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【発明の名称】 位相基準部加工装置及び方法
【発明者】 【氏名】下村 真素美

【要約】 【課題】シャフトの種々の位置に位相基準部を形成でき、かつ、所定の一姿勢でシャフトを搬出することが可能な位相基準部加工装置を提供する。

【構成】シャフト300の或る部位308とチャック104とを位置合わせして、チャック104でシャフト300を把持する。シャフト300が第1姿勢になっているとき、チャック104の位相値を検出する。シャフト300に位相基準部を形成するのに適したシャフト300の第2姿勢に対応するチャックの位相値を計算し、その位相値になるまでチャックの回転割出しを行った後、加工ユニット108により位相基準部をシャフト300に形成する。その後、上記検出した位相値になるまでチャックの回転割出しを行なって、シャフト300を第1姿勢に戻し、その姿勢でシャフト300を搬出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの第1部位に対して回転方向で位置合わせされた状態で前記シャフトを把持し、前記把持したシャフトの回転軸回りに回転可能であり、且つ、任意の回転位置にて固定可能であるチャックと、
前記チャックに把持されたシャフトに対して所定の位置関係で配置され、前記チャックに把持されたシャフトに位相基準部を形成するための加工を施す加工ユニットと、
前記チャックの回転割出しと前記加工ユニットの加工動作を制御する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記チャックにより把持されたシャフトがその回転方向におる第1の姿勢であるときの前記チャックの位相値を検出する第1位相値検出手段と、
前記シャフトの前記第1部位と前記シャフトに形成予定の位相基準部との間の位置関係を定義したデータに基づいて、前記加工ユニットにより前記位置基準部を形成するのに適した前記シャフトの第2の姿勢に対応する前記チャックの第2の位相値を決定する第2位相値決定手段と、
前記チャックの位相値が前記第2の位相値になるまで前記チャックの第1の回転割出しを行ない、それにより、前記チャックに把持されたシャフトを前記第2の姿勢に設定する第1回転割出手段と、
前記チャックに把持されたシャフトが前記第2の姿勢で固定されるように前記チャックを固定し、その状態で、前記シャフトに前記位置基準部を形成するように前記加工ユニットを駆動し制御する加工制御手段と、
前記位置基準部が形成された後、前記チャックの位相値が前記第1の位相値になるまで前記チャックの第2の回転割出しを行って、それにより、前記チャックに把持されたシャフトを前記第1の姿勢に戻す第2回転割出手段と
を備えた位相基準部加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の位相基準部加工装置において、
前記シャフトの前記第1部位とは別の第2部位の、前記チャックの位相座標系の下での位相値を測定する手段を更に備え、
前記制御ユニットの前記第2位相値決定手段は、測定された前記第2部位の位相値と、前記第2部位と前記形成予定の位相基準部との間の位置関係を定義したデータとに基づいて、前記第2の位相値を決定する、
位相基準部加工装置。
【請求項3】
シャフトの第1部位に対して回転方向で位置合わせされた状態で前記シャフトを把持し、前記把持したシャフトの回転軸回りに回転可能であり、且つ、任意の回転位置にて固定可能であるチャックと、
前記チャックに把持されたシャフトに対して所定の位置関係で配置され、前記チャックに把持されたシャフトに位相基準部を形成するための加工を施す加工ユニットと、
前記チャックの回転割出しと前記加工ユニットの加工動作を制御する制御ユニットと、
を備えた位相基準部加工装置を用いて、前記シャフトに位相基準部を形成するための加工を行なう方法において、
前記チャックにより前記シャフトを把持するステップと、
前記チャックに把持されたシャフトがその回転方向におる第1の姿勢であるときに前記チャックの位相値を検出するステップと、
前記加工ユニットにより前記位置基準部を形成するのに適した前記シャフトの第2の姿勢に対応する前記チャックの第2の位相値を決定するステップと、
前記チャックの位相値が前記第2の位相値になるまで前記チャックの第1の回転割出しを行なって、前記チャックに把持されたシャフトを前記第2の姿勢に設定するステップと、
前記チャックに把持されたシャフトが前記第2の姿勢で固定されるように前記チャックを固定し、その状態で、前記加工ユニットにより前記シャフトに前記位置基準部を形成するステップと、
