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【発明の名称】 インサート着脱式球面カッタ及び球面カッタ用インサート
【発明者】 【氏名】滝口 正治

【氏名】田口 和孝

【要約】 【課題】押圧部材によってインサートを調整方向に向けて確実に押圧して円弧状切刃の位置を精度良く、かつ、簡単に調整することができるインサート着脱式球面カッタを提供する。

【構成】取付座22に円弧状切刃33の位置を調整する押圧部材26が備えられたインサート着脱式球面カッタ10であって、外形が多角形平板状をなして、2つの多角形面とこれら多角形面に交差する側面とを有し、一の多角形面がすくい面とされ、一の多角形面には、前記多角形面の外周側に向けて凸曲した円弧稜線部が形成され、該円弧稜線部に円弧状切刃33が設けられており、前記円弧稜線部に連なる側面32aが逃げ面とされるとともに、該逃げ面に対向する側に配置された側面32bには、押圧部材26の先端が挿入可能な切欠部34が形成され、切欠部34の底面部34aが前記押圧部材26に押圧される被押圧面とされていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状切刃を有する球面カッタ用インサートが装着され、前記円弧状切刃によってワークに設けられた空洞部に球面状の座ぐり部を形成するインサート着脱式球面カッタであって、
軸線を中心として回転される工具本体を有し、該工具本体には、前記軸線方向を向く端面に取付座が形成されるとともに、前記取付座に装着された前記球面カッタ用インサートを調整方向に押圧して前記円弧状切刃の位置を調整する押圧部材が設けられており、
前記球面カッタ用インサートは、その外形が多角形平板状をなして、2つの多角形面とこれら多角形面に交差する側面とを有し、一の多角形面がすくい面とされ、
前記一の多角形面には、前記多角形面の外周側に向けて凸曲した円弧稜線部が形成され、該円弧稜線部に円弧状切刃が設けられており、
前記円弧稜線部に連なる側面が逃げ面とされるとともに、該逃げ面に対向する側に配置された側面には、前記押圧部材の先端が挿入可能な切欠部が形成され、該切欠部の底面部が前記押圧部材に押圧される被押圧面とされていることを特徴とするインサート着脱式球面カッタ。
【請求項2】
前記取付座には、前記工具本体の径方向外側を向いて前記球面カッタ用インサートの前記逃げ面とされた側面と交差する他の側面が当接する壁面が形成され、前記球面カッタ用インサートは、前記被押圧面を介して前記押圧部材により、前記壁面と平行又は前記軸線方向外側に向けて前記壁面側に向かうように押圧されることを特徴とする請求項1に記載のインサート着脱式球面カッタ。
【請求項3】
前記取付座に装着された状態において、前記被押圧面に直交する直線と前記軸線とがなす角度αが、0°≦α≦5°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート着脱式球面カッタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたインサート着脱式球面カッタに装着される球面カッタ用インサートであって、
外形が多角形平板状をなして、2つの多角形面とこれら多角形面に交差する側面とを有し、一の多角形面がすくい面とされ、
前記一の多角形面には、前記多角形面の外周側に向けて凸曲した円弧稜線部が形成され、該円弧稜線部に円弧状切刃が設けられており、
前記円弧稜線部に連なる側面が逃げ面とされるとともに、該逃げ面に対向する側に配置された側面には、前記押圧部材の先端が挿入可能な切欠部が形成され、該切欠部の底面部が前記押圧部材に押圧される被押圧面とされていることを特徴とする球面カッタ用インサート。
【請求項5】
前記多角形面に、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通される挿通孔が開口されるとともに、前記当接面が当接されるクランプ面が形成されており、
