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【発明の名称】 歯車のシェービング加工方法
【発明者】 【氏名】今泉 知巳

【要約】 【課題】連続的な切込みに起因する問題を解消することができるとともに、加工時間の延長や加工精度の低下の原因となる加工時における工具の回転方向の反転を伴うことなく、被削歯車の両歯面の切削量のバランスをとることができ、加工精度の向上を図ることができる歯車のシェービング加工方法を提供すること。

【構成】工具(シェービングカッタ)と被削歯車とを両回転軸が相対的に接近する送り方向に移動させることで工具を被削歯車に対して切り込ませる切込み動作と、工具と被削歯車とを互いに噛み合った状態で回転させる回転動作とを行うことで、被削歯車の切削加工を行う歯車のシェービング加工方法であって、前記切込み動作を断続的に行うとともに、切込み動作毎に、工具を回転駆動させて前記回転動作を行う工具側駆動回転動作と、被削歯車を回転駆動させて前記回転動作を行う被削歯車側駆動回転動作とを切り替える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具と被削歯車とを互いの回転軸同士が所定の交差角度をなす状態で配置し、工具と被削歯車とを前記両回転軸が相対的に接近する送り方向に移動させることで工具を被削歯車に対して切り込ませる切込み動作と、工具と被削歯車とを互いに噛み合った状態で回転させる回転動作とを行うことで、被削歯車の切削加工を行う歯車のシェービング加工方法であって、
前記切込み動作を断続的に行うとともに、切込み動作毎に、工具を回転駆動させて前記回転動作を行う工具側駆動回転動作と、被削歯車を回転駆動させて前記回転動作を行う被削歯車側駆動回転動作とを切り替えることを特徴とする歯車のシェービング加工方法。
【請求項2】
前記断続的に行う各切込み動作の切込み量を、被削歯車の片歯面分の切込み量とすることを特徴とする請求項1に記載の歯車のシェービング加工方法。
【請求項3】
前記断続的に行う切込み動作を所定回数行うことで、工具と被削歯車とを工具の被削歯車に対する全切込み量分前記送り方向に移動させた後、前記両回転軸の軸間距離を保持した状態で前記工具側駆動回転動作と前記被削歯車側駆動回転動作とを適宜切り替える仕上げ加工を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車のシェービング加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の歯面を仕上げるためのシェービング加工に用いられるシェービング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のトランスミッションに用いられる歯車等のように低振動・低騒音化等のため高い加工精度が要求される歯車等について、その歯面を仕上げるための加工としてシェービング加工が一般的に行われている。
シェービング加工においては、例えば歯面に多数のセレーション溝等からなるセレーションを有するシェービングカッタが工具として用いられ、この工具と被削歯車とが、互いの回転軸同士が所定の交差角度をなす状態で噛み合わされ、これらがバックラッシュ無しの状態で回転することにより生じる工具の歯すじ方向の相対すべり運動により切削加工が行われる。
【0003】
シェービング加工に際しては、例えば工具を被削歯車に対して接近する送り方向に移動させることで、工具と被削歯車との軸間を近付け、工具を被削歯車に対して切り込ませる切込み動作が行われる(いわゆるプランジシェービング加工)。この切込み動作については、従来、徐々に切込みを行いながら被削歯車の歯面を切削するという連続的な切込みが行われていた。
しかし、切込み動作を伴う切削加工では、工具が被削歯車の歯面を切削するのにある一定量以上の切込み量(切込み深さ)が必要であるところ、前記のような連続的な切込みでは、切削に際して十分な切込み量でない状態であっても、工具と被削歯車の歯面とが接触することとなる。この際、工具は被削歯車の歯面を滑るような状態となるため、摩擦力等の接触抵抗が生じて切削抵抗が大きくなり、工具及び被削歯車に過大な負荷がかかる。その結果、工具及び被削歯車に撓みが生じたり、切込み量の増加に伴う切削抵抗の変動が発生したりし、加工精度が低下するという問題があった。
【0004】
