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【発明の名称】 切断機における切断刃の開閉カバー
【発明者】 【氏名】奥村 道男

【要約】 【課題】使用者が手に持って移動させる携帯形の丸鋸盤等の切断機において、ベースの下面から突き出した円形の鋸刃を覆う開閉カバーが閉じ方向に付勢されている場合に、この開閉カバーがより確実に閉じ位置で保持されるようにする。

【構成】開閉カバー20とブレードケース13との間に2本の引っ張りばね21,22を介装してその閉じ位置側への付勢力を高めるとともに、両引っ張りばね21,22をスピンドル軸線Jに直交する方向に並列配置してコンパクトに収容する構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断材に載置するベースと、該ベースの上面に支持した切断機本体を備え、該切断機本体は、円形の切断刃と、該切断刃の上側ほぼ半周の範囲を覆うブレードケースと、該切断刃の下側ほぼ半周の範囲を覆う開閉カバーを備えた切断機であって、
前記開閉カバーは、前記ブレードケースの、前記切断刃を回転支持するボス部に回転可能に支持され、該開閉カバーと前記ブレードケースとの間に当該開閉カバーを閉じ方向に付勢する複数の引っ張りばねを備え、該複数の引っ張りばねを前記ボス部の径方向に並列に配置した構成とした切断機。
【請求項2】
請求項1記載の切断機であって、前記開閉カバーは、前記ブレードケースのボス部を内周側に挿入する第1円筒壁部を備え、該第1円筒壁部の外周側に沿って第2円筒壁部を備え、該開閉カバーの開き方向への回転に伴って内周側の第1引っ張りばねを前記第1円筒壁部に巻き付かせ、外周側の第2引っ張りばねを前記第2円筒壁部に巻き付かせる構成とした切断機。
【請求項3】
請求項2記載の切断機であって、前記第1引っ張りばねの前記ブレードケースに対する引き掛け位置を、前記第2引っ張りばねの前記ブレードケースに対する引き掛け位置に対して、前記第2円筒壁部の軸線方向であって当該第2円筒壁部から離間する方向にずれた位置に設定した切断機。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、主として携帯用の丸鋸盤等の切断機において、ブレードケースから突き出された円形の切断刃の下側ほぼ半周の範囲を覆う開閉式のカバー(いわゆるセーフティカバー)に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が手に持って移動させる携帯形の丸鋸盤は、切断材に載置するベースと、ベースの上面側に支持された切断機本体を備え、切断機本体は駆動源としての電動モータと、これにより回転する円形の切断刃と、切断刃の上側ほぼ半周の範囲を覆うブレードケースを備えた構成となっている。切断刃の下側ほぼ半周の範囲はブレードケースから突き出され、かつベースの下面側に突き出されている。切断刃のベースの下面側に突き出された範囲は、いわゆるセーフティカバーと称される開閉カバーにより覆われている。この開閉カバーは、切断刃を回転支持するブレードケースのボス部に対して回転可能に支持されている。
この開閉カバーは、ブレードケースとの間に介装した引っ張りばねにより閉じ方向に付勢されている。この開閉カバーは、ベースを切断材の上面に重ね合わせた状態で当該切断機を切断進行方向に移動させることにその先端部が切断材の端部に当接され、これにより当該開閉カバーに対して開き方向の外力が作用することにより上記引っ張りばねの付勢力に抗して相対的に開かれていく。開閉カバーが開かれることにより切断刃が露出されて切断材が切断材されていく。切断機の移動に伴う開閉カバーの開き方向への外力が作用しなくなると、当該開閉カバーは、引っ張りばねの付勢力によりベース下面側に突き出された切断刃の下側ほぼ半周の範囲を覆う閉じ位置に戻される。
【特許文献1】特開2002−326120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように構成された開閉カバーについて従来次のような問題があった。上記したようにこの開閉カバーは引っ張りばねの付勢力によって切断刃を覆う閉じ位置に戻される。このため、開閉カバーを確実に閉じ位置まで戻すために引っ張りばねの必要な付勢力が設定される。通常、この引っ張りばねはブレードケースのボス部の周囲であって当該ブレードケースと開閉カバーとの間のわずかな隙間に介装されている。このため、必要以上に付勢力の大きな引っ張りばねを介装すると、例えばその巻き径が大きくなって、これを収容するために当該開閉カバーとブレードケースとの間の間隔が大きくなり、結果的に当該切断機のコンパクト化が困難になる問題がある。このため、通常この引っ張りばねの付勢力は、必要かつ十分な範囲で設定され、その巻き径は極力小径化される。
