トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 替刃式チップソー
【発明者】 【氏名】村松 国吉

【要約】 【課題】横方向の負荷および振動に対してチップが基板から脱落し難くなる替刃式チップソーを得る。

【構成】基板(2)に外方に向かって突出する刃台(3)を所定ピッチで形成し、該刃台(3)にチップ(10)が外方から内方に向かって嵌合する保持溝(4)を形成するとともに、該保持溝(4)の進行方向前部に位置する刃台(3)の前部を、刃台(3)の外端から内方に向かって延びるスリット(5)により分断された弾性片(3a)とし、チップ(10)の進行方向前後面の厚さ方向中間部に前記保持溝(4)に圧入する小幅な括れ部(10a)を形成し、前記保持溝(4)の進行側の溝前壁(4a)と該溝前壁(4a)に対面する前記括れ部(10a)の進行側の括れ部前壁(10b)とに、刃台(3)の進行前後方向から互いに係脱可能な係合部(4a−1、10e)を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)に外方に向かって突出する刃台(3)を所定ピッチで形成し、該刃台(3)にチップ(10)が外方から内方に向かって嵌合する保持溝(4)を形成するとともに、該保持溝(4)の進行方向前部に位置する刃台(3)の前部を、刃台(3)の外端から内方に向かって延びるスリット(5)により分断された弾性片(3a)とし、チップ(10)の進行方向前後面の厚さ方向中間部に前記保持溝(4)に圧入する小幅な括れ部(10a)を形成し、前記保持溝(4)の進行側の溝前壁(4a)と該溝前壁(4a)に対面する前記括れ部(10a)の進行側の括れ部前壁(10b)とに、刃台(3)の進行前後方向から互いに係脱可能な係合部(4a−1、10e)を設けたことを特徴とする替刃式チップソー。
【請求項2】
係合部は、保持溝(4)の溝前壁の外端部に該保持溝(4)の反進行方向に向かって突出形成した溝側係合突起(4a−1)と、括れ部(10a)前壁の基部に該括れ部(10a)の進行方向に向かって突出する括れ部側係合突起(10e)とからなることを特徴とする請求項1記載の替刃式チップソー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状の帯基板、あるいは円板状の回転基板にチップを着脱可能に取り付ける替刃式チップソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、特許文献1に開示されたものがあった。即ち、歯面を有する刃部の両側に接合片を一体的に設けて係合溝を形成した断面溝形のチップにすると共に、鋸歯板に形成した歯形部の取付け部に前記係合溝の溝底面に接し、切削方向に対してすくい角を有する刃部受面と、該刃部受面の下方で刃部の低部面に接する底部受面を形成し、前記チップの係合溝を歯形部に差込み嵌合して両側の接合片で挟持固定するようにしたチップソーがあった。
【0003】
前記従来のものは、刃部の両側に形成された溝形の接合片で鋸歯板の歯形部を挟持するようにしていたので、歯形部の挟持力を増大させようとすると、接合片が折損することになり、前記挟持力を増大させることができず、大きな負荷および振動を受けるとチップが鋸歯板の歯形部から脱落し易くなるものであった。また、歯部に横方向の負荷および振動が加わると、係合溝の両側壁をなす接合片に大きな曲げ応力が発生し、該接合片が折損し易くなるものであった。特にチップが先端傾き角を有する傾斜歯の場合には前記不具合が顕著になるものであった。
【特許文献1】特開2004−90180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、横方向の負荷および振動に対してチップが基板から脱落し難くなる新規な替刃式チップソーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、基板に外方に向かって突出する刃台を所定ピッチで形成し、該刃台にチップが外方から内方に向かって嵌合する保持溝を形成するとともに、該保持溝の進行方向前部に位置する刃台の前部を、刃台の外端から内方に向かって延びるスリットにより分断された弾性片とし、チップの進行方向前後面