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【発明の名称】 穴加工工具
【発明者】 【氏名】滝口 正治

【氏名】金星 彰

【氏名】遠藤 邦博

【要約】 【課題】工具本体の動バランス及び剛性を向上させるとともに、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができ、真円度の高い加工穴を寸法精度良く成形することができる穴加工工具を提供する。

【構成】工具本体21の先端部に凹部30及び取付座31が形成され、取付座31には、平板状のインサート50が、その厚さ方向を工具本体21径方向に向けて取り付けられ、インサート50の工具回転方向T後方側を向く面が被押圧面61とされ、すくい面の工具本体21径方向外側の稜線部に外周切刃が形成されるとともに工具本体21先端側の稜線部に食い付き刃が形成され、外周切刃にはバックテーパが付されており、取付座31の工具回転方向T後方側には、インサート50の被押圧面61を押圧して前記外周切刃の工具本体21径方向位置を調整する押圧部材40が配置されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、該下穴の内壁面を切削加工する穴加工工具であって、
軸線回りに回転される工具本体の先端部には、前記工具本体先端側及び前記工具本体径方向外側に向けて開口された凹部が形成され、該凹部の工具回転方向後方側に取付座が形成され、
該取付座には、平板状のインサートが、その厚さ方向を前記工具本体径方向に向けて取り付けられ、該インサートの前記工具本体径方向内側を向く面が着座面とされ、前記インサートの前記工具回転方向後方側を向く面が被押圧面とされ、前記インサートの前記工具回転方向前方側を向く面がすくい面とされ、このすくい面の前記工具本体径方向外側の稜線部に外周切刃が形成されるとともに前記工具本体先端側の稜線部に食い付き刃が形成され、前記外周切刃には、前記工具本体後端側に向かうにしたがい漸次前記工具本体径方向内側に向けて後退するようにバックテーパが付されており、
前記取付座の前記工具回転方向後方側には、前記インサートの前記被押圧面を押圧して前記外周切刃の前記工具本体径方向位置を調整する押圧部材が配置されていることを特徴とする穴加工工具。
【請求項2】
前記取付座の前記工具回転方向後方側には、前記押圧部材として、先端に前記被押圧面と当接される押圧面が形成された押圧ピンが、前記インサートの移動方向と交差する方向に延びるように配置されており、
該押圧ピンの後端側には、前記押圧ピンによって前記インサートを押圧する際の押圧力を調整する押圧ネジが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の穴加工工具。
【請求項3】
前記取付座の前記工具本体後端側には、前記インサートの工具本体後端側を向く側面を押圧して前記インサートの軸線方向位置を調整する調整部材が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の穴加工工具。
【請求項4】
前記インサートには、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部が備えられており、該切刃部に、前記外周切刃及び前記食い付き刃が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の穴加工工具。
【請求項5】
前記切刃部は、平板状をなし、その厚さ方向を前記インサートのうち前記食い付き刃に連なる逃げ面に向けて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の穴加工工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、下穴の内壁面を切削加工する際に用いられる穴加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の穴加工工具としては、軸線回りに回転される長尺円柱状の工具本体の先端部に、切刃を備えた刃先部がろう付けされたリーマが知られている。このリーマが、軸線回りに回転されるとともに軸線方向に送りを与えられて、被切削材に予め形成された下穴に挿入され、該下穴の内壁面を刃先部に形成された切刃によって切削して、所定の内径の加工穴を形成するものである。
【0003】
