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【発明の名称】 ピンミラーカッター用インサート及びピンミラーカッター
【発明者】 【氏名】滝口 正治

【氏名】別所 光正

【要約】 【課題】切削箇所によって切刃に最適形状のホーニングを施すことで切削性を向上させつつ、切刃の寿命を延長させ、ランニングコストを低減させることができるピンミラーカッター用インサート及びこのインサートを装着したピンミラーカッターを提供する。

【構成】四角形平板状をなすインサート本体20の一対の長側面22がすくい面とされ、このすくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニング30を形成し、このホーニング30を、ホーニング幅Wを一定に保ちつつ、ホーニング角度θが長側面22の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなるように形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、
四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、
該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、
該ホーニングは、ホーニング幅を一定に保ちつつ、ホーニング角度が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とするピンミラーカッター用インサート。
【請求項2】
軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、
四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、
該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、
該ホーニングは、ホーニング角度を一定に保ちつつ、ホーニング幅が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とするピンミラーカッター用インサート。
【請求項3】
軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、
四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、
該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、
該ホーニングは、ホーニング幅及びホーニング角度が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とするピンミラーカッター用インサート。
【請求項4】
前記インサート本体は、平面視略等脚台形平板状をなし、この等脚台形状の斜辺部分に対応する側面が前記すくい面とされ、前記等脚台形の底辺側がこのすくい面の前記一端側とされていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のピンミラーカッター用インサート。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のピンミラーカッター用インサートが、
前記第一のインサート取付座においては、前記インサート本体の厚さ方向が前記カッター本体の径方向に向くように装着され、前記カッター本体の前記周面から突出された前記切刃がピン刃とされ、
前記第二のインサート取付座においては、前記インサート本体の厚さ方向が前記カッター本体の軸線方向を向くように装着され、前記カッター本体の前記側面から突出された前記切刃がウェイブ刃とされていることを特徴とするピンミラーカッター。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば往復式内燃機関に用いられるクランクシャフトを加工する際に使用されるピンミラーカッター用インサート及びこのインサートを装着したピンミラーカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レシプロエンジンのクランクシャフト等を加工する工具として、ピンミラーカッター及びこれに用いられるインサートが知られている。このピンミラーカッターは、軸線回りに回転される略円環状をなすカッター本体の内周面に第一のインサート取付座が複数形成されていると共に、カッター本体の両側面に第二のインサート取付座が複数形成されていて、これら第一のインサート取付座及び第二のインサート取付座に対して同一種類のインサートがそれぞれ装着されたものである。
【0003】
