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【発明の名称】 スローアウェイチップおよびスローアウェイ式切削工具
【発明者】 【氏名】吉田 悟

【要約】 【課題】バリの発生を抑制するとともに、切刃強度の低下をおさえ高能率加工を可能とする。

【構成】略多角形平板状をなすチップ本体10には、前記多角形面に形成されたすくい面11と、このすくい面11のコーナ部に形成されたコーナ切刃12と、前記コーナ切刃12の一端部に連なる多角形面の一方の辺稜部に、前記一端部に隣接して形成された主切刃13と、コーナ切刃12の他端部に連なる多角形面の他方の辺稜部に、前記他端部に隣接してコーナ切刃12から離れる方向へ順に形成された逃がし部14と、バリ取り刃15と、副切刃16と、を備え、逃がし部14は、副切刃16の両端部を結んだ直線に平行をなすコーナ切刃12の接線Tよりもチップ本体10の内方に凹み、副切刃16およびバリ取り刃15は、前記接線Tよりチップ本体10の外方に突出し、バリ取り刃15は、前記接線Tに対して0°より大きくかつ10°以下の角度で傾斜するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具の工具本体の所定の位置に設けられたチップ座に着脱可能に装着され、切削を担う切刃を備えたスローアウェイチップにおいて、
略多角形平板状をなすチップ本体には、前記多角形面に形成されたすくい面と、このすくい面のコーナ部に形成されたコーナ切刃と、前記コーナ切刃の一端部に連なる前記多角形面の一方の辺稜部に、前記一端部に隣接して形成された主切刃と、前記コーナ切刃の他端部に連なる前記多角形面の他方の辺稜部に、前記他端部に隣接して前記コーナ切刃から離れる方向へ順に形成された逃がし部と、バリ取り刃と、副切刃と、が備えられ、
前記逃がし部は、前記副切刃の両端部を結んだ直線に平行をなす前記コーナ切刃の接線よりもチップ本体の内方に凹んで形成され、
前記副切刃および前記バリ取り刃は、前記接線よりチップ本体の外方に突出するように形成され、
前記バリ取り刃は、前記接線に対して0°より大きくかつ10°以下の角度で傾斜して形成されていることを特徴とするスローアウェイチップ。
【請求項2】
前記接線に平行な方向における前記バリ取り刃の長さが、該スローアウェイチップを装着した切削工具の刃当り送り量より大きいことを特徴とする請求項1記載のスローアウェイチップ。
【請求項3】
請求項1または2記載のスローアウェイチップを工具本体の所定の位置に設けられたチップ座に着脱可能に装着されてなるスローアウェイ式切削工具において、
前記スローアウェイチップの多角形面が該切削工具の切削方向を向くすくい面とされ、
このすくい面のコーナ部に形成されたコーナ切刃の一端部に隣接する主切刃が該切削工具の送り方向で最も前方側に配置されて主に切削を担う切刃とされ、
前記コーナ切刃の他端部に隣接して、該切削工具の送り方向の反対方向に向かって順に逃がし部、バリ取り刃、副切刃が形成され、
前記逃がし部は、前記送り方向に平行をなす前記コーナ切刃の接線よりも該切削工具の切込み方向の反対方向に凹んで形成され、
前記バリ取り刃は、前記接線よりも前記切込み方向に突出し、その切込み角が0°より大きくかつ10°以下の範囲に設定され、
前記副切刃は、前記接線に略平行に延び、かつ、最も前記切込み方向側に形成されていることを特徴とするスローアウェイ式切削工具。
【請求項4】
前記送り方向に平行な方向における前記バリ取り刃の長さが、該スローアウェイ式切削工具の刃当り送り量よりも大きいことを特徴とする請求項3記載のスローアウェイ式切削工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイチップおよびこのスローアウェイチップを装着したスローアウェイ式切削工具に関し、特にバリの抑制に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
正面フライス加工で発生するバリは、一般的に正面フライス加工の終了後に設けられるバリ取り工程によって除去されている。その他に、正面フライス加工でバリを抑制する技術が従来から知られている。そのような従来技術には以下のようなものがある。