ところで、このように刃先部が工具本体にろう付けされたものでは、切刃の径方向の位置調整を行うことができず、ろう付け精度によって切刃位置が決定してしまうことになる。このため、要求される寸法公差が非常に小さな加工穴の加工には対応することができないことがあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に示すように、工具本体の先端に、切刃を有するインサートを着脱可能に取り付けて、このインサートに設けられた切刃の工具本体径方向の位置を調整できる位置調整機構を備えたインサート式のリーマが提供されている。図7及び図8に、従来の位置調整機構を有するインサート式のリーマの一例を示す。
【0005】
図7及び図8に示すリーマ1は、軸線O回りに回転される長尺円柱状の工具本体2を有し、工具本体2の先端側外周に工具本体2先端側及び工具本体2径方向外側に向けて開口した凹部3が形成され、この凹部3の工具回転方向T後方側には取付座4が形成されている。また、工具本体2の外周には、図8に示すように、周方向に等間隔となるように複数のガイドパッド5が配置されており、このガイドパッド5は、凹部3及び取付座4と干渉する部分では、これら凹部3及び取付座4の工具本体2後端側まで延びるように、その他の部分では工具本体2の先端まで達するように形成されている。
また、前記取付座4には、切刃6Aを有する平板状のインサート6が、その厚さ方向を工具回転方向Tに向けて着座されてクランプネジ7によって固定されている。
【0006】
このインサート6の切刃6Aは工具本体2径方向外側及び工具本体2先端側に向けられており、インサート6の工具本体2の径方向内側には、インサート6の径方向位置を調整する調整機構として、2つの調整ネジ8、9が軸線O方向に並ぶように配置されている。なお、工具本体2後端側に位置する調整ネジが第1調整ネジ8とされ、工具本体2先端側に位置する調整ネジが第2調整ネジ9とされており、これら第1、第2調整ネジ8、9の先端面がインサート6の工具本体2径方向内側を向く面に当接されている。また、取付座4の工具本体2後端側には、工具本体2径方向外側に向けて開口した収容孔10が形成されており、この収容孔10にはインサート6の軸線O方向位置を調整する調整クサビ11が挿入されている。
【0007】
このように構成されたリーマ1は、工作機械の主軸端に装着されて軸線O回りに回転されるとともに、軸線O方向先端側に送りを与えられ、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、この下穴の内壁面をインサート6の切刃6Aによって切削して所定の内径の加工穴を形成するものである。
この切削を行う際には、加工穴の内壁面とガイドパッド5とが摺動することにより、リーマ1の軸線Oの振れを防止して寸法精度の向上を図っている。
【0008】
この構成のリーマ1においては、第1調整ネジ8及び第2調整ネジ9を使用して、インサート6に形成された切刃6Aの軸線Oに対する傾斜角(バックテーパ)と工具本体2径方向の位置を調整することができ、所定の内径の加工穴を寸法精度良く形成することができるものであり、加工穴に要求される寸法公差が小さい場合であっても対応することが可能となる。また、前記バックテーパを適正に付すことにより、加工穴の内壁面とインサート6との無用な接触を防止して切削抵抗の低減を図ることができるものである。
【特許文献1】特開2002−160124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この構成のリーマ1においては、平板状のインサート6がその厚さ方向を工具回転方向に向くようにして取り付けられているので、取付座4の工具回転方向T前方側に位置する凹部3を大きく開口させる必要がある。例えば図8に示すリーマ1では、凹部3の軸線Oに直交する断面において最も工具本体2径方向内側に凹んだ部分の凹み量は、工具本体2の外径の2/5程度(工具本体2の半径の4/5程度)であり、凹部3の周方向の大きさは、工具本体2の外周の1/5〜1/4程度とされている。このように凹部3が工具本体2に対して大きいために、軸線Oに直交する断面において重量バランスが悪く、工具本体2を軸線O中心に高速回転させた際の動バランスが取れなくなってしまい、軸線O位置がばらついて真円度の高い加工穴を寸法精度良く形成できなくなるおそれがあった。
【0010】
さらに、凹部3及び取付座4を大きく形成するために、複数のガイドパッド5が凹部3の工具本体2後端側までの長さとなって、工具本体2先端側でガイドパッド5と加工穴とがバランス良く摺動することができず、リーマ1の軸線Oに振れが生じてしまうおそれがあった。また、凹部3を軸線O方向にも大きく取った場合にも、ガイドパッド5が短くなって軸線Oの振れがさらに増長されるおそれがあった。
【0011】
