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【発明の名称】 クランプ補助部材およびそのクランプ補助部材を備えたスローアウェイ式切削工具
【発明者】 【氏名】吉岡 史郎

【要約】 【課題】スクリューオン方式のスローアウェイ式切削工具において、スローアウェイチップの切れ刃の交換およびチップの取替えに際しての操作性および作業効率の向上を図ることを目的とする。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の本体と、
この本体の内周面に形成される、締付ねじに螺合する内径ねじ部と、
この内径ねじ部と前記締付ねじが螺合することによりスローアウェイチップに貫通形成された取付穴に当接される、前記本体の一端に形成される切欠部を有する頭部と、
この頭部と反対側における前記本体の外周面に形成され、スローアウェイ式切削工具のチップ取付座に穿設されたねじ穴に螺合する外径ねじ部と
を有するクランプ補助部材。
【請求項2】
前記クランプ補助部材の頭部の内周面における最小内径が、前記締付ねじの頭部の外径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のクランプ補助部材。
【請求項3】
前記クランプ補助部材の頭部の外径が、前記取付穴の少なくとも一部分における内径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクランプ補助部材。
【請求項4】
前記クランプ補助部材の頭部が、フランジ付き頭部である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のクランプ補助部材。
【請求項5】
底面にねじ穴が穿設されたチップ取付座を備える工具本体と、
この工具本体のねじ穴に螺合する外径ねじ部が外周面に形成されるとともに、この外径ねじ部と反対側の一端には切欠部を有する頭部が形成され、内周面には内径ねじ部が形成された略円筒状のクランプ補助部材と、
この内径ねじ部に螺合する締付ねじと、
この締付ねじを内径ねじ部に螺入することにより前記クランプ補助部材の頭部を介して前記チップ取付座に着脱可能に装着される、取付穴が貫通形成されたスローアウェイチップと
を有するスローアウェイ式切削工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイチップが工具本体に着脱可能に装着されてなるスローアウェイ式切削工具に用いるクランプ補助部材、およびそのクランプ補助部材を備えたスローアウェイ式切削工具に関し、特に、工具本体にスローアウェイチップがねじで固着されてなるスクリューオン方式のスローアウェイ式切削工具において、チップの取り付けに用いるクランプ補助部材、およびそのクランプ補助部材を介してスローアウェイチップが装着されてなるスローアウェイ式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
スローアウェイ式切削工具に用いられるスローアウェイチップのクランプ方式として、締付ねじをスローアウェイチップに設けられた取付穴を介して、工具本体のチップ取付座の底面に穿設されたねじ穴に螺入することにより、スローアウェイチップを工具本体に固定するスクリューオン方式がある。
このスクリューオン方式によれば、ねじ1個でスローアウェイチップを工具本体に取り付けるため構造が簡単で、安価に製造することができるとともに工具管理も容易であり、特に、設計的にもコンパクトであることから、スローアウェイチップチップを取り付けるためのスペースが限定されるスローアウェイ式切削工具において多く採用されている。
その反面、このようなスクリューオン方式を採用するスローアウェイ式切削工具は、切れ刃の交換やチップの取替えに際し、締付ねじを完全にチップ取付座のねじ穴から外さなければならず、操作が煩雑で不便であった。そのため、刃数が多いフライス等にあっては、切れ刃の交換やチップの取替えに長時間を要することになり作業効率が悪かった。また、小径の工具の場合には小さな締付ねじを用いるため、締付ねじを工具本体から取り外した際に作業者がねじを落とし紛失することも多々あった。このようなスローアウェイ式切削工具においては、切れ刃の交換やチップの取替えのため締付ねじの着脱が頻繁に行われることから、操作性および作業効率の改善が強く望まれていた。
