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【発明の名称】 スローアウェイ式回転工具
【発明者】 【氏名】吉葉 大助

【氏名】古屋 孝一

【要約】 【課題】鋳物からなる被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するとともに、被加工物の表面のうねりやむしれを防止しかつ表面粗さが悪化することを防止するスローアウェイ式回転工具を提供することを目的とする。

【構成】スローアウェイ式回転工具1に装着したスローアウェイチップ100には、該回転工具1の中心軸線CLに略直交する副切刃23aと、この副切刃23aの工具外周側に連なる面取りコーナ23bとを備え、面取りコーナの切込み角βを0°よりも大きくかつ45°以下の範囲に設定し、面取りコーナ23bに連なるすくい面21のうち該面取りコーナ23bの稜線に連なる領域には、刃先に向かうにつれすくい面21よりも工具回転方向K後方側に傾斜しかつ工具回転方向Kの法線Pとのなす角度α1を−20°〜−75°の範囲に設定した面取部24を設け、さらに、副切刃23aの稜線を前記中心軸線CL方向で面取りコーナ23bの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線まわりに回転される工具本体の先端外周部に、少なくとも1つのスローアウェイチップを着脱可能に装着したスローアウェイ式回転工具において、
前記スローアウェイチップは、前記中心軸線に略直交する方向に延びる副切刃と、
この副切刃の工具外周側に連なる面取りコーナと、を備え、
前記面取りコーナの切込み角を0°よりも大きくかつ45°以下の範囲に設定し、
前記面取りコーナに連なるすくい面のうち該面取りコーナの稜線に連なる領域には、刃先に向かうにつれ前記すくい面よりも工具回転方向後方側に傾斜しかつ前記回転方向の法線とのなす角度を−20°〜−75°の範囲に設定された面取部を設け、
前記副切刃の稜線を前記中心軸線方向で前記面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことを特徴とするスローアウェイ式回転工具。
【請求項2】
中心軸線まわりに回転される工具本体の先端外周部に、少なくとも1つのスローアウェイチップを着脱可能に装着したスローアウェイ式回転工具において、
前記スローアウェイチップは、前記中心軸線に略直交する方向に延びる副切刃と、
この副切刃の工具外周側に連なる面取りコーナと、を備え、
前記面取りコーナの切込み角を、0°よりも大きくかつ45°以下の範囲に設定し、
前記面取りコーナに連なるすくい面のうち該面取りコーナの稜線に連なる領域には、刃先に向かうにつれ前記すくい面よりも工具回転方向後方側に傾斜しかつ前記工具回転方向前方側に向かって凸の曲面で形成された面取部を設け、
前記副切刃の稜線を前記中心軸線方向で前記面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことを特徴とするスローアウェイ式回転工具。
【請求項3】
前記副切刃の稜線に沿って、該稜線を前記中心軸線に略直交する直線状又は先端側に凸の円弧状とし、かつ、該稜線に沿う方向の長さを該スローアウェイ式回転工具の1刃当たり送りよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のスローアウェイ式回転工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイチップを備えたスローアウェイ式回転工具に関し、特に、鋳物からなる被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するスローアウェイ式回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳物の平面に形成された鋳巣を補修する補修装置として、特開2004−202562号公報に記載された補修装置がある。この補修装置は、鋳物の平面に形成された鋳巣をフライスカッタ30に取り付けた補修工具で補修する補修装置であって、軸線回りに回転及び軸直角方向に移動する円柱状のフライスカッタ30と、薄い矩形板状で側面12、端面11及び下面22を持ち、端面視で側面12と直角な平面に対して45から80度を成すすくい面13及び平面視で側面12に対して5から10度を成す横切れ面17が側面12に形成され、すくい面13が回転方向前方で、横切れ面17が移動方向前方となるようにフライスカッタ30に取り付けられた、少なくとも1つの補修工具10と、から成る。この補修装置において、フライスカッタ30を回転させつつ移動させると、回転移動するすくい面13及び移動する横切れ面17が鋳巣の周辺の材料を塑性流動させるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−202562号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された補修装置では、補修工具10のすくい面13は、材料を該補修工具の回転方向に塑性流動させる拘束面として機能し、側面に対して45°から10°をなすため、塑性流動に際して前記すくい面及び鋳物の平面に過大な摩擦力が作用し鋳物の平面のうねりやむしれ等が大きくあらわれ、表面粗さが悪化するおそれがあった。
