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【発明の名称】 切削インサート及び切削工具
【発明者】 【氏名】高橋 秀史

【氏名】石井 政衛

【要約】 【課題】一つの工具本体と一種類の切削インサートとを用いて、ワイパー刃を任意に配置して切削加工を行うことができる切削インサート及びこの切削インサートが装着されて構成される切削工具を提供する。

【構成】多角形平板状をなして、多角形面11の辺稜部に切刃が設けられ、切刃の一部は多角形面11の外周側に向けて突出したワイパー刃12とされ、残りの切刃が通常切刃13とされ、多角形面11の角部の一部はワイパー刃12が交差するワイパーコーナ部14とされ、残りの角部の一部は通常切刃13同士が交差する通常コーナ部15とされ、多角形面11の厚さ方向内側には、前記厚さ方向に直交する断面が、断面中心を中心とする円にすべての辺が接するとともに前記断面中心に対して回転対称となる多角形断面をなすインサート支持部20が設けられ、インサート支持部20の周面が拘束面22とされていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体の取付座に着脱可能に装着される切削インサートであって、
外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、少なくとも一方の多角形面の辺稜部に切刃が設けられ、該切刃の一部は前記多角形面の外周側に向けて突出したワイパー刃とされ、残りの前記切刃が通常切刃とされ、
前記多角形面の角部の一部は、前記ワイパー刃が交差するワイパーコーナ部とされ、残りの角部の一部は、前記ワイパー刃が交差されずに前記通常切刃同士が交差する通常コーナ部とされており、
前記多角形面の厚さ方向内側には、前記厚さ方向に直交する断面が、断面中心を中心とする円にすべての辺が接するとともに前記断面中心に対して回転対称となる多角形断面とされたインサート支持部が設けられ、該インサート支持部の周面が、前記取付座に当接される拘束面とされていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
外形が概略正七角形平板状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
2つの前記多角形面の辺稜部に、それぞれ前記切刃が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記ワイパー刃は、前記多角形面の外周側に向けて凸曲するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項5】
前記ワイパー刃の位置を認識可能な表示マークが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の切削インサートが装着されて構成される切削工具であって、
軸線回りに回転される工具本体を有し、該工具本体の先端側外周部に、前記切削インサートを着脱可能に装着される取付座が設けられ、該取付座には、前記拘束面が当接される当接面が形成されていることを特徴とする切削工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、工具本体の取付座に着脱可能に装着される切削インサート及びこの切削インサートが装着されて構成される切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被切削材に平面加工を施す切削工具として、軸線回りに回転される工具本体を有し、この工具本体の先端側外周に複数の取付座が設けられ、これらの取付座に、切刃を備えた切削インサートが着脱可能に装着されたフライスカッタが広く提供されている。このフライスカッタは、切削インサートの切刃のうち工具本体径方向外側及び先端側に向けられた切刃によって被切削材を切削して平面加工を施すものである。
このようなフライスカッタによる平面加工においては、加工後の加工面を滑らかに仕上げるために、荒加工を行った後にさらに仕上げ加工を行うことがある。
【0003】
ところで、特許文献1には、複数の取付座のうちの少なくとも一つの取付座に、他の切刃よりも僅かに突出するワイパー刃を備えたワイパー刃インサートが装着されたフライスカッタが提案されている。この特許文献1に記載されたフライスカッタにおいては、ワイパー刃が他の取付座に装着された切削インサートの切刃よりも工具本体先端側に僅かに突出するように配置され、切削インサートの切刃によって加工された加工面を、ワイパー刃によってさらうように加工することができ、荒加工と仕上げ加工とを一度に行うことができるものである。
ここで、ワイパー刃インサートは、通常、特許文献1に示すように、他の取付座に装着された切削インサートよりも工具本体径方向内側に後退するように配置され、ワイパー刃以外の部分が被切削材と接触しないように構成されている。
