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【発明の名称】 工作機械における移動制御装置及び移動制御方法
【発明者】 【氏名】小澤 覚

【要約】 【課題】工具とワークとの干渉のおそれのない工具切替のための合理的な移動経路を設定することができて、工具切替の移動時間を短縮することができるようにすること。

【構成】刃物台26に複数の工具27A,27B,27Cが並設される。刃物台26はワークW1に対して工具進退方向及び工具並設方向に相対移動される。そして、ワークW1に対する工具27A,27B,27Cの切替移動に際して、工具27A,27B,27CとワークW1との間に円弧軌跡に従う相対移動が行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離を設定する距離設定手段と、
前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、
前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする工作機械における移動制御装置。
【請求項2】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定する距離設定手段と、
前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、
前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする工作機械における移動制御装置。
【請求項3】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離を設定する距離設定手段と、
前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、
前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする工作機械における移動制御装置。
【請求項4】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定する距離設定手段と、
前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、
前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする工作機械における移動制御装置。
【請求項5】
前記離間距離は、工具の切替動作においてワークに対する工具の相対移動方向後方側に存在する距離であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の工作機械における移動制御装置。
【請求項6】
前記離間距離は、工具の切替動作において工具に対するワークの相対移動方向前方側に存在する距離であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の工作機械における移動制御装置。
【請求項7】
前記距離設定手段は、移動距離として、工具の刃先とワークとの干渉を回避するために刃物台が退避位置に後退するまでの距離を設定することを特徴とする請求項2または4に記載の工作機械における移動制御装置。
【請求項8】
前記距離設定手段は、前記移動距離として、工具が前記退避位置からワークに対する所定の接近位置に前進するまでの距離を設定することを特徴とする請求項7に記載の工作機械における移動制御装置。
【請求項9】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離を設定し、
前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、
前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする工作機械における移動制御方法。
【請求項10】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定し、
前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、
前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする工作機械における移動制御方法。
【請求項11】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離を設定し、
前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、
前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする工作機械における移動制御方法。
【請求項12】
複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、
ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定し、
前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、
前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする工作機械における移動制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の工具が並設された刃物台を有する旋盤等の工作機械において、工具の切替のために工具とワークとの間に相対移動を行わせるようにした移動制御装置及び移動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような旋盤等の工作機械において、加工に使用される工具を切替える場合には、例えば図14に示すような工具切替方法が採られていた。すなわち、このような工作機械では、複数のバイト等の工具62A,62B,62Cを並設した刃物台61がワークW1に対応して、工具62A〜62Cの進退方向であるX軸方向及び工具62A〜62Cの並設方向であるY軸方向に沿って移動可能である。そして、例えば工具62AによるワークW1の加工終了後に、刃先が突出している工具62Bをスキップして工具62Cに切替える場合には、まず、図14(a)に示すように、刃物台61は工具62Aの刃先がワークW1の外周面に対して所定の隙間C1を有する第1位置P1に位置決めされる。