このインサートは、略等脚台形平板状をなすものであり、厚さ方向の両端において対向配置される互いに平行な上下面と、短手方向の両端において対向配置される一対の長側面と、長手方向の両端において対向配置される互いに平行な一対の短側面とを備えている。そのため、互いに略同一のコーナー角を有する一対の鋭角コーナー部と、互いに略同一のコーナー角を有する一対の鈍角コーナー部とを備えている。そして、上下面において、一対の鋭角コーナー部及び一対の鈍角コーナー部同士をつなぐ一対の短側面に曲面部分が形成され、これら曲面部分と一対の長側面との交差稜線部分に略凸曲線形状をなすような曲線刃が合計八つ形成されている。また、上下面のそれぞれ曲面部分を除いた部分と、一対の長側面との交差稜線部分に略直線状をなすような直線刃が合計四つ形成されている。これら曲線刃と直線刃には切刃の寿命を向上させるためのホーニングが形成されることがある。
【0004】
第一のインサート取付座に装着されたインサートは、その略等脚台形平板状をなすインサート本体の鋭角コーナー部に形成された曲線刃が、アキシャルレーキ(軸方向のすくい角):正、ラジアルレーキ(径方向のすくい角):負となるようにカッター本体の内周面から突出させられて、クランクシャフトにおけるピン部(シャフト部)の外周面を加工するピン刃とされている。
また、第二のインサート取付座に装着されたインサートは、その略等脚台形平板状をなすインサート本体の鈍角コーナー部に形成された曲線刃が、アキシャルレーキ(軸方向のすくい角):負、ラジアルレーキ(径方向のすくい角):負となるようにカッター本体の端面から突出させられて、クランクシャフトにおけるカウンターウェイト部の側面を加工するウェイブ刃とされている。
【0005】
このようなピンミラーカッターでは、同一種類のインサートを第一及び第二のインサート取付座に装着していることにより、一つのインサートに形成された八つの曲線刃と四つの直線刃をそれぞれ切削に供して工具費の抑制を図ることができる。そして、略等脚台形平板状のインサート本体を有するインサートを使用したことにより、第一のインサート取付座に装着されるインサートについて、そのピン刃とされるうちの曲線刃に与えられるアキシャルレーキを正に設定することができ、また、第二のインサート取付座に装着されるインサートについて、そのウェイブ刃とされるうちの曲線刃に与えられるラジアルレーキを負角側へ著しく大きくしないことで、切削抵抗を低減させると共に、インサートの強度を向上させ、切刃の長寿命化、すなわち、ランニングコストの低減を図ろうとしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−138193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたインサートに加わる切削衝撃は、その装着状態から鋭角コーナー部の曲線刃においては切削衝撃が強く、直線刃においては曲線刃よりも比較的衝撃が弱くなる。しかしながら、このようなインサートで上述のように切刃にホーニングを形成すると、切削衝撃の強い箇所と、比較的弱い箇所とが同一のホーニング形状になるため、切削性を向上させようとして、ホーニングの幅や角度を小さくすると、切削抵抗が大きくなり、切削衝撃の強い箇所の切刃の寿命が悪くなる。一方、切刃の寿命を延長させようとして、ホーニングの幅や角度を大きくすると、切削抵抗が小さくなるが、切削性が低下する。このため、切刃の寿命を延長させるか、切削性を向上させるかのどちらかの制限を受けてしまい、ランニングコストの低減を図るための効果的な解決手段とはなり得ないという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、切削箇所によって切刃に最適形状のホーニングを施すことで切削性を向上させつつ、切刃の寿命を延長させ、ランニングコストを低減させることができるピンミラーカッター用インサート及びこのインサートを装着したピンミラーカッターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、該ホーニングは、ホーニング幅を一定に保ちつつ、ホーニング角度が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、該ホーニングは、ホーニング角度を一定に保ちつつ、ホーニング幅が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、軸線回りに回転されるピンミラーカッターの略円環状あるいは略円板状をなすカッター本体の周面に形成された第一のインサート取付座と、前記カッター本体の側面に形成された第二のインサート取付座とに装着されるピンミラーカッター用インサートであって、四角形平板状をなすインサート本体の厚さ方向に沿う四つの側面のうち、対向する一対の側面がすくい面とされ、該すくい面の辺稜部に形成された切刃に、ホーニングを形成し、該ホーニングは、ホーニング幅及びホーニング角度が前記すくい面の一端側に向かうに従って徐々に連続して大きくなることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明は、前記インサート本体は、平面視略等脚台形平板状をなし、この等脚台形状の斜辺部分に対応する側面が前記すくい面とされ、前記等脚台形の底辺側がこのすくい