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【発明の名称】 切削インサートおよび転削工具
【発明者】 【氏名】石田 琢也

【要約】 【課題】切削抵抗を減少させるとともに、かかる切削抵抗に応じて切れ刃強度を向上させ、より厳しい切削条件下の重切削加工においても、加工中におけるびびり振動および切れ刃の欠損を抑制するとともに、優れた切り屑排出性を発揮することのできるプランジ加工用切削インサートを提供する。

【構成】略多角形板状をなし、上面にすくい面を、下面に着座面を、側面に逃げ面を具備するとともに、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に主切れ刃が形成され、かつ該主切れ刃が前記逃げ面上に形成された少なくとも1つの溝部によって分断された複数の分割主切れ刃からなる切削インサートであって、前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端を含む一端側分割主切れ刃と、前記主切れ刃の一端から離間する離間分割主切れ刃とからなり、該離間分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するよう形成されている切削インサートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略多角形板状をなし、
上面にすくい面を、下面に着座面を、側面に逃げ面を具備するとともに、
前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に主切れ刃が形成され、かつ該主切れ刃が前記逃げ面上に形成された少なくとも1つの溝部によって分断された複数の分割主切れ刃からなる切削インサートであって、
前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端を含む一端側分割主切れ刃と、前記主切れ刃の一端から離間する離間分割主切れ刃とからなり、
該離間分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するよう形成されていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
前記一端側分割主切れ刃は、隣接する前記離間分割主切れ刃の切れ刃長さと略同一となるよう形成されていることを特徴とする請求項1記載の切削インサート。
【請求項3】
前記溝部が複数形成されるとともに、該複数の溝部は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、インサート上面視における溝部の幅が漸次増加するよう形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の切削インサート。
【請求項4】
前記複数の溝部は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、インサート側面視における溝部の幅の最大幅が漸次増加するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の切削インサート。
【請求項5】
前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、前記着座面に近接するよう漸次傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の切削インサート。
【請求項6】
前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、すくい角が漸次増加するよう形成されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の切削インサート。
【請求項7】
前記各分割主切れ刃に対応して、前記すくい面上に少なくとも1つの突起部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の切削インサート。
【請求項8】
略円柱状をなすホルダと、
請求項1乃至7いずれか記載の切削インサートとを備え、
前記主切れ刃が前記ホルダの先端面側に位置するとともに、前記主切れ刃の一端が前記ホルダの外周側に位置するよう、前記切削インサートが前記ホルダに装着されていることを特徴とする転削工具。
【請求項9】
略円柱状をなす本体部と、
前記本体部の先端側に形成された先端刃とを備えた転削工具であって、
前記先端刃は、少なくとも1つの凹部で離間された複数の小切れ刃からなるとともに、
前記複数の小切れ刃は、前記本体部の外周に位置する外周側小切れ刃と、前記本体部の外周から離間する離間小切れ刃とからなり、
該離間小切れ刃は、前記本体部の外周側から内周側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するよう形成されていることを特徴とする転削工具。
【請求項10】
