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【発明の名称】 切削工具及びインサート
【発明者】 【氏名】滝口 正治

【要約】 【課題】インサートをラジアルレーキ角又はアキシャルレーキ角がプラス側となるように配置して切削抵抗を低減するとともに、使用コーナ数を確保してインサートの使用コストを低減することができる切削工具を提供する。

【構成】インサート40は多角形平板状をなし、一の側面42は厚さ方向中央に向かうにしたがい内周側に後退する一対の傾斜面44有し、傾斜面44と多角形面41との交差稜線部に第1切刃が、傾斜面44と他の側面43との交差稜線部に第2切刃が、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられ、工具本体の先端外周部に、多角形面41を工具本体先端側に向けて装着する第1取付座22と、多角形面41を工具本体径方向外側に向けて装着する第2取付座32とが設けられ、これら第1、第2取付座22、32に装着されたインサート41のコーナ刃は、軸線回りの回転軌跡が一致するように配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転される工具本体と、複数の同形同大のインサートとを有し、被切削材に予め設けられた下穴の内壁面を切削加工する切削工具であって、
前記インサートは、外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、該多角形面の周りの側面のうちの一の側面が工具回転方向前方側に向けられ、
前記一の側面は、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向けて後退する一対の傾斜面を有しており、
該傾斜面と前記多角形面との交差稜線部に第1切刃が設けられ、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が設けられるとともに、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられ、
前記工具本体の先端外周部には、前記インサートが、前記多角形面を前記工具本体先端側に向けて装着される第1取付座と、前記多角形面を前記工具本体径方向外側に向けて装着される第2取付座とが設けられ、
これら第1、第2取付座に装着された前記インサートの前記コーナ刃は、前記軸線回りに回転した際の回転軌跡が一致するように配置されていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の切削工具に装着されるインサートであって、
外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、該多角形面の周りの側面のうちの一の側面が工具回転方向前方側に向けられ、
前記一の側面は、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向け後退する一対の傾斜面を有しており、
該傾斜面と前記多角形面との交差稜線部に第1切刃が設けられ、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が設けられるとともに、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられていることを特徴とするインサート。
【請求項3】
外形が長方形平板状をなして、2つの長方形面と4つの側面とを有し、前記側面のうち互いに対向する2つの長側面に、それぞれ前記一対の傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインサート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンのシリンダーボアの加工等のように、被切削材に予め設けられた下穴の内壁面を切削加工する際に使用されるボーリングカッタ等の切削工具及びこの切削工具に装着されるインサートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前述の切削加工に使用される切削工具として、例えば、特許文献1に示されるような、切刃を有するインサートを工具本体の先端外周部に着脱可能に装着したボーリングカッタ等が知られている。
特許文献1に開示された切削工具は、工具本体がアダプタ等を介して工作機械の主軸端に取り付けられ、工具本体の軸線回りに高速回転されるとともに、工具本体の軸線方向に送りを与えられて被切削材に予め設けられた下穴に挿入され、工具本体の先端外周部に装着されたインサートの切刃によって下穴の内壁面を切削加工し、所定の内径の加工穴を形成するものである。
【0003】
このような切削工具では、例えば、外形が四角形平板状をなし、その四角形面が正面逃げ面とされるとともに、この四角形面の周りの4つの側面の一つがすくい面とされ、このすくい面の各コーナ部に、これら正面逃げ面とすくい面とが交差する四角形面の辺稜部に沿って延びる切刃が設けられた、いわゆる縦刃のインサートが使用される場合がある。
このような縦刃のインサートでは、各コーナ部に設けられた切刃をコーナチェンジして順次使用することができ、インサートの使用コストを低減することができるものである。