前記クランプ面は、前記挿通孔の軸線に直交する平面に対して、前記切刃に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜させられていることを特徴とする請求項4に記載の球面カッタ用インサート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに球面状の座ぐり部を形成する際に使用されるインサート着脱式球面カッタ及び球面カッタ用インサートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成された空洞部の内面に球面状の座ぐり部を形成する球面カッタとしては、軸線に沿って延びる概略円柱状をなす工具本体の軸線方向両端面が凸曲面状に形成され、この両端面にそれぞれ複数の凹部が周方向に間隔を開けて配置され、これら凹部の工具回転方向前方側を向く壁面には、円弧状の切刃を備えた切刃チップが、その切刃を端面から突出させた状態でろう付けされたものが広く提供されている。
【0003】
ここで、これらの切刃は、切刃チップをろう付けした状態で各端面ごとに研磨することにより、それぞれの端面において工具本体の軸線上に中心を有して前記端面よりも僅かに半径の大きな球面上に位置するように形成されている。
また、工具本体には軸線に沿うように延びる取付孔が、両端面に開口するように形成されており、この取付孔の軸線方向内側部分は、その断面が前記軸線を中心とした正方形状に形成されている。
【0004】
このような球面カッタは、ワークに形成された空洞部に収容された状態で、この空洞部に連通するように前記ワークに同軸に形成された一対の挿入孔を通じて、外側から工作機械の一対のアーバをそれぞれ挿入し、これらアーバの先端を前記軸線方向両側から取付孔に取り付けることにより、このアーバを介して軸線回りに回転させられる。そして、このように工具本体を回転しつつアーバを軸線方向両側に工具本体と一体にして往復移動させるように送りを与えることにより、前記空洞部の内面の前記挿入孔の周りに、各挿入孔側を向く工具本体の端面にろう付けされた切刃チップの切刃によって軸線上に中心を有する凹球面状の座ぐり部を形成する。ここで、アーバによる送り量を調整することで空洞部内面に形成される座ぐり部がなす凹球面の中心を一致させることにより、1つの球面に沿うように凹曲する座ぐり部を空洞部内面の両端に形成するものである。
【0005】
しかしながら、この構成の球面カッタにおいては、切刃チップが工具本体にろう付けされているので、切刃に摩耗が生じた場合に通常のろう付け工具のように切刃を再研磨することになる。ここで切刃がなす円弧の径を一定にしたままで切刃を再研磨すると、円弧の中心が軸線方向にずれることになるため、切刃を再研磨した球面カッタにおいては、その軸線方向の送り量を変更する必要がある。したがって、送り量の設定ミスや切刃位置の測定誤差等によって球面座ぐり部を精度良く形成できなくなるおそれがあった。また、工具本体と切刃とがろう付けによって一体に形成されているので、被切削材によって切刃の材質を変更しようとする場合には、球面カッタ自体を交換することになり、被切削材に合わせて多くの球面カッタを準備する必要があり、球面カッタの使用コストが増大してしまうといった問題があった。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に示すように、工具本体の端面に取付座が形成され、該取付座に切刃を備えたインサートが着脱可能に装着されたインサート着脱式球面カッタが提供されている。
このインサート着脱式球面カッタは、軸線回りに回転される工具本体を有し、該工具本体の軸線方向両端面にそれぞれ複数の凹部が形成され、これら凹部の工具回転方向後方側に取付座が設けられている。
【0007】
取付座の工具回転方向前方側を向く壁面の軸線方向内側部分には、前記壁面に直交する方向に延びる収容孔が穿設されていて、この収容孔には、インサートの切刃の位置を調整する位置調整機構として、先端に押圧面を有する押圧ピンと該押圧ピンを押圧する調整ネジとが収容されている。
また、取付座の工具回転方向前方側を向く壁面には、インサートを固定するためのクランプネジが螺着されるクランプネジ孔が、前記収容孔と平行に延びるように形成されている。
【0008】
この取付座に装着される従来のインサートは、例えば超硬合金等の硬質材料によって構成され、概略四角形平板状をなしており、2つの四角形面とこれら四角形面に交差する4つの側面とを有する。一の四角形面が工具回転方向前方側に向けられるすくい面とされていて、このすくい面とされた四角形面の一辺が外側に向けて円弧状に突出されて円弧状切刃が設けられている。また、この切刃に連なる側面が逃げ面とされ、この逃げ面と反対に位置する側面に被押圧面が形成されている。また、四角形面にはクランプネジが挿通される挿通孔が穿設されている。