一方、シェービング加工においては、切込みの途中で工具と被削歯車との回転方向を反転させることで、被削歯車の左右歯面を均等に加工し、その対称度を向上させて加工精度を向上することが行われている。
すなわち、シェービング加工においては、工具の回転駆動により被削歯車はその両歯面が同時加工されるが、互いに噛み合う工具及び被削歯車においては、その回転によって被削歯車の両歯面のうち片側の歯面に工具が押し付けられ、その押し付けられる歯面側の切削量が大きくなる。このため、切込みの途中で回転方向の反転を伴わない加工では、被削歯車の左右歯面の切削量にアンバランスが生じ、加工精度が低下することとなる。そこで、前記のように切込み途中で回転方向を反転させることが行われている。
【0005】
前述したような連続的な切込みによる問題を解決するとともに、切込み途中での回転方向の反転を行うシェービング加工方法が特許文献1に示されている。
すなわち、特許文献1においては、被削歯車にシェービング加工を施す際の全切込み量に対してそれを分割した個別切込み量を採用し、その個別切込み量の切込み動作と、切込みを伴わない回転動作(ドエル)とを繰り返すとともに、切込み動作毎に工具(シェービングカッタ)の回転を反転させる加工方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−154873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、特許文献1に示されているような加工方法を用いることにより、工具及び被削歯車に過大な負荷がかかって撓みが生じること等により加工精度が低下するという連続的な切込みによる問題が解決でき、また、加工時に回転方向の反転を伴うことで被削歯車の左右歯面を均等に加工できて加工精度の向上を図ることができる。
しかし、前記従来の加工方法においては、シェービング加工に際して回転方向を反転させることから、加工時間の延長や加工精度の低下を招くという問題がある。
【0007】
すなわち、加工時に回転方向を反転させるためには、比較的高速(例えば1000rpm程度)で回転する工具の回転を一旦停止させた後、再び逆回転方向に回転を立ち上げる必要があるので、回転を停止させる時間及び逆回転を立ち上げる時間を要する。このため、加工時に回転方向を反転させることは加工時間の延長を招く。
また、こうした加工時間の延長を防ぐため、回転方向の反転に伴い工具の回転の急停止及び急加速を行うことで、回転を停止させる時間及び逆回転を立ち上げる時間を短縮することができる。しかし、工具の回転の急停止及び急加速は、工具がその噛み合う被削歯車に対して衝撃力を与えることとなり加工精度の低下を招く。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、連続的な切込みに起因する問題を解消することができるとともに、加工時間の延長や加工精度の低下の原因となる加工時における工具の回転方向の反転を伴うことなく、被削歯車の両歯面の切削量のバランスをとることができ、加工精度の向上を図ることができる歯車のシェービング加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、工具と被削歯車とを互いの回転軸同士が所定の交差角度をなす状態で配置し、工具と被削歯車とを前記両回転軸が相対的に接近する送り方向に移動させることで工具を被削歯車に対して切り込ませる切込み動作と、工具と被削歯車とを互いに噛み合った状態で回転させる回転動作とを行うことで、被削歯車の切削加工を行う歯車のシェービング加工方法であって、前記切込み動作を断続的に行うとともに、切込み動作毎に、工具を回転駆動させて前記回転動作を行う工具側駆動回転動作と、被削歯車を回転駆動させて前記回転動作を行う被削歯車側駆動回転動作とを切り替えるものである。
【0011】
請求項2においては、前記断続的に行う各切込み動作の切込み量を、被削歯車の片歯面分の切込み量とするものである。
【0012】
請求項3においては、前記断続的に行う切込み動作を所定回数行うことで、工具と被削歯車とを工具の被削歯車に対する全切込み量分前記送り方向に移動させた後、前記両回転軸の軸間距離を保持した状態で前記工具側駆動回転動作と前記被削歯車側駆動回転動作とを適宜切り替える仕上げ加工を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、連続的な切込みに起因する問題を解消することができるとともに、加工時間の延長や加工精度の低下の原因となる加工時における工具の回転方向の反転を伴うことなく、被削歯車の両歯面の切削量のバランスをとることができ、加工精度の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2においては、工具側駆動と被削歯車側駆動とを切り替えることで、実質的に片歯面ずつ加工することができるので、切込み量を加工精度に対する最適値に設定することができ、加工精度を向上することができる。