【0003】
その後、図14(b)に示すように、刃物台61がX軸方向に移動されて、スキップされる工具62Bの刃先がワークW1の外周面に対して所定の隙間C1を有する第2位置P2に位置決めされる。この第2位置P2は、刃物台61をY軸方向に移動させた場合に、最も突出した工具62BとワークW1との干渉を回避できる経由位置である。続いて、図14(c)に示すように、刃物台61が工具62BをスキップしながらY軸方向に移動されて、工具62Cの刃先がワークW1の中心を通るX軸方向の延長線上となる第3位置P3に位置決めされる。さらに、図14(d)に示すように、刃物台61がX軸方向に前進移動されて、工具62Cの刃先がワークW1の外周面に対して所定の隙間C1を有する第4位置P4に位置決めされる。
【0004】
このように、工具62Aから工具62Cに工具切替を行う場合、刃物台61の移動経路は、図15に示すように、第1位置P1から第2位置P2及び第3位置P3を経由して第4位置P4に至る四角形軌跡を辿る。
【0005】
従って、この従来の移動制御方法では、刃物台61の移動経路が遠回りになって、工具切替に要する移動時間が長くかかることになる。加えて、X軸方向とY軸方向との間である第2位置P2及び第3位置P3において、方向転換のために工具移動が停止されるため、移動時間がさらに長くなることになる。すなわち、工具とワークとの間の相対速度を表した図16に示す実線の速度カーブから明らかなように、第1位置P1と第2位置P2との間の移動時間をt1、第2位置P2と第3位置P3との間での間の移動時間をt2、第3位置P3と第4位置P4との間の移動時間をt3とすると、工具切替のための移動時間t0は、最短であってもt1+t2+t3となり、それ以上短くすることはできない。
【0006】
ところで、特許文献1には、工具を所定の時間帯において2軸方向にオーバーラップして移動させることにより、移動時間を短縮するようにした工具の移動制御方法が記載されている。また、特許文献2には、工具の交換に際して、工具を現在位置から工具切替位置に移動する間に、他の部材との干渉を回避して通過させるためのアプローチ位置を設定し、そのアプローチ位置において2方向の早送り移動を停止させることなくオーバーラップさせて、移動時間を短縮するようにした工具の移動制御方法が記載されている。さらに、特許文献3には、他の部材との干渉を回避するための方向転換点まで第1軸駆動装置により移動体を早送り速度で移動させ、方向転換点に達したときから移動体を第2軸駆動装置の移動時間内で、第1軸駆動装置の最大加減速度以下の加減速度で緩やかに移動させて、移動時間を短縮するようにした移動体の移動制御方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−262742号公報
【特許文献2】特開平11−104934号公報
【特許文献3】特開2006−24174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これらの従来の移動制御方法においては、次のような問題があった。すなわち、特許文献1には、工具を2軸方向でオーバーラップして同時に移動させる方法は記載されているが、工具をワーク等の他の部材と干渉しないように特定の移動経路を通過して移動させる方法については開示されていない。言い換えれば、この特許文献1に記載の方法においては、工具とワークとの干渉防止に対する配慮がなされていないために、この特許文献1に記載の方法を工具とワークとが近接した状態における工具切替動作に応用した場合、工具とワークとが干渉するおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法においては、実際に2方向の早送り移動をオーバーラップさせた場合、移動経路がアプローチ位置付近で曲線状に湾曲して、工具がアプローチ位置を正確に通過しなくなるおそれが多分にある。これに対し、工具が他の部材と干渉しないように、アプローチ位置を正確に通過されるためには、アプローチ位置において2方向の早送り移動を一旦停止させて方向転換させる必要があって、結果として移動時間を短縮させることができなくなる。さらに、特許文献3に記載の方法では、所定範囲における加減速制御を行うのみで、移動経路を設定して制御するものではないため、結果として方向転換後に移動経路が膨らんでしまい、狭いスペース内において工具の切替移動する場合には不向きである。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、工具の移動に要する時間を短縮することができるとともに、工具とワークとの干渉のおそれのない合理的な工具移動経路を設定することができ、しかも、工具移動に要するスペースを狭くすることが可能な工作機械における移動制御装置及び移動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、工作機械の移動制御装置に係る請求項1の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離を設定する距離設定手段と、前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定する距離設定手段と、前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離を設定する距離設定手段と、前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定する距離設定手段と、前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定する軌跡設定手段と、前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記離間距離は、工具の切替動作においてワークに対する工具の相対移動方向後方側に存在する距離であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記離間距離は、工具の切替動作において工具に対するワークの相対移動方向前方側に存在する距離であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項2または4に記載の発明において、前記距離設定手段は、移動距離として、工具の刃先とワークとの干渉を回避するために刃物台が退避位置に後退するまでの距離を設定することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記距離設定手段は、前記移動距離として、工具が前記退避位置からワークに対する所定の接近位置に前進するまでの距離を設定することを特徴とする。