この問題を解決するために、締付ねじを完全に工具本体から取り外すことなくスローアウェイチップの切れ刃の交換を行うことができるスローアウェイ式切削工具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−246516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の発明では、締結ねじがチップ取付座に螺合されている状態でこの締結ねじを挿通したスローアウェイチップをチップ取付座から外れた位置で回転させることにより切刃の交換を行うことができるが、チップの取替えを行うに際しては、依然として締結ねじを完全に工具本体から取り外さなければならなかった。
また、締結ねじの螺合を緩めた状態でチップ取付座から外したチップをチップポケットに干渉しないで回転可能にするため、固着状態のチップの上方のポケット側壁に盗み部を設けているので、工具剛性に劣り、製造工程が増えてしまう等の問題があった。
さらに、その盗み部に切屑等が付着した状態のままチップを回転させると未使用切刃を損傷する恐れがある。また、スローアウェイチップを締結ねじの頭部に当接する程度まで引き上げた状態で切刃の交換を行うため、その際にスローアウェイチップとチップ取付座の間に切屑等が入り込んで挟まれる恐れがある。そのため、切刃の交換に際してはあらかじめ盗み部およびチップ取付座周辺をエアー等でクリーニングする必要が生じ、作業が煩雑になるという問題もあった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、締付ねじを完全にスローアウェイ式切削工具本体から取り外すことなく、簡単かつ容易にスローアウェイチップの切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことを可能とするクランプ補助部材、およびチップ着脱時等の操作性および作業効率の優れたスローアウェイ式切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のクランプ補助部材およびそのクランプ補助部材を備えたスローアウェイ式切削工具は以下の手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、スローアウェイ式切削工具へのスローアウェイチップの取り付けに用いるクランプ補助部材であって、略円筒状の本体と、この本体の内周面に形成される締付ねじに螺合する内径ねじ部と、この内径ねじ部と締付ねじが螺合することによりスローアウェイチップに貫通形成された取付穴に当接される本体の一端に形成される切欠部を有する頭部と、この頭部と反対側における本体の外周面に形成されスローアウェイ式切削工具のチップ取付座に穿設されたねじ穴に螺合する外径ねじ部とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るクランプ補助部材をスローアウェイ式切削工具へのスローアウェイチップの取り付けに用いれば、クランプ補助部材を介してスローアウェイチップの取付穴に挿通された締付ねじを、チップ取付座のねじ穴に螺合されたクランプ補助部材の内径ねじ部に螺入することにより、締付ねじの頭部がクランプ補助部材の頭部の内周面に押し当てられ、切欠部を有するクランプ補助部材の頭部がスローアウェイチップの取付穴に弾性的に当接されて、スローアウェイチップが工具本体に固定されることになる。
一方、スローアウェイチップを工具本体から取り外す場合においては、締付ねじと内径ねじ部との螺合を緩めて、締付ねじの頭部をクランプ補助部材の頭部の内周面から離隔し、クランプ補助部材の頭部をスローアウェイチップの取付穴への拘束から解放した後、チップ取付座への拘束から解放されたスローアウェイチップをチップ取付座から引き抜くことにより、工具本体からスローアウェイチップを取り外すことになる。
したがって、締付ねじを完全に工具本体から取り外すことなく、締付ねじとクランプ補助部材の内径ねじ部との螺合を緩めた状態で、簡単かつ容易に切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことができる。そのため、刃数が多いフライス等であっても短時間で切れ刃の交換およびチップの取替え作業を行うことができ、また、ある程度螺合状態が確保されていることから、作業者がねじを落とし紛失することもなく、チップ着脱時の操作性および作業効率が向上する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1のクランプ補助部材において、その頭部の内周面における最小内径が、締付ねじを内径ねじ部に螺入しない状態で、前記締付ねじの頭部の外径よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、締付ねじの頭部の外径がクランプ補助部材の頭部の内周面における最小内径よりも大きいことから、締付ねじをクランプ補助部材の内径ねじ部に螺入することにより、切欠部を有するクランプ補助部材の頭部が締付ねじの頭部によってその内周面側から外周面側に向かって押圧されて半径拡大方向に弾性変形する。