【特許文献1】登録実用新案第2585714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記下穴の荒加工を行う場合には、切り込み量が多く、切削抵抗が大きくなる傾向にあるので、剛性の高いネガティブタイプのインサートが使用されることがある。このネガティブタイプのインサートを、特許文献1に記載されたように工具本体に装着した場合には、ラジアルレーキ角がプラスになるようにインサートを配置すると外周逃げ面が切刃よりも工具本体径方向外側に位置してしまい、アキシャルレーキ角がプラスになるようにインサートを配置すると正面逃げ面が切刃よりも工具本体先端側に位置してしまうことになる。
【0005】
このため、前述したインサートは、ラジアルレーキ角及びアキシャルレーキ角をともにマイナスとなるように配置する必要があり、インサートに負荷される切削抵抗が大きくなって、インサートの切刃が早期に摩耗したり、インサートや工具本体に振れが生じて加工精度が劣化したりするといった問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1に記載された切削工具のようにインサートを装着して、ラジアルレーキ角をプラスとするためには、インサートの前記四角形面を平行四辺形面として、鋭角コーナ部を工具本体径方向外側に向けて配置すればよい。ところが、この場合には鋭角コーナ部しか使用できず、一の四角形面と他の四角形面とを反転して使用できるネガティブタイプのインサートの4つの側面をそれぞれ工具回転方向前方側に向けて使用しても、4つのコーナ部しか使用できないことになる。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、インサートをラジアルレーキ角又はアキシャルレーキ角がプラスとなるように配置して切削抵抗を低減することができるとともに、使用コーナ数を確保してインサートの使用コストを低減することができる切削工具及びインサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る切削工具は、軸線回りに回転される工具本体と、複数の同形同大のインサートとを有し、被切削材に予め設けられた下穴の内壁面を切削加工する切削工具であって、前記インサートは、外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、該多角形面の周りの側面のうちの一の側面が工具回転方向前方側に向けられ、前記一の側面は、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向けて後退する一対の傾斜面を有しており、該傾斜面と前記多角形面との交差稜線部に第1切刃が設けられ、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が設けられるとともに、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられ、前記工具本体の先端外周部には、前記インサートが、前記多角形面を前記工具本体先端側に向けて装着される第1取付座と、前記多角形面を前記工具本体径方向外側に向けて装着される第2取付座とが設けられ、これら第1、第2取付座に装着された前記インサートの前記コーナ刃は、前記軸線回りに回転した際の回転軌跡が一致するように配置されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るインサートは、前述の切削工具に装着されるインサートであって、 外形が多角形平板状をなして2つの多角形面を有し、該多角形面の周りの側面のうちの一の側面が工具回転方向前方側に向けられ、前記一の側面は、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向け後退する一対の傾斜面を有しており、該傾斜面と前記多角形面との交差稜線部に第1切刃が設けられ、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が設けられるとともに、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられていることを特徴としている。
【0010】
この切削工具及びインサートによれば、一の側面に、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向けて後退する一対の傾斜面が設けられ、該傾斜面と前記多角形面との交差稜線部に第1切刃が設けられ、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が設けられるとともに、これら第1、第2切刃が交差するコーナ部にコーナ刃が設けられているので、一の側面の4つのコーナ部のそれぞれにコーナ刃及び第1、第2切刃が配置されることになる。
【0011】
ここで、工具本体には、インサートが、前記多角形面を前記工具本体先端側に向けて装着される第1取付座と、前記多角形面を前記工具本体径方向外側に向けて装着される第2取付座とが設けられているので、一の側面の4つのコーナ刃のうち対角線上に位置するコーナ部(コーナ刃、第1、第2切刃)が第1取付座に装着した際に切削加工に供され、一の側面の他の2つのコーナ部(コーナ刃、第1、第2切刃)が第2取付座に装着した際に切削加工に供されることになる。したがって、一の側面に形成された4つのコーナ部(コーナ刃、第1、第2切刃)すべてを順次使用することができ、インサートの使用コーナ数を確保することができる。
さらに、第1取付座に装着されたインサートのコーナ刃と第2取付座に装着された前記インサートの前記コーナ刃とが、軸線回りに回転した際の回転軌跡が一致するように配置されているので、インサートをこれら第1、第2取付座のどちらに装着しても、下穴に対して同様の切削加工を施すことができる。