前記凹部が複数形成されるとともに、該複数の凹部は、本体部外周側から内周側に向かうにつれて、幅が漸次増加するよう形成されていることを特徴とする請求項9記載の転削工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートおよびそれを装着してなる転削工具、特にプランジ加工用工具に用いられる転削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の機械加工業界の動向として、切削作業の更なる高能率化を図るために、様々な工具が開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホルダに多くの切削インサートを装着してなるプランジ研削用フライスが開示されている。このようなプランジ研削用フライスは、切削インサート用ポケットを特定の形状とすることにより、ホルダにより多くの切削インサートを装着することができる。これにより切削効率の向上を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ホルダに装着された状態で、主切れ刃に対するすくい面が正のすくい角を備えるとともに、主切れ刃とともに逃げ面が溝部によって分断されている切削インサートが開示されている。このような切削インサートにより、切削時の切削抵抗を低減させ、より切削条件の厳しい重切削加工においても、加工中におけるびびり振動を抑制することができる。したがって、切削効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開2004−202686号公報
【特許文献2】特開平7−299636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のプランジ研削用フライスを、更なる高能率化に向けて、切込み量の大きなより厳しい切削条件下において用いた場合、切削インサートにかかる切削抵抗はさらに大きくなるため、加工中のびびり振動を十分に抑制することが困難となり、切削インサートの切れ刃の欠損等も発生しやすいという問題があった。特に、切削速度の小さな内周側の切れ刃には大きな切削抵抗がかかり、チッピングが生じやすいという問題があった。
【0006】
また、切削作業の高能率化を図るため、切れ刃長さの長い切削インサートをプランジ加工に用いた場合、切れ刃の両端における切削速度の差が大きくなるため、切れ刃両端での切り屑の長さやカール径の差も大きくなる。そのため、このような加工形態では、特許文献2に記載の切削インサートを用いることで、切削抵抗の低減は図れても、切り屑が絡まりやすく、切り屑排出性が悪化し、工具寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、転削工具、特に、切れ刃長さが長く多数の切れ刃を取り付けてなるプランジ加工用工具で用いられる切削インサートにおいて、切削抵抗を低減させるとともに、切れ刃の欠損を抑制し、安定した切り屑排出性を発揮する切削インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の切削インサートは、略多角形板状をなし、上面にすくい面を、下面に着座面を、側面に逃げ面を具備するとともに、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に主切れ刃が形成され、かつ該主切れ刃が前記逃げ面上に形成された少なくとも1つの溝部によって分断された複数の分割主切れ刃からなる切削インサートであって、前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端を含む一端側分割主切れ刃と、前記主切れ刃の一端から離間する離間分割主切れ刃とからなり、該離間分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するよう形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成により、前記離間分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切れ刃強度が漸次大きくなるため、各切れ刃部分にかかる切削抵抗が漸次増加することで生じやすい切れ刃の欠損などを抑制することができる。加えて、各分割主切れ刃によって生成される切り屑の幅が漸次増加するため、切り屑の長さやカール径の異なる切り屑を良好に排出することができる。その結果、切削インサートにおける、各切れ刃部分にかかる切削抵抗のばらつきが低減され、びびり振動や切れ刃の欠損を抑制することができるとともに、切り屑排出性を向上させることができる。
【0010】
さらに、前記一端側分割主切れ刃は、隣接する前記離間分割主切れ刃の切れ刃長さと略同一となるよう形成されていることで、前記一端側分割主切れ刃の切れ刃強度を向上させ、チッピング等を抑制することができる。
【0011】
また、前記溝部が複数形成されるとともに、該複数の溝部は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうつれて、インサート上面視における溝部の幅が漸次増加するよう形成されていることで、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切削インサート全体の強度を向上させることができ、工具寿命をより長くすることができる。
【0012】
