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【発明の名称】 硬質鉄基合金のフライス加工用の超硬合金インサートおよびその作製方法
【発明者】 【氏名】ケネス ベスターグレン

【氏名】スザンヌ ノルグレン

【要約】 【課題】基材と被膜とを有し、硬さが45HRC超の硬化鋼、工具鋼、鋳鉄、ステンレス鋼をフライス加工するための切削工具インサートを提供する。

【構成】基材は、硬さ1700HV3〜2000HV3であり、角度10°で幅0.2mmの負の面取りをされていることにより刃先鋭利度が0(鋭利)〜40μmであり、被膜は、均質なAlxTi1−xN層でx=0.6〜0.67、望ましくはx=0.62であり、厚さが1〜3.8μmである。本発明のインサートの作製方法および使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と被膜とを備え、硬化鋼、工具鋼、硬質の鋳鉄およびステンレス鋼のフライス加工用の切削工具インサートであって、
上記基材は、硬さが1700HV3〜2000HV3であり、角度10°、幅0.2mmの負の面取りで刃先尖鋭度0(鋭い)〜40μmを備えており、かつ
上記被膜は、均質なAlxTi1−xN層を含んで成り、x=0.6〜0.67、望ましくはx=0.62であり、総厚さが1μm以上、望ましくは1.8μm以上、ただし3.8μm以下、望ましくは3.0μm以下である
ことを特徴とする切削工具インサート。
【請求項2】
請求項1において、上記基材は、組成が5.7〜6.1wt%Co、望ましくは5.7〜6.1wt%Co、0.7〜1.0wt%Ta+Nb、望ましくは0.6〜0.95wt%Ta+Nb、最も望ましくは0.7〜1.0wt%Ta+Nb、および5.0〜7.0wt%Ti、望ましくは5.5〜6.5wt%Ti、最も望ましくは6.0〜6.4wt%Tiであって、これらがTaC、NbC、TiCまたはこれらの混合物として添加されており、残部がWCであり、焼結後のHc値が20〜26、望ましくは21〜25kA/m、CWが0.75〜0.95、望ましくは0.78〜0.90であることを特徴とする切削工具インサート。
【請求項3】
超硬合金基材と被膜とから成り、該基材が混練、加圧成形、焼結を行なう従来の粉末冶金法により作られている切削工具インサートの作製方法であって、
上記基材は、硬さが1700HV3〜2000HV3であり、角度10°、幅0.2mmの負の面取りで刃先尖鋭度0(鋭い)〜40μmを備えており、
上記被膜は、AlxTi1−xN層を含んで成り、x=0.6〜0.67、望ましくはx=0.62であり、適した組成のTiAl合金から成るターゲット材料を用いた陰極アーク蒸発法によりNガス雰囲気中で堆積されており、総厚さが1μm以上、望ましくは1.8μm以上、ただし3.8μm以下、望ましくは3.0μm以下である
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3において、上記基材は、組成が5.4〜6.1wt%Co、望ましくは5.7〜6.1wt%Co、0.7〜1.0wt%Ta+Nb、望ましくは0.6〜0.95wt%Ta+Nb、最も望ましくは0.7〜0.9wt%Ta+Nb、および5.0〜7.0wt%Ti、望ましくは5.5〜6.5wt%Ti、最も望ましくは6.0〜6.4wt%Tiであって、これらがTaC、NbC、TiCまたはこれらの混合物として添加されており、残部がWCであり、焼結後のHc値が20〜26、望ましくは21〜25kA/m、CWが0.75〜0.95、望ましくは0.78〜0.90であり、CWが0.75〜0.95、望ましくは0.78〜0.90であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の切削工具インサートを、硬さ45HRC以上の硬化鋼および硬質鋳鉄のフライス加工に、切削速度30〜180m/min、送り0.1〜0.4mm/revで用いること。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質鋳鉄および硬化鋼のフライス加工に特に有用な被膜付き切削工具インサートに関する。塑性変形、櫛の歯状亀裂、刃先ラインチッピングに対する抵抗の大きい基材に薄いPVD被膜を施すと、逃げ面摩耗および切り欠き摩耗に対する抵抗が大幅に向上する。
