カッター部と第二カッター部の周方向の相対位置を調整する相対位置調整手段を設けたものである。
上記構成によれば、相対位置調整手段を設けたことで、第一カッター部と第二カッター部の間の周方向の位置(ピッチ)を微調整することができる。
このため、歯端面取り刃部とカエリ取り歯部との間のピッチが、弾性部材等の撓みや変形等によりズレが生じた場合であっても、相対位置調整手段で微調整することで、正確な位置に調整(チューニング)することができる。
よって、長期間にわたり安定してカッター工具を使用することができ、効率的に歯車加工を行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、カッター加工工程を行なうだけで、同時に歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。また、歯面の歯幅方向のカエリと歯面の鉛直方向のカエリを一度に除去することができ、カエリ取りの効率化を図ることができる。
【0018】
よって、歯車の加工方法及び歯車加工装置において、カエリ除去工程等を効率化して、全体として、できるだけ少ない加工工程で加工を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、ヘリカル歯車の加工方法を前提に、図面を利用して説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の歯車の加工方法を示した加工工程図とその加工工程の際の歯面形状の断面図である。図2はその加工工程における歯面形状を示した詳細斜視図である。
【0021】
最初の歯切り加工工程においては、周知のホブ盤等により、歯車素材に歯を形成する歯切り加工を施す。この歯切り加工した状態において、加工歯車1の歯面2は、約30〜50μm程度の粗さとなっている。また、歯車がヘリカルであるため、歯面2の鋭角端部には歯幅方向外方へ延びる「加工カエリ3」(以下、カエリ)が生成されることになる(図2(a)参照)。
【0022】
次のカッター加工工程においては、後述のカッター加工装置により、加工歯車1に歯端(エッジ)の面取り加工とカエリ取り加工を同時に行なう、いわゆるカッター加工を施す。このカッター加工した状態において、歯面2の鋭角端部のカエリ3は完全に除去される(図2(b)参照)。
【0023】
次の熱処理工程においては、周知の熱処理(浸炭焼入れや浸炭浸窒焼入れ等)を施す。これにより、加工歯車1の歯面2の硬度を高め、耐摩耗性を向上する。
【0024】
次のホーニング加工工程においては、周知のホーニング加工機により、歯車状の研削砥石で加工歯車1の歯面2にホーニング加工を施す。このホーニング加工により、加工歯車1の歯面2は、約1μm程度の粗さに平滑化される(図2(c)参照)。
【0025】
こうした一連の加工ステップによって、歯車素材を加工して歯車を製作することができる。
【0026】
次に、図3によりカッター加工装置10について説明する。図3はカッター加工装置10の概略正面図である。このカッター加工装置10は、歯車の歯端面取り加工とカエリ取り加工を同時に行なうものであり、数値制御式で制御を行なうように構成している。
【0027】
カッター加工装置10は、ベース部11と、ワークホルダー12と、ワーク投入部13と、ワーク搬送部14と、コラム15と、コラム15に装備された鉛直姿勢のインデックス盤16と、インデックス盤16に着脱可能に装備されたそれぞれ径や歯数の異なる4つの歯車状のカッター工具17a,17b,17c,17dと、操作盤18と、その他のサーボモータ等を有する。
【0028】
このうち、ワークホルダー12は、加工歯車1の両端部を保持して様々な大きさ長さの加工歯車1を保持可能に構成している。そして、図示しない回転駆動機構により加工歯車1を回転駆動するように構成している。
【0029】
また、インデックス盤16は、コラム15に昇降可能に装備され、図示しない昇降機構により高さ位置を調整可能としている。そして、このインデックス盤16は、90度ずつ左回り右回りの所望の回転方向へ割り出し駆動され、四つのカッター工具17a,17b,17c,17dを所望の最下の使用位置に位置決めするように構成されている。このうち、最下の使用位置に位置決めされたカッター工具17aは、図示しない回転駆動機構により、回転駆動されるように構成している。
【0030】
前述のカッター加工工程では、このインデックス盤16を昇降して位置を調整することで、所望のカッター工具17aと加工歯車1を噛合させて、この噛合させた状態でカッター工具17aと加工歯車1を回転駆動機構により同期回転させることで、加工歯車1の歯端面取り加工とカエリ取り加工を同時に行なうようにしている。
【0031】
なお、この実施形態では、カッター工具17aと加工歯車1を同期回転させることで、歯の両面を一度で加工するようにしているが、加工歯車1を連れまわり回転させて、歯の片面だけを加工するようにしてもよい。
【0032】
このカッター加工工程での加工条件は、回転速度を100〜300rpmで回転駆動して、約20〜30秒間にわたり、加工を施すようにしている。この加工条件でカッター加工を行なうことで、歯端面取りとカエリ取りを確実に行うことができる。