前記位置基準部が形成された後、前記チャックの位相値が前記第1の位相値になるまで前記チャックの第2の回転割出しを行って、前記チャックに把持されたシャフトを前記第1の姿勢に戻すステップと、
前記第1の姿勢に戻ったシャフトを、前記チャックから外して搬出するステップと
を有する位相基準部加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、クランクシャフトまたはカムシャフトなどのシャフトを加工する装置及び方法に関わり、特に、シャフトの中心軸回りの回転位置(位相)の基準として使用される部位(以下、「位相基準部」という)を、そのシャフトに形成するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトまたはカムシャフトなどのシャフトを加工する場合、そのシャフトのジャーナルやカムなどを加工する前に、ジャーナルやカムの回転方向の位置の基準となる位相基準部をそのシャフトに形成する工程が行われる。例えば、クランクシャフトの場合、ピンジャーナルを荒加工する前に、特定のカウンタウェイトの側面に平面状の位相基準部(以下、「位相基準面」という)が形成される。因みに、位相基準部の形状は、平面だけに限らず、溝または穴などの他の形状の場合もある。
【0003】
一般に、ジャーナルの加工と、位相基準面の加工には、それぞれ異なる加工装置が使用される。例えば、特開2001−293607号公報(特許文献1)に開示された、位相基準部を加工する装置は、ジャーナルの荒加工を行なう装置の前工程の位置に配置される。そして、位相基準部加工装置での加工の終わったシャフトは、オートローダによって、位相基準部加工装置からジャーナル加工装置へと搬送されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−293607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位相基準部加工装置からシャフトを搬出する時のシャフトの姿勢(中心軸回りの回転位置)は、ジャーナル加工装置へシャフトを搬入する時の姿勢と同じに設定されているのが通常である。そうでないと、位相基準部加工装置からジャーナル加工装置へとシャフトを移送する際に、シャフトの姿勢を調整する面倒があるからである。ジャーナル加工装置への搬入時のシャフトの姿勢は、シャフトの仕様やジャーナル加工装置などにより、予め決められているので、位相基準部加工装置は、その決められた姿勢でシャフトを搬出できるように構成される。
【0006】
従来の位相基準部加工装置では、シャフトの搬入、加工および搬出の全工程を通じて、シャフトの姿勢は不変である。つまり、ジャーナル加工装置への搬入時と同じ姿勢にシャフトが固定された状態で、位相基準部を形成するための加工が行なわれる。このように加工中のシャフトの姿勢が一つに決められているため、位相基準部を形成することが可能なシャフト上の箇所も自ずと限定される。
【0007】
ところが、シャフト上の位相基準部として最適な部位は、シャフトの仕様やジャーナル加工装置の仕様に応じて異なってくる。そのため、上述した事情から、シャフトやジャーナル加工装置の仕様毎に、その仕様専用に構成された位相基準部加工装置を設置しなければならない。
【0008】
従って、本発明の目的は、異なる仕様のシャフトやジャーナル加工装置に適用可能な汎用性の高い位相基準部加工装置を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、シャフト上の異なる箇所に位相基準部を形成することができるとともに、予め定められた一つの姿勢でシャフトを搬出することが可能な位相基準部加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う位相基準部加工装置は、シャフトの第1部位に対して回転方向で位置合わせされた状態で前記シャフトを把持し、前記把持したシャフトの回転軸回りに回転可能であり、且つ、任意の回転位置にて固定可能であるチャックと、前記チャックに把持されたシャフトに対して所定の位置関係で配置され、前記チャックに把持されたシャフトに位相基準部を形成するための加工を施す加工ユニットと、前記チャックの回転割出しと前記加工ユニットの加工動作を制御する制御ユニットとを備える。