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【発明の名称】 角穴明け工具
【発明者】 【氏名】舟久保 貞夫

【要約】 【課題】角穴隅部を高寿命でかつ高精度で切削することのできる角穴明け工具を得る。

【構成】軸状シャンク10の先端に角柱形状の穴明け軸20が設けられ、さらにその先端にはガイド軸30が設けられている。ガイド軸には角柱の角部が除去され穴明け軸20をワークの下穴に導く構造を有する。穴明け軸20には角穴隅部を切削する切刃部20a〜20dが設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状シャンクの先端に角柱形状の穴明け軸が設けられ、穴明け軸先端には、さらに角柱のいずれかの角部が除去され穴明け軸をワークの下穴に導くガイド軸が設けられ、穴明け軸のガイド軸に連接する部分の角部には角穴隅部を切削する切刃部が設けられていることを特徴とする角穴明け工具。
【請求項2】
請求項1に記載の角穴明け工具において、
少なくとも一つの切刃部が他と比較して軸方向の異なる位置に設けられていることを特徴とする角穴明け工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の角穴明け工具において、
切刃部を形成する切刃溝は切削屑を収納する溜め部を形成することを特徴とする角穴明け工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、角穴明け工具、特に多角形形状、異形形状を有する穴の各角部を仕上げ加工するための角穴明け工具の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製あるいはアルミニウム等の金属製の板材あるいは部材を組み合わせて各種機構装置を組み立てる場合、板材、部材には各種の穴明けが施される。
【0003】
通常最も多用される穴は丸穴であり、ドリル加工あるいはリーマ加工によって形成される。しかしながら、このような丸穴のみでは、多種多様な機構装置を得ることができず、しばしば多角形の穴が必要とされる。通常、このような多角形は四角形状が一般的であるが、必要に応じて、三角形状、五角形状、六角形状、D字形状などが利用され、特にシャフトを板材、部材に回転不能に軸支する場合などにこのような多角形状の穴が極めて有用となる。
【0004】
通常、このような多角形状の穴を板材、部材に加工する為には、19図に示されるように、エンドミルを用いたオーバカット加工が利用される。
【0005】
すなわち、eで示される角穴形状をその隅部の肉を完全に除去するためには、エンドミル1をfで示される加工軌跡上に案内し、エンドミル1がgで示される角穴の隅部に達した状態でこの隅部を含む周辺部をオーバカットし、これによって角穴に挿入される軸を確実に角穴に挿入させることができる。20図には、さらに従来のオーバカットの他のエンドミル加工軌跡が示されており、エンドミルをこのように移動させることによって、所望の角穴隅部を確実に除去可能である。
【0006】
しかしながら、このような従来における角穴明け工法では、オーバカット用の加工スペースがとれない場合には加工自体が困難となり、またオーバカットによる部材の強度低下を招くという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、従来においては、前述したオーバカット加工を行うことなく、多角形状の隅部のみを確実に除去するエッジ加工が望まれていたが、従来においてはこのようなエッジ加工は主として手作業で行うしかなく、効率が悪く又良好な精度を得ることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸状シャンクの先端に角柱形状の穴明け軸が設けられ、穴明け軸先端には、さらに角柱のいずれかの角部が除去され穴明け軸をワークの下穴に導くガイド軸が設けられ、穴明け軸のガイド軸に連接する部分の角部には角穴隅部を切削する切刃部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、角穴明けの仕上げ工具として極めて高精度の多角形状の穴明けを可能とし、また角穴明け工具自体の寿命を充分に長く保つことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から図5には本発明に係る角穴明け工具の好適な第1実施形態が示されている。
【0011】
この実施形態には、四角形状の穴明けを行う角穴明け工具を示し、図示していない上下動アクチュエータにチャッキングされ、軸方向に上下移動されて所望の四角形状の穴明けが行われる。
【0012】
角穴明け工具は前述したアクチュエータにチャッキングされる軸状シャンク10とこの軸状シャンク10の先端に設けられた四角柱形状の穴明け軸20とからなる。前記穴明け軸20の先端にはさらにガイド軸30が設けられ、このガイド軸30は角柱の四隅の角部30a,30b,30c,30dが除去され、穴明け軸20を図示していないワークの下穴に導く構造からなる。
【0013】
そして、穴明け軸20のガイド軸30に連接する部分の四隅の各部には角穴隅部を切削する切刃部20a,20b,20c,20dが設けられていることを特徴とする。