【0009】
インサートは、すくい面とされた一の四角形面が工具回転方向前方側を向くように、かつ、前記被押圧面が軸線方向内側を向くようにして取付座に載置され、円弧状切刃が工具本体の端面から軸線方向外側に向くように配置される。この状態で、挿通孔に挿通されたクランプネジがクランプネジ孔に螺着され、インサートが取付座に装着される。
ここで、前記被押圧面には、収容孔に収容された押圧ピンの押圧面が当接されていて、調整ネジをねじ込むことで押圧面が被押圧面を押圧して、インサートを軸線方向外側へ移動して円弧状切刃の位置調整を行うことができるように構成されている。
【0010】
この球面カッタでは、切刃が摩耗してもインサートを交換して使用できるので、切刃がなす円弧の中心を一定にすることができ、球面カッタ毎に送り量を調整する必要がない。さらに、被切削材によって切刃の材質を変更しようとする場合には、インサートを交換するだけで対応でき、多くの工具本体を準備する必要がなく、球面カッタの使用コストを大幅に低減できる。また、インサートを押圧して切刃の位置を調整することができるので、切刃が磨耗してインサートを交換した際にも、切刃を工具本体の軸線上に中心を有する球面上に位置するように配置することができる。
【特許文献1】特開2000−343316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述の球面カッタ用インサートにおいては、被押圧面は一様な平面状に形成されているので、インサートを押圧した際に押圧ピンの先端部分が被押圧面に沿って移動して、インサートを調整方向以外の方向に押圧してしまい、円弧状切刃の位置調整を精度良く行うことができないことがあった。
また、インサートを径方向外側に向けて押圧した場合には、インサートが取付座の工具本体径方向外側を向く壁面から離間することになり、切削時の切削抵抗によってインサートの位置ずれが生じるおそれがあった。
【0012】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、押圧部材によってインサートを調整方向に向けて確実に押圧して円弧状切刃の位置を精度良く、かつ、簡単に調整することができるインサート着脱式球面カッタ及び球面カッタ用インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するために、本発明に係るインサート着脱式球面カッタは、円弧状切刃を有する球面カッタ用インサートが装着され、前記円弧状切刃によってワークに設けられた空洞部に球面状の座ぐり部を形成するインサート着脱式球面カッタであって、軸線を中心として回転される工具本体を有し、該工具本体には、前記軸線方向を向く端面に取付座が形成されるとともに、前記取付座に装着された前記球面カッタ用インサートを調整方向に押圧して前記円弧状切刃の位置を調整する押圧部材が設けられており、前記球面カッタ用インサートは、その外形が多角形平板状をなして、2つの多角形面とこれら多角形面に交差する側面とを有し、一の多角形面がすくい面とされ、前記一の多角形面には、前記多角形面の外周側に向けて凸曲した円弧稜線部が形成され、該円弧稜線部に円弧状切刃が設けられており、前記円弧稜線部に連なる側面が逃げ面とされるとともに、該逃げ面に対向する側に配置された側面には、前記押圧部材の先端が挿入可能な切欠部が形成され、該切欠部の底面部が前記押圧部材に押圧される被押圧面とされていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る球面カッタ用インサートは、前述のインサート着脱式球面カッタに装着される球面カッタ用インサートであって、外形が多角形平板状をなして、2つの多角形面とこれら多角形面に交差する側面とを有し、一の多角形面がすくい面とされ、前記一の多角形面には、前記多角形面の外周側に向けて凸曲した円弧稜線部が形成され、該円弧稜線部に円弧状切刃が設けられており、前記円弧稜線部に連なる側面が逃げ面とされるとともに、該逃げ面に対向する側に配置された側面には、前記押圧部材の先端が挿入可能な切欠部が形成され、該切欠部の底面部が前記押圧部材に押圧される被押圧面とされていることを特徴としている。
【0015】
