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【発明の名称】 総形フライス
【発明者】 【氏名】山名 一夫

【氏名】山川 啓介

【氏名】北浦 精一郎

【要約】 【課題】刃部の逃げ面の加工時間を短縮し、かつチップポケットの断面積を大きくすることができる総形フライスを提供する。

【構成】切れ刃11に隣接する第一逃げ面13を回転軸に垂直な断面視で概略凸円弧16状に形成し、第一逃げ面13に隣接する第二逃げ面14を回転軸に垂直な断面視で直線状に形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体に設けられた複数の刃部の切れ刃の輪郭形状を、前記工具本体の回転軸の方向に向けて該回転軸に対する径方向に凹凸する形状とした総形フライスにおいて、前記切れ刃に隣接する第一逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で概略凸円弧状に形成し、前記第一逃げ面に隣接する第二逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で直線状に形成したことを特徴とする総形フライス。
【請求項2】
前記第二逃げ面の幅を前記刃部の刃幅の30〜50%に設定し、前記第二逃げ面の逃げ角を40°〜60°に設定したことを特徴とする請求項1に記載の総形フライス。
【請求項3】
前記第一逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で複数の直線を凸状に曲折するように連続させた概略凸円弧状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の総形フライス。
【請求項4】
前記切れ刃のねじれ角を15°〜35°に設定したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の総形フライス。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、工作物に特殊な形状の溝を切削加工するための回転切削工具である総形フライスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作物に曲線や直線を含む特殊な形状の溝を切削加工することができる総形フライスが知られている。この総形フライスとしては、例えば、タービンブレードを軸心に取付けるための逆クリスマスツリー形状の溝を切削加工するためのものが周知であり、例えば特許文献1には、刃部の逃げ面が外周の切れ刃の刃先径に拘らず、径寸法が一定の直線に対して略同じ大きさの逃げ角で略直線的に径寸法が小さくなるように定められており、軸心と直角な断面において逃げ面が円弧形状を形成しているものが提案されている。
また、特許文献2には逃げ面の面性状が外周切れ刃稜線に対し略平行に切れ刃稜線部から工具回転後方方向に砥石のピッチ送りによる複数の凸条痕を有し、且つ、工具軸直角断面視で近似凸円弧状の該複数の凸条痕部を頂点とする多段形状である総形フライスが提案されている。
【0003】
前者にあっては、逃げ面と加工面との間の隙間が刃先径の相違に拘らず略同じになるので、大径部における逃げ面と加工面との隙間を確保して切削性能を維持するとともに、刃部の断面積を確保して小径部の工具強度を保つことができる。
後者にあっては、凸条痕により、逃げ面と被削材との接触面積が小さくなり、且つ、切れ刃稜線上に段差や突起部が格段に小さくなり、減少する為、磨耗状態が均一で微小な擦れ磨耗であり、工具磨耗進行及び、チッピングや欠損を抑制でき、また、逃げ面と被削材との接触面積が小さいことから、切削抵抗を削減できる。
【特許文献1】特許3058856号公報
【特許文献2】特開2002−337017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の総形フライスは、刃幅全体に渡って円弧形状または近似凸円弧状の逃げ面を加工するため、刃部の加工に時間がかかるという課題があった。また、円弧形状または近似凸円弧状の逃げ面を加工するためには通常特許文献2による記載のように砥石による研磨が行われるが、特に上述のように逆クリスマスツリー形状の溝を加工するために切れ刃が径方向に凹凸しつつ先端側に向けて切れ刃の径が小さくなる場合には、砥石の径が外周の切れ刃の径と比較して大きくなる部分で、隣接する切れ刃が障害となって刃部の逃げ角を大きく加工することが困難である。このため、隣接する刃部の間に形成されるチップポケットの断面積も十分確保することができずに切りくず詰まりが生じる虞があるという課題がある。
【0005】
この発明は上記の事情を考慮してなされたもので、刃部の逃げ面の加工時間を短縮し、かつチップポケットの断面積を大きくすることができる総形フライスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、工具本体に設けられた複数の刃部の切れ刃の輪郭形状を、前記工具本体の回転軸の方向に向けて該回転軸対する径方向に凹凸する形状とした総形フライスにおいて、前記切れ刃に隣接する第一逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で概略凸円弧状に形成し、前記第一逃げ面に隣接する第二逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で直線状に形成したことを特徴とする。
なお、このような第二逃げ面は、例えば第一逃げ面の研磨加工に先立って、エンドミル加工を施すことにより形成することができる。
