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【発明の名称】 ハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法
【発明者】 【氏名】伊藤 利成

【要約】 【課題】狙い歯面形状を得るためのラッピングの段取り(加工条件)を指示することを可能にするハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法を提供する。

【解決手段】ラップ盤の段取り加工条件に基きハイポイドギヤのアライメントを計算し、該アライメントと焼入れ後の歯面形状から歯当り位置を求め、該歯当り位置における修正代を算出すると共に、該歯当り位置における接触面を算出された修正代だけ除去した後の歯面形状を導出する。そして、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を順次計算する。これにより、段取りにより得られる歯面形状を高い精度でシミュレーションすることができ、段取り(加工条件)の指示が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッピング加工後のハイポイドギヤの歯面形状をシミュレーションする方法であって、
ラップ盤の動作に基き前記ハイポイドギヤの歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面における修正代を算出すると共に、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の該歯当り位置における歯面形状を計算し、
前記歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を繰り返し計算することにより、前記ハイポイドギヤの最終歯面形状を導出することを特徴とするハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法。
【請求項2】
前記ハイポイドギヤをラップ盤でラッピング加工する際の加工条件に基き該ハイポイドギヤのアライメントを導出する第1ステップと、
前記第1ステップによって導出された前記ハイポイドギヤのアライメントと前記ハイポイドギヤの焼入れ後の歯面形状とに基き前記ハイポイドギヤの初期歯当り位置を導出する第2ステップと、
前記第2ステップによって導出された前記ハイポイドギヤの初期歯当り位置での修正代を、実験データに基き構築された修正代計算式によって算出する第3ステップと、
前記ハイポイドギヤの初期歯当り位置での接触面を前記修正代計算式によって算出された修正代だけ除去した後の初期歯当り位置での歯面形状を導出する第4ステップと、
ラッピング開始から終了まで前記ハイポイドギヤの歯当り位置を段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における各修正代を前記修正代計算式によって算出すると共に、各段階の各歯当り位置における接触面を算出された各修正代だけ除去した後の各歯当り位置での歯面形状を順次導出し、前記ハイポイドギヤの最終歯面形状を導出する第5ステップと、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法に関するもので、特に、ラップ盤によるラッピング加工後のハイポイドギヤの歯面形状をシミュレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイポイドギヤの振動・騒音レベルは、ハイポイドギヤの性能を評価する上で重要な項目の一つである。特に、車両の駆動系に組込まれるハイポイドギヤは、その振動・騒音レベルが車両の快適性(静粛性)に影響を及ぼすため、高い性能(低振動・低騒音)が要求される。ところで、近年、ハイポイドギヤにおいては、歯面形状に基く性能シミュレーションが可能になったことから、歯面形状を設計・指示しての加工、即ち狙い歯面形状に向けての加工が行われている。しかしながら、ハイポイドギヤにおいては、歯切り加工(歯切り盤)におけるシミュレーションソフトを用いての歯面形状シミュレーションにより、歯切り段取り(歯切り加工条件)の指示が可能であるが、ラッピング加工(ラップ盤)におけるシミュレーションは、因子が多いことから実現が極めて困難である。
【0003】