したがって、本発明に係るクランプ補助部材をスローアウェイ式切削工具のチップ取付座に固着した後に、このクランプ補助部材の頭部をスローアウェイチップの取付穴に嵌挿させるとともに、その内径ねじ部に締付ねじを螺入することにより、切欠部を有するクランプ補助部材の頭部が半径拡大方向に弾性変形することでスローアウェイチップの取付穴に当接されて、スローアウェイチップをチップ取付座に取り付けることができる。
また、この締付ねじと内径ねじ部との螺合を緩めることにより、締付ねじの頭部がクランプ補助部材の頭部の内周面から離隔され、半径拡大方向に弾性変形していたクランプ補助部材の頭部の形状が元の状態に戻って取付穴への拘束から解放されるため、スローアウェイチップはチップ取付座への拘束から解放されることから、このスローアウェイチップを引き抜くことで、チップ取付座から取り外すことができる。
そのため、締付ねじを完全に工具本体から取り外すことなく、締付ねじとクランプ補助部材の内径ねじ部との螺合状態をある程度確保したままで、チップの着脱を行うことができるので、簡単かつ容易に切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことができ、刃数が多いフライス等であっても短時間で切れ刃の交換およびチップの取替え作業を行うことが可能である。また、チップ着脱時であっても締付ねじは工具本体にある程度螺合されていることから、作業者がねじを落とし紛失することもない。よって、チップ着脱時の操作性および作業効率の向上を図ることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のクランプ補助部材において、その頭部の外径が、取付穴の少なくとも一部分における内径よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、クランプ補助部材の頭部の外径がスローアウェイチップの取付穴の内径よりも大きい部分があることから、あらかじめチップ取付座のねじ穴に螺合されたクランプ補助部材の頭部に、スローアウェイチップの取付穴を押し込んで嵌入することにより、スローアウェイチップがチップ取付座に仮止めされることになる。
したがって、締付ねじをクランプ補助部材の内径ねじ部に螺入する際にスローアウェイチップを手で押さえる必要がないことから、締付ねじを締め込み易く、締付ねじ着脱時の操作性に優れる。
また、スローアウェイチップがチップ取付座に仮止めされず移動可能な状態にあっても、スローアウェイチップの取付穴からクランプ補助部材の頭部が嵌脱しない程度に係止されることになるから、スローアウェイチップの落下および紛失を防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかのクランプ補助部材において、頭部がフランジ付き頭部であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、クランプ補助部材の頭部がフランジ付きであることから、このフランジによりクランプ補助部材の頭部におけるスローアウェイチップの取付穴と係合する座面の高さ位置を定めることができる。
したがって、クランプ補助部材の頭部を介して工具本体に固着されるスローアウェイチップが、所望の取付位置からずれることなくチップ取付座に着座されることになるので、チップ取付精度が良く取付作業性に優れる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、スローアウェイチップが工具本体に着脱可能に装着されてなるスローアウェイ式切削工具であって、底面にねじ穴が穿設されたチップ取付座を備える工具本体と、この工具本体のねじ穴に螺合する外径ねじ部が外周面に形成されるとともにこの外径ねじ部と反対側の一端には切欠部を有する頭部が形成され内周面には内径ねじ部が形成された略円筒状のクランプ補助部材と、この内径ねじ部に螺合する締付ねじと、この締付ねじを内径ねじ部に螺入することにより前記クランプ補助部材の頭部を介して前記チップ取付座に着脱可能に装着される取付穴が貫通形成されたスローアウェイチップとを有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、クランプ補助部材を介してスローアウェイチップの取付穴に挿通された締付ねじを、チップ取付座のねじ穴に螺合されたクランプ補助部材の内径ねじ部に螺入することにより、クランプ補助部材の頭部が切欠部を有することから、その頭部がスローアウェイチップの取付穴に弾性的に当接されて、スローアウェイチップがチップ取付座に固定されることになる。