また、工具本体2の先端部に、凹部3、クランプネジ7が螺着されるクランプネジ孔12、2つの調整ネジ8、9を収容する調整ネジ孔13、13、調整クサビ11を収容する収容孔10を形成する必要があり、工具本体2を切り欠く部分が多くなって工具本体2の剛性が不足してしまい、工具本体2を高速回転した際に振動が生じるおそれがあった。特に、小径のリーマ1であった場合には、凹部3、クランプネジ孔12、調整ネジ孔13、収容孔10を形成するスペースがないために、このような調整機構を有するインサート式のリーマを提供することができなかった。
【0012】
また、バックテーパを調整する調整機構と工具本体2径方向位置を調整する調整機構とが同一の第1、第2調整ネジ8、9であるので、例えば、バックテーパを調整した後に工具本体2径方向の位置を調整する際に、既に調整したバックテーパが変化してしまい、再度調整する必要が生じることがあった。このため、インサート6の位置調整に多くの時間と労力が必要となり、インサート6の位置調整を簡単に、かつ、精度良く行うことができなかった。
【0013】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、工具本体の切り欠く部分を小さくして工具本体の動バランス及び剛性を向上させるとともに、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができ、真円度の高い加工穴を寸法精度良く成形することができる穴加工工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために、この発明は、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、該下穴の内壁面を切削加工する穴加工工具であって、軸線回りに回転される工具本体の先端部には、前記工具本体先端側及び前記工具本体径方向外側に向けて開口された凹部が形成され、該凹部の工具回転方向後方側に取付座が形成され、該取付座には、平板状のインサートが、その厚さ方向を前記工具本体径方向に向けて取り付けられ、該インサートの前記工具本体径方向内側を向く面が着座面とされ、前記インサートの前記工具回転方向後方側を向く面が被押圧面とされ、前記インサートの前記工具回転方向前方側を向く面がすくい面とされ、このすくい面の前記工具本体径方向外側の稜線部に外周切刃が形成されるとともに前記工具本体先端側の稜線部に食い付き刃が形成され、前記外周切刃には、前記工具本体後端側に向かうにしたがい漸次前記工具本体径方向内側に向けて後退するようにバックテーパが付されており、前記取付座の前記工具回転方向後方側には、前記インサートの前記被押圧面を押圧して前記外周切刃の前記工具本体径方向位置を調整する押圧部材が配置されていることを特徴としている。
【0015】
この構成の穴加工工具では、インサートの工具回転方向後方側に配置された押圧部材によってインサートを工具回転方向前方側に移動させることにより、インサートの工具本体径方向外側に配置された外周切刃の径方向位置を調整することができる。また、外周切刃には工具本体後端側に向かうにしたがい漸次工具本体径方向内側に向けて後退するようにバックテーパが既に付されているので、外周切刃のバックテーパを調整する必要がない。
したがって、押圧部材を操作して外周切刃の径方向位置のみを調整すれば良いので、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができる。
【0016】
さらに、インサートとして、平板状をなしてその厚さ方向を前記工具本体径方向に向けて取り付けられ、工具回転方向前方側を向く面がすくい面とされて、このすくい面の工具本体径方向外側の稜線部に外周切刃が形成された、いわゆる縦刃のインサートを取り付けているので、インサートの厚さ方向を工具本体の径方向と略一致するようにして着座することができ、取付座を形成するために工具本体を切り欠く部分を小さくすることができるとともに、取付座の工具回転方向前方側に位置する凹部を小さくすることができる。
【0017】
また、押圧部材を取付座の工具本体後端側に配置すればよいので、やはり工具本体を切り欠く部分を小さくすることができる。したがって、工具本体の動バランス及び剛性を向上させて工具本体の振動を防止でき、加工穴を寸法精度良く形成することができる。また、小径の加工穴を形成する穴加工工具であっても径調整可能なインサート式の穴加工工具を構成することができる。
【0018】
また、凹部及び取付座を形成する部分を小さくすることができるので、例えば、ガイドパッドを工具本体の外周に配置する場合に、凹部及び取付座と干渉する部分が小さくなって、工具本体先端側近傍にまでガイドパッドをバランスよく配置することができ、加工穴とガイドパッドの摺動により、工具本体の軸線の振れを確実に防止して、真円度の高い加工穴を形成することもできる。