したがって、従来、ラッピング加工においては、狙い歯面形状を得るためのラッピング段取り(加工条件)を指示することができず、ロットが変わる毎にハイポイドギヤを実際にラッピング加工しての試行錯誤が行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、狙い歯面形状を得るためのラッピングの段取り(加工条件)を指示することを可能にするハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法は、ラッピング加工後のハイポイドギヤの歯面形状をシミュレーションする方法であって、ラップ盤の動作に基きハイポイドギヤの歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面における修正代を算出すると共に、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の該歯当り位置における歯面形状を計算し、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を繰り返し計算することにより、ハイポイドギヤの最終歯面形状を導出することを特徴とする。
本発明のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法によれば、ラップ盤の動作に基きハイポイドギヤの歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の当該歯当り位置における歯面形状を計算し、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を繰り返し計算することにより、最終的にハイポイドギヤのラッピング加工後の最終歯面形状を得ることができる。
【0006】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)、(2)の各項がそれぞれ請求項1、2に相当する。
【0007】
(1)ラッピング加工後のハイポイドギヤの歯面形状をシミュレーションする方法であって、ラップ盤の動作に基きハイポイドギヤの歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面における修正代を算出すると共に、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の該歯当り位置における歯面形状を計算し、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を繰り返し計算することにより、ハイポイドギヤの最終歯面形状を導出することを特徴とする。
本項に記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法は、ラップ盤の動作に基きハイポイドギヤの歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の当該歯当り位置における歯面形状を計算し、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を繰り返し計算することで、最終的にハイポイドギヤのラッピング加工後の最終歯面形状をシミュレーションするものである。本項の態様によれば、ラッピング段取り(加工条件)により得られる歯面形状を予め確認することができ、ラッピング段取りの指示が可能になる。これにより、ハイポイドギヤを実際にラッピング加工して試行錯誤することにより狙い歯面形状を得る手間がなくなり、段取り作業を大幅に合理化することができる。
【0008】
(2)ハイポイドギヤをラップ盤でラッピング加工する際の加工条件に基き該ハイポイドギヤのアライメントを導出する第1ステップと、第1ステップによって導出されたハイポイドギヤのアライメントとハイポイドギヤの焼入れ後の歯面形状とに基きハイポイドギヤの初期歯当り位置を導出する第2ステップと、第2ステップによって導出されたハイポイドギヤの初期歯当り位置での修正代を、実験データに基き構築された修正代計算式によって算出する第3ステップと、ハイポイドギヤの初期歯当り位置での接触面を修正代計算式によって算出された修正代だけ除去した後の初期歯当り位置での歯面形状を導出する第4ステップと、ラッピング開始から終了までハイポイドギヤの歯当り位置を段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における各修正代を修正代計算式によって算出すると共に、各段階の各歯当り位置における接触面を算出された各修正代だけ除去した後の各歯当り位置での歯面形状を順次導出し、ハイポイドギヤの最終歯面形状を導出する第5ステップと、から構成される(1)項に記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法。