したがって、締付ねじを完全に工具本体から取り外すことなく、締付ねじとクランプ補助部材の内径ねじ部との螺合を緩めた状態で、スローアウェイチップの着脱を行うことができる。そのため、スローアウェイチップの切れ刃の交換およびチップの取替えが簡単かつ容易であり、刃数が多いフライス等であっても短時間でチップの取替え等の作業を行うことができ、チップ着脱時の操作性および作業効率に優れたスローアウェイ式切削工具を提供することができる。また、ある程度螺合状態が確保されていることから、作業者がねじを落とし紛失することもなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクランプ補助部材によれば、締付ねじを完全にスローアウェイ式切削工具本体から取り外すことなく、簡単かつ容易にスローアウェイチップの切れ刃の交換やチップの取替えを行うことが可能となり、スローアウェイ式切削工具におけるスローアウェイチップ着脱時の操作性および作業効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明のスローアウェイ式切削工具によれば、クランプ補助部材を介してスローアウェイチップが工具本体に装着されるので、締付ねじを完全にスローアウェイ式切削工具本体から取り外すことなく、簡単かつ容易にスローアウェイチップの切れ刃の交換やチップの取替えを行うことができる、チップ着脱時の操作性および作業効率に優れたスローアウェイ式切削工具を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係るクランプ補助部材の一実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るクランプ補助部材を示す斜視図であり、図2は、図1に示すクランプ補助部材の正面図、図3は、図1に示すクランプ補助部材の上面図である。
また、図4は、図1のクランプ補助部材を用いたスローアウェイ式切削工具のチップ取付状態を説明する断面図であり、図5はその上面図、図6は、図1のクランプ補助部材を用いたスローアウェイ式切削工具のチップ脱着機構を説明する断面図である。
【0018】
本実施形態に係るクランプ補助部材100は、図1乃至図3に示されるように、略円筒状の本体10と、この本体10の内周面に形成される締付ねじに螺合する内径ねじ部11と、この内径ねじ部11と締付ねじが螺合することによりスローアウェイチップに貫通形成された取付穴に当接される、本体10の一端に形成される切欠部14を有する頭部13と、この頭部13と反対側における本体10の外周面に形成され、スローアウェイ式切削工具のチップ取付座に穿設されたねじ穴に螺合する外径ねじ部12と、から構成されている。
そして、このクランプ補助部材100は、切れ刃の交換やチップの取替えの度にスローアウェイチップ300の取付穴30に擦られることによるその頭部13の摩滅防止の観点から、40HRC以上の熱処理硬度が得られる鋼種材料から形成され、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ダイス鋼、チタン合金等から形成される。
【0019】
このクランプ補助部材100は、スローアウェイ式切削工具にスローアウェイチップを装着させる際に用いられるものであって、図4および図5に示されるように、その外径ねじ部12がスローアウェイ式切削工具のチップ取付座に穿設されたねじ穴に螺合され、その頭部13がスローアウェイチップ300の取付穴30に嵌挿されるとともに、その内径ねじ部11に締付ねじ200が螺入されて使用される。
【0020】