面の前記一端側とされていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、このようなピンミラーカッター用インサートが、前記第一のインサート取付座においては、前記インサート本体の厚さ方向が前記カッター本体の径方向に向くように装着され、前記カッター本体の前記周面から突出された前記切刃がピン刃とされ、前記第二のインサート取付座においては、前記インサート本体の厚さ方向が前記カッター本体の軸線方向を向くように装着され、前記カッター本体の前記側面から突出された前記切刃がウェイブ刃とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、すくい面とされる側面の切削衝撃の比較的弱い箇所に形成された切刃に、ホーニング角度やホーニング幅の小さいホーニングを、このすくい面の一端側、すなわち切削衝撃の強い箇所に形成された切刃にホーニング角度やホーニング幅の大きいホーニングをそれぞれ別個に形成するため、切削箇所毎に切削性と切刃強度とを両立させることができる。つまり、切削衝撃の弱い箇所と切削衝撃の強い箇所共に、切削性を損なうことなく切刃の寿命を延長することができ、ランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
本実施形態によるピンミラーカッターのカッター本体10は、図1、図2の要部拡大図に示すように、軸線O回りに回転される軸線Oを中心とした略円環形状をなすものである。このカッター本体10において、径方向内周側を向く内周面11には、複数の第一のインサート取付座13がカッター本体10の周方向に沿って略等間隔に形成され、軸線O方向外方側を向く両端面(側面)12A,12Bのそれぞれ内周面11側には、複数の第二のインサート取付座14がカッター本体10の周方向に沿って略等間隔に形成されている。
【0015】
カッター本体10の内周面11に形成された複数の第一のインサート取付座13は、周方向において、カッター本体10の両端面12A,12Bのうちの一方の端面12A寄りに配置されたものと、他方の端面12B寄りに配置されたものとが、カッター本体10の周方向で交互に配列されるようになっている。
カッター本体10の一方の端面12Aに形成された複数の第二のインサート取付座14は、他方の端面12B寄りの内周面11に形成された複数の第一のインサート取付座13のそれぞれわずかにカッター回転方向T後方側に配置されるように周方向で配列され、カッター本体10の他方の端面12Bに形成された複数の第二のインサート取付座14も、一方の端面12A寄りの内周面11に形成された複数の第一のインサート取付座13のそれぞれわずかにカッター回転方向T後方側に配置されるように周方向で配列されている。
【0016】
そして、上記のような第一のインサート取付座13及び第二のインサート取付座14に装着されるインサートのインサート本体20は、図3〜図5に示すように、略等脚台形平板状をなすものであり、インサート本体20の厚さ方向両端において対向配置される互いに平行な上下面21,21と、インサート本体20の短手方向の両端において対向配置され、等脚台形の斜辺に沿う一対の長側面22,22と、インサート本体20の長手方向の両端において対向配置され、互いに平行、且つ等脚台形の上辺及び下辺(底辺)に沿う一対の短側面23A,23Bとを備えている。そのため、インサート本体20は、その上面視で(インサート本体20の厚さ方向に沿って視て)図3に示すように、互いに略同一のコーナー角を有する一対の鋭角コーナー部24A,24Aと、同じく互いに同一のコーナー角を有する一対の鈍角コーナー部24B,24Bとを備えている。
ここで、インサート本体20の略中央部には、インサートがネジ止めされるときに用いられるクランプネジを挿通させるための挿通孔20Aが、このインサート本体20の厚さ方向(図4における左右方向、上下面21に略直交する方向)を貫通するように形成されている。
【0017】
インサート本体20の一対の長側面22,22は、それぞれインサート本体20の厚さ方向に対して略平行とされた一つの略平坦面から構成され、インサート本体20の一対の短側面23A,23Bも、それぞれインサート本体20の厚さ方向に対して略平行とされた略平坦面から構成されている。
インサート本体20の一対の長側面22,22は、それぞれインサート本体20の長手方向(図3における左右方向)の両端側部分において、インサート本体20の一対の短側面23A,23Bに対してそれぞれ交差させられるのであるが、図5に示すように、上下面21,21のそれぞれにおける上記長手方向の両端側部分は凸曲面状に加工されている。
上下面21,21において、各コーナー部24A,24A,24B,24B同士をつなぐ各々短側面23A,23Bへの接続部分は、図5に示すように、短側面23A,23Bに対して滑らかに接続される曲面部分27とされている。
【0018】
そして、インサート本体20には、一対の長側面22,22と上下面21,21との交差稜線部に切刃が形成されている。