本項に記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法は、加工条件に基きハイポイドギヤのアライメントを計算し、該アライメントと焼入れ後の歯面形状から初期歯当り位置を求め、該初期歯当り位置における修正代を修正代計算式により算出すると共に、初期歯当り位置における接触面を算出された修正代だけ除去した後の当該初期歯当り位置における歯面形状を計算する。そして、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における各修正代を修正代計算式によって算出すると共に、各段階の各歯当り位置における接触面を算出された各修正代だけ除去した後の各歯当り位置での歯面形状を順次計算することで、最終的にハイポイドギヤのラッピング加工後の最終歯面形状をシミュレーションすることができる。
本項の態様において、ハイポイドギヤをラップ盤でラッピング加工する際の加工条件とは、揺動式ラップ盤(例えば、グリーソン社製♯503型)の場合、ピニオンギヤ回転数、伝達トルク、カム揺動幅、PCM(Pinion Common Motion)、GCM(Gear Common Motion)、サイクル数N、サイクル時間t 等である。そして、入力された加工条件に基き当該ラップ盤におけるPMD(Pinion Mount Distance)、GMD(Gear Mount Distance)、並びに揺動角Σ方向のハイポイドギヤの組付け位置寸法が算出され、これにより当該ハイポイドギヤのアライメントが導出される。なお、ラップ盤の動作により歯当りが歯幅全体を移動して元の位置に戻った状態をラッピング加工の1サイクルとし、サイクル時間とはNサイクルのラッピング加工に要する時間である。
【0009】
(3)修正代計算式は、
ΔA=c×h×t´
ただし、
ΔA は修正代(μm)
c は実験により得られた係数
e は実験により得られた指数
h は歯面隙間(μm)、(0≦h≦15、接触範囲)
t´ 分割時間(sec)、歯当り位置を段階的に移動させる時の間隔
である(2)項に記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法。
本項に記載の態様では、係数c並びに指数eの値を加工条件に応じて設定することにより、ハイポイドギヤの対象となる歯当り位置における修正代が算出される。実際のラッピング加工における修正代を計算する上での因子として、砥粒の大きさ、接触面に作用する面圧、すべり速度等が考えられるが、実際の接触範囲よりも幅広くラッピング加工されていること、歯面内の微小領域での面圧すべり速度に対して削れ方に影響が少ない等から、これらの項目を削除し、削れ方への影響が大きい歯面隙間と分割時間t´とをパラメータとして修正代計算式を構築した。
【0010】
(4)ハイポイドギヤの歯当り位置、歯面隙間並びに歯面形状は、歯当り解析用ソフトウェアに加工条件入力(処理)部分及び(3)項の修正代計算式を組込んだプログラムに基き導出される(1)〜(3)項のいずれかに記載のハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法。
本項に記載の態様では、プログラムに必要なデータを入力することで、誰でも簡単に歯当り位置、歯面隙間並びに歯面形状を計算することができる。
【発明の効果】
【0011】
狙い歯面形状を得るためのラッピングの段取り(加工条件)を指示することを可能にするハイポイドギヤの歯面形状シミュレーション方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図1〜図7に基いて説明する。本実施形態では、揺動式ラップ盤1(グリーソン社製♯503型)を用いてハイポイドギヤ2をラッピング加工するに際し、当該ハイポイドギヤ2のラッピング加工後の歯面形状を、ハイポイドギヤ解析用ソフトウェアが構築されたシミュレーション装置を用いてシミュレーションする場合を説明する。図1及び図2に示されるように、ラップ盤1(♯503型)は、ピニオンギヤ3を支持するピニオンギヤ側軸頭4とリングギヤ5を支持するリングギヤ側軸頭6とが本体テーブル7上に配設される。また、本体テーブル7上には、ピニオンギヤ側軸頭4を支持する軸頭支持ユニット8が設けられ、該軸頭支持ユニット8のスライドテーブル9がG方向(図1におけるG方向)へ駆動されることにより、ピニオンギヤ側軸頭4がG方向へ移動/位置決めされると共に、軸頭支持ユニット8の揺動テーブル10がスライドテーブル9に対して揺動することにより、ピニオンギヤ側軸頭4が水平面上を揺動中心Qの回りに揺動する構造になっている。
【0013】
図3に示されるように、軸頭支持ユニット8は、揺動テーブル10の下面が、スライドテーブル9上に配設された複数個のボールベア11によって支持される。また、揺動テーブル10の下面には、揺動テーブル10に直交する軸の回りに回転可能な3個のローラ12,13,14が配設される。そして、引張りコイルばね17のばね力によって揺動テーブル10がスライドテーブル9に対して図3における右斜め下方向へ引き寄せられることにより、ローラ12,13が、スライドテーブル9上に配設された案内片15,16の湾曲した案内面15a,16aにそれぞれ当接されると共に、ローラ14(カムフォロア)が、スライドテーブル9上に設けられたカム18のプロフィール面に当接される。この状態で、カム18が駆動(回転)されると、各ローラ12,13の動作が各案内片15,16の各案内面15a,16aによって規制された下で、ローラ14がカム18のプロフィールに倣って動作(移動)することにより、揺動テーブル10、延いてはピニオンギヤ側軸頭4が、スライドテーブル9に対して揺動する構造になっている。
