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【発明の名称】 インサート及び穴加工工具
【発明者】 【氏名】滝口 正治

【氏名】金星 彰

【氏名】遠藤 邦博

【要約】 【課題】インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができるとともに、工具本体の切り欠く部分を小さくして工具本体の動バランス及び剛性を向上させることができるインサートを提供する。

【構成】穴加工工具に装着されるインサート20であって、外形が多角形平板状をなし、一の多角形面が着座面21とされ、側面の一つがすくい面23とされ、すくい面23の工具本体径方向外側の稜線部に外周切刃27が設けられ、この外周切刃27にはバックテーパが付されており、多角形面には厚さ方向に貫通した挿通孔30が穿設され、前記他の多角形面には、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通孔30に挿通された際に、前記当接面と当接されるクランプ面31が形成され、クランプ面31は、挿通孔30の中心軸Lに直交する平面に対して、外周切刃27に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜させられていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削材に予め形成された下穴の内壁面を切削して加工穴を形成する際に使用される穴加工工具の工具本体の先端外周部に設けられた取付座に着脱可能に装着されるインサートであって、
外形が多角形平板状をなし、一の多角形面が着座面とされて前記取付座に取り付けられ、前記着座面の周りの側面の一つが工具回転方向前方側に向けられるすくい面とされ、該すくい面の工具本体径方向外側に向けられた辺稜部に外周切刃が設けられ、この外周切刃には、軸線方向後端側に向かうにしたがい工具本体径方向内側に後退するようなバックテーパが付されており、
前記一の多角形面及び他の多角形面には、厚さ方向に貫通した挿通孔が穿設されており、前記他の多角形面には、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通孔に挿通された際に、前記当接面と当接されるクランプ面が形成されており、
前記クランプ面は、前記挿通孔の中心軸に直交する平面に対して、前記外周切刃に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜させられていることを特徴とするインサート。
【請求項2】
前記挿通孔の前記中心軸に直交する平面と前記クランプ面との交差角度θが、0°10´≦θ≦15°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記すくい面には、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部が備えられており、該切刃部に、前記外周切刃が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインサート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のインサートが装着されて構成される穴加工工具であって、
軸線回りに回転される工具本体の先端外周部に、前記工具本体先端側及び前記工具本体径方向外側に向けて開口された凹部が形成され、該凹部の工具回転方向後方側に取付座が形成され、該取付座には、前記インサートを押圧して前記外周切刃の前記工具本体径方向位置を調整する押圧部材が配置されていることを特徴とする穴加工工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、下穴の内壁面を切削加工する際に用いられる穴加工工具に着脱可能に装着されるインサート及び穴加工工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切刃を有するインサートが着脱可能に装着されて構成される穴加工工具としては、例えば特許文献1に開示されているようなインサート式のリーマが提供されている。図10及び図11に、従来のインサート式リーマの一例を示す。
