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【発明の名称】 切断工具
【発明者】 【氏名】森 正章

【要約】 【課題】ハンドルの最大操作角度を小さくし、しかも切断時には倍力機構により軽快に切断することができる作業性の良い切断工具を提供する。

【構成】一方のハンドル10の先端に、外周面の一部に第1ギヤ1dが形成された固定刃1を固定するとともに可動刃2を第1軸20により軸支し、この可動刃2から突設した腕部2cの先端に他方のハンドル3を第2軸21により軸支し、この他方のハンドル3に設けた第2ギヤ3dを第1ギヤ1dとかみ合わせながら閉じることによって可動刃2を回転させ、円形断面の材料を切断する形式の切断工具である。本発明ではこれらの第1ギヤ1dと第2ギヤ3dは、ハンドル3が所定角度まで閉じたときには相互にかみ合うが、ハンドル3が所定角度以上であるときにはかみ合わず、第2ギヤ3dが固定刃1の外周面に沿ってスライドできる構造とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のハンドルの先端に、外周面の一部に第1ギヤが形成された固定刃を固定するとともに可動刃を第1軸により軸支し、この可動刃から突設した腕部の先端に他方のハンドルを第2軸により軸支し、この他方のハンドルに設けた第2ギヤを前記第1ギヤとかみ合わせながら閉じることによって可動刃を回転させて材料を切断する形式の切断工具において、これらの第1ギヤと第2ギヤは、ハンドルが所定角度まで閉じたときには相互にかみ合うが、ハンドルが所定角度以上であるときにはかみ合わず、第2ギヤが固定刃の外周面に沿ってスライドする形状としたことを特徴とする切断工具。
【請求項2】
固定刃の第1ギヤに隣接する部分に第1軸を中心とする円弧状の滑動部を設け、他方のハンドルの第2ギヤに隣接する部分に滑動突起を突設し、他方のハンドルが所定角度以上であるときには、前記滑動突起が前記滑動部に当接しながら滑動して、ハンドルの第2軸を中心とする回動を抑止し、ハンドルが第1軸を中心に回動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項3】
固定刃と可動刃には、それぞれ凹状の切断刃を相対向させて形成したことを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ式の倍力機構を利用して少ない操作力で、ワイヤー、ケーブル、棒材、管材、略C字断面の部材、略コの字断面の部材などの材料を切断できる切断工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用ワイヤーのような太いワイヤーロープ等を切断するためには、従来から特許文献1や特許文献2に示されるような、ギヤ式の倍力機構を有した切断工具が使用されている。このギヤ式の倍力機構を有した切断工具は、一方のハンドルの先端に固定刃を固定するとともに可動刃を軸支し、この可動刃から突設した腕部の先端に他方のハンドルを軸支し、他方のハンドルを閉じる際にハンドルに設けたギヤを固定刃の第1ギヤとかみ合わせることによって可動刃を回転させる構造となっている。このため、少ない操作力で材料を切断することができる。
【0003】
このような切断工具では、例えば切断する材料がワイヤーなどの円形断面材料の場合その断面形状をできるだけ変形させないように切断刃の形状を凹状とする事が有効であり、また、C字断面やコの字断面の材料などでも、断面形状をできるだけ変形させないように受け側の形状を、材料の形状に合致させた凹状にすることが有効である。そのために刃の先端を材料の外形より大きく開いて、材料を切断刃に挿通し、材料を切断刃で噛合させる必要がある。このため切断開始までに遊びの区間があるが、従来品は倍力機構により遊びの区間を含めて切断刃の回転角度に対するハンドルの回転角度が大きく設定されている。このため、ハンドルの最大操作角度が大きくなってしまい、作業性が悪いという問題があった。
【特許文献1】特許第2947411号公報
【特許文献2】米国特許1689648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、ハンドルの最大操作角度を小さくし、しかも切断時には倍力機構により軽快に切断することができる作業性の良い切断工具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明は、一方のハンドルの先端に、外周面の一部に第1ギヤが形成された固定刃を固定するとともに可動刃を第1軸により軸支し、この可動刃から突設した腕部の先端に他方のハンドルを第2軸により軸支し、この他方のハンドルに設けた第2ギヤを前記第1ギヤとかみ合わせながら閉じることによって可動刃を回転させて材料を切断する形式の切断工具において、これらの第1ギヤと第2ギヤは、ハンドルが所定角度まで閉じたときには相互にかみ合うが、ハンドルが所定角度以上であるときにはかみ合わず、第2ギヤが固定刃の外周面に沿ってスライドする形状としたことを特徴とするものである。