【背景技術】
【0002】
硬質鋳鉄および硬化鋼のフライス加工は一般に粗加工、半粗加工、半仕上げ加工、仕上げ加工に分類される。硬化鋼、硬質鋼、工具鋼、鋳鉄のフライス加工において、刃先ラインチッピングおよび切り欠き摩耗が主な摩耗メカニズムの一つである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的の1つ、硬質鋳鉄、硬質鋼、工具鋼、硬化鋼のフライス加工に特に有用な切削工具インサートを提供することである。
【0004】
本発明のもう1つの目的は、刃先ラインの安全性と耐摩耗性が向上し、更に塑性変形抵抗が良好な切削工具インサートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべき新規な知見として、硬質立方晶炭化物を含有した超硬合金基材に、比較的薄いPVD被膜と特殊な刃先尖鋭化処理を施すことにより、刃先ラインの安全性および耐摩耗性が大幅に向上し、これが良好な塑性変形抵抗と組み合わされ、硬さが45HRC以上の硬化鋼および硬質鋳鉄のフライス加工において工具寿命と加工表面品質が向上する。
【0006】
基材は、硬さが1700HV3〜2000HV3の超硬合金で、望ましい組成として、5.4〜6.1wt%Co、望ましくは5.7〜6.1wt%Co、0.7〜1.0wt%Ta+Nb、望ましくは0.6〜0.95wt%Ta+Nb、最も望ましくは0.7〜0.9wt%Ta+Nb、および5.0〜7.0wt%Ti、望ましくは5.5〜6.5wt%Ti、最も望ましくは6.0〜6.4wt%Tiであって、これらがTaC、NbC、TiCまたはこれらの混合物として添加されており、残部がWCであり、焼結後のHc値が20〜26、望ましくは21〜25kA/mである。
【0007】
コバルト結合相にWを添加することにより本発明の超硬合金切削工具インサートに所望の性質が付与される。結合相中のWはコバルトの磁性に影響を及ぼし、下記に定義するCW比に関係する。
【0008】
CW比=磁性Co%/Co%
ここで、磁性Co%は超硬合金中の磁性Coの重量%であり、Co%は超硬合金中のCoの重量%である。
【0009】
CW比はW添加量に応じて1〜約0.75の範囲で変わる。CW比が小さいことはW添加量が多いことに対応し、CW=1は結合相中に事実上Wが存在しないことに対応する。本発明の超硬合金ボディはCW比0.75〜0.95、望ましくは0.78〜0.90である。
【0010】
被膜なしの基材は、角度10°、幅0.2mmの負の面取りがされていて、それにより刃先鋭利度が0(鋭利)〜40μmとなっている。
【0011】
被膜は均質なAlxTi1−xN層を含み、x=0.6〜0.67、望ましくはx=0.62である。被膜の総厚さは1μm以上、望ましくは1.8μm以上であり、ただし3.8μm以下、望ましくは3.0μm以下である。被膜の組成および厚さはいずれも、ノーズ半径から1mmで刃先から200μmの逃げ面で測定する。
【0012】
本発明は更に、超硬合金基材と被膜とから成る被膜付切削工具インサートの作製方法にも関する。被覆する前の超硬合金基材は、角度10°で幅0.2mmの負の面取りをされていて、それにより刃先鋭利度が0(鋭利)〜40μmとなっており、混練、加圧成形、焼結を行なう従来からの粉末冶金法を用いて作製される。
【0013】
基材は硬さ1700HV3〜2000HV3の超硬合金を含んで成り、望ましい組成として、5.4〜6.3wt%Co、望ましくは5.7〜6.1wt%Co、0.7〜1.0wt%Ta+Nb、望ましくは0.6〜0.95wt%Ta+Nb、最も望ましくは0.7〜0.9wt%Ta+Nb、および5.0〜7.0wt%Ti、望ましくは5.5〜6.5wt%Ti、最も望ましくは6.0〜6.4wt%Tiであって、これらがTaC、NbC、TiCおよびこれらの混合物として添加されており、残部がWCであり、焼結した状態Hc値が20〜26、望ましくは21〜25kA/mである。