さらに、前記複数の溝部は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうつれて、インサート側面視における溝部の幅の最大幅が漸次増加するように形成されていることで、切削インサートの溝部に相当するため、切削時に切削されずに、被削材の加工表面に生じる削り残し部分と、切削インサートとの干渉を抑制することができ、切削抵抗の低減が図れる。
【0013】
また、前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、前記着座面に近接するよう漸次傾斜して形成されていることで、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、漸次切れ味を向上させることができ、チッピング等の抑制が図れる。
【0014】
さらに、前記複数の分割主切れ刃は、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、すくい角が漸次増加するよう形成されていることで、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、漸次切れ刃強度を向上させることができ、より厳しい切削条件下においても、チッピング等の抑制が図れる。
【0015】
また、前記各分割主切れ刃に対応して、前記すくい面上に少なくとも1つの突起部が形成されていることで、前記分割主切れ刃で生成された切り屑が、対応する前記突起部に接触し、切り屑が効果的にカールされるので、切り屑のサイズを小さくでき、効率よく工具外へ排出され、切り屑排出性の向上が図れる。
【0016】
また、本発明の転削工具は、略円柱状をなすホルダと、請求項1乃至6いずれか記載の切削インサートとを備え、前記主切れ刃が前記本体部の先端面側に位置するとともに、前記主切れ刃の一端が前記ホルダの外周側に位置するよう、前記切削インサートが前記ホルダに装着されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成により、各分割主切れ刃の切れ刃強度が漸次増加するよう形成されるため、プランジ加工のように、切れ刃部分によってかかる切削抵抗が異なる加工形態においても、切れ刃の欠損を抑制することができる。加えて、切り屑の幅が漸次増加するよう生成されるので、各分割主切れ刃で生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを低減させ、切り屑の長さやカール径の異なる切り屑の切り屑排出性を向上させることができる。
【0018】
またさらには、本発明の転削工具は、略円柱状をなす本体部と、前記本体部の先端側に形成された先端刃とを備えた転削工具であって、前記先端刃は、少なくとも1つの凹部で離間された複数の小切れ刃からなるとともに、前記複数の小切れ刃は、前記本体部の外周に位置する外周側小切れ刃と、前記本体部の外周から離間する離間小切れ刃とからなり、
該離間小切れ刃は、前記本体部の外周側から内周側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するよう形成されていることを特徴とする
このような構成により、異なる大きさの切削抵抗が各小切れ刃にかかっても、切れ刃の欠損およびびびり振動を抑制することができるとともに、各小切れ刃によって生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを低減させることができる。その結果、加工面精度の向上および切り屑排出性の向上を図ることができる。
【0019】
さらに、前記凹部が複数形成されるとともに、該複数の凹部は、本体部外周側から内周側に向かうにつれて、幅が漸次増加するよう形成されていることで、先端刃のホルダ外周側および内周側における強度バランスがよく、切削抵抗が大きくかかる厳しい切削条件下におけるプランジ加工においても、切れ刃の欠損およびびびり振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の切削インサートによれば、前記主切れ刃を溝部によって分断された複数の分割主切れ刃で形成するとともに、前記主切れ刃の一端から離間する離間分割主切れ刃が、前記主切れ刃の一端側から他端側に向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加することにより、切削時の切削抵抗を低減し、各切れ刃部分にかかる切削抵抗に応じて切れ刃強度を漸次増加させるとともに、切り屑の長さやカール径が異なる切り屑の切り屑おもさのばらつきを低減させることができる。したがって、びびり振動およびチッピングを抑制することができるとともに、優れた切り屑排出性を発揮する、工具寿命の長い切削インサートを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態を示すものであり、本発明の第一の実施形態による切削インサート(以下、インサートと略す。)1の(a)平面図、(b)長辺側側面図である。図2は、インサート1の要部拡大図である。そして、図3は、本発明のインサート1を用いた転削工具11の全体斜視図(a)および(b)である。
【0023】
また、図4は、本発明の第二の実施形態を示す転削工具21の(a)側面図および(b)底面図である。
【0024】
