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【発明の名称】 歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置
【発明者】 【氏名】上井 智聡

【要約】 【課題】高精度を確保しつつシェービングカッタの異常摩耗や面粗さがなく安定したシェービング加工が得られる歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置を提供する。

【構成】ワーク把持部3に支持された被削歯車Wとシェービングカッタ支持部に支持されたシェービングカッタ7と噛み合わせ、被削歯車Wの歯面をシェービング加工する歯車の仕上げ加工装置1であって、シェービング加工時に、被削歯車W及びシェービングカッタ7の少なくとも一方に振動を付与する振動発生体6を備える。シェービング加工時のシェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度が減少し、シェービングカッタ7の異常摩耗や被削歯車Wの歯面の面粗さが抑制されて安定したシェービング加工が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車形状で歯面にセレーション溝を施して切刃を形成したシェービングカッタと被削歯車とを互いの軸が所定の軸交差角をもった状態で噛み合わせ、該シェービングカッタ及び被削歯車が共に回転しつつ上記各軸が相対的に接近する方向に切り込み送りを行い、上記シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面との相対すべりにより被削歯車の歯面をシェービング加工する歯車の仕上げ加工方法において、
上記シェービング加工時に、上記被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与することを特徴とする歯車の仕上げ加工方法。
【請求項2】
被削歯車を回転自在に支持するワーク把持部と、歯車形状で歯面にセレーション溝を施して切刃を形成したシェービングカッタを回転自在に支持するシェービングカッタ支持部を備え、上記ワーク把持部に支持された被削歯車とシェービングカッタ支持部に支持されたシェービングカッタとを互いの軸が所定の軸交差角をもった状態で噛み合わせ、該シェービングカッタ及び被削歯車が共に回転しつつ上記各軸が相対的に接近する方向に切り込み送りを行い、上記シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面との相対すべりにより被削歯車の歯面をシェービング加工する歯車の仕上げ加工装置において、
上記シェービング加工時に、上記被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与する振動付与手段を備えたことを特徴とする歯車の仕上げ加工装置。
【請求項3】
上記振動付与手段は、上記ワーク把持部に配設された振動発生体であることを特徴とする請求項2に記載の歯車の仕上げ加工装置。
【請求項4】
上記振動付与手段は、上記シェービングカッタ支持部に配設された振動発生体であることを特徴とする請求項2に記載の歯車の仕上げ加工装置。
【請求項5】
上記振動付与手段は、上記シェービングカッタに配設された振動発生体であることを特徴とする請求項2に記載の歯車の仕上げ加工装置。
【請求項6】
上記振動発生体は、圧電振動子であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の歯車仕上げ加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置に関し、特に歯車にシェービング加工を施す歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のトランスミッションに使用される歯車は、素材をボブ切り加工やピニオン切り加工によって形成された被削歯車に、更に仕上げ加工を施した高い精度の歯車を採用して、低振動化、低騒音化、低燃費化のニーズに応える必要がある。
【0003】
この被削歯車の仕上げ加工としては、歯車形状の歯面に多くのセレーション溝を施して切刃を形成したシェービングカッタが使用され、シェービングカッタの軸と被削歯車の軸が所定の軸交差角となるように設定した後に、シェービングカッタと被削歯車を噛み合わせ、その噛み合った状態を維持してシェービングカッタの回転駆動により被削歯車を従動回転、即ち連れ回りした状態でシェービングカッタを被削歯車の径方向に切り込み送りを行うことによって、シェービングカッタの切刃と被削歯車の歯面との間に歯すじ方向の相対すべりを発生させて被削歯車の歯面を微細に削ぎとり被削歯車を高精度に加工するシェービング加工が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即ち、図6に模式的に示すように、互いの軸aと軸bが所定の軸交差角に設定された被削歯車Wとシェービングカッタ101を噛み合わせしてシェービングカッタ101を回転することによって、図7(a)のように被削歯車Wの歯面Waとシェービングカッタ101の歯面102にセレーション103によって形成された切刃104が接近し、更に、図7(b)のように被削歯車Wの歯面Waとシェービングカッタ101の歯面102が接触し、被削歯車Wの歯面Wa上をシェービングカッタ101の歯面102がすべることによって切刃104によって被削歯車Wの歯面Waを微小量切削して図7(c)に示すように被削歯車Wの歯面Waからシェービングカッタ101の歯面102が離れる。これが繰り返されて歯面Waがシェービング加工されて被削歯車Wの歯面Waの面粗さが向上する。