つまり、このクランプ補助部材100を用いたスローアウェイ式切削工具においては、このクランプ補助部材100を介してスローアウェイチップ300の取付穴30に挿通された締付ねじ200を、チップ取付座のねじ穴に螺合されたクランプ補助部材100の内径ねじ部11に螺入することにより、締付ねじ200の頭部がクランプ補助部材100の頭部13の内周面に押し当てられ、その頭部13が切欠部14を有することからスローアウェイチップ300の取付穴30に弾性的に当接される結果、スローアウェイチップ300がスローアウェイ式切削工具のチップ取付座に固定されることになる。
【0021】
一方、この締付ねじ200と内径ねじ部11との螺合を緩めることにより、締付ねじ200の頭部がクランプ補助部材100の頭部13の内周面から離隔され、クランプ補助部材100の頭部13が取付穴30への拘束から放れることに伴い、チップ取付座へ拘束されていたスローアウェイチップ300が解放される。そして、このスローアウェイチップ300をチップ取付座から図6に図示される矢印方向に引き抜くことにより、締付ねじ200がクランプ補助部材100を介してねじ穴にある程度螺合された状態で、切れ刃の交換およびチップの取替えが行われることになる。
【0022】
したがって、本発明に係るクランプ補助部材を用いれば、締付ねじ100を完全に工具本体のねじ穴から取り外すことなく、簡単かつ容易にスローアウェイチップの切れ刃の交換やチップの取替えを行うことが可能であり、刃数が多いフライス等であっても短時間でチップ取替等をすることができ、チップ着脱時の操作性および作業効率が大幅に改善される。また、チップ取替時等においても締付ねじの螺合状態がある程度確保されていることから、作業者が締付ねじを落として紛失することもない。
【0023】
このクランプ補助部材100の頭部13の内周面における最小内径は、締付ねじを内径ねじ部に挿入しない状態で、締付ねじ200の頭部の外径よりも小さいことが好ましい。
このような構成によれば、締付ねじ200をクランプ補助部材100の内径ねじ部11に螺入すると、締付ねじ200の頭部の外径がクランプ補助部材100の頭部13内周面における最小内径よりも大きいので、クランプ補助部材100の頭部13が締付ねじ200の頭部によって内周面側から外周面側へ押圧されることから、切欠部14を有するクランプ補助部材100の頭部13が半径拡大方向に弾性変形する。
したがって、本発明に係るクランプ補助部材100をスローアウェイ式切削工具のチップ取付座に固着した後に、このクランプ補助部材100の頭部13をスローアウェイチップ300の取付穴30に嵌挿させるとともに、その内径ねじ部11に締付ねじ200を螺入して、切欠部14を有するクランプ補助部材100の頭部13が締付ねじ200の頭部によって押圧されて半径拡大方向に弾性変形してスローアウェイチップ300の取付穴30に当接されることにより、工具本体へのスローアウェイチップ300の装着が可能となる。
【0024】
これに対し、この締付ねじ200と内径ねじ部11との螺合を緩めると、締付ねじ200の頭部がクランプ補助部材100の頭部13の内周面から離隔され、半径拡大方向に弾性変形していたクランプ補助部材100の頭部13の形状が元の状態に戻って取付穴30への拘束から解放されるため、このチップ取付座への拘束から解放されたスローアウェイチップ300を引き抜くことにより、工具本体からスローアウェイチップを取り外すことができる。つまり、締付ねじ200を完全に工具本体から取り外すことなく、締付ねじ200とクランプ補助部材100の内径ねじ部11との螺合状態をある程度確保したままで、チップの着脱を行うことができる。
【0025】
よって、スローアウェイ式切削工具へのスローアウェイチップの装着に際し、このクランプ補助部材100を用いた場合には、簡単かつ容易に切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことができ、刃数が多いフライス等であっても短時間で切れ刃の交換およびチップの取替え作業を行うことが可能であることから、チップ着脱時の操作性および作業効率が向上する。また、チップ着脱時であっても締付ねじ200は工具本体にある程度螺合されていることから、作業者がねじを落とし紛失することもない。
【0026】
また、このクランプ補助部材100の頭部13の外径は、スローアウェイチップ300の取付穴30の少なくとも一部分における内径よりも大きいことが好ましい。
このような構成をとると、あらかじめチップ取付座のねじ穴に螺合されたクランプ補助部材100の頭部13にスローアウェイチップ300の取付穴30を押し込んで嵌入することにより、切欠部14を有する頭部13が半径縮小方向に弾性変形してスローアウェイチップ300の取付穴30に係止されるので、スローアウェイチップ300を工具本体に仮止めすることが可能となる。そのため、締付ねじ200をクランプ補助部材100の内径ねじ部11に螺入する際に、スローアウェイチップ300を手で押さえながらねじ締めを行う必要がないので、締付ねじ200を締め込み易く、手をすべらせスローアウェイチップや締付ねじを落とすこともない。