(1)第1の従来技術は、主切削を目的とする普通刃の他に、一方の側面と円周面との交差稜線部に円周状の切刃が形成された円形のバリ取り用チップを設置したものである(例えば、特許文献1参照)。
(2)第2の従来技術は、バリ取り刃のコーナ角が負で、切削刃の切刃に対して、バリ取り刃の外周側切刃がカッタ本体に微小量引き込んで配置されかつ先端側切刃がカッタ本体の軸方向先端側に微小量突出して配置されたものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−52611号公報(図2)
【特許文献2】特開2002−326113号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3の発明では、いずれも主切削を行う普通刃(粗刃)と、バリ取り専用のさらい刃とを組み合わせて取り付けた正面フライスを用いることによってバリの発生を抑制することを目的としたものであるため、以下のような問題があった。
(1)普通刃チップとバリ取り用チップの2種類のチップを用意しなくてはならないため、チップの在庫種類が増える問題があった。
(2)普通刃チップとバリ取り用チップの刃先寿命に差があり、一般には、どちらか一方が刃先寿命に至ったときに両方のチップを同時に交換するため、チップを有効に使用することができず工具費が大きくなる問題があった。
(3)一般に、刃当たり送りを小さくすれば、発生するバリが小さくなるため、バリ取り用チップの刃数を増やすことで、バリ取り用チップの刃当たり送りを小さくすることが有効だが、その分普通刃の刃数が減り、普通刃の寿命が短くなる、あるいは、バリ取り用チップでは除去できないような大きいバリが発生する問題があった。その逆に、普通刃の刃当たり送りを小さくすることで発生するバリを小さくできるが、その場合は加工能率が下がる問題がある。
さらに特許文献1の発明では、普通刃チップおよびバリ取り用チップが取り付けられる各チップ座が異形状となるため、バリ取り用チップの刃数を変更することができないといった問題があった。
特許文献2の発明では、コーナ角が負となるためバリ取り刃の刃先強度が低く、硬度の高い被削材を切削した場合、刃先に欠損が生じるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、バリの発生を抑制するとともに、切刃強度の低下をおさえ高能率加工を可能とするスローアウェイチップおよびスローアウェイ式切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のスローアウェイチップは、切削工具の工具本体の所定の位置に設けられたチップ座に着脱可能に装着され、切削を担う切刃を備えたスローアウェイチップにおいて、略多角形平板状をなすチップ本体には、前記多角形面に形成されたすくい面と、このすくい面のコーナ部に形成されたコーナ切刃と、前記コーナ切刃の一端部に連なる前記多角形面の一方の辺稜部に、前記一端部に隣接して形成された主切刃と、前記コーナ切刃の他端部に連なる前記多角形面の他方の辺稜部に、前記他端部に隣接して前記コーナ切刃から離れる方向へ順に形成された逃がし部と、バリ取り刃と、副切刃と、が備えられ、前記逃がし部は、前記副切刃の両端部を結んだ直線に平行をなす前記コーナ切刃の接線よりもチップ本体の内方に凹んで形成され、前記副切刃および前記バリ取り刃は、前記接線よりチップ本体の外方に突出するように形成され、前記バリ取り刃は、前記接線に対して0°より大きくかつ10°以下の角度で傾斜して形成されていることを特徴とする。
