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【発明の名称】 被覆切削工具インサート
【発明者】 【氏名】アンデルス カールッソン

【氏名】カタリナ ダール

【氏名】ヤン キイェルグレン

【氏名】ペーター リッテク

【氏名】グニラ アンデルソン

【要約】 【課題】本発明は、刃先線の堅牢性を犠牲とすることなしに高温度に耐える能力を有し、且つ向上した靱性特性を有するCVD被覆切削工具に関する。

【構成】本発明のCVD被覆切削工具に関するインサート被膜は、50−500MPaの低い引張応力レベルを有するTiCN層と、強烈な湿式ブラスト作業をその被膜に受けさせることによって得られる、AFM法によって測定された平均Ra<0.12μmを有する高い表面平滑性を有するα−Al23層とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのすくい面と少なくとも1つの逃げ面とを有し、且つ通常は多角形または円形の本体を備える超硬合金の被覆切削工具インサートであって、
前記被覆切削工具インサートは、4.4−6.6wt%、好ましくは5.0−6.0wt%、最も好ましくは5.0−5.8wt%のCoと、4−8.5wt%の立方晶炭化物と、残分のWCと、の組成を有し、且つ0.78−0.92の範囲内のCW比と、立方晶炭化物TiC、TaC及び/またはNbCが枯渇した厚さ10−40μmの表面区域と、を有し、
前記被覆切削工具インサートは、少なくとも1つのTiCxy層であってx≧0、y≧0且つx+y=1であり、好ましくはMTCVDによって溶着させられたTiCxy層を含む厚さ10−25μmの被膜で少なくとも部分的に被覆されており、且つ
α−Al23層が少なくとも前記すくい面上の外側層であり、且つ
少なくとも1つの前記すくい面上において、
− 前記TiCxy層は、3μmから、好ましくは4μmから、より好ましくは5μmから、最も好ましくは6μmから、15μmまでの、好ましくは13μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、且つ、50−500MPa、好ましくは50−450MPaの引張応力レベルを有し、
− 前記α−Al23層は、3μmから、好ましくは3.5μmから、最も好ましくは4μmから、12μmまでの、好ましくは11μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、且つ、I(012)/I(024)≧1.3の、好ましくは≧1.5のXRD回折強度比を有し、且つ少なくともすくい面上の削屑接触区域内における、平均Ra値がMRa<0.12μm、好ましくはMRa≦0.10μmを有する最も外側の層であり、且つ
前記少なくとも1つの逃げ面上において、
− 前記TiCxy層は、500−700MPaの範囲内の引張応力を有し、
− 前記α−Al23層は、I(012)/I(024)<1.5のXRD回折強度比を有し、好ましくは前記逃げ面上における異なる色を前記被覆切削工具インサートに与える薄い0.1−2.0μmのTiN、TiCxy、ZrCxy、またはTiC層で被覆されているか、または、
少なくとも1つの前記すくい面と少なくとも1つの前記逃げ面との上において、
− 前記TiCxy層は、3μmから、好ましくは4μmから、より好ましくは5μmから、最も好ましくは6μmから、15μmまでの、好ましくは13μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、且つ50−500MPa、好ましくは50−450MPaの引張応力レベルを有し、
− 前記α−Al23層は、3μmから、好ましくは3.5μmから、最も好ましくは4μmから、12μmまでの、好ましくは11μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、I(012)/I(024)≧1.3の、好ましくは≧1.5のXRD回折強度比を有し、少なくとも前記すくい面上の前記削屑接触区域内において平均Ra値MRa<0.12μm、好ましくはRa≦0.10μmを有する最も外側の層であり、且つ前記逃げ面上において、前記最も外側の層は、着色された耐熱性塗料または着色PVD層から成る、
