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【発明の名称】 ラフィングエンドミルおよびラフィングエンドミル用インサート
【発明者】 【氏名】堀池 伸和

【氏名】北嶋 純

【要約】 【課題】十分な抵抗の低減や切屑処理性の向上を図りつつも、品位の高い加工面を形成する。

【構成】軸線O回りに回転されるエンドミル本体1の外周に軸線O方向に間隔をあけて複数のインサートA〜Cが配列されたインサート列S1〜S4を周方向に複数列設け、周方向に隣接するインサート列同士で少なくとも一部のインサートAを軸線O方向に互いにずらして配置し、この一部のインサートAは、エンドミル本体1外周側を向く切刃15が軸線O方向に向かうに従い凹凸する波刃状切刃とされ、このうち、1のインサート列の1のインサートAと他のインサート列の軸線O方向にずらされたインサートAとは、互いの波刃状切刃15がその位相を軸線O回りの回転軌跡において連続させた波刃状切刃列を構成し、エンドミル本体1の外周に位相が異なる複数の波刃状切刃列を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるエンドミル本体の外周に、それぞれ上記軸線方向に間隔をあけて複数のインサートが配列されてなるインサート列が周方向に複数列設けられていて、周方向に隣接する上記インサート列同士では少なくとも一部の上記インサートが上記軸線方向に互いにずらされて配置されており、この少なくとも一部の上記インサートは、上記エンドミル本体の外周側に向けられる切刃が上記軸線方向に向かうに従い凹凸する波刃状切刃とされているとともに、この少なくとも一部の上記インサートのうち、1のインサート列の1のインサートと他のインサート列の上記軸線方向にずらされたインサートとは、互いの上記波刃状切刃がその位相を上記軸線回りの回転軌跡において連続させた波刃状切刃列を構成するように配置されており、上記エンドミル本体の外周には上記位相が異なる複数の上記波刃状切刃列が形成されていることを特徴とするラフィングエンドミル。
【請求項2】
上記1のインサートは、上記1のインサート列の周方向に隣接する上記他のインサート列の少なくとも一つのインサートと上記波刃状切刃列を構成するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のラフィングエンドミル。
【請求項3】
上記少なくとも一部のインサートは互いに同形同大とされているとともに、少なくとも一つのインサート列には他のインサートと異なる上記波刃状切刃列を構成するインサートが配置されており、このインサートは上記軸線方向の間隔が上記他のインサートと異なる大きさで配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラフィングエンドミル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のラフィングエンドミルにおいて上記少なくとも一部のインサートとして配置されるラフィングエンドミル用インサートであって、上記エンドミル本体の回転方向を向くすくい面とこのすくい面に交差して上記エンドミル本体の外周側を向く逃げ面との交差稜線部に上記切刃が形成されていて、上記すくい面に、上記逃げ面に達する複数の溝部と山部が上記切刃に沿って交互に形成されることにより該切刃が上記波刃状切刃とされており、上記溝部のうちの少なくとも一つが他の溝部よりも溝深さの深い深溝部とされていることを特徴とするラフィングエンドミル用インサート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドミル本体の外周に複数のインサートが着脱可能に取り付けられたラフィングエンドミル、および該ラフィングエンドミルに取り付けられるラフィングエンドミル用インサート(以下、単にインサートと称する。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインサート着脱式のラフィングエンドミルとしては、例えば特許文献1、2に、円柱状をなす工具本体の外周に複数のねじれ溝が備えられ、これらのねじれ溝内に四角形平板状をなすインサートが僅かな間隙をあけて装着されていて、異なるねじれ溝のインサート同士が互いの間隙を補完するように略等間隔に配置されたものが提案されている。ここで、特許文献1記載のラフィングエンドミルではねじれ溝は4条であって、ただし第1、第3のねじれ溝と第2、第4のねじれ溝はそれぞれ同一であり、第2、第4のねじれ溝の第2のインサートの先端側には、第1、第3のねじれ溝における第1のインサートの回転外縁に略重複する第1のインサートが配置されている。
【0003】
また、特許文献2記載のラフィングエンドミルではねじれ溝は3条であり、ただし第2、第3のねじれ溝は同一であって、第2、第3のねじれ溝における第2のインサートの先端側には、第1のねじれ溝における第1のインサートの回転外縁に略重複する第1のインサートを配置したものが提案されている。そして、これら特許文献1、2に記載のラフィングエンドミルによれば、先端切れ刃を外周切れ刃の2倍として工具損傷を抑制した上、外周切れ刃が分割されて切屑が細分され、切削力が分散されることにより、振動も起きにくくなり、良好な切削が行われるようになるとされている。
【特許文献1】特開平8−1426号公報