また、本発明のスローアウェイ式切削工具は、上述したスローアウェイチップを工具本体の所定の位置に設けられたチップ座に着脱可能に装着されてなるスローアウェイ式切削工具において、前記スローアウェイチップの多角形面が該切削工具の切削方向を向くすくい面とされ、このすくい面のコーナ部に形成されたコーナ切刃の一端部に隣接する主切刃が該切削工具の送り方向で最も前方側に配置されて主に切削を担う切刃とされ、前記コーナ切刃の他端部に隣接して、該切削工具の送り方向の反対方向に向かって順に逃がし部、バリ取り刃、副切刃が形成され、前記逃がし部は、前記送り方向に平行をなす前記コーナ切刃の接線よりも該切削工具の切込み方向の反対方向に凹んで形成され、前記バリ取り刃は、前記接線よりも前記切込み方向に突出し、その切込み角が0°より大きくかつ10°以下の範囲に設定され、前記副切刃は、前記接線に略平行に延び、かつ、最も前記切込み方向側に形成されていることを特徴とする。
【0006】
上記スローアウェイチップは、主に切削を担う主切刃と、バリを抑制するバリ取り刃と、優れた面粗度の仕上げ面に仕上げる副切刃とが、一つのスローアウェイチップに備えられているので、普通刃チップとバリ取り用チップとを別個に用意していた従来工具にくらべ、スローアウェイチップの在庫が削減するとともに、一つの切削工具に複数のスローアウェイチップを装着する場合には、各スローアウェイチップの刃先寿命が均一化しスローアウェイチップの有効利用が可能になることから工具費の削減がはかられる。また、本発明のスローアウェイチップを装着した切削工具は、普通刃チップとバリ取り用チップを併用する従来工具にくらべ、主切刃およびバリ取り刃の実質的な刃数がそれぞれ減少しないため、加工能率の低下を防止することができる。
【0007】
本発明のスローアウェイチップは、切削工具の工具本体に取り付けた状態で、切削に関与しない逃がし部によって主切刃とバリ取り刃が完全に分離されているので、これら主切刃およびバリ取り刃から排出される切屑は別個のものとなり、一つのスローアウェイチップによって、主切刃による荒加工、および、バリ取り刃によるバリを抑制する加工の2つの仕事を同時に行うことが可能となる。切込み角が0°より大きくかつ10°以下に設定されたバリ取り刃は、被削物からの抜け際の直前で、工具回転の場合には工具1回転前あるいは被削物回転の場合には被削物1回転前の切削にて取り代の1/2以下となった取り代を削るため、バリが発生し難くなる。
比較的大きな取り代を削る主切刃は、被削物からの抜け際において、削り取られる予定の部分が削り取られずに切削工具の切削方向または送り方向に倒れて大きなばりとなるおそれがあるが、バリ取り刃は、主切刃から完全に分離されているので上述した主切刃によって発生したバリの影響を受けることなく、バリをきわめて小さく抑えることが可能になる。
さらに、バリ取り刃は、その切込み角が上記範囲に設定されることから、該バリ取り刃先端外周部における切刃強度が高くなるとともに切取り厚さが小さくなるため、チッピングや欠損といった損傷を防止することができる。
【0008】
本発明のスローアウェイチップにおいて、副切刃の両端部を結んだ直線に平行をなすコーナ切刃の接線に平行な方向におけるバリ取り刃の長さが、該スローアウェイチップを装着した切削工具の刃当り送り量より大きいことが望ましい。また、本発明のスローアウェイチップを装着した切削工具において、前記送り方向に平行な方向における前記バリ取り刃の長さが、該スローアウェイ式切削工具の刃当り送り量よりも大きいことを特徴とする。これは、被削物からの抜け際の直前で、切削工具または被削物の1回転前の切削にて取り代の1/2以下となった取り代を削るため、バリが発生し難くなるからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスローアウェイチップは、主に切削を担う主切刃と、バリを除去するバリ取り刃と、仕上げ面を優れた面粗度に仕上げる副切刃とが、一つのスローアウェイチップに備えられているので、普通刃チップとバリ取り用チップとを別個に用意していた従来工具にくらべ、スローアウェイチップの在庫が削減するとともに、一つの切削工具に複数のスローアウェイチップを装着する場合には、各スローアウェイチップの刃先寿命が均一化しスローアウェイチップの有効利用が可能になることから工具費の削減がはかられるといった効果を奏する。また、本発明のスローアウェイチップを装着した切削工具は、普通刃チップとバリ取り用チップを併用する従来工具とくらべて、主切刃およびバリ取り刃の実質的な刃数がそれぞれ減少しないため、加工能率の低下を防止することができるといった効果を奏する。