【0005】
一方、歯車の仕上げ加工において、シェービングカッタの切刃が被削歯車に切り込まずにすべりが発生して工具摩擦や歯面に面粗さを誘発することが懸念されことから、被削歯車に切削油を供給してシェービングカッタの工具摩擦や被削歯車の面粗さの向上を図ることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−099437号公報
【特許文献2】特開平11−090732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シェービング加工を施す被削歯車は、通常、焼き入れ前の硬度HB150〜HB300前後の合金鋼や炭素鋼等の比較的硬度を有しない鋼である。シェービング加工は、互いに噛み合うシェービングカッタまたは被削歯車のいずれか一方を回転駆動し、或いはシェービングカッタと被削歯車を共に同期して回転駆動させて行うが、切削の際の切刃の切削速度は、例えば噛合いピッチ円付近で30m/min前後で行われる。これ以上の切削速度では、切削抵抗により被削歯車とシェービングカッタが噛み合う歯部に弾性変形が発生することや、被削歯車の歯先や歯元側の取り代がシェービングカッタとの噛合いピッチ円付近の取り代と異なることに起因して、シェービングカッタに異常摩耗が発生する一方、切削速度が低速になると良好な切削が行われず、被削歯車の加工精度が低下する。
【0008】
また、被削歯車が焼入れ鋼、例えば硬度HRC50〜HRC65の場合には、一般に超硬合金のシェービングカッタが使用されるが、その切削速度は40m/min〜100m/minでなければ安定したシェービング加工が得られない。更に、切削抵抗が増加するため、被削歯車やシェービングカッタに弾性変形が発生して良好な加工精度が得られないこと懸念される。このため、焼き入れ後の被削歯車にあっては、歯車研削やギヤホーニング等の通常研削により仕上げ加工を行うのが主流であり、その設備が非常に高価であり、かつ砥石で加工することから加工時間が長く多くのコストを要していた。
【0009】
ここで、発明者は鋭意研究の結果、シェービング加工におけるシェービングカッタの切刃の切り込み最大深さは、通常約0.003μm程度で行われることから、シェービングカッタの切刃が被削歯車に切り込まずにすべりが発生して工具摩擦や被削歯車の面粗さを招くことがある点に着目し、切削抵抗を大幅に低減させることにより、工具摩耗の進行が抑制されて安定したシェービング加工が可能になることを見出した。
【0010】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、焼入れを有しない或いは焼入れを施した鋼の被削歯車において、高精度を確保しつつシェービングカッタの異常摩耗や面粗さがなく安定したシェービング加工が得られる歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1に記載の歯車の仕上げ加工方法の発明は、歯車形状で歯面にセレーション溝を施して切刃を形成したシェービングカッタと被削歯車とを互いの軸が所定の軸交差角をもった状態で噛み合わせ、該シェービングカッタ及び被削歯車が共に回転しつつ上記各軸が相対的に接近する方向に切り込み送りを行い、上記シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面との相対すべりにより被削歯車の歯面をシェービング加工する歯車の仕上げ加工方法において、上記シェービング加工時に、上記被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与することを特徴とする。
【0012】
この発明によると、シェービング加工時に、被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与することにより、脈動的に切削速度が上昇して切削抵抗が減少する。この切削抵抗の減少によりシェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面とのすべり頻度が減少すると共に、切削時の歯先温度が低下してシェービングカッタの異常摩耗や被削歯車の歯面の面粗さが抑制されて安定したシェービング加工が可能になる。
【0013】
また、シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面とのすべり頻度の減少により被削歯車の歯面の残留応力が減少して、被削歯車の変形量が少なくなり加工精度が向上する。
【0014】
上記目的を達成する請求項2に記載の歯車の仕上げ加工装置の発明は、被削歯車を回転自在に支持するワーク把持部と、歯車形状で歯面にセレーション溝を施して切刃を形成したシェービングカッタを回転自在に支持するシェービングカッタ支持部を備え、上記ワーク把持部に支持された被削歯車とシェービングカッタ支持部に支持されたシェービングカッタとを互いの各軸が所定の軸交差角をもった状態で噛み合わせ、該シェービングカッタ及び被削歯車が共に回転しつつ上記各軸が相対的に接近する方向に切り込み送りを行い、上記シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面との相対すべりにより被削歯車の歯面をシェービング加工する歯車の仕上げ加工装置において、上記シェービング加工時に、上記被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与する振動付与手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、シェービング加工時に、振動付与手段により被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与することから、脈動的に切削速度が上昇して切削抵抗が減少する。この切削抵抗の減少によりシェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面とのすべり頻度が減少すると共に、切削時の歯先温度が低下してシェービングカッタの異常摩耗や被削歯車の歯面の面粗さが抑制されて安定したシェービング加工が可能になる。