従って、このように構成することで、円弧形状に研磨された第一逃げ面の刃幅方向の幅を小さくすることができる。また、このように第一逃げ面の幅が小さいので、砥石の径が切れ刃の径と比較して大きくなる部分でも砥石が隣接する切れ刃と干渉することがなく、さらに第二逃げ面を直線としたことで、チップポケットの容量を大きくすることができる。
【0007】
ここで、本発明では、前記第二逃げ面の幅を前記刃部の刃幅の30〜50%に設定し、前記第二逃げ面の逃げ角を40°〜60°に設定することで概略円弧形状に研磨される第一逃げ面の刃幅方向の幅を小さくするとともに、チップポケットの容量を大きくしつつ、切削に必要な刃部の強度を維持することができる。
【0008】
このとき、たとえば特許文献2と同様に前記第一逃げ面を前記回転軸に垂直な断面視で複数の直線を凸状に曲折するように連続させた概略凸円弧状に形成してもよい。
【0009】
さらに、前記切れ刃のねじれ角を15°〜35°に設定することにより、切れ刃の特に径方向外周側に凸となる部分の先端側の切れ味を、切れ刃強度を損なうことなく鋭くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、凸円弧形状に研磨された第一逃げ面の刃幅方向の幅を小さくすることができるため、砥石による研削加工の面積が減少し、加工時間を短縮することができる。また、第二逃げ面の逃げ量及びチップポケットの容量を大きくすることができるため、切りくずの排出性能が向上し、切削性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、工具本体1の概略図及び直線A−Aに沿った回転軸2に垂直な断面図である。工具本体1の輪郭形状3は、例えばタービンブレード(不図示)を軸心に固定するための溝の形状を投影させたもので、回転軸2と垂直の工具本体1径方向に左右対称の凸部4と凹部5とが、工具本体1の基部6から先端7までの間の回転軸2方向で繰り返し形成されている。また、工具本体1の先端7に近づくにつれて凸部4と凹部5の径が徐々に小さくなる逆クリスマスツリー形状となっている。工具本体1の基部6にはシャンク8が設けられている。
【0012】
工具本体1の外周9には回転軸2を中心として8枚の刃部10が回転軸2に垂直な断面視で放射状に形成されている。工具本体1の輪郭形状3は外周9に位置する複数の刃部10に設けられた切れ刃11によって形成されている。また、切れ刃11のねじれ角12は回転軸2に対して15°〜30°の範囲で設定されている。さらに、周方向に隣接する刃部10の間には、凹形状のチップポケット33が切れ刃11と等しいねじれ角12で形成されている。
【0013】
図2に示すのは、回転軸2に垂直な断面における刃部10の拡大図である。刃部10には切れ刃11の工具回転方向R後方に隣接する第一逃げ面13と、第一逃げ面13のさらに工具回転方向R後方に隣接する第二逃げ面14とが形成されている。また、切れ刃11はすくい面15と第一逃げ面13との交線となっており、第二逃げ面14とチップポケット33との交線は刃部10の工具回転方向R後方のヒール22とされている。第一逃げ面13は工具本体1の回転軸2から偏心した中心を有する凸円弧16上に形成されている。
【0014】
そして、第一逃げ面13に隣接する第二逃げ面14は工具本体1の回転軸2に垂直な断面視で直線状に、第一逃げ面13の逃げ角17よりも逃げ角18を増加させて形成されている。また、第二逃げ面14の逃げ角18は40°〜60°に設定されている。従って、切れ刃11を通る経線19と第二逃げ面14とがなす角度20は30°〜50°となっている。また、第二逃げ面14の幅21は回転軸2に垂直な断面視で切れ刃11を通る経線19に垂直な方向に切れ刃11からヒール22までの刃幅23の30〜50%に設定されている。
【0015】
図3に示すのは、一枚の刃部10のねじれ角12を0°として、第一逃げ面13及び第二逃げ面14側から見た刃部10の概略投影図である。第一逃げ面13と第二逃げ面14は立体的な凹凸形状の工具本体1に形成されているため、第一逃げ面13と第二逃げ面14との交線24及びヒール22の形状は切れ刃11のフォームに略相似する形状となっている。
【0016】
総形フライスの製造時には、旋削によって加工された工具本体1の刃部10の切れ刃11から刃幅の50〜70%の位置からエンドミル(不図示)によって第二逃げ面14の三番取り加工を回転軸2に垂直な断面視で直線状に切削する。このとき、切削の角度20は第一逃げ面13の逃げ角17よりも第二逃げ面14の逃げ角18が大きくなるように、回転軸2と垂直な断面視で回転軸2と切れ刃11を結ぶ直線19に対して30°〜50°の範囲で設定する。
【0017】
次に概略凸円弧16状の第一逃げ面13の二番取り加工を砥石(不図示)による研磨加工によって形成する。このとき、図4に示すように数回の研磨加工を繰り返すことによって、複数の近似的な直線25,26,27を連続させ凸状に曲折させて近似的な凸円弧16形状としてもよい。なお、先に砥石によって第一逃げ面13を所定の幅で形成しておいてから第二逃げ面14を形成するようにしてもよい。
【0018】
ここで、エンドミルによる切削加工によって工具本体1の回転軸2に垂直な断面視で第二逃げ面14を直線状に加工したことで、従来の円弧形状の第二逃げ面28の加工において必要とされていた砥石による研磨加工が必要なくなる。したがって、二番取り加工における砥石による研磨加工の面積を減少させることができる。
【0019】
また、従来の砥石による研磨加工では、凸部4と凹部5の径が小さくなる工具本体1の先端7側のように砥石の径が工具本体1の径と比較して大きくなる部分では、隣接する刃部10の切れ刃11が障害となって第二逃げ面14の逃げ角18及び逃げ量30,31を大きくすることが困難であったが、径の小さいエンドミルを用いることによって隣接する刃部に干渉し難く、隣接する切れ刃が障害となり難い。