さらに、バリ取り刃は、その切込み角が0°より大きくかつ10°以下の範囲に設定されることから、該バリ取り刃先端外周部における切刃強度が高くなるとともに切取り厚さが小さくなるため、チッピングや欠損といった損傷を防止することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係るスローアウェイチップおよび切削工具の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るスローアウェイチップを示した平面図である。図2は、前記スローアウェイチップを装着したスローアウェイ正面フライスを示した一部縦断面側面図である。図3は、図2に示すスローアウェイ正面フライスの切刃部分の拡大図である。図4は、図2に示すスローアウェイ正面フライスの被削物からの抜け際における切削状態を説明する図である。
【0011】
図1に図示するように本スローアウェイチップ1は、略八角形板状をなすチップ本体10を有し、このチップ本体10の上面となる八角形面にはすくい面11が形成され、この八角形面の比較的小さい頂角をもつ4つのコーナ周縁部には、略円弧状のコーナ切刃12が形成され、このコーナ切刃12の一端部に連なる前記八角形面の一方の辺稜部には、前記一端部に隣接して直線状の主切刃13が形成されるとともに、前記コーナ切刃12の他端部に連なる他方の辺稜部には、前記他端部に隣接して前記コーナ切刃12から離れる方向へ順に、逃がし部14、バリ取り刃15、副切刃16が形成されている。平面視で、逃がし部14は、直線で構成される副切刃16に平行なコーナ切刃12の接線Tに対してチップ本体10の内方に凹んで形成されている。直線で構成されるバリ取り刃15は、前記接線Tに対してチップ本体10の外方に突出するように形成され、かつ、前記接線Tとのなす角度κが0°より大きくかつ10°以下の範囲で傾斜して形成されている。副切刃16についても前記接線Tに対して突出して形成されている。
本スローアウェイチップ1は、主切刃13、逃がし部14、バリ取り刃15および副切刃16から下面へ延びる側面に形成された逃げ面がすくい面11に対して鋭角となるように傾斜するポジティブチップとされている。
【0012】
上記スローアウェイチップ1を装着するスローアウェイ正面フライス100は、図2に図示するように中心軸線CLまわりに回転させられる略円盤状の工具本体101を有し、図では省略しているが、この工具本体101の先端外周面に沿って略等間隔に複数の取付け部材110が設けられ、これら取付け部材120の先端部に設けたチップ座121にスローアウェイチップ1が着脱可能に装着されてなる。工具本体101の基端側端面には、図示しないアーバまたは工作機械に取り付けるための平坦な取付け面102が形成されるとともに、工具本体101の中心軸線CLに沿ってフライス穴103が形成されている。
工具本体101の先端外周面に沿って複数のチップポケット110が略等間隔に切欠き形成され、これらチップポケット110の工具回転方向S後方側に隣接して設けられた取付け溝104に、取付け部材120がボルト等のねじ部材130によってそれぞれ固定されている。さらに各取付け部材120の工具回転方向S側を向く壁面の先端部には、チップ座121が切欠き形成されており、各チップ座121の底面および複数の壁面がスローアウェイチップ1の下面および切削に関与しない複数の側面を支持するとともに、各スローアウェイチップ1の上面の工具回転方向S側に隣接した領域に形成された楔部材挿入溝140に挿入された楔部材150を、ボルト等のねじ部材160の利用により、楔部材挿入溝140の底面に向かって押し込めることによって、スローアウェイチップ1は、その上面をチップ座121の底面側に向かって押圧され固定されている。
【0013】