図10及び図11に示すリーマは、軸線O回りに回転される長尺円柱状の工具本体1を有し、工具本体1の先端外周部に工具本体1先端側及び工具本体1径方向外側に向けて開口した凹部2が形成され、この凹部2の工具回転方向T後方側には取付座3が形成されている。この取付座3の工具回転方向T前方側を向く壁面にはクランプネジ孔4が穿設されている。
【0003】
取付座3の工具本体1径方向内側には、後述する外周切刃12の径方向位置を調整する調整機構として、2つの調整ネジ5、6が軸線O方向に並ぶように配置されている。なお、工具本体1後端側に位置する調整ネジが第1調整ネジ5とされ、工具本体1先端側に位置する調整ネジが第2調整ネジ6とされている。
また、取付座3の工具本体1後端側には、工具本体1径方向外側に向けて開口した収容孔7が形成されており、この収容孔7には調整クサビ8が挿入されている。
さらに、工具本体1の外周には、図11に示すように、周方向に等間隔となるように複数のガイドパッド9が配置されており、このガイドパッド9は、凹部2及び取付座3と干渉する部分では、これら凹部2及び取付座3の工具本体1後端側まで延びるように、その他の部分では工具本体1の先端まで達するように形成されている。
【0004】
前記取付座3には、概略四角形平板状をなすインサート10が、一の四角形面が着座面とされて厚さ方向を工具回転方向に向けて装着され、他の四角形面が工具回転方向前方側に向けられてすくい面11とされている。このすくい面11の工具本体1径方向外側の稜線部の先端部分に外周切刃12が設けられ、この外周切刃12の工具本体1先端側には食い付き刃13が設けられている。
【0005】
また、四角形面には、該四角形面に直交するように延びて厚さ方向に貫通する挿通孔14が穿設されている。この挿通孔14に挿通されるクランプネジ15は、外周面に雄ネジが形成された軸部16と該軸部16よりも一段大径とされた頭部17とを有し、頭部17の軸部16側を向く面が当接面18とされ、この当接面18は軸部16に対して直交する平面状に形成されている。
【0006】
挿通孔14に挿通されたクランプネジ15がクランプネジ孔4に螺着されることで、インサート10が当接面18によって押圧されて取付座3に固定される。
このように構成されたリーマは、工作機械の主軸端に装着されて軸線O回りに回転されるとともに、軸線O方向先端側に送りを与えられ、被切削材に予め形成された下穴に挿入されて、この下穴の内壁面をインサート10の外周切刃12及び食い付き刃13によって切削して所定の内径の加工穴を形成するものである。
この切削を行う際には、加工穴の内壁面とガイドパッド9とが摺動することにより、工具本体1の振れを防止して寸法精度の向上を図っている。
【0007】
この構成のリーマにおいては、第1調整ネジ5及び第2調整ネジ6を使用して、インサート10に形成された外周切刃12の軸線Oに対する傾斜角(バックテーパ)と工具本体1径方向の位置を調整することができ、所定の内径の加工穴を寸法精度良く形成することができる。また、前記バックテーパを適正に付すことにより、加工穴の内壁面とインサート10との無用な接触を防止して切削抵抗の低減を図ることもできる。
【特許文献1】特開2002−160124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述のインサート10及びリーマにおいては、外周切刃12の位置調整を行う場合には、インサート10をクランプネジ15で固定した状態で第1、第2調整ネジ5、6でインサート10を押圧し、クランプネジ15を撓むように変形させてインサート10を移動させることになる。ここで、クランプネジ15の当接面18とインサート10とが強く密着している場合には、インサート10とクランプネジ15との摩擦力が大きく、インサート10を押圧してもクランプネジ15が容易に変形せず、一定以上の押圧力が負荷された時点で大きくクランプネジ15が変形することになる。
【0009】
したがって、前述のインサート10及びリーマにおいては、外周切刃12の位置調整をスムーズに行うことができず、位置調整に多くの時間と労力が必要であった。また、クランプネジ15の変形量によってインサート10の移動量が決定されることになるが、前記のようにクランプネジ15とインサート10とが密着させられている場合には、クランプネジ15の変形量も小さくなってインサート10の移動量が制限され、外周切刃12を精度良く調整できなくなってしまう。
【0010】