【0014】
なお、ピニオンギヤ側軸頭4の揺動中心Qは、ラップ盤1に設けられたPCM(Pinion Common Motion)ダイヤル19を操作して案内片15の傾きを調節すると共にGCM(Gear Common Motion)ダイヤル20を操作して案内片16の傾きを調節することにより、任意に設定される。また、図1及び図2に示されるように、本体テーブル7上には、P方向へ移動/位置決め可能にスライドコラム21が設けられ、該スライドコラム21には、E方向(上下方向)へ移動/位置決め可能にリングギヤ側軸頭6が設けられる。このように構成されたラップ盤1では、ピニオンギヤ3とリングギヤ5とを噛合わせ、噛合わされた部分の歯面にラッピングオイルを供給しながら、リングギヤ5に所定のトルク負荷を付与しつつピニオンギヤ3を所定の回転数で回転させる。この状態で、ピニオンギヤ側軸頭4を揺動させてハイポイドギヤ2の歯当り位置を歯幅全体に渡って移動させる。これにより、歯当り位置における接触面が、双方のギヤ3,5の歯面間に供給されたラッピングオイルによって所定の修正代で順次除去され、ハイポイドギヤ2の歯面形状が修正される構造になっている。
【0015】
次に、上記ラップ盤1(♯503型)を用いてハイポイドギヤ2をラッピング加工する場合の歯面形状シミュレーション方法を図4に示されるフローチャートに基き説明する。なお、歯面形状のシミュレーションには、既存の歯当り解析(ハイポイドギヤ解析)用ソフトウェアに、当該ラップ盤1の段取り(加工条件)入力部分、及び後述する修正代計算式を組込んだプログラムが使用される。
【0016】
まず、ラップ盤1を用いてハイポイドギヤ2をラッピング加工する際の段取り(加工条件)をシミュレーション装置に入力する。この場合、入力される段取り(加工条件)は、ピニオンギヤ3の回転数、伝達トルク、カム揺動幅、PCM(Pinion Common Motion)、GCM(Gear Common Motion)、サイクル数N、サイクル時間t である。なお、図5に示されるように、ラップ盤1の動作により歯当りが歯幅全体を移動して元の位置に戻った状態をラッピング加工の1サイクルとし、サイクル時間tとはNサイクルのラッピング加工に要する時間である。シミュレーションは、入力された段取り(加工条件)に基き当該ラップ盤1におけるPMD(Pinion Mount Distance)、GMD(Gear Mount Distance)、並びに揺動角Σ方向のハイポイドギヤ2の組付け位置寸法を計算し、結果として当該ハイポイドギヤのアライメントを導出する(ステップ1)。
【0017】
次に、シミュレーション装置は、ラップ盤1におけるハイポイドギヤ2のアライメントと、予め3次元測定装置によって測定された焼入れ後(ラッピング加工前)のハイポイドギヤ2の歯面形状データとに基き、初期歯当り位置(歯面隙間)を計算する(ステップ2)。そして、歯面隙間(初期歯当り位置における接触領域と非接触部分との隙間)を歯幅全体に渡って計算して該計算結果を修正代計算式に充て、初期歯当り位置での修正代を算出する(ステップ3)。
なお、修正代計算式は、
ΔA=c×h×t´
ただし、
ΔA は修正代(μm)
c は実験により得られた係数
e は実験により得られた指数
h は歯面隙間(μm)、(0≦h≦15、接触範囲)
t´ 分割時間(sec)、1サイクルを複数段階に分割したときの段階と段階との間隔
である。
ここで、ラッピングオイルを♯320、伝達トルクを1.0kgm、ピニオンギヤ3の回転数を1200rpm の段取り(加工条件)の場合、c=1/7 、e=1/3 である。
そして、シミュレーション装置は、ハイポイドギヤ2の初期歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の歯面形状を計算して導出する(ステップ4)。
【0018】
次に、シミュレーション装置は、ラッピング加工の1サイクルを例えば10段階に分割し、初期段階(初期歯当り位置)の次の段階の歯当り位置(歯面隙間)を計算する。次に、修正代計算式によって当該歯当り位置での修正代を算出し、当該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の歯面形状を計算して導出する。シミュレーション装置は、1サイクルの各段階において同様の処理を行い、各段階の各歯当り位置での接触面を算出された各修正代だけ除去した後(1サイクル終了後)の歯面形状を計算して導出する。さらに、シミュレーション装置は、上記処理をN回(ラッピング加工開始から終了までのNサイクル分)繰り返し行うことにより、最終的にハイポイドギヤ2のラッピング加工後の最終歯面形状が3次元測定座標上に導出される。