この構成のインサート着脱式球面カッタ及び球面カッタ用インサートによれば、球面カッタ用インサートの側面に、押圧部材の先端が挿入可能な切欠部が形成されているので、押圧部材の先端が調整方向以外の方向に移動することなく、調整方向に向けて球面カッタ用インサートを確実に押圧することができ、円弧状切刃の位置調整を精度良く、かつ、簡単に行うことができる。
【0016】
ここで、前記取付座に、前記工具本体の径方向外側を向いて前記球面カッタ用インサートの前記逃げ面とされた側面と交差する他の側面が当接する壁面を形成し、前記球面カッタ用インサートを、前記被押圧面を介して前記押圧部材によって前記壁面と平行又は前記軸線方向外側に向けて前記壁面側に向かうように押圧するように構成することにより、球面カッタ用インサートを取付座の工具本体径方向外側を向く壁面に沿って移動することができる。
【0017】
また、前記取付座に装着された状態において、前記被押圧面に直交する直線と前記軸線とがなす角度αを、0°≦α≦5°の範囲内に設定することにより、押圧部材によって球面カッタ用インサートを押圧して軸線方向の位置調整を行う際に、球面カッタ用インサートが取付座の工具本体径方向外側を向く壁面から離間することを確実に防止できる。
【0018】
さらに、前記多角形面に、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通される挿通孔を開口するとともに、前記当接面が当接されるクランプ面を形成し、前記クランプ面を、前記挿通孔の軸線に直交する平面に対して前記切刃に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜することにより、クランプネジの当接面とクランプ面とが密着せず、切刃側部分において僅かな空隙が形成され、球面カッタ用インサートを押圧した際に、クランプネジが前記空隙部分だけ撓むように変形し易くなり、小さな押圧力でもインサートを確実に移動させて、円弧状切刃の位置調整をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、押圧部材によってインサートを調整方向に向けて確実に押圧して円弧状切刃の位置を精度良く、かつ、簡単に調整することができるインサート着脱式球面カッタ及び球面カッタ用インサートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして説明する。図1から図5にインサート着脱式球面カッタを、図6及び図7に、本発明の実施形態である球面カッタ用インサートを示す。
このインサート着脱式球面カッタ10は、図2及び図3に示すように、軸線Oに沿って延びる概略円柱状をなす工具本体11を有し、この工具本体11は、軸線O方向中央に位置して該軸線Oに対して直交する方向に延びる仮想平面Qに対して対称形となるように形成されている。
【0021】
工具本体11の軸線O方向中央部には、径方向内側に一段凹んだ凹溝12が工具本体11の全周にわたって形成されており、この凹溝12には、軸線Oと平行に延びる一対の平坦面13、13が互いに平行に配置されている。
この凹溝12を挟んだ工具本体11の両端部14、14は、その端面15がそれぞれ前記軸線O上に中心P(P´)を有する凸曲面状に形成されるとともに、これら両端部14、14の外周面にも、それぞれ前記平坦面13、13と平行な一対ずつの平面部16、16が形成されている。
なお、一方側(図2において右側)を向く端面15がなす球面の中心Pは前記仮想平面Qよりも他方側に位置するとともに、他方側(図2において左側)を向く端面15がなす球面の中心P´は前記仮想平面Qよりも一方側に位置しており、この工具本体11の軸線O方向長さは、端面15がなす球面の直径よりも小さく設定されている。
【0022】
そして、これら両端部14、14には、軸線Oに沿って延びる取付孔17がそれぞれの端面15に向けて開口するように形成されている。この取付孔17には、その端面15側の開口部分に、軸線O方向内側に向かうにしたがい軸線Oを中心に漸次縮径するテーパ孔部18が形成されるとともに、軸線O方向内側に断面正方形状の角孔部19が形成されている。また、端面15における取付孔17の開口縁、すなわち球面状をなす端面15と取付孔17の前記テーパ孔部18との交差稜線部には、軸線Oに垂直に面取りが施されることによって環状平面部20が形成されている。
【0023】