このように従来開閉カバーを閉じ側に付勢するための引っ張りばねの付勢力は、当該引っ張りばね及びその収容スペースのコンパクト化を考慮して必要以上に強く(巻き径が太く)ならない範囲で設定されていた。このため、当該切断機を例えば上方へ向けて持ち上げた場合等であって当該開閉カバーの自重がその開き方向に作用した場合に、当該開閉カバーが引っ張りばねに抗して開いてしまうおそれがあった。大型の切断機で開閉カバーの重量が大きいほど上向き姿勢にした時に当該開閉カバーが開きやすくなる。
また、引っ張りばねとリンク機構とを組み合わせて開閉カバーの十分な復元力を得る構成とした場合には、当該リンク機構の動作スペースを確保する必要があり、この点で当該切断機のコンパクト化を図ることが困難になる。
そこで、本発明は、大型の切断機であって重量の大きな開閉カバーであっても、ブレードケースと開閉カバーとの間の間隔を大きくすることなくその閉じ位置側への付勢力(復元力)を十分強くして当該切断機を上向き姿勢にした場合等であっても開閉カバーを確実に閉じ位置に保持することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の切断機とした。
請求項1記載の切断機によれば、複数の引っ張りばねが開閉カバーとブレードケースとの間に介装されて、1本の引っ張りばねよりも強い付勢力で当該開閉カバーが閉じ方向に付勢されている。この複数の引っ張りばねは、ブレードケースのボス部の径方向に並列状態で配置されている。ここで、引っ張りばねの付勢力を強くするためにその巻き径を大きくし、あるいは複数の引っ張りばねをボス部の軸線方向に並列配置する構成とした場合には、ブレードケースと開閉カバーとの間の間隔を大きくする必要が生ずる。これに対して請求項1記載の切断機によれば、複数の引っ張りばねがボス部の径方向に並列配置されることにより、ブレードケースと開閉カバーとの間の間隔(ボス部軸線方向の収容スペース)を大きくすることなく、引っ張りばね1本分の収容スペースで開閉カバーの付勢力を強くすることができる。
このことから、請求項1記載の切断機によれば、ブレードケースと開閉カバーとの間の間隔を大きくすることなく、当該開閉カバーの閉じ方向の付勢力(復元力)を強くすることができ、これにより当該切断機を上向き姿勢にした場合であっても当該開閉カバーを確実に閉じ位置に保持しておくことができる。
請求項2記載の切断機によれば、開閉カバーはボス部の径方向に並列配置された第1及び第2の引っ張りばねにより閉じ方向に付勢されている。このため、ブレードケースと開閉カバーとの間の間隔を大きくすることなく1本の引っ張りばねよりも強い付勢力で開閉カバーがその閉じ方向に付勢されている。
【0005】
開閉カバーをその付勢力に抗して開放すると、両引っ張りばねが引っ張られる。第1引っ張りばねは第1円筒壁部に巻き付きながら引っ張られ、第2引っ張りばねは第2円筒壁部に巻き付きながら引っ張られる。このようにそれぞれ別の円筒壁部に巻き付きながら引っ張られるので、両引っ張りばねを相互に干渉させることなく引っ張られ、これにより当該開閉カバーをスムーズに開放することができ、逆にスムーズに閉じることができる。
請求項3記載の切断機によれば、開閉カバーが閉じられて、第1引っ張りばねの第1円筒壁部に対する巻き付きが解かれ、また第2引っ張りばねの第2円筒壁部に対する巻き付きが解かれる。ボス部の径方向について、内周側の第1引っ張りばねと外周側の第2引っ張りばねとの間に第2円筒壁部が位置している。このため、第1引っ張りばねと第2引っ張りばねのブレードケース側の端部がボス部の軸線方向同一面上に位置している場合には、内周側の第1引っ張りばねの第1円筒壁部に対する巻き付きが解かれる段階で、当該第1引っ張りばねがその外周側に位置する第2円筒壁部に干渉し、その結果当該第1引っ張りばねの第1円筒壁部に対する巻き付きがスムーズに解除されないおそれがある。