【特許文献2】特開平8−1427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら特許文献1、2に記載のラフィングエンドミルでは、インサート自体は単なる四角形平板状のものであって、その切刃は直線状とされており、従って細分される切屑の幅も、この切刃の長さと上記ねじれ溝におけるインサート同士の間隙の大きさとに応じたものとなるため、十分な切屑の分断や抵抗の低減、あるいは切刃の食い付き衝撃の緩和を図ることはできない。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、先に特願2000−60513において、切刃に交差するように山部と谷部とを略等間隔に交互に形成して切刃が側面視および上面視に波形状に形成されたインサート、および該インサートを、一のチップポケット(切屑排出溝)に所定の間隔をあけて等間隔に設けた取付座と、軸線方向においてこれらの取付座の間に位置するように他のチップポケットに設けた取付座とに取り付けて、その上記切刃によりエンドミル外周に長刃型を形成したラフィングエンドミルを提案している。従って、このようなラフィングエンドミルによれば、切刃がワークに食い付く際にその全長が一度に食い付くことなく、波形の各山部から徐々にワークに食い付くことになるとともに、切屑も切刃の長さより細かく分断されるため、十分な衝撃緩和や抵抗低減と切屑処理性の一層の向上とを図ることができる。
【0006】
ところで、このように切刃を波形状に形成したインサートを取り付けたラフィングエンドミルでは、各切刃ごとに該切刃がなす波形の位相に応じてワークの加工面も逆位相の断面波形に形成されることになる。従って、かかるインサートを、例えば特許文献1に記載のラフィングエンドミルのようにそれぞれ同一の第1、第3のねじれ溝および第2、第4のねじれ溝に等間隔に配置したり、あるいは特許文献2に記載のラフィングエンドミルのようにやはり同一の第2、第3のねじれ溝に等間隔に配置したのでは、これら同一のねじれ溝同士で波形切刃の位相も一致することになるため、同一のねじれ溝におけるインサート同士の間隙部分を、他の同一のねじれ溝の位相が一致した波形切刃が切削するだけとなって、上記逆位相の波形断面の加工面がワークに残されたままとなってしまい、粗加工とはいえ加工品位が著しく損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、十分な抵抗の低減や切屑処理性の向上を図りつつも、品位の高い加工面を形成することが可能なラフィングエンドミルおよびインサートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のラフィングエンドミルは、軸線回りに回転されるエンドミル本体の外周に、それぞれ上記軸線方向に間隔をあけて複数のインサートが配列されてなるインサート列が周方向に複数列設けられていて、周方向に隣接する上記インサート列同士では少なくとも一部の上記インサートが上記軸線方向に互いにずらされて配置されており、この少なくとも一部の上記インサートは、上記エンドミル本体の外周側に向けられる切刃が上記軸線方向に向かうに従い凹凸する波刃状切刃とされているとともに、この少なくとも一部の上記インサートのうち、1のインサート列の1のインサートと他のインサート列の上記軸線方向にずらされたインサートとは、互いの上記波刃状切刃がその位相を上記軸線回りの回転軌跡において連続させた波刃状切刃列を構成するように配置されており、上記エンドミル本体の外周には上記位相が異なる複数の上記波刃状切刃列が形成されていることを特徴とする。
【0009】
従って、このように構成されたラフィングエンドミルにおいては、まず複数のインサート列を構成するインサートの少なくとも一部が、周方向に隣接するインサート列同士で軸線方向に互いにずらされて配置されるとともに、そのエンドミル本体の外周側に向けられる切刃がエンドミル本体の軸線方向に向かうに従い凹凸する波刃状切刃とされているので、この少なくとも一部のインサートが配列された部分では、各インサート列の軸線方向に間隔をあけた個々のインサートの切刃によって切屑を分断できるとともに、こうして生成される切屑自体も波刃状切刃によって分断されて生成され、これにより切削抵抗の低減と切屑処理性の向上を図ることができる。
【0010】
そして、さらにこの少なくとも一部のインサートは、1のインサート列の1のインサートと他のインサート列の上記軸線方向にずらされたインサートとが、互いの波刃状切刃の位相を軸線回りの回転軌跡において連続させた波刃状切刃列を構成するように配置されていて、しかもこの波刃状切刃列がエンドミル本体の外周に複数、互いの上記位相が異なるように形成されているので、1の波刃状切刃列によってワークの加工面に形成された逆位相の波形断面の山部分を、他の波刃状切刃列の山部分で切削して該加工面を平滑にしながら切削を行うことができ、これにより、粗加工とはいえ加工面の滑らかな高品位の切削を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明では、上記1のインサートを、上記1のインサート列の周方向に隣接する上記他のインサート列の少なくとも一つのインサートと上記波刃状切刃列を構成するように配置することにより、この1のインサートの波刃状切刃によるワークの切削の直ぐ前後で、この1のインサートと連続した波刃状切刃列をなす上記少なくとも一つのインサートの波刃状切刃によりワークが切削されることになる。このため、この波刃状切刃列によりワークに形成される逆位相の断面波形加工面が、エンドミル本体の送りによってこの送り方向に大きくずれて不連続となるのを避けることができ、一層滑らかな高品位の加工面を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明では、上記複数の波刃状切刃列を構成する少なくとも一部のインサートを互いに同形同大とすることにより、その管理や取り扱いを容易とすることができる。この場合には、1のインサート列では上記少なくとも一部のインサートの全てが、軸線方向にその波刃状切刃の波長の整数倍の間隔をあけて配列されて、共通の波刃状切刃列を構成するように配置されていてもよいが、少なくとも一つのインサート列に他のインサートと異なる波刃状切刃列を構成するインサートを配置して、このインサートを上記軸線方向の間隔が上記他のインサートと異なる大きさに配置することにより、このインサートは他のインサート列のインサートと波刃状切刃列を構成する一方、同一インサート列の他のインサートはこれとは異なる上述のような共通の波刃状切刃列を構成するように配置することもできる。
