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【発明の名称】 円筒状穿孔工具
【発明者】 【氏名】柳生 孝之

【要約】 【課題】

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材を穿孔するための本体切れ刃を先端部に有している円筒状穿孔工具本体と、その工具本体の回転中心軸線に沿って配設されたセンタードリルとを備える円筒状穿孔工具において、
前記センタードリルが、先端側の小径部と、肩部を介して前記小径部に接続している大径部とを有し、前記小径部がその先端に先端切れ刃を有し、前記肩部が前記本体切れ刃より先方に突出するように配設された肩部切れ刃を有していることを特徴とする、円筒状穿孔工具。
【請求項2】
前記先端切れ刃と前記肩部切れ刃との間の軸線方向距離が、前記肩部切れ刃と前記本体切れ刃との間の軸線方向距離以上であることを特徴とする、請求項1に記載の円筒状穿孔工具。
【請求項3】
前記肩部を形成する面が、前記肩部切れ刃に隣接する逃げ面と、前記逃げ面に続く面とを備え、前記逃げ面に続く面に付与される逃げ角は、前記逃げ面に付与される逃げ角より小さい、請求項1又は2に記載の円筒状穿孔工具。
【請求項4】
前記逃げ面に続く面に付与される逃げ角が0度である、請求項3に記載の円筒状穿孔工具。
【請求項5】
前記センタードリルの外周面に螺旋状に延びる切粉排出溝が設けられ、前記排出溝と前記肩部とが交差して形成された前記肩部の縁部が、前記肩部切れ刃を画成することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の円筒状穿孔工具。
【請求項6】
前記肩部を形成する面が後端方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の円筒状穿孔工具。
【請求項7】
前記切粉排出溝の後端側縁部が、前記工具本体の前記本体切れ刃より先端側において終端していることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の円筒状穿孔工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
被削材(例えば、金属、モルタル、木材等)を穿孔するための円筒状穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
図1には、この種の円筒状穿孔工具の代表的例が示されている。
すなわち、この円筒状穿孔工具1Aは、回転駆動用の電動ドリル等(図示せず)に装着されるシャンク部2と、そのシャンク部2に連結され、先端部に穿孔用の本体切れ刃31を備える円筒状穿孔工具本体3と、その工具本体3の回転中心軸線Cに沿って配設されたセンタードリル4Aとを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
センタードリル4Aの先端部は、工具本体3の本体切れ刃31より先方に突出するように配設されている。センタードリル4Aは、螺旋状に延びる切粉排出溝45Aが設けられた外周面42Aと、先端切れ刃44Aが設けられた先端面43Aとを備えている。なお、本体切れ刃31の材料としては、被削材5の種類に応じて切れ味・寿命・孔仕上り等を考慮し、超硬合金や工具鋼等が使用される。
【0003】
この工具1Aを用いて穿孔作業を行う場合には、まずセンタードリル4Aの先端を、被削材5の穿孔しようとする箇所の中心に当て、工具1Aを回転駆動して、センタードリル4Aによるセンター孔の穿孔を行い、次いで、工具本体3の本体切れ刃31による穿孔を行う。センタードリル4Aは、工具本体3の本体切れ刃31による穿孔作業における芯出し及び案内の作用をなすものであり、当該穿孔作業を円滑に行うことを可能とする。
被削材5の厚さSは、先端切れ刃44Aと本体切れ刃31との間の軸線方向距離P以下である。
【特許文献1】特開2004−209589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の円筒状穿孔工具には、次の如き欠点がある。
すなわち、図示のように、センタードリル4Aが被削材5を貫通した時点では、被削材5と本体切れ刃31との間には間隙が残されており、しかもセンタードリル4Aが被削材5を貫通したことにより、工具1Aを穿孔する方向(同図中、下(先端)方向)ヘ押し付け(推し進め)ようとする力(以下、「押し付け力」という。)に対する抵抗(以下、「切削抵抗」という。)が急に無くなる。したがって、本体切れ刃31が被削材5に急激に噛み合わせられて、その衝撃により、本体切れ刃31が損傷してしまう欠点がある。