図1において、第一の実施形態によるインサート1は、略多角形板状の本体部、具体的には、略平行四辺形板状からなり、本体部下面に着座面2を、上面にすくい面3を、側面に逃げ面4を具備している。そして、すくい面3と逃げ面4との交差稜線部の一部に主切れ刃5が形成されている。
【0025】
ここで、逃げ面4には、一端をすくい面3上に有して溝部6が複数並設されている。該溝部6によって、主切れ刃5は複数の分割主切れ刃7に分断される。そして、図1(a)に図示するように、複数の分割主切れ刃7は、主切れ刃の一端5’を含む一端側分割主切れ刃71と主切れ刃の一端5’から離間する離間分割主切れ刃72とからなる。すなわち、一端側分割主切れ刃71は、分割主切れ刃7のうち、主切れ刃5の最も一端側に位置する分割主切れ刃である。そして、離間分割主切れ刃72は、分割主切れ刃7のうち、一端側分割主切れ刃71以外の分割主切れ刃のことである。なお、図1(a)に、主切れ刃5の中心から主切れ刃の一端5’にむかう方向を一端側方向X、他端に向かう方向を他端側方向Yとして図示する。
【0026】
図3は、本発明の第一の実施形態によるインサート1を装着してなる転削工具11の全体斜視図である。ここで、転削工具11は、前記主切れ刃5の一端側Xがホルダ12の外周側に位置するよう、ホルダ12にインサート1が装着されてなる。したがって、インサート1がホルダ12に装着された状態で、前記複数の分割主切れ刃7のうち、一端側分割主切れ刃71がホルダ12の最も外周側に位置する。また、転削工具11には、複数の切削インサートが装着され、これら複数の切削インサートによって、相補的に切削することにより、加工面を略平面とする切削加工が可能となる。
【0027】
図1(a)および(b)に図示するように、インサート1は、離間分割主切れ刃72が、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、切れ刃長さが漸次増加するように形成される。これにより、プランジ加工のように、切削時にかかる切削抵抗が各切れ刃部分で異なる場合においても、かかる切削抵抗に応じた切れ刃強度を有したインサートとすることができる。例えば、図3に示すプランジ加工用の転削工具12に用いた場合においては、ホルダ外周側からホルダ内周側へ向かうにつれて、漸次、切削速度は小さく、かかる切削抵抗は大きなものとなるが、本発明のインサート1は、離間分割主切れ刃72が漸次切れ刃長さが増加するよう形成されるため、主切れ刃5を、このような切削抵抗の変化に対応できる切れ刃強度が漸次増加した切れ刃構成とすることができる。
【0028】
また、離間分割主切れ刃72が、漸次切れ刃長さが増加するよう構成されるため、それに応じて離間分割主切れ刃72によって生成される切り屑の幅も、漸次大きくなる。したがって、プランジ加工のように、ホルダ内周側およびホルダ外周側における切削速度が異なり、それに応じて、ホルダ内周側とホルダ外周側で生成される切り屑の長さやカール径が異なる場合においても、各離間分割主切れ刃72で生成される切り屑の幅を異なるようにすることで、切り屑排出性を向上させることができる。すなわち、切削速度のより大きく切り屑長さが長いホルダ外周側に配置される切れ刃長さを小さくし、切削速度のより小さく切り屑長さが短いホルダ内周側に配置される切れ刃長さを大きくすることで、各離間分割主切れ刃72で生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを低減させることができる。その結果、各離間分割主切れ刃72で生成される切り屑が、切り屑ポケット13に詰まったり、切り屑同士が絡まってしまうのを抑制し、切り屑排出性を向上させることができる。特に、切り込み量が大きく、生成される切り屑の切り屑おもさがより大きなものとなる重切削加工において、このように生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを低減させ、切り屑排出性を向上させることで、効果的に工具寿命を長くすることができる。
【0029】
またさらには、径方向の送り量が主切れ刃5の長さよりも小さい切削加工条件下においては、インサート1のように、切れ刃強度が漸次増加した切れ刃構成とすることで、被削材の境界面に接触する切れ刃部分に生じやすい境界摩耗や境界損傷を抑制することができる。
【0030】
さらに、主切れ刃5を溝部6により分断し、複数の分割主切れ刃7で構成することによって、切削時の切削抵抗を低減させることができる。したがって、切削時に常に切削抵抗がかかる連続切削加工や、より大きな切削抵抗がかかる厳しい切削条件下の重切削加工においても、びびり振動およびチッピングを抑制することができ、加工面精度の向上を図ることができる。
【0031】
またさらに、図1(a)および(b)に図示するように、一端側分割主切れ刃71は、隣接する離間分割主切れ刃72’の切れ刃長さと略同一となるよう形成される。これにより、ホルダ12に装着された状態で、最もホルダの外周側に位置する一端側分割主切れ刃71の切れ刃強度を大きくすることができ、チッピングを効果的に抑制することができる。
【0032】