【特許文献1】特開平02−116408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように一つのフライスカッタによって荒加工と仕上げ加工とを一度に行うためには、通常の切削インサートの他にワイパー刃インサートを別途準備する必要が生ずるために、切削インサートの使用コストが増加するといった問題があった。
また、ワイパー刃インサートは通常の切削インサートと形状が異なるので、工具本体にワイパー刃インサートを装着するための専用の取付座を設ける必要がある。このため、ワイパー刃インサートの配置は工具本体の仕様に制限されることになり、切削条件等に合わせてワイパー刃の配置を任意に設定することができなかった。
【0005】
また、特許文献1に示すように、ワイパー刃インサートが他の切削インサートよりも工具本体径方向内側に後退するように配置されている場合には、このワイパー刃インサートは工具本体先端側に向けられたワイパー刃のみが切削に供されることになり、工具本体径方向外側に向けられた部分は被切削材と接触しないため、このワイパー刃インサートの工具回転方向後方側に配置された切削インサートの切削量が、他の切削インサートよりも大きくなってしまい、異常摩耗及び欠損が発生するおそれがあった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、一つの工具本体と一種類の切削インサートとを用いて、ワイパー刃を任意に配置して切削加工を行うことができる切削インサート及びこの切削インサートが装着されて構成される切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の切削インサートは、工具本体の取付座に着脱可能に装着される切削インサートであって、外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、少なくとも一方の多角形面の辺稜部に切刃が設けられ、該切刃の一部は前記多角形面の外周側に向けて突出したワイパー刃とされ、残りの前記切刃が通常切刃とされ、前記多角形面の角部の一部は、前記ワイパー刃が交差するワイパーコーナ部とされ、残りの角部の一部は、前記ワイパー刃が交差されずに前記通常切刃同士が交差する通常コーナ部とされており、前記多角形面の厚さ方向内側には、前記厚さ方向に直交する断面が、断面中心を中心とする円にすべての辺が接するとともに前記断面中心に対して回転対称となる多角形断面とされたインサート支持部が設けられ、該インサート支持部の周面が、前記取付座に当接される拘束面とされていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の切削工具は、前述の切削インサートが装着されて構成される切削工具であって、軸線回りに回転される工具本体を有し、該工具本体の先端側外周部に、前記切削インサートを着脱可能に装着される取付座が設けられ、該取付座には、前記拘束面が当接される当接面が形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成の切削インサート及び切削工具によれば、一つの切削インサートにワイパー刃が交差されるワイパーコーナ部と通常の切削加工に使用される通常コーナ部とが設けられているので、この一種類の切削インサートを、通常の切削加工を行う切削インサート及びワイパー刃を有するワイパー刃インサートとして使用することができる。したがって、別途、ワイパー刃インサートを準備する必要はなく、切削インサートの使用コストを低減することができる。
【0010】
また、多角形面の厚さ方向内側に、前記厚さ方向に直交する断面が、断面中心を中心とする円にすべての辺が接するとともに前記断面中心に対して回転対称となる多角形断面とされたインサート支持部が設けられており、このインサート支持部の周面が前記取付座に当接される拘束面とされているので、ワイパーコーナ部を使用する場合でも通常コーナ部を使用する場合でも拘束面の形状が変化することがなく、同一形状の取付座にそのまま装着することができる。
したがって、同一形状の取付座を有する工具本体と一種類の切削インサートとを用いて、ワイパー刃を任意に配置して切削加工を行うことができる。
【0011】
さらに、取付座に、ワイパー刃が工具本体先端側を向くように切削インサートを装着してワイパーコーナ部を使用する場合には、このワイパー刃とワイパーコーナ部を介して連なり工具本体径方向外側に向けられた切刃が工具本体径方向内側に後退することがなくなり、この切刃も切削に供されることになる。したがって、このワイパー刃インサートの工具回転方向後方側に配置された切削インサートの切削量が他の切削インサートに比べて大きくなることがなく、この切削インサートの異常摩耗や欠損を防止することができる。
【0012】
ここで、前記切削インサートを、その外形が概略正七角形平板状をなすように構成してもよい。この場合には、通常コーナ部及びワイパーコーナ部を比較的多く形成して、コーナチェンジしながら使用できるので、この切削インサートの寿命向上を図ることができるとともに、切刃長さが確保されるので、切り込み深さが著しく小さくなることを防止できる。