既述のように工具本体101に装着されたスローアウェイチップ1においては、その上面となる略八角形面に形成されたすくい面11が切削方向である工具回転方向Sに向けられ、この略八角形面の比較的小さい頂角をもつ4つのコーナ周縁部に形成された略円弧状のコーナ切刃12のうち1つのコーナ切刃12が工具本体101の先端面105および外周面106から突出させられ、このコーナ切刃12の一端部に隣接する主切刃13が工具本体101の基端側に向かうにつれ工具本体101の径方向外側に向かうように中心軸線CLに対して所定の角度で傾斜させられ、前記コーナ切刃12の他端部に隣接しかつ該他端部から工具本体101の径方向内側に向かって順次、逃がし部14、バリ取り刃15、副切刃16が連続して配置されている。
【0014】
図3に図示するように逃がし部14は、該スローアウェイ正面フライス100の送り方向f、言い換えれば工具本体101の中心軸線CLに直交する方向に延びるコーナ切刃12の接線Tに対して、該スローアウェイ正面フライスの切込み方向a、言い換えれば工具本体101の中心軸線CL方向の基端側に凹む一方で、バリ取り刃15および副切刃16は、前記接線Tに対して切込み方向aに突出している。副切刃16は、送り方向fに略平行な方向に直線状に延在し、かつ、バリ取り刃15の切込み方向aにおける最先端と同じかまたは若干切込み方向aに突出するように配置されている。さらに、バリ取り刃15は、直線で構成され、送り方向aとのなす角度であらわされる切込み角κが0°より大きくかつ10°以下の範囲に設定されている。
【0015】
以上に説明したスローアウェイチップ1および該スローアウェイチップ1を装着するスローアウェイ正面フライス100においては、中心軸線CLまわりに回転させられるとともに、前記中心軸線CLに直交する方向に送りが与えられることによって、被削物の正面フライス加工を行う。図3に図示するように正面フライス加工状態では、スローアウェイチップ1の主切刃13およびコーナ切刃12が他の部分より先行して切込みapの大部分を占める切込みap1の部分を切削する。これら主切刃13およびコーナ切刃12が切削した後、バリ取り刃15および副切刃16が残された切込みap2を切削する。バリ取り刃15はバリ抑制に有効に被削物を切削し、副切刃16は被削物の加工面を優れた表面粗さに仕上げることができる。
このように主に切削を担う主切刃13と、バリを抑制するバリ取り刃15と、優れた表面粗さの加工面に仕上げる副切刃16とが、一つのスローアウェイチップ1に備えられているので、普通刃チップとバリ取り用チップとを別個に用意していた従来正面フライスにくらべ、スローアウェイチップの在庫が削減するとともに、一つのスローアウェイ正面フライスに装着された複数のスローアウェイチップの刃先寿命が均一化し、スローアウェイチップの有効利用が可能になることから、工具費の削減がはかられる。また、本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイ正面フライス100は、普通刃チップとバリ取り用チップを併用する従来正面フライスにくらべ、主切刃13およびバリ取り刃15の刃数がそれぞれ減少しないため、加工能率の低下を防止することができる。
【0016】
本スローアウェイチップ1を本スローアウェイ正面フライス100の工具本体101に取り付けた状態で、切込み方向aの反対方向(工具本体101の基端部側)に凹まされて切削に関与しない逃がし部14によって、主切刃13およびコーナ切刃12と、バリ取り刃15とは互いに完全に分離されているので、主切刃13およびコーナ切刃12から排出される切屑と、バリ取り刃15から排出される切屑とは別個のものとなり、一つのスローアウェイチップ1によって、主切刃13による荒加工、および、バリ取り刃15によるバリを抑制する加工の2つの仕事を同時に行うことが可能となる。
【0017】
図4に図示するように、切込み角κが0°より大きくかつ10°以下に設定されたバリ取り刃15は、被削物からの抜け際の直前で、本スローアウェイ正面フライス100の1回転前の切削にて取り代t1の1/2以下となった取り代t2を削るため、バリが発生し難くなる。また、図4からわかるように、被削物からの抜け際における微小な取り代は、その根元側の切り取られる境界部側が著しく広がった三角形状を呈することから高い強度が確保されるため、被削物からの抜け際で送り方向または切削方向に塑性変形し難くバリになり難くなる。また、比較的大きな取り代を削る主切刃13は、被削物からの抜け際において、削り取られる予定の部分が削り取られずにスローアウェイ正面フライス100の切削方向または送り方向に倒れて大きなバリとなるおそれがあるが、バリ取り刃15は、主切刃13から完全に分離されているので、上述した主切刃13によって発生したバリを除去し、きわめて小さく抑えることができる。