【0004】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、鋳物からなる被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するとともに、被加工物の表面のうねりやむしれを防止しかつ表面粗さが悪化することを防止するスローアウェイ式回転工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の発明は、中心軸線まわりに回転される工具本体の先端外周部に、少なくとも1つのスローアウェイチップを着脱可能に装着したスローアウェイ式回転工具において、前記スローアウェイチップは、前記中心軸線に略直交する方向に延びる副切刃と、この副切刃の工具外周側に連なる面取りコーナと、を備え、前記面取りコーナの切込み角を0°よりも大きくかつ45°以下の範囲に設定し、前記面取りコーナに連なるすくい面のうち該面取りコーナの稜線に連なる領域には、刃先に向かうにつれ前記すくい面よりも工具回転方向後方側に傾斜しかつ前記回転方向の法線とのなす角度を−20°〜−75°の範囲に設定された面取部を設け、前記副切刃の稜線を前記中心軸線方向で前記面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、中心軸線まわりに回転される工具本体の先端外周部に、少なくとも1つのスローアウェイチップを着脱可能に装着したスローアウェイ式回転工具において、前記スローアウェイチップは、前記中心軸線に略直交する方向に延びる副切刃と、この副切刃の工具外周側に連なる面取りコーナと、を備え、前記面取りコーナの切込み角を、0°よりも大きくかつ45°以下の範囲に設定し、前記面取りコーナに連なるすくい面のうち該面取りコーナの稜線に連なる領域には、刃先に向かうにつれ前記すくい面よりも工具回転方向後方側に傾斜しかつ前記工具回転方向前方側に向かって凸の曲面で形成された面取部を設け、前記副切刃の稜線を前記中心軸線方向で前記面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことを特徴とする。
【0007】
前記請求項1又は請求項2記載のスローアウェイ式回転工具によれば、面取りコーナにおける面取部と該スローアウェイ式回転工具の回転方向の法線とのなす角度を−20°〜−75°の範囲に設定するか、又は、面取りコーナにおける面取部を工具回転方向前方側に向かって凸の曲面で形成したことにより、大きな負のすくい角が付与された面取りコーナと被加工物との接触部においては、大きい摩擦力を含む切削抵抗の発生にともなって高温、高圧となり被加工物の表面からある程度の深さにわたって塑性流動層が形成されるため、該塑性流動層が被加工物の表面に開口した鋳巣の開口部を塞ぎ補修する。面取りコーナにおける面取部と前記回転方向の法線とのなす角度を−20°より正側にした場合、充分に大きい摩擦力を含む切削抵抗が発生しないため塑性流動層を形成することができないおそれがあり、前記角度を−75°より負側にした場合、過大な切削抵抗が作用し前記接触部が過度の高温、高圧となるため面取りコーナの切刃摩耗を早め工具寿命が短くなるおそれがある。
面取りコーナと被加工物との接触部では、前述のように大きい摩擦力を含む切削抵抗、および、その切削抵抗にともなう高温、高圧のもとで切屑の凝着が発生するため、塑性流動層の表面にうねりやむしれが発生し表面粗さが悪化するが、面取りコーナの内周側に連なる副切刃の稜線を、前記中心軸線方向で面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことから、該副切刃が面取りコーナに続いて塑性流動層と接触することにより前記のうねりやむしれを除去するため、被加工物の表面を平滑化し表面粗さの悪化を防止する。したがって、被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するとともに、被加工物の表面のうねりやむしれを防止し、かつ、表面粗さが悪化することを防止することができる。
【0008】