【0013】
また、2つの前記多角形面の辺稜部にそれぞれ前記切刃を形成した、いわゆるネガティブタイプの切削インサートとしてもよい。この場合には、一方の多角形面の切刃を使用した後に、反転させて取付座に装着して他方の多角形面の切刃を使用することができ、この切削インサートのさらなる寿命向上を図ることができる。
なお、このようにネガティブタイプとした場合には、一方の多角形面あるいは他方の多角形面の角部の少なくともいずれか一つがワイパーコーナ部とされ、他の角部の少なくとも一つが通常コーナ部とされていればよい。よって、例えば、一方の多角形面の角部をワイパーコーナ部として、他方の多角形面の角部をすべて通常コーナ部とするように構成してもよい。
【0014】
さらに、前記ワイパー刃を前記多角形面の外周側に向けて凸曲するように構成してもよい。この場合には、工具本体を軸線回りに回転させながら軸線に交差する方向に送りを与えた際のワイパー刃の回転軌跡が滑らかに接続されることになり、工具本体の送り量を大きくしても仕上げ面を滑らかに仕上げることができる。
【0015】
また、前記ワイパー刃の位置を認識可能な表示マークを設けてもよい。この場合には、切削インサートの装着時にワイパーコーナ部と通常コーナ部とを明確に認識でき、ワイパー刃を確実に配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一つの工具本体と一種類の切削インサートとを用いて、ワイパー刃を任意に配置して切削加工を行うことができる切削インサート及びこの切削インサートが装着されて構成される切削工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図6に本実施形態である切削インサートを示す。また、図7から図10に本実施形態である切削工具としてのフライスカッタを示す。なお、本実施形態である切削インサートは、右回転される工具本体に装着されるいわゆる右勝手の切削インサートであり、これが装着されたフライスカッタも右勝手のものである。
【0018】
この切削インサート10は、超硬合金等の硬質材料によって構成され、図1から図3に示すように、外形が概略正七角形平板状をなしており、2つの七角形面11と、これら2つの七角形面に対して直交するように配置された側面とを備えた、いわゆるネガティブタイプのインサートである。一方の七角形面11A及び他方の七角形面11Bの辺稜部にそれぞれ切刃が形成されており、これら複数の切刃のうちの一部は、七角形面11の外周方向に向けて突出したワイパー刃12とされ、残りの切刃が通常切刃13とされている。本実施形態では、図1に示すように、一方の七角形面11Aの辺稜部に形成された切刃の1つがワイパー刃12とされている。
【0019】
七角形面11の角部のうち、このワイパー刃12が交差する角部がワイパーコーナ部14とされ、このワイパー刃12が交差されずに通常切刃13、13同士が交差される角部が通常コーナ部15とされている。
通常コーナ部15には、図2及び図5に示すように、この通常コーナ部15で交差する一対の側面に対してそれぞれ七角形面11の内側に向けて傾いた一対のフラット部が形成されており、この一対のフラット部の交差部分にコーナR部が設けられ、このコーナR部と七角形面11との交差稜線部にコーナR刃18が形成されている。
【0020】
また、このフラット部と七角形面11との交差稜線部に副切刃19が形成されている。本実施形態では、通常コーナ部15で交差する一対のフラット部のうち一方の七角形面11Aに対向する側から見て、通常コーナ部15から時計回りの方向に延びる一のフラット部と一方の七角形面11Aとの交差稜線部に副切刃19が形成されており、一方の七角形面11Aに対向する側から見て、通常コーナ部15から反時計回りの方向に延びる他のフラット部と他方の七角形面11Bとの交差稜線部に副切刃19が形成されている。すなわち、コーナR刃18を介して一方の七角形面11Aと他方の七角形面11Bとで周回りに互い違いの方向に延びるように副切刃19がそれぞれ形成されている。
なお、この副切刃19は、通常切刃13とともに被切削材を切削するものであり、本実施形態においてはその長さが約1〜2mm程度とされている。
【0021】
また、ワイパー刃12は、工具本体31の一回転当たりの送り量以上の長さを持つように設計する必要がある。例えば、送り量が最大0.3mm/1刃で刃数が10枚であれば0.3mm×10の3mmの長さが最低限必要となる。
さらに、ワイパーコーナ部14と通常コーナ部15とを重ね合わせて見た場合には、図5に示すように、ワイパー刃12は副切刃19よりも七角形面11の外周側に向けて突出量hだけ突出するように配置されている。さらに、ワイパーコーナ部14を介してワイパー刃12と交差する通常切刃13は、通常コーナ部15で反時計回りの方向に延びる通常切刃13の位置と一致するように配置されている。
【0022】