【0019】
ここで、前記取付座の前記工具回転方向後方側に、前記押圧部材として、先端に前記被押圧面に当接される押圧面が形成された押圧ピンを、前記インサートの移動方向と交差する方向に延びるように配置し、該押圧ピンの後端側に、前記押圧ピンによって前記インサートを押圧する際の押圧力を調整する押圧ネジを配置することにより、この押圧ネジのねじ込み量によって前記押圧力を調整して、外周切刃の径方向位置の調整を行うことができ、インサートの位置調整をさらに簡単に行うことができる。また、押圧ピンが移動方向と交差する方向に延びるように配置されているので、取付座の工具回転方向後方側を大きく切り欠く必要がなく、工具本体の剛性及び重量バランスを向上させることができる。
【0020】
また、前記取付座の前記工具本体後端側に、前記インサートの工具本体後端側を向く側面を押圧して前記インサートの軸線方向位置を調整する調整部材を配置することにより、インサートの工具本体先端側に向けられた食い付き刃の工具本体先端面からの突出量(いわゆる、アドバンス量)を調整することができ、切削加工を良好に行うことができるとともに、切削時の切削抵抗によるインサートの欠損を防止することができる。
【0021】
さらに、前記インサートとして、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部を備え、該切刃部に、前記外周切刃及び前記食い付き刃が形成されたものを用いることにより、切刃の耐摩耗性を向上させることができ、このインサートの寿命延長を図ることができる。
【0022】
また、前記切刃部を、平板状をなすものとし、その厚さ方向を前記インサートのうち前記食い付き刃に連なる逃げ面に向けて配置することにより、再研磨を行う際にはすくい面に沿って研磨することになり、食い付き刃の軸方向位置の変化が非常に小さくなる。よって、再研磨後の食い付き刃の軸線方向の位置調整を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、工具本体の切り欠く部分を小さくして工具本体の動バランス及び剛性を向上させるとともに、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができ、真円度の高い加工穴を寸法精度良く成形することができる穴加工工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の第1の実施形態である穴加工工具について添付した図面を参照にして説明する。図1から図3に、本発明の実施形態である穴加工工具としてのリーマを示す。
本実施形態であるリーマ20は、軸線Oを中心とした多段円柱状の工具本体21を有し
ており、工具本体21の先端側(図1において下側)が概略円柱状をなす加工部22とされ、工具本体21の後端側(図1において上側)には、この加工部22よりも大径とされた鍔部23が形成され、この鍔部23のさらに後端側に、このリーマ20を工作機械の主軸端に装着するための工具ホルダ(図示なし)が取り付けられる取付部24が形成されている。
【0025】
また、この工具本体21の先端面には、加工部22よりも小径のパイロット25が設けられている。
さらに、この工具本体21には、取付部24に開口して軸線Oに沿って延びて、工具本体21先端面から前記加工部22の全長の約1/5だけ後退した部分にまで達するクーラント供給孔26が穿設されるとともに、このクーラント供給孔26から工具本体21径方向外側に向けて延びて工具本体21の外周面に開口するクーラント吐出孔27が穿設されている。
【0026】
この工具本体21(加工部22)の先端側には、工具本体21先端側及び径方向外側に向けて開口された凹部30が形成されている。この凹部30の工具本体21後端側の壁面30Aは、図2に示すように、工具本体21径方向内側及び工具本体21後端側に向けて凹んだ凹曲面状をなしており、この壁面30Aには、前記クーラント吐出孔27から工具本体21径方向先端側及び工具回転方向T後方側に向けて延びるクーラント排出孔28が開口されている。
【0027】
そして、本実施形態においては、前記凹部30は、軸線Oに直交する断面において図3に示すように、工具本体21径方向内側に凹んだ凹曲線状をなして、工具本体21後端側へ向けて軸線Oに平行に延びるように形成されており、前記凹曲線の底部30B(最も径方向内側に凹んだ部分)の工具本体21外周面からの凹み量は工具本体21の外径の1/3(工具本体21の半径の2/3)程度とされ、凹部30の周方向の大きさは、工具本体21の外周の1/8程度とされている。また、凹部30の軸線O方向の長さは、図1に示すように、加工部22の全長の1/20程度とされている。
【0028】