また、両端部14、14には、それぞれに前記端面15に向けて開口する一対の凹部21、21が軸線Oを中心として180°回転対称となるように形成されている。
この凹部21の工具回転方向T前方側を向く壁面には、後述する球面カッタ用インサート30を装着するための取付座22が形成されている。この取付座22は、凹部21の工具回転方向T前方側を向く壁面から工具回転方向T後方側に向けて一段凹んで工具本体11径方向外側及び軸線O方向外側に向けて開口させられている。
【0024】
取付座22の軸線O方向外側を向く壁面22aは、図2に示すように、工具本体11径方向外側に向かうにしたがい漸次軸線O方向内側に向けて後退するように傾斜させられている。また、取付座22の工具本体11径方向外側を向く壁面22bは、軸線Oと平行に延びるように配置されている。
さらに、取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cには、この壁面22cに直交するように延びるクランプネジ孔27が穿設されている。
【0025】
そして、取付座22の軸線O方向内側には、図2及び図3に示すように、取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cに対して交差する方向に延びる2つの収容孔23、23が並列するように穿設されている。これら2つの収容孔23、23は、一方が取付座22の工具本体11径方向外側を向く壁面22b近傍に配置され、他方が取付座22の工具本体11径方向外側部分に配置されていて、工具本体11径方向において2つの収容孔23、23の間に前記クランプネジ孔27が位置するように構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態においては、これらの収容孔23、23は、軸線Oに対向する側から見て図3に示すように、軸線O方向内側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T前方側に向かうように延びて、取付座22の軸線O方向内側に位置する端部14の工具回転方向T前方側を向く部分に開口するように穿設されている。
さらに、これらの収容孔23、23は、取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cに対向する側から見て、図1及び図2に示すように、軸線O方向外側に向かうにしたがい漸次軸線Oに近接するように形成されている。
【0027】
この収容孔23には、図4に示すように、その取付座22側に押圧ピン24が配置されるとともに、押圧ピン24の後端側に調整ネジ25が螺着されている。押圧ピン24の先端には、押圧ピン24の軸線に対して傾斜した傾斜平面が形成されており、この傾斜平面が後述する球面カッタ用インサート30に当接される押圧面24aとされている。つまり、この押圧ピン24は、軸線O方向外側に向かうにしたがい漸次軸線Oに近接する方向に向けて移動可能とされているのである。なお、本実施形態においては、これら押圧ピン24及び調整ネジ25が、インサート着脱式球面カッタ10に備えられた円弧状切刃33の位置を調整する押圧部材26とされている。
【0028】
次に、前記取付座22に着脱可能に装着される球面カッタ用インサート30について説明する。この球面カッタ用インサート30は、超硬合金等の硬質材料で構成されて外形が概略四角形平板状をなし、本実施形態においては、図6に示すように、概略平方四辺形平板状をなしており、2つの平行四辺形面31と4つの側面32とを有し、一の平行四辺形面31が工具回転方向T前方側に向けられてすくい面31aとされ、他の平行四辺形面31が取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cに対向配置される載置面31bとされている。
【0029】
すくい面31aとされる一の平行四辺形面31は、2つの短辺と2つの長辺とを有し、一の長辺が、平行四辺形の外周側に向けて凸となる凸円弧状に形成されており、この一の長辺部分に円弧状切刃33が設けられている。この円弧状切刃33に連なる側面32は逃げ面32aとされ、外周側に向けて凸となる凸曲面状をなすとともに、載置面31bに近づくにしたがい平行四辺形面31の内周側に後退するように傾斜させられている。
【0030】