そして、七角形面11の厚さ方向内側には、図6に示すように、厚さ方向に直交する断面が概略正七角形をなすインサート支持部20が形成されている。このインサート支持部20の前記七角形断面21は、この七角形断面21中心を中心とする内接円Iに対してすべての辺が接するとともに、前記断面中心に対して回転対称とされており、このインサート支持部20の周面が、後述する工具本体31の取付座33に当接される拘束面22とされている。
【0023】
この七角形断面21は、ワイパー刃12が形成されていない他方の七角形面11Bと同一の形状とされており、インサート支持部20の一方の七角形面11A側部分には、前記拘束面22から一方の七角形面11Aの外周側に向けて突出する突出部23が形成されており、この突出部23と一方の七角形面11Aとの交差稜線部に前記ワイパー刃12が設けられている。
【0024】
また、七角形面11の中央部には、切削インサート10の厚さ方向に貫通した貫通孔24が開口されている。
さらに、一方の七角形面11Aには、ワイパー刃12の位置を示す表示マーク25が付されている。
【0025】
次に、前述の切削インサート10が装着されて構成されるフライスカッタ30について説明する。
このフライスカッタ30は、被切削材に平面加工を施す際に使用されるものであり、図7及び図8に示すように、軸線Oを中心とした概略円盤状をなす工具本体31を有しており、この工具本体31には、軸線Oに沿って延びる取付孔32が穿設されている。
工具本体31の先端側外周には、前述の切削インサート10を装着するための取付座33が工具本体31先端側及び工具本体31径方向外側に開口するように形成されている。本実施形態では、図8に示すように取付座33が10個形成されており、これらの取付座33が周方向で等間隔に配置されている。
【0026】
取付座33の工具回転方向T前方側を向く壁面33Aは、図7及び図8に示すように工具本体31径方向外側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に後退するように、かつ、軸線Oに対して工具本体31先端側に向かうにしたがい僅かに工具回転方向T後方側に後退するように傾斜させられている。
【0027】
取付座33の工具本体31先端側を向く壁面33Bは、図9に示すように、工具本体31径方向外側に向かうにしたがい工具本体31先端側に突出する斜面と工具本体31径方向内側に向かうにしたがい工具本体31先端側に突出する斜面とを備えており、工具本体31後端側に向けて凹んだV字状をなしている。ここで、工具本体31径方向外側に向かうにしたがい工具本体31先端側に突出する斜面には切削インサート10の拘束面22が当接される第1当接面34が形成され、工具本体31径方向内側に向かうにしたがい工具本体31先端側に突出する斜面には、切削インサート10が接触しないように後退した逃げ部35が形成されている。
【0028】
また、取付座33の工具本体31径方向外側を向く壁面33Cには、前記逃げ部35に連なり切削インサート10の拘束面22と当接される第2当接面36が形成されている。
なお、第1当接面34と第2当接面36との間に生ずるV字状の挟角度δは、切削インサート10の二箇所の拘束面22と関連していて、δ=77.14°とされている。
これら第1当接面34及び第2当接面36の工具回転方向T前方側には、図10に示すように、前記ワイパー刃12が収容可能な切欠部37が形成され、これら第1当接面34及び第2当接面36と取付座33の工具回転方向T前方側を向く壁面33Aとの交差部分にはヌスミ部38が形成されている。つまり、ヌスミ部38は、第1当接面34及び第2当接面36の工具回転方向T後方側に配置されているのである。
【0029】
また、取付座33の工具回転方向T前方側には、切削インサート10を固定するためのクサビ部材40が挿入される凹部39が、工具本体31径方向外側及び工具本体31先端側に開口するように形成されている。クサビ部材40の工具回転方向T後方側を向く面が切削インサート10を押圧する押圧面40Aとされ、クサビ部材40の工具本体31先端側及び工具本体31径方向外側を向く面は、内側に向けて切り欠かれておりチップポケット41を構成している。
【0030】
前記切削インサート10が取付座33に装着されることによりフライスカッタ30が構成される。切削インサート10の一方の七角形面11Aをすくい面として、他方の七角形面11Bを取付座33の工具回転方向T前方側を向く壁面33Aに対向するように切削インサート10を取付座33に載置し、取付座33の第1当接面34、第2当接面36に、それぞれ拘束面22が当接される。
ここで、本実施形態では、10個の取付座33のうちの1つには、ワイパーコーナ部14が工具本体31先端側及び径方向外側を向くようにして切削インサート10が載置され、残りの取付座33には、通常コーナ部15が工具本体31先端側及び径方向外側を向くようにして切削インサート10が載置される。
【0031】
