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【発明の名称】 切断装置
【発明者】 【氏名】大西 一正

【要約】 【課題】硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物に対して、優れた切断性能を安定して示す円盤状のブレード用いた切断装置を提供する。

【構成】ブレード1は第1のキャップ付フランジ12bと第2のキャップ付フランジ12aとで挟持され、かつフランジナット13により締め付けられ固定保持されると共に、回転軸3のねじ部に螺着した締め付け用ナット4により回転軸3に固定される。なお、ブレード1と第1のキャップ付フランジ12bと第2のキャップ付フランジ12aの密着性を高めるためにシリコングリースなどを用いることもできる。また、キャップ付フランジ12aとスリーブ10は一体として構成されている。ケース11には固定側ロータリートランス9aが取り付けられ、図示しない超音波発振器が固定側ロータリートランス9aにリード線により接続されている。スリーブ10に回転側ロータリートランス9bを図示しないネジにより固定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断装置に使用される円盤状のブレードを回転軸に固定するためにフランジにおいて、フランジの外周部にキャップを設け、かつキャップの内面に圧電素子が接合されていることを特徴とする。
【請求項2】
前記キャップの内面に接合した圧電素子に15KHz以上の交流電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやシリコンなどの脆い材料から形成された加工対象物の切断あるいは溝入れに有利に用いることができる切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、シリコン、シリコンナイトライド、希土類磁石材料もしくは超硬金属などの硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物を切断あるいは溝入れするために、円盤状のブレードを備えた切断装置が一般的に用いられている。
【0003】
図1は、特許文献1に記載の従来の切断装置5の構成例を示す正面図であり、そして図2は、図1の切断装置5の側面図である。図1及び図2に示す切断装置5は、回転駆動装置6の回転軸3に取付けられた第一のフランジ2a、円盤状のブレード1、及び第二のフランジ2b、そしてこれらのフランジ2a、2bによりブレード1を締め付け固定するためのナット4から構成されている。そして切断装置5の回転駆動装置6を作動させて円盤状の切断ブレード1を回転させながら、加工対象物を切断あるいは溝入れを行う。
【0004】
一方、工作機械のバイトなどの工具に超音波振動を付与しながら加工対象物を切削する方法は知られている。このような切削方法は、超音波切削加工と呼ばれており、非特許文献1に詳しく記載されている。超音波切削加工は、加工対象物と工具との摩擦抵抗が小さくなるために、加工面の熱歪みが低減され、加工精度が高くなり、そして切削工具の寿命が長くなるなどの利点を有している。
【0005】
特許文献2には、円盤状のブレードを回転させる回転軸に超音波振動子が付設された構成の切断装置が開示されている。この切断装置は、円盤状のブレードを回転させ、かつ超音波振動子にて発生させた超音波振動を、回転軸を介して円盤状のブレードに付与しながら、ブレードの外縁端部にて加工対象物を切断する。この切断装置の円盤状のブレードは、振動伝達方向変換器とナットとにより締め付けられた状態で回転軸の先端に固定される。回転軸に付設された超音波振動子は、回転軸の軸方向に振動する超音波振動を発生させ、この超音波振動は、振動伝達方向変換器によりブレードの径を拡縮させる方向に振動する超音波振動へと変換され、ブレードに付与される。超音波振動の伝達方向を変換するため、回転軸や振動伝達方向変換器は、有限要素法などによる数値計算により所定の形状に設計される。
【特許文献1】特開平8−127023公報
【特許文献2】特開2000−210928公報
【非特許文献1】超音波便覧編集委員会、「超音波便覧」、丸善株式会社、平成11年8月、p679−684
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献2に記載の切断装置においては、ブレードに付与する超音波振動を付与するために回転軸にランジュバン型超音波振動子を接合している。そしてブレードに超音波振動を与えるために、それよりはるかに質量の大きい回転軸などを超音波振動させなければならない。このため、大きな電力が必要となる。
