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【発明の名称】 小径接合エンドミル
【発明者】 【氏名】左野 稚通

【要約】 【課題】複合焼結部材とシャンクとの中心軸をほぼ同一にしてずれをなくし、製造コストを低減できる小径接合エンドミルを提供する。

【構成】シャンクの一端に孔部を設け、複合焼結部材を嵌合ロー付けしてなるエンドミルにおいて、前記孔部は、軸直角断面において4辺以上を有する多角形を成し、前記複合焼結部材の端部は前記孔部の多角形の4辺以上と当接し、前記辺と辺の交差する各部はロー溜まり10を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクの一端に孔部を設け、複合焼結部材を嵌合ロー付けしてなるエンドミルにおいて、前記孔部は、軸直角断面において4辺以上を有する多角形を成し、前記複合焼結部材の端部は前記孔部の多角形の4辺以上と当接し、前記辺と辺の交差する各部はロー溜まりを設けたことを特徴とする小径接合エンドミル。
【請求項2】
請求項1記載の小径接合エンドミルにおいて、前記複合焼結部材の他端に高硬度焼結部材を設け、残部及び前記シャンクを超硬合金としたことを特徴とする小径接合エンドミル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の小径接合エンドミルにおいて、前記孔部の多角形、又は、複合焼結部材の端部は4辺以上の正多角形であることを特徴とする小径接合エンドミル。
【請求項4】
請求項3記載の小径接合エンドミルにおいて、前記正多角形に嵌合する孔部、又は、端部は当接する各辺を正多角形の辺より長くしたことを特徴とする小径接合エンドミル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本願発明は、シャンクと複合焼結部材を嵌合ロー付けしてなる小径接合エンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金型や部品の小型精密化、高硬度化に伴い、高硬度焼結材、主に立方晶窒化硼素焼結材(以下CBNという。)やダイヤモンド焼結材を刃部に使用した小径接合エンドミルが用いられる。小径接合エンドミルは、刃部と残部が異なる素材からなる複合焼結部材と別体で設けたシャンクから成り、シャンクに設けた孔部に複合焼結部材の端部を嵌合して接合されて構成される。このような小径接合エンドミルのシャンク孔部に差し込む部分の複合焼結部材の端部の断面形状を円形とする例が特許文献1に記載されており、また、多角形とする例が特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2002−307227号公報
【特許文献2】特開2004−268202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のエンドミルは、端部と孔部の断面形状が相似であり、端部と孔部の間にローを満たすためのクリアランスが存在するため、複合焼結部材がシャンクに対して偏心してロー付け接合される。このため、ロー付け後にシャンク中心軸を基準として刃部、首部を加工する際に、刃部、首部の加工ができない場合があり、これを避けるため、予め刃部、首部の加工のために複合焼結部材に削り代を多く取る。従って、小径接合エンドミルの製造時間が増大していた。また、特許文献2のエンドミルも同様に端部と孔部の断面形状を相似形として接合するものであり、シャンク孔部と複合焼結部材の回転中心が一致せず、製造時間の増大となっていた。
本願発明は、上記問題を解決するものであり、複合焼結部材とシャンクとの中心軸をほぼ同一にしてずれをなくし、製造コストを低減できる小径接合エンドミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本願発明は、シャンクの一端に孔部を設け、複合焼結部材を嵌合ロー付けしてなるエンドミルにおいて、前記孔部は、軸直角断面において4辺以上を有する多角形をなし、前記複合焼結部材の端部は前記孔部の多角形の4辺以上と当接し、前記辺と辺の交差する各部はロー溜まりを設けたことを特徴とする。これにより、複合焼結部材とシャンクの中心軸のずれを抑制し、刃部、首部加工時の研削代を小さく設けることができ、製造時間を短縮できる。
また、上記構成の本発明において、前記複合焼結部材の他端に高硬度焼結部材を設け、残部と前記シャンクを超硬合金としたことが好ましい。これにより、エンドミル自体の研削抵抗による撓みを抑制して精度良く製造することができる。前記孔部の多角形、又は、複合焼結部材の端部は4辺以上の正多角形であることが好ましい。これにより、孔部と端部が当接する部分をエンドミル回転方向へバランスよく配置することができ、複合焼結部材とシャンクの中心軸のずれを抑制できる。さらに、前記正多角形に嵌め合う孔部、又は、端部は当接する各辺を正多角形の辺より長くしたことが好ましい。これにより、孔部と端部の多角形の各辺が当接する長さを最大限に取り、精度よく接合することができる。