また、バックテーパを調整する調整機構と工具本体12径方向位置を調整する調整機構とが同一の第1、第2調整ネジ5、6であるので、例えば、バックテーパを調整した後に工具本体1径方向の位置を調整する際に、既に調整したバックテーパが変化してしまい、再度調整する必要が生じることがあった。このため、インサート10の位置調整に多くの時間と労力が必要となり、インサート10の位置調整を簡単に、かつ、精度良く行うことができなかった。
【0011】
また、前述のインサート10及びリーマにおいては、四角形平板状をなすインサート10が厚さ方向を工具回転方向に向くようにして取り付けられているので、取付座3の工具回転方向T前方側に位置する凹部2を大きく開口させる必要がある。したがって、工具本体1の軸線Oに直交する断面における重量バランスが悪くなり、工具本体1を軸線O中心に高速回転させた際の動バランスが取れなくなって、軸線O位置がばらついて真円度の高い加工穴を寸法精度良く形成できなくなるおそれがあった。さらに、凹部2を大きく形成するために、複数のガイドパッド9が凹部2の工具本体1後端側までの長さとなって、工具本体1先端側でガイドパッド9と加工穴とがバランス良く摺動することができず、リーマの軸線Oの振れを抑制することができなくなってしまう。
【0012】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができ、真円度の高い加工穴を寸法精度良く成形することができるとともに、工具本体の切り欠く部分を小さくして工具本体の動バランス及び剛性を向上させることができるインサート及びこのインサートが装着された穴加工工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するために、本発明のインサートは、被切削材に予め形成された下穴の内壁面を切削して加工穴を形成する際に使用される穴加工工具の工具本体の先端外周部に設けられた取付座に着脱可能に装着されるインサートであって、外形が多角形平板状をなし、一の多角形面が着座面とされて前記取付座に取り付けられ、前記着座面の周りの側面の一つが工具回転方向前方側に向けられるすくい面とされ、該すくい面の工具本体径方向外側に向けられた辺稜部に外周切刃が設けられ、この外周切刃には、軸線方向後端側に向かうにしたがい工具本体径方向内側に後退するようなバックテーパが付されており、前記一の多角形面及び他の多角形面には、厚さ方向に貫通した挿通孔が穿設されており、前記他の多角形面には、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通孔に挿通された際に、前記当接面と当接されるクランプ面が形成されており、前記クランプ面は、前記挿通孔の中心軸に直交する平面に対して、前記外周切刃に近づくにしたがい漸次後退するように傾斜させられていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の穴加工工具は、前述のインサートが装着されて構成される穴加工工具であって、軸線回りに回転される工具本体の先端部に、前記工具本体先端側及び前記工具本体径方向外側に向けて開口された凹部が形成され、該凹部の工具回転方向後方側に取付座が形成され、該取付座には、前記インサートを押圧して前記外周切刃の前記工具本体径方向位置を調整する押圧部材が配置されていることを特徴としている。
【0015】
この構成のインサート及び穴加工工具によれば、取付座に設けられた押圧部材によってインサートを工具本体径方向外側に移動させることにより、インサートの工具本体径方向外側に配置された外周切刃の径方向位置を調整することができる。ここで、インサートには、その多角形面に、軸部と該軸部に直交する当接面とを有するクランプネジが挿通される挿通孔が開口させられるとともに、前記クランプネジの当接面が当接されるクランプ面が形成されていて、このクランプ面が挿通孔の中心軸に直交する平面に対して、切刃に近づくにしたがい前記多角形面から漸次後退するように傾斜させられているので、クランプネジの当接面とクランプ面とが密着せず、外周切刃側部分において僅かな空隙が形成されることになる。
【0016】
したがって、インサートを押圧部材によって押圧した際に、クランプネジが前記空隙の分だけ撓むように変形し易くなり、小さな押圧力でもインサートを確実に移動させることができ、外周切刃の位置調整をスムーズに行うことができる。
また、前記空隙によってクランプネジの変形量が確保されているので、インサートの移動量が従来に比べて大きく、外周切刃の位置調整を確実に行うことができる。
【0017】