また、本体切れ刃31のこのような損傷を回避するためには、被削材5に対する工具1Aの押し付け力を調整しながら穿孔作業を行わなければならない。したがって、作業に熟練が必要とされ、工具1Aの操作者が熟練者に限定される欠点がある。
さらに、本体切れ刃31の急激な噛み合いより、工具1Aに半径方向の曲げ力が作用して、センタードリル4Aの曲がり・折損を誘発する欠点がある。
本発明は、このような欠点を解消した円筒状穿孔工具を提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段及び効果]
【0005】
上記課題を解決するための本願発明に係る円筒状穿孔工具は、被削材を穿孔するための本体切れ刃を先端部に有している円筒状穿孔工具本体と、その工具本体の回転中心軸線に沿って配設されたセンタードリルとを備え、前記センタードリルが、先端側の小径部と、肩部を介して前記小径部に接続している大径部とを有し、前記小径部がその先端に先端切れ刃を有し、前記肩部が前記本体切れ刃より先方に突出するように配設された肩部切れ刃を有していることを特徴とする。
これにより、先端切れ刃が被削材を貫通後、肩部切れ刃が被削材を切削することにより円筒状穿孔工具に対して切削抵抗が生じて、本体切れ刃が被削材に当接する際の衝撃を緩和し、本体切れ刃が損傷することを防止しうる効果がある。さらに、センタードリルの曲がり・折損を防止しうる効果がある。
【0006】
好ましくは、前記先端切れ刃と前記肩部切れ刃との間の軸線方向距離が、前記肩部切れ刃と前記本体切れ刃との間の軸線方向距離以上である。
【0007】
また好ましくは、前記先端切れ刃と前記本体切れ刃との間の軸線方向距離の値が前記被削材の厚さの値以上である。それによって、円筒状穿孔工具の被削材に対する押し付け力を低減しうる効果がある。
また好ましくは、前記肩部切れ刃と前記本体切れ刃との間の軸線方向距離の値が前記被削材の厚さの値以下である。それによって、本体切れ刃が被削材に当接する時点で、肩部切れ刃に切削抵抗がかかった状態にあるため、本体切れ刃が被削材に当接する際の衝撃を更に緩和しうる効果がある。
また好ましくは、前記肩部切れ刃と前記本体切れ刃との間の軸線方向距離の値が前記被削材の厚さの値以上である。
また好ましくは、前記先端切れ刃と前記肩部切れ刃との間の軸線方向距離の値が前記被削材の厚さの値より大きい。それによって、先端切れ刃と肩部切れ刃とが被削材を同時に切削して、円筒状穿孔工具の被削材に対する押し付け力が大きくなるのを防止しうる効果がある。また、センタードリルの折損を防止しうる効果がある。
【0008】
また好ましくは、前記肩部を形成する面が、前記肩部切れ刃に隣接する逃げ面と、前記逃げ面に続く面とを備え、前記逃げ面に続く面に付与される逃げ角は、前記逃げ面に付与される逃げ角より小さい。
また好ましくは、前記逃げ面に続く面に付与される逃げ角が0度である。
また好ましくは、前記センタードリルの外周面に螺旋状に延びる切粉排出溝が設けられ、前記排出溝と前記肩部とが交差して形成された前記肩部の縁部が、前記先端切れ刃を画成する。
また好ましくは、前記肩部を形成する面が後端方向に傾斜している。それによって、肩部及び肩部切れ刃の損傷を防止しうる効果がある。
また好ましくは、前記切粉排出溝の後端側縁部が、前記工具本体の前記本体切れ刃より先端側において終端している。それによって、工具本体内部に切粉が溜まって、工具の回転に必要なトルクが増大することを防止しうる効果がある。
【実施例】
【0009】
[円筒状穿孔工具の基本構成]
図2乃至図7を使用して、本願発明に係る円筒状穿孔工具1について説明する。
図2中、工具1は、シャンク部2と円筒状穿孔工具本体3とセンタードリル4とを備えている。シャンク部2及び工具本体3は、上述した従来技術に係る円筒状穿孔工具1Aと同様であるから、その説明を省略する。センタードリル4は工具本体3の回転中心軸線Cに沿って配設されている。
図3及び図4はセンタードリル4を示す。センタードリル4は、その先端部が本体切れ刃31に対して図3中Pで示す軸線方向距離だけ突出するよう配設されている。センタードリル4は、先端側の円柱状小径部41と、肩部48を介して小径部41に接続している円柱状大径部46とを備えている。
【0010】
小径部41は、外周面42と、先端切れ刃44が設けられた先端面43とを備えている。大径部46は外周面47を備えている。面48aにより形成された肩部48は、小径部41及び大径部46との間において後端方向へ略螺旋状に延びている。なお、図5に示すように、面48aは、軸線直交面に対して角度αをなすように、後端方向へ傾斜してもよい。それによって、肩部48及び肩部切れ刃49の損傷を防止しうる効果がある。
