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【発明の名称】 深穴加工装置
【発明者】 【氏名】川下 倫平

【氏名】廣田 和生

【氏名】加口 仁

【氏名】霞流 祥剛

【氏名】神戸 昭雄

【要約】 【課題】ツールマークの進展を防止することができる深穴加工装置を提供すること。

【構成】回転駆動してワークWに深穴Waを加工する工具12と、深穴加工中に工具12の振動を加速度として検出する加速度計19と、加速度計19が検出した加速度を周波数分析し、深穴加工中に常に発生するねじり固有振動の周波数以外の周波数領域における振れ回り固有振動数及び曲げ固有振動数のオーバオール値が、予め設定された閾値αを超えると、深穴Waにツールマークが発生したと判定するモニタリング装置20と、モニタリング装置20の判定に基づいて工具12の回転数及び送り速度を制御するNC装置18を備えるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動して被加工物に深穴を加工する工具と、
深穴加工中に前記工具の振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段が検出した振動を周波数分析し、深穴加工中に常に発生するねじり固有振動の周波数以外の周波数領域における振動数のオーバオール値が、予め設定された閾値を超えると、前記深穴にツールマークが発生したと判定するツールマーク判定手段と、
前記ツールマーク判定手段の判定に基づいて前記工具の回転数及び送り速度を制御する制御手段とを備える
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、オーバオール値が所定時間連続して閾値を超えた場合のみ前記深穴にツールマークが発生したと判定する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具の回転数が定格回転数になると判定を開始する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具を回転駆動させるモータ電流が定格電流になると判定を開始する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具の被加工物との接触によるスラスト荷重が定格スラスト荷重になると判定を開始する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段により前記深穴にツールマークが発生したと判定されると、このときのオーバオール値を求めた周波数領域を保存する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【請求項7】
請求項1に記載の深穴加工装置において、
オーバオール値が閾値を超えないまま深穴加工が終了した場合には、該オーバオール値に所望の安全率を乗じて新たな閾値を求め、次回の同じ加工条件のときに該新たな閾値を用いて判定する
ことを特徴とする深穴加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、加工中におけるツールマークの進展を防止する深穴加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワーク(被加工物)に穴開け加工を行う場合には、ドリル等の工具をチャック等の工具保持部材に装着し、その工具を回転させながら開孔を行う方法が多く用いられている。近年、様々な製品において小型化が図られており、この製品を構成する各部品にも小型化が要求されている。そして、これらの部品に行われる穴開け加工も、小型化に伴って、小径で、且つ、深穴となることが多く、高精度であることが要求されている。
【0003】
特に、(穴深さ/穴径)の比が大きい穴開け加工は深穴加工と称せられており、この深穴加工においては、従来から、ガンドリルシステムやBTA(Boring and Trepanning Association)システム等の加工方法が知られている。このような深穴加工に用いられる工具は、ワークに加工する所望の穴形状に応じて小径で、且つ、長尺に形成されている。しかしながら、このように工具が長尺になると、工具先端に径方向の振れが発生してしまい、高精度に深穴加工を行うことができないことがあった。
【0004】
そこで、従来から、深穴加工時において工具の振れを低減し、精度よく深穴を加工するための深穴加工装置が提供されている。このような、従来の深穴加工装置は、例えば、特許文献1乃至3に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−51992号公報
【特許文献2】特開2003−159607号公報
【特許文献3】特許第3026555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、深穴加工中においては、ツールマークと称されるらせん状の傷が発生することがある。このツールマークは工具先端の振れ回り振動によって深穴の内周面に形成されるものである。
【0007】
工具では、その長さに応じた曲げ固有振動数が存在し、この曲げ固有振動数と、回転数のx倍で加わる励振力の周波数とが一致したときに、振れ回り振動が起こり易い状態となる。一旦、振れ回り振動が発生してツールマークが生じると、このツールマークの影響により更に振れ回り振動が発散していく現象(自励振動)が起こり、ツールマークは進展していく。