【0006】
なお、固定刃の第1ギヤに隣接する部分に第1軸を中心とする円弧状の滑動部を設け、他方のハンドルの第2ギヤに隣接する部分に滑動突起を突設し、他方のハンドルが所定角度以上であるときには、前記滑動突起が前記滑動部に当接しながら滑動して、ハンドルの第2軸を中心とする回動を抑止し、ハンドルが第1軸を中心に回動するように構成することが好ましい。また固定刃と可動刃には、それぞれ凹状の切断刃を相対向させて形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の切断工具は、ハンドルの開き角度が所定角度以上であるときにはハンドルの第2ギヤが固定刃の外周面の第1ギヤとかみあわず、ハンドルが第1軸を中心に回動する。これにより第2軸は第1軸を中心に公転し、可動刃はハンドルの操作角度と同一角度で速やかに回転する。しかしハンドルが所定角度まで閉じたときにはハンドルの第2ギヤが固定刃の外周面の第1ギヤと相互にかみ合うため、第2軸はギヤのかみ合い点を中心としてゆっくりと回転することとなり、可動刃もハンドルの操作角度よりも小さい角度ずつゆっくり回転する。このため切断開始までは可動刃を早く閉じ、切断開始後は強力な切断が可能となる。またハンドルの最大操作角度を小さくし、作業性を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1から図3は本発明の実施形態を示す全体図であり、それぞれ切断終了時、切断開始時、開放時を示す。また図4は図2のA−A矢視図、図5が固定刃の単体図、図6は可動刃の単体図である。
【0009】
これらの図において、1は一方のハンドル10の先端に固定された板状の固定刃であり、軸穴1aを中心とする略半円形状をしている。固定刃1の軸穴1aから後方に向かってハンドル取付部1cを延設してあり、このハンドル取付部1cにハンドル10を取り付けてある。2は板状の可動刃であり、軸穴2aを中心とする略半円形状をしている。固定刃1及び可動刃2は、円弧部分を外側にして相互に重ね合わされて、軸穴1a及び軸穴2aを貫通する第1軸20により軸支されている。
【0010】
固定刃1及び可動刃2の軸穴1a、2aに隣接する位置から先端にかけて、相対向する凹状の刃部1b、2bがそれぞれ形成されている。実施形態では回動方向に凹陥した略V字形状にしてある。V字の谷底の部分は円弧状となっており、断面が円形のワイヤーなどの材料を断面形状を崩さずに切断できるようになっている。
【0011】
可動刃2は軸穴2aとは反対方向に突設された腕部2cを備えており、その先端部に軸穴2dが形成されている。
【0012】
3は他方のハンドルであり、板状のハンドル基部3a及び棒状のハンドル部3bから構成されている。ハンドル基部3aには、軸穴3cが形成されている。ハンドル基部3aの軸穴3c及び腕部2cの軸穴2dは第2軸21により軸着されて、ハンドル基部3aと固定刃1を、同一平面上になるように配設している。
【0013】
固定刃1の軸穴1aの後方の外縁には、第1ギヤ1dが円弧状に設けられている。この実施形態の第1ギヤ1dは、2つの歯底と1つの歯先から構成されている。このギヤ1dのピッチ円の中心は、第1軸20と同一にしてある。
【0014】
また、ハンドル基部材3aの固定刃1に対向する外縁には、第2ギヤ3dが設けられている。この第2ギヤ3dは、第1軸20と第2軸21の間で第1ギヤ1dと噛合している。第2ギヤ3dは円弧状に設けられ、1つの歯底と2つの歯先から構成され、第2ギヤ3dのピッチ円の中心は、第2軸21と同一にしてある。
【0015】
ハンドル基部材3aの軸穴3cの下方には、固定刃1と当接する突起3eが設けられ、この突起3eが固定刃1と当接して、ハンドル3の閉じる方向の回動を抑止している。突起3eと固定刃1が当接した閉状態では、相対向する刃部1b、2bは閉じた状態になっている。(図1の状態)
【0016】