【0012】
また、一の側面に、前記インサートの厚さ方向中央に向かうにしたがい前記多角形面の内周側に向け後退する一対の傾斜面が設けられ、この傾斜面と多角形面との交差稜線部に
第1切刃が、前記傾斜面と前記一の側面に隣接する他の側面との交差稜線部に第2切刃が、これら第1切刃と第2切刃の交差するコーナ部にコーナ刃が設けられているので、このインサートを第1取付座に装着した際には、アキシャルレーキ角をプラス側に向かうように設定することができ、第2取付座に装着した際には、ラジアルレーキ角をプラス側に向かうように設定することができる。したがって、切削抵抗を抑えることができ、切刃の早期摩耗を防止してインサートの使用寿命の延長を図ることができる。また、切削抵抗が抑えられているので、工具本体の振れやインサートの振れを防止でき、切削加工を精度良く行うことができる。
【0013】
ここで、インサートを、外形が四角形平板状をなして、2つの四角形面と4つの側面とを有し、前記側面のうち互いに対向する2つの側面に、それぞれ前記一対の傾斜面が設けられているものとすることにより、一つのインサートで8つのコーナ部を使用することができ、インサートのさらなる寿命延長を図って、インサートの使用コストを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インサートをラジアルレーキ角又はアキシャルレーキ角がプラス側となるように配置して切削抵抗を低減することができるとともに、使用コーナ数を確保してインサートの使用コストを低減することができる切削工具及びインサートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして説明する。図1から図6に本実施形態の切削工具であるボーリングカッタを示す。また、図7にこのボーリングカッタに装着されるインサートを示す。
このボーリングカッタは、軸線O回りに回転される工具本体10と、複数の同形同大のインサート40とを有している。
【0016】
工具本体10は、図1及び図2に示すように、外形が軸線Oを中心して延びる多段円柱状をなしており、工具本体10の後端側(図1において上側)には、工具本体10を図示しない工作機械の主軸端に取り付けるための取付部11が設けられている。
また、工具本体10には、軸線Oに沿って延びて前記取付部11の後端面に開口するクーラント孔12が穿設されていて、このクーラント孔12の工具本体10先端側には、前記クーラント孔12よりも大径とされたクーラント保持部13が設けられている。このクーラント保持部13の工具本体10先端側には、クーラント保持部13から軸線Oに沿って工具本体10先端面にまで達するとともに内周面に雌ネジが形成された開口孔14が設けられており、この開口孔14には工具本体10先端側から止めネジ15が螺着されている。
【0017】
工具本体10の先端面外周側には、図1に示すように、工具本体10径方向外側に向かうにしたがい漸次工具本体10後端側に後退するテーパ部16が形成され、工具本体10の外周面先端側には、工具本体10先端側に向かうにしたがい漸次工具本体10径方向外側にむけて突出する逆テーパ部17が形成されており、これらテーパ部16と逆テーパ部17とは工具本体10先端外周部で連接されている。
【0018】
このテーパ部16には、工具本体10が切り欠かれて工具本体10先端側に向けて大きく開口するとともに工具本体10径方向外側に向けて開口した第1チップポケット20が、周方向に等間隔で複数形成されており、本実施形態では、図2に示すように3つの第1チップポケット20が配置されている。この第1チップポケット20には、前記クーラント保持部13から延びるクーラント吐出孔21が開口させられている。
【0019】
第1チップポケット20の工具回転方向T後方側には、後述するインサート40を装着するための第1取付座22が設けられている。この第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23は、図3に示すように、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい漸次工具本体10後端側に後退して、軸線Oと角度αで交差するように構成されている。また、この壁面23には、該壁面23に直交するように延びるクランプネジ孔(図示なし)が穿設されている。
【0020】
また、第1取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面24は、図4に示すように、工具本体10径方向外側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に向けて後退している。この壁面24には、図3に示すように、工具本体10先端側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に後退するように傾斜した当接面26と、この当接面26の工具本体10後端側に位置して工具回転方向T後方側に後退した逃げ部27とが形成されている。
【0021】
第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23と工具回転方向T前方側を向く壁面24との交差部には工具本体10を切り欠くようにしてヌスミ部28が設けられている。また、第1取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面24と工具本体10径方向外側を向く壁面25との交差部にもヌスミ部29が設けられている。
【0022】