面取りコーナの切込み角は、塑性流動層の深さに影響を及ぼし、45°を超える場合には塑性流動層を充分な深さにわたって形成することができない。そのため、塑性流動層が副切刃によって除去されてしまい、一旦塞がれた鋳巣が再び被加工物の表面に開口してしまうおそれがある。面取りコーナの切込み角を45°以下に設定することによって、塑性流動層を充分な深さにわたって形成することができ鋳巣の補修が確実に行える。
【0009】
さらに、面取りコーナから生成する切屑は、面取部から続くすくい面側へ流れた後、前記すくい面の工具回転方向前方側に確保された大きな空間へ排出されるため、切屑詰まりのない優れた切屑処理性能が実現する。
【0010】
請求項3記載のスローアウェイ式回転工具は、請求項1又は2記載のスローアウェイ式回転工具において、前記副切刃の稜線に沿って、該稜線を前記中心軸線に略直交する直線状又は先端側に凸の円弧状とし、かつ、該稜線に沿う方向の長さを該スローアウェイ式回転工具の1刃当たり送りよりも大きく設定したことを特徴とする。
請求項3記載のスローアウェイ式回転工具によれば、前記副切刃の稜線に沿って、該稜線を前記中心軸線に略直交する直線状又は先端側に凸の円弧状とし、かつ、面取りコーナの内周側に連なる副切刃を、該副切刃の稜線に沿って該スローアウェイ式回転工具の刃当り送り以上の長さとしたことから、前記面取りコーナによって形成した塑性流動層の表面の表面粗さをきわめて良好にする。また、1つのスローアウェイチップに面取りコーナと、該スローアウェイ式回転工具の中心軸線方向で前記面取りコーナの最先端と等しいか又はわずかに先端側に位置する副切刃を設けたことから、1つのスローアウェイチップにより鋳巣の補修、加工面のうねり、むしれおよび表面粗さの改善を行うことができ、効率的な加工が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスローアウェイ式回転工具によれば、被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するとともに、被加工物の表面のうねりやむしれを防止しかつ表面粗さが悪化することを防止するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明のスローアウェイ式回転工具の一実施形態に係るスローアウェイ式カッタについて、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係るスローアウェイ式カッタを示す図であり、図1の(a)は上面図であり、図1の(b)は正面図である。図2は図1の(a)における面取部のA矢視拡大図である。図3は図1に示すスローアウェイ式カッタに装着されるスローアウェイチップを示す図であり、図3の(a)は上面図であり、図3の(b)は図3の(a)におけるS1−S1線断面図である。
【0013】
図1の(a)および図(b)に図示するように本スローアウェイ式カッタ1は、中心軸線CLまわりに回転させられる略円盤状の工具本体2の先端外周部に、周方向に沿って略等間隔に5個のスローアウェイチップ100が着脱自在に装着された構成を有する。
図1では一部省略しているが、工具本体2の先端外周部には、周方向に沿って5つの切屑ポケットおよび該切屑ポケットの工具回転方向K後方側にチップ取付溝がそれぞれ切欠き形成され、その反対側の基端部側の端面には、図示しない工作機械の主軸に直接又はアーバ等を介して取り付けられる取付面3が形成されている。
【0014】
チップ取付溝に装着されるスローアウェイチップ100は、図3に図示するように略多角形平板状をなすチップ本体10と、このチップ本体10の上面となる多角形面の1辺部に形成された切欠き段部11にろう付け等の接合手段により固着された切刃部材20と、から構成されている。本実施形態では、超硬合金、サーメット等の硬質材料からなるチップ本体10に、ダイヤモンドを含有する超高圧焼結体からなる切刃部材20が固着され、該切刃部材20の上面にすくい面21が形成されるとともに側面に逃げ面22が形成され、これらすくい面21と逃げ面22とが交差する辺稜部に切刃23が形成されている。
【0015】
各スローアウェイチップは、そのチップ本体の側面を、チップ取付溝5の底面および工具回転方向K前方側の壁面にそれぞれ当接するように挿入される。さらに、各チップ取付溝には、工具本体に螺合し径方向に移動可能な楔部材が該スローアウェイチップ100の工具回転方向K後方側に隣接するように設けられている。この楔部材を前記径方向中心側へ移動することにより該スローアウェイチップは、その下面が上面側に向かって押圧されて固定されている。そして、各スローアウェイチップ100は、その切刃23が工具本体2の外周面2aおよび先端面2bから突出するように配置されている。さらに、各チップ取付溝5の基端部側の壁面側には、工具本体2に螺合し中心軸線CL方向に前後進可能な微調整部材40が該スローアウェイチップの基端部側に隣接するように設けられている。この微調整部材を先端側に前進することにより各スローアウェイチップは、先端側に向かって押出されて、各工具本体2の先端面2aに対する突出量を調整される。