【0020】
また、第二逃げ面14を回転軸2に垂直な断面視で直線状に形成したことで、二番取り加工による第一逃げ面13をそのまま凸円弧16に沿って延長させたときの逃げ量30や、従来の三番取り加工による第二逃げ面28のように略凸円弧16上の第一逃げ面13からさらに後退する偏心した略凸円弧29上の第二逃げ面28を形成した場合の逃げ量31を比較しても、逃げ量32を大きくすることができる。
【0021】
また、第二逃げ面14を回転軸2に垂直な断面視で直線状に形成するときに、第二逃げ面14の幅21を刃幅23の30〜50%に設定し、第二逃げ面14の逃げ角18を40°〜60°に設定したことで、刃部10の断面積を確保して刃部10に必要な強度を維持しながら第二逃げ面14の逃げ量32を大きくすると同時に、チップポケット33の容量を大きくすることもできる。すなわち、刃幅23や逃げ角18がこれより大きいと刃部10の断面積が小さくなりすぎて、刃部10に欠損が生じたりする虞があり、逆にこれより小さいと十分な逃げ量32を確保できなくなる虞が生じる。
【0022】
さらに、被加工物(不図示)、例えばタービンブレードの溝の切削時には、工具本体1を回転させながら回転軸2と垂直方向に移動させて、切れ刃11を被加工物に切り込んでいくことで工具本体1の輪郭形状3が被加工物に転写され、被加工物に逆クリスマスツリー形状の溝が切削されるが、このとき切れ刃11のねじれ角12を15°〜30°の範囲に設定したことで、切れ刃11を被加工物に対して切れ味よく切り込むことができる。また、切削に関する切れ刃11の長さを長くすることができるので、切れ刃11の損耗を抑制することができる。このとき、15°より小さいねじれ角12では十分な効果を得ることができず、30°より大きいねじれ角12では、特に凸部4の先端7側の切れ刃11強度が損なわれる問題がある。
【0023】
したがって、上述の実施の形態によれば、第二逃げ面14を回転軸2に垂直な断面視で直線状に形成したことで砥石による研磨加工の面積を減少させるとともに、砥石による研磨加工と比較して加工時間が短いエンドミルを用いることにより、総形フライスの製作時間を短縮することができる。また、従来の二番取り加工及び三番取り加工を回転軸2から偏心した略凸円弧16,29状に形成した場合よりも第二逃げ面14の逃げ量32を大きくすることができる。従って、チップポケット33の容量を大きくすることができ、切りくずの詰まりを抑制することができるので、切削性能を向上させることができる。
【0024】
また、図4に示したように第一逃げ面13において数回の研磨加工を繰り返すことによって複数の近似的な直線25,26,27を連続させ、凸状に曲折させて近似的な凸円弧16形状とした場合には、工具磨耗の進行及びチッピングや欠損を抑制でき、また切削抵抗を削減できる。さらに、この場合には、第二逃げ面14を回転軸2に垂直な断面視で直線状に形成したことにより、図5に示すように近似的な直線27を形成する砥石の径による凸条痕34をそのまま延長させて凸円弧29上の第二逃げ面28に交差させたときに形成される頂点35の高さに対して、凸条痕34と第二逃げ面14との交線24の位置を内周側に低くすることができ、二番当たりを防止することができる。したがって、刃部10の欠けを防止して工具寿命を延長させることができるだけでなく、被加工物を傷つけずに精度よく加工することができる。
【0025】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、第一逃げ面を凸円弧状ではなく略直線状に加工してもよい。また、上記実施の形態では刃部を8枚設けてある場合について説明したが、刃部の枚数が異なる構成としてもよい。また総形フライスの輪郭形状における凹凸の数、形状が異なるものを用いてもよい。
また、ねじれ角の設定は等ねじれまたは等リードのどちらでもよい。等リードの場合のねじれ角設定外径は中間径が一般的であるが、任意の外径を基準にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態における総形フライスの工具本体概略図及び直線A−Aに沿った回転軸に垂直な断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における総形フライスの回転軸に垂直な断面における刃部の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態における総形フライスの一枚の刃部の全長をねじれ角を0として逃げ面側から見た刃部の概略投影図である。
【図4】本発明の実施の形態における変形例の総形フライスの回転軸に垂直な断面における第一逃げ面の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態における変形例の総形フライスの回転軸に垂直な断面における第一逃げ面と第二逃げ面の交線付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
1 工具本体
2 回転軸
3 輪郭形状
10 刃部
11 切れ刃
12 ねじれ角
13 第一逃げ面
14 第二逃げ面
16 凸円弧
18 第二逃げ面の逃げ角
21 第二逃げ面の幅
23 刃幅
25 直線
26 直線
27 直線

【出願人】 【識別番号】596091392
【氏名又は名称】三菱マテリアル神戸ツールズ株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−6564(P2008−6564A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182233(P2006−182233)