の厚さ方向中間部に前記保持溝に圧入する小幅な括れ部を形成し、前記保持溝の進行側の溝前壁と該溝前壁に対面する前記括れ部の進行側の括れ部前壁とに、刃台の進行前後方向から互いに係脱可能な係合部を形成する構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記係合部を、保持溝の溝前壁の外端部に該保持溝の反進行方向に向かって突出形成した溝側係合突起と、括れ部前壁の基部に該括れ部の進行方向に向かって突出する括れ部側係合突起とからなる構成にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、刃台の保持溝にチップの括れ部を圧入すると、刃台の前部に形成した弾性片が進行方向前後に弾性変形し、該弾性片の弾性力で前記保持溝に形成した係合部と前記括れ部に形成した係合部とが進行方向前後から互いに係合することになる。これにより、チップの基板に対する抜け方向の移動に対しては前記係合部が阻止し、チップの基板に対する横ずれに対しては係合溝の両側縁部が基板に当接して該横ずれを防止することになり、切断時におけるチップの横方向の負荷および振動に対して十分に耐えることになる。
【0007】
また、前記弾性片を進行方向前方に弾性変形させると、前記保持溝に形成した係合部と前記括れ部に形成した係合部との係合が解除され、チップを刃台から容易に離脱させることができる。これにより、一部のチップが磨耗、あるいは欠けたりした際には、該一部のチップを新たなチップと容易に交換することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、保持溝の溝前壁の外端部に該保持溝の反進行方向に向かって突出形成した溝側係合突起と、括れ部前壁の基部に該括れ部の進行方向に向かって突出する括れ部側係合突起とにより前記係合部を形成するようにしたので、係合部の構造が簡素になるとともに、チップの基板に対する抜け方向の阻止力が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図において、図1は本発明による帯鋸の部分側面図、図2は図1の要部拡大側面図、図3は図2のIII-III断面図、図4は図3のIV-IV断面図、図5は帯鋸の保持溝部の側面図、図6はチップの側面図である。
【0010】
図1〜図3において、1はチップソーをなす帯鋸であり、本例では、厚さ約0.8mm、幅約102mm、周長約4540mmとなる基板(帯鋸基板)2の一方の周縁部に超硬合金製のチップ10を長手方向に約30mmのピッチで着脱可能に取付けてなり、該チップ10は、すくい角A1が約25度、先端逃げ角C1が約15度、側面逃げ角S1が約2.5度となっている。なお、前記すくい角A1、先端逃げ角C1、側面逃げ角S1等の角度、及び基板2、チップ10の大きさは、被切断物の種類、切断仕様等によって適宜設定する。
【0011】
前記基板2は、図5に示すように、その上部側(一方の周縁部)に鋸歯形の刃台3を長手方向に約38mmのピッチで突出形成し、各刃台3の頂部に下部(他方の周縁部)に向かって伸びる保持溝4を形成する。該保持溝4は、基板2の進行方向に約25度で前傾斜させるとともに、その進行方向前後面4a,4bの幅を下方が次第に小幅となるテーパーとする。該前後面4a,4bのテーパー角度Pは約6度とする。
【0012】
前記保持溝4の前面(溝前壁)4aは、その入口前面4a−1が内深前面4a−2に対して保持溝4の後面4b方向に突出する段付き面とし、前記入口前面4a−1を本願発明でいう溝側係合突起とする。本例では、前記内深前面4a−2に対する入口前面(溝側係合突起)4a−1の突出量Tを0.2mm〜0.5mmとする。4cは前記入口前面4a−1と内深前面4a−2との境界部に形成した逃げ凹部である。
【0013】
前記保持溝4の進行方向前部に位置する刃台3の前部に、スリット5により分断された弾性片3aを形成する。前記スリット5は溝幅Wを0.2mm〜1.0mmとし、図5に示すように、保持溝4に対する間隔Mが1mm〜5mmとなるようにして刃台3前部の外端から内方に延びた後、反進行方向に湾曲させる。これにより、前記弾性片3aは保持溝4の内方の肉部3bを中心として前後方向に弾性変形可能とする。
【0014】