他の長辺に連なる側面32b、つまり、前記逃げ面32aとされた側面とは反対側を向く側面32bには、前記取付座22に備えられた2つの押圧ピン24の先端部がそれぞれ挿入可能な一対の切欠部34、34が形成されている。これらの切欠部34、34は、図1及び図6に示すように、すくい面31aとされた一の平行四辺形面31に対向する側から見て、互いに直交する底面部34aと側壁部34bとを有して概略L字状をなしていて、側壁部34bが、底面部34aに直交する直線に対して平行に延びるように配置されている。
【0031】
この切欠部34の底面部34aが、前記押圧ピン24の押圧面24aに当接される被押圧面とされており、本実施形態では、この球面カッタ用インサート30を取付座22に装着した状態において、図1に示すように、切欠部34の底面部34a(被押圧面)に直交する直線と軸線Oとが交差する交差角αは、0°≦α≦5°の範囲内に設定され、さらに具体的には、α=3°とされている。つまり、切欠部34の底面部34a(被押圧面)に直交する直線は、軸線O方向外側に向かうにしたがい漸次軸線Oに近づくように軸線Oに対して斜交させられているのである。
【0032】
また、平行四辺形面31の中央部には、この球面カッタ用インサート30の厚さ方向に貫通して中心軸Lに沿って延びる挿通孔35が穿設されている。この挿通孔35の一の平行四辺形面31(すくい面31a)側開口部近傍には、上面視して図6に示すように、概略正方形をなすクランプ面36が形成されていて、このクランプ面36は、円弧状切刃33に近づくにしたがい漸次すくい面31aから後退するように傾斜させられている。本実施形態においては、クランプ面36は、前記挿通孔35の中心軸Lに対して直交する平面と交差角度θで交差するように形成されていて、前記交差角度θが0°10´≦θ≦15°となるように設定され、より具体的には、θ=3°に設定されている。
【0033】
球面カッタ用インサート30を取付座22に装着するためのクランプネジ40は、図5に示すように、中心軸Mに沿って延びる概略円柱状をなす軸部41とこの軸部41と同軸状に配置された頭部42とを備えていて、軸部41の外周面に雄ネジが形成されている。頭部42の軸部41側の面は、前記軸部41の中心軸Mに対して直交する方向に延びる平面状に形成されていて、球面カッタ用インサート30に当接される当接面42aとされている。
【0034】
このような球面カッタ用インサート30は、工具本体11の取付座22に、次のようにして装着されてインサート着脱式球面カッタ10が構成される。
球面カッタ用インサート30は、取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cに載置面31bが当接するように載置される。ここで、逃げ面32aとは反対側を向く側面32bは、取付座22の軸線O方向外側を向く壁面22bに対向配置され、前記円弧状切刃33が軸線O方向外側を向くように配置される。
【0035】
球面カッタ用インサート30の逃げ面32aとは反対側を向く側面32bに形成された切欠部34には、収容孔23に収容された押圧ピン24の先端部が挿入され、この押圧ピン24の押圧面24aが切欠部34の底面部34a(被押圧面)に当接されている。
このように球面カッタ用インサート30が取付座22に載置された状態で、挿通孔35にクランプネジ40を挿通させて取付座22の工具回転方向T前方側を向く壁面22cに穿設されたクランプネジ孔27に螺着する。すると、クランプネジ40の当接面42aが球面カッタ用インサート30のクランプ面36を取付座22側へと押圧し、球面カッタ用インサート30が取付座22に固定される。
【0036】
ここで、同じ側を向く端面15に形成された2つの取付座22、22に装着された球面カッタ用インサート30は、互いの球面カッタ用インサート30のすくい面31aが軸線Oを通る仮想平面S上に位置するように配置されるとともに、これら球面カッタ用インサート30に形成された円弧状切刃33の軸線Oを中心とした回転軌跡が、前記中心P(P´)を中心として前記端面15よりも一段半径の大きな一の球面R(R´)をなすように配置されることになる。
【0037】
このような構成とされたインサート着脱式球面カッタ10においては、調整ネジ25をねじ込むことで押圧ピン24が取付座22側に向けて移動して押圧面24aが球面カッタ用インサート30の被押圧面(切欠部34の底面部34a)を押圧して、球面カッタ用インサート30が軸線O方向外側に向けて移動し、円弧状切刃33の位置が調整される。