【0013】
一方、本発明のインサートは、このようなラフィングエンドミルにおいて上記少なくとも一部のインサートとして配置されるインサートであって、上記エンドミル本体の回転方向を向くすくい面とこのすくい面に交差して上記エンドミル本体の外周側を向く逃げ面との交差稜線部に上記切刃が形成されていて、上記すくい面に、上記逃げ面に達する複数の溝部と山部が上記切刃に沿って交互に形成されることにより該切刃が上記波刃状切刃とされており、上記溝部のうちの少なくとも一つが他の溝部よりも溝深さの深い深溝部とされていることを特徴とする。
【0014】
従って、かかるインサートでは、波刃状切刃がエンドミル本体の軸線方向に向かうに従い該エンドミル本体の周方向に凹凸することになり、すなわち上記山部がエンドミル本体の回転方向に凸となるとともに溝部はこの回転方向の後方側に凹となるので、山部から波刃状切刃をワークに徐々に食い付かせることができて、この食い付きの際の衝撃を緩和することができる。さらに、溝部の少なくとも一つが他の溝部よりも溝深さの深い深溝部とされているので、例えば切屑の厚さが薄いところから厚くなるようにワークを切削するアップカットの場合でも、この溝深さの深い深溝部によって確実に切屑を分断することができる一方、他の溝部はこの深溝部より溝深さが浅いので、インサートの強度が損なわれるのは防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明のラフィングエンドミルによれば、そのエンドミル本体外周に位相の異なる複数の波刃状切刃列を形成することにより、切屑を確実かつより細かく分断して切削抵抗を十分に低減するとともに切屑処理性を向上させつつ、ワークの加工面をより平滑に切削することができて、粗加工といえども高品位の加工面を得ることができる。また、本発明のインサートは、このようなラフィングエンドミルに装着することにより、波刃状切刃の食い付き時の衝撃を緩和するとともに、インサート強度を確保しつつ、一層確実に切屑を細分することができて、より効果的に切削抵抗の低減や切屑処理性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図3は本発明の一実施形態のラフィングエンドミルを示すものであり、図4ないし図8はこのラフィングエンドミルに上記少なくとも一部のインサートとして配置される本発明の一実施形態のインサートAを示すものである。また、図9ないし図14および図15ないし図19は、上記実施形態のラフィングエンドミルに配置される他のインサートB,Cをそれぞれ示すものであり、すなわち本実施形態のラフィングエンドミルでは一部のインサートが上記実施形態のインサートAとされて、残りのインサートがこれら他のインサートB,Cとされている。
【0017】
本実施形態のラフィングエンドミルは、そのエンドミル本体1が鋼材等により形成されて軸線Oを中心とした外形略円柱状をなし、その先端部外周には、該エンドミル本体1の先端から軸線O方向後端側(図2において上側)に向かうに従いこの軸線O回りに切削加工時のエンドミル本体1の回転方向Tの後方側に捩れる螺旋状の切屑排出溝2が、周方向に等間隔に複数条(本実施形態では4条)形成されている。そして、これらの切屑排出溝2の上記回転方向T側を向く壁面には軸線O方向に間隔をあけてそれぞれ複数のインサート取付座3が形成されており、これらのインサート取付座3に上記各インサートA〜Cがクランプネジ4によって着脱可能に取り付けられている。
【0018】
これらのインサートA〜Cはいずれも、超硬合金等の硬質材料により形成された四角形平板状のインサート本体11を備え、このインサート本体11がなす平板の厚さ方向を向く2つの四角形面の一方がすくい面12とされるとともに、他方は上記厚さ方向に垂直な平坦面とされて上記インサート取付座3への着座面13とされ、さらにこれらの四角形面の周囲に配置される4つの周面はそれぞれ逃げ面14とされて、これら4つの逃げ面14と上記すくい面12との交差稜線部に切刃15が形成されている。ここで、各逃げ面14はすくい面12から着座面13側に向かうに従い漸次後退するポジ逃げ面とされていて、これらのインサートA〜Cは切刃15に逃げ角が付されたポジティブインサートとされている。
【0019】
また、すくい面12の中央から着座面13にかけては上記クランプネジ4が挿通される取付孔16が上記厚さ方向に貫通しているとともに、すくい面12の取付孔16開口部周辺は切刃15よりも上記厚さ方向に突出して該厚さ方向に垂直な平坦面とされ、各インサートA〜Cのすくい面12の外形と略相似で一回り小さなな形状とされたボス面17とされている。そして、このボス面17よりも外側のすくい面12には、上記逃げ面14に達する複数の溝部18と山部19が切刃15に沿って交互に形成されていて、これらの溝部18と山部19とが逃げ面14に交差して形成されることにより、上記切刃15は、すくい面12の周回り方向に向けて上記厚さ方向に凹凸する波刃状切刃とされている。また、逃げ面14がポジ逃げ面とされていることにより、この切刃15は上記中心線に沿ってすくい面12に対向する平面視にも、該すくい面12の内外に凹凸する波刃状に形成されている。
【0020】