さらに、逆テーパ部17には、工具本体10が切り欠かれて工具本体10径方向外側に向けて大きく開口するとともに工具本体10先端側に向けて開口した第2チップポケット30が、周方向に等間隔に複数形成されており、本実施形態では、図2に示すように3つの第2チップポケット30が配置されている。この第2チップポケット30には、前記クーラント保持部13から延びるクーラント吐出孔31が開口させられている。
【0023】
第2チップポケット30の工具回転方向T後方側には、後述するインサート40を装着するための第2取付座32が設けられている。この第2取付座32の工具本体10径方向外側を向く壁面35は、図2及び図6に示すように、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい漸次工具本体10径方向内側に後退して、工具本体10径方向に対して角度βで交差するように構成されている。また、この壁面35には、該壁面35に直交するように延びるクランプネジ孔(図示なし)が穿設されている。
【0024】
また、第2取付座32の工具回転方向T前方側を向く壁面34は、図5に示すように、工具本体10先端側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に向けて後退するように形成されている。この壁面34には、図6に示すように、工具本体10径方向外側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に後退するように傾斜した当接面36と、この当接面36の工具本体10径方向内側に位置して工具回転方向T後方側に後退した逃げ部37とが形成されている。
【0025】
第2取付座32の工具本体10先端側を向く壁面33と工具回転方向T前方側を向く壁面34との交差部には工具本体10を切り欠くようにしてヌスミ部38が設けられている。また、第2取付座32の工具回転方向T前方側を向く壁面34と工具本体10径方向外側を向く壁面35との交差部にもヌスミ部39が設けられている。
【0026】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、第1チップポケット20と第2チップポケット30とが周方向に交互に配置され、第1取付座22と第2取付座32も周方向に交互に配置されている。また、第1チップポケット20及び第2チップポケット30に開口させられたクーラント吐出孔21、31は、工具本体10径方向外側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に向かうように形成されている。
【0027】
次に、前記第1取付座22及び第2取付座32に着脱可能に装着されるインサート40について説明する。このインサート40は、超硬合金等の硬質材料で構成されて外形が概略四角形平板状をなし、本実施形態においては、図7に示すように、概略長方形平板状をなしており、互いに平行に配置された2つの長方形面41、41と、長方形面41の一対の長辺にそれぞれに連なる一対の長側面(一の側面)42、42と、長方形面41の一対の短辺にそれぞれに連なる一対の短側面(他の側面)43、43とを有している。
【0028】
この長側面42には、インサート40の厚さ方向中央部に向かうにしたがい漸次長方形面41の内周側に向けて後退する一対の傾斜面44、44が設けられており、この長側面42は、前記長方形面41の長辺に直交する断面においてV字状をなしている。なお、本実施形態においては、この傾斜面44と前記長方形面41との交差角度γは、第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23と軸線Oとがなす角度α、第2取付座32の工具本体10径方向外側を向く壁面35と工具本体10径方向との交差角度βに対してそれぞれ、γ<α、γ<βとなるように設定されている。
【0029】
また、傾斜面44と長方形面41との交差稜線部には第1切刃45が設けられ、傾斜面44と短側面43との交差稜線部には第2切刃46が設けられている。また、第1切刃45と第2切刃46とが交差するコーナ部にはコーナ刃47が設けられている。一の傾斜面44の2つのコーナ部にそれぞれコーナ刃47が設けられるとともに、他の傾斜面44の2つのコーナ部にもそれぞれコーナ刃47が設けられており、この長側面42には4つのコーナ刃47が形成されている。つまり、このインサート40は、合計8つのコーナ刃47を有しているのである。
【0030】
また、長方形面41には、長方形面41に直交して厚さ方向に貫通した挿通孔48が穿設されており、この挿通孔48には厚さ方向中央部に向かうにしたがい漸次縮径するテーパ孔部49が形成されている。
このインサート40は、インサート40を厚さ方向に2等分する平面に対して面対称とされるとともに、短側面43に対向する側から見て180°回転対称に、長側面42に対向する側から見ても180°回転対称となるように構成されている。
【0031】
このようなインサート40が、以下のようにして第1取付座22及び第2取付座32に装着されてボーリングカッタが構成される。
図3及び図4に示すように、第1取付座22には、一の長方形面41aが工具本体10先端側に向けられて正面逃げ面とされ、他の長方形面41bが前記第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23に当接するようにしてインサート40が載置され、挿通孔48に挿通されたクランプネジ50が第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23に穿設されたクランプネジ孔に螺着される。