小径部41の外周面42から大径部46の外周面47(すなわち、センタードリル4の外周面)に亘って螺旋状に延びる切粉排出溝45が設けられている。排出溝45と肩部48とが交差して形成された肩部48の縁部が、肩部切れ刃49を画成している。図3に示すように、肩部切れ刃49(より詳細には肩部切れ刃49の後縁。以下同様)は、先端切れ刃44(より詳細には先端切れ刃44の後縁。以下同様)から軸線方向距離Qだけ後方に配設されており、本体切れ刃31(より詳細には本体切れ刃31の先縁。以下同様)より軸線方向距離Rだけ先方に突出している。勿論、肩部切れ刃49を有する切削用チップ(図示せず)を肩部48に設けてもよい。
なお、切粉排出溝45の後端側縁部45aは、本体切れ刃31より図3中Gで示す軸線方向距離だけ先端側で終端してもよい。その理由は、以下のとおりである。すなわち、このような構成を採用すれば、本体穿孔作業中に、センタードリル4の排出溝45の縁部45bがセンター孔の側面に切込んで、センター孔を広げることにより、センタードリル4の穿孔性能(孔精度・切れ味・寿命)の劣化を防ぐことができるからである。
【0011】
図6に示すように、肩部48を形成する面48aは、切れ刃49に隣接し逃げ角β(例えば、15度)が付与されている逃げ面48bと、逃げ面48bに続く面48cとを備えていてもよい。ここで、逃げ角βは、大径部46の外周面47において、軸直角断面と逃げ面48bとがなす角度として定義される。
なお、同図中、面48cに逃げ角が付与されてもよいが、少なくとも、『面48cに付与される逃げ角は、逃げ面48bに付与される逃げ角βより小さい』構成を採用することが好ましい(なお、同図は、面48cの逃げ角が0度の場合を示している。)。その理由は、以下のとおりである。
すなわち、図7を参照すれば、上記構成を採用した場合、面48cと大径部46との角部6が、切れ刃49が被削材5に対して深く切込まないためのストッパーとして機能することにより、センタードリル4の折損を防止できるからである。換言すれば、上記構成のように逃げ角の異なる面48b、48cを設ける代わりに、一定の逃げ角を有する面48a’を設けた場合、上述のようなストッパーとして働く構成がないため、切れ刃49が被削材5に対して深く切込んで被削材5が排出溝45の縁部45bに当接し、センタードリル4が折損し易くなるおそれがある。
【0012】
ところで、図8に示すように、センタードリル4は、荷重を受けるドリルの中心部として軸線C方向へ延びる心厚(ウエブ)7を有している(なお、図8において便宜上、センタードリル4の螺旋状排出溝45を省略して示してある。)。心厚7は、先端部の径をLとし後端部の径をMとすると、「(M−L)/L)」の式で表すことができるテーパー(以下、「ウエブテーパー」という。)が付与されている。センタードリル4の先端部に比較して後端部の方が穿孔時のトルクが大きくなるというドリルの特性上、このウエブテーパーが大きい方が、ドリルの剛性は大きくなる。
しかしながら、一般的なドリル(例えば、鉄工ドリル)は、ドリルの先端を再研磨しながら使用するため、ウエブテーパーを大きくとらない傾向にある(ウエブテーパーが大きいと、再研磨後の心厚の径が大きくなるため、切れ味が低下するからである。)。
その点、本願発明に係るセンタードリル4は、再研磨して使用することを前提としていないため、ウエブテーパーを大きくとることが可能である(例えば、通常の鉄工ドリルのウエブテーパーが1/100〜3/100であるのに対し、本願発明に係るセンタードリル4のウエブテーパーを4/100〜6/100にすることが可能である。)。
これにより、同センタードリル4は、ドリル剛性が大きいため折損を防止し、更に、切粉排出溝45の溝幅を広くとることが出来るため切粉排出性が高いという利点がある。
【0013】
[センタードリルの各寸法と被削材の厚さとの関係、及び同工具の作用]
続いて、図9乃至図11を使用して、センタードリル4の上述した各寸法P,Q,Rと被削材5の厚さSとの関係、及び工具1の作用について詳細に説明する。
図9に示すように、工具1を用いて穿孔作業を行う場合には、まずセンタードリル4によりセンター孔を穿孔する。
ここで、少なくとも、先端切れ刃44と本体切れ刃31との間の軸線方向距離Pは、被削材5の厚さSの値以上であることが好ましい。その理由は次のとおりである。すなわち、本体切れ刃31により被削材5を穿孔する際に、先端切れ刃44に対する被削材5の切削抵抗がかかったままの状態にあると、工具1の被削材5に対する押し付け力が増大する。工具1の操作者の負担軽減のために、このような押し付け力の増大を防止するためである。