ここで、各インサートA〜Cにおいて四角形面をなすすくい面12の各コーナ部20における切刃15は、上記厚さ方向に垂直な1の平面上に延びるように形成されており、波刃状切刃はこのコーナ部20から溝部18、山部19の順に交互に形成されていて、山部19の頂点は上記1の平面上に位置するようにされている。また、これら溝部18と山部19による波刃状切刃は、本実施形態では一部を除いて概ね円弧状の凹曲線と凸曲線とが滑らかに連続する形状とされている。なお、溝部18と山部19およびコーナ部20は、逃げ面14に交差するその断面形状のまま、切刃15から離間してすくい面12の内側に向かうに従い上記厚さ方向に僅かに後退するように傾斜させられており、またこのすくい面12の内側でこれら溝部18、山部19、コーナ部20に交差する上記ボス面17の周りの壁面は、内側に向かうに従い上記溝部18、山部19、コーナ部20の傾斜よりも急勾配で厚さ方向に隆起して該ボス面17に至る傾斜面とされている。
【0021】
これらのインサートA〜Cのうち、上記実施形態のインサートAは略正方形の平板状をなしていて、上記取付孔16の中心線回りに90°ずつ回転対称となるように形成されている。そして、このインサートAの切刃15は、隣接するコーナ部20間で3つの溝部18と2つの山部19とが交互に形成されることにより、一定の波長の波刃状をなしており、特に本実施形態では溝部18の底部と山部19の上記頂部との間隔も互いに等しくされている。さらに、このうち両コーナ部20側の溝部18は上記厚さ方向の溝深さが互いに等しくされて溝深さの浅い浅溝部18Aとされているのに対し、中央部の溝部18はこれよりも溝深さが深くされた深溝部18Bとされており、すなわち浅溝部18Aと深溝部18Bとが交互に形成されていて、波の振幅は異なるものとされている。なお、このインサートAの切刃15は、上記コーナ部20においては平面視に上記正方形の角を直線状に面取りしたチャンファーコーナ刃とされている。
【0022】
一方、他のインサートB,Cは図10、図15に示すようにすくい面12の各コーナ部20が僅かに鋭角または鈍角とされた略平行四辺形の平板状とされており、ただし、インサートBはこの平行四辺形の長辺(図10において縦方向に延びる辺)が短辺(図10において横方向に延びる辺)より僅かに長くされている程度であるのに対し、インサートCは短辺の長さはインサートBと等しく、長辺は図15に示すようにインサートBよりも長くされている。なお、両インサートB,Cの長辺間の間隔は互いに等しくされるとともにインサートAの対辺間の間隔とも等しくされ、さらにコーナ部20のうち鋭角コーナ部20Aおよび鈍角コーナ部20Bにおけるそれぞれのコーナ角度もインサートB,Cでは互いに等しくされており、従ってインサートCはインサートBを長辺方向に引き延ばしたような外形形状とされる。
【0023】
このうちインサートBは、上記取付孔16の中心線回りに180°ずつ回転対称(線対称)に形成されていて、その上記長辺にはインサートAと同様に、隣接するコーナ部20間で3つの溝部18と2つの山部19とが交互に形成されて一定波長の波刃状切刃15が形成されており、さらに両コーナ部20側の溝部18は浅溝部18Aとされるとともに、中央の溝部18は深溝部18Bとされている。一方、上記短辺には、隣接するコーナ部20から間隔をあけて2つの溝部18と1つの山部19が交互に形成されることにより、やはり一定波長の波刃状切刃15が形成されており、これらの溝部18の溝深さは互いに等しくされていて、すなわちこの短辺の切刃15がなす波形はその振幅も一定とされている。なお、このインサートBおよびインサートCのコーナ部20における切刃15は、平面視に該コーナ部20を凸円弧で面取りしたRコーナ刃とされている。
【0024】
これに対してインサートCは、その上記短辺に3つの溝部18と2つの山部19とを交互に備えてインサートBの短辺に形成された切刃15と波長、振幅の等しい波刃状切刃15が形成されており、ただし両端の溝部18は両コーナ部20に隣接して形成されていて、インサートB,Cの短辺を重ね合わせたときに切刃15がなす波形の位相が1/2波長分ずれるようにされている。なお、このインサートCの一対の短辺に形成された溝部18、山部19および切刃15は、その取付孔16の中心線回りに180°回転対称とされている。
【0025】
一方、このインサートCの長辺には、それぞれ6つの溝部18と5つの山部19とが交互に形成されて波刃状切刃15が形成されているが、この長辺の切刃15がなす波形は部分的に異なるものとされており、具体的にインサートCでは中央の山部19の頂部を境にその波長と振幅とが異なるものとされている。すなわち、上記長辺に形成される切刃15のうち、中央の山部19の頂部と鋭角コーナ部20Aとの間の鋭角コーナ側切刃部15aでは、この頂部と鈍角コーナ部20Bとの間の鈍角コーナ側切刃部15bと比べて、溝部18の溝深さが深くされるとともに溝部18および山部19の幅も大きくされており、これによりこれらの間に形成される3波ずつの切刃15も、鋭角コーナ側切刃部15aが鈍角コーナ側切刃部15bより波長、振幅ともに大きくされていて、このインサートCではいずれも2倍の大きさとされている。
【0026】
従って、これに伴い上記長辺に形成される切刃15に占める長さも、鋭角コーナ側切刃部15aが鈍角コーナ側切刃部15bより長く形成されることになり、この鋭角コーナ側切刃部15aの鋭角コーナ部20A先端から上記中央山部19の頂部までの長さは、上記インサートBの長辺に形成される切刃15の鋭角コーナ部20A先端から鈍角コーナ部20Bとの境界までの長さと等しくされている。なお、鋭角コーナ側切刃部15aと鈍角コーナ側切刃部15bのそれぞれにおいては、溝部18の深さは互いに等しくて、その切刃15がなす波形の振幅、および波長も一定とされている。
【0027】
さらにまた、このインサートCでは、すくい面がなす平行四辺形の一対の長辺同士で、上記取付孔16の中心線回りに180°回転させたときに、これらの長辺に形成された切刃15の少なくとも一部における波形の位相が異なるようにされている。具体的に、このインサートCでは、この一対の長辺にそれぞれ形成される切刃15のうち、上記鋭角コーナ側切刃部15a同士は上述のように180°回転させたときにその波形の位相が一致するように形成されているのに対し、鈍角コーナ側切刃部15bは位相が異なるようにされており、特にこの鈍角コーナ側切刃部15bにおける切刃15の波形の1/2波長分だけ位相がずれるようにされている。