【0016】
請求項3においては、確実に両歯面の切削量のバランスを取ることができ、加工精度をより向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係る歯車のシェービング加工方法は、図2に示すように、工具としてのシェービングカッタ10と被削歯車20とを互いの回転軸11・21(中心線のみ図示)同士が所定の交差角度をなす状態で配置し、シェービングカッタ10と被削歯車20とを両回転軸11・21が相対的に接近する送り方向に移動させることでシェービングカッタ10を被削歯車20に対して切り込ませる切込み動作と、シェービングカッタ10と被削歯車20とを互いに噛み合った状態で回転させる回転動作とを行うことで、被削歯車20の切削加工を行う。
なお、図2は本発明の一実施形態に係るシェービングカッタと被削歯車との関係を示す図である。
【0018】
本実施形態において、シェービングカッタ10は、歯面に多数のセレーション溝等からなるセレーションが形成された歯(以下、「カッタ歯」という。)12を複数有する。シェービングカッタ10において各カッタ歯12が有するセレーションは、その切刃の位置が歯すじ方向に少しずつずらされているいわゆるディファレンシャルセレーションとなっている。以下に説明する実施の形態では、本発明に係る歯車のシェービング加工方法を、ディファレンシャルセレーションを有するシェービングカッタ10を用いるプランジ加工に適用する場合を例に説明する。
そして、シェービングカッタ10により、加工対象である被削歯車20が有する複数の歯22の歯面を切削することで、被削歯車20の歯面の仕上げを行う。
また、シェービングカッタ10及び被削歯車20は、それぞれの回転軸11・21が回転駆動可能に構成される。
【0019】
これらシェービングカッタ10と被削歯車20とを、互いの回転軸11・21同士が所定の交差角度をなす配置状態で噛み合わせ、バックラッシュ無しの状態で回転させる回転動作を行うことにより、シェービングカッタ10の歯すじ方向の相対すべり運動により切削加工が行われる。
ここで、シェービングカッタ10は、前記のとおりディファレンシャルセレーションを有するため、シェービングカッタ10と被削歯車20とが回転することにより、シェービングカッタ10と被削歯車20との接触位置が順次移動して切削加工が行われる。
【0020】
また、シェービングカッタ10を被削歯車20に対して切り込ませる切込み動作に際しては、シェービングカッタ10及び被削歯車20の少なくともいずれかを移動させることにより、シェービングカッタ10と被削歯車20とを両回転軸11・21が相対的に接近する送り方向(軸間距離を縮める方向)に移動させる。なお、シェービングカッタ10あるいは被削歯車20の前記送り方向の移動は、例えば移動ベッド等を用いて行う。
【0021】
そして、本実施形態に係る歯車のシェービング加工方法は、切込み動作を断続的に行うとともに、切込み動作毎に、シェービングカッタ10を回転駆動させて回転動作を行う工具側駆動回転動作(以下単に「工具側駆動」という。)と、被削歯車20を回転駆動させて前記回転動作を行う被削歯車側駆動回転動作(以下単に「被削歯車側駆動」という。)とを切り替える。
【0022】
すなわち、シェービング加工に際して、シェービングカッタ10の被削歯車20に対する全切込み量に達するまで行う切込み動作を、所定の時間間隔を隔てて断続的に行う。
断続的な切込み動作に際しての各切込み動作の切込み量としては、一定量つまり切込み動作毎に全切込み量を等分割した量の切込み量としたり、切込み動作毎に異なる切込み量としたりすることが考えられる。
【0023】
そして、切込み動作毎に、シェービングカッタ10及び被削歯車20の回転動作について、工具側駆動と被削歯車側駆動とを切り替える。
つまり、互いに噛合するシェービングカッタ10と被削歯車20とは、いずれか一方が回転駆動することにより連れ回り回転し、この回転動作により切削加工が行われるため、断続的に行う各切込み動作に際し、回転駆動する側をシェービングカッタ10と被削歯車20とで切り替える。