この凹部30の工具回転方向T後方側には、後述するインサート50を着脱可能に取り付けるための取付座31が形成されている。この取付座31は、工具本体21径方向外側を向く壁面31Aを有しており、この壁面31Aは、図3に示すように、凹部30をなす凹曲線の一端(工具回転方向T後方側端)に連なるように構成されている。
【0029】
また、取付座31の工具本体21径方向外側を向く壁面31Aは、軸線Oに直交する断面において図3に示すように、軸線Oからの径方向距離が工具回転方向T後方側から前方側へと向かうにしたがい漸次大きくなるように、かつ、工具本体21の側面視において図2に示すように、軸線Oと平行に延びるように形成されている。そして、この壁面31には軸線Oに対して直交する方向に延びるクランプネジ孔32が穿設されている。
【0030】
この取付座31の工具回転方向T後方側には、取付座31の工具回転方向T前方側を向く壁面に開口するとともに、工具本体21径方向外側を向く壁面31Aが延在する方向に対して略直交する方向に延びるピン孔33が形成されている。このピン孔33の前記取付座31側とは反対側には、ピン孔33と同軸状に延びる押圧ネジ孔34が形成されている。この押圧ネジ孔34は前記ピン孔33よりも一段大径とされ内周面に雌ネジが形成されている。さらに、工具本体21には、この押圧ネジ孔34に連通するとともに工具本体21外周面に開口した大径孔35が形成されている。
【0031】
このピン孔33には概略円柱状をなす押圧ピン40が挿入されており、押圧ピン40の先端には、工具回転方向T前方側を向いて取付座31へと突出される押圧面40Aが形成されており、この押圧面40Aは、押圧ピン40の先端側に向かうにしたがい漸次押圧ピン40の内側に向かうように押圧ピン40の軸線に対して傾斜させられている。
押圧ネジ孔34には、概略円柱状をなして外周面に雄ネジが形成された押圧ネジ41が螺着されており、押圧ネジ41の先端面が押圧ピン40の後端面に当接されている。また、押圧ネジ41の後端面には、レンチ等の作業用工具が係合される係合孔(図示なし)が形成されており、この係合孔が前記大径孔35を介して工具本体21外周面に向けて露呈されている。
【0032】
また、凹部30の工具本体21後端側には、工具本体21径方向外側に向けて開口した切欠部36が形成され、この切欠部36の工具本体21後端側を向く面には、取付座31にまで貫通した貫通ネジ孔37が形成されており、この貫通ネジ孔37には、概略円柱状をなして外周面に雄ネジを備えた調整ネジ42が螺着されている。
【0033】
また、この工具本体21の加工部22の外周部には、硬質材料で構成され、外形が概略長円平板状をなす複数のガイドパッド38が軸線Oと平行に延びるように配置されており、本実施形態では、図3に示すように、6つのガイドパッド38が周方向に等間隔となるように配置されている。また、図1に示すように、凹部30、取付座31及び切欠部36と干渉する部分に配置されたガイドパッド38Aは、前記切欠部36の工具本体21後端まで延びるように形成されており、前記大径孔35と干渉する部分に配置されたガイドパッド38Bは、大径孔35を挟んで工具本体21先端側及び後端側に2分割するように形成され、その他のガイドパッド38Cは、工具本体21先端面にまで達するように形成されている。
【0034】
次に、この工具本体21の取付座31に着脱可能に取り付けられるインサート50について説明する。
このインサート50は、図2及び図3に示すように、概略四角形平板状をなしており、厚さ方向を向く2つの面と4つの側面部とを有している。インサート50の厚さ方向を向く一方の面が工具本体21径方向内側を向いて取付座31の前記工具本体21径方向外側を向く壁面31Aに着座される着座面51とされ、厚さ方向を向く他方の面が工具本体21径方向外側を向いて外周逃げ面52とされている。
これら一方の面(着座面51)及び他方の面(外周逃げ面52)には、インサート50の厚さ方向に貫通する挿通孔53が穿設されている。
【0035】
このインサート50の側面のうちのひとつが工具回転方向T前方側を向いてすくい面54とされており、このすくい面54をなす側面部の一端側(工具本体21先端側)に、ダイヤモンド焼結体で構成された平板状の切刃部55が設けられている。この切刃部55の前記厚さ方向を向く他方の面(外周逃げ面52)との交差稜線部に外周切刃56が形成されており、いわゆる、縦刃のインサート50とされている。なお、このすくい面54は、図3に示すように、着座面51に対して鈍角に交差するように配置されている。
【0036】