さらに、バリ取り刃15は、その切込み角κが上記範囲に設定されることから、該バリ取り刃15の先端外周部における切刃強度が高くなるとともに切取り厚さhが小さくなるため、チッピングや欠損といった損傷を防止することができる。
【0018】
本スローアウェイチップ1および本スローアウェイ正面フライス100において、送り方向fに平行な方向におけるバリ取り刃15の長さW1を、該スローアウェイ正面フライス100の刃当り送り量よりも大きくした場合には、被削物からの抜け際の直前で、本スローアウェイ正面フライス100の1回転前の切削にて取り代の1/2以下となった取り代を確実に削るため、バリの発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0019】
本スローアウェイチップ1において、バリ取り刃15の最先端が副切刃16に平行なコーナ切刃12の接線Tからチップ本体10の外方に向かって突出する量A(図1参照)は、本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイ正面フライス100における該バリ取り刃15の切込みap2(図3参照)に相当し、この突出量Aが大きすぎるとバリ取り刃15にかかる負荷が大きくなりチッピングや欠損といった損傷を生じるおそれがあるので、前記突出量Aは、0mmより大きくかつ0.2mm以下の範囲に設定されるのが望ましい。
【0020】
本実施形態に係るスローアウェイチップ1において、副切刃16およびバリ取り刃15は、平面視直線状をなすものに限定されず、単一の円弧状をなすもの、複数の円弧の組合せまたは直線と円弧の組合せからなる曲線状のいずれかをなすものであってもよい。このようにした場合には、本スローアウェイチップ1は、副切刃16の両端部を結んだ直線が本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイ正面フライス100の送り方向fと略平行とされ、かつ、バリ取り刃15の両端部を結んだ直線が、副切刃16の両端部を結んだ直線(前記送り方向f)とのなす角度が0°より大きくかつ10°以下の範囲となるように、工具本体101に装着される。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るスローアウェイチップ1は、第1の実施形態に係るスローアウェイチップ1と同一のものを用いるため説明は省略する。図5は、本実施形態に係るスローアウェイバイト200を示す平面図である。図5に図示するように本スローアウェイバイト200は、略角棒状をなす工具本体201の先端上面部に切欠き形成されたチップ座202に、1つのスローアウェイチップ1が着脱可能に装着されてなる。チップ座202に載置されたスローアウェイチップ1は、該スローアウェイチップ1および工具本体201の上方に跨るように、工具本体201に備えられた押え金210をボルト等のねじ部材220の利用により押し下げることによって、押え金210の先端部によりスローアウェイチップ1の上面がチップ座202の底面側に押圧され固定されている。
【0022】
工具本体201に装着されたスローアウェイチップ1においては、その上面となる略八角形面に形成されたすくい面11が切削方向である上方に向けられ、この略八角形面の比較的小さい頂角をもつ4つのコーナ周縁部に形成された略円弧状のコーナ切刃12のうち1つのコーナ切刃12が工具本体201の先端面203および一側面204から突出させられ、このコーナ切刃12の一端部に隣接する主切刃13が工具本体201の切込み方向aの反対方向(工具本体201の中心軸線CL方向の基端側)に向かうにつれ該スローアウェイバイト200の送り方向f(工具本体201の側方)に張り出すように切込み方向aに対して所定の角度で傾斜させられている。前記コーナ切刃12の他端部に隣接しかつ該他端部から前記送り方向fの反対方向に向かって順次、逃がし部14、バリ取り刃15、副切刃16が連続して配置されている。