また、スローアウェイチップ300が仮止めされず移動可能な状態にあっても、頭部13が取付穴30から嵌脱しない程度に係止されることになるから、スローアウェイチップの落下および紛失を防止することができる。
【0027】
この場合において、頭部13の外径と取付穴30の内径との差が小さすぎると半径縮小方向への弾性変形が小さすぎて頭部13が取付穴30に係止されず嵌脱してしまう。逆に、頭部13の外径が取付穴30の内径よりも大きすぎると取付穴30に頭部13を簡単に手で押し込むことができなくなる。そこで、頭部13の外径は、手で簡単に取付穴30に押し込むことができ、かつ、手を離しても取付穴30から嵌脱しない範囲内において適宜設計すべきである。
【0028】
さらに、このクランプ補助部材100の頭部13には、フランジ17が形成されていることが好ましい(図1および図2参照)。
このフランジ17により、スローアウェイチップ300の取付穴30と係合するクランプ補助部材100の頭部13の座面の高さを位置決めすることができるので、この頭部13を介して工具本体に固着されるスローアウェイチップ300を所望の取付位置からずれることなくチップ取付座に着座させることが可能であり、チップ取付精度が良く取付作業性に優れる。また、スローアウェイチップ300がシート400を介して工具本体のチップ取付座に固着される場合においては、そのシート400がこのフランジ17によって上から押さえ込まれてチップ取付座に固着されることになるので、締付ねじ200を緩めてチップの取替等を行うときであっても、シート400が位置ずれをおこすことがない(図4および図6参照)。
【0029】
また、クランプ補助部材100の頭部13の最上部における外周側16は、面取りが施されていることが好ましい(図1および図2参照)。併せて、これに嵌合されるスローアウェイチップ300の取付穴30の底面側31も面取りが施されているのが好ましい(図6参照)。
このように頭部13と取付穴30の嵌入部分16,31に面取りが施されていると、頭部13の外径が取付穴30の少なくとも一部分おける内径よりも大きい構成となっている場合であっても、スムーズに頭部13を取付穴30に押し込むことができる。
【0030】
また、クランプ補助部材100の頭部13の上部における内周側15は、締付ねじ200の頭部座面20の形状にあわせた面取りが施されていることが好ましい。例えば、頭部の形状がテーパ形状(逆円錐状)20に形成されている締付ねじ200が使用される場合には、このクランプ補助部材100の頭部13の上部における内周側15は、その締付ねじ200の頭部座面20のテーパ角度とほぼ同じ角度のテーパ形状(逆円錐状)の面取りが施されていることが好ましい(図1、図4および図6参照)。
このように頭部13の締付ねじ嵌入部分15に、締付ねじ200の頭部座面20の形状にあわせた面取りが施されていると、締付ねじ200をクランプ補助部材100の内径ねじ部11に螺入した場合に、クランプ補助部材100の頭部と締付ねじ200の頭部との係合面が全面当たり状態となって密着性に優れる。また、これによりクランプ補助部材100の頭部13と締付ねじ200の頭部の係合面における摩滅を抑制することもできる。そして、その係合面に溝が生じて締付ねじの頭部が破断することもない。
【0031】
なお、本実施形態に係るクランプ補助部材として、頭部13にフランジ17が形成されたクランプ補助部材100を図示したが、これに限定されるものではなく、頭部13にフランジ17が形成されていないクランプ補助部材100としてもよい。また、本実施形態に係るクランプ補助部材を用いたスローアウェイ式切削工具のチップ取付機構として、スローアウェイチップ300をシート400の上に載置してチップ取付座に固着する場合を図示したが、このような構成に限定されるものではなく、シート400を介さず、直接スローアウェイチップ300をチップ取付座に載置して固着するようにしてもよい。
【0032】
以下、本発明のスローアウェイ式切削工具の一実施形態について、スクリューオン方式を採用するスローアウェイ式正面フライスを実施例として挙げ、図7乃至図9を参照して説明する。