ことを特徴とする被覆切削工具インサート。
【請求項2】
前記TiCxy層と前記Al23層との間に、薄い0.2−2μmのTiCxyz結合層を有し、x≧0、z>0、y≧0であることを特徴とする請求項1に記載の被覆切削工具インサート。
【請求項3】
前記α−Al23層は、組織係数TC(012)>1.3、好ましくはTC(012)>1.5を有する012方向の組織を有することを特徴とする請求項1または2に記載の被覆切削工具インサート。
【請求項4】
前記α−Al23層は、組織係数TC(110)>1.5を有する110方向の組織を有することを特徴とする請求項1−3のいずれか1に記載の被覆切削工具インサート。
【請求項5】
前記被覆は、5μm未満の合計層厚さに、Ti、Nb、Hf、V、Ta、Mo、Zr、Cr、W、及びAlから選択される金属元素を有する金属窒化物及び/または炭化物及び/または酸化物で構成されている追加の層を含むことを特徴とする請求項1−4のいずれか1に記載の被覆切削工具インサート。
【請求項6】
前記立方晶炭化物が枯渇した前記表面区域は、15μmから、あるいは20μmから、35μmまでの、あるいは30μmまでの、あるいは25μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の被覆切削工具インサート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先の堅牢性を犠牲とすることなしに高温度に耐える能力を備え、かつ高い切削速度における湿潤条件及び乾燥条件での仕上げ削りから荒削りの範囲内における低合金鋼と炭素鋼と強靱鋼との旋削のために特に有用である高性能の被覆切削工具インサートに関する。このインサートは、WCと、立方晶炭化物と、塑性変形に対する卓越した耐久性と高い靭性性能とを切削インサートに与えるコバルト富化表面区域を有するCoバインダ相と、を主成分としている。さらに、この被膜は、幾つかの耐摩耗性の層を備え、驚くほど改良された切削性能を工具インサートに与える表面後処理にさらされる。
【背景技術】
【0002】
今日の切削工具の大半が、TiC、TiCxy、TiN、TiCxyz、及びAl23のような幾つかの硬質層によって被覆されている超硬合金インサートに基づいている。個々の層の順序と厚さが、様々な切削用途分野と被加工物材料とに適合するように慎重に選択される。最も頻繁に使用される被覆方法が化学気相成長法(CVD)と物理気相成長法(PVD)である。CVD被覆インサートは、特に、非被覆インサートに比べて、逃げ面及びクレータの耐摩耗性に関して顕著な利点を有する。
【0003】
CVD法は、950℃から1050℃の非常に高い温度範囲で行われる。この高い蒸着温度と、溶着させられる被覆材料と超硬合金工具インサートとの間の熱膨張係数の不整合とのために、CVDは、冷却亀裂と高い引張応力(時として1000MPaまで)とを有する被膜を結果的に生じさせる可能性がある。この高い引張応力は、特定の切削条件下においては、冷却亀裂が超硬合金本体の中にさらに伝搬することを引き起こして刃先の破損の原因となることがあるので、不利である可能性がある。
【0004】
金属切削産業においては、切削条件限界、すなわち、低速度での断続切削中の破損または剥離に耐える能力を犠牲することなしに、より高い切削速度に耐える能力を増大させることに常に努力が払われている。
【0005】
応用範囲における重要な改良が、バインダ相富化表面区域と最適化されたより厚い被膜とをインサートに組み合わせることによって実現されている。
【0006】
しかし、被膜厚さの増大に伴って、被膜の層間剥離の可能性の増大と切削工具の信頼性を低下させる靭性の低下との形でのマイナスの効果の増大が、耐摩耗性に対するプラスの効果を上回る。このことが、特に、低炭素鋼とステンレス鋼とのようなより柔らかい被加工物材料に対して、及び被膜厚さが5−10μmを超える時に、当てはまる。さらに、厚い被膜は、一般的に、低炭素鋼とステンレス鋼とのようなスミアリング材料を切削する時にはマイナスの特徴である、より不均一な表面を有する。解決策が、例えば欧州特許第0298729号と欧州特許第1306150号と欧州特許第0736615号のような幾つかの特許に開示されているように、ブラシ研磨または湿式ブラストによる被膜の後からの平滑化作業を加えることであることが可能である。米国特許第5,861,210号では、その目的が、例えば、滑らかな刃先を実現することと、すくい面上の最も外側の層としてAl23を露出させて、摩耗検出層として使用される逃げ側面上のTiNを残すこととであった。剥離に対する高い耐久性を有する被膜が得られる。