前記制御ユニットは、前記チャックにより把持されたシャフトがその回転方向におる第1の姿勢であるときの前記チャックの位相値を検出する第1位相値検出手段と、前記シャフトの前記第1部位と前記シャフトに形成予定の位相基準部との間の位置関係を定義したデータに基づいて、前記加工ユニットにより前記位置基準部を形成するのに適した前記シャフトの第2の姿勢に対応する前記チャックの第2の位相値を決定する第2位相値決定手段と、前記チャックの位相値が前記第2の位相値になるまで前記チャックの第1の回転割出しを行ない、それにより、前記チャックに把持されたシャフトを前記第2の姿勢に設定する第1回転割出手段と、前記チャックに把持されたシャフトが前記第2の姿勢で固定されるように前記チャックを固定し、その状態で、前記シャフトに前記位置基準部を形成するように前記加工ユニットを駆動し制御する加工制御手段と、前記位置基準部が形成された後、前記チャックの位相値が前記第1の位相値になるまで前記チャックの第2の回転割出しを行って、それにより、前記チャックに把持されたシャフトを前記第1の姿勢に戻す第2回転割出手段とを備える。
【0011】
この位相基準部加工装置によれば、チャックがシャフトの或る部位(第1部位)に位置合わせされた状態で、シャフトがチャックに把持される。そして、チャックに把持されたシャフトが或る姿勢(第1姿勢)になっているとき、チャックの位相値(第1位相値)が検出される。その後、シャフトに形成予定の位相基準部とシャフトの上記第1部位との位置関係を定義したデータに基づいて、加工ユニットによりシャフトにその位相基準部を形成するのに適したシャフトの姿勢(第2姿勢)に対応するチャックの位相値(第2位相値)が決定される。そして、チャックの位相値がその第2位相値になるまでチャックの回転割出しが行われる。シャフトが第2姿勢になった状態でチャックが固定され、その状態で、加工ユニットにより位相基準部を形成するための加工がシャフトに加えられる。この加工が終わると、チャックの位相値が上記第1位相値になるまでチャックの回転割出しが行われて、シャフトの姿勢が第1姿勢に戻される。従って、シャフトのどの箇所にも位相基準部を形成できると共に、位相基準部を形成した後は、シャフトを第1姿勢(例えば、次の工程への搬入姿勢)に戻すことができる。
【0012】
好適な実施形態では、この位相基準部加工装置は、前記シャフトの前記第1部位とは別の第2部位の、前記チャックの位相座標系の下での位相値を測定する手段を更に備え、前記制御ユニットの前記第2位相値決定手段は、測定された前記第2部位の位相値と、前記第2部位と前記形成予定の位相基準部との間の位置関係を定義したデータとに基づいて、前記第2の位相値を決定するようになっている。この構成によれば、位相基準部の位置を決定する基準となるシャフトの部位として、チャックが位置合わせされた部位(第1部位)ではなく、それとは別の部位(第2部位)が指定されている場合にも、その第2部位を基準にして位相基準部を加工するのに適したシャフトの姿勢を割出すことができる。
【0013】
本発明に従う位相基準部加工方法は、シャフトの第1部位に対して回転方向で位置合わせされた状態で前記シャフトを把持し、前記把持したシャフトの回転軸回りに回転可能であり、且つ、任意の回転位置にて固定可能であるチャックと、前記チャックに把持されたシャフトに位相基準部を形成するための加工を行なう加工ユニットと、前記チャックの回転割出しと前記加工ユニットの加工動作を制御する制御ユニットとを備えた位相基準部加工装置を用いて、前記シャフトに位相基準部を形成するための加工を行なう方法であって、前記チャックにより前記シャフトを把持するステップと、前記チャックに把持されたシャフトがその回転方向におる第1の姿勢であるときに前記チャックの位相値を検出するステップと、前記加工ユニットにより前記位置基準部を形成するのに適した前記シャフトの第2の姿勢に対応する前記チャックの第2の位相値を決定するステップと、前記チャックの位相値が前記第2の位相値になるまで前記チャックの第1の回転割出しを行なって、前記チャックに把持されたシャフトを前記第2の姿勢に設定するステップと、前記チャックに把持されたシャフトが前記第2の姿勢で固定されるように前記チャックを固定し、その状態で、前記加工ユニットにより前記シャフトに前記位置基準部を形成するステップと、前記位置基準部が形成された後、前記チャックの位相値が前記第1の位相値になるまで前記チャックの第2の回転割出しを行って、前記チャックに把持されたシャフトを前記第1の姿勢に戻すステップと、前記第1の姿勢に戻ったシャフトを、前記チャックから外して搬出するステップとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャフト上の異なる箇所に位相基準部を形成することができるとともに、予め定められた一つの姿勢でシャフトを搬出することが可能であり、従って、異なる仕様のシャフトやジャーナル加工装置に適用可能な汎用性の高い位相基準部加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる位相基準部加工装置の平面図であり、図2は、その正面図である。