また、外周切刃には工具本体後端側に向かうにしたがい漸次工具本体径方向内側に向けて後退するようにバックテーパが既に付されているので、外周切刃のバックテーパを調整する必要がない。
したがって、押圧部材を操作して外周切刃の径方向位置のみを調整すれば良いので、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができる。
【0018】
さらに、インサートが、多角形平板状をなして、工具回転方向前方側を向く側面がすくい面とされて、このすくい面の工具本体径方向外側の稜線部に外周切刃が形成された、いわゆる縦刃のインサートであるので、取付座を形成するために工具本体を切り欠く部分を小さくすることができるとともに、取付座の工具回転方向前方側に位置する凹部を小さくすることができる。
【0019】
このように凹部及び取付座を形成する部分を小さくすることができるので、例えば、ガイドパッドを工具本体の外周に配置する場合に、凹部及び取付座と干渉する部分が小さくなって、工具本体先端側近傍にまでガイドパッドをバランスよく配置することができ、加工穴とガイドパッドの摺動により、工具本体の軸線の振れを確実に防止して、真円度の高い加工穴を形成することもできる。
【0020】
ここで、前記挿通孔の中心軸に直交する平面と前記クランプ面との交差角度θを、0°10´≦θ≦15°の範囲内に設定することにより、クランプネジの変形量を確保してインサートを確実に移動させることができるとともに、インサートの固定を確実に行うことができる。すなわち、前記交差角度θが0°10´よりも小さいとクランプネジの当接面とインサートのクランプ面との空隙が小さくなってインサートの移動量が小さくなってしまう。一方、前記交差角度θが15°よりも大きいとクランプネジの当接面とインサートのクランプ面との空隙が大きくなりすぎてクランプネジによるインサートの固定が不十分となるおそれがある。したがって、前記交差角度θは、0°10´≦θ≦15°の範囲内に設定することが好ましい。
【0021】
さらに、前記インサートとして、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部を備え、該切刃部に、前記外周切刃が形成されたものを用いることにより、切刃の耐摩耗性を向上させることができ、このインサートの寿命延長を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インサートの位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができ、真円度の高い加工穴を寸法精度良く成形することができるとともに、工具本体の切り欠く部分を小さくして工具本体の動バランス及び剛性を向上させることができるインサート及び穴加工工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態であるインサート及びこのインサートが装着された穴加工工具について添付した図面を参照にして説明する。図1から図3に、本発明の実施形態であるインサートを示す。また、図4から図6に穴加工工具としてのリーマを示す。
図4から図6に示すリーマは、軸線O回りに回転される工具本体40を有し、この工具本体40の先端外周部に形成された取付座50に、図1から図3に示すインサート20が着脱可能に装着されて構成されている。
【0024】
本実施形態であるインサート20は、図1から図3に示すように、概略四角形平板状をなしており、厚さ方向を向く2つの四角形面と4つの側面とを有している。インサート20の厚さ方向を向く一方の四角形面が後述する取付座50の工具本体40先端側を向く壁面50Dに着座される着座面21とされ、厚さ方向を向く他方の面が工具本体40先端に向けられて正面逃げ面22とされている。
【0025】
着座面21の周りの側面のうちのひとつが工具回転方向T前方側を向いてすくい面23とされ、このすくい面23に連なる他の側面のひとつが工具本体40径方向外側に向けられて外周逃げ面24とされる。また、すくい面23に連なり外周逃げ面24に対向する側面が工具本体40径方向内側に向けられ、後述する押圧ピン55の押圧面55Aが当接される被押圧面25とされている。
【0026】
すくい面23の正面逃げ面22と外周逃げ面24とが交差する角部には、ダイヤモンド焼結体で構成された平板状の切刃部26が貼設されている。この切刃部26の外周逃げ面24との交差稜線部に外周切刃27が形成されており、このインサート20は、いわゆる縦刃のインサート20とされている。