【0018】
工作機械における移動制御方法に係る請求項9に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離を設定し、前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定し、前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離を設定し、前記離間距離以下の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、前記工具の切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の発明は、複数の工具が並設された刃物台と、前記工具とワークとの間に工具進退方向に沿う第1相対移動を生じさせる第1駆動部と、ワークと刃物台との間に工具並設方向に沿う第2相対移動を生じさせる第2駆動部とを備え、前記工具の切替動作が前記第1,第2駆動部により実行されるようにした工作機械において、ワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離と、前記切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離とを設定し、前記離間距離と移動距離とを比較して、短い方の距離に対応した曲率の円弧状軌跡を設定し、前記切替動作において、工具とワークとの間に前記円弧状軌跡に従う相対移動が行われるように、前記第1,第2駆動部を同時に動作させることを特徴とする。
【0022】
従って、この発明によれば、工具の刃先とその刃先と隣接する工具の外周面との間の離間距離あるいはワークとそれに隣接する工具の刃先との間の離間距離、またはそれらの離間距離と切替動作における前記工具進退方向への工具の移動距離との比較に基づいて、工具とワークとの干渉のおそれのない円弧状軌跡よりなる工具移動のための合理的な移動経路を作成することができる。よって、従来技術と比較して工具とワークとの干渉を避けつつ、工具切替に要する移動時間を短縮することができる。また、工具移動が設定された円弧軌跡に従って実行されるため、工具の移動経路が膨らんでしまうようなことはなく、工具移動のためのスペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、この発明によれば、工具とワークとの干渉を避けることができるとともに、工具切替の移動時間を短縮することができ、しかも、工具移動に要するスペースを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、この発明の実施形態を、図1〜図13に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図10に基づいてこの発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、この第1実施形態の工作機械では、フレーム21に主軸台22がZ軸方向へ移動可能に設置され、その主軸台22にはZ軸方向に延びる主軸23が回転可能に支持されている。主軸台22に対向して位置するように、フレーム21には背面主軸台24がZ軸方向へ移動可能に設置され、その背面主軸台24にはZ軸方向に延びる背面主軸25が回転可能に支持されている。そして、主軸23及び背面主軸25にはワークW1を把持可能なコレット23a(背面主軸25側のコレットは表れていない)が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、前記主軸台22と背面主軸台24との間において、機械フレーム21には刃物台26が主軸台22の移動方向であるZ軸方向と直交するX軸方向及びY軸方向へ移動可能に設置されている。刃物台26には、主軸23上のワークW1に対してその外周側から切削加工を施すようにしたX軸方向に延びる複数のバイトよりなる工具27がY軸方向に所定間隔をおいて並設されている。
【0027】
前記工具27に隣接して、前記刃物台26には、主軸23上のワークW1をその端面側から加工したり、背面主軸25上のワークW1をその端面側から加工したりするようにしたZ軸方向あるいはY軸方向に延びるドリルやリーマ等よりなる工具29〜31がY軸方向あるいはX軸方向に所定間隔をおいて並設されている。
【0028】
なお、この第1実施形態をはじめ、後述の各実施形態において、主軸台22及び背面主軸台24の移動,すなわちワークW1の移動や、前記刃物台26の移動は、それぞれ主軸台22及び背面主軸台24とワークW1との間に相対移動が生じればよく、ワークW1及び刃物台26が単独で移動しても、双方が同時に移動してよい。各実施形態においては、ワークW1及び刃物台26が単独で移動されるものとする。
【0029】
次に、前記のような構成の工作機械の動作を制御するための制御装置35等の構成について説明する。
図2に示すように、この制御装置35は、CPU36、ROM37、RAM38、入力部39、表示部40、主軸回転制御回路41、主軸送り制御回路42、第1駆動部及び第2駆動部を構成する工具送り制御回路43、背面主軸回転制御回路44及び背面主軸送り制御回路45を備えている。この実施形態においては、前記CPU36、ROM37、RAM38により距離設定手段,軌跡設定手段,制御手段が構成されている。
【0030】
入力部39は数値キー等を有するキーボードから構成され、ワークW1の種類や寸法のデータ等の加工に関する各種のデータ等を手動入力するものである。表示部40は液晶ディスプレイ等の表示装置からなり、入力部39から入力されたデータ等の各種のデータやステイタス等を表示する。
【0031】