【0024】
このように、被削歯車20のシェービング加工に際し、切込み動作を断続的に行うとともに、切込み動作毎に工具側駆動と被削歯車側駆動とを切り替えることにより、連続的な切込みに起因する問題を解消することができるとともに、加工時間の延長や加工精度の低下の原因となる加工時における工具の回転方向の反転を伴うことなく、被削歯車の両歯面の切削量のバランスをとることができ、加工精度の向上を図ることができる。
【0025】
すなわち、切込み動作を伴う切削加工では、シェービングカッタ10が被削歯車20の歯面を切削するのにある一定量以上の切込み量(切込み深さ)が必要であるところ、連続的な切込みでは、切削に際して十分な切込み量でない状態であっても、シェービングカッタ10と被削歯車20の歯面とが接触することとなる。この際、シェービングカッタ10は被削歯車20の歯面を滑るような状態となるため、摩擦力等の接触抵抗が生じて切削抵抗が大きくなり、シェービングカッタ10及び被削歯車20に過大な負荷がかかる。その結果、シェービングカッタ10及び被削歯車20に撓みが生じたり、切込み量の増加に伴う切削抵抗の変動が発生したりし、加工精度が低下するという問題が生じる。
そこで、切込み動作を断続的に行うことで、シェービングカッタ10が被削歯車20の歯面を切削するのに十分な切込み量(切込み深さ)を確保することができるため、シェービングカッタ10が被削歯車20の歯面を滑るような状態となることがなくなり、シェービングカッタ10及び被削歯車20にかかる過大負荷の発生が防止できる。このため、シェービングカッタ10及び被削歯車20に撓みや切削抵抗の変動等が発生することなく、加工精度が安定する。つまり、切込み動作を断続的に行うことで、前記のような連続的な切込みに起因する問題を解消することができる。
【0026】
また、断続的に行う各切込み動作毎に工具側駆動と被削歯車側駆動とを切り替え、従来のようにシェービングカッタ10側のみを回転駆動させるのではなく、被削歯車20側の回転駆動による回転動作を用いることにより、被削歯車20において押付け側歯面を変えることができるので、被削歯車20における各歯22の左右両歯面の切削量のバランスを取ることができ、加工精度を向上することができる。
このように、加工時においてシェービングカッタ10の回転方向の反転を伴うことなく、押付け側歯面を変えられることから、加工の途中にシェービングカッタ10及び被削歯車20の回転方向を変えることなくシェービング加工を行うことができる。これにより、回転方向の反転に伴う加工時間の延長や、シェービングカッタ10の急停止・急加速により被削歯車20に対して発生する衝撃力による加工精度の低下を防止することができる。
【0027】
以下、本発明に係る歯車のシェービング加工方法を用いたシェービング加工の一実施形態について、図1及び図3を加えて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る切込み量の時間変化のグラフを示す図である。図3は切込み動作における切込み量を説明するためのシェービングカッタと被削歯車との噛合状態を示す部分拡大図であり、(a)は工具側駆動の場合を示す図、(b)は被削歯車側駆動の場合を示す図である。
【0028】
本実施形態では、まず、加工前処理として、シェービング加工後の被削歯車20の歯車設計寸法とシェービング加工前の被削歯車20の寸法とから算出される、シェービングカッタ10の被削歯車20に対する全切込み量に対し、断続的に行う各切込み動作の切込み量(以下、「個別切込み量」という。)を設定する。個別切込み量は、シェービングカッタ10及び被削歯車20の材質や形状(切刃のR等)、加工に際しての切削速度(回転速度)等に基づいて予め設定する。
本実施形態においては、個別切込み量を一定量とし、全切込み量を四分割した量としている。つまり、シェービング加工に際して全切込み量に達するまでに、断続的に四回の切込み動作を行う(グラフ上の区間(以下単に「区間」という。)a−b、区間c−d、区間e−f及び区間g−h参照。)。具体的には、例えば、全切込み量が16/100mmであるのに対し、個別切込み量が4/100mmとなる。
【0029】