【0007】
例えば湿式ブラスト法または乾式ブラスト法のような、例えば被膜表面のような表面を機械的衝撃に対して曝すあらゆる後処理方法が、被膜の表面仕上げと応力状態(σ)に対して何らかの影響を与える。
【0008】
強烈なブラスト衝撃が、CVD被覆における引張応力を低下させることがあるが、このことは、冷却亀裂に沿った溝の形成による被膜表面仕上げの逸失という代償を伴うか、または、被膜の層間剥離さえも生じさせる可能性がある。
【0009】
非常に強烈な処理が、さらには、応力状態の大きな変化、例えば、乾式ブラスト法が使用されている欧州特許第A−1311712号に開示されているような高度の引張り状態から高度の圧縮状態への応力状態の変化を生じさせることがある。
【0010】
現在では、特定の超硬合金基体組成と特定の被膜構造及び厚さとの組み合わせを有し、かつ、調整された条件下で湿式ブラスト法によって後処理された切削工具インサートが、従来技術の切削工具インサートの場合よりも広範囲の用途において卓越した切削特性を実現するということが、驚くべきことに発見されている。
【0011】
コバルトバインダ相がWと共に高合金化される。このバインダ相中のWの含有量はCW比として表されることが可能である。
CW比=Ms/(wt−%Co*0.0161)
前式中で、Ms=測定された飽和磁化(hAm2/kg単位)であり、wt−%Coは超硬合金中のコバルト含有量である。低いCW比は、Coバインダ相中の高W含有量に対応する。使用される後処理が、被膜に対して適切な引張応力レベルをもたらし、Al23層に特定の重要な結晶学的な特徴を与え、且つ卓越した表面仕上げを伴う頂部表面を実現する。
【0012】
ブラスト技術との上述の組み合わせは、性能を犠牲にせずに適用されることが可能な被膜厚さの限界を効果的に拡大する。本発明の結果として、他の追従を許さない広さの応用範囲が実現可能である。靭性挙動と被膜接着とに関して実現されたこの大きな改善は驚くべきものであった。
【0013】
ブラストによって被膜の応力状態を大きく変化させるために、例えばAl23グリットのようなブラスト媒体が、強い衝撃を伴って被膜表面に衝突しなければならない。この衝撃力は、例えば、ブラストパルプ圧力(湿式ブラスト法)と、ブラストノズルと被膜表面との間の距離と、ブラスト媒体の粒度と、ブラスト媒体の濃度と、ブラストジェットの衝突角とによって、調整されることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、刃先の堅牢性または靭性を犠牲とすることなしに高温度に耐える能力を有する、向上した靭性特性を持つCVD被覆工具インサートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
図1は、X線測定による残留応力の評価のためのゴニオメータ機構を示し、この機構では、
E=オイラー 1/4クレードル、
S=試料、
I=入射X線ビーム、
D=回折X線ビーム、
θ=回折角、
ω=θ、
ψ=オイラー 1/4クレードルに沿った傾斜角、
φ=試料軸線を中心とした回転角。
【0016】
したがって、本発明は、被膜と炭化物基体とを備える、少なくとも1つのすくい面と少なくとも1つの逃げ面とを有する、概ね多角形または円形の本体を備える、被覆切削工具インサートに関する。この本体は、4.4−6.6wt%のCo、好ましくは5.0−6.0wt%のCo、最も好ましくは5.0−5.8wt%のCoと、4−8.5wt%の立方晶炭化物と、残分のWC、好ましくは85−91wt%のWC、最も好ましくは87−90wt%のWCという組成を有し、且つ好ましくは1−4μmの平均粒度と、0.78−0.92の範囲内のCW比と、立方晶炭化物TiC、TaC及び/またはNbCが枯渇した表面区域とを有する。
【0017】
立方晶炭化物が枯渇した上記の表面区域は、10μmから、代わりとして15μmから、または代わりとして20μmから、40μmまでの、代わりとして35μmまでの、代わりとして30μmまでの、または代わりとして25μmまでの厚さを有する。