前記CPU36は、主軸回転制御回路41、主軸送り制御回路42、工具送り制御回路43、背面主軸回転制御回路44及び背面主軸送り制御回路45に作動指令を出力することにより、駆動用モータ等よりなる主軸回転駆動装置46、主軸送り駆動装置47、第1駆動部及び第2駆動部を構成する工具送り駆動装置48、背面主軸回転駆動装置49及び背面主軸送り駆動装置50を介して、前記主軸23、主軸台22、刃物台26、背面主軸25及び背面主軸台24等を作動させる。
【0032】
前記工具送り駆動装置48は、ワークW1(図3〜図7に図示)に対する加工や後述する刃物台26上の工具27,31の切替動作に際して、刃物台26を駆動して、同刃物台26をX軸方向またはY軸方向へ移動させることにより、刃物台26をワークW1に対する工具27,31の進退方向と並設方向との2軸方向に沿って移動させるようになっている。
【0033】
また、別の工具29,30の切替動作に際しては、工具送り駆動装置48の駆動により、刃物台26が工具29,30の並設方向に沿ってY軸方向へ移動され、主軸送り駆動装置47または背面主軸送り駆動装置50により、主軸台22または背面主軸台24がワークW1の軸線方向であるZ軸方向に移動され、これにより工具29,30は進退方向に沿って相対的に移動される。
【0034】
前記ROM37には、ワークW1に加工を施すための各種の制御プログラムが格納されている。そして、CPU36は、ROM37に記憶されたプログラムの進行を制御する。従って、後述の図8及び図9のフローチャートに示すプログラムはCPU36により実行される。
【0035】
前記RAM38には、加工プログラムや、手動入力されたり、CPU36の演算により算出されたりした各種のデータ等が一時的に記憶される。例えば、RAM38には、各種工具27,29〜31に関する工具ピッチ等のデータが記憶される。そして、工具が図4〜図7に示す工具27A〜27Cの場合は、各工具27A〜27C間の工具ピッチPt1,Pt2、各工具27A〜27Cのシャンク幅L1,L2、各工具27A〜27C間の工具外周面間における離間距離D1,工具27A〜27Cの刃先27a〜27cと隣接する工具27A〜27Cの外周面との離間距離D3,各工具27A〜27Cの刃先27a〜27c間の高低差を示す距離(移動距離としての後述の退避距離及び接近距離)D2,D4、刃先27a〜27cの位置等の各種の加工に関するデータが手動入力されたり、演算されたりしてRAM38に記憶される。
【0036】
次に、前記のような構成の工作機械において、ワークW1の加工に用いられる図1に図示のバイト等の固定工具27を切替える場合の動作について説明する。
はじめに、図3〜図5に基づいて、工具切替にともなう基本的な動作について説明する。すなわち、図3に示すように、工具27が例えばY軸方向に沿って並設されていて、そのY軸方向に沿って切替移動される際には、工具27はワークW1との干渉を回避するためにX軸方向に退避されるが、この場合、最も突出している工具27の先端とワークW1との間に、工具27の取付誤差等を考慮して隙間C1が確保される。このときの工具27のX軸方向の位置を退避位置と呼び、この退避位置は工具27の突出量やワークW1の外径の大小により変化する。これに対し、想定される工具27の最大突出量とワークW1の最大径とより固定的な退避位置を設定することもできる。
【0037】
図4(a)〜(d)は、工具27がY軸方向に沿って工具切替する際、工具が前述の退避位置に移動する動作を示す。
すなわち、図4(a),(b)に示すように、刃物台26の例えば左方移動により左側の工具27Aから右側の工具27Bまたは27Cに工具切替する場合であって、工具27Aの右端に位置する刃先27aに対して移動方向後方側に突出した工具27Bが隣接する場合は、その刃先27aと突出している工具27Bの外周面との間の離間距離D1と、退避移動開始位置から退避位置までの退避距離D2とが比較される。その結果、刃物台26が短い方の距離D1またはD2を半径とした円弧状軌跡を描きながら移動する。ただし、図4(b)に示すように、移動半径がD1の場合は、そのD1が退避距離D2より小さいため、まず刃物台26が離間距離D1と退避距離D2の差分だけX軸方向へ直線的に退避した後に前記円弧状軌跡を描きながら退避する。
【0038】
また、図4(c),(d)に示すように、刃物台26の例えば右方移動により右側の工具27Cから左側の工具27Bまたは27Aに工具切替する場合であって、工具27Cの右端に位置する刃先27cに対して移動方向後方側に突出した工具27Bが隣接する場合は、その刃先27cと突出している工具27Bの外周面との間の離間距離D1と、退避移動開始位置から退避位置までの退避距離D2とが比較される。その結果、前記と同様に、刃物台26が短い方のD1またはD2を半径とした円弧状軌跡を描きながら移動する。そして、移動半径がD1の場合は、そのD1が退避距離D2より小さいため、まず刃物台26が退避距離D2と離間距離D1の差分だけX軸方向へ直線的に退避した後に前記円弧状軌跡を描きながら退避する。
【0039】
次に、図5(a)〜(d)は、工具27がY軸方向に沿って工具切替する際、切替えられる工具27が退避位置からワークW1に対して接近される動作を示す。
図5(a),(b)に示すように、刃物台26の例えば左方移動により左側の工具27Aまたは27Bから右側の工具27Cに工具切替する場合であって、工具27Cの右端に位置する刃先27cの前方側に、突出した工具27Bが隣接する場合は、刃物台26はすでに退避位置に移動されている。そして、その刃先27cと移動方向前方側の工具27Bの外周面との離間距離D3と、前記退避位置から刃先27cがワークW1との間に隙間C1が確保される位置までの接近距離D4が比較される。その結果、刃物台26が短い方の距離
またはD4を半径とした円弧状軌跡を描きながら移動する。ただし、移動半径がD3の場合は、接近距離D4より移動半径が小さいため、まず刃物台26が円弧状軌跡を描きながら接近した後に接近距離D4と離間距離D3との差分だけX軸方向へ直線的に接近する。
【0040】
また、図5(c),(d)に示すように、刃物台26の例えば右方移動により工具27Bまたは27Cから左側の工具27Aに工具切替する場合であって、工具27Aの右端に位置する刃先27aの前方側に、突出した工具27Bが隣接する場合は、その刃先27aと移動方向前方側に位置する工具27Bの外周面との間の離間距離D3と、前記退避位置から刃先27cがワークW1との間に隙間C1が確保される位置までの接近距離D4が比較される。そして、前記と同様に、刃物台26が短い方の距離D3またはD4を半径とした円弧状軌跡を描きながら移動する。移動半径がD3の場合は、そのD3が接近距離D4より小さいため、まず刃物台26が円弧状軌跡を描きながら接近した後に接近距離D4と離間距離D3との差分だけX軸方向へ直線的に接近する。