【0014】
従来からの焼結後処理を施した状態の被膜は、AlTi1−xNを含み、x=0.6〜0.67、望ましくはx=0.62であり、陰極アーク蒸発法により適当な組成のTiAl合金から成るターゲット材料を用いてNガス雰囲気中で堆積させる。被膜の総厚さは1μm以上、望ましくは1.8μm以上、ただし、3.8μm以下、望ましくは3.0μm以下である。
【0015】
本発明は更に、本発明の切削工具インサートを、硬さ45HRC以上の硬化鋼および硬質鋳鉄のフライス加工に、切削速度30〜180m/min、送り0.1〜0.4mm/revで用いることにも関する。
【実施例】
【0016】
〔実施例1〕
(A)本発明の超硬合金フライス用インサートとして、5.90wt%Co、0.56wt%Ta、0.35wt%Nb、6.16wt%Tiであり、これらがTaC、NbC、TiCとして添加されており、残部がWCである組成を有し、焼結した状態でHc値が23kA/mであり、結合相にCW比0.86に対応するWが添加されている超硬合金基材に、陰極アーク蒸発法によりTi33Al67合金から成るターゲット材料を用い厚さ2.9μmの均質なAl0.62Ti0.38NのPVD層を被覆した。このアーク蒸発はNガス雰囲気中で行なった。
【0017】
(B)(比較例)市販の超硬合金フライス用インサートとして、3.70wt%Co、1.43wt%Ta、0.42wt%Nb、残部WCである組成を有し、Hc値が23kA/mでCW比0.9であるインサートに、厚さ2.9μmの(Ti、Al)NのPVD被膜を(A)と同様にして被覆した。
【0018】
〔実施例2〕
(A)(B)のインサートを用いて鋳鋼の切削試験を行なった。
【0019】
加工方法: 側面フライス加工
ワーク: ステーターおよびローテータ−セグメント
材質 : オーステナイト鋼(炭化物を含有。C=1.15)
硬さ55〜58HRC
切削速度: 125m/min(n=500)
送り速度: 700mm/min(fz=0.28)
切込深さ: 半径方向Ae=1〜2mm、軸方向Ap=50〜70mm
インサート型式: SECT120612 T02010
備考: 乾式フライス
インサート交換の判定基準: 刃先ラインの欠けおよび/またはインサート破損の危険性
結果
インサートA:(本発明) セグメント21個
インサートB:(比較例) セグメント15個
〔実施例3〕
(A)(B)のインサートを用いて鋳鋼の切削試験を行なった。
【0020】
加工方法: 側面フライス加工
ワーク: ステーターおよびローテータ−セグメント
材質 : オーステナイト工具鋼
硬さ60HRC
切削速度: 85m/min(n=340)
送り速度: 320mm/min(fz=0.19)
切込深さ: 半径方向Ae=1〜2mm、軸方向Ap=50〜70mm
インサート型式: SECT120612 T02010
備考: 乾式フライス
インサート交換の判定基準: 刃先ラインの欠けおよび/またはインサート破損の危険性
結果
インサートA:(本発明) セグメント8個(HIP)
インサートB:(比較例) セグメント2個(H05)
【出願人】 【識別番号】505277521
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
【出願日】 平成19年8月27日(2007.8.27)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康

【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏


【公開番号】 特開2008−55595(P2008−55595A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−219407(P2007−219407)