【0016】
切刃23は、工具本体2の中心軸線CLに略直交する方向に延びる副切刃23aと、この副切刃23aの工具外周側に連なる面取りコーナ23bと、この面取りコーナ23bの工具外周側に連なる主切刃23cと、から構成されている。
面取りコーナ23bは、その稜線と工具本体2の中心軸線CLに直交する平面とのなす角度、いわゆる切込み角βが0°を超えかつ45°以下の範囲に設定されている。さらに、面取りコーナ23bに連なるすくい面21のうち該面取りコーナ23bの稜線に連なる領域には、面取部24が設けられている。この面取部24は、刃先に向かうにつれすくい面21よりも工具回転方向K後方側に傾斜し、図2に図示するように面取りコーナの稜線に平行な方向からみたとき、工具回転方向Kの法線Pとのなす角度で定義されるすくい角α1が−20°〜−75°の範囲に設定されている。このすくい角α1は、刃先に向かうにつれ面取部24のすくい面が工具回転方向K後方側に傾斜するものを負と定義する。
副切刃23aは、その稜線が直線状とされ、中心軸線CL方向で面取りコーナの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出するように形成されている。
主切刃23cは、その稜線が直線状とされ、面取りコーナ23bよりも切込み角が大きくなるように形成されている。
副切刃23aおよび主切刃23cの各稜線には、チッピングや欠損を防止すること、および所望の加工面の表面粗さを得ることに配慮して、被加工物の材質や切削条件に適応する形状のホーニングが設けられてもかまわない。
【0017】
以上の構成を有するスローアウェイ式カッタ1は、中心軸線CLまわりに自転させられるとともに前記中心軸線CLに直交する方向へ送りを与えられることによって鋳物からなる被加工物の表面を正面フライス加工する。このとき、面取りコーナ23bにおいては、この面取りコーナ23bに連なる面取部24のすくい角α1を−20°〜−75°の範囲の大きな負としたことから、面取りコーナ23bと被加工物との接触部では、大きい摩擦力を含む切削抵抗の発生にともなって高温、高圧となり被加工物の表面からある程度の深さにわたって塑性流動層が形成されるため、該塑性流動層が被加工物の表面に開口した鋳巣の開口部を塞ぎ補修する。面取部24は面取りコーナ23bの稜線の一部に設けられてもよいが、該稜線全体にわたって形成されるのが望ましい。
面取りコーナ23bと被加工物との接触部では、上述のように大きい摩擦力を含む切削抵抗、および、その切削抵抗にともなう高温、高圧のもとで切屑の凝着が発生するため、塑性流動層の表面にうねりやむしれが発生し表面粗さが悪化するが、面取りコーナ23bの内周側に連なる副切刃23aの稜線を、中心軸線CL方向で面取りコーナ23bの最先端と等しいか又は先端側にわずかに突出させたことから、該副切刃23aが面取りコーナ23bに続いて塑性流動層と接触することにより前記のうねりやむしれを除去するため、被加工物の表面を平滑化し表面粗さの悪化を防止する。したがって、被加工物の表面に開口した鋳巣を補修するとともに、被加工物の表面のうねりやむしれを防止しかつ表面粗さが悪化することを防止することができる。
【0018】
本スローアウェイ式カッタ1を用いて鋳造アルミニウム合金AC2C−T6(JIS H5202)を加工したときの試験結果について以下に説明する。切削条件は、切削速度Vc=1500m/min、切込みap=0.4mm、送り0.2mm/t、乾式切削とした。該スローアウェイ式カッタ1に装着したスローアウェイチップ100の面取りコーナ23bにおける面取部のすくい角α1および切込み角βを多種変化させたときの鋳巣の補修状況を表1に示す。図5は、表1中※1、※2で示した試験結果における実際の被加工物の表面状態および断面曲線を示す。
表1および図5からわかるように前記すくい角α1を−20°〜−75°の範囲に設定しかつ前記切込み角βを1°〜45°の範囲に設定した場合、被加工物の表面に鋳巣が開口することなく表面粗さも非常に良好であった。一方、面取部のない比較工具ならびに面取部のすくい角および切込み角が本発明外の工具では、鋳巣が開口する結果となった。これは本実施形態に係るスローアウェイ式カッタによれば、副切刃23aによって塑性流動層の表面が切削除去されても鋳巣が表面に開口しない程度に塑性流動層が充分な深さにわたって形成されるためである。