【0032】
ここで、前記インサート40を第1取付座22に載置した状態では、インサート40の挿通孔48の中心は前記クランプネジ孔の中心よりも工具本体10径方向外側及び工具回転方向T前方側に僅かに偏心させられており、クランプネジ50をねじ込むことによって、インサート40は工具本体10径方向内側及び工具回転方向T後方側に向けて引き込まれるようにして固定される。
【0033】
そして、一の短側面43aが工具本体10径方向外側に向けられて外周逃げ面とされ、他の短側面43bが第1取付座22の工具本体10径方向外側を向く壁面25に密着するように配置される。また、一の長側面42aが工具回転方向T前方側に向けられて該一の長側面42aの一の傾斜面44aがすくい面とされるとともに、他の長側面42bが第1取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面24に対向配置され、前記当接面26に他の長側面42bの傾斜面44が当接される。
【0034】
また、工具本体10先端側を向く壁面23と工具回転方向T前方側を向く壁面24との交差部に設けられたヌスミ部28には、短側面43に対向する側から見て図3に示すように、切削加工に供されるコーナ部に対して対角線上に位置するコーナ部が収容され、工具回転方向T前方側を向く壁面24と工具本体10径方向外側を向く壁面25との交差部に設けられたヌスミ部29には、長方形面41に対向する側から見て図4に示すように、切削加工に供されるコーナ部に対して対角線上に位置するコーナ部が収容される。
【0035】
こうして第1取付座22に装着されたインサート40は、図1に示すように、一のコーナ刃47が工具本体10先端側及び工具本体10径方向外側に向けて突出されるとともに、第1切刃45が工具本体10先端側に向けられて主切刃とされ、第2切刃46が工具本体10径方向外側に向けられることになる。
【0036】
また、図5及び図6に示すように、第2取付座32には、一の長方形面41aが工具本体10径方向外側に向けられて外周逃げ面とされ、他の長方形面41bが前記第2取付座32の工具本体10径方向外側を向く壁面35に当接するようにしてインサート40が載置され、挿通孔48に挿通されたクランプネジ50が第2取付座32の工具本体10径方向外側を向く壁面35に穿設されたクランプネジ孔に螺着される。
【0037】
ここで、前記インサート40を第2取付座32に載置した状態では、インサート40の挿通孔48の中心は前記クランプネジ孔の中心よりも工具本体10先端側及び工具回転方向T前方側に僅かに偏心させられており、クランプネジ50をねじ込むことによって、インサート40は工具本体10後端側及び工具回転方向T後方側に向けて引き込まれるようにして固定される。
【0038】
そして、一の短側面43aが工具本体10先端側に向けられて正面逃げ面とされ、他の短側面43bが第2取付座32の工具本体10先端側を向く壁面33に密着するように配置される。また、一の長側面42aが工具回転方向T前方側に向けられて該一の長側面42aの一の傾斜面44aがすくい面とされるとともに、他の長側面42bが第2取付座32の工具回転方向T前方側を向く壁面34に対向配置され、前記当接面36に他の長側面42bの傾斜面44が当接される。
【0039】
また、工具本体10先端側を向く壁面33と工具回転方向T前方側を向く壁面34との交差部に設けられたヌスミ部38には、長方形面41に対向する側から見て図5に示すように、切削加工に供されるコーナ部に対して対角線上に位置するコーナ部が収容され、工具回転方向T前方側を向く壁面34と工具本体10径方向外側を向く壁面35との交差部に設けられたヌスミ部39には、短側面43に対向する側から見て図6に示すように、切削加工に供されるコーナ部に対して対角線上に位置するコーナ部が収容される。
【0040】
こうして第2取付座32に装着されたインサート40は、図1に示すように、一のコーナ刃47が工具本体10先端側及び工具本体10径方向外側に向けて突出されるとともに、第2切刃46が工具本体10先端側に向けられて主切刃とされ、第1切刃45が工具本体10径方向外側に向けられることになる。
ここで、図1に示すように、第1取付座22に装着されたインサート40のコーナ刃47と第2取付座32に装着されたインサート40のコーナ刃47とが、軸線Oを中心とした回転軌跡において一致するように配置され、第1取付座22に装着されたインサート40の第1切刃45と第2取付座32に装着されたインサート40の第2切刃46との回転軌跡もコーナ部近傍で一致し、第1取付座22に装着されたインサート40の第2切刃46と第2取付座32に装着されたインサート40の第1切刃45との回転軌跡もコーナ部近傍で一致することになる。
【0041】
このようにして構成されたボーリングカッタは、工具本体10の取付部11が工作機械の主軸端に取り付けられ、軸線O回りに高速回転されるとともに、工具本体10の軸線O方向に送りを与えられ、被切削材に予め設けられた下穴に挿入されて、工具本体10の先端外周部に装着されたインサート40の主切刃及びコーナ刃47によって下穴の内壁面を切削加工し、所定の内径の加工穴を形成するものである。
【0042】
この構成のボーリングカッタにおいては、第1取付座22の工具本体10先端側を向く壁面23が、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい漸次工具本体10後端側に後退して、軸線Oと角度αで交差するように構成されており、この工具本体10先端側を向く壁面23に長方形面41を密着するようにしてインサート40が装着され、このインサート40の傾斜面44と長方形面41とがなす角度γが、γ<αとなるように設定されているので、図3に示すようにこのインサート40のアキシャルレーキ角A1がプラスとなる。また、ラジアルレーキ角R1は図2に示すようにマイナスに設定されている。