【0028】
ここで、上記インサートCにおいては、このように鈍角コーナ側切刃部15bの位相をずらすのに、図15の下側および図16に示す一方の長辺に形成される切刃15Aでは、この切刃15Aの上記中央山部19の頂部に連続するようにして鈍角コーナ側切刃部15bの溝部18を形成するとともに、この鈍角コーナ側切刃部15bの鈍角コーナ部20B側の溝部18と該鈍角コーナ部20Bとの間には間隔をあけて、鈍角コーナ部20Bから上記1の平面上に延びる短い直線状部を形成するようにしている。
【0029】
一方、図15の上側および図17に示す他方の長辺に形成される切刃15Bでは逆に、この切刃15Bの鈍角コーナ部20B側では鈍角コーナ側切刃部15bの溝部18をこの鈍角コーナ部20Bに連続して形成するとともに、切刃15Bの上記中央山部19の頂部には上記1の平面上に延びる短い直線状部を形成して、この中央山部19側の鈍角コーナ側切刃部15bの溝部18が鋭角コーナ側切刃部15aとの間に間隔をあけて形成されるようにしている。なお、このように部分的に位相の異なる波刃状の切刃15A,15Bが備えられるのに対応して、このインサートCの上記ボス面17には、その一対の鋭角コーナ部20Aの内側部分に形成された凹所内に、例えば文字「A」、「B」などの異なる指標17Aがそれぞれ設けられている。
【0030】
このようなインサートA〜Cは図3に示すように、インサートB,Cが2つずつ、エンドミル本体1の各切屑排出溝2最先端に形成された4つインサート取付座3に周方向に交互に取り付けられるととともに、残りのインサート取付座3にはインサートAが取り付けられて、切屑排出溝2ごとにインサート列が形成される。従って、本実施形態では先端側からインサートB,Aよりなるインサート列と、インサートC,Aよりなるインサート列とが2列ずつ、周方向に交互に配列されることになる。なお、これらのインサート列においてインサートAは複数ずつ配置されている。
【0031】
このうち、最先端のインサートB,Cが取り付けられるインサート取付座3は、切屑排出溝2の上記回転方向Tを向く壁面から一段凹んでエンドミル本体1の先端面と外周面とに開口した凹所とされており、回転方向Tを向く底面とエンドミル本体1の先端側を向く壁面および外周側を向く壁面とを備えている。このようなインサート取付座3に、インサートB,Cは、そのすくい面12を上記回転方向Tに向けるとともに着座面13を上記底面に密着させ、また1つの鋭角コーナ部20Aをエンドミル本体1の先端外周側に位置させるとともに、この鋭角コーナ部20Aに交差する上記長辺に形成された切刃15を外周刃としてエンドミル本体1の外周側に、上記短辺に形成された切刃15を底刃としてエンドミル本体1の先端側に向けて突出させ、さらにこれとは反対の鋭角コーナ部20Aに交差する一対の逃げ面14をそれぞれ上記壁面に当接させて着座させられ、取付孔16に挿通した上記クランプネジ4を上記底面に形成されたネジ孔にねじ込むことによって固定される。
【0032】
こうして取り付けられたインサートB,Cは、エンドミル本体1の先端外周側に向けられた鋭角コーナ部20Aの軸線O方向の位置および軸線Oからの半径が互いに等しくされるとともに、上記外周刃とされる切刃15が回転方向T側から見て概ね軸線Oに平行に延びるように配置され、従ってこれらの切刃15は、その軸線O回りの回転軌跡が、インサートBの切刃15がインサートCの切刃15の鋭角コーナ側切刃部15aとオーバーラップするようにして、該軸線Oを中心とした概ね円筒状をなすことになる。また、先端側に向けられて底刃とされる切刃15は、インサートB,Cで互いに等しい角度で内周側に向かうに従いエンドミル本体1の後端側に向かうように僅かに傾斜し、その軸線O回りの回転軌跡も互いにオーバーラップすることになる。
【0033】
一方、本実施形態のインサートAが取り付けられるインサート取付座3は、切屑排出溝2の上記壁面から一段凹んでエンドミル本体1の外周面に開口する凹所となり、回転方向Tを向く底面とエンドミル本体1の先端側を向く壁面と外周側を向く壁面と、エンドミル本体1の後端側を向く壁面との3つの壁面を備えることになる。そして、このようなインサート取付座3にインサートAは、やはりそのすくい面12を上記回転方向Tに向けるとともに着座面13を上記底面に密着させ、1の切刃15を外周刃として外周側に向けて突出させるとともに、残りの3つの切刃15に連なる逃げ面14を上記各壁面に当接させて着座させられ、インサートB,Cと同様にクランプネジ4によって固定される。
【0034】
こうして取り付けられたインサートAは、外周刃とされる上記1の切刃15が回転方向T側から見てやはり概ね軸線Oに平行に延びるように配置され、その軸線O回りの回転軌跡が、インサートB,Cの外周刃とされる切刃15の回転軌跡と半径の等しい該軸線Oを中心とした概ね円筒状をなすようにされる。なお、これらのインサートA〜Cのすくい面12は、軸線O方向には図3に示すように切屑排出溝2の捩れ角よりは小さな角度で後端側に向かうに従い回転方向Tの後方側に傾斜させられるとともに、エンドミル本体1の半径方向には内周側に向かうに従い回転方向T側に傾斜するようにされており、これによりインサートA〜Cの外周刃とされる切刃15とインサートB,Cの底刃とされる切刃15には、正のアキシャルレーキ角と負のラジアルレーキ角とが与えられる。勿論、各切刃15の逃げ面14には加工面との干渉を避ける逃げ角が与えられる。
【0035】
そして、これらのインサートA〜Cのうち、上述のように本実施形態における一部のインサートとなるインサートAは、図3に示すように周方向に隣接するインサート列同士で軸線O方向に互いにずらされて配置されており、さらに1のインサート列の1のインサートAと他のインサート列の軸線O方向にずらされたインサートAとは、互いの外周刃とされる切刃15がなす波刃状切刃の波形が、その位相を軸線O回りの回転軌跡において連続させるように配列されていて、こうして波形が連続する波刃状切刃15によって1つの波刃状切刃列が構成されるとともに、このように構成される波刃状切刃列が、エンドミル本体1の外周に位相が異なるものが複数形成されるようになされている。