図7は、本発明に係るスローアウェイ式切削工具の一実施例を示すスローアウェイ式正面フライスのチップ取付前における正面図である。また、図8は、図7に示すスローアウェイ式正面フライスのチップ取付状態を説明する断面図である。そして、図9は、図7に示すスローアウェイ式正面フライスのチップ取付後におけるチップ取付部分の拡大図である。
【0033】
本発明のスローアウェイ式切削工具の一実施例に係るスローアウェイ式正面フライス500は、図7に示されるように、円盤状をなしており、この工具本体の先端側の外周部には複数のチップポケットが形成されており、これらのチップポケットの工具回転方向の後方側にはチップ取付座50が形成されている。これらチップ取付座50は、工具回転方向を向く底面51と、この底面51と交差する壁面52とからなり、この底面51にはねじ穴53が穿設されている。
【0034】
このスローアウェイ式正面フライスに装着されるスローアウェイチップ300は、超硬合金、サーメット、セラミックス等から形成される略四角形の平板状をなし、その辺稜部に切れ刃が形成されるとともに、取付穴30が貫通形成されている。
【0035】
これらスローアウェイチップ300をスローアウェイ式正面フライス500に取り付ける際に用いられるクランプ補助部材100は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ダイス鋼、チタン合金等から形成される略円筒状をなし、その外周面にはスローアウェイ式正面フライス500のチップ取付座50の底面51に穿設されたねじ穴53に螺合する外径ねじ部12が形成され、この外径ねじ部12と反対側の一端には切欠部14を有する頭部13が形成されるとともに、その内周面にはその締付ねじ200と螺合する内径ねじ部11が形成されている(図1および図2参照)。
このクランプ補助部材100は、図7に示されるように、スローアウェイ式正面フライス500のチップ取付座50にシート400を着座させた後、シートに貫通形成された貫通穴を介して、その外径ねじ部12をねじ穴53に螺入することによりチップ取付座に固着されて使用される。
【0036】
そして、このクランプ補助部材100の頭部13をスローアウェイチップ300の取付穴30に嵌挿させるとともに、その内径ねじ部11に締付ねじ200を螺入することにより、締付ねじ200の頭部がクランプ補助部材100の頭部13の内周面に押し当てられ、その切欠部14を有する頭部13が半径拡大方向に弾性変形してスローアウェイチップ300の取付穴30の内周面に弾性的に当接されて、スローアウェイ式正面フライス500にスローアウェイチップ300が装着されるように構成されている(図8参照)。
【0037】
このようにして複数のスローアウェイチップ300が装着されたスローアウェイ式正面フライス500は、工具本体500をその軸線回りに回転させつつ送りを与えることにより、被加工物に接触させながら移動させて使用され、これらスローアウェイチップ300の工具外周側に向けられた外周切れ刃と工具先端側に向けられた正面切れ刃によって切削が行われることになる。
【0038】
一方、スローアウェイチップ300の切れ刃の交換およびチップの取替えを行う場合においては、締付ねじ200と内径ねじ部11との螺合を緩め、締付ねじ200の頭部20をクランプ補助部材100の頭部13の内周面から離隔し、半径拡大方向に弾性変形していたクランプ補助部材100の頭部13を元の形状に戻してスローアウェイチップ300の取付穴30への拘束から解放した上で、チップ取付座50への拘束から解放されたスローアウェイチップ300をチップ取付座50から引き抜いて、切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことになる(図6および図7参照)。
【0039】
したがって、従来のスクリューオン方式のスローアウェイ式正面フライスとは異なり、締付ねじ200を完全に工具本体から取り外すことなく、締付ねじ200とクランプ補助部材100の内径ねじ部11との螺合を緩めるだけで、簡単かつ容易にスローアウェイチップ300の切れ刃の交換およびチップの取替えを行うことができる。そのため、刃数が多いフライス等であっても短時間でチップ取替等をすることができ、チップ着脱時の操作性および作業効率に優れたスローアウェイ式正面フライス500を提供することができる。また、このスローアウェイ式正面フライス500によれば、チップ取替時等においても締付ねじ200の螺合状態がある程度確保されていることから、チップの取替等を行う際に作業者が締付ねじを落として紛失することもない。さらに、このようなスクリューオン方式のスローアウェイ式正面フライス500によれば、スローアウェイチップを工具本体に取り付けるため構造が簡単で、安価に製造することができるとともに工具管理も容易であり、設計的にもコンパクトであることから、スローアウェイチップを取り付けるためのスペースが限定される場合においても適用できる。