【0018】
この被膜は、少なくとも1つのTiCxNy層と、100%のα−Al23の高結晶性の層とを含む。こうしたα−Al23層の1つが、すくい面上のかつ刃先線に沿った最も外側の可視的な層であり、且つこの層は、Al23層とTiCxy層の両方における引張応力の緩和を生じさせるために、十分に高いエネルギーで強烈に湿式ブラストされることが可能である。最も外側のAl23層は、少なくともすくい面上の削屑接触区域内においては、非常に滑らかな表面を有する。
【0019】
概ね多角形または円形の本体を備える被覆切削工具インサートが少なくとも1つのすくい面と少なくとも1つの逃げ面とを有する場合に、著しい向上した靱性性能が実現されることが可能であるということが、驚くべきことに発見されており、上記インサートは、
− 3μmから、好ましくは4μmから、より好ましくは5μmから、最も好ましくは6μmから、15μmまでの、好ましくは13μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、且つMTCVDによって生産されることが好ましく、且つ50−500MPaの引張応力、好ましくは50−450MPaの引張応力、最も好ましくは50−400MPaの引張応力を有し、且つx≧0、y≧0、x+y=1である、最後から2番目のTiCxy層と、
− 3μmから、好ましくは3.5μmから、最も好ましくは4μmから、12μmまでの、好ましくは11μmまでの、最も好ましくは10μmまでの厚さを有し、原子間力顕微鏡検査(AFM)によって10μm×10μmの区域全体にわたって測定された、少なくともすくい面の削屑接触区域内における、平均粗度Ra<0.12μm、好ましくはRa≦0.10μmを有し、且つI(012)/I(024)≧1.3の、好ましくは≧1.5のXRD回折強度(ピーク高さからバックグラウンドを差し引く)比を有する、すくい面上のかつ刃先線に沿った最も外側の層である、外側α−Al23層、
という特徴を有するように、少なくとも部分的に被覆されて、生産される。
【0020】
TiCxNy層とα−Al23層との間に薄い0.2−2μmのTiCxyz結合層が存在し、x≧0、z>0且つy≧0であることが好ましい。これらの2つの層の合計厚さが25μm以下である。
【0021】
さらに、本発明によって、5μm未満の合計被膜厚さに、Ti、Nb、Hf、V、Ta、Mo、Zr、Cr、W及びAlから選択される金属元素を有する金属窒化物及び/または炭化物及び/または酸化物で構成されている追加の層が、基体と上記の層との間の被膜構造の中に組み入れられることが可能である。
【0022】
TiCxy層内に多少の引張応力を残すことが好ましいが、これは、こうした生じさせられた圧縮応力が、依然として存在している多少の引張応力を被膜が有する場合に比較して、切削動作中に生じる温度上昇に関して安定していなかったということが発見されたからである。さらに、圧縮応力がブラストによって生じさせられる場合には、非常に大きなブラスト衝撃力が必要とされ、且つこうした条件の下では、その被膜の剥離が刃先に沿って頻繁に発生するということも発見された。
【0023】
内側TiCxy層の残留応力σは、I.C.Noyan,J.B.Cohen,Residual Stress Measurement by Diffraction and Interpretation,Springer−Verlag,New York,1987(pp.117−130)によって説明されている公知のsin2ψ法を使用してXRD測定によって求められる。この測定は、図1に示されているゴニオメータ機構を用いたTiCxy(422)反射上のCuKα放射線を使用して行われる。この測定は、可能な限り平坦な表面上で行われる。0−0.5のsin2ψ範囲(ψ=45°)内の等距離の6個から11個のψ角に関して側斜法(ψジオメトリ)を使用することが推奨される。90°のφセクタ内のφ角の等距離分布も好ましい。2軸応力状態を確認するために、試料は、ψに傾斜されられると同時にφ=0°且つ90°に回転させられるだろう。剪断応力の存在の可能性を調査することが推奨され、且つしたがって、正及び負のψ角の両方が測定されるだろう。