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【発明の名称】 サイドトリミング装置
【発明者】 【氏名】須崎 健太郎

【要約】 【課題】鋼板の板厚が変化した場合でも、鋼板を適切に拘束することができ、効率的で良好なサイドトリミングを可能とするサイドトリミング装置を提供する。

【構成】上部板押えリング13が、硬質ゴム製の外殻と、外殻23と上刃11の回転軸21との間に設けられ、内部に流体(例えば、油)が封入されて径方向に伸縮可能な収縮部22と、収縮部22に配管26を介して連通している2台のアキュムレータ24、25とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の幅端部に配置されて上下一対で回転する円盤状の上刃および下刃と、上刃の鋼板幅中央部側の側面に密着して上刃の回転軸に装着された上部板押えリングと、下刃の鋼板幅中央部側の側面に密着して下刃の回転軸に装着された下部板押えリングとを備えたサイドトリミング装置において、
上部板押えリングは、鋼板に当接する外殻と、該外殻と上刃の回転軸の間に設けられ、内部に流体が封入されて径方向に伸縮可能な収縮部と、該収縮部に連通したアキュムレータを有していることを特徴とするサイドトリミング装置。
【請求項2】
保持圧力の異なる複数のアキュムレータを有し、使用するアキュムレータを選択できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のサイドトリミング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、酸洗ライン等の鋼板の製造ラインにおいて用いられるサイドトリミング装置(サイドトリマ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸洗ライン等の鋼板の製造ラインにおいては、鋼板の板幅を揃えるために、鋼板の両幅端部をサイドトリミング装置によって剪断加工(トリミング)する。
【0003】
図5、図6は、従来、一般的に用いられているサイドトリミング装置を示すものであり、図5は斜視図、図6は正面図である。
【0004】
図5、図6に示すように、従来のサイドトリミング装置50は、鋼板1の幅端部に配置されて上下一対で回転する円盤状の上刃51および下刃52と、上刃51の鋼板幅中央部側の側面に密着して上刃51の回転軸(図示せず)に装着された上部板押えリング53と、下刃52の鋼板幅中央部側の側面に密着して下刃52の回転軸(図示せず)に装着された下部板押えリング54とを備えている。
【0005】
そして、上部板押えリング53と下部板押えリング54がそれぞれ上刃51と下刃52を側方から押えて刃の振れを防止するとともに、上部板押えリング53と下部板押えリング54で鋼板1を拘束して鋼板1の反りを抑止しながら、上刃51と下刃52で鋼板1の両幅端部をトリミングするようになっている。
【0006】
その際に、上部板押えリング53および下部板押えリング54には一般に硬質ゴム製のリングが用いられており、下部板押えリング54は下刃12の径とほぼ同じ径を有しているのに対して、上部板押えリング53は上刃11の径より小さな径を有しており、鋼板1の板厚に合わせて適切な径のものを選定するようになっている。
【0007】
すなわち、例えば、板厚が1.2mm〜6.5mmの製造範囲のラインであれば、その板厚範囲を2、3分割した板厚にて、径の異なる上部板押えリングに交換している(例えば、板厚2.8mmの前後と、4.0mmの前後で交換)。
【0008】
これは、例えば、最小径の上部板押えリング(最大板厚の鋼板に対応)を用いて操業していて徐々に鋼板の板厚が小さくなった時に、最小径の上部板押えリングをそのまま用いていると、鋼板と上部板押えリングの間隔が徐々に大きくなり、最終的には鋼板を拘束することができずに、トリミング不良を発生させてしまうことになるからである。
【0009】
これに対して、特許文献1には、板押えリングとして弾性質のリングを用い、弾性質リングの弾性変形(圧縮変形)によって、鋼板1に押付け力を加えて拘束するようにしたものが示されている。これにより、鋼板1の板厚が変更になった場合でも、板押えリングを交換することなく、常に鋼板1に押付け力を加えて拘束できるようにしている。
【特許文献1】特開2003−251518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のように、上部板押えリングとして硬質ゴム製リングを用い、鋼板1の板厚に合わせて、径の異なる上部板押えリングに交換する方法では、上部板押えリングを交換する毎にラインを停止することとなり、生産能率が低下してしまう。
【0011】