【0014】
前記切刃部20a〜20dを形成するために、穴明け軸20とガイド軸30との間の各部にはそれぞれガイド軸30から穴明け20に向かって斜めに切り込まれた切刃溝21a,21b,21c,21dが設けられ、この切刃溝によって穴明け軸20の各四角部には先鋭な切刃部20a〜20dが形成されることとなる。
【0015】
本発明にかかる第1実施形態の角穴明け工具は以上の構成からなり、実際に角穴明け作業に供する場合には、軸状シャンク10が図示していないアクチュエータにチャッキングされ、ワークの下穴にガイド軸30が臨む位置に位置決め固定される。ワークには所定の下穴が設けられており、実施形態においては四角形状の下穴が形成されている。周知のように、これらの下穴は四角辺の長さは穴明け軸20の呼び径と同一値に加工されているが、下穴加工の場合には、各四角形の隅部は若干丸みを持った低い精度に加工されている。本発明にかかる角穴明け工具は、その先端にガイド軸30が設けられ、このガイド軸30は角柱の角部が除去されており、前記低い精度の下穴であっても、本発明にかかる角穴明け工具のガイド軸30を容易にこの下穴に導くことができる。
【0016】
そして、このようにして本発明にかかる仕上げ用の角穴明け工具がガイド軸30によってワークの下穴に導かれると、この状態から穴明け軸20は下穴に進入し、四隅の切刃部20a〜20dが下穴の四角穴隅部を切削し、高精度の角穴加工を行うことが可能となる。
【0017】
本実施形態において、ガイド軸30の四角形状は穴明け軸20の四角形状と一致した稜角を有しており、ガイド軸30がワークの下穴に導かれた状態で、穴明け軸20はその回転位置が定まり、それぞれの切刃部20a〜20dを確実に四角穴隅部に導くことが可能となる。
【0018】
また、図4から明らかなように、各切刃部20a〜20dは工具の進行方向と逆方向に傾斜した角度を有し、この結果、切刃部20a〜20dはその切刃角によってワークの隅部に食い込む力を受ける。そして、本発明で特徴的なことは、このようなワークに食い込む力とガイド軸30が下穴に導かれる時の反力によって各切刃部20a〜20dは安定した切削力によって隅部を加工することが可能となる。本発明において、このように、切刃部20a〜20dの食い込み方向とガイド軸30による受力とが互いにつり合って安定した加工を行うことができることは極めて重要である。
【0019】
また、本発明において、各切刃部20a〜20dを形成する切刃溝21a〜21dは、その溝の大きさを適当に選択することによって、加工するときの切削屑を収納する溜め部を作ることができ、切削屑が工具とワークとの間に詰まって加工が停止してしまうことを確実に防止している。
【0020】
前述した第1実施形態においては、工具はガイド軸30と同一の呼び径の下穴に導かれているが、本発明において、このような工具は工具の呼び径より大きな下穴に対して隅部加工を行うことも可能である。この場合には、四角形状の工具のいずれか1個の切刃部20aを用いて、ガイド軸30の前記選択された切刃部20aを挟む2辺が下穴に導かれ、この切削対象となる隅部のみの仕上げ加工が行われる。前述したように、本発明によれば、各切刃部20a〜20dは、いずれもその切刃角によって、ワークに食い込む方向の力を生じ、又これに対抗してガイド軸30が下穴によって支えられるので、前述した大きな下穴に対してもガイド軸30の2辺によって確実な回転位置決め及び保持が行われることとなる。
【0021】
図6、7、8は本発明に係る角穴明け工具の好適な第2実施形態が示されており、第1実施形態と対応する部材には符号100を加えて示してある。
【0022】
この第2実施形態の角穴明け工具も四角柱形状の穴明けを行う仕上げ工具であり、基本的な構成及びアクチュエータによる仕上げ加工方法も第一実施形態と同様である。
【0023】
第2実施形態の特徴は、少なくとも一つの切刃部121が他と比較して軸方向の異なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0024】
実施形態の切刃部120a,120b,120c,120dはすべて軸方向の位置が異なり、図6、7においてガイド軸130の先端からa,b,c,dで示されるそれぞれ異なる距離に配置されている。
【0025】
この結果、第2実施形態によれば、各切刃溝121a〜121dが比較的大きな溝であっても、軸方向の位置が異なるので、穴明け軸120の強度を低下させる度合いを減少することができる。
【0026】
このことは、特に細い角穴明け工具を必要とする場合には重要である。前述した第1実施形態のように、切刃溝21a〜21dを軸方向の同一位置に設ける場合には、工具の軸径が小さくなると、工具強度が低下し、極端な場合には折損する場合が生じるが、第2実施形態のように切刃溝121a〜121dの軸方向の位置を変えることによって、強度低下を減少することが可能となる。
【0027】
また、第2実施形態においては、アクチュエータによってワークの下穴に導かれた角穴明け工具は軸方向に上下移動する時にワークに対して四隅に設けられた切刃部120a〜120dが一箇所ずつ加工に供せられ、アクチュエータに対する加工負荷を減少させ、安定した仕上げ加工を行うことが可能となる。
【0028】
したがって、第2実施形態によれば、工具の寿命をさらに安定的に長期化し、また切削された角穴隅部の加工精度も高精度にすることが可能となる。