【0008】
また、深穴加工では、工具の突出量が大きく変化し、それに伴い工具の振れ回り振動の振動数も広く変化する。従って、振れ回り振動の原因となる曲げ振動の曲げ固有振動数と、励振力となる回転数のx倍の周波数成分とは、加工中に一度は一致することになるから、ツールマークの発生を防止することは困難であると考えられる。
【0009】
そこで、ツールマークに対しては、ツールマーク発生後直ぐに検出し、ツールマークが発生しない加工条件に変更することが得策であると考えられる。しかしながら、従来の深穴加工装置においては、ツールマーク発生に関し、何ら対策を講じてはいなかった。
【0010】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、ツールマークの進展を防止することができる深穴加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する第1の発明に係る深穴加工装置は、
回転駆動して被加工物に深穴を加工する工具と、
深穴加工中に前記工具の振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段が検出した振動を周波数分析し、深穴加工中に常に発生するねじり固有振動数の周波数以外の周波数領域における振動数のオーバオール値が、予め設定された閾値を超えると、前記深穴にツールマークが発生したと判定するツールマーク判定手段と、
前記ツールマーク判定手段の判定に基づいて前記工具の回転数及び送り速度を制御する制御手段とを備える
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第2の発明に係る深穴加工装置は、
第1の発明に係る深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、オーバオール値が所定時間連続して閾値を超えた場合のみ前記深穴にツールマークが発生したと判定する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第3の発明に係る深穴加工装置は、
第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具の回転数が定格回転数になると判定を開始する
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第4の発明に係る深穴加工装置は、
第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具を回転駆動させるモータ電流が定格電流になると判定を開始する
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第5の発明に係る深穴加工装置は、
第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段は、前記工具の被加工物との接触によるスラスト荷重が定格スラスト荷重になると判定を開始する
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第6の発明に係る深穴加工装置は、
第1乃至第5のいずれかの発明に係る深穴加工装置において、
前記ツールマーク判定手段により前記深穴にツールマークが発生したと判定されると、このときのオーバオール値を求めた周波数領域を保存する
ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第7の発明に係る深穴加工装置は、
第1の発明に係る深穴加工装置において、
オーバオール値が閾値を超えないまま深穴加工が終了した場合には、該オーバオール値に所望の安全率を乗じて新たな閾値を求め、次回の同じ加工条件のときに該新たな閾値を用いて判定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る深穴加工装置によれば、回転駆動して被加工物に深穴を加工する工具と、深穴加工中に前記工具の振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段が検出した振動を周波数分析し、深穴加工中に常に発生するねじり固有振動数の周波数以外の周波数領域における振動数のオーバオール値が、予め設定された閾値を超えると、前記深穴にツールマークが発生したと判定するツールマーク判定手段と、前記ツールマーク判定手段の判定に基づいて前記工具の回転数及び送り速度を制御する制御手段とを備えることにより、検出した振動を周波数分析してツールマーク発生を判定した後、直ちに、このツールマークが発生しにくい条件に変更することにより、ツールマークの進展を防止することができる。
【0019】
第2の発明に係る深穴加工装置によれば、第1の発明に係る深穴加工装置において、前記ツールマーク判定手段は、オーバオール値が所定時間連続して閾値を超えた場合のみ前記深穴にツールマークが発生したと判定することにより、外乱等により瞬時に振動が増加する場合があっても、誤判定を防止することができる。
【0020】
第3の発明に係る深穴加工装置によれば、第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、前記ツールマーク判定手段は、前記工具の回転数が定格回転数になると判定を開始することにより、加工開始時期における被加工物と前記工具との位置合わせによる衝突によって、全ての周波数において振動が増加して閾値を超えても、誤判定を防止することができる。