ワイパー刃12が形成された部分の拘束面22が前記第1当接面34及び第2当接面36に当接された場合には、図10に示すように、ワイパー刃12(突出部23)は、第1当接面34及び第2当接面36の工具回転T方向前方側に形成された切欠部37あるいは工具回転方向T後方側に設けられたヌスミ部38に収容され、工具本体31と接触することがないように配置される。
【0032】
このようにして切削インサート10を取付座33に載置した状態で、取付座33の工具回転方向T前方側に設けられた凹部39にクサビ部材40が挿入され、クサビ部材40の押圧面40Aが一方の七角形面11Aを工具回転方向T後方側に向けて押圧することにより、切削インサート10が取付座33の工具回転方向T前方側を向く壁面33Aとクサビ部材40の押圧面40Aとで挟持されて固定される。
【0033】
通常コーナ部15が工具本体31先端側及び径方向外側に向けて装着された切削インサート10は、通常コーナ部15から反時計回りに延びる通常切刃13が工具本体31径方向外側及び先端側に向けられて主切刃13Aとされ、この通常コーナ部15に形成された副切刃19が工具本体31の先端側に向けられて前記軸線Oに略直交するように配置される。この副切刃19に連なり工具本体31先端側に向けられた通常切刃13Bには、工具本体31径方向内側に向かうにしたがい工具本体31後端側に向けて後退するように逃げが与えられる。
【0034】
ワイパーコーナ部14が工具本体31先端側及び径方向外側に向けて装着された切削インサート10は、工具本体31の先端側に、前記軸線Oに略直交するようにワイパー刃12が配置される。ここで、軸線Oを中心とした回転軌跡において、このワイパー刃12は前記副切刃19よりも工具本体31先端側に突出量hだけ突出するように配置される。また、このワイパー刃12とワイパーコーナ部14を介して連なる通常切刃13Cは、前記切削インサート10の主切刃13Aとその回転軌跡が一致するように配置される。
【0035】
このようにして構成されたフライスカッタ30は、工具本体31の取付孔32に挿入されたアダプタ等を介して工作機械の主軸端(図示なし)に取り付けられ、工具本体31をその軸線O回りに高速回転するとともに軸線Oと交差する方向に送りを与えることにより、工具本体31径方向外側及び先端側に向けられた切削インサート10の主切刃13Aによって平面加工を施すとともに工具本体31先端側に向けられた副切刃19によって加工面を仕上げるように切削し、さらにワイパー刃12によって加工面をさらうように切削して加工面を滑らかに仕上げるものである。
【0036】
本実施形態である切削インサート10においては、一つの切削インサート10にワイパー刃12が交差されるワイパーコーナ部14と通常の切削加工に使用される通常コーナ部15とが設けられているので、この一種類の切削インサート10を通常の切削加工を行う切削インサート10として使用できるとともに、仕上げ加工を行うワイパー刃インサートとしても使用することができる。よって、2種類以上の切削インサート10を準備する必要はなく、切削インサート10の使用コストを低減することができる。
【0037】
また、七角形面11の厚さ方向内側に、その周面が取付座33の第1、第2当接面34、36に当接される拘束面22とされたインサート支持部20が設けられており、該インサート支持部20の厚さ方向に直交する断面が、断面中心を中心とする内接円Iにすべての辺が接するとともに前記断面中心に対して回転対称となる七角形断面21とされているので、この切削インサート10をコーナチェンジして取付座33に装着することができ、ワイパーコーナ部14を使用する場合でも通常コーナ部15を使用する場合でも、同一の取付座33に装着することができる。
したがって、一種類の取付座33を有する工具本体31と一種類の切削インサート10とを用いて、ワイパー刃12を任意に配置して切削加工を行うことができる。
【0038】
さらに、ワイパー刃12が工具本体31先端側を向くように配置した場合には、このワイパー刃12にワイパーコーナ部14を介して連なり工具本体31径方向外側に向けられた切刃13Cの軸線Oを中心とした回転軌跡が、他の取付座33に装着されて通常コーナ部15が使用されている切削インサート10の主切刃13Aの回転軌跡と一致し、前記通常切刃13Cによっても切削加工を行うことになる。したがって、このワイパーコーナ部14が使用された切削インサート10の工具回転方向T後方側の取付座33に装着された他の切削インサート10の切削量が大きくなることがなく、この切削インサート10の異常摩耗や欠損を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、2つの七角形面11の辺稜部にそれぞれ切刃を形成した、いわゆるネガティブタイプの切削インサート10としているので、一方の七角形面11Aの切刃を使用した後に、反転させて取付座33に装着して他方の七角形面11Bの切刃を使用することができ、この切削インサート10のさらなる寿命向上を図ることができる。
【0040】