【0036】
具体的に、本実施形態では図3に示すように、最先端のインサートB,Cを除いた一部のインサートAは、各インサート列で略インサートA1つ弱分軸線O方向に間隔をあけて配列されるとともに、周方向に隣接するインサート列同士では一方におけるインサートA同士の軸線O方向の間隔部分に他方のインサートAが位置するようにされている。ここで、図3において左側から順に第1〜第4のインサート列S1〜S4とすると、第1のインサート列S1では最先端に取り付けられたインサートBの軸線O方向後方に、図3では3つのインサートAが間隔をあけて取り付けられるように図示されている。これらを先端側から順にインサートA11,A12,A13とする。以下同様に、第2のインサート列S2では最先端のインサートCの後方に2つのインサートA21,A22が、第3のインサート列S3では最先端のインサートBの後方に3つのインサートA31,A32,A33が、第4のインサート列S4では最先端のインサートCの後方に2つのインサートA41,A42が、それぞれ間隔をあけて取り付けられるように図示されていて、周方向に隣接するインサート列同士ではこれらのインサートAが軸線O方向にずらされて配置されている。
【0037】
さらに、第1のインサート列S1のインサートAのうち先端のインサートA11の外周側に向けられた波刃状切刃15は後方側に向けて順に、第4のインサート列S4のインサートAのうち先端のインサートA41、第3のインサート列S3のインサートAのうち先端から2番目のインサートA32、第4のインサート列S4のインサートAのうち2番目のインサートA42、第3のインサート列S3のインサートAのうち3番目のインサートA33の各波刃状切刃15と、互いの先端、後端の軸線O方向の位置が一致するように配置されていて、軸線O回りの回転軌跡において連続するようにさせられており、これらの波刃状切刃15によって第1の波刃状切刃列が構成されている。一方、上記一部のインサートAのうちこれ以外の、第3のインサート列S3先端のインサートA31、第2のインサート列S2先端のインサートA21、第1のインサート列S1の先端から2番目のインサートA12、第2のインサート列S2の2番目のインサートA22、第1のインサート列S1の3番目のインサートA13の各波刃状切刃15も、同様に軸線O回りの回転軌跡において順に連続するようにして第2の波刃状切刃列を構成している。
【0038】
そして、本実施形態では、これら第1、第2の波刃状切刃列は、その位相が各波刃状切刃15の波形がなす波長の1/2波長分だけ位相をずらすようにされており、従って本実施形態ではエンドミル本体1の外周に位相の異なる2つの波刃状切刃列が形成されるように構成されている。なお、上記一部のインサートAは、上記長辺の長さが短いインサートBの後方に位置する第1、第3のインサート列S1,S3の先端のインサートA11,A31が、長辺の長いインサートCの後方に位置する第2、第4のインサート列S2,S4の先端のインサートA21,A41よりも先端側にインサートA略1つ分ずらされて配置され、さらに第2の波刃状切刃列を構成するインサートA31は、第1の波刃状切刃列を構成するインサートA11よりも波刃状切刃15の1/2波長分だけ先端側に位置させられている。
【0039】
従って、本実施形態ではこれら一部のインサートAは、その1のインサートAが、当該1のインサートAが配列される1のインサート列に周方向に隣接する他のインサート列の少なくとも一つのインサートAと、それぞれの波刃状切刃列を構成するように配置されることになる。すなわち、第1のインサート列S1のインサートA11は、その波刃状切刃15の後端が回転方向T側に隣接することになる第4のインサート列S4のインサートA41と連続し、またこの第4のインサート列S4のインサートA41,A42はその波刃状切刃15の両端が回転方向Tに隣接する第3のインサート列S3のインサートA32,A33と連続して第1の波刃状切刃列を構成する。また、第2の波刃状切刃列においても、第3のインサート列S3の先端のインサートA31の波刃状切刃15は、周方向のうち回転方向T側に隣接する第2のインサート列S2のインサートA21と連続し、この第2のインサート列S2のインサートA21,A22は回転方向Tに隣接する第1のインサート列S1のインサートA12,A13と連続する。
【0040】
その一方で、本実施形態ではこのように、上記一部のインサートAにおいて第1のインサート列S1ではその先端のインサートA11が第1の波刃状切刃列を構成するのに対して、他のインサートA12,A13は第2の波刃状切刃列を構成しており、また逆に第3のインサート列S3の先端のインサートA31は第2の波刃状切刃列を構成するのに対して、他のインサートA32,A33は第1の波刃状切刃列を構成していて、少なくとも一つのインサート列には他のインサートAと異なる波刃状切刃列を構成するインサートAが配置されている。そして、本実施形態ではこれら一部のインサートAが同形同大とされているので、このような配列とするのに、第1のインサート列S1ではインサートA11,A12間とインサートA12,A13間の軸線O方向の間隔を、また第3のインサート列S3ではインサートA31,A32間とインサートA32,A33間の軸線O方向の間隔を、すなわちインサート取付座3の間隔を、それぞれ異なる大きさとしている。
【0041】