【0021】
第4の発明に係る深穴加工装置によれば、第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、前記ツールマーク判定手段は、前記工具を回転駆動させるモータ電流が定格電流になると判定を開始することにより、加工開始時期における被加工物と前記工具との位置合わせによる衝突によって、全ての周波数において振動が増加して閾値を超えても、誤判定を防止することができる。
【0022】
第5の発明に係る深穴加工装置によれば、第1または第2の発明に係る深穴加工装置において、前記ツールマーク判定手段は、前記工具の被加工物との接触によるスラスト荷重が定格スラスト荷重になると判定を開始することにより、加工開始時期における被加工物と前記工具との位置合わせによる衝突によって、全ての周波数において振動が増加して閾値を超えても、誤判定を防止することができる。
【0023】
第6の発明に係る深穴加工装置によれば、第1乃至第5のいずれかの発明に係る深穴加工装置において、前記ツールマーク判定手段により前記深穴にツールマークが発生したと判定されると、このときのオーバオール値を求めた周波数領域を保存することにより、
前回と同じ周波数分析データであった場合には、保存していた前記周波数領域を自動設定することができるので、ワーク材料や工具形状等の加工条件に応じてオーバオール値を求める周波数領域が変化しても即座に対応することができる。
【0024】
第7の発明に係る深穴加工装置によれば、第1の発明に係る深穴加工装置において、オーバオール値が閾値を超えないまま深穴加工が終了した場合には、該オーバオール値に所望の安全率を乗じて新たな閾値を求め、次回の同じ加工条件のときに該新たな閾値を用いて判定することにより、時間ごとの閾値が求めることができるので、高精度の判定をすることができる。また、ワーク材料や工具形状等の加工条件の変更によって加速度レベルが変化した場合にも自動的に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る深穴加工装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る深穴加工装置の概略図、図2は加速度の周波数分析結果を示した図、図3はツールマークが発生したときの加速度の周波数分析結果を示した図、図4はオーバオール値の時間変動を示した図、図5は他の閾値の設定方法を示した図、図6は本発明の他の実施例に係る深穴加工装置の概略図である。
【0026】
図1に示す深穴加工装置である5軸BTA(Boring and Trepanning Association)加工機1はワーク(被加工物)Wに深穴加工を行うものである。5軸BTA加工機1には5本の中空状のボーリングバー11が設けられており、このボーリングバー11の先端には工具12が設けられている。そして、ボーリングバー11は支持部材13に貫通支持されている。支持部材13内には筒状のプレッシャヘッド15が貫通されており、このプレッシャヘッド15内には図示しないすべり軸受けが設けられている。即ち、ボーリングバー11は回転可能で、且つ、軸方向に移動可能に支持されている。
【0027】
また、5軸BTA加工機1には、ボーリングバー11を回転駆動させるサーボモータ16と、ボーリングバー11を軸方向に移動させるボールスクリュー機構17とが設けられており、このサーボモータ16及びボールスクリュー機構17にはNC(数値制御)装置18が接続されている。そして、プレッシャヘッド15の先端斜面には加速度計(振動検出手段)19が設けられており、この加速度計19にはモニタリング装置(ツールマーク判定手段)20を介してNC装置18が接続されている。
【0028】
従って、ワークWに深穴加工を行う場合には、先ず、ワークWの所定位置にプレッシャヘッド15の先端を押し付けるように5軸BTA加工機1を配置させる。そして、サーボモータ16及びボールスクリュー機構17を駆動させ、ボーリングバー11を介して工具12に所定の回転数及び送り速度を与える。これにより、ワークWに所望の穴深さ及び穴径を有する深穴Waを加工することができる。また、深穴Waを加工する際には、図示しない油供給装置から工具12の先端に向けて切削油が供給されており、この工具12により削り取られた切りくずや切削油は、工具12内からボーリングバー11の中空部分を通り排出されるようになっている。
【0029】
ここで、深穴Waを削り進めて送り量が大きくなると、ボーリングバー11のプレッシャヘッド15からの突き出し量が大きくなり、曲げ固有振動数が変化する。そして、この曲げ固有振動数が回転数のx倍の成分と一致したときに、振れ回り振動が起こりやすい条件となる。これにより、深穴Waの内周面にらせん状の傷であるツールマークが発生するおそれがある。
【0030】
そこで、ワークWの深穴加工時において、モニタリング装置20内における加工中に発生したツールマークの判定方法について説明する。
【0031】
先ず、各ボーリングバー11に発生する振動を、それらに対応するプレッシャヘッド15を介して加速度計19により加速度として検出する。そして、その検出された加速度信号はモニタリング装置20に送られる。モニタリング装置20ではその加速度信号をフーリエ変換を用いて周波数分析し、図2に示すような、加速度の周波数分析を各ボーリングバー11ごとに対応して出力する。
【0032】