また、取付座33の第1、第2当接面34、36の工具回転方向T前方側に切欠部37が形成されるとともに、第1、第2当接面34、36の工具回転方向T後方側にヌスミ部38が形成されているので、ワイパー支持部の拘束面22よりも外周側に突出したワイパー刃12(突出部23)がこれら第1、第2当接面34、36側に向けられた場合でも、切欠部37又はヌスミ部38にワイパー刃12(突出部23)を収容して、切削インサート10を確実に装着して使用することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態である切削インサートについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、ワイパー刃を直線状に形成したもので説明したが、これに限定されることはなく、外側に向けて凸曲した曲線刃としても良い。この場合には、工具本体を軸線に交差する方向に送りを与えた際のワイパー刃の回転軌跡が滑らかに接続されることになり、工具本体の送り量を比較的大きくしても仕上げ面を滑らかに仕上げることができる。
【0042】
また、外形が七角形平板状をなす切削インサートとして説明したが、多角形平板状をなしていれば良い。ただし、本実施形態のように七角形平板状とすることにより、通常コーナ部及びワイパーコーナ部を比較的多く形成することができるとともに、各切刃長さを確保して切り込み深さが著しく小さくなることを防止できるので好ましい。
【0043】
さらに、七角形面に、ワイパー刃の位置を示す表示マークが付されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、表示マークが付されていないものであってもよい。ただし、本実施形態のように前記表示マークを付すことにより、ワイパー刃の位置を確実に認識して取付座に装着することができるので好ましい。
【0044】
また、2つの七角形面の辺稜部に切刃が形成された、いわゆるネガティブタイプの切削インサートとして説明したが、一方の七角形面の辺稜部にのみ切刃を形成するとともに、この七角形面に連なる側面に逃げを与えたいわゆるポジティブタイプの切削インサートであっても良い。
また、厚さ方向に貫通した貫通孔を形成した切削インサートとして説明したが、貫通孔が設けられていなくても良い。
【0045】
また、工具本体に取付座を周方向に等間隔で10個設けたフライスカッタとして説明したが、これに限定されることはなく、取付座の数や配置は任意に設定でき、被切削材の材質や切削条件等を考慮して適宜設定することが好ましい。例えば、取付座を不等間隔に配置することにより、工具本体の共振を防ぐこともできる。
さらに、ワイパー刃を一つだけ配置したものとして説明したが、これに限定されることはなく、複数のワイパー刃を例えば1枚おき又は2枚おきに配置しても良い。
【0046】
また、切削インサートをクサビ部材で固定するいわゆるクサビ方式のものとして説明したが、これに限定されることはなく、貫通孔に挿通したクランプネジを取付座に螺着して固定するいわゆるスクリューオン方式のフライスカッタであっても良い。
【0047】
また、通常コーナ部に一対のフラット部を形成して一のフラット部と一の七角形面との交差稜線部、及び他のフラット部と他の七角形面との交差稜線部にそれぞれ副切刃を設けた切削インサートとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、一対のフラット部と一の七角形面との交差稜線部、及び一対のフラット部と他の七角形面との交差稜線部にそれぞれ副切刃を設けたものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態である切削インサートの斜視図である。
【図2】図1に示す切削インサートの上面図である。
【図3】図1に示す切削インサートの側面図である。
【図4】図2におけるX−X断面図である。
【図5】図1に示す切削インサートのワイパーコーナ部及び通常コーナ部の拡大図である。
【図6】図3におけるY−Y断面図である。
【図7】図1に示す切削インサートが装着されたフライスカッタの側面図である。
【図8】図7に示すフライスカッタの先端面図である。
【図9】図7に示すフライスカッタの取付座近傍の拡大説明図である。
【図10】図9におけるZ−Z(Z´―Z´)断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 切削インサート
11 七角形面(多角形面)
12 ワイパー刃
13 通常切刃
14 ワイパーコーナ部
15 通常コーナ部
20 インサート支持部
21 七角形断面(多角形断面)
22 拘束面
25 表示マーク
30 フライスカッタ(切削工具)
31 工具本体
33 取付座
34 第1当接面(当接面)
36 第2当接面(当接面)
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−23660(P2008−23660A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−199268(P2006−199268)