なお、第2、第4のインサート列において上記インサートA21、A41の先端に配置される一対のインサートCは、その外周側に向けられる波刃状切刃15が、互いに上記鈍角コーナ側切刃部15bの位相の異なる側が外周側に向けられるように配置されている。すなわち、図3に示すように第2のインサート列S2最先端のインサートBは上記波刃状切刃15Aが外周側に向けられるように取り付けられ、第4のインサート列S4最先端のインサートBは上記波刃状切刃15Bが外周側に向けられるようにされている。従って、これらのインサートC同士では、それぞれの波刃状切刃部15A,15Bの鈍角コーナ側切刃部15a,15bも、その位相が各鈍角コーナ側切刃部15bの波形がなす波長の1/2波長分だけ位相をずらすようにして、位相の異なる2つの波刃がエンドミル本体1の外周に向けられるようにされている。
【0042】
また、上記一部のインサートAのうち先端側に位置する第1、第3のインサート列S1,S3のインサートA11,A31は、その波刃状切刃15が第2、第4のインサート列S2,S4の最先端の上記インサートCの波刃状切刃部15A,15Bと回転軌跡において連続し、あるいはオーバーラップするように配列されている。すなわち、第1のインサート列S1のインサートA11は、その波刃状切刃15の先端が回転方向T側に位置する第4のインサート列S4のインサートCの波刃状切刃15Bの後端(鈍角コーナ側切刃部15bの後端)と回転軌跡において位相を合わせるように連続し、また、第3のインサート列S3のインサートA31は、その波刃状切刃15の先端を第4のインサート列S4最先端のインサートCにおける鈍角コーナ側切刃部15bの鈍角コーナ部20B側の山部19の頂部と回転軌跡において一致させて、このインサートCや第4のインサート列S4最先端のインサートCと波刃状切刃15がオーバーラップするように配置されている。
【0043】
従って、上記構成のラフィングエンドミルにおいては、複数のインサート列S1〜S4を構成するインサートA〜Cの一部のインサートAが、周方向に隣接するインサート列S1〜S4同士で軸線O方向に互いにずらされて配置された上、各々のエンドミル本体1外周側に、軸線O方向に沿って凹凸する波刃状切刃15が突出して向けられているので、インサート列S1〜S4で軸線O方向に間隔をあけたインサートAによって切屑を分断できるのは勿論、個々のインサートAにおいても生成される切屑自体を分断して生成することができ、切削抵抗の低減と切屑処理性の向上を図ることができる。
【0044】
そして、さらにこの一部のインサートAは、その波刃状切刃15が互いの位相を軸線回りの回転軌跡において連続させた波刃状切刃列を構成し、かつ互いの位相が異なる複数(本実施形態では2つ)のこのような波刃状切刃列をエンドミル本体の外周に形成するように構成されているので、例えば第1の波刃状切刃列によってワーク加工面に形成される逆位相の波形断面の山部分を第2の波刃状切刃列の山部分で切削して平滑な加工面を得ることができる。従って、上記構成のラフィングエンドミルによれば、ラフィングすなわち粗加工といっても加工面の比較的滑らかな高品位の切削を行うことが可能となる。
【0045】
しかも、本実施形態のインサートAでは、上記波刃状切刃15が、エンドミル本体1の回転方向Tを向くすくい面12に、逃げ面14に達する複数の溝部18と山部19が交互に形成されることにより波刃状を呈するものであり、従って該インサートAを装着したラフィングエンドミルでは軸線O方向に向けてその周方向に波刃状切刃15が凹凸することになる。このため、かかる波刃状切刃15では、その山部19の頂部から徐々にワークに食い付くことになるので、この食い付きの際の衝撃を緩和することができ、抵抗の低減やビビリ振動の抑制を図ることが可能となる。
【0046】
さらに、この実施形態のインサートAでは、こうして波刃状切刃15を構成する溝部18と山部19のうち少なくとも一つの溝部18が、他の溝部18よりも溝深さの深い深溝部18Bとされているので、例えばアップカット切削のように切屑の厚さが薄い部分から厚くなるようにワークが切削される場合でも、この深溝部18Bによってかかる切屑を確実に分断して処理することが可能となる。しかも、本実施形態ではこの深溝部18Bが切刃15の中央部に形成されるので、分断された切屑の幅に広狭を生じることなく一層の切屑処理性の向上を図ることができる。その一方で、他の溝部18はより溝深さが浅い浅溝部18Aとされるので、こうして深溝部18Bが形成されることによってインサートAの強度が必要以上に損なわれるのは防ぐことができる。
【0047】
なお、本実施形態ではエンドミル本体1外周に4列のインサート列S1〜S4が形成されるとともに、これらに配列された上記インサートAによって位相が波刃状切刃15の1/2波長分ずらされた第1、第2の2つの波刃状切刃列が形成されるように構成しているが、4列以上の、例えば6列のインサート列を形成して位相が1/3波長分ずつずらされた3つの波刃状切刃列を構成したり、8列のインサート列を形成して位相が1/4波長分ずつずらされた4つの波刃状切刃列を構成したりしてもよく、ずらされる位相差が小さくなるほどより平滑な加工面を得ることができる。ただし、例えばこうして8列のインサート列を形成した場合には、図3に示した配列を繰り返すような配列としてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、各インサート列S1〜S4の最先端にはそれぞれ上記一部のインサートA以外のインサートB,Cが取り付けられており、これらのインサートB,Cは外周側に向けられる切刃15の軸線O回りの回転軌跡が一部オーバーラップしているとともに、底刃とされる切刃15の回転軌跡もオーバーラップすることになり、そしてこの側刃とされる切刃15も波刃状とされるとともに、その位相がインサートBとインサートCとで、やはり1/2波長分ずらされた配置とされることになる。
【0049】