また、特許文献1に記載のように、板押えリングとして弾性質のリングを用い、弾性質リングの弾性変形によって、鋼板1に押付け力を加えて拘束する方法では、鋼板1の板厚や鋼種によっては、押付け力が過大になって、カッターマーク等の表面疵が発生したり、逆に、押付け力が不足して、トリミングが不安定になったりするという問題がある。なぜならば、弾性質リングの押付け力は、弾性質リングの弾性変形量(圧縮変形量)に比例するので、鋼板1の板厚が厚い場合には、圧縮変形量が大きくなって押付け力が増大し、鋼板1の板厚が薄い場合には、圧縮変形量が小さくなって押付け力が低減することとなり、広い板厚範囲(例えば、1.2mm〜6.5mm)に渡って、常に適切な押付け力を加えることは困難であるからである。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼板の板厚が変化した場合でも、鋼板を適切に拘束することができ、効率的で良好なサイドトリミングを可能とするサイドトリミング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0014】
[1]鋼板の幅端部に配置されて上下一対で回転する円盤状の上刃および下刃と、上刃の鋼板幅中央部側の側面に密着して上刃の回転軸に装着された上部板押えリングと、下刃の鋼板幅中央部側の側面に密着して下刃の回転軸に装着された下部板押えリングとを備えたサイドトリミング装置において、
上部板押えリングは、鋼板に当接する外殻と、該外殻と上刃の回転軸の間に設けられ、内部に流体が封入されて径方向に伸縮可能な収縮部と、該収縮部に連通したアキュムレータを有していることを特徴とするサイドトリミング装置。
【0015】
[2]保持圧力の異なる複数のアキュムレータを有し、使用するアキュムレータを選択できるようになっていることを特徴とする前記[1]に記載のサイドトリミング装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、鋼板の板厚が変化した場合でも、板押えリングの収縮部に封入されている流体とアキュムレータの働きによって、鋼板を常に適切な押付け力で拘束することができ、効率的で良好なサイドトリミングを行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の係るサイドトリミング装置の斜視図であり、図2は、その正面図である。
【0019】
図1、図2に示すように、この実施形態に係るサイドトリミング装置10は、鋼板1の幅端部に配置されて上下一対で回転する円盤状の上刃11および下刃12と、上刃11の回転軸(図示せず)に装着され、上刃11の鋼板幅中央部側に位置する上部板押えリング13と、下刃12の回転軸(図示せず)に装着され、下刃12の鋼板幅中央部側に位置する下部板押えリング14とを備えている。なお、ここでは、上刃11と下刃12の内、上刃11の方が鋼板幅方向外側に位置している。
【0020】
そして、この実施形態においては、図3(a)に横断面図、図3(b)に図3(a)のA−A矢視図を示すように、上部板押えリング13は、硬質ゴム製の外殻23と、外殻23と上刃11の回転軸21との間に設けられ、内部に流体(例えば、油)が封入されて径方向に伸縮可能な収縮部22と、収縮部22に配管26を介して連通している2台のアキュムレータ(保持圧力が低い低圧アキュムレータ24と、保持圧力が高い高圧アキュムレータ25)とを有している。ここで、硬質ゴム製の外殻23の径は、上刃11とほぼ同じ径となっている。ただし、上刃11よりも径が小さい場合には、上刃11との半径差が鋼板1の最小板厚よりも小さくなるようにする必要がある。また、上刃11は再研磨して何度も使用されるため、上刃11の径が硬質ゴム製の外殻23よりも小さくなる場合もある。
【0021】
また、低圧アキュムレータ24と高圧アキュムレータ25は、鋼板の材質等を考慮して、適宜選択して用いることができるようになっている。
【0022】
上記のように構成されたサイドトリミング装置においては、上部板押えリング13と下部板押えリング14がそれぞれ上刃11と下刃12を側方から押えて刃の振れを防止するとともに、上部板押えリング13と下部板押えリング14で鋼板1を拘束して鋼板1の反りやバタツキを抑止しながら、上刃11と下刃12で鋼板1の両幅端部をトリミングするようになっている。
【0023】
その際に、上部板押えリング13は、鋼板1の通過に伴って、その下端部が鋼板1に当接するようになり、鋼板1から上方へ押し上げる力を受け、それによって、伸縮部22の底部にあった流体が移動して、伸縮部22の底部が径方向に収縮する。そして、この流体の移動に基づく低圧アキュムレータ24または高圧アキュムレータ25の働きによって、鋼板1からの押し上げ力に対抗する反力が一定となり、したがって上部板押えリング13から鋼板1に作用する押付け力も一定値となる。
【0024】