【0017】
図1と図2に示された位相基準部加工装置100は、一種のフライス盤であり、クランクシャフトに位相基準面を形成するために使用される。この位相基準部加工装置100は、クランクシャフトのピンジャーナルに荒加工を施すためのクランクシャフトミラー(図示せず)の近くに配置される。この位相基準部加工装置100と上記クランクシャフトミラーには、共通のオートローダ(図示せず)により、クランクシャフトを搬入したり搬出したりすることができるようになっている。
【0018】
この位相基準部加工装置100は、基台102と、チャック104と、テールストック106と、フライス加工ユニット108と、油圧ユニット114と、NC(数値制御)制御ユニット116とを備える。チャック104とテールストック106は、加工対象であるクランクシャフト300をクランプするためのものである。フライス加工ユニット108は、チャック104とテールストック106間にクランプされたクランクシャフト300の特定箇所、典型的にはカウンタウェイトの側面、を削って、そこに平面形状の位相基準部(位相基準面)を形成するためのものである。油圧ユニット114は、フライス加工ユニット108などに、作動油圧を供給するものである。NC制御ユニット116は、所定の位相座標系の下でのチャック104の回転位置(位相)の値(位相値)を常に把握し、NCによりチャック104の回転位置の割出し(回転割出し)を制御し、また、フライス加工ユニット108を制御し、NCによりフライス加工ユニット108の割出し加工時の送り量などを制御するものである。さらに、図示してないが、作業者200の立位置に場所に、作業者200がNC制御ユニット116を操作するための操作盤が配置される。
【0019】
チャック104とテールストック106は、作業者200の立位置に近い基台102上の場所に設置される。チャック104とテールストック106は、それぞれ、クランクシャフトをクランプしたりクランプ状態を解除したりするために、クランプしたクランクシャフト300の中心軸に沿った方向に移動可能になっている。
【0020】
チャック104は、NC制御ユニット116の制御の下で、自動的に回転駆動可能であり、NCにより回転割出しを行うことができ、かつ、割出された任意の位相にて強固に固定されることもできるようになっている。チャック104は、3つのチャック爪110と1対の位相爪112とを有する。3つのチャック爪110は、チャック104の回転軸とクランクシャフト300の回転軸とを位置的に一致させた状態で、クランクシャフト300のリアフランジ302又はリア側のメインジャーナル304(若しくはフロント側のメインジャーナル316)を把持するためのものである。また、位相爪112は、クランクシャフト300の或る一つのピンジャーナル(例えば、ピンジャーナル308)を把持して、チャック104が回転するときチャック104に対するクランクシャフト300の空回りを防止し、そして、それがクランプしたピンジャーナルに対してチャック104を、回転方向において位置合わせする役割をもつ。テールストック106は、クランクシャフト300のチャック104に把持された側とは逆側の端部を、その端面のセンタ穴318にて回動可能に支持するものである。
【0021】
フライス加工ユニット108は、チャック104とテールストック106間にクランプされたクランクシャフト300から見て、作業者200の立位置とは反対側の基台102上の場所に配置される。従って、フライス加工ユニット108は、クランクシャフト300の作業者200の立位置とは反対側の片側面だけを加工することができる。フライス加工ユニット108は、チャック104とテールストック106間にクランプされたクランクシャフト300の回転軸と平行な方向に移動可能になっている。
【0022】
さらに、図2に示されるように、チャック104とテールストック106間にクランプされたクランクシャフト300の回転軸のちょうど直下に位置する基台102上の場所に、位相センサ118が配置されている。位相センサ118は、クランクシャフト300の或る1つのピンジャーナル312の位相を測定するために用いられるものである。位相センサ118は、例えば、これにピンジャーナル312が接触したか否かを検知できるように構成された接触センサである。位相センサ118を用いてピンジャーナル312の位相を測定する方法については、後に説明する。位相センサ118は、後に説明する基準ピンジャーナルの真下に配置される。加工対象となり得るクランクシャフト300上での基準ピンジャーナルの位置が一定である場合には、位相センサ118はその位置の真下に固定されていてもよいが、基準ピンジャーナルの位置が変わる可能性がある場合には、位相センサ118はクランクシャフト300の回転軸と平行に移動可能になっている。
