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【発明の名称】 バリ取り方法及び装置
【発明者】 【氏名】下村 真素美

【要約】 【課題】ワークの低温脆性を利用したバリ取り技術を提供する。

【構成】2つのドリル穴11,13の交差部15に生じたバリ17,17を除去するために、バリ17,17及び交差部15を冷却して、バリを脆化させる。そして、冷却により脆化したバリ17,17を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのドリル穴(11,13)の交差部(15)に生じたバリ(17)を除去する方法であって、
前記バリを冷却して前記バリを脆化させ、脆化したバリを取る方法。
【請求項2】
前記2つのドリル穴のいずれかに挿入したノズル(21)または工具(31)から冷却流体(A)を吐出して、前記バリ及び前記交差部を局所的に冷却する、請求項1記載のバリの除去方法。
【請求項3】
2つのドリル穴(11,13)の交差部(15)に生じたバリ(17)を除去する装置であって、
前記バリを冷却する冷却手段(21,31,A)と、
前記冷却により脆化したバリを取るバリ取り手段(31,35)と、を備えたバリ取り装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのドリル穴の交差部に生じたバリを除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のワークにドリルで開けた2つのドリル穴の交差部にできるバリを除去する方法として、従来は、工具の形状、工具の回転方向、加工順序等を工夫した種々のものが知られている。例えば、特許文献1にはバリ取り方法、特許文献2及び3にはバリ取りに用いるバリ取り工具が開示されている。
【特許文献1】特開平9−290308号公報
【特許文献2】特開2005−169517号公報
【特許文献3】特開平11−33807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ワークが、クランクシャフト等に用いられるような延性の強い素材である場合は、なかなかバリが除去されないことがあった。
【0004】
また、鋼は、氷点下以下のある温度になると脆くなる低温脆性という性質が知られている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ワークの低温脆性を利用したバリ取り技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に従うバリ取り方法は、2つのドリル穴(11,13)の交差部(15)に生じたバリ(17)を除去する方法である。つまり、前記バリを冷却して前記バリを脆化させ、脆化したバリを取る。
【0007】
好適な実施態様では、前記2つのドリル穴のいずれかに挿入したノズル(21)または工具(31)から冷却流体(A)を吐出して、前記バリ及び前記交差部を局所的に冷却するようにしてもよい。
【0008】
本発明の一実施態様に従うバリ取り装置は、2つのドリル穴(11,13)の交差部(15)に生じたバリ(17)を除去する装置である。そして、前記バリを冷却する冷却手段(21,31,A)と、前記冷却により脆化したバリを取るバリ取り手段(31,35)と、を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るバリ取り方法及びバリ取り装置について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係るバリ取り方法の一例を示す図である。
【0011】
鋼などのワークにドリル穴11を開けた後、これに交差するようにドリル穴13を開けると、その交差部15にバリ17、17が生じる。本実施形態では、交差部15の近傍へ局所的に冷却流体Aを流し込んで冷却し、鋼の低温脆性によりバリ17,17を脆化させたのち、除去する。
【0012】
ここで、バリが脆化するのに適当な冷却温度は、ワークの炭素含有量により異なる。例えば、炭素含有量が0.40%C程度であれば、摂氏−20度以下になるように冷却するのが好ましく、摂氏−40度以下であればさらに好ましい。そこで、冷却流体Aは、例えば、冷却エアあるいは液体窒素などを用いることができる。
【0013】
冷却流体Aを流し込むため、本実施形態では、冷却流体の流路33を有する工具31を用いる。すなわち、ドリル穴11及びドリル穴13を開けた後、再び先に開けたドリル穴11から工具31を交差部15の手前まで挿入して、バリ17,17を冷却するために冷却流体Aを注入する。そして、バリ17,17が脆化すると、工具31をさらに挿入して脆化したバリ17,17を除去する。
【0014】
ここで用いる工具31は、例えば、内部に冷却流体の流路を備えたドリルでもよいし、同様に流路を備えた丸棒などでもよい。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係るバリ取り方法のためのバリ取り装置を示す。
【0016】
このバリ取り装置は、ドリル駆動装置5と、冷却流体供給装置6と、ドリル駆動装置5及び冷却流体供給装置6を制御するコントローラ7とを備える。冷却流体Aは、冷却流体供給装置6から供給路61を介してドリル駆動装置5へ供給される。ドリル駆動装置5のチャック51には工具31が取り付けられていて、冷却流体Aが工具31内の流路33へ流れ込む。