【0040】
また、このスローアウェイ式正面フライス500においては、チップ取付座50の底面51に穿設されたねじ穴53の中心軸線C2が、チップ取付座50に着座させたスローアウェイチップ300の取付穴30の中心軸線C1に対して偏心するように形成されていることが好ましい(図9参照)。
このような構成によれば、ねじ穴53に螺合されたクランプ補助部材100の頭部13をスローアウェイチップ300の取付穴30に嵌挿させるとともに、その内径ねじ部11に締付ねじ200を螺入することで、締付ねじ200の頭部が、C1からC2の方向に向かって弾性変形しながら押し当てられることになり、スローアウェイチップ300が、チップ取付座50の底面側51に押圧されつつ壁面側52に引き込まれるようにして、工具本体500に固定されることになる。そのため、スローアウェイチップ300とチップ取付座50との密着性が向上し、切削加工に伴うびびり振動等の抑制が可能となり、スローアウェイチップ300の刃先の欠損等の防止を図ることができる。
【0041】
本実施例に係るスローアウェイ式正面フライス500は、換言すると、上述した本発明に係るクランプ補助部材100を用いてスローアウェイチップ200を工具本体に着脱可能に装着したものである。つまり、このスローアウェイ式正面フライス500に用いられるクランプ補助部材は、上述した本発明に係るクランプ補助部材100と同一である。したがって、本実施例においては、上述した本発明に係るクランプ補助部材100の説明と共通する事項については、その説明を省略する。
【0042】
なお、前記実施例においては、本発明に係るスローアウェイ式切削工具として、スローアウェイ式正面フライス500を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、スクリューオン方式を採用するスローアウェイバイト、スローアウェイドリル、スローアウェイエンドミル等多種の切削工具に適用することができる。
また、前記実施例においては、スローアウェイチップ300として略四角形の平板状をなすものを採用したが、これに代えて三角形、菱形等の略多角形や円形の平板状のスローアウェイチップを採用してもよく、ネガティブチップでもポジティブチップでもよい。
また、前記実施例におけるチップ取付状態として、スローアウェイチップ300をシート400の上に載置してチップ取付座に固着する場合を図示したが、このような構成に限定されるものではなく、シート400を介さず、直接スローアウェイチップ300をチップ取付座に載置して固着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るクランプ補助部材を示す斜視図である。
【図2】図1に示すクランプ補助部材の正面図である。
【図3】図1に示すクランプ補助部材の上面図である。
【図4】図1のクランプ補助部材を用いたスローアウェイ式切削工具のチップ取付状態を説明する断面図である。
【図5】図4の上面図である。
【図6】図1のクランプ補助部材を用いたスローアウェイ式切削工具のチップ脱着機構を説明する断面図である。
【図7】本発明に係るスローアウェイ式切削工具の一実施例を示すスローアウェイ式正面フライスのチップ取付前における正面図である。
【図8】図7に示すスローアウェイ式正面フライスのチップ取付状態を説明する断面図である。
【図9】図7に示すススローアウェイ式正面フライスのチップ取付後におけるチップ取付部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
10 本体
11 内径ねじ部
12 外径ねじ部
13 頭部
14 切欠部
17 フランジ
30 取付穴
50 チップ取付座
53 ねじ穴
100 クランプ補助部材
200 締付ねじ
300 スローアウェイチップ
500 スローアウェイ式切削工具
C1 取付穴の中心
C2 ねじ穴の中心
【出願人】 【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−23643(P2008−23643A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−198079(P2006−198079)