【0023】
図3は、この実施形態にかかる位相基準部加工装置100を用いてクランクシャフトに位相基準面を形成するときの手順を示す。
【0024】
まず、図3に示すステップS1で、作業者200は、オートローダを用いて、加工対象のクランクシャフト300を位相基準部加工装置100に搬入し、そして、ステップS2で、作業者200は、チャック104とテールストック106を操作して、搬入されたクランクシャフト300をチャック104とテールストック106でクランプする。このとき、作業者200は、クランクシャフト300の位相基準面を形成する予定の箇所に近い方の端面のセンタ穴をテールストック106にセットし、その予定箇所から遠い方の端のメインジャーナル又はそのメインジャーナル上のフランジを、チャック104のチャック爪110でクランプする。さらに、作業者200は、クランクシャフト300の一つのピンジャーナル、典型的にはチャック104に最も近いピンジャーナルを、チャック104の位相爪112でクランプする。
【0025】
一般に、位相基準面を形成する箇所は、クランクシャフト300のフロント側かリア側の端部に最も近いカウンタウェイト314又は306の側面に選ばれることが多い。例えば、フロント側端部に最も近いカウンタウェイト314に位相基準面を形成する場合、作業者200は、図1、2に示されるように、クランクシャフト300のフロント側端面のセンタ穴318をテールストック106にセットし、リアフランジ302又はリア側のメインジャーナル304をチャック爪110でクランプし、そして、それに最も近いピンジャーナル308を、図4に示すようにして、位相爪112でクランプすることになる。他方、リア側端部に最も近いカウンタウェイト306の側面に位相基準面を形成する場合、作業者200は、図1、2とは逆に、フロント側のメインジャーナル316をチャック爪110でクランプし、それに最も近いピンジャーナル313を位相爪112でクランプすることになる。
【0026】
上記のようにステップS1でクランクシャフト300を搬入し、そしてステップS2でクランクシャフト300をチャック104とテールストック106でクランプする時、作業者200は、クランクシャフト300の姿勢(回転軸回りの回転方向の位置、つまり位相)を、そのクランクシャフト300をクランクシャフトミラーに搬入する時の姿勢と同一にしておく。この姿勢でクランクシャフト300をチャック104とテールストック106でクランプした状態で、ステップS3で、作業者200は、NC制御ユニット116を操作して、クランクシャフト300がクランクシャフトミラーへの搬入姿勢であるときのチャック104の位相値(換言すれば、クランプされたピンジャーナル308(例えばその中心軸)の、チャック104の位相座標系の下での位相値)を検出させ、その検出された位相値を、初期位相値として記憶させる。
【0027】
その後の手順は、位相爪112でクランプしたピンジャーナル308とは別の特定のピンジャーナルが基準ピンジャーナル(位相基準面の位置を決定するための基準として使用すべきピンジャーナル)として予め指定されているか否かにより異なる。位相爪112でクランプしたピンジャーナル308とは別のピンジャーナルが基準ピンジャーナルとして予め指定されている場合には、手順はステップS4とS5の流れに進む。他方、基準ピンジャーナルが特に指定されていない場合(或いは、位相爪112でクランプしたピンジャーナル308が基準ピンジャーナルとして指定されている場合)には、手順はステップS6に進む。
【0028】
ステップS4では、作業者200は、位相センサ118を、指定された基準ピンジャーナル、例えば図1の例ではピンジャーナル312、の下方に配置する。そして、作業者200は、NC制御ユニット116を操作して、図5に示すように、チャック104の一回転方向(例えば、時計回り)400へのNCによる回転割出しを行なって、基準ピンジャーナル312を位相センサ118に接触させる。NC制御ユニット116は、基準ピンジャーナル312との接触を示す位相センサ118からの信号に応答して、その接触時のチャック104の位相値を測定し記憶する。次に、作業者200は、NC制御ユニット116を操作して、図5に示すように、逆回転方向(例えば反時計回り)402へチャック104の回転割出しを行って、基準ピンジャーナル312を位相センサ118に接触させ、NC制御ユニット116は、その接触時のチャック104の位相値を測定する。