【0016】
また、シェービングカッタの歯面と被削歯車の歯面とのすべり頻度の減少により被削歯車の残留応力が減少して被削歯車の変形量が少なくなり加工精度が向上する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2の歯車の仕上げ加工装置において、上記振動付与手段は、上記ワーク把持部に配設された振動発生体であることを特徴とする。この発明によると、被削歯車を支持するワーク把持部に振動発生体を配設することにより、シェービング加工時において被削歯車に振動を付与することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2の歯車の仕上げ加工装置において、上記振動付与手段は、上記シェービングカッタ支持部に配設された振動発生体であることを特徴とする。この発明によると、シェービングカッタを支持するシェービングカッタ支持部に振動発生体を配設することにより、シェービング加工時においてシェービングカッタに振動を付与することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項2の歯車の仕上げ加工装置において、上記振動付与手段は、上記シェービングカッタに配設された振動発生体であることを特徴とする。この発明によると、シェービングカッタに振動発生体を配設することにより、シェービング加工時においてシェービングカッタに振動を付与することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項の歯車仕上げ加工装置において、上記振動発生体は、圧電振動子であることを特徴とする。この発明によると、圧電振動子により振動発生体を形成することによって振動発生体をコンパクトかつ容易に形成できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によると、シェービング加工時に、被削歯車及びシェービングカッタの少なくとも一方に振動を付与することにより、切削抵抗が減少してシェービングカッタの摩耗の進行が抑制され、シェービングカッタの異常摩耗や被削歯車の歯面の面粗さが抑制されて安定したシェービング加工が可能になる。また、被削歯車の歯面の残留応力が減少して、被削歯車の変形量、特に熱処理後の変形量が少なくなり被削歯車の加工精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る歯車の仕上げ加工方法及び仕上げ加工装置の実施の形態を図1乃至図5を参照して説明する。
【0023】
図1は、歯車の仕上げ加工装置1の概要を模式的に示す図である。仕上げ加工装置1は、図示しないベッド上にスライダを介してテーブル2が設けられており、テーブル2上にボブ切り加工やピニオン切り加工によって歯切りされた被削歯車Wを回転自在に支持する支持台4及びテールストック5を備えたワーク把持部3が設けられている。このワーク把持部3に被削歯車Wをその軸aの延在方向に予め設定された振動数及び振幅の振動を付与する振動付与手段、例えばピエゾ素子、即ち圧電振動子によって構成されたコンパクトで比較的簡単な構成の振動発生体6が配設されている。
【0024】
一方、テーブル2の上方に図示しないシェービングカッタ支持部が設けられており、このシェービングカッタ支持部にはシェービングカッタ7が回転自在に支持されている。シェービングカッタ7は、図示しない主軸モータの回転によって回転駆動される。また、シェービングカッタ7は、モータによってシェービングカッタ支持部と共に水平方向に旋回され、かつ上下方向に移動される。
【0025】
この仕上げ加工装置1によって被削歯車Wにシェービング加工を行う場合は、シェービングカッタ7を旋回させてシェービングカッタ7の軸方向、即ちシェービングカッタ軸bが被削歯車7の軸aに対して所定の軸交差角となるように設定する。
【0026】
しかる後、シェービングカッタ7を回転駆動すると共に、振動発生体6によりワーク把持部3を介して被削歯車Wにその軸aの延在方向の予め設定された振動数及び振幅の微細な振動を付与する。
【0027】
そして、回転駆動するシェービングカッタ7を下降させて被削歯車Wに噛み合わせる。シェービングカッタ7が被削歯車Wに噛み合うと、シェービングカッタ7の回転駆動により被削歯車Wが従動回転、いわゆる連れ回りする。この状態で、更にシェービングカッタ7を下降してシェービングカッタ7の軸bと被切削歯車Wの軸aとが相対的に接近する被削歯車Wの径方向に切り込み送りして被削歯車Wの歯面をシェービング加工する。即ち、シェービング加工時は振動発生体6により被削歯車Wに予め設定された軸a方向の振動数及び振幅の微細な振動が付与された状態で、シェービングカッタ7の歯面に刻まれたセレーション溝と歯面との境界が切刃となり、被削歯車Wの歯すじ方向に生じるすべりによって歯面を微細に削り取る。
【0028】
このシェービング加工時に、被削歯車Wに振動を付与することにより、シェービングカッタ7の切刃による切削速度が脈動的に上昇し、切削抵抗が減少する。この切削抵抗の減少によりシェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度が減少すると共に、切削時の歯先温度が低下してシェービングカッタ7の摩耗の進行が抑制されてシェービングカッタ7の異常摩耗や被削歯車Wの歯面の面粗さが抑制されて安定したシェービング加工が可能になる。