【0033】
次に、図4〜図7で、カッター工具17aについて説明する。図4はカッター工具17aの正面図、図5は加工歯車とカッター工具17aの噛合状態の展開図、図6はカッター工具17aのA−A線矢視断面図、図7はカッター工具17aのB−B線矢視断面図である。
【0034】
このカッター工具17aは、歯端面取り刃部31を備える第一カッター部30と、カエリ取り歯部41を備える第二カッター部40と、この二つのカッター部30,40を歯幅方向(カッター工具17aの軸方向)に貫通して締結固定する固定ボルト50と、を備えて構成している。
【0035】
第一カッター部30は、図6に示すように、カッター工具17aの歯幅方向両側に一対で設けており、一方を差込みボス部32を有するオス部30A、他方を嵌合穴部33を有するメス部30Bとして構成している。
【0036】
オス部30Aは、カッター工具17aの径方向に延びる円盤状の本体部34と、歯幅方向に延びる円筒状の差込みボス部32とを備え、図7に示すように、本体部34の外周端には歯端面取り刃部31を形成している。
【0037】
一方、メス部30Bは、径方向に延びる円盤状の本体部35を備え、内周に差込みボス部32が嵌合される嵌合穴部33を形成している。そして、本体部35の外周端には、オス部30Aと同様に歯端面取り刃部31を形成している。
【0038】
これら第一カッター部30の本体部34,35に形成した歯端面取り刃部31は、図7に示すように、加工歯車1に噛合して、加工歯車1の歯面2端部の面取りを行なうように構成している。
【0039】
具体的には、図5に示すように、各刃部31ごとに略五角形形状の断面形状を有しており、この歯端面取り刃部31の内方側傾斜面31aが、加工歯車1の歯面2の端部2a(エッジ)に噛合しながら当接することで、歯面端部2aの面を削ぎ落とし、歯面端部2aの面取りを行っていく。このとき、同時に、歯切り加工によって生じた歯幅方向外方に突出したカエリ3aも削ぎ落とし除去していく。
【0040】
そして、この歯端面取り刃部31は、図4に示すように、一歯ずつ欠歯として構成して、後述する第二カッター部40のカエリ取り歯部41と交互に位置するように設定している。
【0041】
第二カッター部40は、図6に示すように、カッター工具17aの歯幅方向中央に設けており、径方向中心側に位置する環状のベース部42と、ベース部の外周側に接着固定した樹脂製の弾性部材43(ゴム製でもよい)と、その弾性部材43の外周側に接着固定したリング部44とを備えて構成している。そして、リング部44の外周端には歯幅方向全幅に延びるカエリ取り歯部41を形成している。
【0042】
このカエリ取り歯部41は、一般的な歯車の歯部と同じ形状であって、加工歯車1と噛合することによって、加工歯車1の歯面2の鉛直方向に立ち上がったカエリ3b(図5参照)を、押し潰すようにして除去する。前述の弾性部材43は、この押し付け力を反発力で増加させるために介装している。
【0043】
具体的には、図5に示すように、加工歯車1より歯幅を長く設定した略平行四辺形断面のカエリ取り歯部41を、加工歯車1の歯部1Aと噛合させて歯面2の鉛直方向に立ち上がったカエリ3bを押し潰して除去している。
【0044】
すなわち、前述した歯端面取り刃部31によって除去できなかったカエリや、その歯端面取り刃部31による切削によって逆に歯面2の鉛直方向に立ち上がったカエリを、カエリ取り歯部41が歯面2の鉛直方向から押し潰すようにして除去しているのである。
【0045】
そして、このカエリ取り歯部41も、図4に示すように、一歯ずつ欠歯として設け、前述する第一カッター部30の歯端面取り刃部31と交互に位置するように設定している(図5参照)。
【0046】
このように、第一カッター部30の歯端面取り刃部31と、第二カッター部40のカエリ取り歯部41とを一歯ずつ交互に位置するように設定することで、加工歯車1をカッター加工する場合には、一歯ごとに歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことになる。
【0047】
このため、一般に奇数歯とされる加工歯車1では、2回転することで、一歯の歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。
また、2回転毎に、歯端面取り加工とカエリ取り加工が繰返し行われることで、より確実にカエリ3を除去することができる。すなわち、歯端面取り刃部31でカエリ3aを切削除去する際には、鉛直方向にカエリ3bが立ち上がるが、このカエリ3bはカエリ取り歯部41で押圧除去される。また押圧除去する際には、歯幅方向にカエリ3aが再度突出するが、このカエリ3aは歯端面取り刃部31で切削除去されるというサイクルが形成されるため、確実にカエリ3を除去することができるのである。
【0048】