【0038】
このインサート着脱式球面カッタ10では、前述のようにして円弧状切刃33の位置を調整して、同じ端面15側の取付座22に装着された2つの球面カッタ用インサート30、30の円弧状切刃33、33の位置が、軸線Oを中心とした回転軌跡において一致するように、つまり、前記中心P(P´)を中心とした球面R(R´)上に位置するように調整された状態で、図8に示す切削加工に供される。
【0039】
インサート着脱式球面カッタ10は、ワークWに形成された空洞部C内に収容され、この空洞部Cに挿通するようにワークWに同軸状に形成された一対の挿入孔H、Hに工作機械(図示なし)の一対のアーバA、Aをそれぞれ挿入して、これらのアーバA、Aの先端を前記軸線O方向外側から前記取付孔17に取り付けることにより支持される。ここで、このアーバAの先端には取付孔17の角孔部19に嵌合する断面正方形状のドライブ部Dが形成されるとともに、これよりも後端側には前記テーパ孔部18と等しいテーパ角で先端側に向けて縮径するテーパ部Eが形成されており、これらテーパ部Eとテーパ孔部18とを密着させることによって工具本体11の軸線OがアーバA、Aによる回転軸線に一致させられるとともに、角孔部19とドライブ部Dとの嵌合によって工具本体11がアーバA、Aと一体に前記工具回転方向Tに向けて回転される。
【0040】
工具本体11を軸線O回りに回転しつつ、前記アーバA、Aによってこれらと一体に軸線O方向両側に往復運動するように送りを与えることにより、ワークWの空洞部Cの内周の前記挿入孔H、Hの周辺に各挿入孔H側を向く端面15の取付座22に装着された球面カッタ用インサート30の円弧状切刃33によって、それぞれ軸線O上に中心P(P´)を有する球面R(R´)と同径の凹球面状の座ぐり部F、Fが形成される。
【0041】
さらに、アーバA、Aによる工具本体11の往復運動の送り量を、個々の座ぐり部Fを形成する各端面15の取付座22に装着された球面カッタ用インサート30の円弧状切刃33の回転軌跡がなす球面R(R´)の中心P(P´)同士の位置が互いに一致するように設定することにより、空洞部Cの両端に形成されるこれら座ぐり部F、Fがなす凹球面を、1つの球面Rに沿った凹球面とすることができるものである。
【0042】
本実施形態である球面カッタ用インサート30及びインサート着脱式球面カッタ10によれば、球面カッタ用インサート30の逃げ面32aとは反対側を向く側面32bに、押圧ピン24の先端部が挿入可能な切欠部34が形成されているので、押圧ピン24の先端部が切欠部34に案内されて調整方向以外の方向に移動することがなくなり、球面カッタ用インサート30を調整方向に向けて確実に押圧することができ、円弧状切刃33の位置調整を精度良く行うことができる。
【0043】
また、取付座22に装着された状態において、切欠部34の底面部34a(被押圧面)に直交する直線と軸線Oとがなす角度αが、0°≦α≦5°の範囲内に設定されているので、球面カッタ用インサート30が取付座22の工具本体11径方向外側を向く壁面22bから離間する方向に押圧されることがなく、円弧状切刃33の軸線O方向の調整を行うことができる。したがって、球面カッタ用インサート30を取付座22の工具本体11径方向外側を向く壁面22bに沿って軸線O方向に向けて移動させることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、前記角度がα=3°に設定されていて、切欠部34の底面部34a(被押圧面)に直交する直線は、軸線O方向外側に向かうにしたがい漸次軸線Oに近づくように軸線Oに対して斜交させられているので、球面カッタ用インサート30を取付座22の工具本体11径方向外側を向く壁面に向けて常に押圧した状態で円弧状切刃33の軸線O方向の調整を行うことができる。
【0045】
さらに、一の平行四辺形面31aには、軸部41と該軸部41に直交する当接面42aとを有するクランプネジ40が挿通される挿通孔35が開口させられるとともに、この挿通孔35の開口部周辺に、挿通孔35の軸線に直交する平面に対して円弧状切刃33に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜するクランプ面36が形成されているので、クランプネジ40の当接面42aとクランプ面36とが密着することがなくなり、円弧状切刃33側部分において僅かな空隙が形成される。したがって、球面カッタ用インサート30を押圧した際に、クランプネジ40が前記空隙部分だけ撓むように変形し易くなり、小さな押圧力でもインサートが確実に移動して円弧状切刃33の位置調整をスムーズに行うことができる。