面取部のすくい角α1を−20°よりも正側に設定した場合、充分に大きい摩擦力を含む切削抵抗が発生しないため塑性流動層が形成されずに鋳巣を補修できないか、あるいは、塑性流動層が充分な深さにわたって形成されずに副切刃23aによって塑性流動層の表面が切削除去された後、鋳巣が表面に開口してしまうため、被加工物の表面に鋳巣が開口し補修することができなかった。また、面取部のすくい角α1を−75°よりも負側に設定した場合、過大な切削抵抗が作用するとともに面取りコーナ23bと被加工物との接触部が過度の高温、高圧となるため面取りコーナ23bの切刃摩耗を早め工具寿命が短くなる問題があった。
面取りコーナの切込み角βを45°よりも大きくした場合、塑性流動層が形成されずに鋳巣を補修できないか、あるいは、塑性流動層が充分な深さにわたって形成されないため、副切刃23aによって塑性流動層の表面が切削除去された後に鋳巣が表面に開口してしまった。また、面取りコーナの切込み角βを0°よりも大きくしなければ、該面取りコーナ23bにおける切込みが0になるため、塑性流動層が形成されず鋳巣を補修することができなかった。
図2の(b)に図示するように面取りコーナ23bにおける面取部24は、該面取部24に直交する方向からみて、面取りコーナ23bの稜線に対して直角方向の幅Wを0.03mm以上とすれば、該面取部24と被加工物との接触部の面積が充分確保され、鋳巣の補修が確実なものとなる。しかし、前記幅Wが大きくなると切削抵抗の増大や切屑排出性能の悪化を招くおそれがあるので、該スローアウェイチップ100の厚さ寸法の30%以下、特に20%以下とするのが望ましい。
【0019】
【表1】


【0020】
被加工物が鋳鉄又は鋳鋼等の鋳物からなる場合には、切刃寿命の点から切刃部材20の材質を超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素を含有した超高圧焼結体のいずれかとするのが望ましい。なお、切刃部材20を超硬合金、サーメット、セラミックスのいずれかとする場合には、チップ本体10と切刃部材20とを一体形成するのが製作容易性および経済性の点で好ましい。
【0021】
さらに、面取部24から続くすくい面21が前記面取部24に対して工具回転方向K後方側に傾けられていることから、すくい面21の工具回転方向K前方側には大きな空間が確保されることから、前記面取部24と接触する切屑は、前記面取部24から続くすくい面21側へ流れた後、前記空間へ排出されるため、切屑詰まりのない優れた切屑処理性能を実現する。前記すくい面21と工具本体の中心軸線CLに平行な平面とのなす角度、いわゆるすくい角α2を−15°より小さくするとすくい面21の工具回転方向K前方側に切屑を排出する空間を充分確保できないため切屑詰まりが生じやすく、前記すくい角α2を45°より大きくするとすくい面と逃げ面とのなす角度が小さくなるため、面取りコーナ23bの刃先強度が低下しチッピングや欠損を生じるおそれがある。したがって、すくい面のすくい角α2は−15°〜+45°の範囲に設定されるのが望ましい。
【0022】
各微調整部材40を操作することによって各スローアウェイチップ100における副切刃23aの工具本体の先端面2aからの突出量がほぼ一定に揃うため、加工面がいっそう平滑化され表面粗さがきわめて良好になるとともに、加工時の各スローアウェイチップ100の切刃にかかる負荷が均一化するため、切刃寿命が長くなるとともに安定する。
【0023】
本スローアウェイ式カッタ1において、副切刃23bの稜線を該稜線に沿って工具本体の中心軸線CLに略直交する直線状又は先端側に凸の円弧状とし、かつ、該稜線に沿う方向の長さを該スローアウェイ式カッタ1の1刃当たり送りよりも大きく設定することが望ましい。その場合には、前記副切刃23aが面取りコーナ23bによって形成された塑性流動層の表面を切削し平滑化するため、被加工物の表面粗さが良好となる。複数のスローアウェイチップが装着されるスローアウェイ式カッタにおいては、最も最先端に位置するスローアウェイチップ100の副切刃23aに沿う方向長さを該スローアウェイ式カッタの1回転当たり送りよりも大きく設定すれば、前記副切刃23aが最終的な加工面を形成することになり、きわめて優れた表面粗さが得られる。
1つのスローアウェイチップ100に面取りコーナ23bと、副切刃23aとを備えたことから、1つのスローアウェイチップ100によって鋳巣を補修することができるとともに、加工面のうねりやむしれの防止しかつ表面粗さが悪化することを防止することができるので、非常に経済的であり、本実施形態のようにスローアウェイ式カッタ1に複数のスローアウェイチップ100を設けた場合、送りを高めることができるためきわめて効率的な加工が可能となる。
【0024】
面取部24の他の実施形態について図4を参照しながら以下に説明する。図3において先の実施形態と同一の構成は、同一符号を付し説明を省略する。
