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【発明の名称】 ツイストドリル
【発明者】 【氏名】工藤 三十四

【要約】 【課題】銅及び銅合金の深穴加工に適したドリルを提供すること。

【構成】ツイストドリルにおいて、先端側から基端側に向けて縮径する、0.056/100〜0.187/100の範囲のバックテーパを設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツイストドリルの先端側から基端側に向けて縮径する、0.056/100〜0.187/100の範囲のバックテーパを設けたことを特徴とするツイストドリル。
【請求項2】
前記ツイストドリルの最大直径(D1)と前記バックテーパにより縮径された直径(D2)との差(Δ)が0.14mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のツイストドリル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅及び銅合金の穴あけに適したツイストドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドリルを使った穴あけ加工時に、加工された穴の側壁とドリルとの接触による回転抵抗の増大を防ぐために、ドリルには先端から基端に向かって細くなるバックテーパが付けられており、このバックテーパの値は通常は0.01/100〜0.02/100の範囲で設定されている。しかしながら、このようにバックテーパの付いたドリルを使っても、銅あるいは銅合金にドリル径の例えば20倍以上の深さを有する深穴を加工する場合には、鉄鋼を加工する場合に比べてドリルの折損が頻発し加工コストを上昇させていた。
【0003】
また特許文献1では、バックテーパを0.1/100〜0.4/100の範囲に設定したドリルが提案されているが、この値の範囲が銅及び銅合金に適した範囲であるかについては説明がない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−126927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、銅及び銅合金の深穴加工に適したドリルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、ツイストドリルの先端側から基端側に向けて縮径する、0.056/100〜0.187/100の範囲のバックテーパを設けたことを特徴としている。このように、バックテーパを前記の範囲に設定することにより、銅及び銅合金に深穴を加工する場合であっても折損し難いドリルが得られる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のツイストドリルが、ツイストドリルの最大直径(D1)とバックテーパにより縮径された直径(D2)との差(Δ)が0.14mm以下であることを特徴としている。これにより、請求項1の発明のドリルの効果に加えて、切りくずの噛み込みの発生しないドリルが得られる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2は本発明の実施例のツイストドリルを模式的に示した正面図であり、分かりやすくするために各部の寸法は縮尺に従わずに、特にテーパーは誇張して示している。
【0011】
図1のツイストドリルAは、本実施例ではφ9mmの外径D1及び300mmの全長Lを有するロングドリルであり、切刃と118度の先端角を有する先端部2と、基端側のストレート部4と、前記先端部2とストレート部4との間のバックテーパ部3とから構成されている。バックテーパ部3は、250mmの長さL1を有し、そこには先端側から基端側に向かって細くなる0.056/100のテーパが付けられており、また図示されていないが約35度のねじれ角の一対のねじれ溝が螺旋状に形成されている。ストレート部4は、バックテーパ部3の最小径に等しいφ8.86mmで一定の外径D2を有しており、またそこには前記ねじれ溝は形成されていない。この実施例ではストレート部4は加工機に固定される固定部5でもある。
【0012】
図2のツイストドリルBは、図1のツイストドリルAと同一のφ9mmの外径D1と300mmの全長Lを有しているが、図示されるようにバックテーパ部3のテーパが大きく0.187/100に設定されて、その長さL1は75mmであり図1のものより短くなっている。ストレート部4は、固定部5と、該固定部5とバックテーパ部3との間の外径逃がし部6とから構成され、前記固定部5と外径逃がし部6は共に図1のストレート部4と同一のφ8.86mmの外径D2を有している。また図示されていないが、一対のねじれ溝がバックテーパ部3から外径逃がし部6にかけて形成されているが、固定部5には形成されていない。
【0013】
ここで、図1及び図2の実施例を詳しく説明する前に、被加工材と穴径の誤差の関係を表1を参照して説明する。表1は、従来タイプの呼び径φ9mmのドリルを使って深さ250mmの穴を鋼材と銅合金にあけた場合の穴径の実測データを示すものである。表1に示されるように鋼材の場合は、呼び径に対して0.05〜0.10mmプラスに加工されるのに対して、銅合金の場合は0.02〜0.05mmマイナスに加工された。このデータを基に幾何学的な検討を加えると、穴径が0.05mmマイナスの場合、従来タイプのバックテーパが0.02/100のドリルであれば穴深さ250mmの全長にわたって加工穴の側壁と接触して抵抗を受けていたこととなる。
【表1】


【0014】
表1で得られたデータをもとに、本発明による図1のドリルのバックテーパ値は、一般的なドリルのバックテーパより大きく0.056/100に設定されている。このバックテーパ値より小さくなると、被削材の加工穴側面とドリルとの摩擦抵抗が増大し、例えばバックテーパ0.04/100のドリルでは後述するようにドリルの折損が起こりやすくなる。
【0015】
一方前記図2のドリルBでは、バックテーパの値は0.187/100に設定されている。バックテーパをこのように大きくすることで加工穴側面とドリルとの接触領域が減少し、ドリルの折損の確率がさらに低下するが、この値(0.187/100)より大きくすると、加工穴側壁によるドリルのガイド機能が低下することからドリルの直進性が低下して穴曲がりが生じやすくなる。
【0016】
前述のとおり、図1のドリルAと図2のドリルBは、それぞれ本発明のドリルのなかの最小バックテーパを有するドリルと最大バックテーパを有するドリルである。
【0017】
また図2のドリルBでは、ストレート部4の外径逃がし部6の直径を図1のドリルのストレート部4と同一のφ8.86mmを維持することを条件としてバックテーパ部3の長さL1を決めている。この結果、外径逃がし部6と呼び径との直径の差Δは0.14mmとなっている。これは、前記差Δが0.14mmを超えて加工穴側壁との隙間が増大すると次第に切りくずの噛み込みが発生しやすくなることが判ったためである。なお、この差Δを0.14mm未満に設定することも本発明において可能であり、前述のバックテーパの範囲において加工条件に応じて最適な値に設定してよい。
【0018】
次に、表2を参照して、本発明のドリルの耐久性について説明する。表2は、図1及び図2に示したドリルA及びBと、比較のためにバックテーパを0.04/100と小さくしたドリルCとを用いて銅合金に対して深さ250mmの穴あけ加工を行い、ドリルが折損するまでに加工した穴数を調べた結果をまとめたものである。前記比較のためのドリルCは、ストレート部が固定部だけから構成される図1のドリルAと同様の形状を有するものである。3種類のドリルは、バックテーパは異なるが、その他の例えば刃先形状あるいはねじれ溝の形状等は同一である。また材質は高速度工具鋼である。一方、被削材は(株)神戸製鋼所で開発され商品名「HR750」として市販されている銅合金である。
【表2】


【0019】
加工は、切削速度17.1m/min、回転数605rpm、送り73m/minで行われ、潤滑剤には水溶性潤滑剤が用いられた。実験の結果は、表2に示すように、図2のドリルBが最も多い18ケの穴を加工でき、次いで図1のドリルAが17ケ、ドリルCは7ケで、ドリルA及びBのドリルCに対する折れ難さが示された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のツイストドリルの実施例のバックテーパが最小のものの概略正面図である。
【図2】本発明のツイストドリルの実施例のバックテーパが最大のものの概略正面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 先端部
3 バックテーパ部
4 ストレート部
5 固定部
6 外径逃がし部
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一

【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎

【識別番号】100110489
【弁理士】
【氏名又は名称】篠崎 正海


【公開番号】 特開2008−875(P2008−875A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175709(P2006−175709)