【0029】
以上説明した実施形態においては、角穴形状は四角穴形状としているが、この角穴形状を他の五角、六角あるいはD穴などの任意の多角形状とすることが可能である。
【0030】
図9から図13には、本発明に係る角穴明け工具の好適な第3実施形態が示され、この実施形態は、比較的堅い素材の角穴明け加工を行うのに好適な2段切刃を有し、第1及び第2の切刃によって削り取る角穴隅部の切削量を分担し、これによってアルミニウムなどの金属あるいは硬質プラスチックの加工を可能としている。
【0031】
前述した各実施形態と同様に、軸状シャンク210の先端には角柱形状の穴明け軸220が設けられ、穴明け軸220の先端には更にガイド軸230が設けられている。第3実施形態において、第1実施形態と同一または対応部材には、符号に200を加えて示している。この実施形態における角穴明け工具は、四隅のうち、Bで示される部分とB′で示される二隅の角のみが切刃として用いられ、図9において、切刃部220a,220cで示されている。そして他の二隅は何ら切刃としては用いられていない。
【0032】
すなわち、この第3実施形態においては、穴明け軸220の呼び径は下穴の呼び径より小さく設定されており、このために、何れかの切刃部220a又は220cのみが下穴の隅部を削り取ることとなる。
【0033】
本実施形態において特徴的なことは、切刃部220c側が符号250で示される段部によってこの切刃部220cの位置が他の切刃部220aより内側に変位していることである。
【0034】
このために、切刃部220cは、ガイド軸230によって工具が下穴に導かれたときに、下穴の隅部をすべて削り取るのではなく、前記段部によって定められた変位分のみ減少した切削量を下穴の隅部に与える。そして、この状態で工具を180度回転させ、次の切刃部220aを前記第1加工された下穴の隅部にあてがい、最終的な隅部の加工を行うことができる。
【0035】
図14から図18には、本発明の第2実施形態の変形例が示され、同一又は対応する部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図14には、穴明け軸120に対してガイド軸130が比較的小さく設けられている実施形態を示し、このように、本発明においては、下穴隅部のR径に合わせて、穴明け軸及びガイド軸の大きさを任意に設定可能である。
【0037】
図15から図18は、さらに各切刃部120及び切刃溝121の各種の形状及び配置を示しており、必要に応じて、これらのガイド軸130先端からの位置を任意に選択しあるいは組み合わせることが可能である。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、角穴隅部を正確かつ精密に任意の角穴形状とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる角穴明け工具の好適な第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のA−A′断面図である。
【図4】図2のB−B′拡大断面図である。
【図5】第1実施形態のガイド軸及び切刃部を拡大した斜視図である。
【図6】本発明にかかる角穴明け工具の好適な第2実施例を1の対角線で切った断面正面図である。
【図7】第2実施形態における他の対角線で切った断面正面図である。
【図8】第2実施形態のガイド軸及び切刃部を示す拡大斜視図である。
【図9】第3実施形態の平面図である。
【図10】図9のA−A′断面図である。
【図11】図9のB−B′拡大断面図である。
【図12】図9の左側面図である。
【図13】図9の正面図である。
【図14】第2実施形態の変形例を示す平面図である。
【図15】第2実施形態の他の変形例を示す正面図である。
【図16】本発明に係る角穴明け工具の他の変形例を示す立面図である。
【図17】本発明に係る角穴明け工具の他の変形例を示す立面図である。
【図18】本発明に係る角穴明け工具の他の変形例を示す立面図である。
【図19】従来の角穴隅部をオーバカットする方法を示す説明図である。
【図20】従来のオーバカットの他の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10,110,210 軸状シャンク、20,120,220 穴明け軸、20a,20b,20c,20d,120a,120b,120c,120d,220a,220b,220c,220d 切刃部、21a,21b,21c,21d,121a,121b,121c,121d,221a,221b,221c,221d 切刃溝、30,130,230 ガイド軸、30a,30b,30c,30d,130a,130b,130c,130d 除去された角部。
【出願人】 【識別番号】506261992
【氏名又は名称】有限会社アール・ディ・エム
【出願日】 平成18年7月31日(2006.7.31)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−30163(P2008−30163A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−207333(P2006−207333)