オイラー 1/4クレードルの場合には、これは、異なるψ角に関してφ=180°及び270°においても試料を測定することによって実現される。このsin2ψ法は、好ましくは、MTCVD Ti(C,N)層の場合に定数ヤング係数E=480GPa及びポアゾン比ν=0.20を用いてBruker AXS製のDIFFRACPlus Stress32 v.1.04のような何らかの市販のソフトウェアを使用し、且つ疑似フォークト関数(Pseudo−Voigt−Fit function)を使用して反射を発見することによって、残留応力を評価するために使用される。次の場合には、E係数=480GPa及びポアゾン比v=0.20というパラメータが使用される。2軸応力状態の場合には、引張応力は、得られた2軸応力の平均として算出される。
【0024】
α−Al23の場合には、必要とされる高い2θ角XRD反射が過剰に弱い場合が多いので、sin2ψ法を使用することが一般的に不可能である。しかし、α−Al23の状態を切削性能に関係付ける有効な別の測定が発見されている。
【0025】
α−Al23粉末の場合には、回折強度比I(012)/I(024)は1.5に近い。粉末回折ファイルJCPDS No.43−1484が強度I0(012)=72且つI0(024)=48を示している。超硬合金上の引張応力(σ約>350MPa)CVD α−Al23層の場合には、強度比I(012)/I(024)は、驚くべきことに、期待値1.5よりも著しく低く、多くの場合には1未満である。これは、引張応力によって生じさせられる結晶格子の何らかの不規則性を原因とするだろう。こうした層が、例えば強烈なブラスト作業によって応力緩和される時に、または、基体からすでに完全に取り除かれて粉末化されている場合には、回折強度比I(012)/I(024)は1.5により近くなるか、1.5に等しくなるか、または、さらには1.5よりも大きくなるということが発見されている。加えられるブラスト力が大きければ大きいほど、この回折強度比は高いだろう。したがって、この強度比はα−Al23層の重要な状態特徴として使用されることが可能である。
【0026】
本発明によって、切削工具インサートが、最後から2番目のTiCxy層と外側のα−Al23層とを含むCVD被膜を備える。このAl23は、組織係数TC(012)>1.3、好ましくは>1.5を有する012方向における結晶組織をAl23層に与える欧州特許第603144号によって形成されることが可能であり、または、組織係数TC(110)>1.5を有する110方向における組織を与える米国特許第5,851,687号と同第5,702,808号とにしたがって形成されることが可能である。高度の表面平滑性と低い引張応力レベルとを得るために、その被膜は、約10−20秒/インサートの場合に、2.2−2.6バールの空気圧において、水中のAl23のF150グリット(FEPA規格)から成るスラリーを用いる湿式ブラスト作業を受ける。スプレーガンが90°の噴霧角を伴ってインサートから約100mmの距離に配置される。インサートは、黒いすくい面とは異なる色を逃げ側面に有する。TiN(黄色)、TiCxy(灰色またはブロンズ色)、ZrCxy(赤みがかった色またはブロンズ色)(この場合にx≧0、y≧0、かつ、x+y=1)、または、TiC(灰色)の、最も外側の0.1−2.0μmの薄い着色層が溶着させられることが好ましい。その次に、そのインサートはブラストされ、最上部の層を取り除いて黒色のAl23層を露出させる。すくい面上の被膜は、低い望ましい引張応力50−500MPaを有し、一方、逃げ側面は500−700MPaの範囲内の高い引張応力を有し、且つすくい面上の引張応力は、被膜の選択と、使用される超硬合金インサートの熱膨張係数(CTE)とに応じて、逃げ面上の引張応力よりも低い。本発明の別の実施形態では、被覆されたインサートがすくい面と逃げ側面との両方においてブラストされ、且つ使用される刃先を識別する可能性を得るために、着色耐熱性塗料が逃げ側面上に噴霧されるか、または、着色PVD層が逃げ側面上に溶着させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
実施例1
次の試料が調製された。