【0043】
また、第2取付座32の工具本体10径方向外側を向く壁面35が、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい漸次工具本体10径方向内側に後退して、工具本体10径方向に対して角度βで交差するように構成されており、この工具本体10径方向外側を向く壁面35に長方形面41を密着するようにしてインサート40が装着され、このインサート40の傾斜面44と長方形面41とがなす角度γが、γ<βとなるように設定されているので、図2及び図6に示すようにこのインサート40のラジアルレーキ角R2がプラスとなる。また、アキシャルレーキ角A2は図5に示すようにマイナスに設定されている。
【0044】
このように、第1取付座22に装着されたインサート40はアキシャルレーキ角A1がプラスに設定され、第2取付座32に装着されたインサート40がラジアルレーキ角R2がプラスに設定されるので、これらのインサート40に負荷される切削抵抗を低減でき、切刃の早期摩耗を防止してインサート40の寿命延長を図ることができる。また、切削抵抗を低減することにより、工具本体10の振れやインサート40の振れを防止して、切削加工を寸法精度良く行うことができる。
【0045】
また、一つの長側面42に4つのコーナ刃47が形成されており、このインサート40は8つのコーナ刃47を備えている。そして、工具本体10には、インサート40を、長方形面41を先端逃げ面として使用する第1取付座22と、長方形面41を外周逃げ面として使用する第2取付座32とが設けられているので、一つの長側面42のうち対角線上に位置する2つのコーナ刃47がそれぞれ第1取付座22に装着された際に切削加工に供され、残りの2つのコーナ刃47がそれぞれ第2取付座32に装着された際に切削加工に供される。よって、8つのコーナ刃47を順次使用することができ、このインサート40の使用コストを大幅に低減することができる。
【0046】
さらに、第1取付座22に装着されたインサート40のコーナ刃47と第2取付座32に装着されたインサート40のコーナ刃47とが軸線O回りに回転した際の回転軌跡が一致するとともに、第1取付座22に装着されたインサート40の第1切刃45と第2取付座32に装着されたインサート40の第2切刃46との回転軌跡もコーナ部近傍で一致するように配置されるので、第2取付座32に装着されたインサート40によっても、第1取付座22に装着されたインサート40と同じように切削加工を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態においては、第1取付座22と第2取付座32とが同数、より具体的には3つずつ設けられているので、6つのインサートを一組としてそれぞれコーナチェンジしながら使用することができる。
さらに、第1取付座22と第2取付座32とが周方向に交互に配置されるとともに、第1チップポケット20と第2チップポケット30とが周方向に交互に配置されているので、ボーリングカッタの重量バランスが安定する。
【0048】
以上、本発明の実施形態であるボーリングカッタ及びインサートについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、外形が概略長方形平板状をなすインサートとして説明したが、これに限定されることはなく、多角形平板状をなしていても良い。
【0049】
また、第1チップポケット及び第1取付座が周方向に3つ、第2チップポケット及び第2取付座が周方向に3つ設けられたもので説明したが、これに限定されることはなく、チップポケット及びインサート取付座の数はいくつであっても良く、被切削材のサイズや材質等を勘案して適宜の配置とすることが好ましい。なお、第1取付座と第2取付座とを同数配置することにより、前述した効果を奏することができるため好ましい。
【0050】
さらに、インサートの長方形面に厚さ方向に貫通する挿通孔を穿設して、クランプネジによって取付座に固定する構成のものとして説明したが、これに限定されることはなく、クサビ部材等によってインサートを固定するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態であるボーリングカッタの側面部分断面図である。
【図2】図1に示すボーリングカッタの正面図である。
【図3】図1における第1取付座の側面拡大図である。
【図4】図1における第1取付座の正面拡大図である。
【図5】図1における第2取付座の側面拡大図である。
【図6】図1における第2取付座の正面拡大図である。
【図7】図1に示すボーリングカッタに装着されるインサートの斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 工具本体
22 第1取付座
32 第2取付座
40 インサート
41 長方形面(多角形面)
42 長側面(一の側面)
43 短側面(他の側面)
44 傾斜面
45 第1切刃
46 第2切刃
47 コーナ刃
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−23632(P2008−23632A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−197067(P2006−197067)