【0007】
また、回転軸や振動伝達方向変換器の形状により、振動モードが複雑になり、所望のブレードの径方向の振動は得られないという問題点がある。
【0008】
さらに、ブレードの厚さが、1mm以下特に0.5mm以下ではブレードの面方向と垂直な方向の振動が大きくなり、被加工物の加工精度を低下させ、そしてブレードの消耗を大きくする。
【0009】
本発明の目的は、1mm以下の薄いブレードにおいても優れた加工精度を持ち、かつブレードの消耗の小さい切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、切断装置に使用される円盤状のブレードを回転軸に固定するためにフランジにおいて、フランジの外周部にキャップを設け、かつキャップの内面に圧電素子が接合されているものである。
【0011】
本発明はまた、前記キャップの内面に接合した圧電素子に15KHz以上の交流電圧を印加する切断装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の円盤状のブレードを持つ切断装置は、キャップ付フランジのキャップ部の効果により、円盤状のブレードに径方向の振動を大きくし、不要なブレード面に垂直である振動変位を小さくできるので切断幅を高精度化できる。そして、ブレードの消耗も小さくできる。
【0013】
本発明の円盤状のブレードを持つ切断装置は、回転質量を小さくできるので高速回転に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図3の側面図とそのA−A線での断面図である図4を用いて説明する。キャップ付フランジにより、ブレード1を切断装置の回転軸3に装着した状態を示す。ここで回転駆動機構、軸受け機構などは図示しない。ブレード1は第1のキャップ付フランジ12bと第2のキャップ付フランジ12aとで挟持され、かつフランジナット13により締め付けられ固定保持されると共に、回転軸3のねじ部に螺着した締め付け用のナット4により回転軸3に固定される。なお、ブレード1と第1のキャップ付フランジ12bと第2のキャップ付フランジ12aの密着性を高めるためにシリコングリースなどを用いることもできる。また、キャップ付フランジ12aとスリーブ10は一体として構成されている。ケース11には固定側ロータリートランス9aが取り付けられ、図示しない超音波発振器が固定側ロータリートランス9aにリード線により接続されている。スリーブ10に回転側ロータリートランス9bを図示しないネジにより固定する。
【0015】
また、ブレード1の形状は、外径が100mm、内径が50mmそして厚さが0.06mmであり、そして、ブレード1は、以下のように作成する。メッキ槽に収容された硫酸ニッケル液にダイヤモンド砥粒を混入せしめ、この硫酸ニッケル液にダイヤモンド砥粒が混入したメッキ液中で鋼製の円形基板にニッケルメッキすることにより、ダイヤモンド砥粒をニッケルメッキで固定した複合メッキ層からなる電着砥粒層を形成する。
【0016】
キャップ付フランジ12aのキャップ部7a、7bを図3の正面図、そして図3のA−A線で切断した図4の断面図を用いて示す。キャップ部とはキャップに圧電セラミックを接合した構成である。キャップは外径95mm、内径75mmそして高さ5mmの板厚が1mmのアルミ製であり、機械加工により作成される。そのキャップの内側に外径91mm、内径79mm、厚さ1mmの圧電セラミック8a、8bを両者の中心軸を一致させて、エポキシ樹脂により接合する。圧電セラミック8a、8bは板厚方向に分極されている。
【0017】
さらにこの圧電セラミック8a、8bを接合したキャップ部7a、7bを外径95mm、内径50mmそして厚さが10mmのチタン製のフランジ2a、2bにキャップ部7a、7bとの当接部に溝を設け、ここに圧電セラミック8a、8bを接合したキャップ部7a、7bを嵌め込みエポキシ樹脂により接合する。このようにして作成した構成をキャップ付フランジ12と呼ぶ。
【0018】
次に上記のキャップ付フランジ12を使用した切断装置の運転方法について同じく図4の断面図を用いて説明する。まず図示しないモータの電源をいれ回転軸3に12000回転/毎分の回転をさせる。次にロータリートランス9a、9bを介してキャップ付フランジ12a、12bのリング状の圧電セラミック8a、8bに図示しない超音波発振回路からの約26KHzの超音波交流電圧を印加する。超音波交流電圧を印加することにより、キャップ付フランジ12a、12bとブレード1は、約26KHzの振動が励起される。次に回転するブレード1と図示しない加工対象物に冷却水をノズルから与え、加工対象物であるガラスを切断または溝入れする。
【0019】