ここで、加工中におけるボーリングバー11(工具12)には切削抵抗が付与されていることから、ボーリングバー11には常にねじり振動が発生する。図2では、周波数f付近及び周波数2f付近の周波数おいて加速度が急激に大きく変化しており、これらの周波数における成分がねじり振動に起因する振動成分であることがわかっている。通常、ねじり固有振動数のピークは1つであるが、図2に示すように、回転数により変調された成分(ねじり固有振動数±回転数)のピークが発生したり、波形のゆがみによりねじり固有振動数の2倍の周波数でピークが発生したりする。なお、周波数f付近及び周波数2f付近におけるねじり固有振動数を、以下、T成分及び2T成分と記す。
【0033】
次いで、ボーリングバー11の送り量が大きくなると、プレッシャヘッド15からの突出量が大きくなり、次第にボーリングバー11に振れ回り振動及び曲げ振動が発生し、深穴Waにツールマークが発生し易い状態となる。
【0034】
即ち、図3に示すように、ツールマークが発生すると、T成分以下の周波数領域において振れ回り振動成分が大きくなる。また、この振れ回り振動成分がねじり固有振動に起因する振動成分の変調を受けることにより、T成分と2T成分との間の周波数領域の振動成分も大きくなる。なお、一般的に、加速度計は高周波領域においてより敏感に振動を捉えることができることから、T成分以下の周波数領域におけるピークよりも、T成分と2T成分との間の周波数領域におけるピークの方が大きくなることが多い。
【0035】
上述したように、ツールマークが発生すると、T成分と2T成分との間における周波数領域において大きな加速度変化が生じることがわかることから、この周波数領域における加速度(振れ回り固有振動数及び曲げ固有振動数)の時間ごとのオーバオール値(平均値)求め、図4の実線で示すような、オーバオール値の時間変動を各ボーリングバー11ごとに対応して出力する。なお、図4に示す一点鎖線はサーボモータ16の回転数を示しており、Sは加工開始時期、Eは加工終了時を示している。
【0036】
また、図4に示すように、モニタリング装置20内には、予めオーバオール値に対する閾値α(図中、2点鎖線で示す)が設定されており、モニタリング装置20は算出されたオーバオール値が閾値αを超えているか否かの判定を行う。ここで、オーバオール値が閾値αを超えていなければ、深穴加工は続けられる。一方、オーバオール値が閾値αを超えた場合には、いずれかのボーリングバー11に対応した深穴Waにツールマークが発生したかを判定した後、モニタリング装置20からNC装置18にアラーム信号が送られる。
【0037】
次いで、アラーム信号が入力されたNC装置18は、サーボモータ16及びボールスクリュー機構17に停止信号を送り、全てのボーリングバー11(工具12)の回転及び送りを順次停止させる。そして、ボーリングバー11が駆動停止すると、ツールマークが発生した深穴Waに対応する工具12は作業者により新しいものと交換され、再度、同じ回転数及び送り速度で深穴加工が行われる。
【0038】
従って、本発明に係る深穴加工装置によれば、ツールマーク発生を判定した後、直ちに、このツールマークが発生しにくい条件に変更することにより、ツールマークの進展を防止することができる。
【0039】
そして、ボーリングバー11に発生する振動を周波数分析しているので、振動の時刻歴波形を用いて分析する場合と比べて、加工中に常に発生するねじり固有振動数のT成分及び2T成分と、ツールマーク形成時にしか発生しない振れ回り固有振動数に起因する振動成分とが判別し易くなる。また、T成分と2T成分との間の周波数領域におけるオーバオール値を求めているので、ツールマーク形成の有無に関わらず発生するT成分及び2T成分の影響を受けることがない。この結果、ツールマーク発生の判定を容易に行うことができる。
【0040】
また、本発明に係る深穴加工装置では、以下に示すような構成においてもツールマーク発生の判定をすることができる。
【0041】
モニタリング装置20において、フーリエ変換ではなく、ウェーブレット変換を用いて周波数分析を行うようにする。これにより、時間情報と周波数情報との両方を同時に分析することができるので、ツールマークの判定が容易に行うことができる。
【0042】
振れ回り固有振動数の発生する周波数が予めわかっている場合には、ツールマーク判定の対象となる周波数をT成分と2T成分との間の周波数領域の全域とするのではなく、その周波数付近のみに絞り、ツールマーク発生の判定を行うようにする。これにより、ツールマーク発生に最も起因する振れ回り振動を精度よく検出することができる。
【0043】
オーバオール値が閾値αを連続して超えた場合、即ち、図4に示すように、オーバオール値が閾値αを超えてからt秒後にツールマークが発生したと判定するようにする。これにより、加工中のノイズ等の外乱、加工開始時期SにおけるワークWと工具12との位置合わせによる急増オーバオール値Ps、加工終了時期Eにおける工具12がワークWから離脱するときの急増オーバオール値Pe等により、瞬時に加速度が増加する場合があっても、誤判定を防止することができる。
【0044】
加工開始時期Sの低速回転時においては、上述したように、ワークWと工具12との位置合わせによる衝突によって、全ての周波数において加速度が増加してしまい、図4に示すように、急増オーバオール値Psが閾値αを超えてしまう。この結果、ツールマークが発生していないにも関わらず誤判定するおそれがあるので、オーバオール値が閾値αを超え、且つ、サーボモータ16が定格回転数Rであるときにツールマークが発生したと判定するようにする。これにより、誤判定を防止することができる。
【0045】