図4の(a)〜(c)は、図2に対応する図であり、本発明の他の実施形態における面取部を示す図である。これらの図に図示するように本実施形態では、面取部24が先端側かつ工具回転方向K前方側に向かって凸の曲面で形成されている。図4の(a)に図示した面取部24は、すくい面21および逃げ面22の双方に接線状になめらかにつながる断面円弧状をなすものである。図4の(b)に図示した面取部24は、すくい角α1が−20°〜−75°の範囲に設定された弦をもち、すくい面21および逃げ面22に切り取られた断面円弧状をなすものである。図4の(c)に図示した面取部24は、逃げ面22に接線状に滑らかにつながる断面円弧と、この円弧よりも曲率半径が大きくかつすくい面21に切り取られた断面円弧とを連続的に組み合わせた断面曲線状をなすものである。該曲線において、すくい面21と逃げ面22との各接続端部を結んだ直線と、工具回転方向Kの法線Pとのなす角度は−20°〜−75°の範囲に設定されている。このように面取部24は、その断面形状が単一の円弧、複数の円弧、または、1以上の円弧と1以上の直線とからなる曲面状であってもかまわない。さらに、図4の(a)〜(c)において、面取部を構成する断面円弧の曲率半径を0.05mm以上に設定し、前記円弧の弦に直交する方向からみて、面取部24のすくい面21側端部から逃げ面22側端部までの幅Wを0.03mm以上とすれば、該面取部24と被加工物との接触部の面積が充分確保され、鋳巣の補修が確実なものとなる。しかし、前記幅Wが大きくなると切削抵抗の増大や切屑排出性能の悪化を招くおそれがあるので、該スローアウェイチップ100の厚さ寸法の30%以下、特に20%以下とするのが望ましい。
【0025】
以上に説明したスローアウェイ式カッタにおいて、スローアウェイチップの主切刃を省略した仕上げ加工用スローアウェイチップとしてもよい。その場合、加工時に主切刃にかかる負荷が軽減することにより前記仕上げ加工用スローアウェイチップの振動が抑えられるため、加工面の加工精度および表面粗さが良好となる。
スローアウェイ式カッタに前記仕上げ加工用スローアウェイチップのみを装着した場合には、主切刃が分担する切込みを確保できないため加工用途が仕上げ加工に限定されるが、少なくとも主切刃を備えた粗加工用スローアウェイチップとともに装着した場合には、粗および仕上げ加工を同時に行うことが可能となる。ここで、仕上げ加工用スローアウェイチップが最終的な加工面を形成することにより鋳巣を補修することに配慮して、仕上げ加工用スローアウェイチップが粗加工用スローアウェイチップより先端側に若干突出するように配設されているのが望ましい。このとき、仕上げ加工用スローアウェイチップを先端側に突出させるのに、微調整部材40がきわめて有効となる。
【0026】
本発明のスローアウェイ式回転工具は、以上に説明したスローアウェイ式カッタに限定されるものではなく、例えば、穴のくり広げ加工に用いられるスローアウェイ式ボーリングカッタ、穴の仕上げ加工に用いられるスローアウェイ式リーマ等にも適用可能である。
また、本発明のスローアウェイ式回転工具は、前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、開示した複数の構成要素を適宜削除、変更することが可能である。また、各実施形態に開示した構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るスローアウェイ式カッタを示す図であり、図1の(a)は上面図であり、図1の(b)は正面図である。
【図2】図1の(a)における面取部のA矢視拡大図である。
【図3】図1に示すスローアウェイ式カッタに装着されるスローアウェイチップを示す図であり、図3の(a)は上面図であり、図3の(b)は図3の(a)におけるS1−S1線断面図である
【図4】図2に対応する図であり、本発明の他の実施形態における面取部を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスローアウェイ式カッタおよび比較カッタを用いて加工した被加工物の加工表面における鋳巣の補修状況および断面曲線を示す。
【符号の説明】
【0028】
1 スローアウェイ式カッタ(スローアウェイ式回転工具)
2 工具本体
100 スローアウェイチップ
10 チップ本体
20 切刃部材
21 すくい面
22 逃げ面
23a 副切刃
23b 面取りコーナ
23c 主切刃
24 面取部
30 楔部材
40 微調整部材
α1 面取部のすくい角
α2 面取りコーナにおけるすくい角
β 面取りコーナの切込み角
K 工具回転方向
【出願人】 【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
【出願日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−23656(P2008−23656A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−199001(P2006−199001)