【0046】
さらに、本実施形態においては、挿通孔35の中心軸に直交する平面とクランプ面36との交差角度θが、0°10´≦θ≦15°の範囲内に、より具体的には、θ=3°に設定されているので、クランプネジ40の当接面42aとクランプ面36との間の空隙が確実に形成されてクランプネジ40の変形量が確保されて円弧状切刃33の位置調整をスムーズに行うことができるとともに、当接面42aとクランプ面36との間の空隙が大きくなりすぎて球面カッタ用インサート30の固定が不十分となることを防止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態である球面カッタ用インサート及びインサート着脱式球面カッタについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、外形が概略平行四辺形平板状をなす球面カッタ用インサートとして説明したが、これに限定されることはなく、多角形平板状をなして円弧状切刃を備えたものであればよい。
【0048】
切欠部をすくい面に対向する側から見て概略L字状をなすように構成したもので説明したが、これに限定されることはなく、押圧部材の先端部が挿入可能であればよい。
また、底面部に直交する直線と軸線とがなす角度αを、0°≦α≦5°の範囲内に設定したものとして説明したが、これに限定されることはない。但し、本実施形態の範囲に設定することが、前述した効果を奏することができるので好ましい。
【0049】
また、クランプ面が挿通孔の中心軸に対して傾斜したものとして説明したが、クランプ面が挿通孔の軸線に対して直交するように構成されたものであっても良い。
さらに、球面カッタ用インサートをクランプネジで固定する構成のもので説明したが、クサビ部材を用いて固定したものであってもよい。
【0050】
また、取付座に、1方向に向けて球面カッタ用インサートを押圧する押圧部材を備えたものとして説明したが、2方向に向けて球面カッタ用インサートを押圧できるように、複数の押圧部材を配置してもよい。
さらに、収容孔を、軸線方向内側に向かうにしたがい漸次工具回転方向前方側に向かうように延びて、取付座の軸線方向内側に位置する端部の工具回転方向前方側を向く部分に開口するように穿設したものとして説明したが、これに限定されることはなく、軸線方向内側に向かうにしたがい漸次工具回転方向後方側に向かうように延びて端部の工具回転方向後方側を向く部分に開口するように穿設したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態であるインサート着脱式球面カッタの取付座を工具回転方向前方側から見た図である。
【図2】本発明の実施形態であるインサート着脱式球面カッタの側面図である。
【図3】図2に示すインサート着脱式球面カッタを軸線方向から見た図である。
【図4】取付座に設けられた押圧部材を示す説明図である。
【図5】取付座にインサートが装着された状態を示す説明図である
【図6】本発明の実施形態である球面カッタ用インサートの上面図である。
【図7】図6におけるW−W断面図である。
【図8】図2に示すインサート着脱式球面カッタによって球面座ぐり加工を行う様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
10 インサート着脱式球面カッタ
11 工具本体
22 取付座
26 押圧部材
30 球面カッタ用インサート
31 平行四辺形面(多角形面)
32 側面
32a 逃げ面
32b 逃げ面の反対側を向く側面
33 円弧状切刃
34 切欠部
34a 底面部(被押圧面)
40 クランプネジ
41 軸部
42a 当接面
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−6568(P2008−6568A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182263(P2006−182263)