A)約2μmの平均粒度を有し、かつ、立方晶炭化物が枯渇した厚さ約29μmの表面区域を有する、5.5wt%のCoと、2.9wt%のTaCと、0.5wt%のNbCと、1.4wt%のTiCと、0.9wt%のTiNと、残分のWCという組成を有する超硬合金切削インサート。
B)約2μmの平均粒度を有し、かつ、立方晶炭化物が枯渇した厚さ約18μmの表面区域を有する、5.5wt%のCoと、2.9wt%のTaCと、0.5wt%のNbCと、1.9wt%のTiCと、0.4wt%のTiNと、残分のWCという組成を有する超硬合金切削インサート。
C)約2μmの平均粒度を有し、かつ、立方晶炭化物が枯渇した厚さ約23μmの表面区域を有する、5.5wt%のCoと、2.9wt%のTaCと、0.5wt%のNbCと、1.6wt%のTiCと、0.7wt%のTiNと、残分のWCという組成を有する超硬合金切削インサート。
【0028】
A)からC)に関する飽和磁化Msが、0.87のCW比の場合に、0.077hAm2/kgであることが測定された。A)からC)のインサートは、930℃において従来通りのCVD法を使用して0.5μm厚のTiN層で被覆され、且つその次に、885℃の温度において処理ガスとしてTiCl4、H2、N2、及びCH3CNを使用するMTCVD法を使用して7μmのTiCxy層で被覆された。同じ被覆サイクル中の後続の処理段階では、厚さ約0.5μmのTiCxz層が、TiCl4、CO、及びH2を使用して1000℃で溶着させられ、且つその次に、Al23処理が厚さ7μmのα−Al23層が溶着させられる前に、2%のCO2と3.2%のHClと94.8%のH2との混合物によって2分間にわたって反応器をフラッシュすることによって凝視された。最上部には厚さ約0.5μmの薄いTiN層が溶着させられた。この溶着段階中の処理条件は次の通りである。
【0029】
TiC TiCxNy TiCxOz Al2O3開始 Al2O3
段階 1及び6 2 3 4 5
TiCl4 1.5% 1.4% 2%
N2 38% 38%
CO2 2% 4%
CO 6%
AlCl3 3.2%
H2S − 0.3%
HCl 3.2% 3.2%
H2 残部 残部 残部 残部 残部
CH3CN − 0.6%
圧力 160mbar 60mbar 60mbar 60mbar 70mbar
温度 930℃ 885℃ 1000℃ 1000℃ 1000℃
時間 30分 4.5時間 20分 2分 7時間
【0030】
追加のインサートが次の通りである。
D)TiCxy層の厚さが6μmでありかつα−Al23層の厚さが10μmであるということだけが異なる、A)の場合と同一のタイプの超硬合金切削インサートが、TiCxy溶着時間が4時間でありかつAl23層の溶着時間が10時間であるということを除いて同一の処理条件を使用して製造された。
E)TiCxy層の厚さが6μmでありかつα−Al23層の厚さが10μmであるということだけが異なる、B)の場合と同一のタイプの超硬合金切削インサートが、TiCxy溶着時間が4時間でありかつAl23層の溶着時間が10時間であるということを除いて同一の処理条件を使用して製造された。
F)TiCxy層の厚さが6μmでありかつα−Al23層の厚さが10μmであるということだけが異なる、C)の場合と同一のタイプの超硬合金切削インサートが、TiCxy溶着時間が4時間でありかつAl23溶着時間が10時間であるということを除いて同一の処理条件を使用して製造された。
【0031】
A)からF)によるインサートの溶着Al23層のXRD分析が、このAl23層が、次の通りに定義される組織係数TC(012)=1.6を有するα相だけから成るということを示した。
【0032】
TC(012)=((I(012)/I(012)){1/nΣ(I(hkl)/I(hkl))}−1
【0033】
前式中で、
I(hkl)=(hkl)反射の測定された強度、
Io(hkl)=粉末回折ファイルJCPDS No43−1484の標準強度、
n=計算に使用された反射の数、
使用された(hkl)反射は、(012)、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)である。
【0034】
A)からF)による被覆インサートは、2.4バールのブラスト圧力と20秒の露出時間とを使用してそのインサートのすくい面をブラストする、上述のブラスト法によって後処理された。
【0035】