この点、請求項3記載の構成によれば、内周側の第1引っ張りばねのブレードケース側の結合端部が、第2引っ張りばねのブレードケース側の結合端部に対してボス部の軸線方向にずれて配置されていることから、当該第2引っ張りばねの第2円筒壁部に対する干渉を回避しつつ、当該第2引っ張りばねの第1円筒壁部に対する巻き付きが解除され、これにより開閉カバーを閉じ位置までスムーズに回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る切断機1を示している。本実施形態では、切断機1として使用者が手に持って移動させることにより切断材Wを切断する携帯形(手持ち式)の切断機を例示している。この切断機1は、切断材Wに載置するベース2と、このベース2の上面側に支持した切断機本体10を備えている。
切断機本体10は、ベース2の切断進行方向前側(図1において右側)の支持部3と切断進行方向後側(図1において左側)の支持部4を介して当該ベース2の上面側に支持されている。本例では、切断機本体10は切断進行方向に対して左右に傾動可能に支持されていわゆる斜め切り可能な機能を備え、また前側支持部3の傾動支軸5を中心にして上下に傾動可能に支持されて切り込み深さを調整可能な機能を備えている。これらの各機能については従来と同様であるので詳細な説明を省略する。
切断機本体10は、駆動モータ12により回転する円形の切断刃11を備えている。この切断刃11の下部がベース2の下面側に突き出され、この突き出し部分が切断材Wに切り込まれる部分となる。この切断刃11の上側半周の範囲はブレードケース13によって覆われている。一方、切断刃11の下側半周の範囲は開閉カバー20によって覆われている。
図2に示すようにブレードケース13の背面側(図2において下側)に駆動モータ12が取り付けられている。また、ブレードケース13の背面側に使用者が把持するハンドル部6が設けられている。このハンドル部6はループ形状を有しており、その内周側に使用者が指先で操作するトリガ形式のスイッチレバー7が設けられている。このスイッチレバー7を引き操作すると電動モータ12が起動して切断刃11が回転する。
【0007】
駆動モータ12の出力は減速ギヤ列を経てスピンドル15に伝達される。このスピンドル15はブレードケース13内に突き出されており、その突き出し先端部に切断刃11が装着されている。スピンドル15は、軸受け16を介してブレードケース13に回転支持されている。この軸受け16は、軸受けケース17に収容されている。軸受けケース17は、2本の固定ねじ14,14でブレードケース13に固定されている。
この軸受けケース17は、図2において上側の小径部17aと下側の大径部17bの2段に段突き形成されている。この軸受けケース17の小径部17aを介して開閉カバー20が同軸に回転可能に支持されている。このことから小径部17aが特許請求の範囲に記載したボス部に相当する。
大径部17bの側部周方向2等分位置に設けた固定部17d,17dに上記固定ねじ14,14が挿通されている。両固定部17d,17dは、放射方向に突き出した状態に設けられている。図示するように両固定部17d,17dは、ベース2に平行な軸線に対して反時計回り方向に傾斜する軸線上に配置されており、これにより図1において左側の固定部17dが第1引っ張りばね21から離れる方向に変位されている。これによれば、当該第1引っ張りばね21の大径部17bに対する引っかかりを防止して、その第1円筒壁部20aに対する巻き付き動作をスムーズに行うことができるようになっている。
【0008】
開閉カバー20には円筒形状の第1円筒壁部20aが設けられている。この第1円筒壁部20aの内周側に軸受けケース17の小径部17aを相対回転可能に挿入して、当該開閉カバー20がスピンドル15の軸線J回りに回転自在に支持されている。第1円筒壁部20aは、大径部17bの上面と小径部17aの先端に装着した止め輪18との間に配置されて軸線J方向の位置決めがなされている。
図1は開閉カバー20が、切断刃11の下側ほぼ半周の範囲(ベース2の下面側に突き出された範囲)の周縁ほぼ全周にわたって覆う閉じ状態を示している。ブレードケース13の内面にはストッパ19が設けられている。このストッパ19に開閉カバー20の端部が当接されることにより、当該開閉カバー20の閉じ方向の回動端位置が規制されている。このストッパ19によって規制される回動端位置が当該開閉カバー20の全閉位置となる。図1に示すように切断材Wの開始時点で、開閉カバー20の先端が切断材Wの切り込み端部に当接され、この当接状態のまま当該切断機1が切断進行方向に移動することにより、開閉カバー20が相対的に開かれて切断刃11が切断材Wに切り込まれていく。