【0023】
逃がし部13は、該スローアウェイバイト200の送り方向fに延びるコーナ切刃12の接線Tに対して、切込み方向aの反対方向に凹む一方で、バリ取り刃15および副切刃16は、接線Tよりも切込み方向aに突出している。副切刃16は、送り方向fに略平行な方向に直線状に延在し、かつ、バリ取り刃15の切込み方向aの最先端と同じかまたは若干切込み方向aに突出するように配置されている。さらに、バリ取り刃15は、直線で構成され、送り方向fとのなす角度であらわされる切込み角κが0°より大きくかつ10°以下の範囲に設定されている。
【0024】
以上に説明したスローアウェイチップ1および該スローアウェイチップ1を装着するスローアウェイバイト200においては、回転する被削物の回転中心軸線CLwに平行な方向に送りが与えられることによって、被削物の外周旋削加工が行なわれる。
本実施形態は、工具が自転しない点で第1の実施形態とは異なっているが、両実施形態とも工具と被削物との相対的な運動についてはほぼ同一である。
【0025】
本実施形態の切削状態は、図3を参照して説明した第1の実施形態に係るスローアウェイ正面フライス100の切削状態とほぼ同じであるため、説明は省略する。
【0026】
本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイバイト200においては、スローアウェイチップ1の主切刃13およびコーナ切刃12が他の部分より先行して切込みapの大部分を占める切込みap1の部分を切削する。これら主切刃13およびコーナ切刃12が切削した後、バリ取り刃15および副切刃16が残された切込みap2を切削する。バリ取り刃15はバリ抑制に有効に被削物を切削し、副切刃16は被削物の加工面を優れた表面粗さに仕上げることができる。
このように主に切削を担う主切刃13と、バリを抑制するバリ取り刃15と、優れた表面粗さの加工面に仕上げる副切刃16とが、一つのスローアウェイチップ1に備えられているので、普通刃チップとバリ取り用チップとを別個に用意していた従来工具にくらべ、スローアウェイチップの在庫が削減する。
【0027】
本スローアウェイチップ1を本スローアウェイバイト200の工具本体201に取り付けた状態で、切込み方向aの反対方向(工具本体の基端部側)に凹まされて切削に関与しない逃がし部14によって、主切刃13およびコーナ切刃12と、バリ取り刃15とは互いに完全に分離されているので、主切刃13およびコーナ切刃12から排出される切屑と、バリ取り刃15から排出される切屑とは別個のものとなり、一つのスローアウェイチップ1によって主切刃13による荒加工と、バリ取り刃15によるバリを抑制する加工の2つの仕事を同時に行うことが可能となる。
【0028】
図4で理解されるように、切込み角κが0°より大きくかつ10°以下に設定されたバリ取り刃15は、被削物からの抜け際の直前で、被削物の1回転前の切削にて取り代t1の1/2以下となった取り代t2を削るため、バリが発生し難くなる。また、被削物からの抜け際における微小な取り代は、その根元側の切り取られる境界部側が著しく広がった三角形状を呈することから高い強度が確保されるため、被削物の端面付近で送り方向または切削方向に塑性変形し難くバリになり難くなる。また、比較的大きな取り代を削る主切刃13は、被削物からの抜け際において、削り取られる予定の部分が削り取られずに該スローアウェイバイト200の切削方向または送り方向に倒れて大きなばりとなるおそれがあるが、バリ取り刃15は、主切刃13から完全に分離されているので、主切刃13によって発生したバリを除去し、きわめて小さく抑えることができる。
さらに、バリ取り刃15は、その切込み角κが上記範囲に設定されることから、該バリ取り刃15の先端外周部における切刃強度が高くなるとともに切取り厚さhが小さくなるため、チッピングや欠損といった損傷を防止することができる。
【0029】