4は略半円形状で板状のカバーであり、両端には軸穴4a、4bが形成されている。カバー4の軸穴4aと固定刃1の軸穴1aを軸着して、可動刃2の反対側から、カバー4を固定刃1に回転可能に軸着している。また、カバー4の軸穴4bとハンドル基部3aの軸穴3cを軸着して、カバー4をハンドル基部3aに回転可能に軸着している。このようにして、カバー4は、ハンドル3と固定刃1を第1軸20及び第2軸21で連結し、ハンドル3を開閉した際にハンドル3と可動刃2に偏った荷重が作用することを防止している。またカバー4はギヤが露出しないようにカバーし、安全性を高める役割も果たしている。
【0017】
固定刃1の第1ギヤ1dに隣接する部分には、滑動部1eが設けられている。この滑動部1eの外縁は、第1軸20を中心とする円弧形状にしてあり、第1軸20の軸方向と平行な滑らかな面で構成されている。滑動部1eの外縁は、第1ギヤ1dのピッチ円と同一若しくは殆ど等しい外径にしている。また、滑動部1eの外縁を、固定刃1の外縁より小さい外径にしているので、滑動部1eの第1ギヤ1dと反対側の端部には、段部1fが形成されている。一方、ハンドル基部3aの第2ギヤ3dに隣接する部分には、滑動突起3fが突設されている。
【0018】
次に、本発明の作用を説明する。
図1に示す閉状態から所定角度(本実施形態では120°)までは、第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合しているので、ハンドル3を開く方向に回動させると、ハンドル3は第1軸20を中心に公転しながら、第2軸21を中心に回動する。ハンドル3とハンドル10のなす角度が所定角度以上になった場合に、第1ギヤ1d及び第2ギヤ3dの噛合が外れ、図2の状態となる。この状態では滑動突起3fが滑動部1eに当接しながら滑動して、ハンドル3の第2軸20を中心とする回動を抑止して、ハンドル3は第1軸20を中心に回動する。
【0019】
更に、ハンドル3を開く方向に回動させると、滑動突起3fが段部1fに当接し、ハンドル3の開く方向の回動が抑止される。(図3の状態)
【0020】
このハンドルを全開にした状態で、切断しようとする材料を相対向する刃部1b、1bに挿通する。次に、ハンドル3を閉じる方向に回動させると、第2ギヤ3dの歯先が滑動部1eに当接し、ハンドル3の第2軸21を中心とする回動を抑止して、ハンドル3は第1軸20を中心に回動する。このため可動刃2はハンドル3とともに速やかに回転する。
【0021】
更にハンドル3を閉じる方向に回動させて、ハンドル3とハンドル10のなす角度が所定角度になると、図2のように第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合する。第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合する前後で、相対向する刃部1b、2bが、材料表面に達する。このようにして、切断開始前の材料と刃先との遊びfの距離を早送りすることができる。
【0022】
図2の状態から更にハンドル3を回動させると、第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合しながら可動刃2が回動し、刃部1b,2aが閉塞して材料が切断され、突起3eと固定刃1が当接した状態となるとハンドル3の回動が抑止され、刃部1b、2bが閉状態となり、材料の切断作業が完了する。
【0023】
次に、刃部1b、2bの切断荷重について説明する。第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合した状態において、力点であるハンドル3を握持する部分から第2ギヤ3dのピッチ円までの距離をaとし、第2ギヤ3dのピッチ円から第2軸21までの距離をbとすると、てこの原理により、第2軸21に作用する荷重は、力点に作用する荷重のa/b倍になる。
【0024】
また、第2軸21から第1軸20までの距離をcとし、第1軸20から作用点である刃部1b、2bと材料が接触する部分までの距離をdとすると、てこの原理により、作用点に作用する荷重は第2軸21に作用する荷重のc/d倍になる。従って、作用点に作用する荷重は力点に作用する荷重のa/b×c/d倍になり、少ない操作力で、材料を切断することが可能となる。このように、第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合した状態では、本発明の切断工具のハンドル比はa/b×c/dとなっている。
【0025】
一方で、図3に示すような、第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合していない状態において、力点から第1軸までの距離をeとすると、作用点に作用する荷重は、e/d倍となる。このように、第1ギヤ1dと第2ギヤ3dが噛合していない状態では、本発明の切断工具のハンドル比はe/d倍になっている。