【0041】
以上のように、工具切替する際、離間距離D1と退避距離D2、離間距離D3と接近距離D4をそれぞれ比較して退避動作と接近動作の移動半径を求め、ワークW1と干渉することなく円弧状軌跡を描きながら工具27の退避動作と接近動作とを行わせることができる。ここで、前述のように、工具切替に際して、刃物台26が退避移動する際における刃先27aまたは27cと、突出している工具27Bの外周面との間の離間距離D1は、刃先27aまたは27cに対して移動方向後方側に位置し、刃物台26がワークW1に対して接近移動する際における刃先27aまたは27cと、突出している工具27Bの外周面との間の離間距離D3は、刃先27aまたは27cに対して移動方向前方側に位置する。
【0042】
そこで、以下に、工具27の切替動作の手順の例を図6〜図10を参照して説明する。工具27の切替動作は、図8及び図9のフローチャートに従って進行するものである。また、図10(a)(b)は、工具27を切替えるための刃物台26,すなわち工具27の移動軌跡を示し、刃物台26が図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に示す手順に従って移動する場合は、同刃物台26が図10(a)に示す位置P1から位置P2まで円弧状軌跡で移動し、位置P2から位置P3までは直線状軌跡で移動し、さらに位置P3から位置P4までは円弧状軌跡で移動する。
【0043】
さて、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)は、刃物台26上に前記工具27を構成する複数の工具27A,27B,27Cが配列されるとともに、中間部の工具27Bの刃先27bが他の工具27A,27CよりもワークW1の方向に突出している場合を示している。そして、矢印Q方向に回転しているワークW1の外周面に対し左側の工具27Aにより切削加工が施された後に、その工具27Aが工具27Bをスキップして右側の別の工具27Cに切替えられて切削加工が継続される場合を示している。図7(a)〜(d)は、左側の工具27AによりワークW1に小径の加工部W1aを形成した後に、右側の別の工具27CによりワークW1の大径部の外周面を切削加工する場合を示している。ここで、工具27A〜27Cの刃先27a〜27cは、それらの工具27A〜27CのY軸方向の端部(図面の右側)に位置している。
【0044】
さて、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)において、工具27AによるワークW1の加工が終了すると、図6(a)及び図7(a)に示すように、刃物台26がX軸方向に移動されて、第1位置P1に位置決めされる。この第1位置P1においては、工具27Aの刃先27aがワークW1の外周面に対して所定の隙間C1をおいて対応している。
【0045】
この第1位置P1から、工具27Aを工具27Cに切替えるという切替指令がCPU36から出力されると、図8及び図9のフローチャートの各ステップS(以下単にSという)に示す工具切替のための動作が順に実行される。
【0046】
すなわち、図8のS1〜S9は刃物台26を移動させるための所要のデータを得る演算処理手順を示し、図9のS10〜S18は演算結果に従って刃物台26を移動させるための動作手順を示している。
【0047】
さて、S1においては、図6(a)(b)及び図7(a)(b)に示すように、工具切替動作に際して、スキップされる工具27Bの刃先27bを含む同工具27Bの先端とワークW1との干渉を避けるために、CPU36により刃物台26をX軸方向へ退避移動させるための退避距離D2が算出される。この退避距離D2は、工具27Bの刃先27bをワークW1の外周面に対して所定の隙間C1をおいて対応させた場合における工具27Bの刃先27bのX軸座標値と、第1位置P1における工具27Bの刃先27bのX軸座標値との間の差に基づいて算出されて、RAM38に記憶される。次のS2においては、同じく図6(a)(b)及び図7(a)(b)に示すように、CPU36により隣接する工具27A,27B間のY軸方向における離間距離D1、すなわち工具27Aの刃先27aとその刃先27aの移動方向後方側に隣接する工具27Bの外周面との間の離間距離D1が算出されて、RAM38に記憶される。この離間距離D1は、工具27A,27B間の工具ピッチPt1から工具27Bのシャンク幅L2を減算することによって算出される。
【0048】
続いて、S3においては、CPU36により前記退避距離D2の長さが離間距離D1の長さ以下であるか否かが比較判別され、退避距離D2の長さが離間距離D1の長さ以下である場合にはS4に進行し、退避距離D2の長さが離間距離D1の長さを越える場合にはS5に進行する。S4においては、図6(b)に示すように、短いほうの距離である退避距離D2が半径D2として設定され、その半径D2に基づいてほぼ四半円弧状を表す曲率の工具移動軌跡のデータが作成されて、RAM38に記憶される。それとともに、円弧状移動軌跡の終了点p2に対応した刃物台26の位置が第2位置P2として算出されて記憶される。この終了点p2は工具27Bの先端がワークW1の外周面から隙間C1を隔てた距離である。これに対して、S5においては、図7(b)に示すように、短いほうの離間である離間距離D1が半径D1として設定され、その半径D1に基づいてほぼ四半円弧状の工具移動軌跡が作成されてRAM38に記憶される。この場合にも、前記の場合と同様に第2位置P2が算出されて記憶される。
【0049】
次に、S6においては、図6(d)及び図7(d)に示すように、工具切替動作の最終段階において、工具27Cの刃先27cをワークW1と隙間C1を隔てて対応させるために、刃物台26をX軸方向に接近移動させるための接近距離D4が算出されて記憶される。この接近距離D4は、第2位置P2における工具27Cの刃先27cのX軸座標値と、工具27Cの刃先27cをワークW1の外周面に対して所定の隙間C1をおいて対応させた場合の刃先27cのX軸座標値との間の差によって算出される。
【0050】