詳述すれば、上下面21,21の各々曲面部分27と、一対の長側面22,22との交差稜線部に、略凸曲線状をなすような曲線刃25Aが合計八つ形成され、上下面21,21の各々曲面部分27を除いた部分と、一対の長側面22,22との交差稜線部に、略直線状をなすような直線刃25Bが合計四つ形成されており、一つのインサートには、合計八つの曲線刃25Aと合計四つの直線刃25Bとが形成される。
【0019】
また、これら曲線刃25Aと直線刃25Bとを含む一対の長側面22,22の辺稜部にはホーニング30が形成されている。具体的に図5、図6に示す。尚、図6は、図5の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図であり、説明の便宜上同一図面に示した。
図5、図6に示すように、ホーニング30のホーニング幅Wは、長側面22の辺稜部全周にわたって一定に設定されているが、ホーニング角度θは、直線刃25Bにおけるホーニング角度θAよりも鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aにおけるホーニング角度θBが大きく設定され、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図5における左側)では、ホーニング角度θCがホーニング角度θBよりも大きく設定され、それぞれ連続して形成されている。尚、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図5における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング30のホーニング角度θはθAに設定されている。
【0020】
尚、一般的に切刃(本発明においては曲線刃25A、直線刃25B)に形成されるホーニングの形状はホーニング幅Wが0.15mm、ホーニング角度θが15°で一定に設定されているが、この第一実施形態においては、例えばホーニング幅Wを0.15mmに設定し、ホーニング角度θをそれぞれθAを15°、θBを20°、θCを25°に設定することが望ましい。
【0021】
上記のような構成とされたインサートは、第一のインサート取付座13に対し、インサート本体20の厚さ方向をカッター本体10の径方向に略一致させて、一対の長側面22,22のうちの一つをカッター回転方向T前方側に向けてすくい面とするように、インサート本体20の挿通孔20Aに挿通されるクランプネジ15によってネジ止めされて装着される。
【0022】
第一のインサート取付座13に装着されたインサートは、それに形成された八つの曲線刃25Aのうちの鋭角コーナー部24Aに形成された一つの曲線刃25A(とくに、上下面21,21と短側面23A,23Bとが交差しあう部分を構成する曲面部分27と長側面22との交差稜線部に形成された合計四つの曲線刃25Aのうちの一つの曲線刃25A)を、カッター本体10の内周面から上記径方向内周側へ突出させると共にカッター本体10の端面12A(12B)から上記軸線O方向外方側へ突出させ、この曲線刃25Aに連なる直線刃25Bを、カッター本体10の内周面11から上記径方向内周側へ突出させている。
このような突出状態に配置された曲線刃25Aと直線刃25Bとが、クランクシャフトにおけるピン部(シャフト部)の外周面を加工するピン刃となる。
【0023】
また、ピン刃とされる曲線刃25Aのカッター回転方向T後方側に連なる曲面部分27は、カッター回転方向T後方側へ向かうに従い上記径方向外周側へ向かうように傾斜させられるとともに、カッター回転方向T後方側へ向かうに従い上記軸線O方向内方側へ向かうように傾斜させられていて、ピン刃とされる曲線刃25Aの逃げ面をなすこの曲面部分27に対して逃げが与えられている。
そのため、ピン刃とされる曲線刃25AのラジアルレーキR(径方向すくい角)は、この曲線刃25Aが上記径方向外周側へ向かうに従いカッター回転方向T前方側へ向かうように傾斜させられることによって、負に設定されている(例えば−8°)。
【0024】
これに対し、ピン刃とされる曲線刃25AのアキシャルレーキA(軸方向すくい角)は、この曲線刃25Aが上記軸線O方向内方側へ向かうに従いカッター回転方向T後方側へ向かうように傾斜させられることによって、正に設定されている(例えば6°)。
つまり、すくい面をなす長側面22と短側面23とが鋭角に交差する鋭角コーナー部24Aが存在しているために、ピン刃とされる曲線刃25Aの逃げ面をなす曲面部分27に対して逃げを与えたとしても、ピン刃とされる曲線刃25Aのアキシャルレーキを正に設定することができるようになっているのである。
【0025】
一方、上記のような構成とされたインサートは、第二のインサート取付座14に対し、インサート本体20の厚さ方向をカッター本体10の軸線O方向に略一致させて、一対の長側面22,22のうちの一つをカッター回転方向T前方側に向けてすくい面とするように、インサート本体20の挿通孔20Aに挿通されるクランプネジ15によってネジ止めされて装着される。
【0026】