さらに、図1(a)に図示するように、インサート1は、複数の溝部6が、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、インサート上面視における溝部の幅Wが漸次増加するよう形成されるのが望ましい。これにより、各分割主切れ刃7にかかる漸次異なる大きさを有した切削抵抗に応じて、溝部の壁面8からインサート外方へ突出する各分割主切れ刃7の切れ刃部分の突出量を調整することができ、インサート1の強度をより安定させることができる。したがって、より一層チッピング等を抑制することができる。
【0033】
また、インサート1は、図3に示すように、ホルダ12の周方向に装着されて用いられる。このとき、ホルダ12には、被削材の加工面に削り残し部分が生じないよう、複数の切削インサートが装着される。この際、インサート1に上述のように溝部の幅Wが漸次増加するよう複数の溝部6が主切れ刃5に形成されることにより、1つのインサート1(A)が切削した後に被削材の加工表面に生じる削り残し部分は、ホルダ外周側からホルダ内周側に向かって漸次大きくなるよう形成される。したがって、この削り残し部分を削る、インサート1(A)のホルダ周方向に隣接する2つ目のインサートBが、この削り残し部分を切削する時にかかる各分割主切れ刃の切削抵抗のバランスを調整することができる。すなわち、ホルダ外周側からホルダ内周側に向かって、削り残し部分が漸次増加するよう生成されるため、インサートBの切削時に寄与する各分割主切れ刃の切れ刃長さもそれに応じて漸次増加する。その結果、転削工具12に装着される複数のインサートのいずれにおいても、ホルダ外周側・内周側で異なる切削速度に応じて、ホルダ外周側からホルダ内周側に向かって、各分割主切れ刃の切れ刃強度を漸次増加させることができる。さらに、切り屑の長さやカール径が異なる各分割主切れ刃で生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを抑制することができる。したがって、かかる切削抵抗に応じた切れ刃強度を維持するとともに、切り屑排出性を向上させることができ、工具寿命を長くすることができる。
【0034】
なお、インサート上面視における溝部の幅Wは、図1(a)に図示するように、溝部6におけるインサート1の長手方向の寸法のことである。すなわち、インサート上面視において(インサート上面を着座面2に平行な面に投影した場合に)、溝部の壁面8とすくい面3との交差稜線部8と、主切れ刃5の仮想直線との2つの交点間の距離のことである。また、溝部の壁面8とは、すくい面3および逃げ面4に連接する一連の面をいう。なお、図2に図示するように、インサート上面視において、インサート1が、溝部の壁面8とすくい面3との交差稜線部にて逃げ面4に近接する2つの凸曲線8’、8”を有する場合の溝部の幅Wは、以下のようにする。凸曲線8’の両端における各接線の交点Sと、凸曲線8”の両端における各接線の交点Tとの距離を、溝部の幅Wとする。
【0035】
さらに、図1(b)に図示するように、複数の溝部6は、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうつれて、インサート側面視における溝部の幅の最大幅Wsが漸次増加するように形成されるのが望ましい。これにより、インサート1の溝部に相当するため、切削時に切削されずに、被削材の加工表面に生じる削り残し部分と、インサート1の溝部の壁面8との干渉を抑制することができ、切削抵抗を低減することができる。
【0036】
また、複数の分割主切れ刃7は、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、着座面2に近接するよう漸次傾斜して形成されるのが望ましい。これにより、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、切れ味が良くなり、チッピング等を抑制することができる。具体的には、ラジアルレーキが負の値を有するように、インサート1をホルダに装着した時に、ホルダ外周側からホルダ内周側に向かうにつれて、ラジアルレーキが、ゼロに近づくように漸次増加するように構成される。これにより、ホルダ内周側の切れ味を良くして、切削抵抗の低減を図ることができる。
【0037】
またさらに、複数の分割主切れ刃7は、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、すくい角が漸次増加するよう形成されるのが望ましい。これにより、主切れ刃5の一端側Xから他端側Yに向かうにつれて、切れ刃強度が高まり、チッピング等を抑制することができる。具体的には、アキシャルレーキが負の値を有するように、インサート1をホルダに装着した時に、ホルダ外周側からホルダ内周側に向かうにつれて、アキシャルレーキが漸次増加するように構成される。これにより、ホルダ外周側における被削材への食い付きをより良くすることができる。
【0038】
さらに、各分割主切れ刃7に対応して、すくい面3上に少なくとも1つの突起部9が形成されるのが望ましい。これにより、各分割主切れ刃7で生成された各々の切り屑を、対応する突起部9に接触させて切り屑をカールさせることができる。したがって、工具本体から排出される切り屑の切り屑サイズをより小さくすることができる。その結果、切り屑が切り屑ポケット13に絡んだり、各分割主切れ刃7で生成された切り屑同士が絡まるのを抑制し、切り屑排出性を更に向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の第二の実施形態である転削工具21について、図4を用いて説明する。図4に示す転削工具21は、略円柱状をなす本体部22を有し、本体部22の先端側に、刃部28がロウ付けされてなる。刃部28は、先端側に先端刃25を備え、該先端刃25は、少なくとも1つの凹部26で離間された複数の小切れ刃27を有してなる。そして、複数の小切れ刃27は、本体部22の外周に位置する外周側小切れ刃271と、本体部22の外周から離間する離間小切れ刃272とからなる。