また、第一カッター部30が第二カッター部40の両側位置に位置(30A,30B)することで、第二カッター部40のカエリ取り歯部41の歯当り位置が安定することになり、安定してカエリ取り機能を維持することができる。すなわち、弾性部材43を介して設けられていることで不安定になるカエリ取り歯部41の位置が、二つの第一カッター部30の本体部34,35で挟持して保持されることで、一定の位置に規定されることになるのである。
【0049】
さらに、図6に示すように、第一カッター部30の本体部34,35と第二カッター部40のカエリ取り歯部41の間には径方向に僅かな隙Sを設けている。この隙Sにより、カエリ取り歯部41が径方向に揺動して弾性部材43の反発力が確実に発生するようにしている。
【0050】
前述の固定ボルト50は、図4に示すように、カッター工具17aの径方向中間位置で約60度間隔で6つ設けている。
この固定ボルト50は、カッター工具17aを軸方向に貫通するように設けられており、図6に示すように、第一カッター部30のオス部30Aに設けた長尺調整穴36と第二カッター部40のベース部42に設けた長尺調整穴45とを挿通して、第一カッター部30のメス部30Bに設けたネジ部37に螺合固定することで、第一カッター部30と第二カッター部40を締結固定している。
【0051】
また、この固定ボルト50を緩めて、第二カッター部40の長尺調整穴45の所定範囲内T(図4参照)で第二カッター部40を周方向にスライド移動させることで、第一カッター部30と第二カッター部40の周方向の相対位置を調整して、カエリ取り歯部41と歯端面取り刃部31との間の間隔(ピッチ)を自由に変化させることができるように構成している。また、第一カッター部30のオス部30Aの長尺調整穴36により、オス部30Aの歯端面取り刃部31とメス部30Bの歯端面取り刃部31の周方向の相対位置を調整できる。これらにより、カエリ取り歯部41と歯端面取り刃部31との間の間隔を微調整できると共に、オス部30Aとメス部30Bの歯端面取り刃部31の位相も調整でき、常時正確なピッチを設定して加工歯車の加工精度を高めることができる。
【0052】
次に、本実施形態の歯車の加工方法の作用効果について、従来の歯車加工方法と比較して説明する。
図8は、従来の歯車の加工方法を示した加工工程図である。この図に示すように、従来の加工方法では、歯切り加工の後に、歯端面取り加工を行ない、その後にカエリ取り加工を行っていた。
これは、右側の加工工程の際の歯面2形状の断面図に示すように、歯切り加工をした際に生じたカエリ3aを歯端面取り加工で切削除去しても、歯端面から僅か内方位置(約0.5mm)に、除去できなかった歯面鉛直方向のカエリ3bが歯面2に立ち上がってしまうため、別途、カエリ取り歯車(図示せず)を噛合させて、カエリ3bを除去するカエリ取りの加工工程を設ける必要があるためである。
【0053】
この歯面鉛直方向に立ち上がるカエリ3bを除去しなかった場合には、最後に行なうホーニング加工工程の際に、このカエリ3bがホーニング砥石を偏磨耗させることになり、これにより、ホーニング加工処理を施した後の歯面2が、「うねる」という問題が生じる。
そこで、従来の歯車の加工方法では、別途カエリ取り加工工程を設定することで、この歯面2の鉛直方向のカエリ3bを完全に除去していた。
【0054】
本実施形態の歯車の加工方法では、このカエリ取り加工工程を、歯端面取り工程と同時に行なうように、カッター加工工程を備えて、加工歯車1の加工を行うように構成している。
【0055】
すなわち、歯端面取り刃部31とカエリ取り歯部41とを備えたカッター工具17aにより、加工歯車1の歯端面取り加工とカエリ取り加工とを同時に行うカッター加工工程を備えたことで、歯切り工程によって生じたカエリ3を、歯面2の歯幅方向では歯端面取り刃部31が切削除去して、歯面2の鉛直方向ではカエリ取り歯部41が押圧除去することになる。
このため、カッター加工工程を行なうだけで、同時に歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。また、歯面2の歯幅方向のカエリ3aと歯面2の鉛直方向のカエリ3bを一度に除去することができ、カエリ取り加工の効率化を図ることができる。
よって、歯車の加工方法において、カエリ除去工程を効率化して、全体として、できるだけ少ない加工工程で加工を行なうことができる。
【0056】
また、この実施形態では、カッター工具17aの歯端面取り刃部31とカエリ取り歯部41を、周方向に交互に配置してカッター加工工程を行っている。
これにより、カッター加工工程で、歯端面取り加工とカエリ取り加工を、一歯ごと交互に行なうことになる。
このため、奇数歯で構成される加工歯車1を、カッター工具17aと噛合回転させるだけで、各歯において、各回転ごとに歯端面取り加工とカエリ取り加工が交互に行われることになり、確実且つ安定的にカエリ3を除去することができる。
よって、カッター加工工程による歯端面取りとカエリ取りを、歯の噛合せを変更することなく、より確実に安定して行なうことができる。
【0057】
なお、本実施形態では、奇数歯の加工歯車1を前提に説明したが、偶数歯の加工歯車を加工する場合には、カッター工具17aの方を奇数に設定して、カエリ取り歯部41又は歯端面取り刃部31が連続する部分を設けることで、同様に、各回転ごとに歯端面取り加工とカエリ取り加工を交互に行なわせることができる。