また、取付座31に装着された状態において工具本体21先端側に向けられる側面部と外周逃げ面52とされた他の面との交差部分には面取部58が形成されており、この面取部58と切刃部55との交差稜線部に食い付き刃59が設けられている。つまり、すくい面54に対向する側から見て、図2に示すように、工具本体21先端側に向かうにしたがい工具本体21径方向内側に後退するように傾斜した食い付き刃59が、外周切刃56の工具本体21先端側に連なるように配置されているのである。
【0037】
また、すくい面54とされた側面部の反対側に位置する側面部、つまり工具回転方向T後方側を向く側面部が、前記押圧ピンの押圧面に当接される被押圧面61とされている。被押圧面61は、前記着座面51に対して鈍角に交差するように、工具本体21径方向外側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に突出するように形成されている。これにより、インサート50は、図3に示すように、取付座31に装着状態における軸線Oに直交する断面が概略台形をなしている。
【0038】
さらに、工具本体21径方向外側に向けられた外周逃げ面52は、すくい面54に対向する側から見て図2に示すように、工具本体21後端側に向かうにしたがい漸次工具本体21径方向内側に向かうように軸線Oに対して傾斜させられており、外周逃げ面52と切刃部55との交差稜線部に形成された外周切刃56には、工具本体21後端側に向かうにしたがい漸次工具本体21径方向内側に向かうようにバックテーパが付されることになる。なお、本実施形態においては、バックテーパ量は、40μm/15mm〜80μm/15mmの範囲内に設定されており、より具体的には、60μm/15mmとされている。
【0039】
このような構成とされたインサート50が工具本体21の取付座31に、以下のようにして取り付けられる。すくい面54とされる側面部が工具回転方向T前方側を向くようにして、取付座31の工具本体21径方向外側を向く壁面31Aにインサート50の厚さ方向を向く一方の面(着座面51)が当接されるようにして、インサート50が取付座31に着座される。ここで、インサート50の被押圧面61が前記押圧ピン40の押圧面40Aと当接されるとともに、インサート50の工具本体21後端側を向く側面部が前記調整ネジ42の先端に当接させられている。この状態で、挿通孔53に挿通されたクランプネジ70を、取付座31の工具本体21径方向外側を向く壁面31Aに開口されたクランプネジ孔32に螺着することにより、インサート50が取付座31に取り付けられる。
【0040】
このようにして工具本体21の取付座31にインサート50が取り付けられることで構成されたリーマ20は、前記取付部24に装着された工具ホルダを介して工作機械の主軸端に装着され、軸線O回りに回転されるとともに、軸線O方向先端側に向けて送られて、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、この下穴の内壁面を食い付き刃59、外周切刃56によって切削して、所定の内径の加工穴を形成するものである。
【0041】
この切削加工の際には、工作機械から供給されたクーラントが、クーラント供給孔26を介してクーラント吐出孔27から加工穴の内壁面に向けて吐出されてガイドパッド38と加工穴内壁面との摺動を円滑とするとともに、クーラント排出孔28からインサート50に向けて排出されて、外周切刃56、食い付き刃59が冷却されて切削加工を良好に行うことができる。
【0042】
ここで、このリーマ20においてインサート50の位置調整は、以下のようにして行われる。大径孔35を介して工具本体21外周面に露呈された係合孔に作業用工具を係合させて押圧ネジ41をねじ込んで、押圧ピン40を取付座31側に向けて移動させる。すると、インサート50の被押圧面61が前記壁面31Aに当接されている着座面51に対して鈍角に交差するように、工具本体21径方向外に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に突出するように形成されているので、押圧面40Aが前記被押圧面61を押圧することになり、インサート50が取付座31の工具本体21径方向外側を向く壁面31Aに沿って工具回転方向T前方側へと移動する。ここで、取付座31の工具本体21径方向外側を向く壁面31Aが、軸線Oに直交する断面において図3に示すように、軸線Oからの径方向距離が工具回転方向T後方側から前方側へと向かうにしたがい漸次大きくなるように配置されているので、インサート50が工具本体21径方向外側に向けて突出することになる。
したがって、押圧ネジ41によって押圧ピン40によるインサート50の押圧力を調整することにより、外周切刃56の工具本体21径方向位置を調整することができる。
【0043】