本スローアウェイチップ1および本スローアウェイバイト200において、送り方向fに平行な方向におけるバリ取り刃15の長さW1を、該スローアウェイバイト200の送り量よりも大きくした場合には、被削物からの抜け際の直前で、被削物の1回転前の切削にて取り代の1/2以下となった取り代を確実に削るため、バリの発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0030】
本スローアウェイチップ1において、バリ取り刃15の最先端が副切刃16に平行なコーナ切刃12の接線Tからチップ本体10の外方に向かって突出する量A(図1参照)は、本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイバイト200における該バリ取り刃15の切込みap2(図3参照)に相当し、この突出量Aが大きすぎるとバリ取り刃15にかかる負荷が大きくなりチッピングや欠損といった損傷を生じるおそれがあるので、前記突出量Aは、0mmより大きくかつ0.2mm以下の範囲に設定されるのが望ましい。
【0031】
本実施形態に係るスローアウェイチップ1において、副切刃16およびバリ取り刃15は、平面視直線状をなすものに限定されず、単一の円弧状をなすもの、複数の円弧の組合せまたは直線と円弧の組合せからなる曲線状のいずれかをなすものであってもよい。このようにした場合には、本スローアウェイチップ1は、副切刃16の両端部を結んだ直線が本スローアウェイチップ1を装着したスローアウェイ正面フライス100の送り方向fと略平行とされ、かつ、バリ取り刃15の両端部を結んだ直線が、副切刃16の両端部を結んだ直線(送り方向f)とのなす角度が0°より大きくかつ10°以下の範囲となるように、工具本体101に装着される。
【0032】
本発明のスローアウェイチップおよびスローアウェイ式切削工具は、既述した実施形態に限定されるものではない。スローアウェイチップについては、略八角形状に限定されず、三角形状、四角形状、六角形状等の略多角形状であればよい。スローアウェイ式切削工具については、スローアウェイ正面フライス、スローアウェイバイトに限らず、例えばスローアウェイエンドミル、スローアウェイドリル、スローアウェイリーマ、中ぐりバイトまたはボーリングカッタ等のスローアウェイ式切削工具全般に適用可能である。また前記実施形態に開示した構成要素に限定されるものではなく、例えば開示した構成要素のいくつかを適宜削除、変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスローアウェイチップの平面図である。
【図2】図1に示すスローアウェイチップを装着したスローアウェイ正面フライスの一部縦断面側面図である。
【図3】図2に示すスローアウェイ正面フライスの切刃部分の拡大図である。
【図4】図2に示すスローアウェイ正面フライスの被削物からの抜け際における切削状態を説明する図である。
【図5】図1に示すスローアウェイチップを装着した、本発明の第2の実施形態に係るスローアウェイバイトの平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スローアウェイチップ
10 チップ本体
11 すくい面
12 コーナ切刃
13 主切刃
14 逃がし部
15 バリ取り刃
16 副切刃
100 スローアウェイ正面フライス(スローアウェイ式切削工具)
101 工具本体
121 チップ座
200 スローアウェイバイト(スローアウェイ式切削工具)
201 工具本体
202 チップ座
S 切削方向(工具回転方向)
f 送り方向
a 切込み方向
T 副切刃の両端部を結んだ直線に平行をなすコーナ切刃の接線
κ バリ取り刃と接線Tとがなす角度(切込み角)
W1 接線T方向(送り方向)におけるバリ取り刃の長さ
【出願人】 【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−36795(P2008−36795A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−216446(P2006−216446)