第二のインサート取付座14に装着されたインサートは、それに形成された八つの曲線刃25Aのうちの鈍角コーナー部24Bに形成された一つの曲線刃25A(とくに、上下面21,21と短側面23A,23Bとが交差しあう部分を構成する曲面部分27と長側面22との交差稜線部に形成された合計四つの曲線刃25Aのうちの一つの曲線刃25A)を、カッター本体10の端面12A(12B)から上記軸線O方向外方側へ突出させている。
このような突出状態に配置された曲線刃25Aが、クランクシャフトにおけるカウンターウェイト部の側面を加工するウェイブ刃となる。
【0027】
また、ウェイブ刃とされる曲線刃25Aのカッター回転方向T後方側に連なる曲面部分21Bは、カッター回転方向T後方側へ向かうに従い上記軸線O方向内方側へ向かうように傾斜させられるとともに、カッター回転方向T後方側へ向かうに従い上記径方向外周側へ向かうように傾斜させられていて、ウェイブ刃とされる曲線刃25Aの逃げ面をなすこの曲面部分21Bに対して逃げが与えられている。
そのため、ウェイブ刃とされる曲線刃25AのアキシャルレーキA(軸方向すくい角)は、この曲線刃25Aが上記軸線O方向内方側へ向かうに従いカッター回転方向T前方側へ向かうように傾斜させられることによって、負に設定されている(例えば−6°)。
また、ウェイブ刃とされる曲線刃25AのラジアルレーキR(径方向すくい角)は、この曲線刃25Aが上記径方向外周側へ向かうに従いカッター回転方向T前方側へ向かうように傾斜させられることによって、負に設定されている(例えば−17°)。
【0028】
このような構成とされたピンミラーカッターは、加工機のカッター取付部に、カッター本体10の軸線Oが主軸と一致するように取り付けられ、チャックに架け渡されたクランクシャフトをカッター本体10の内空部に貫通させた状態で、クランクシャフトの軸線(カッター本体10の軸線O)方向に沿って移動しながら、カッター本体10の軸線O回りに自転するとともに、クランクシャフトの軸線回りに公転することにより、このクランクシャフトを所定形状に加工していく。
【0029】
したがって、上述の第一実施形態によれば、インサート本体20の曲線刃25Aと直線刃25Bとを含む一対の長側面22,22の辺稜部にホーニング30を形成し、ホーニング30のホーニング幅Wを一定(例えば0.15mm)に設定しつつ、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図5における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング角度θAを小さく設定し(例えば15°)、また、鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aに形成されたホーニング角度θBをホーニング角度θAよりも大きく設定し(例えば20°)、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図5における左側)では、ホーニング角度θCをホーニング角度θBよりも大きく設定する(例えば25°)ため、切削箇所によって最適なホーニング30の形状を形成することができる。
【0030】
つまり、切削衝撃の比較的弱い範囲Hのホーニング角度θAよりも切削衝撃の強い鋭角コーナー部24A側の曲線刃25A、さらには短側面23B側(等脚台形の底辺側、図5における左側)に向かうに従って、ホーニング角度θB,θCを除々に連続して大きくすることで、すなわちすくい面とされる長側面22の一端側(短側面23B側つまり前記等脚台形の底辺側)で、この一端側に向かうに従ってホーニング角度θB,θCを除々に連続して大きくすることで、切削衝撃の弱い箇所と、切削衝撃の強い箇所とでそれぞれ別個に切削性と切刃強度とを両立させることができる。よって、切削衝撃の弱い箇所と切削衝撃の強い箇所共に、切削性を損なうことなく切刃の寿命を延長することができ、ランニングコストを低減させることができる。
【0031】
次に、この発明の第二実施形態を図3を援用し、図7、図8に基づいて説明する。図7は、この発明の第二実施形態であるインサート本体40を示し、図8は、図7の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図である。尚、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態でも同様)。
ここで、第二実施形態及び後述する第三実施形態において、インサート本体40,50は一対の長側面22,22と一対の短側面23A,23Bとを備える略等脚台形平板状をなすものであって、互いに略同一のコーナー角を有する一対の鋭角コーナー部24A,24Aと、同じく互いに同一のコーナー角を有する一対の鈍角コーナー部24B,24Bとを備えている点、インサート本体40の長手方向の両端側部分には曲面部分27が形成され、各々曲面部分27と、一対の長側面22,22との交差稜線部に、略凸曲線状をなすような曲線刃が合計八つ形成され、上下面21,21の各々曲面部分27を除いた部分と、一対の長側面22,22との交差稜線部に、略直線状をなすような直線刃25Bが合計四つ形成されている点、これら曲線刃25Aと直線刃25Bとを含む一対の長側面22,22の辺稜部にホーニング41,51が形成されている等のインサート本体40の基本的構成は前記第一実施形態と同様である。