また、正面逃げ面22と外周逃げ面24との交差部分には面取り部28が形成され、この面取り部28と切刃部26との交差稜線部には食い付き刃29が設けられている。
【0027】
ここで、インサート20を正面逃げ面22から対向する側から見て図2に示すように、前記すくい面23と被押圧面25とは、鈍角に交差するように配置されている。
また、外周逃げ面24はすくい面23から離れるにしたがいインサート20の内部に向けて後退するように傾斜させられていて、すくい面23と外周逃げ面24とは鋭角に交差するように配置されている。
さらに、外周逃げ面24は、すくい面23に対向する側から見て図1に示すように、着座面21側に向かうにしたがい被押圧面25に漸次近づくように傾斜させられている。
【0028】
着座面21及び正面逃げ面22とされた四角形面には、中心軸Lに沿って延びてインサート20の厚さ方向に貫通した挿通孔30が穿設されている。そして、正面逃げ面22とされた他の四角形面の挿通孔30近傍には、クランプ面31が形成されており、このクランプ面31は、外周切刃27に近づくにしたがい着座面21に漸次近づくように、挿通孔30の中心軸Lに対して直交する平面に対して傾斜させられている。
なお、本実施形態においては、クランプ面31は、前記挿通孔30の中心軸Lに対して直交する平面と交差角度θで交差するように形成されていて、前記交差角度θが0°10´≦θ≦15°となるように設定され、より具体的には、θ=3°に設定されている。
【0029】
この挿通孔30に挿通されるクランプネジ32は、外周に雄ネジが形成された軸部33と、この軸部33よりも一段大径とされた頭部34とを有しており、この頭部34の軸部33側を向く面が前記クランプ面31と当接される当接面35とされている。なお、この当接面35は、軸部33の軸線に対して直交するように延びる平面状に形成されている。
【0030】
次に、前述のインサート20が装着される工具本体40について説明する。工具本体40は、軸線Oを中心とした多段円柱状をなしており、工具本体40の先端側(図4において下側)が概略円柱状をなす加工部41とされ、工具本体40の後端側(図4において上側)には、加工部41よりも大径とされた鍔部42が形成され、鍔部42のさらに後端側には、この工具本体40を工作機械の主軸端に装着するための工具ホルダ(図示なし)が取り付けられる取付部43が形成されている。
【0031】
また、この工具本体40の先端面には、加工部41よりも小径のパイロット44が設けられている。なお、本実施形態においては、このパイロット44は、後述する凹部47及び取付座50が形成された側を向く部分が切り欠かれた形状とされている。
さらに、この工具本体40には、取付部43に開口して軸線Oに沿って延びるクーラント供給孔45が穿設されるとともに、このクーラント供給孔45から工具本体40径方向外側に向けて延びて工具本体40の外周面に開口するクーラント吐出孔46が穿設されている。
【0032】
この工具本体40(加工部41)の先端側には、工具本体40先端側及び径方向外側に向けて開口された凹部47が形成されている。この凹部47の工具本体40後端側の壁面は、図5に示すように、工具本体40径方向内側及び工具本体40後端側に向けて凹んだ凹曲面状をなしており、この壁面には、前記クーラント吐出孔46から工具本体40径方向先端側及び工具回転方向T後方側に向けて延びるクーラント排出孔48が開口されている。
【0033】
この凹部47の工具回転方向T後方側には、インサート20を着脱可能に取り付けるための取付座50が形成されている。この取付座50は、凹部47の工具回転方向T後方側端から工具本体40径方向内側に大きく凹むとともに、工具本体40先端側に向けて大きく開口するように構成されている。つまり、この取付座50は、工具本体40径方向外側を向く壁面50Aと、工具回転方向T前方側を向く壁面50Bと、工具回転方向T後方側を向く壁面50Cと、工具本体40先端側を向く壁面50Dとを有しているのである。
【0034】
取付座50の工具本体40先端側を向く壁面50Dは、図5に示すように、軸線Oに対して直交するような平面状に形成されており、この壁面50Dには、軸線Oと平行に延びるクランプネジ孔51が穿設されている。
また、軸線Oに直交する断面において図6に示すように、工具回転方向T後方側を向く壁面50Cは工具本体40径方向に沿うように配置され、工具回転方向T前方側を向く壁面50Bは前記壁面50Cに対して工具本体40径方向外側に向かうにしたがい工具回転方向T後方側に後退するように傾斜させられている。