公知の粗度値Raとして表されている被膜表面の平滑性が、Surface Imaging System AG(SIS)製の装置上においてAFMによって測定された。この粗度は、すくい面上の削屑接触区域内の10個のランダムに選択された平面表面区域(10μm×10μm)上で測定された。これら10個のRa値から結果的に得られた平均値MRaが0.11μmだった。
【0036】
ブラッグ−ブレンターノ回折計(Bragg−Brentano diffractometer)であるSiemens D5000を使用したX線回折分析が、Cu Kα放射線を使用してI(012)/I(024)比を求めるために使用された。
【0037】
逃げ側面上で得られたI(012)/I(024)比が約1.4だった。すくい面上の対応する測定が、得られたI(012)/I(024)比が約2.2であることを示した。
【0038】
レーザビデオ位置決めと、オイラー 1/4クレードルと、X線源(CuKα放射線)としての回転アノードと、エリア検出器(Hi−star)とを備えている、X線回折計であるBruker D8 Discover−GADDS上のψジオメトリを使用して、残留応力が求められた。サイズ0.5mmのコリメータが、ビームを集束させるために使用された。分析が、2θ=126°、ω=63°、及びφ=0°、90°、180°、270°というゴニオメータ設定を使用して、TiCxy(422)反射に対して行われた。0°から70°の間の8つのψチルトが、各々のφ角に関して行われた。sin2ψ法が、定数ヤング係数E=480GPa及びポアゾン比ν=0.20を用いてBruker AXS製のDIFFRACPlus Stress32 v.1.04ソフトウェアを使用し、且つ疑似フォークト関数を使用して反射を発見することによって、残留応力を評価するために使用された。2軸応力状態が確認され、且つその平均値が残留応力値として使用された。測定がすくい面と逃げ側面の両方上で行われた。逃げ側面上で得られた引張応力が、A)からF)によるインサートに関して約630MPaだった。すくい面上での対応する測定が、約370MPaの引張応力がA)からC)によるインサートに関して得られ、且つ約390MPaの引張応力がD)からF)によるインサートに関して得られたことを示した。
【0039】
実施例2
断続切削を伴う縦方向の旋削作業における靭性に関して、実施例1からのインサートA)を試験し、ブラストされていない市販インサート(P15エリア内における高性能インサート)に対して比較した。
【0040】
材料:炭素鋼SS1312
切削データ:
切削速度=120m/分
切削深さ=1.5mm
送り =0.15mmで開始し、刃先の破損まで0.08mm/分ずつ段階的に増大させた。
各々の変型の10個の刃先を試験した。
インサート型式:CNMG120408−PM
結果: 破損時の平均送り
市販インサート 0.244mm/回転
実施例1からのインサートA) 0.275mm/回転
【0041】
実施例3
断続切削を伴う縦方向の旋削作業における靭性に関して、実施例1からのインサートD)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。
【0042】
材料:炭素鋼SS1312
切削データ:
切削速度= 140m/分
切削深さ= 1.5mm
送り= 0.15mmで開始し、刃先の破損まで0.08mm/分ずつ段階的に増大させた。
各々の変型の10個の刃先を試験した。
インサート型式:CNMG120408−PM
結果: 破損時の平均送り
市販インサート 0.232mm/回転
実施例1からのインサートD) 0.315mm/回転
【0043】
実施例4
SS2541の面削り作業における総塑性変形に対する耐久性に関して、実施例1からのインサートA)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。
【0044】
切削データ:
切削速度= 220m/分
送り= 0.35mm/回転
切削深さ= 2mm
工具寿命の判定基準:逃げ面摩耗>=0.5mm
結果: 工具寿命に達するのに要した機械加工サイクル数
市販インサート 65
実施例1からのインサートA) 85
【0045】
実施例5