【0032】
図7、図8に示すように、ホーニング41のホーニング角度θは、長側面22の辺稜部全周にわたって一定に設定されているが、ホーニング幅Wは直線刃25Bにおけるホーニング幅WAよりも鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aにおけるホーニング幅WBが大きく設定され、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図7における左側)では、ホーニング幅WCがホーニング幅WBよりも大きく設定され、それぞれ連続して形成されている。尚、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図7における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング41のホーニング幅WはWAに設定されている。
【0033】
尚、この第二実施形態においては、例えばホーニング角度θを15°に設定し、ホーニング幅WをそれぞれWAを0.15mm、WBを0.20mm、WCを0.25mmに設定することが望ましい。また、ここではホーニング角度θを15°したが、ホーニング角度θは10°から30°の範囲であればよい。
【0034】
したがって、上述の第二実施形態によれば、ホーニング41のホーニング角度θを一定(例えば15°)に設定しつつ、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図5における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング幅WAを小さく設定し(例えば0.15mm)、また、鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aに形成されたホーニング幅WBをホーニング幅WAよりも大きく設定し(例えば0.20mm)、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図5における左側)では、ホーニング幅WCをホーニング幅WBよりも大きく設定する(例えば0.25mm)ため、切削箇所によって最適なホーニング41の形状を形成することができる。
【0035】
つまり、切削衝撃の比較的弱い範囲Hのホーニング幅WAよりも切削衝撃の強い鋭角コーナー部24A側の曲線刃25A、さらには短側面23B側(等脚台形の底辺側、図5における左側)に向かうに従ってホーニング幅WB,WCを除々に連続して大きくすることで、すなわちすくい面とされる長側面22の一端側(短側面23B側つまり前記等脚台形の底辺側)で、この一端側に向かうに従ってホーニング幅WB,WCを除々に連続して大きくすることで、切削衝撃の弱い箇所と、切削衝撃の強い箇所とでそれぞれ別個に切削性と切刃強度を両立させることができる。とりわけ、この第二実施形態においては、切削衝撃の強い箇所のホーニング幅Wを大きくすることによって、より切刃強度を強くすることができ、切刃の寿命をさらに延長することができる。
【0036】
次に、この発明の第三実施形態を図3を援用し、図9、図10に基づいて説明する。図9は、この発明の第三実施形態であるインサート本体50を示し、図10は、図9の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図である。
図9、図10に示すように、ホーニング51のホーニング幅Wとホーニング角度θは、直線刃25Bにおけるホーニング幅WAとホーニング角度θAよりも鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aにおけるホーニング幅WBとホーニング角度θBとが大きく設定され、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図7における左側)では、ホーニング幅WCとホーニング角度θCとが、ホーニング幅WBとホーニング角度θBよりも大きく設定され、それぞれ連続して形成されている。すなわち、すくい面とされる長側面22の一端側(短側面23B側つまり前記等脚台形の底辺側)では、この一端側に向かうに従ってホーニング幅W及びホーニング角度θの双方が除々に連続して大きくなっている。尚、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図7における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング51のホーニング幅Wとホーニング角度θはそれぞれWA、θAに設定されている。
【0037】