すなわち、上記のようにして生じる鋼板1への押付け力は、流体の移動による伸縮部22の径方向への収縮とアキュムレータ24、25の働きに基づく流体力学的な力であるので、特許文献1に記載の弾性質リングのような弾性力学的な力の場合と異なり、鋼板1の板厚が変化した場合(すなわち、上部板押えリングの収縮量が変化した場合)でも、一定の押付け力で鋼板1を拘束することができる。
【0025】
ちなみに、図4は、鋼板の板厚(すなわち、上部板押えリングの径が上刃と同じ場合には上部板押えリングの収縮量に等しい)と押付け力(押付け圧)の関係について、この実施形態の上部板押えリング(液体封入リング)の場合と、特許文献1に記載の弾性質リングの場合で比較したものである。弾性質リングの場合は、鋼板の板厚が変化すると、押付け力(押付け圧)が変化するのに対して、この実施形態の上部板押えリング(液体封入リング)の場合は、鋼板の板厚が変化しても、常に一定の押付け力(押付け圧)である。そして、その際に、保持圧力が異なるアキュムレータを選択して用いることによって、押付け力の大きさを変更できることを示している。
【0026】
このようにして、この実施形態においては、鋼板1の板厚が変化した場合でも、上部板押えリング13の伸縮部22に封入された流体とアキュムレータ24、25の働きによって、上部板押えリング13の交換をすることなく、鋼板1を常に一定の押付け力で拘束することができる。これによって、効率的で良好なサイドトリミングを行うことが可能である。
【0027】
なお、上記の実施形態においては、保持圧力が異なる2台のアキュムレータ24、25を選択して用いるようにしているが、1台でもかまわない。その場合であっても、押付け力を一定にするという本発明の効果が得られる。ただし、保持圧力が異なる2台のアキュムレータを備えることにより、鋼板の材質等に応じて、低圧アキュムレータ24と高圧アキュムレータ25を切り換えて、カッターマーク等の発生を回避する適切な押付け力に設定することができるので、好ましい。保持圧力が異なる3台以上のアキュムレータを選択して用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0028】
本発明の実施例として、熱延鋼板の酸洗ラインにおいて、上記の一実施形態に係るサイドトリミング装置10を用いてサイドトリミングを行った。なお、その際の条件は以下の通りである。
(a)上刃外径:400.0mm、上部板押えリング外径:397.6mm
(b)対象板厚:1.2〜6.5mm
(c)アキュムレータ圧:高圧用・・・700kgf、低圧用・・・500kgf
(d)アキュムレータの切換条件:鋼板の強度が45MPa未満の場合は低圧アキュムレータを使用、鋼板の強度が45MPa以上の場合は高圧アキュムレータを使用
その結果、板厚変更の際の上部板押えリング13の交換によるライン停止が不要となるとともに、鋼板を常に適切な押付け力で拘束することができ、カッターマークやトリミング不安定等の発生が抑止されて、良好なサイドトリミングを実施することができた。
【0029】
これにより、従来のサイドトリマ装置50を用いてサイドトリミングを行った場合に比べて、約1%の稼働率の向上を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るサイドトリミング装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサイドトリミング装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態における上部板押えリングの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態における上部板押えリングの効果を示した図である。
【図5】従来のサイドトリミング装置の斜視図である。
【図6】従来のサイドトリミング装置の正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 鋼板
10 サイドトリミング装置
11 上刃
12 下刃
13 上部板押えリング
14 下部板押えリング
21 回転軸
22 伸縮部
23 外殻
24 低圧アキュムレータ
25 高圧アキュムレータ
26 配管
50 サイドトリミング装置
51 上刃
52 下刃
53 上部板押えリング
54 下部板押えリング
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【出願日】 平成18年9月14日(2006.9.14)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎

【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘


【公開番号】 特開2008−68361(P2008−68361A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−249013(P2006−249013)