【0035】
この取付座50の工具本体40径方向内側には、取付座50の工具本体40径方向外側を向く壁面50Aに開口するとともに、軸線Oに垂直な平面に沿って工具回転方向T後方側を向く壁面50Cが延在する方向に対して交差する方向に延びるピン孔52が形成されている。このピン孔52の前記取付座50側とは反対側には、前記ピン孔52よりも一段大径とされ内周面に雌ネジが形成された押圧ネジ孔53が形成されている。さらに、この押圧ネジ孔53に連通するとともに工具本体40外周面に開口した大径孔54が穿設されている。なお、これらピン孔52、押圧ネジ孔53、大径孔54は同軸状に延びるように配置されている。
【0036】
ピン孔52には概略円柱状をなす押圧ピン55が挿入されており、押圧ピン55の先端には、工具本体40径方向外側を向いて取付座50へと突出される押圧面55Aが形成されており、この押圧面55Aは押圧ピン55の軸線に対して斜交するように構成されている。
押圧ネジ孔53には、概略円柱状をなして外周面に雄ネジが形成された押圧ネジ56が螺着されており、押圧ネジ56の先端面が押圧ピン55の後端面に当接されている。また、押圧ネジ56の後端面には、レンチ等の作業用工具が係合される係合孔(図示なし)が形成されており、この係合孔が前記大径孔54を介して工具本体40外周面に向けて露呈されている。
【0037】
また、この工具本体40の加工部41の外周部には、硬質材料で構成され、外形が概略長円平板状をなす複数のガイドパッド57が軸線Oと平行に延びるように配置されており、本実施形態では、図6に示すように、6つのガイドパッド57が周方向に等間隔となるように配置されている。また、図4及び図5に示すように、凹部47及び取付座50と干渉する部分に配置されたガイドパッド57Aは、凹部47の工具本体40後端まで延びるように形成されており、その他のガイドパッド57Bは、工具本体40先端面にまで達するように形成されている。
【0038】
このような構成とされた取付座50に、前記インサート20が以下のようにして取り付けられる。すくい面23とされる側面が工具回転方向T前方側を向くように、かつ、取付座50の工具本体40先端側を向く壁面50Dにインサート20の着座面21が当接されるようにしてインサート20を取付座50に配置する。ここで、インサート20の被押圧面25が前記押圧ピン55の押圧面55Aと当接されるとともに、すくい面23の被押圧面25側の部分が取付座50の工具回転方向T後方側を向く壁面50Cに当接される。
【0039】
この状態で、クランプネジ32を挿通孔30に挿通させて取付座50の工具本体40先端側を向く壁面50Dに開口されたクランプネジ孔51に螺着する。すると、クランプネジ32の頭部34に形成された当接面35がインサート20のクランプ面31を押圧して、インサート20が取付座50に取り付けられる。
ここで、クランプ面31が挿通孔30の中心軸Lに直交する平面に対して傾斜するように構成させられているので、クランプ面31の外周切刃27側の部分と当接面35との間に僅かな空隙が形成されることになる。
【0040】
このようにして取付座50にインサート20が装着された状態において、工具本体40径方向外側に向けられた外周逃げ面24は、すくい面23に対向する側から見て、工具本体40後端側に向かうにしたがい漸次工具本体40径方向内側に向かうように軸線Oに対して傾斜させられており、外周逃げ面24と切刃部26との交差稜線部に形成された外周切刃27には、工具本体40後端側に向かうにしたがい漸次工具本体40径方向内側に向かうようにバックテーパが付されることになる。つまり、この外周切刃27が軸線O回りに回転された際の回転軌跡が、工具本体40先端側に向かうにしたがい径が小さくなるようなバックテーパが付されるのである。
なお、本実施形態においては、バックテーパ量は、40μm/15mm〜80μm/15mmの範囲内に設定されており、より具体的には、60μm/15mmとされている。
【0041】
このようにして工具本体40の取付座50にインサート20が取り付けられることで構成されたリーマは、前記取付部43に取り付けられた工具ホルダを介して工作機械の主軸端に装着され、軸線O回りに回転されるとともに、軸線O方向先端側に向けて送られて被切削材に予め形成された下穴に挿入され、この下穴の内壁面を食い付き刃29、外周切刃27によって切削して所定の内径の加工穴を形成するものである。