【0029】
このようにして測定された2回の接触時の位相値は、クランプされたピンジャーナル308(あるいはチャック104)と基準ピンジャーナル312との間の位相差、換言すれば、クランクシャフト300がクランクシャフトミラーへの搬入姿勢になっているときにおける基準ピンジャーナル312(例えばその中心軸)の位相値(チャック104の位相座標系の下での位相値)、を定義していることになる。従って、ステップS4で上記2回の接触時の位相値を測定したということは、実質的に、クランクシャフト300がクランクシャフトミラーへの搬入姿勢になっているときにおける基準ピンジャーナル312の位相値を測定したということを意味する。
【0030】
その後、ステップS5で、NC制御ユニット116は、ステップS4で測定された位相値と、基準ピンジャーナル312と形成予定の位相基準面との間の所定の位置関係を定義したデータ(これは、クランクシャフト300の設計仕様から予め決定されたデータであり、作業者200により予めNC制御ユニット116に入力される)とに基づいて、その位相基準面をフライス加工ユニット108で形成するためのクランクシャフト300の最適な姿勢(回転方向の位置)に対応するチャック104の位相値を計算する。ここで、ステップS4で測定された位相値は、前述したしたように、クランクシャフト300がクランクシャフトミラーへの搬入姿勢になっているときにおける基準ピンジャーナル312の位相値を定義しているデータであるから、このデータに、基準ピンジャーナル312と形成予定の位相基準面との間の所定の位置関係を定義したデータを加えることで、クランクシャフトミラーへの搬入時のクランクシャフト300の姿勢に対応したチャック104の位相値(つまり前記初期位相値)と、位相基準面をフライス加工ユニット108で加工するためのクランクシャフト300の最適な姿勢に対応したチャック104の位相値との間の関係(位相差)を定義したデータを得ることができる。ステップS5では、これらのデータに基づいて、位相基準面をフライス加工ユニット108で形成するためのクランクシャフト300の最適な姿勢に対応するチャック104の位相値が計算される。こうして計算された位相値の意味するところは、チャック104の位相値がその計算された位相値に一致するまでチャック104の回転割出しを行うと、クランクシャフト300の姿勢が、フライス加工ユニット108で位相基準面を加工するのに最適な姿勢になる、ということである。
【0031】
他方、ステップS6では、位相爪112でクランプしたピンジャーナル308が基準ピンジャーナルであるとみなされる。そのため、ステップS3で検出した初期位相値が、基準ピンジャーナル308の位相値に該当することになるので、上述したステップS4のような、基準ピンジャーナルの位相値を測定する作業は無用である。従って、ステップS6では、NC制御ユニット116は、クランプしたピンジャーナル308(あるいはチャック104)と形成予定の位相基準面との間の所定の位置関係を定義したデータ(これは、前述したように、クランクシャフト300の設計仕様から予め決定されたデータであり、作業者200により予めNC制御ユニット116に入力される)に基づいて、形成予定の位相基準面をフライス加工ユニット108で形成するためのクランクシャフト300の最適姿勢に対応するチャック104の位相値を計算する。こうして計算された位相値の意味するところは、ステップS5で計算された位相値と同様、チャック104の位相値がその計算された位相値に一致するまでチャック104の回転割出しを行うと、クランクシャフト300の姿勢が、フライス加工ユニット108で位相基準面を加工するのに最適な姿勢になる、ということである。
【0032】
上述したステップS5またはS6の後、ステップS7で、作業者200はNC制御ユニット116を操作して、チャック104の位相値がステップS5またはS6で計算された位相値に一致するまで、チャック104の回転割出しを行なう。その結果、クランクシャフト300の姿勢が、フライス加工ユニット108で位相基準面を加工するのに最適な姿勢に設定される。チャック104は、この位相値の位置で動かないように強固に固定される。
【0033】
その後、ステップS8で、作業者200は、NC制御ユニット116を操作して、フライス加工ユニット108を駆動し制御して、クランクシャフト300の位相基準面の予定形成箇所、例えば、フロント側端部に最も近いカウンタウェイト314の側面を削って、そこに位相基準面を形成する。
【0034】