尚、この第三実施形態においては、ホーニング幅WをそれぞれWAを0.15mm、WBを0.20mm、WCを0.25mmに設定し、ホーニング角度θをそれぞれθAを15°、θBを20°、θCを25°に設定することが望ましい。
【0038】
したがって、上述の第三実施形態によれば、直線刃25Bと直線刃25Bから鈍角コーナー部24B側にある短側面23A側(等脚台形の上辺側、図9における右側)にわたる範囲Hに形成されたホーニング幅WAとホーニング角度θAとを小さく設定し(例えばWAを0.15mm、θAを15°)、また、鋭角コーナー部24A側の曲線刃25Aに形成されたホーニング幅WBとホーニング角度θBとを、ホーニング幅WAとホーニング角度θAよりも大きく設定し(例えばWBを0.20mm、θBを20°)、さらに、短側面23B側(等脚台形の底辺側、図9における左側)では、ホーニング幅WCとホーニング角度θCとを、ホーニング幅WBとホーニング角度θBよりも大きく設定する(例えばWCを0.25mm、θCを25°)ため、切削箇所毎に切削性と切刃強度を両立させた最適なホーニング51を形成することができる。とりわけ、この第三実施形態においては、切削衝撃の強い箇所のホーニング幅Wとホーニング角度θの両者を大きくすることによって、より切削性と切刃強度を両立させることができる。
【0039】
尚、上述した各実施形態では、いわゆるインターナル型のピンミラーカッターに本発明を適用したものとして説明しているが、これに限定されることはなく、カッター本体において、径方向外周側を向く外周面に、複数の第一のインサート取付座が形成され、軸線方向を向く両端面のそれぞれの外周面側に、複数の第二のインサート取付座が形成されていて、これら第一のインサート取付座及び第二のインサート取付座に対してインサートがそれぞれ装着される、いわゆるエクスターナル型のピンミラーカッターに本発明を適用してもよい。
また、上述した実施形態では、インサート本体20,40,50が一対の長側面22,22と一対の短側面23A,23Bとを備える略等脚台形平板状をなすものである場合について説明したが、これに限定されることはなく、四角形平板状であればよい。さらに、前記実施形態では、長側面22の前記一端側以外の前記範囲Hにおいては、ホーニング30,41、51のホーニング幅Wやホーニング角度θはそれぞれ一定とされているが、この範囲Hも含めてすくい面とされる長側面22の全体で、ホーニング幅Wとホーニング角θとの少なくとも一方が該すくい面とされる長側面22の一端側(インサート本体20が略等脚台形平板状の場合は例えばこの等脚台形の底辺側)に向かうに従って徐々に連続して大きくなるようにされていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態におけるピンミラーカッターのカッター本体における端面の要部拡大説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるピンミラーカッターのカッター本体における内周面の要部拡大説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態におけるピンミラーカッターに装着されるインサートのインサート本体の上面図である。
【図4】図3のX矢視図である。
【図5】図3のY矢視図である。
【図6】本発明の第一実施形態におけるホーニングの形状を示し、図5の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図である。
【図7】本発明の第二実施形態におけるインサート本体の、図3のY矢視図に相当する側面図である。
【図8】本発明の第二実施形態におけるホーニングの形状を示し、図7の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図である。
【図9】本発明の第三実施形態におけるインサート本体の、図3のY矢視図に相当する側面図である。
【図10】本発明の第三実施形態におけるホーニングの形状を示し、図9の各々A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
10 カッター本体
13 第一のインサート取付座
14 第二のインサート取付座
20,40,50 インサート本体
21 インサート本体20,40,50の上下面
22 インサート本体20,40,50のすくい面とされる長側面
23A インサート本体20,40,50の短側面(上辺)
23B インサート本体20,40,50の短側面(底辺)
25A 曲線刃
25B 直線刃
30,41,51 ホーニング
W,WA,WB,WC ホーニング幅
θ,θA,θB,θC ホーニング角度
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年9月4日(2006.9.4)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−18522(P2008−18522A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−239456(P2006−239456)