SS2244−05の旋削における刃先付近の塑性変形に対する耐久性に関して、実施例1からのインサートA)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。
【0046】
切削データ
切削速度=200m/分
送り =0.35mm/回転
切削深さ=2.5mm
工具寿命の判定基準:逃げ面摩耗>=0.4mm
結果
工具寿命に達するのに要した機械加工サイクル数
市販インサート 19
実施例1からのインサートA) 27*
*インサートA)対する試験は、規定された工具寿命判定基準に依然として達しないまま、27サイクル後に時期尚早に終了させられた。
【0047】
実施例3から実施例5は、本発明による実施例1からのインサートA)とインサートD)とが、従来技術によるインサートに比較して、より優れた靭性挙動と組み合わされた、著しくより優れた塑性変形に対する耐久性を有するということを示す。
【0048】
実施例6
断続切削を伴う縦方向の旋削作業における靭性に関して、実施例1からのインサートB)、C)、E)、F)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。
【0049】
材料:炭素鋼SS1312
切削データ
切削速度=150m/分
切削深さ=1.5mm
送り =0.15mmで開始し、刃先の破損まで0.08mm/分ずつ段階的に増大させた。
各々の変型の10個の刃先を試験した。
インサート型式: CNMG120408−PM
【0050】
結果
破損時の平均送り(mm/回転)
市販インサート 0.206
B) 0.270
C) 0.259
E) 0.230
F) 0.216
【0051】
実施例7
SS2541の面削り作業における総塑性変形に対する耐久性に関して、実施例1からのインサートB)及びC)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。
【0052】
切削データ
切削速度=200m/分
送り =0.35mm/回転
切削深さ=2mm
工具寿命の判定基準:逃げ面摩耗>=0.5mm
インサート型式:CNMG120408−PM
【0053】
結果
工具寿命に達するのに要した機械加工のサイクル数
市販インサート 59.3
B) 61
C) 63
【0054】
実施例8
SS2541の面削り作業における総塑性変形に対する耐久性に関して、実施例1からのインサートB)、C)、E)、F)を試験し、実施例2の市販インサートと同じ市販インサートに対して比較した。この試験は、2つの異なるインサートスタイル、すなわち、CNMG160612−PR(刃長=16mm)とCNMG190612−PR(刃長=19mm)とによって代表される、2つの異なるインサートサイズを含んだ。
【0055】
切削データ:
切削速度= 220m/分
送り= 0.35mm/回転
切削深さ= 3mm
工具寿命の判定基準:逃げ面摩耗>=0.5mm
【0056】
結果
工具寿命に達するのに要した機械加工のサイクル数
CNMG160612−PR CNMG190612−PR
市販インサート 36 50
B) 52 70
C) 45 52
E) 51 77
F) 51 58
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】X線測定による残留応力の評価のためのゴニオメータ機構を示す。
【符号の説明】
【0058】
E オイラー 1/4クレードル
S 試料
I 入射X線ビーム
D 回折X線ビーム
θ 回折角
ω θ
ψ オイラー 1/4クレードルに沿った傾斜角
φ 試料軸線を中心とした回転角
【出願人】 【識別番号】505277521
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
【出願日】 平成19年6月15日(2007.6.15)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏

【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康


【公開番号】 特開2008−886(P2008−886A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2007−158663(P2007−158663)