位相基準面の加工が終わった後、ステップS9で、作業者200はNC制御ユニット116を操作して、チャック104の位相値がステップS3で記憶した初期位相値に一致するまで、チャック104の回転割出しを行なう。その結果、クランクシャフト300の姿勢は、最初にクランプされたときの姿勢、すなわち、クランクシャフトミラーへの搬入時の姿勢と同じ姿勢に戻る。
【0035】
その後、ステップS10で、作業者200は、オートローダでクランクシャフト300を掴み、チャック104とテールストック106によるクランプを解除し、オートローダによりクランクシャフト300をその姿勢を変えずに位相基準部形成装置100から搬出して、同じ姿勢でクランクシャフトミラーへ搬入する。
【0036】
以上説明したように、この実施形態にかかる位相基準部形成装置100は、クランクシャフトミラーへの搬入姿勢と同じ姿勢でクランクシャフト300をチャック104でクランプした時のチャック104の位相値を検出し、また、チャック104でクランプしたピンジャーナル308と形成予定の位相基準面との位置関係に基づいて、その位相基準面をフライス加工ユニット108で形成するのに適したクランクシャフト300の姿勢に対応するチャック104の位相値を決定して、その位相値に基づいてチャック104の回転割出しを行ってクランクシャフト300を上記加工に適した姿勢にし、その姿勢にクランクシャフト300を固定した状態で、クランクシャフト300に対し位相基準面を形成する加工を行ない、その後に、上記検出した位相値に基づいてチャック104の回転割出しを行って、クランクシャフト300を上記搬入時の姿勢と同じ姿勢に戻すように構成されている。そのため、形成予定の位相基準面がクランクシャフト300のどこに位置していても、その位相基準面を形成することができるとともに、クランクシャフトミラーへの搬入時の姿勢と同じ姿勢でクランクシャフト300を搬出することができる。例えば、実際には、位相基準面の形成予定箇所は、図6に例示する、端に最も近いカウンタウェイト314の側面の4箇所330,332、334および336のうちのいずれかであることが多く、いずれの箇所が選ばれるは、クランクシャフト300の仕様やクランクシャフトミラーの仕様により異なる。しかし、この位相基準部形成装置100によれば、図6に例示された箇所330,332、334および336のいずれが選ばれた場合であっても、その箇所に位相基準面を形成することが可能であるから、異なるクランクシャフトの仕様や異なるクランクシャフトミラーの仕様に広く適応することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。例えば、本発明は、クランクシャフト以外の種類のシャフトの位相基準部の加工にも適用できる。また、本発明にかかる位相基準加工装置のチャックには、特開2005−095996号公報に開示された発明にかかるチャックを用いることもでき、それにより、チャックによりクランプされるシャフトの部分が未加工状態であっても適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる位相基準部加工装置の平面図。
【図2】同位相基準部加工装置の正面図。
【図3】同位相基準部加工装置を用いてクランクシャフトに位相基準面を形成するときの手順を示すフローチャート。
【図4】チャックの位相爪でピンジャーナルをクランプした状態を示す、図2のA-A線に沿った断面図。
【図5】基準ピンジャーナルの位相を測定する方法を説明する、図2のB-B線に沿った断面図。
【図6】異なる箇所に位相基準面を形成できるという効果を説明する、図2のC-C線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0039】
100 位相基準部加工装置
100 位相基準部形成装置
102 基台
104 チャック
106 テールストック
108 フライス加工ユニット
110 チャック爪
112 位相爪
114 油圧ユニット
116 制御ユニット
118 位相センサ
200 作業者
300 クランクシャフト
302 リアフランジ
304 メインジャーナル
306 カウンタウェイト
308 ピンジャーナル
312 ピンジャーナル
313 ピンジャーナル
314 カウンタウェイト
316 メインジャーナル
318 センタ穴
330,332 位相基準面を形成できる箇所
【出願人】 【識別番号】394018524
【氏名又は名称】コマツ工機株式会社
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−18482(P2008−18482A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190854(P2006−190854)