【0042】
この切削加工の際には、工作機械から供給されたクーラントが、クーラント供給孔45を介してクーラント吐出孔46から加工穴の内壁面に向けて吐出されてガイドパッド57と加工穴内壁面との摺動を円滑とするとともに、クーラント排出孔48からインサート20に向けて排出されて、外周切刃27、食い付き刃29を冷却する。
【0043】
このリーマにおいて、インサート20の位置調整は以下のようにして行われる。大径孔54を介して工具本体40外周面に露呈された係合孔にレンチ等の作業用工具を係合させて押圧ネジ56をねじ込んで、押圧ピン55を取付座50側に向けて移動させる。ここで、インサート20の被押圧面25が、取付座50の工具回転方向T後方側を向く壁面50Cに当接されているすくい面23に対して鈍角に交差するように形成され、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい工具本体40径方向内側に突出するように配置されているので、押圧面55Aが前記被押圧面25を押圧するとインサート20が取付座50の工具本体40先端側を向く壁面50Dに沿って軸線Oに垂直に工具本体40径方向外側に向けて移動することになる。
したがって、押圧ネジ56によって押圧ピン55によるインサート20の押圧力を調整することにより、外周切刃27の工具本体40径方向位置を調整することができる。
【0044】
そして、インサート20のクランプ面31が挿通孔30の中心軸Lに直交する平面に対して傾斜させられていて、クランプ面31の外周切刃27側の部分とクランプネジ32の当接面35との間に僅かな空隙が形成されているので、このインサート20を工具本体40径方向外側に向けて押圧した際に、クランプネジ32が前記空隙の分だけ撓むように容易に変形し、インサート20を工具本体40径方向外側に向けてスムーズに移動させることができる。さらに、前記空隙によってクランプネジ32の変形量が確保されているので、インサート20の移動量が大きくなって外周切刃27の位置調整を確実に行うことができる。
【0045】
さらに、本実施形態においては、挿通孔30の中心軸Lに直交する平面とクランプ面31との交差角度θが、0°10´≦θ≦15°の範囲内に、より具体的には、θ=3°に設定されているので、クランプネジ32の当接面35とクランプ面31との間の空隙が確実に形成されて円弧状切刃23の位置調整をスムーズに行うことができるとともに、当接面35とクランプ面31との間の空隙が大きくなりすぎてインサート20の固定が不十分となることを防止できる。
【0046】
また、インサート20の外周逃げ面24が工具本体40後端側に向かうにしたがい漸次工具本体40径方向内側に向けて後退していて、外周切刃27にはバックテーパが既に付されており、このバックテーパはインサート20が工具本体40径方向外側に移動しても変化しないので、外周切刃27のバックテーパを調整する必要がない。よって、押圧ネジ56を操作して外周切刃27の径方向位置のみを調整すれば良いので、インサート20の位置調整を簡単にかつ精度良く行うことができる。
【0047】
さらに、インサート20として、四角形平板状をなしてその厚さ方向を向く一の面を工具本体40径方向内側に向けた着座面21とし、工具回転方向T前方側に向けた側面をすくい面23とし、すくい面23と外周逃げ面24との交差稜線部に外周切刃27を形成した、いわゆる縦刃のインサート20を使用しているので、インサート20の厚さ方向を工具本体40の軸線O方向と略一致するようにして取り付けて、取付座50を形成するために工具本体40を切り欠く部分を小さくすることができるとともに、取付座50の工具回転方向T前方側に位置する凹部47を小さくすることができる。したがって、工具本体40の動バランス及び剛性を向上させて工具本体40の振動を防止でき、加工穴を寸法精度良く形成することができる。
【0048】
また、本実施形態においては、6つのガイドパッド57のうち1つのガイドパッド57Aが凹部47及び取付座50の工具本体40後端側にまで延びるように、残りのガイドパッド57Bが工具本体40の先端面にまで達するように形成されるとともに凹部47の軸線O方向の長さが短くされているので、インサート20の近傍においても、複数のガイドパッド57を配置して加工穴とガイドパッド57とをバランスよく摺動させることができ、リーマの軸線Oの振れを確実に防止して、真円度の高い加工穴を寸法精度良く形成することができる。