【発明の効果】
【0005】
本願発明を適用することにより、接合精度を高めて首部、刃部の研削代を少なく設定でき、製造時間を短縮可能な小径接合エンドミルを提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本願発明を図面に従い、詳細に説明する。図1に示すように、本願発明の小径接合エンドミルの元である中間部材1は、一端がCBN、他端が超硬合金からなる複合焼結部材2において、複合焼結部材2のCBNの部分を刃部形成部3、超硬合金の部分を首部形成部材4とし、複合焼結部材2の端部を、複合焼結部材2とは別体に設けたシャンク5にロー付け固定した接合部6を持つものである。本願発明の小径接合エンドミルは、首部形成部材4の外周をシャンク5を基準として所定の径まで円筒研削して首部を形成し、その後、刃部形成部3に刃部を加工することで得られる。複合焼結部材2は、例えば、図2に示すように、円盤状の超硬合金材7の上面に、超高硬度焼結材8を一体焼結した素材板から、ワイヤーカットにて切り出すことで得られる。
本願発明は、図3に示すように、接合部6の軸直角断面視で、首部形成部材4の端部とシャンク5の孔部の形状が4辺以上の辺を有する多角形を成し、孔部の各辺が端部の面と当接して嵌め合い部9を形成し、各辺が交差する各部はロー溜まり10を形成し、複合焼結部材2とシャンク5を接合する。本願発明は、複合焼結部材の端部は前記孔部の多角形の4辺以上と当接するので、ロー材が偏ることなく、複合焼結部材2とシャンク部5の中心軸をほぼ同一に設けることができ、良好な接合が可能となり、刃部形成部3、首部形成部材4の加工の際に、研削が困難な超高硬度焼結材の研削代を削減することができ、製造時間を短縮できる。ここで、当接とは、端部と孔部の多角形の4辺以上が接している必要はなく、嵌め合い公差を持って嵌合されておれば良い。孔部の形状が3辺からなる多角形であると、ロー溜まり10の数が少なく接合強度が低下する。また、首部、刃部の加工時に研削代の変動が大きく、研削の能率を上げることができない。
【0007】
本願発明において、前記複合焼結部材の他端に高硬度焼結部材を設け、残部と前記シャンクを超硬合金とすることが好ましい。これにより、複合焼結部材2の端部やシャンク5がロー付け時の加熱に耐えることができ、接合強度を保つことができる。また、製造時、研削性の良い超硬合金で首部とシャンク5を設けることができ、高能率に本願発明の小径接合エンドミルを製造できる。高硬度焼結部材としては、CBNやダイヤモンド焼結材が好ましく、耐摩耗性に優れたエンドミルを得ることができる。
【0008】
さらに、前記孔部の多角形、又は、複合焼結部材の端部は4辺以上の正多角形であることが好ましい。これにより、孔部の各辺が端部の面と当接する嵌め合い部9と、ロー溜まり10とを、エンドミル円周方向にバランスよく配置することができる。従って、孔部の各辺を端部の面に均等に当接させることができ、複合焼結部材2のシャンク5に対する倒れを抑制して良好な接合精度を得ることができ、刃部、首部の加工時に研削代の変動を抑制でき、研削砥石の負担を軽減し、製造が容易となる。また、ロー溜まり10を均等に配置できるので、製造時やエンドミルとして使用する時、エンドミル回転方向の抵抗を均等に受けることができ、接合強度が確保できる。
【0009】
本願発明は、前記正多角形に嵌め合う孔部又は端部は、当接する各辺を正多角形の辺より長くしたことが好ましい。これにより、孔部と端部の多角形の各辺が当接する長さを最大限に取り、精度よく接合することができる。また、エンドミルの回転モーメントを長い辺で受けることができ、接合強度が高まる。さらに、辺の長さが同じ場合と比べて、端部を孔部に嵌合しやすい。
【0010】
本願発明は刃径が1mm以下のエンドミルに適用することが好ましく、剛性の低いものでも、研削代を少なく製造することができ、研削抵抗によるたわみを抑制し、能率を低下させることがない。また、図3に示すように、ロー溜まり10のロー材の厚さ11を、0.03mm〜0.08mmの範囲に設けることが好ましい。ロー材の厚さ11とはロー溜まり10を形成する孔部の多角形の辺と辺が交差する各部と端部の面とのエンドミル半径方向のクリアランスであり、これにより、複合焼結部材2をシャンク5に十分な強度で接合することができる。ここで、ロー材の厚さ11が0.03mm未満であると、ロー材の端部と孔部を接合する強度を十分に得ることができず、研削抵抗や切削抵抗を受けて剥離する可能性がある。また、ロー材の厚さが0.08mmを超えると研削抵抗や切削抵抗が接合部6に作用した際にロー材が変形して剥離する可能性がある。ロー材の厚さ11は、孔部の多角形の各辺と辺が交差する各部のエンドミル周方向長さに対して50%以上の範囲で均一であることが好ましい。以下、本願発明を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