図3に示すように開閉カバー20が全開されて切断刃11のベース2の下面側に突き出された範囲の全周が切断材Wに切り込まれた状態となる。
また、この開閉カバー20の開き方向先端部(図1に左端部)には、手動操作用のハンドル部25が設けられている。このハンドル部25を把持して使用者は、手動操作により当該開閉カバー20を強制的に開閉させることができる。
【0009】
開閉カバー20は、2本の引っ張りばね21,22によって閉じ方向に付勢されている。このため、開閉カバー20の開放は、上記2本の引っ張りばね21,22に抗してなされる。本実施形態に係る切断機1は、この2本の引っ張りばね21,22による開閉カバー20の閉じ方向への付勢構造に大きな特徴を有している。
2本の引っ張りばね21,22は、開閉カバー20の第1円筒壁部20aに設けた引き掛け部20bと、ブレードケース13に設けた引き掛け部13aとの間に掛け渡されている。本実施形態では、この2本の引っ張りばね21,22に、自由長、巻き数、巻き径、線径及びばね定数等について同じ仕様のものが用いられている。
開閉カバー20側の引き掛け部20bは、スピンドル15の軸線Jに対して放射方向に張り出す状態に設けられている。また、ブレードケース13側の引き掛け部13aは、本実施形態では別途設けたブラケットをビス止めして設けられている。図2に示すようにブレードケース13の中央には、一段低い凹部13dが設けられている。前記軸受けケース17は、この凹部13d内にほぼ収容された状態となっている。上記引き掛け部13aは、この凹部13d内の空きスペースを利用して取り付けられている。
2本の引っ張りばね21,22は、スピンドル15の径方向に並列に配置されている。内周側の第1引っ張りばね21の引き掛け先端部21aは、開閉カバー20側の引き掛け部20bの引き掛け孔20cに引き掛けられている。第1引っ張りばね21の引き掛け後端部21bは、ブレードケース13側の引き掛け部13aの引き掛け孔13bに引き掛けられている。また、外周側の第2引っ張りばね22の引き掛け先端部22aは、開閉カバー20側の引き掛け部20bの引き掛け孔20dに引き掛けられている。第2引っ張りばね22の引き掛け後端部22bは、ブレードケース13側の引き掛け部13aの引き掛け孔13cに引き掛けられている。引き掛け先端部21a,22aが、開閉カバー20の開閉動作に伴う移動側(開閉カバー20側)であり、引き掛け後端部21b,22bが固定側(ブレードケース13側)となる。
図1に示すように開閉カバー20側の引き掛け孔20c,20dは、スピンドル15の軸線Jに直交する同一面上に位置している。このため、第1引っ張りばね21と第2引っ張りばね22の引き掛け先端部21a,22aは、スピンドル15の軸線J方向について同じ高さ位置に設定されている。
【0010】
一方、図2に示すようにブレードケース13側の引き掛け孔13b,13cは、スピンドル15の軸線J方向にずれている。このため、第1引っ張りばね21と第2引っ張りばね22の引き掛け後端部21b,22bは、スピンドル15の軸線J方向について上下にずれた位置に設定されている。図示するように内周側の第1引っ張りばね21の引き掛け後端部21bが、図2において下側となるより低い位置(切断刃11からより離れた位置)に引き掛けられている。これにより、当該第1引っ張りばね21の引き掛け後端部21bが以下説明する第2円筒壁部23から離間する位置に引き掛けられて、当該第1引っ張りばね21の第2円筒壁部23に対する干渉が回避されるようになっている。
一方、外周側の第2引っ張りばね22の引き掛け後端部22bは、図2において上側となるより高い位置(切断刃11により近い位置)であって引き掛け先端側22aと同じ高さ位置に引き掛けられている。このため、外周側の第2引っ張りばね22は、スピンドル15に直交する面に沿って掛け渡されている。