また、インサート50の外周逃げ面52は工具本体21後端側に向かうにしたがい漸次工具本体21径方向内側に向けて後退していて、外周切刃56にはバックテーパが既に付されており、このバックテーパ量は、インサート50が工具回転方向T前方側に移動しても変化しないので、外周切刃56のバックテーパを調整する必要がない。
このように、本実施形態であるリーマ20によれば、押圧ネジ41を操作して外周切刃56の径方向位置のみを調整すれば良いので、インサート50の位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができる。
【0044】
さらに、インサート50として、四角形平板状をなしてその厚さ方向を向く一の面を工具本体21径方向内側に向けた着座面51とし、厚さ方向を向く他の面を工具本体21径方向外側に向けて外周逃げ面52とし、工具回転方向T前方側に向けた側面部をすくい面54とし、すくい面54と外周逃げ面52との交差稜線部に外周切刃56を形成した、いわゆる縦刃のインサート50を取り付けているので、インサート50の厚さ方向を工具本体21の径方向と略一致するようにして取り付けることができ、取付座31を形成するために工具本体21を切り欠く部分を小さくすることができるとともに、取付座31の工具回転方向T前方側に位置する凹部30を小さくすることができる。したがって、工具本体21の動バランス及び剛性を向上させて工具本体21の振動を防止でき、加工穴を寸法精度良く形成することができる。また、小径の加工穴を形成するリーマであっても径調整可能なインサート式の穴加工工具を構成することができる。
【0045】
ここで、本実施形態においては、凹部30の軸線Oに直交する断面がなす凹曲線の底部30A(最も径方向内側に凹んだ部分)の工具本体21外周面からの凹み量が、工具本体21の外径の1/3(工具本体21の半径の2/3)程度とされて工具本体21に対して小さくされているので、加工部22の外周に形成された6つのガイドパッド38のうちの2つのガイドパッド38Aが凹部30及び取付座31の工具本体21後端側にまで延びるように形成され、大径孔35が形成された部分に配置されたガイドパッド38Bが大径孔35で2分割されるようにして工具本体21先端側にまで配置され、残りの3つのガイドパッド35Cが工具本体21の先端面にまで達するように形成することができる。
また、凹部30の軸線O方向の長さが加工部22の全長の1/20程度と短くされているので、凹部30及び取付座31の工具本体21後端側に配置されたガイドパッド38Aも工具本体21先端側近傍まで延びるように形成することができる。
【0046】
このようにガイドパッド38を配置できるので、切削を行うインサート50の近傍において加工穴とガイドパッド38とをバランスよく摺動させることができ、リーマ20の軸線Oの振れを確実に防止して、真円度の高い加工穴を寸法精度良く形成することができる。このように真円度の高い加工穴を形成できるため、従来のリーマ20では加工できなかった高い寸法公差が要求される加工穴(例えば、エンジンのカム穴)の加工にこのリーマ20を使用することができ、このような加工穴の形成を効率良く行うことができる。
【0047】
また、取付座31の工具本体21後端側に切欠部36が形成され、この切欠部36の工具本体21後端側を向く面に形成された貫通ネジ孔37に螺着された調整ネジ42がインサート50の工具本体21後端側を向く側面部に当接されているので、インサート50の工具本体21先端側に向けられた食い付き刃59の工具本体21先端面からの突出量(アドバンス量)を調整することができる。
【0048】
さらに、インサート50にダイヤモンド焼結体で構成された切刃部55が形成され、この切刃部55に外周切刃56、食い付き刃59が形成されているので、これら外周切刃56、食い付き刃59の耐摩耗性を向上させることができ、このインサート50の寿命延長を図ることができる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態である穴加工工具について図4から図6を参照にして説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第2の実施形態である穴加工工具においては、第1の実施形態に対してインサート50の構成のみが異なっている。
【0050】
第2の実施形態である穴加工工具に装着されるインサート50は、図4及び図6に示すように、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部55が概略板状をなしており、この切刃部55がインサート50の食い付き刃59に連なる面取部58に対して積層するように配置されているのである。
【0051】