【0017】
図3は、バリ取りの手順を示すフローチャートである。
【0018】
まず、コントローラ7の制御に従って、ドリル駆動装置5が工具31をドリル穴11へ挿入する(S11)。
【0019】
ドリル駆動装置5は、工具31を、その先端が交差部15に到達する前で停止させる。ここで、冷却流体供給装置6がコントローラ7の制御に従って冷却流体Aを供給すると、冷却流体Aが供給路61及び流路33を通って、工具31の先端から吐出される(S12)。これにより、バリ17,17は冷却されて脆化する。
【0020】
そして、ドリル駆動装置5は、工具31をさらに挿入する(S13)。
【0021】
これにより、脆化したバリ17、17を確実に除去できる。
【0022】
次に、図4は第2の実施形態に係るバリ取り方法の一例を示す図である。
【0023】
この実施形態では、工具とは別のノズル21を用いて冷却流体を供給する。すなわち、同図に示すように、後に開けたドリル穴13からノズル21を挿入し、ノズル21の先端から冷却流体Aを吐出させて、バリ17,17を冷却する。そして、先に開けたドリル穴11から工具35を挿入してバリ17,17を除去する。
【0024】
ここで、ノズル21は、ドリル穴11に工具35の反対側から挿入してもよい。あるいは、工具35を挿入する前に、ノズル21を工具35と同じ側からドリル穴11へ挿入し、冷却流体Aを吐出した後ノズル21を抜き取って、工具35を挿入してバリ17,17を除去するようにしてもよい。
【0025】
また、工具35は、ドリルであってもよいし、丸棒などでもよい。
【0026】
図5は、第2の実施形態に係るバリ取り方法のためのバリ取り装置を示す。
【0027】
このバリ取り装置は、第1位置の実施形態と同様に、ドリル駆動装置5と、冷却流体供給装置6と、ドリル駆動装置5及び冷却流体供給装置6を制御するコントローラ7とを備える。冷却流体供給装置6は、ノズル21のドリル穴への挿入、引き抜きを制御するとともに、冷却流体Aをノズル21先端から吐出させる。ドリル駆動装置5のチャック51には、工具35が装着されている。
【0028】
図6は、バリ取りの手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、コントローラ7の制御に従って、冷却流体供給装置6がノズル21をドリル穴13へ挿入する(S21)。そして、冷却流体供給装置6は、ノズル21の先端から冷却流体を吐出させる(S22)。これにより、バリ17,17は冷却されて脆化する。
【0030】
その後、ドリル駆動装置5は、コントローラ7の制御従い、工具35をドリル穴11から挿入し、バリ17,17を除去する(S23)。
【0031】
なお、第1及び第2の実施形態ともに、工具は、ドリル穴11よりもやや小さい径を有するものでよい。工具の径をドリル穴11よりもやや小さくすることで、穴を傷つけずに、バリ17,17のみを除去できる。また、この場合、工具は、回転させながら挿入してもよいし、回転させずに挿入してもよい。
【0032】
あるいは、工具は、バリ取り加工用専用の工具でもよい。例えば、特開2005−169517のようなドリル穴11よりやや大きい径を有し、スリットにより縮径可能な回転工具でもよい。
【0033】
さらには、工具は、ドリル穴11よりやや大きな径の金属ブラシでもよい。この場合、金属ブラシを回転させながら挿入するようにしてもよい。
【0034】
また、工具は、ワークよりも低温脆性に強い材料で構成されていてもよい。
【0035】
工具を用いる代わりに、ドリル穴11に粉体を高速で流してもよい。
【0036】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0037】
例えば、上述の実施形態では、バリ及びその近傍を局所的に冷却しているが、ワーク全体を冷却するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、冷却流体を吐出して、バリを冷却した後に工具を挿入しているが、冷却流体を吐出している最中に工具を挿入するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバリ取り方法の一例を示す。
【図2】第1の実施形態に係るバリ取り装置を示す。
【図3】第1の実施形態のバリ取りの手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るバリ取り方法の一例を示す。
【図5】第2の実施形態に係るバリ取り装置を示す。
【図6】第2の実施形態のバリ取りの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
5…ドリル駆動装置、6…冷却流体供給装置、7…コントローラ、11,13…ドリル穴、15…交差部、17…バリ、21…ノズル、31,35…工具、33…流路。
【出願人】 【識別番号】394018524
【氏名又は名称】コマツ工機株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−18485(P2008−18485A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191090(P2006−191090)