前記保持溝4に係合させるチップ10は超硬合金板製からなり、図2〜図4,図6に示すようになっている。即ち、チップ主体の進行方向前後面に刃台3の厚さよりも若干広幅な係合溝11,12を形成し、該係合溝11,12によりチップ主体の厚さ方向中間部に、前述した保持溝4に圧入する小幅な括れ部10aを形成する。該括れ部10aの前後面10b,10cの幅は、基部(下方)側に行くに従って互いに接近する如く傾斜させ、該前後面10b,10cの傾斜角度、つまりテーパ角度は前述した保持溝4の前後の面4a−2,4bのテーパ角度Pと略同じにする。
【0015】
前記チップ主体の前面側に形成する係合溝11は、その上半部を除去して該チップ主体の前部上半部をすくい面10dとする。該すくい面10dは、前記括れ部10aの前面(括れ部前壁)10bの基部側よりも段状に反進行方向に後退させ、これにより、前記前面10bの基部に進行方向に向かって段状に突出する括れ部側係合突起10eを形成し、該括れ部側係合突起10eの段部を、図4に示すように、前述した溝側係合突起4a−1の段部に係合させる。
【0016】
前記実施例によれば、刃台3の保持溝4にチップ10の括れ部10aを圧入すると、前記刃台3の前部に形成した弾性片3aが進行方向前後に弾性変形し、図4に示すように、弾性片3aの弾性力で前記保持溝4に形成した溝側係合突起4a−1が、括れ部10aに形成した括れ部側係合突起10eに係合する。同時にチップ10の係合溝11,12の両側縁部が、図3に示すように、前記保持溝4の両側縁部に当接する。これにより、チップ10の基板2に対する抜け方向の移動は前記溝側係合突起4a−1が阻止し、チップ10の基板2に対する横ずれは前記係合溝11,12の両側縁部が防止することになる。また、刃台3の後部はスリットがなく、剛性が高くなっているので、前記保持溝4の後部面4bはチップ10の反後進方向の負荷に対して十分耐えることになる。このため、切断時におけるチップ10の振動及び横方向の負荷に対し、該チップ10が基板2から離脱しなくなる。
【0017】
また、前記弾性片3aを進行方向前方(図4において左方)に弾性変形させると、前記溝側係合突起4a−1と前記括れ部側係合突起10eとの係合が解除され、チップ10を基板2から容易に離脱させることができる。このため、一部のチップ10が磨耗、あるいは欠けたりした際に、該一部のチップ10を新たなチップ10と容易に交換することができる。なお、前述した弾性片3aとチップ10とは、保持溝4の前面4aとチップ10の括れ部10の前面10bとに、基板2の進行方向から係脱する凹凸部を形成し、該凹凸部によって両者を係合させるようにしてもよい。また、本発明は、円板状の回転基板にチップを有する回転鋸にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による帯鋸の部分側面図である。
【図2】図1の要部拡大側面図である。
【図3】図2のIII-III断面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】帯鋸の保持溝部の側面図である。
【図6】チップの側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 帯鋸(チップソー)
2 基板
3 刃台
3a 弾性片
3b 肉部
4 保持溝
4a 進行方向前面(溝前壁)
4a−1 溝側係合突起(係合部)
4a−2 内深前面
4b 進行方向後面
4c 逃げ凹部
5 スリット
10 チップ
10a 括れ部
10b 前面(括れ部前壁)
10c 後面
10d すくい面
10e 括れ部側係合突起(係合部)
【出願人】 【識別番号】599101391
【氏名又は名称】株式会社袴田製作所
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】 【識別番号】100097700
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恒則


【公開番号】 特開2008−36807(P2008−36807A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−217712(P2006−217712)