図1に示すように、シェービング加工の開始に際しては、シェービング加工のサイクルスタート位置(時間0、切込み量0の位置)に対応する(グラフ上の位置(以下単に「位置」という。)oから、切削の開始位置となる、シェービングカッタ10と被削歯車20とがバックラッシュ無しの状態で噛み合う位置に対応する位置aまで、シェービングカッタ10と被削歯車20とを互いの軸間を近付ける方向に早送りで移動させる。
【0030】
次に、一回目の切込み動作を行う(区間a−b)。切込み動作においては、区間a−bの切込み量分の切込みを短時間で一気に行う。切込み動作では、被削歯車20の切削加工は行われない。
ここで、本実施形態では、個別切込み量を、被削歯車20の片歯面分の切込み量とする。
被削歯車20について「片歯面分の切込み量」とは、被削歯車20の歯22の両歯面のうち、回転時にシェービングカッタ10からの押付け力が加わる片側の(一方の)歯面(以下、「押付け側歯面」という。)について、その切削に際してシェービングカッタ10が被削歯車20の歯面を滑るような状態となることのないような十分な切込み量(切込み深さ)である。
【0031】
図3に示すように、シェービングカッタ10及び被削歯車20が、それぞれ矢印R1及び矢印R2の方向に回転する場合、図3(a)に示す工具側駆動の場合は、押付け側歯面は、被削歯車20の歯22(22a)の両歯面23a・23bのうち、回転方向に対して後側(図3における右側)の歯面(以下、「後側歯面23b」とする。)となる。そして、図3に示す噛合状態において、ある一つのカッタ歯12aの前側(図3における左側)に位置する被削歯車20の歯22aにおける後側歯面23bについて、一回の切込み動作に基づく切削後の歯面の位置を二点鎖線で示すと、この切削後の歯面に達するまでの送り方向の移動距離D1が、片歯面分の切込み量となる。
【0032】
同様にして、図3(b)に示す被削歯車側駆動の場合は、押付け側歯面は、被削歯車20の歯22(22b)の両歯面23a・23bのうち、回転方向に対して前側(図3における左側)の歯面(以下、「前側歯面23a」とする。)となる。そして、図3に示す噛合状態において、ある一つのカッタ歯12aの後側(図3における右側)に位置する被削歯車20の歯22bにおける前側歯面23aについて、一回の切込み動作に基づく切削後の歯面の位置を二点鎖線で示すと、この切削後の歯面に達するまでの送り方向の移動距離D2(前記移動距離D1と同値)が、片歯面分の切込み量となる。
【0033】
このように、個別切込み量を被削歯車20の片歯面分の切込み量とすることにより、工具側駆動と被削歯車側駆動とを切り替えることで、実質的に片歯面ずつ加工することができるので、切込み量を加工精度に対する最適値に設定することができ、加工精度を向上することができる。
【0034】
図1に戻り、シェービングカッタ10の一回目の切込み動作が完了した後、送り方向の移動を止め、シェービングカッタ10と被削歯車20との相対的な位置(切込み位置)を固定保持し、所定時間tの間、工具側駆動による切削加工(ドエル)を行う(区間b−c)。つまり、本実施形態においては、区間b−cで示す一回目のドエルは工具側駆動(A1)とする。ドエルでは、切込み動作を行わないことからシェービングカッタ10に対する切削抵抗が一定の適値で維持されるため、切込み量の増加に伴う切削抵抗の周期的な変動による加工精度のばらつきは発生しない。
ここで、前記所定時間tは、シェービングカッタ10により被削歯車20の歯面全体に対し個別切込み量に基づく切削加工を行うのに十分な時間とする。
【0035】
所定時間tのドエルの終了後、一回目の切込み動作と同様にして、二回目の切込み動作を行う(区間c−d)。つまり、個別切込み量を被削歯車20の片歯面分の切込み量とする切込み動作を短時間で一気に行う。
この切込み動作の間に、工具側駆動から被削歯車側駆動へと切り替える。つまり、回転駆動させる側をシェービングカッタ10から被削歯車20へと切り替える。この際、切込み動作の時間はドエルの時間(所定時間t)に比べて非常に短時間であり、シェービングカッタ10と被削歯車20との回転が維持された状態となる。
【0036】
工具側駆動から被削歯車側駆動への切替えを伴う二回目の切込み動作が完了した後、一回目のドエルと同様にして、所定時間tの間、二回目のドエルを行う(区間d−e)。つまり、二回目のドエルは、被削歯車側駆動(A2)となる。
【0037】
以降、前記と同様にして、切込み動作、それに伴う工具側駆動と被削歯車側駆動との切替え及びドエルを、所定の切込み量を満足するまで(シェービングカッタ10の被削歯車20に対する全切込み量に相当する切込み量に達するまで)繰り返す。