その結果、ブレード1の先端振動変位は径方向は約2μm、径と垂直な方向は約0.2μmであった。そのときの回転軸を駆動するためのモータの電力は、超音波振動を印加しないときに比較して約1/2、ブレードの消耗量は約1/2になった。
【0020】
ここで、キャップ付フランジ12a、12bとブレード1の振動モードについて説明する。図7は振動モードを有限要素法を用いて計算したものであり、計算を簡単にするためキャップ付フランジ12a、12bに挟まれるブレード1の中心面を対称面として計算した。矢印方向は振動の方向を、矢印長さは振動の大きさを示している。振動モードは約26KHzの1次の径の拡がり振動である。キャップ部が接続されたフランジ面と反対側のフランジ面を固定して計算したが、キャップ部のブレード側の面とブレード1は、ほぼフリーの状態で振動できる。したがって、径方向の振動変位を大きくすることができる。
【0021】
上記はキャップ付フランジに挟まれるブレードの中心面を対称面として計算したので、ブレードの軸方向の振動変位はない。軸方向の変位を計算するためには、ブレードの中心面を対称面の拘束条件を外し、計算する。そして、計算を簡単にするため図7と同様に図8でも全体の1/6だけを計算した。矢印方向は振動の方向を、矢印長さは振動の大きさを示している。振動モードは約26KHzの1次の径の拡がり振動である。キャップ部が接続されたフランジ面と反対側のフランジ面を固定して計算したが、キャップ部のブレード側の面とブレードは、ほぼフリーの状態で振動できる。したがって、径方向の振動変位を大きくすることができる。図7に比較して振動変位量は、約1/2となっているが、これは、片側だけにキャップ付フランジを用いたためである。また、曲げ方向の変位である軸方向の変位は径方向の変位に比較して最大変位で約1/7であり、実用的には問題にならない大きさである。
【0022】
さらにブレードのキャップ付フランジのキャップ部位置と径方向の変位と軸方向の変位の比の関係を、有限要素法を用いて計算した。その結果を図9に示す。図9の横軸は、ブレードの半径とキャップ部の外側の半径の差であり、そして縦軸は径方向の変位と軸方向の変位の比である。またブレードは外径が100mm、内径が50mmそして厚さが0.06mmである。
【0023】
図9の結果よりキャップ部位置がブレードの先端に近づくに従い、径方向の変位と軸方向の変位の比は大きくなる。しかし、その比の変化は小さい。これはキャップ部がブレードの支持と径方向に加速度を与える役割をしているため、通常の支持だけとは異なり曲げ方向の変位が小さくなると考えられる。
【0024】
以上の有限要素法による計算結果からキャップ部の効果により一方だけにキャップ付フランジを使用し、他方をフランジとブレードが一体となったものあるいは、通常のフランジを使用できる。
【0025】
また、上記の実施の形態では金属製のブレードを用いたが、キャップ部の効果によりヤング率の低いレジン製のブレードでも同じ以上の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の切断装置は、ガラスやシリコンなどの脆い材料から形成された加工対象物の切断あるいは溝入れに有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の切断装置の構成例を示す正面図である。
【図2】図1の切断装置の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態のキャップ付フランジなどを示す正面図である。
【図4】図3のA−A線で切断した断面図である。
【図5】キャップ部の詳細を示す側面図である。
【図6】図5のA−A線で切断した断面図である。
【図7】キャップ付フランジとブレードの振動モードについて説明する図である。
【図8】一方だけのキャップ付フランジとブレードの振動モードについて説明する図である。
【図9】キャップ部位置と径方向の変位と軸方向の変位の比の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ブレード
2 フランジ
3 回転軸
4 ナット
5 切断装置
6 回転駆動装置
7 キャップ部
8 圧電セラミック
9 ロータリートランス
10 スリーブ
11 ケース
12 キャップ付フランジ
13 フランジナット
【出願人】 【識別番号】500222021
【氏名又は名称】大西 一正
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男


【公開番号】 特開2008−18521(P2008−18521A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−217526(P2006−217526)