【0014】
図9中、先端切れ刃44から肩部切れ刃49までの軸線方向距離Qは、被削材5の厚さSの値以上である(以下、「条件A」という。)ことが好ましい。その理由は、上記距離Qが被削材5の厚さSより小さいと、先端切れ刃44と肩部切れ刃49とが被削材5を同時に切削して切削抵抗が大きくなり工具1の押し付け力が大きくなることがあるため、これを防止するためである。また、このように切削抵抗が大きくなると、センタードリル4が折損するおそれがあるため、これを防止するためである。勿論、同距離Qは、被削材5の厚さSの値より小さくてもよい
【0015】
被削材5は、肩部切れ刃49により穿孔された(図10参照)後、図11に示すように、本体切れ刃31に当接する。
ここで、本願発明に係るセンタードリル4の大径部46の直径と、図1に示す従来技術に係る工具1Aのセンタードリル4Aの直径とが同じである場合を考えてみる。
この場合、本願発明に係るセンタードリル4の肩部切れ刃49に対する被削材5の切削抵抗は、従来技術に係るセンタードリル4Aの先端切れ刃44Aに対する被削材5の切削抵抗より小さい。したがって、工具本体3の本体切れ刃31が被削材5に噛み合う際の、本願発明に係る工具1の被削材5に対する押し付け力は、従来技術に係る工具1Aの同押し付け力より小さくてよい。そうすると、本願発明に係る工具1は、従来技術に係る工具1Aと比較して、被削材5からの切削抵抗が急に無くなる際の本体切れ刃31が被削材5に噛み合う際の衝撃力が小さいため、本体切れ刃31の損傷やセンタードリルの曲がり・折損を防止しうる利点がある。
【0016】
図11に示すように、肩部切れ刃49から本体切れ刃31までの距離Rは、被削材の厚さ(2点鎖線で示す被削材5’の厚さS’)以下の値である(以下、「条件B」という。)ことが好ましい。その理由は、次のとおりである。
すなわち、本体切れ刃31が被削材5’に当接する時点では、肩部切れ刃49が被削材5’を未だ貫通していない(または貫通直後である)ため、肩部切れ刃49(すなわち、工具1)に切削抵抗がかかった状態(または切削抵抗が生じなくなった直後)にある。これにより、本体切れ刃31が被削材5’に当接する際の衝撃を更に緩和することができ、本体切れ刃31の損傷やセンタードリルの曲がり・折損を防止することができるためである。勿論、同距離Rは、被削材の厚さ(同図中、実線で示す被削材5の厚さS)より大きくてもよい。
【0017】
上述した「条件A」及び「条件B」が同時に成立する場合、先端切れ刃44と肩部切れ刃49との間の軸線方向距離Qは、肩部切れ刃49と本体切れ刃31との間の軸線方向距離R以上となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に係る円筒状穿孔工具の正面図である。
【図2】本願発明の一の実施例に係る円筒状穿孔工具の斜視図である。
【図3】図2中、同工具のセンタードリルの正面図である。
【図4】図2中、同工具のセンタードリルを先端側からみた底面図である。
【図5】図3中、Eで示した部分の拡大図である。
【図6】図3中、同センタードリルの肩部の構成を説明するための部分正面図である。
【図7】図6中、肩部切れ刃が被削材の切削を開始した際の状態を示すための、Fで示した部分の拡大図である。
【図8】図3中、同センタードリルの心厚を説明するための部分断面図である(説明の便宜上、同ドリルの螺旋状排出溝は省略して示す)。
【図9】図2中、同工具による穿孔作業を説明するための、同工具の正面図である。
【図10】図2中、同工具による穿孔作業を説明するための、同工具の正面図である。
【図11】図2中、同工具による穿孔作業を説明するための、同工具の正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1,1A 円筒状穿孔工具
2 シャンク部
3 円筒状穿孔工具本体
4,4A センタードリル
5 被削材
【出願人】 【識別番号】392002343
【氏名又は名称】ユニカ株式会社
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100093805
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 博


【公開番号】 特開2008−12624(P2008−12624A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186171(P2006−186171)