本実施形態では、二回目のドエルの終了後、三回目の切込み動作(区間e−f)、三回目のドエル(区間f−g)、四回目の切込み動作(区間g−h)、四回目のドエル(区間h−i)を行う。すなわち、三回目の切込み動作では被削歯車側駆動から工具側駆動への切替えを行い、三回目のドエルは工具側駆動(A1)となり、四回目の切込み動作では工具側駆動から被削歯車側駆動への切替えを行い、四回目のドエルは被削歯車側駆動(A2)となる。
【0038】
全切込み量までの切込み動作及びドエル(本実施形態では四回の切込み動作及びドエル)が完了した時点(位置i)から、仕上げ加工として、送り方向(切込み方向)の移動を行わず、例えば前記複数回のドエルの時間に比して長い時間(例えば前記所定時間tに対して時間2t)の間、ドエルを行う(区間i−j)。この際、工具側駆動と被削歯車側駆動とを適宜切り替えながらドエルを行う(A3)。
すなわち、前述したように断続的に行う切込み動作を所定回数(本実施形態では四回)行うことで、シェービングカッタ10と被削歯車20とをシェービングカッタ10の被削歯車20に対する全切込み量分送り方向に移動させた後、両回転軸11・21の軸間距離を保持した状態で工具側駆動と被削歯車側駆動とを適宜切り替える仕上げ加工を行う。
この仕上げ加工においては、被削歯車20の両歯面を均等に仕上げるため、適宜切り替える工具側駆動と被削歯車側駆動のそれぞれの合計時間は略均等とする。
【0039】
このように、工具側駆動と被削歯車側駆動との切替えを伴う仕上げ加工を行うことで、各切込み動作後に行ったドエルによりすでに安定した状態となっている被削歯車20の歯面に対して均等に加工を行うことができることから、確実に両歯面の切削量のバランスを取ることができ、加工精度をより向上することができる。
【0040】
仕上げ加工の後、シェービングカッタ10と被削歯車20との間の弾性たわみ(歪み)の影響を除去するため、シェービングカッタ10及び被削歯車20の少なくともいずれかを移動させることにより、シェービングカッタ10と被削歯車20とを送り方向と反対方向(軸間距離を広げる方向)に適当な量移動させる(区間j−k)。
具体的には、個別切込み量に対してわずかな量、シェービングカッタ10と被削歯車20の軸間距離を広げることで、前記弾性たわみ分の影響を除去する。
【0041】
シェービングカッタ10と被削歯車20との間の弾性たわみの影響を除去した後、前記と同様にして、例えば前記所定時間tの間、工具側駆動と被削歯車側駆動との切替えを伴う仕上げ加工を再び行う(区間k−l)。つまり、工具側駆動と被削歯車側駆動とをそれぞれの合計時間が略均等となるように適宜切り替えながらドエルを行う(A3)。
これにより、より確実に両歯面の切削量のバランスを取ることができ、加工精度をさらに向上することができる。
【0042】
再度の仕上げ加工の後、シェービングカッタ10とシェービング加工の終了した被削歯車20とを、送り方向と反対方向に早送りで移動させて離間させる(区間l−m)。これにより、シェービングカッタ10と被削歯車20との軸間距離を原点位置となる切込み量0の位置まで復帰させ、一連のシェービング加工サイクルを終了する(位置m)。
なお、本実施形態では、本発明に係る歯車のシェービング加工方法を、ディファレンシャルセレーションを有するシェービングカッタ10を用いるプランジ加工に適用する場合を例に説明したが、これに限定せず、例えば、コンベンショナルシェービング加工等のようなトラバース加工にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る切込み量の時間変化のグラフを示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るシェービングカッタと被削歯車との関係を示す図。
【図3】切込み動作における切込み量を説明するためのシェービングカッタと被削歯車との噛合状態を示す部分拡大図。
【符号の説明】
【0044】
10 シェービングカッタ(工具)
11 回転軸
12 カッタ歯
20 被削歯車
21 回転軸
22 歯
23a 前側歯面(歯面)
23b 後側歯面(歯面)
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2008−49427(P2008−49427A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227098(P2006−227098)