続いて、S7においては、前記刃物台26のX軸方向の前記接近距離D4の長さが工具27B,27C間の工具ピッチPt2に相当する離間距離D3、すなわち、工具27Cの刃先27cとその刃先27cの移動方向前方側に隣接する工具27Bの外周面との間の離間距離D3の長さ以下あるか否かが比較判別され、接近距離D4の長さが離間距離D3の長さよりも短い場合にはS8に進行し、長い場合にはS9に進行する。S8においては、図6(d)に示すように、短いほうの距離である接近距離D4が半径D4として設定され、その半径D4に基づいて円弧状を表す曲率の工具移動軌跡のデータが作成されて記憶される。それとともに、円弧状移動軌跡の開始点に対応する刃物台26の位置及び終了点に対応する刃物台26の位置が第3位置P3及び第4位置P4として算出されて記憶される。これに対して、S9においては、図7(d)に示すように、短いほうの距離である離間距離D3が半径D3として設定され、その半径D3に基づいて円弧状を表す曲率の工具移動軌跡が作成されて記憶される。この場合にも、前記の場合と同様に第3位置P3及び第4位置P4が算出されて記憶される。
【0051】
その後、S10においては、前記S4またはS5で作成された円弧状移動軌跡の半径がD2であるか否かが判別され、半径がD2である場合にはS11に進行し、半径がD1である場合にはS12に進行する。S11においては、図6(b)に示すように、工具送り駆動装置48の駆動により、刃物台26が第1位置P1から第2位置P2に向かって、半径D2でほぼ四半円弧分だけ移動される。
【0052】
この刃物台26の第1位置P1から第2位置P2への移動時には、図6(b)に示すように、工具27BのワークW1と対応する端部が、p1点からp2点にワークW1の外周面に沿って小さい半径D2で円弧状に移動されるため、工具27Bの端部とワークW1の外周面とが干渉することはない。
【0053】
これに対して、S12においては、図7(a)(b)に示すように、離間距離D1が退避距離D2よりも短くて、円弧状移動軌跡の半径がD1に設定されているため、まず刃物台26が第1位置P1から距離D2とD1の差分だけX軸方向へ直線的に退避移動される。そして、次のS13においては、刃物台26が第2位置P2に向かって、半径D1でほぼ四半円弧分だけ移動される。この場合、工具27BのワークW1と対応する端部が、p1点からp1a点に直線移動された後に、p2点に四半円弧分だけ移動されるため、工具27Bの端部とワークW1の外周面とが干渉することはない。
【0054】
前記S11及びS13に続くS14においては、図6(c)及び図7(c)に示すように、刃物台26が第2位置P2から第3位置P3に向かって、Y軸方向に移動される。この場合、工具27Bの刃先27bがワークW1の外周上方を通過するが、あらかじめ刃物台26がX軸方向に退避移動されて、工具27Bの刃先27bとワークW1の外周面との間に所定の隙間C1が確保されているため、それらが干渉することはない。
【0055】
さらに、S15においては、前記S8またはS9で作成された円弧状移動軌跡の半径がD4であるか否かが判別され、半径がD4である場合にはS16に進行し、半径がD4ではなくてD3である場合にはS17に進行する。S16においては、図6(d)に示すように、工具送り駆動装置48の第2駆動部と第1駆動部との同時駆動により、刃物台26が第3位置P3から半径D4で四半円弧分だけ移動されて、第4位置P4に配置され、工具の切替動作が終了する。この場合、工具27Bの刃先27bがp3点からp4点に四半円弧分だけ移動されるとともに、工具27Cの刃先27cがp5点からp6点に四半円弧分だけ移動されて、ワークW1の外周面に対し所定の隙間C1をおいて対向配置されるため、それらの工具27B,27Cの刃先27b,27cとワークW1の外周面とが干渉することはない。
【0056】
これに対して、S17においては、図7(c)(d)に示すように、離間距離D3が接近距離D4よりも短くて、円弧状移動軌跡の半径がD3に設定されているため、刃物台26が第3位置P3から半径D3で四半円弧分だけ移動される。その後、S18においては、刃物台26が距離D4とD3との差分だけワークW1に向かってX軸方向に接近移動されて、第4位置P4に配置され、工具の切替動作が終了する。従って、この場合、図7(d)に示すように、工具27Bの刃先27bがp6点からp3a点に四半円弧分だけ移動された後に、p4点に向かって直線移動されるとともに、工具27Cの刃先27bがp5点からp5a点に四半円弧分だけ移動された後に、p6点に向かって直線移動されて、ワークW1の外周面に対し所定の隙間C1をおいて対向配置されるため、それらの工具27B,27Cの刃先27b,27cとワークW1の外周面とが干渉することはない。
【0057】
このように、工具27Aから工具27Cに工具切替を行う場合、両工具27A,27C間に、その両工具27A,27Cよりも突出している工具27Bが存在しても、その工具27BとワークW1との干渉を回避して工具切替を行うことができる。なお、工具27Bの刃先27bとその後続の工具27Cの刃先27cとが同じ高さの場合は、図10(b)に示すように、刃物台26が一つの円弧軌跡と直線軌跡を描く移動経路を辿るようにすればよい。
【0058】
この実施形態においては、以下の効果を有する。
(1) この実施形態では、工具27A〜27Cの退避位置への移動時に、工具切替前に使用していた工具27Aの刃先27aに対して移動方向後方側で隣接する工具27Bの外周面との距離D1以下の半径の円弧状軌跡が作成される。また、工具27A〜27CのワークW1に対する接近位置への移動時には、工具切替後に使用する工具27Cの刃先27cに対して移動方向前方側で隣接する工具27Bの外周面との距離D3以下の半径の円弧状軌跡が作成される。そして、これらの円弧状軌跡による移動が直線状の移動軌跡と繋げられる。以上のように、工具27A,27Cの刃先27a,27cと隣接する工具27Bの外周面との距離D1,D3以下の円弧半径で、工具27A〜27Cを移動させることにより、工具切替時において工具27BとワークW1との干渉を回避できる。これは、並列に配置された工具27A〜27Cの刃先27a〜27cと、それらに隣接する工具27A〜27Cの外周面とは、同時にワークW1に接触することがない距離を離して設置されていることに着目し、この位置関係を工具の移動軌跡に利用することで達成される。つまり、距離D1,D3と、距離D2,D4とが比較され、短い方の距離が円弧状軌跡の半径として設定され、言い換えれば、円弧状軌跡の半径は、最長であっても距離D1またはD3であるため、工具27A〜27Cの刃先27a〜27cと、それに隣接する工具27A〜27Cの外周面とは同時にワークW1に接触することがないという条件下においては、工具とワークとの干渉を適切に回避できるものとなる。