【0058】
また、歯端面取りを確実に行いたい場合には、歯端面取り刃部31の方を多く設定したり、歯面2の鉛直方向に延びるカエリを確実に除去したい場合には、カエリ取り歯部41の方を多く設定したりすることが考えられる。
【0059】
本実施形態の歯車のカッター加工装置10は、加工歯車1の歯端面取りを行なう歯端面取り刃部31を有する第一カッター部30と、環状の弾性部材43に支持されて加工歯車1に噛合して回転することで歯面2端部のカエリ3を取るカエリ取り歯部41を有する第二カッター部40とを備えたカッター工具17aを有し、そのカッター工具17aを加工歯車1と噛合させて回転させることにより、歯端面取り刃部31で加工歯車1の歯端面取りを行なうと共に、カエリ取り歯部41を加工歯車1の歯面2に押圧して加工歯車1のカエリ3を除去するように構成している。
これにより、歯端面取り刃部31を有する第一カッター部30とカエリ取り歯部41を有する第二カッター部40を備えたカッター工具17aを、加工歯車1と噛合して回転させることで、歯切り工程によって生じたカエリ3を、歯面2の歯幅方向では歯端面取り刃部31が切削除去して、歯面2の鉛直方向ではカエリ取り歯部41が押圧除去することになる。
このため、カッター工具17aで加工するだけで、同時に歯端面取り加工とカエリ取り加工を行なうことができる。また、歯面2の歯幅方向のカエリ3aと歯面2の鉛直方向のカエリ3bを一度に除去することができ、カエリ取りの効率化を図ることができる。
【0060】
よって、歯車の加工装置において、カエリ除去工程を効率化して、全体として、できるだけ少ない加工工程で加工を行なうことができる。
【0061】
また、この実施形態では、カッター工具17aが、歯幅方向両端側に一対の第一カッター部30A,30Bを備え、この一対の第一カッター部30の間に第二カッター部40を配置している。
これにより、弾性部材43に支持されるカエリ取り歯部41を有する第二カッター部40を、歯幅方向両端側に配置した一対の第一カッター部30で挟持して保持することになる。
このため、弾性部材43が介在することで歯当り位置が変化しやすいカエリ取り歯部41を、第一カッター部30を利用して保持することができ、安定してカエリ取り加工を行なうことができる。
よって、簡単な構成によって、カエリ取り歯部41の位置を安定させることができ、確実にカエリ取り加工と歯端面取り加工を行なうことができる。
【0062】
また、この実施形態では、カッター工具17aの第一カッター部30と第二カッター部40の間に、第一カッター部30と第二カッター部40の周方向の相対位置を調整する固定ボルト50と長尺調整穴45を設けている。
これにより、第一カッター部30の歯端面取り刃部31と第二カッター部40のカエリ取り歯部41間の周方向のピッチを微調整することができる。
このため、歯端面取り刃部31とカエリ取り歯部41との間のピッチが、弾性部材43等の撓みや変形等によりズレが生じた場合であっても、固定ボルト50と長尺調整穴45で微調整することで、正確な位置に調整(チューニング)することができる。
よって、長期間にわたり安定してカッター工具17aを使用することができ、効率的に歯車加工を行なうことができる。
【0063】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の相対位置調整手段は、固定ボルト50、長尺調整穴45に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる歯車の加工方法及び歯車加工装置の実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の歯車の加工方法を示した加工工程図。
【図2】加工工程における歯面の状態を示した詳細斜視図。
【図3】カッター加工装置の概略正面図。
【図4】カッター工具の正面図。
【図5】加工歯車とカッター工具の噛合状態の展開図。
【図6】カッター工具のA−A線矢視断面図。
【図7】カッター工具のB−B線矢視断面図。
【図8】従来の歯車の加工方法を示した加工工程図。
【符号の説明】
【0065】
1…加工歯車
2…歯面
3,3a,3b…カエリ
10…カッター加工装置
17a…カッター工具
30…第一カッター部
31…歯端面取り刃部
40…第二カッター部
41…カエリ取り歯部
50…固定ボルト
【出願人】 【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
【出願日】 平成19年2月19日(2007.2.19)
【代理人】 【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭

【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭


【公開番号】 特開2008−200785(P2008−200785A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−37347(P2007−37347)