このため、例えばワークに断面L字型の加工面を形成する場合でも、これら最先端のインサートB,Cに過大な負荷が作用するのを防ぐことができるとともに、底刃とされる切刃15によって生成される切屑も効率的に分断処理することができ、さらにこれにより形成される上記L字型加工面の底面も高品位とすることができる。ただし、本実施形態ではこのように、インサート列S1〜S4の最先端に上記インサートAとは異なるインサートB,Cを配置しているが、例えばワークの側面だけを切削するような場合には、エンドミル本体1に配置されてインサート列を形成するすべてのインサートが、複数の波刃状切刃列を構成する上記インサートAとされていてもよい。
【0050】
さらに、本実施形態では、その波刃状切刃15が上記複数の波刃状切刃列を構成する一部のインサートAが、いずれのインサートAも、当該インサートAが配列されるインサート列に周方向に隣接する他のインサート列の少なくとも一つのインサートAと、回転軌跡における波刃状切刃15の位相を一致させて連続した波刃状切刃列を構成するように配置されている。
【0051】
従って、こうして波刃状切刃15が連続したインサートA同士では、回転方向T側に位置するインサートAの波刃状切刃15が加工面を切削した直ぐ後に、回転方向T後方側のインサートAの波刃状切刃15が加工面を切削することになるので、エンドミル本体1の送りを高めても、ワーク加工面に転写される逆位相の波形断面がこの送り方向に大きくずれるのを防ぐことができる。そして、この断面をさらに後続する異なる波刃状切刃列の位相がずれた切刃15によって同様に切削してゆくので、本実施形態によれば、より確実に滑らかな加工面を得ることが可能となる。
【0052】
さらにまた、本実施形態では、一部のインサート列S1,S3に第1の波刃状切刃列を構成するインサートA11,A32,A33と第2の波刃状切刃列を構成するインサートA31,A12,A13とがそれぞれ混在して配設されているとともに、これら異なる波刃状切刃列を構成するインサートA同士では、その軸線O方向の間隔が異なる大きさとなるように、すなわちインサート取付座3の間隔が異なる大きさに形成されている。しかるに、この点、こうして異なる波刃状切刃列を構成するインサートAが1つのインサート列に混在する場合でも、例えばインサート取付座3の間隔はそのままにして、波刃状切刃15の位相自体が異なる複数種のインサートAを用意することにより、複数の波刃状切刃列が形成されるように構成することも可能であるが、このときには1つのエンドミル本体1に配列されるインサートの種類が増えて、その管理や取り扱いが煩雑となり、またインサート製造コストも増大するという問題がある。
【0053】
そこで、上述のように本実施形態では、一つのインサート列S1,S3に配置される他のインサートA12,A13,A32,A33と異なる波刃状切刃列を構成するインサートA11,A31を、隣接するインサートA12,A32との軸線O方向の間隔がこれら他のインサートA12,A13同士やインサートA32,A33同士と異なる大きさとなるように配置することにより、インサートA自体はすべて同形同大とすることができる。従って、本実施形態によれば、エンドミル本体1に取り付けられるインサートA〜Cの種類を極力少なくして、その管理や取り扱いを容易にするとともに、インサートAの製造コストの削減を図ることができる。
【0054】
ただし、このように一つのインサート列に異なる波刃状切刃列を構成するインサートAを配列することなく、例えば図3においてインサートA11とインサートA31の配置を入れ換えたものとしたりすることにより、一つのインサート列では配列されたインサートAの波刃状切刃15が同一の波刃状切刃列を構成するようにしてもよい。この場合には、それぞれのインサート列S1〜S4でインサート取付座3の間隔を等間隔に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態のラフィングエンドミルを示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の側面図である。
【図3】図1に示す実施形態のインサートA〜Cの配置を説明する展開図である。
【図4】図1に示す実施形態のラフィングエンドミルに配置される、本発明の一実施形態のインサートAの斜視図である。
【図5】図4に示すインサートAの平面図である。
【図6】図5における矢線X方向視の側面図である。
【図7】図5における矢線Y方向視の側面図である。
【図8】図5におけるZZ断面図である。
【図9】図1に示す実施形態のラフィングエンドミルに配置されるインサートBの斜視図である。
【図10】図9に示すインサートBの平面図である。
【図11】図10における矢線X方向視の側面図である。
【図12】図10における矢線Y方向視の側面図である。
【図13】図10における矢線Z方向視の側面図である。
【図14】図1に示す実施形態のラフィングエンドミルに配置されるインサートCの斜視図である。
【図15】図14に示すインサートCの平面図である。
【図16】図15における矢線W方向視の側面図である。
【図17】図15における矢線X方向視の側面図である。
【図18】図15における矢線Y方向視の側面図である。
【図19】図15におけるZZ断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンドミル本体
2 切屑排出溝
3 インサート取付座
11 インサート本体
12 すくい面
14 逃げ面
15,15A,15B 切刃(波刃状切刃)
18 溝部
18A 浅溝部
18B 深溝部
19 山部
20 コーナ部
A〜C インサート
O エンドミル本体1の回転軸線
T エンドミル本体1の回転方向
S1〜S4 インサート列
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−68345(P2008−68345A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−248174(P2006−248174)