【0059】
(2) 刃物台26がX軸方向,Y軸方向への同時移動によりあらかじめ定められた円弧状軌跡を移動するため、遠回りを避けることができるとともに、方向転換点のような移動停止ポイントが生じることもない。従って、従来構成における刃物台とワークとの間の相対速度の速度カーブを実線で表した前述の図16において、この実施形態の速度カーブを2点鎖線で表した場合、それらの速度カーブから明らかなように、刃物台26の移動に要する時間を短縮できる。
【0060】
(3) 刃物台26はあらかじめ定められた円弧状軌跡上を移動するものであるため、移動経路が膨らんだりすることがなく、従って、刃物台26を狭いスペース内で移動させることができて、工作機械の小型化に寄与できる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、発明の第2実施形態を図11に基づいて説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態においては、主として第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0062】
さて、図11(a)〜(d)は、図1に示す工作機械において、刃物台26に並設されたドリルやリーマ等の工具30A〜30Dよりなる工具30の工具切替動作を示したものである。このドリルやリーマ等の工具30A〜30Dは、その先端外周側あるいは先端面全体が刃先になっており、ワークW1の端面に加工を施すものである。そして、図11(a)〜(d)は、前記工具30である工具30A〜30Dの突出量がそれぞれ異なり、中央部の工具30B,30Cの少なくとも1つは、両端側の工具30A,30Dより突出量している。そして、この第2実施形態においては、前記第1実施形態における工具間の離間距離D1,D3(Y軸方向)が、ワークW1の外周面と、そのワークW1に隣接する工具30A〜30Dの外周面との間の離間距離D1,D3に変更されることが相違するのみで、図8及び図9に示すプログラムに従って進行する。
【0063】
この第2実施形態においては、ワークW1が工具切替のために左側の工具30Aの位置から右側の工具30Dの位置に移動される。そして、ワークW1が最も突出した工具30Bと干渉するのを避けるために退避移動される場合には、工具切替移動開始側の離間距離D1としてワークW1の移動方向前方側,つまり刃物台26の移動方向後方側におけるワークW1の外周面と工具30Bの外周面との間の離間距離が採用される。また、工具切替移動終了側の離間距離D3としてワークW1の移動方向後方側,つまり刃物台26の移動方向前方側におけるワークW1の外周面と工具30Cの外周面との間の離間距離が採用される。
【0064】
この第2実施形態においても、図8のS1〜S8に基づいて、ワークW1と工具30A〜30Dとの干渉を避けるための移動軌跡が設定される。
すなわち、図11(a)に示す場合には、最も突出した工具30BがY軸方向に移動しても、ワークW1と干渉しない位置まで工具30Aを退避させる場合の退避距離D2(Z軸方向)が工具30BとワークW1との間の離間距離D1よりも短くて(D1>D2)、点p1〜p2の半径が距離D2で設定されるとともに、接近距離D4が工具30CとワークW1との間の離間距離D3よりも短くて(D3>D4)、点p3〜点p4の半径が接近距離D4で設定される。
【0065】
従って、この工具切替動作時(S10〜S18)には、ワークW1は第1位置P1から第2位置P2まで半径D2の円弧状軌跡に沿って移動され、第2位置P2から第3位置P3までは直線状軌跡に沿って移動され、第3位置P3から第4位置P4までは半径D4の円弧状軌跡に沿って移動される。
【0066】
また、図11(b)に示す場合には、点p1〜p2の半径が図11(a)の場合と同様に退避距離D2で設定されるとともに、工具30CとワークW1との間の離間距離D3が接近距離D4よりも小さくて(D3<D4)、点p3〜p4の半径が離間距離D3側に設定される。従って、この工具切替時には、第1位置P1から第2位置P2までは半径D2の円弧状軌跡で、第2位置P2から第3位置P3までは直線状軌跡で、第3位置P3から第4位置P4までは半径D3の円弧状軌跡及び距離D4とD3との差分の直線状軌跡で移動される。
【0067】
そして、図11(c)に示す場合には、離間距離D1が退避距離D2よりも小さくて(D1<D2)、点p1〜点p2の半径が離間距離D1に設定されるとともに、点p3〜点p4の半径が図11(a)の場合と同様に接近距離D4に設定されている。従って、この工具切替動作時には、第1位置P1から第2位置P2までは距離D2とD1との差分の直線状軌跡及び半径D1の円弧状軌跡で、第2位置P2から第3位置P3までは直線状軌跡で、第3位置P3から第4位置P4までは半径D4の円弧状軌跡で移動される。
【0068】
さらに、図11(d)に示す場合には、点p1〜p2の半径が図11(c)の場合と同様に離間距離D1に設定されるとともに、点p3〜p4の半径が図11(b)の場合と同様に離間距離D3側に設定される。従って、この工具切替時には、第1位置P1から第2位置P2までは距離D2とD1との差分の直線状軌跡及び半径D1の円弧状軌跡で、第2位置P2から第3位置P3までは直線状軌跡で、第3位置P3から第4位置P4までは半径D3の円弧状軌跡及び距離D4とD3との差分の直線状軌跡で移動される。
【0069】
よって、この第2実施形態における工具切替動作においても、工具とワークとの干渉のおそれのない工具切替のための合理的な移動経路を設定することができて、前記第1実施形態と同様な効果を得ることができる。ただし、この第2実施形態の場合は、ワークが平面視で四角形状等の多角形状であるため、離間距離D1,D3をワークと隣接する工具の外周面との間に設定している点において第1実施形態とは異なる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、前記図8及び図9のプログラムに従って実行されるこの発明の第3実施形態を図12(a)〜(d)に示す工具切替動作について説明する。図12(a)〜(d)は、図1に示す工作機械において、刃物台26に並設されたドリルやリーマ等の回転工具よりなる工具31である工具31A〜31Cの工具切替動作を示したものである。そして、この第3実施形態では、ワークW1に対する工具31A〜31Cの干渉部位が、工具31A〜31Cの中央の刃先31a〜31c及び工具31A〜31Cの外周面となるため、離間距離D1及びD3(X軸方向)は、工具31A〜31Cの刃先31a〜31cと隣接する工具31A〜31Cの外周面との間に設定される。その他の動作は図8及び図9に示すプログラムに従って第1実施形態と同様に制御される。