【0029】
また、シェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度の減少により被削歯車Wの歯面の残留応力が減少し、残留応力の減少に伴って被削歯車Wの変形量が少なくなり加工精度が向上する。
【0030】
予め設定された時間、シェービング加工が施されると、シェービングカッタ7を上昇させて被削歯車Wから退避させ、シェービングカッタ7の回転を停止すると共に、振動発生体6によるワーク把持部3への振動付与を停止する。
【実施例1】
【0031】
図2の(a)に示す被削歯車W及びシェービングカッタ7の諸元及び(b)の加工条件、(c)の振動条件を備えた本実施例の方法と、図2の(a)に示す被削歯車W及びシェービングカッタ7の諸元及び(b)の加工条件を備え、(c)の振動を付与しない従来の方法においてそれぞれ被削歯車Wにシェービング加工を施した際のシェービングカッタ7の寿命を計測した。
【0032】
即ち、図2(a)に諸元を示すモジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角30°、歯数60の被削歯車Wに、図2(a)に諸元を示すモジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角15°、歯数113のシェービングカッタ7を用いて、図2(b)に示すシェービングカッタ7の回転数160rpm、軸交差角15°、送り速度0.5mm/minでウエットすなわち切削油を供給する加工条件で、ワーク把持部3に振動を付与しない従来の方法と、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動の付与した本実施例の方法により被削歯車Wにシェービング加工を施し、被削歯車歯形誤差変化量が5μmに達したときをシェービングカッタ7の工具寿命とし、この工具寿命に達するまでの加工個数を計測した。
【0033】
この結果を図3のグラフ「振動有無でのシェービングカッタ寿命」に示す。図3に示すように、振動を付与しない従来の加工方法では、約5000個の被削歯車Wにシェービング加工を施すと被削歯車歯形誤差変化量が5μmとなりシェービングカッタ7の工具寿命に達したが、ワーク把持部3に振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法によると、約9000個の被削歯車Wに対してシェービング加工を施すことが可能になり、シェービングカッタ7の工具寿命を大幅に延ばし得ることが確認できる。
【0034】
換言すると、被削歯車Wに振動を付与することにより、脈動的に切削速度が上昇して切削抵抗が減少し、この切削抵抗の減少によりシェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度が減少すると共に、切削時の歯先温度が低下してシェービングカッタ7の摩耗の進行が抑制されることが確認できる。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様に、図2の(a)に示す被削歯車W及びシェービングカッタ7の諸元及び(b)の加工条件、(c)の振動条件を備えた本実施例の方法と、図2の(a)に示す被削歯車W及びシェービングカッタ7の諸元及び(b)の加工条件を備え、(c)の振動を付与しない従来の方法においてそれぞれ被削歯車Wにシェービング加工を施し、その後、被削歯車Wに焼き入れを施した熱処理後の変形量を計測した。
【0036】
即ち、モジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角30°、歯数60の被削歯車Wに、モジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角15°、歯数113のシェービングカッタ7を用い、シェービングカッタ7の回転数160rpm、軸交差角15°送り速度0.5mm/minでウエットすなわち切削油を供給する加工条件で、被削歯車Wに方向の振動を付与しない従来の方法と、ワーク把持部3に振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法によりワークWにシェービング加工を施し、これらの被削歯車Wに焼き入れを施し、その熱処理後の各被削歯車の歯形方向の変形量を計測した。
【0037】
この結果を図4のグラフ「熱処理変形量」に示す。図4により振動を付与しない従来のシェービング加工方法では、熱処理によって歯形方向に約9μmの変形量が生じた。一方、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法によると、熱処理による歯形方向の変形量が約6μmであり、焼き入れに伴う変形量が大幅に低減したことが確認できる。
【0038】
換言すると、被削歯車Wに振動を付与することにより、脈動的に切削速度が上昇してシェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度が減少し、このシェービングカッタ7の歯面と被削歯車Wの歯面とのすべり頻度の減少により被削歯車Wの歯面の残留応力が減少し、この残留応力の減少に伴って被削歯車Wの変形量が少なくなり加工精度が向上することが確認できる。
【実施例3】
【0039】