【0019】
ここで、図6に示されるのは、ラップ盤1(♯503型)により2、4、6サイクルのラッピング加工をそれぞれ実際に行った場合と、同一の段取り(加工条件)でシミュレーションした場合とのハイポイドギヤ2の加速面のバイアス(歯面のねじれ量、図7におけるB)を比較したものである。この図に示されるように、2サイクルでは、実際の加工でのバイアスに対するシミュレーションでのバイアスは+4.3μm 、4サイクルでは、実際の加工でのバイアスに対するシミュレーションでのバイアスは−0.6μm 、6サイクルでは、実際の加工でのバイアスに対するシミュレーションでのバイアスは±0μm となり、ハイポイドギヤ2の歯面形状を高い精度でシミュレーションすることができることが確認された。
【0020】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本ハイポイドギヤ2の歯面形状シミュレーション方法では、ラップ盤1の段取り(加工条件)に基きハイポイドギヤ2のアライメントを計算し、該アライメントと焼入れ後の歯面形状から初期歯当り位置を求め、該初期歯当り位置における修正代を修正代計算式により算出すると共に、初期歯当り位置における接触面を算出された修正代だけ除去した後の当該初期歯当り位置における歯面形状を導出し、さらに歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における各修正代を修正代計算式によって算出すると共に、各段階の各歯当り位置における接触面を算出された各修正代だけ除去した後の各歯当り位置での歯面形状を順次計算し、最終的にハイポイドギヤ2のラッピング加工後の最終歯面形状を導出する。
これにより、本ハイポイドギヤ2の歯面形状シミュレーション方法は、段取り(加工条件)により得られる歯面形状を高い精度でシミュレーションすることができ、段取り(加工条件)の指示が可能になる。これにより、ロットが変わる毎にハイポイドギヤ2を実際にラッピング加工して試行錯誤することにより狙い歯面形状を得る手間がなくなり、段取り作業を大幅に合理化することができる。
【0021】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施形態では、揺動式ラップ盤1(グリーソン社製♯503型)の場合を説明したが、直動式ラップ盤(例えば、グリーソン社製♯506型)を用いてもよい。
この場合、シミュレーション装置におけるハイポイドギヤ2のアライメントを計算する部分のプログラムが異なるが、直動式ラップ盤の動作に基きハイポイドギヤ2の歯当り位置を求め、該歯当り位置での接触面を算出された修正代だけ除去した後の当該歯当り位置における歯面形状を導出し、歯当り位置をラッピング開始から終了まで段階的に移動させた際の各段階の各歯当り位置における歯面形状を順次計算することで、最終的にハイポイドギヤ2のラッピング加工後の最終歯面形状をシミュレーションするという基本的な技術思想は踏襲される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ラップ盤(グリーソン社製♯503型)の概略構造を説明するための斜視図である。
【図2】ラップ盤(グリーソン社製♯503型)の概略構造を説明するための平面図である。
【図3】ラップ盤(グリーソン社製♯503型)の揺動機構を説明するための説明図である。
【図4】本シミュレーション方法のフローチャート図である。
【図5】ラップ盤が動作することでハイポイドギヤの歯当り位置が段階的に移動する様子を示す図である。
【図6】ラップ盤(♯503型)により2、4、6サイクルのラッピング加工をそれぞれ実際に行った場合と、同一の段取り(加工条件)でシミュレーションした場合とのハイポイドギヤの加速面のバイアスを比較した図である。
【図7】ハイポイドギヤのバイアスの説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ラップ盤、2 ハイポイドギヤ
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年11月6日(2006.11.6)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫


【公開番号】 特開2008−114341(P2008−114341A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−300544(P2006−300544)