この構成の穴加工工具においては、食い付き刃59及び外周切刃56が摩耗して再研磨を行う際に、すくい面54に沿って研磨することになり、食い付き刃59の軸方向位置の変化が非常に小さくなる。よって、再研磨した後に調整ネジ42によってインサート50をわずかに押圧することで食い付き刃59の軸線方向の位置調整を行うことができる。また、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部55の再研磨量も少なくて済む。
さらに、ダイヤモンド焼結体の面粗度は研磨しない面が約3倍程度良いことが知られており、本実施形態では、食い付き刃59に連なる逃げ面として切刃部55のうち面粗度の良好な部分が向けられることになり、摩擦抵抗が低減するため切刃部55の摩耗が抑制されてこのインサート50の寿命延長を図ることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態であるリーマについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、工具本体の後端側に鍔部と取付部とを備えたリーマとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、鍔部がなく全長にわたって略一定の外径とされた工具本体を有し、この工具本体の後端部を切削工具に設けられた装着孔に挿入して使用するリーマであっても良い。
【0053】
さらに、6つのガイドパッドを周方向に等間隔で配置したものとして説明したが、これに限定されることはなく、ガイドパットの配置や個数は、切削条件等を考慮して適宜選択することが好ましい。
また、押圧部材として、押圧ピンを備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、クサビ材等の他の押圧部材を配置したものであっても良い。
さらに、食い付き刃の工具本体先端面からの突出量(アドバンス量)を調整する調整部材として調整ネジを備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、クサビ材等の他の調整部材を配置しても良いし、調整部材を配置しないものであっても良い。
【0054】
また、工具本体径方向外側に向けられる外周切刃に付されたバックテーパ量を、40μm/15mm〜80μm/15mmの範囲内に設定し、より具体的には、60μm/15mmとしたもので説明したが、これに限定されることはなく、バックテーパ量は切削条件等を考慮して適宜設定することができる。但し、本実施形態の範囲内に設定することにより、加工穴の内壁面と外周切刃の後端側部分とが摺動することを確実に防止して加工穴の内壁面を滑らかに仕上げることができるため好ましい。
【0055】
また、インサートとして、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部を備えたもので説明したが、超硬合金で一体成形されたものやcBN焼結体で構成された切刃部を有するものなどでも良い。
さらに、インサートの形状についても本実施形態に限定されることはなく、任意の形状のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態であるリーマの側面図である。
【図2】図1に示すリーマの先端部の拡大部分断面図である。
【図3】図1に示すリーマの断面説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態であるリーマの先端部の拡大部分断面図である。
【図5】図4に示すリーマの断面説明図である。
【図6】図4におけるY方向矢視図である。
【図7】従来のリーマの先端部の拡大部分断面図である。
【図8】図7におけるZ−Z断面図である。
【符号の説明】
【0057】
20 リーマ(穴加工工具)
21 工具本体
30 凹部
31 取付座
31B 工具本体径方向外側を向く壁面
32 クランプネジ孔
36 切欠部
40 押圧ピン(押圧部材)
40A 押圧面
41 押圧ネジ
42 調整ネジ(調整部材)
50 インサート
51 着座面
54 すくい面
55 切刃部
56 外周切刃
59 食い付き刃
61 被押圧面
70 クランプネジ
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成19年2月19日(2007.2.19)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−12655(P2008−12655A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2007−38308(P2007−38308)