図2(a)に示す諸元の被削歯車Wに焼き入れを施した硬度HRC60の被削歯車Wに、図2(a)に示す諸元で超硬合金のカッタ材からなり表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタWと、高速度工具鋼のカッタ材からなり表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタWの2種類のシェービングカッタWにより、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法と、振動を付与しない従来の方法においてそれぞれ被削歯車Wにシェービング加工を施した際の、それぞれのシェービングカッタ寿命を計測した。
【0040】
即ち、モジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角30°、歯数60の被削歯車Wに、モジュール1.5、圧力角14.5°、捩れ角15°、歯数113の超硬合金のカッタ材の表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタ7と、高速度工具鋼のカッタ材の表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタ7を用い、各シェービングカッタ7の回転数160rpm、軸交差角15°、送り速度0.5mm/minでウエットすなわち切削油を供給する加工条件で、被削歯車Wに振動を付与しない従来の方法と、ワーク把持部3に振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法により被削歯車Wにシェービング加工を施し、被削歯車歯形誤差変化量が5μmに達したときをシェービングカッタ7の工具寿命とし、この工具寿命に達するまでの被削歯車の加工個数を計測した。
【0041】
この結果を、図5のグラフ「振動有無でのシェービングカッタ寿命(焼き入れワーク)」に示す。
【0042】
図5に示すように、超硬合金のカッタ材の表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタ7による振動を付与しない従来のシェービング加工方法では、シェービング加工に伴い歯部の逃げ面に硬質皮膜の剥がれが発生して異常摩耗が進行し、約650個の被削歯車Wにシェービング加工を施すと被削歯車歯形誤差変化量が5μmとなりシェービングカッタ7の工具寿命に達した。一方、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法によると、約3100個のワークWに対してシェービング加工を施すことが可能になり、シェービングカッタ7の工具寿命を大幅に延ばし得ることが確認できる。
【0043】
同様に、高速度工具鋼のカッタ材の表面に高硬度被膜を施したシェービングカッタ7による振動を付与しない従来の方法では、シェービング加工に伴い歯部の切刃エッジより硬質皮膜の剥がれが発生して異常摩耗が進行し、約100個のワークWにシェービング加工を施すとシェービングカッタ7のワーク歯形誤差変化量が5μmとなりシェービングカッタ7の工具寿命に達したが、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与した本実施例の方法によると、約450個の被削歯車Wに対してシェービング加工を施すことが可能になり、シェービングカッタの工具寿命を大幅に延ばし得ることが確認できる。
【0044】
即ち、焼き入れを施した硬度HRC60のワークWを超硬合金のカッタ材と高速度工具鋼のカッタ材からなり表面に高硬度被膜を施した2種のシェービングカッタ7によりシェービング加工を施す場合においても、ワーク把持部3に、振動数60kHzで振幅5μmの振動を付与する本実施例においてシェービングカッタ7の工具寿命を大幅延ばし得ることが確認でき、シェービング加工により効率的に歯車の仕上げ加工が達成できる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では振動発生体6をワーク把持部3に配設したが、ワーク把持部3に代えてシェービングカッタ7を支持するシェービングカッタ支持部或いはシェービングカッタ7に配設してシェービングカッタ7に振動を付与することもできる。また、ワーク把持部3に振動発生体6を配設して被削歯車Wに振動を付与する共に更にシェービングカッタ支持部或いはシェービングカッタ7に配設してシェービングカッタ7にも振動を付与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態に係る歯車の仕上げ加工装置の概要を模式的に示す図である。
【図2】実施例における被削歯車及びシェービングカッタの諸元及び加工条件等を示す図であり、(a)は被削歯車及びシェービングカッタの諸元、(b)は加工条件、(c)は振動条件を示す。
【図3】実施例に係る「振動有無でのシェービングカッタ寿命」のグラフである。
【図4】実施例に係る「熱処理変形量」のグラフである。
【図5】実施の形態に係る「振動有無でのシェービングカッタ寿命(焼き入れ被削歯車)」のグラフである。
【図6】従来の仕上げ装置の要部概要を示す模式的に示す図である。
【図7】従来の要部概要を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 仕上げ加工装置
2 テーブル
3 ワーク把持部
4 支持台
5 テールストック
6 振動発生体(振動付与手段)
7 シェービングカッタ
W 被削歯車
a 被削歯車の軸
b シェービングカッタの軸
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明


【公開番号】 特開2008−18492(P2008−18492A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191681(P2006−191681)