【0040】
図4に示すように、本発明の転削工具21は、複数の小切れ刃27のうち、離間小切れ刃272が、本体部外周側から内周側に向かうにつれて、各切れ刃長さが漸次増加するよう形成されている。このような構成により、先端刃にかかる、外周側から内周側にむかって漸次増加する切削抵抗に応じて、離間小切れ刃272の切れ刃強度を漸次増大させることができる。そのため、各離間小切れ刃272のチッピングを抑制することができる。さらに、離間小切れ刃272の漸次増加する切れ刃長さに対応して、生成される切り屑の切り屑幅も漸次増加するため、切り屑の長さやカール径が異なる各々の離間小切れ刃272で生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを抑制することができる。その結果、切り屑排出性が向上した、工具寿命の長い転削工具とすることができる。
【0041】
さらに、転削工具21は、凹部26が複数形成されるとともに、該複数の凹部26は、本体部外周側から内周側に向かうにつれて、幅wが漸次増加するよう形成されているのが望ましい。これにより、複数の先端刃25が形成され、これら先端刃25が相補的に被削材を切削するような転削工具21において、いずれの先端刃25においても、外周側から内周側に向かって、各小切れ刃27の切れ刃強度を漸次増加するよう形成される。したがって、切削時の各先端刃25にかかる切削抵抗のバランスを安定させることができ、いずれの先端刃25においてもチッピングを抑制することができる。さらには、切り屑の長さやカール径の異なる各小切れ刃27で生成される切り屑の切り屑おもさのばらつきを抑制することができ、切り屑排出性を向上させることができる。
【0042】
なお、転削工具21の凹部26の幅wは、図4(a)に図示するように、先端刃25の伸びる方向に対して垂直な平面視における、小切れ刃27間の距離のことである。具体的には、前述した溝部の幅Wと同様にして算出することができる。
【0043】
ここで、図1では、本体部が略平行四辺形板状からなるインサート1を例示したが、本発明の他の実施形態として、ホルダ形状に対応して本体部が略正方形板状および略菱形板状などで形成されても、同様の効果が得られることはいうまでもない。またさらに、本実施形態では、溝部6の形状として、一端をすくい面3に他端を着座面2に位置するもののみを例示したが、これに限らず、インサートが大きなインサート強度を必要とするような切削加工に用いられる場合、溝部6の他端が逃げ面4上に位置するものであってもよい。これにより、インサート強度の向上が図れる。
【0044】
また、溝部6の主切れ刃5における形成位置は、主切れ刃5全域に渡って形成されていなくとも本発明の効果は得られるが、より効果的に切削抵抗の低減を図るためには、本実施形態のように主切れ刃5全域に渡って形成されることが望ましい。これにより、より厳しい切削条件下の重切削加工においても、本効果を効果的に得ることができる。
【0045】
またさらに、図3に図示したように、複数の切削インサートを装着して用いられる転削工具において、2種(1Aおよび1B)の用いたものを例示した。このとき、前述の2種のインサートの溝部の配置を異なるものとすることで、相補的な切削加工を行い、被削材の加工面を平坦なものとするが、転削工具に装着するインサートの数および種類については、これに限られるものではない。各インサートで切削される部分と削り残し部分が相補的にカバーできるようホルダに装着され、加工面が平坦となるような溝部配置を有していればよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態による切削インサートの(a)平面図、(b)長辺側側面図である。
【図2】図1の切削インサート1の要部拡大図である。
【図3】本発明のスローアウェイインサートを用いた転削工具の全体斜視図(a)および(b)である。
【図4】本発明の転削工具の(a)側面図および(b)底面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 切削インサート(インサート)
2 着座面
3 すくい面
4 逃げ面
5 主切れ刃
6 溝部
7 分割主切れ刃
71 一端側分割主切れ刃
72 離間分割主切れ刃
8 溝部の壁面
9 突起部
11 転削工具
12 ホルダ
13 切り屑ポケット
21 第二の実施形態による転削工具
22 本体部
25 先端刃
26 凹部
27 小切れ刃
271 外周側小切れ刃
272 離間小切れ刃
28 刃部
W:溝部の幅
w:凹部の幅
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−840(P2008−840A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171726(P2006−171726)