【0049】
さらに、インサート20にダイヤモンド焼結体で構成された切刃部26が形成され、この切刃部26に外周切刃27、食い付き刃29が形成されているので、これら外周切刃27、食い付き刃29の耐摩耗性を向上させることができ、このインサート20の寿命延長を図ることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態であるインサート及び穴加工工具について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図7から図9に示すように、先端逃げ面22の外周切刃27側部分を凹ませてクランプ面31を傾斜するように構成してもよい。
【0051】
また、インサートを概略四角形平板状のものとして説明したが、これに限定されることはなく多角形平板状をなして多角形面の周りの側面の一つがすくい面とされた縦刃のインサートであれば良い。
さらに、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部を備えたもので説明したが、超硬合金で一体成形されたものやcBN焼結体で構成された切刃部を有するものなどでも良い。
【0052】
また、挿通孔の中心軸Lに直交する平面とクランプ面との交差角度θが、0°10´≦θ≦15°の範囲内に、より具体的には、θ=3°に設定されたものとして説明したが、この数値範囲に限定されることはない。ただし、本実施形態のように構成することにより、インサートを確実にクランプすることができるとともにインサートの移動量を確保することができる。
【0053】
さらに、工具本体径方向外側に向けられる外周切刃に付されたバックテーパ量を、40μm/15mm〜80μm/15mmの範囲内に設定し、より具体的には、60μm/15mmとしたもので説明したが、これに限定されることはなく、バックテーパ量は切削条件等を考慮して適宜設定することができる。但し、本実施形態の範囲内に設定することにより、加工穴の内壁面と外周切刃の後端側部分とが摺動することを確実に防止して加工穴の内壁面を滑らかに仕上げることができるため好ましい。
【0054】
また、工具本体の後端側に鍔部と取付部とを備えたリーマとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、鍔部がなく全長にわたって略一定の外径とされた工具本体を有し、この工具本体の後端部を切削工具に設けられた装着孔に挿入して使用するリーマであっても良い。
【0055】
さらに、6つのガイドパッドを周方向に等間隔で配置したものとして説明したが、これに限定されることはなく、ガイドパットの配置や個数は、切削条件等を考慮して適宜選択することが好ましい。
また、押圧部材として、押圧ピンを備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、クサビ材等の他の押圧部材を配置したものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態であるインサートをすくい面に対向する側から見た図である。
【図2】図1におけるW方向矢視図である。
【図3】図1におけるX方向矢視図である。
【図4】本発明の実施形態であるリーマの側面図である。
【図5】図4に示すリーマの先端部の拡大部分断面図である。
【図6】図4におけるY−Y断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態であるインサートをすくい面に対向する側から見た図である。
【図8】図7におけるW方向矢視図である。
【図9】図7におけるX方向矢視図である。
【図10】従来のリーマの先端部の拡大部分断面図である。
【図11】図10におけるZ−Z断面図である。
【符号の説明】
【0057】
20 インサート
21 着座面
23 すくい面
26 切刃部
27 外周切刃
30 挿通孔
31 クランプ面
32 クランプネジ
33 軸部
34 当接面
40 工具本体
47 凹部
50 取付座
55 押圧ピン(押圧部材)
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子


【公開番号】 特開2008−23634(P2008−23634A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−197069(P2006−197069)