なお、ワークWと工具12との衝突時には、サーボモータ16の回転トルクが大きくなるに伴って、モータ電流も高くなることから、オーバオール値が閾値αを超え、且つ、サーボモータ16が定格電流値であるときにツールマークが発生したと判定するようにしても構わない。また、ワークWと工具12との衝突時には、工具12を介してボーリングバー11に加工中よりも大きなスラスト荷重が加わることから、オーバオール値が閾値αを超え、且つ、ボーリングバー11に付与されるスラスト荷重が定格スラスト荷重であるときにツールマークが発生したと判定するようにしても構わない。
【0046】
ツールマーク発生時の周波数分析データからオーバオール値を求めた周波数領域を保存しておき、前回と同じ周波数分析データであった場合には、保存していた前記周波数領域を自動設定するようにする。これにより、ワーク材料や工具形状等の加工条件に応じてオーバオール値を求める周波数領域が変化しても即座に対応することができる。
【0047】
図5に示すように、ツールマークが発生することなく加工できた場合の加速度レベルから、加工開始から所定時間後のオーバオール値の最大値を求め、それぞれの最大値に安全率(例えば、1.5)を掛けた値を閾値β(図中、2点鎖線で示す)として保存しておく。そして、前回と同じ加速度レベルが検出された場合には、保存していた前記閾値を自動設定するようにする。これにより、時間ごとの閾値が求められることにより、高精度の判定をすることができる。また、ワーク材料や工具形状等の加工条件の変更によって加速度レベルが変化した場合にも自動的に対応することができる。
【0048】
アラーム信号が入力されたNC装置18はサーボモータ16の回転数を下げるようにする。これにより、振れ回り固有振動数と曲げ固有振動数とをずらすことができるので、ボーリングバー11の振動が低減され、ツールマークの進展を防止することができる。
【0049】
また、アラーム信号が入力されたNC装置18はボールスクリュー機構17の送り速度が遅くなるようにする。これにより、ツールマークによるボーリングバー11の自励振動がなくなり、ツールマークの進展を防止することができる。
【0050】
更に、アラーム信号が入力されたNC装置18は図示しない電磁加振機等によりボーリングバー11の軸方向に高周波振動を与えるようにする。これにより、工具12と深穴Waとの接触時間が少なくなるので、切削抵抗の低減に伴って、ねじり振動を低減させることができる。
【0051】
図6に示す5軸BTA加工機2のように、加速度計19を工具12に設けても構わない。この場合、加速度計19はボーリングバー11に設けられるテレメータ21とケーブル22で接続されており、テレメータ21は無線により加速度の信号を送信するようになっている。これにより、振動を精度よく検出することができる。また、テレメータ21の替わりにスリップリングを設け、ノイズの低減を図るようにしてもよい。
【0052】
ボーリングバー11の振動の検出に加速度計19に替えてひずみゲージを設け、応力レベルからツールマーク発生の判定を行うようにする。また、加速度計19に替えて変位センサを設け、ねじり固有振動数のT成分と2T成分との間の周波数領域よりも低い周波数領域にいてツールマーク発生の判定を行うようにする。
【0053】
更に、加速度計19に替えて、ボーリングバー11の回転数を検出するエンコーダや歯車を用いた電磁ピックアップ等を設け、ボーリングバー11の回転数の変化からツールマーク発生の判定を行うようにする。また、加速度計19に替えて、切削音を計測するマイクを設け、切削音の変化からツールマーク発生の判定を行うようにする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
NC工作機械を用いて深穴加工を行う場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る深穴加工装置の概略図である。
【図2】加速度の周波数分析結果を示した図である。
【図3】ツールマークが発生したときの加速度の周波数分析結果を示した図である。
【図4】オーバオール値の時間変動を示した図である。
【図5】他の閾値の設定方法を示した図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る深穴加工装置の概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1,2 5軸BTA加工機
11 ボーリングバー
12 工具
13 支持部材
15 プレッシャヘッド
16 サーボモータ
17 ボールスクリュー機構
18 NC装置
19 加速度計
20 モニタリング装置
21 テレメータ
22 ケーブル
W ワーク
Wa 深穴
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎

【識別番号】100074480
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 忠敬

【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸

【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋


【公開番号】 特開2008−6532(P2008−6532A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179017(P2006−179017)