開閉カバー20の背面(図2において下面)であって、第1引っ張りばね21と第2引っ張りばね22との間には第2円筒壁部23が設けられている。この第2円筒壁部23は、第1円筒壁部20aと同心に設けられている。図1に示すようにこの第2円筒壁部23は、引き掛け部20bの近傍から反時計回り方向へ約180度の範囲にわたって形成されている。また、この第2円筒壁部23は、開閉カバー20の背面からの高さ寸法について、ほぼ第2引っ張りばね22の巻き径に相当する高さ寸法で設けられている。
図1と図3を比較するとよく分かるように、第1引っ張りばね21及び第2引っ張りばね22に抗して開閉カバー20が開かれると、両引っ張りばね21,22の引き掛け先端部21a,22a側が図1において時計回り方向に移動して、両引っ張りばね21,22が引き延ばされていく。一方、第1引っ張りばね21の引き掛け後端部21bと第2引っ張りばね22の引き掛け後端部22bは、それぞれブレードケース13側の引き掛け部13aに引き掛けられているため、開閉カバー20が開放されても移動しない。
このことから、図3に示すように開閉カバー20が開かれると、内周側の第1引っ張りばね21は第1円筒壁部20aの外周面に沿って巻き付く。一方、外周側の第2引っ張りばね22は第2円筒壁部23の外周側に巻き付いていく。
上記したように第2円筒壁部23は、第2引っ張りばね22の巻き径とほぼ同等の高さ寸法で設けられていることから、当該第2引っ張りばね22はこの第2円筒壁部23から内側へずれて第1引っ張りばね21と干渉することなく当該第2円筒壁部23の外周面に確実に巻き付けられる。
【0011】
また、前記したように内周側の第1引っ張りばね21は、その引き掛け後端部21b側がスピンドル15の軸線J方向についてより低い位置(切断刃11からより離れた位置)に引き掛けられている。このため、第1引っ張りばね21は、開閉カバー20側の引き掛け部20bからブレードケース13側の引き掛け部13a側に至ってほぼ斜め(スピンドル15の軸線Jに対して傾斜する方向)に掛け渡されている。
このため、開閉カバー20の開き方向への回動に伴って両引っ張りばね21,22の引き掛け先端部21a,22a側が図1において時計回り方向に移動する段階において、内周側の第1引っ張りばね21は、その後部側が徐々に大径部17bで受けられて第1円筒壁部20aと第2円筒壁部23との間に嵌り込みながら当該第1円筒壁部20aに巻き付けられることにより引っ張られていく。
なお、大径部17bの上面であって、第1引っ張りばね21と交差する位置及びその周方向前後の一定範囲は当該第1引っ張りばね21の引き掛け後端部21b側に向けて傾斜するガイド面17cとされている。図1及び図3では、このガイド面17cが格子模様を付した範囲で示されている。このガイド面17cにより、内周側の第1引っ張りばね21は、開閉カバー20の回転動作(開閉動作)に伴って当該大径部17bの角部に対する引っかかりを防止しつつスムーズに大径部17bの上面に移動し、逆に当該上面からスムーズに外れる。
一方、外周側の第2引っ張りばね22は、スピンドル15の軸線J方向に変位することなく当該スピンドル15に直交する面上を引っ張られて第2円筒壁部23の外周面に巻き付けられることにより引っ張られていく。こうして、開閉カバー20が第1及び第2引っ張りばね21,22の合計付勢力に抗して開かれる。図3に示すように開閉カバー20が全開位置まで開かれると、内周側の第1引っ張りばね21が第1円筒壁部20aに対してほぼ180度の範囲で巻き付けられ、外周側の第2引っ張りばね22が第2円筒壁部23に対してほぼ180度の範囲で巻き付けられた状態となり、これによりそれぞれ円筒壁部20a,23のほぼ半周分に相当する長さだけ引っ張られた状態となる。
こうして全開位置まで開かれた開閉カバー20は、第1及び第2引っ張りばね21,22の合計付勢力で閉じ方向に付勢された状態となり、従来1本の引っ張りばねのみを用いた場合よりも大きな付勢力(約2倍の付勢力)で閉じ方向に付勢された状態となっている。このため、開閉カバー20を確実に全閉位置まで回動させることができ、当該切断機1を上向き姿勢にした場合であって当該開閉カバー20に自重が作用する状態においても、当該開閉カバー20を確実にその全閉位置に保持することができる。
【0012】
以上のように構成した本実施形態の切断機1によれば、切断刃11の、ベース2の下面側に突き出された範囲を覆う開閉カバー20は、2本の引っ張りばね21,22によって閉じ方向に付勢されている。このため、従来1本の引っ張りばねによって閉じ方向へ付勢した構成に比してより強い力で閉じ位置に保持することができることから、例えば切断機1を上向き姿勢に保持して開閉カバー20の自重が開き方向に付加される状態としても、当該開閉カバー20を確実に閉じ位置に保持しておくことができる。