【0071】
さて、図12(a)〜(d)及び図13(a),(b)に示す工具切替動作において、前述した図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に対応して動作が実行される。
すなわち、図12(a)〜(d)に示す場合には、退避方向への距離D2,すなわち最も突出した工具31BがX軸方向に移動してもワークW1と干渉しない位置まで工具31Aを退避させる場合の退避距離D2(Y軸方向)が工具31Aの刃先31aに対する刃物台26の移動方向後方側の離間距離D1よりも小さくて、退避距離D2を半径とした切替移動開始側の円弧状軌跡が設定される。また、工具31B,31Cの接近距離D4(Y軸方向)が工具31Cの刃先31cに対する刃物台26の移動方向前方側の離間距離D3よりも小さくて、距離D4を半径とした切替移動終了側の円弧状軌跡が設定される。
【0072】
これに対して、図13(a)に示す場合には、離間距離D1が退避距離D2よりも小さくて、離間距離D1を半径とした切替移動開始側の円弧状軌跡が設定されている。従って、この工具切替時には、第1位置P1から第2位置P2までの間で、距離D2とD1との差分の直線状軌跡に沿って移動された後に、半径D1の円弧状軌跡に沿って移動される。また、図13(b)に示す場合には、離間距離D3が接近距離D4よりも小さくて、離間距離D3を半径とした切替移動開始側の円弧状軌跡が設定されている。従って、この工具切替時には、第3位置P3から第4位置P4までの間で、半径D3の円弧状軌跡に沿って移動された後に、距離D4とD3との差分の直線状軌跡に沿って移動される。
【0073】
よって、この図12(a)〜(d)及び図13(a),(b)に示す工具切替動作においても、前記の各実施形態の工具切替動作と同様に、工具切替のための移動時間を短縮することができる。
【0074】
(他の実施形態)
なお、この発明の実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記各実施形態においては、離間距離D1,D3と、退避または接近距離D2,D4とが比較され、短い方の距離が円弧状軌跡の半径として設定されるようにして、円弧状軌跡の半径は、最長であっても離間距離D1またはD3に設定されるようにしている。これに対し、円弧状軌跡の半径が離間距離D1またはD3を下まわるように設定すること。このためには、例えば、離間距離D1,D3と、退避または接近距離D2,D4とを比較して、短い方の距離を抽出し、その距離の値に1未満の係数を乗して、その値を円弧状軌跡の半径とすることが考えられる。
【0075】
・ 前記実施形態の工具切替において、半径D2、D1及び半径D4、D3の円弧状軌跡を、2軸の早送り移動の加減速を組み合わせた近似円弧によって設定すること。この場合には、例えば、刃物台26のX軸,Y軸方向への移動開始タイミングを制御することにより、所要の曲率の円弧状軌跡を描くことができる。
【0076】
・ 前記各実施形態においては、離間距離D1等を演算により算出するようにしたが、数値をあらかじめRAM等の記憶部に設定しておくこと。
・ 前記第1実施形態において、工具の刃先が同工具の中央部に位置する場合は、離間距離D1としてワークの外周面と工具の刃先との間の距離を設定すること。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】一実施形態の移動制御装置を備えた工作機械を示す要部斜視図。
【図2】図1の工作機械における移動制御装置の回路構成を示すブロック図。
【図3】ワークに対して刃物台が切替方向に移動する状態を示す簡略図。
【図4】(a)〜(b)は工具台の退避位置への移動における基本的な動作を示す説明図。
【図5】(a)〜(b)は工具台の前進位置への移動における基本的な動作を示す説明図。
【図6】(a)〜(d)は工具の切替移動動作を順に示す説明図。
【図7】(a)〜(b)は図6とは異なる工具の切替移動動作を順に示す説明図。
【図8】工具の切替移動動作における円弧状軌跡の設定を示すフローチャート。
【図9】図8の設定に従った工具の切替移動動作を示すフローチャート。
【図10】(a)(b)は工具の切替移動時の刃物台の移動経路を示す線図。
【図11】(a)〜(d)は第2実施形態における工具の切替移動動作を順に示すそれぞれ部分拡大正面図。
【図12】(a)〜(d)は第3実施形態における工具の切替移動動作を順に示すそれぞれ部分拡大正面図。
【図13】(a)(b)は同じく第3実施形態における工具の切替移動動作を順に示すそれぞれ部分拡大正面図。
【図14】(a)〜(d)は従来の工具の切替移動動作を順に示すそれぞれ部分拡大正面図。
【図15】従来の工具の切替移動時における刃物台の移動経路を示す線図。
【図16】従来の工具切替動作における移動速度の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0078】
22…主軸台、23…主軸、24…背面主軸台、25…背面主軸、26…刃物台、27,27A〜27C…工具、27a〜27c…刃先、29…工具、30,30A〜30D…工具、31,31A〜31C…工具、31a〜31c…刃先、35…制御装置、36…距離設定手段,軌跡設定手段,制御手段としてのCPU、37…距離設定手段,軌跡設定手段,制御手段としてのROM、38…距離設定手段,軌跡設定手段,制御手段としてのRAM、48…工具送り駆動装置、W1…ワーク、D1…離間距離、D3…離間距離、D2…移動距離としての退避距離、D4…移動距離としての接近距離。
【出願人】 【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−6556(P2008−6556A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181175(P2006−181175)