本発明例1として、超硬合金からなるシャンク5の一端に孔部を設け、図3より、孔部は4辺からなる多角形状に設け、孔部の向かい合う各辺間の距離L1は1.1mmに設けた。次に、4辺の公差する各部にはそれぞれロー溜まり10が設けられ、略8角形状となっている。図4より、孔部のシャンクの軸方向の深さL2は2mmに設けた。図2に示す超高硬度焼結材8(本実施例では、CBN焼結対を用いた。)と超硬合金材7を一体焼結した素材板からワイヤカット放電加工機にて複合焼結部材2を切り出した。切り出した形状は、図5より、軸直角断面視で向かい合う各辺の距離が1.08mm、つまり1.08mmの直径を有する円が内接する大きさを有する正8角形柱であり、軸方向の長さL3は6mmである。シャンク5の孔部の断面形状と複合焼結部材2の端部の断面形状とは非相似形に設けた。そして、複合焼結部材2の端部をシャンクの孔部に挿入して嵌合ロー付けし、孔部の向かい合う4辺は複合焼結部材2の端部の面と当接して嵌め合い部9を形成し、各辺の交差する各部は、複合焼結部材2の端部の面と平坦部でロー溜まり10を形成する。ロー材には融点が高く、超硬合金に対してぬれやすいNi入り銀ローを用いた。また、孔部と端部の嵌め合いのため、孔部の向かい合う4辺には当接する端部に対してクリアランスを1辺当たり0.01mm設け、ロー溜まり10のロー材の厚さ11は0.05mmに設けた。
比較例2として、本発明例1と同様の仕様で、孔部の断面形状を正8角形、つまり、端部の断面形状と相似形状に設け、孔部の多角形と端部の間にロー材を満たすための隙間を設け、隙間は0.05mmに設けたものを作成した。
【0012】
本発明例1と比較例2をボールエンドミル製造テストに供した。テストとして、シャンク5を研削機械のチャックで把持して、複合焼結部材2の首部形成部4を直径1.03mmの円筒に研削し、その後、刃部形成部3を刃径1mmのボール刃型に研削し、刃部と首部の長さの合計が4mmであるボールエンドミルを製造した。研削に用いる研削砥石には、砥粒がダイヤモンド、結合材がレジノイドボンドであるものを使用し、研削条件は砥石の最外周の周速が2000m/min、1回の研削代をエンドミル半径分で0.025mmに設定し、水溶性研削液を使用して研削を行った。評価として、首部形成部4の円筒研削と刃部形成部3のボール刃型の研削状態を光学顕微鏡を用いて20倍の倍率で観察した。結果として、本発明例1の複合焼結部材2の首部形成部4を1.03mmの径まで円筒研削したところ、研削代が0.025mmと微少であるにもかかわらず、削り残しがなく、首部形成部4の外周を全て研削することができた。また、刃部形成部3をボールエンドミル刃型形状に加工した後、刃型の振れを測定したところ、3μm以内に収まっており、良好な刃型精度が得られた。比較例2を本発明例1と同様に1.03mmの径まで円筒研削したところ、複合焼結材の表面の一部を研削することができず、円筒を仕上げることができなかった。また、刃部加工においても、研削代がばらついてボール刃の一部に刃付けをすることができず、刃型の振れも3μmを超えた。これは、複合焼結部材2の中心軸とシャンクの中心軸を一致させることができず、ロー付けの際に芯ずれや倒れが発生し、シャンクに対して複合焼結材が振れたため、良好な円筒研削や刃付けができなかったと考えられる。この結果より、本願発明は、最小の研削代の設定が可能となり、製造時間が短縮でき、製造コストを低減することができた。
【0013】
(実施例2)
本発明例1と同仕様でシャンク5の孔部の4辺の各辺の長さを、複合焼結部材2の端部の正8角形の辺の長さに対して、本発明例3として1/2に設けたもの、本発明例4として3/4に設けたもの、本発明例5として同じに設けたもの、本発明例6として5/4に設けたものを用意し、実施例1と同様のテストに供した。
結果として、シャンク5の孔部の4辺の各辺の長さが同等以下のものより長い方が、複合焼結部材2の先端側と端部側で研削量のバラツキが少なく、接合強度と接合精度が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明例の小径接合エンドミルの正面図を示す。
【図2】図2は、素材板の例を示す。
【図3】図3は、図1のW−W線の断面図を示す。
【図4】図4は、シャンクの斜視図を示す。
【図5】図5は、中間部材の斜視図を示す。
【図6】図6は、本発明例の他の実施例で、図1と同様の断面図を示す。
【符号の説明】
【0015】
1 中間部材
2 複合焼結部材
3 刃部形成部
4 首部形成部材
5 シャンク
6 嵌合部
7 超硬合金材
8 高硬度焼結材
9 嵌め合い部
10 ロー溜まり
11 ロー材の厚さ
L1 向かい合う各辺間の距離
L2 孔部のシャンクの軸方向の深さ
L3 軸方向の長さ
【出願人】 【識別番号】000233066
【氏名又は名称】日立ツール株式会社
【出願日】 平成18年8月4日(2006.8.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−36755(P2008−36755A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−212845(P2006−212845)