しかも、本実施形態の切断機1によれば、第1及び第2の引っ張りばね21,22がスピンドル15の軸線J方向に直交する方向に並列に配置されているため、当該2本の引っ張りばね21,22を収容する軸線J方向のスペースとしては1本分のスペースを確保すれば足りる。すなわち、開閉カバー20の第1円筒壁部20aの軸線J方向の寸法Lについて、2本の引っ張りばね21,22を巻き付かせるために必要な寸法を確保する必要がなく、1本分の寸法Lで足りる。このことから、第1円筒壁部20aの軸線J方向の寸法を大きくすることなく、従って2本の引っ張りばねを軸線J方向に並列配置した場合のように切断機本体10の幅寸法を大きくすることなく開閉カバー20の閉じ位置での保持力を強くすることができる。
また、例示した実施形態によれば、大径部17bの上面にガイド面17cが設けられ、このガイド面17cにより内周側の第1引っ張りばね21の当該大径部17bに対する引っかかりが防止されて当該第1引っ張りばね21をスムーズに伸縮動作させることができ、これにより開閉カバー20のスムーズな開閉動作を実現することができる。
【0013】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、第1及び第2引っ張りばね21,22の引き掛け後端部21b,22bを引き掛けるための引き掛け部13aは、別途設けたブラケットをビス止めする構成を例示したが、例えば凹部13dの側壁部に一体に設ける構成としてもよい。
また、第2円筒壁部23は第2引っ張りばね22の巻き径とほぼ同等の高さ寸法で設けた構成を例示したが、この第2円筒壁部23の高さ寸法は、第2引っ張りばね22の巻き径の少なくとも半分以上あればよい。
さらに、開閉カバー20の背面に第2円筒壁部23を設ける構成を例示したが、この第2円筒壁部をブレードケース13側に設ける構成としてもよい。この場合には、軸受けケース17の大径部17bに設けたガイド面17cは省略することができる。
また、第1引っ張りばね21と第2引っ張りばね22に同じ仕様の引っ張りばねを用いる構成を例示したが、ばね定数等について相互に異なる仕様の引っ張りばねを用いる構成とすることもできる。
さらに、例示した開閉カバーのばね付勢構造は、鋸刃以外にカッターや砥石を切断刃とする切断機にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す図であって、切断機の正面図である。本図は、開閉カバーが全閉位置に位置する状態を示している。
【図2】図1の(2)矢視図であって、切断機の下面図である。本図においてベースの図示が省略されている。また、開閉カバーは軸線Jを通る断面で示されている。
【図3】本発明の実施形態に係る切断機の正面図である。本図は、開閉カバーが全開された状態を示している。
【図4】図3の(4)矢視図であって、切断機の下面図である。本図においてベースの図示が省略されている。また、開閉カバーの第1円筒壁部が軸線Jを通る縦断面で示されている。
【符号の説明】
【0015】
W…切断材
1…切断機
2…ベース
6…ハンドル部
10…切断機本体
11…切断刃
12…駆動モータ
13…ブレードケース、13a…引き掛け部
14…固定ねじ
15…スピンドル、J…軸線
16…軸受け
17…軸受けケース
17a…小径部、17b…大径部、17c…ガイド面
19…ストッパ
20…開閉カバー
20a…第1円筒壁部、20b…引き掛け部、20c,20d…引き掛け孔
21…第1引っ張りばね
21a…引き掛け先端部、21b…引き掛け後端部
22…第2引っ張りばね
22a…引き掛け先端部、22b…引き掛け後端部
23…第2円筒壁部


【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【代理人】 【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−36740(P2008−36740A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−211973(P2006−211973)