【0026】
本発明では、閉位置から所定角度以上は、第1ギヤ1d及び第2ギヤ3dが噛合することなく、ハンドル3が第1軸20を中心に回動するので、この状態ではハンドル比がe/d倍となり、ハンドル3の回動角度に対して可動刃2の回動角度が著しく減速されることがない。このように、ハンドルを全開にした状態から所定角度までは、対向する刃部1b、2bを早送りさせることができ、作業性が向上することとなる。
【0027】
なお、閉位置から前記第1ギヤ1d及び第2ギヤ3dが噛合しながらハンドル3が回動する「所定角度」は切断されるべき材料の外径、材質に合わせて任意に設定することが可能である。また、材料の外径は、例えば10mm程度である。
【0028】
次に、第2の実施形態の説明をする。図7に示されるように、可動刃2の刃部2eは、可動刃2が閉塞する方向に凸出した形状にしてあり、この実施形態では略V字形状にしてある。固定刃1の前記刃部2eに対向する部分は、凹陥した形状の受部1gとなっている。この受部1gの形状は、被切断材料15をできるだけ変形させないために、被切断材料15の断面形状に合致した形状にすることが好ましい。第2の実施形態は、受部1gで被切断材料15を受容し、刃部2eで被切断材料15を切断する構造となっている。図7に示される受部1gは、略V字形状にしてあり、受部1gの底部は、被切断材料15の断面形状に合致するような略円弧形状にしてある。なお、受部1gに刃が形成されて、相対向する刃で被切断材料15を切断する構造であっても差し支えない。
【0029】
次に、第3の実施形態を説明する。図8に示されるように、可動刃2の刃部2fは、可動刃2が閉塞する方向に凸出した形状にしてあり、この実施形態では略V字形状にしてある。固定刃2の前記刃部2fに対向する部分は、凹陥した形状の受部1hとなっている。この受部1hの形状は、被切断材料16をできるだけ変形させないために、被切断材料16の断面形状に合致した形状にすることが好ましい。第3の実施形態も、受部1hで被切断材料16を受容し、刃部2fで被切断材料16を切断する構造となっている。図8に示される被切断部材16の断面形状は略コの字形状をしているので、受部1hは略コの字形状にしてある。なお、断面形状が略C字形状の被切断材料の場合は、受部1hの形状もまた略C字形状とすることが好ましい。
【0030】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う切断工具もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】切断終了時の状態を示す全体図である。
【図2】切断開始時の状態を示す全体図である。
【図3】ハンドル開放時の状態を示す全体図である。
【図4】図2のA−A矢視図である。
【図5】固定刃の単体図である。
【図6】図6は可動刃の単体図である。
【図7】第2の実施形態の全体図である。
【図8】第3の実施形態の全体図である。
【符号の説明】
【0032】
1 固定刃
1a 軸穴
1b 刃部
1c ハンドル取付部
1d 第1ギヤ
1e 滑動部
1f 段部
1g 受部(第2の実施形態)
1h 受部(第3の実施形態)
2 可動刃
2a 軸穴
2b 刃部
2c 腕部
2d 軸穴
2e 刃部(第2の実施形態)
2f 刃部(第3の実施形態)
3 ハンドル
3a ハンドル基部
3b ハンドル部
3c 軸穴
3d 第2ギヤ
3e 突起
3f 滑動突起
4 カバー
4a 軸穴
4b 軸穴
10 ハンドル
15 第2の実施形態の被切断材料
16 第3の実施形態の被切断材料
20 第1軸
21 第2軸
a 力点から第2ギヤのピッチ円までの距離
b 第2ギヤのピッチ円から第2軸までの距離
c 第2軸から第1軸までの距離
d 第1軸から作用点までの距離
e 力点から第1軸までの距離
f 材料と刃部の遊び
【出願人】 【識別番号】000146135
【氏名又は名称】株式会社松阪鉄工所
【出願日】 平成18年8月18日(2006.8.18)
【代理人】 【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄

【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫


【公開番号】 特開2008−44077(P2008−44077A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−222953(P2006−222953)