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【発明の名称】 多糖類により金属微粒子を包接してなる複合体及びその応用物
【発明者】 【氏名】藤島 武蔵

【氏名】北川 宏

【氏名】内田 熊男

【要約】 【課題】簡便な合成プロセスにより合成でき、室温下で高い水素イオン伝導性をもちながら、低コストかつ低環境負荷な、炭水化物系高分子と金属微粒子の複合体の提供。

【解決手段】金属微粒子を多糖類により包接してなる複合体とする。詳細には、酸性多糖類、塩基性多糖類、又は酸性多糖類と塩基性多糖類の会合体により包接してなる複合体とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子を多糖類により包接してなる複合体。
【請求項2】
前記金属微粒子が白金(Pt)の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記金属微粒子がパラジウム(Pd)の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項4】
前記金属微粒子の平均粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項5】
前記金属微粒子の平均粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする請求項3記載の複合体。
【請求項6】
前記金属微粒子が、Ni、Cu、Ag、Auから選択されるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項7】
前記多糖類が、酸性多糖類、塩基性多糖類、及び酸性多糖類と塩基性多糖類の会合体から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
前記酸性多糖類が、カラジーナン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース及びグリコサミノグリカンから選択される一種以上であることを特徴とする請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記塩基性多糖類がキトサンであることを特徴とする請求項7に記載の複合体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池用固体電解質。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池用膜・電極接合体。
【請求項12】
請求項3又は5に記載の複合体を含有することを特徴とする水素吸蔵媒体。
【請求項13】
請求項3又は5に記載の複合体を含有することを特徴とする二次電池用水素化物電極。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする湿度センサー。
【請求項15】
請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする光応答型水素発生触媒。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類により金属微粒子を包接してなる複合体及びその応用物に関し、より詳しくは、低環境負荷で資源が無尽蔵な酸性多糖類、塩基性多糖類、酸性多糖類と塩基性多糖類の会合体により、高い触媒活性を示す金属微粒子を包接してなる複合体、及び該複合体を応用した燃料電池用固体電解質、燃料電池用膜・電極接合体、水素吸蔵媒体、二次電池用水素化物電極、湿度センサー、並びに光応答型水素発生触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小規模発電においてもエネルギー効率が落ちず、低コスト化が期待できる燃料電池が、汎用的に用いられる電力源として期待されている。
燃料電池において、電解質中をイオンが移動できる温度(以下、「作動温度」と称す)は、電解質の材料によって左右される。
燃料電池が作動するためには、この作動温度まで昇温する必要がある。
作動温度は、ジルコニア系セラミックスを電解質として用いる固体酸化型燃料電池(SOFC)においては700〜1000℃、Li−Na/K系炭酸塩を電解質として用いる溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)においては650〜700℃、リン酸を電解質として用いるリン酸型燃料電池(PAFC)においては150〜200℃であるのに対し、高分子電解質膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池においては、常温〜90℃である。
【0003】
このような観点から、電気自動車用電源、住宅用電源システムおよび携帯電話などのモバイル機器の電源として、室温付近の温度領域で使用できる固体高分子型燃料電池が注目を集めている。
従来は、固体高分子型燃料電池において電解質として用いられる水素イオン伝導体として、高い電気伝導性を示し、化学的に安定な有機フッ素系高分子が使用されている。また、最近、高分子に金属微粒子を添加することで、高分子単体のときよりも電気伝導性が向上することが見出されており、有機材料と無機材料が持つ機能の複合化に立脚した、新しいタイプの水素イオン伝導体として期待されている。
水素イオン伝導体としての機能を利用した応用技術としては、前述した如き燃料電池の電解質の構成成分の他に、水素吸蔵媒体、水素発生触媒等を例示することができる。
【0004】
フッ素系高分子を用いた固体高分子型燃料電池に関する技術として、特許文献1を例示することができる。
特許文献1には、CF2=CFCF2OCF2CF2SO3Hに基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体であり、かつ、イオン交換容量が0.9〜1.5[ミリ当量/グラム乾燥樹脂]であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電解質材料が開示されている。
【0005】
水素吸蔵媒体に関する技術として、特許文献2を例示することができる。
特許文献2には、マグネシウム微粒子が複合化された、主組成が炭素(C)からなる母材で構成される水素吸蔵体であって、炭素(C)を主成分とし、さらに炭素以外の元素としてV族元素を含有する材料で構成された、多数の細孔を有する多孔質構造体からなる母材と、前記多孔質構造体にマグネシウム微粒子が複合化された構成を有する水素吸蔵体が開示されている。
【0006】
水素発生触媒に関する技術として、特許文献3を例示することができる。
特許文献3には、中心細孔直径が1〜30nmであり、且つ全細孔容積に占める中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上であるシリカ系多孔体にガリウムを担持せしめた形態を有する水素発生触媒が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−231268号公報
【特許文献2】特開2005−218975号公報
【特許文献3】特開2002−249301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される如き従来の水素イオン伝導体においては、電気伝導性の向上のみに主眼が置かれており、自然環境への負荷の低減を実現するものではなかった。近年、自然環境への負荷の低減に対する意識がますます高まりつつあることから、原料・製造のコストが低く、かつ安全で毒性の少ない材料を用いて、実用に耐えうる水素イオン伝導体を開発する必要がある。そのためには、有機フッ素を含まない炭水化物系高分子を使用するのが望ましいが、高分子単体で実現できる機能は限られており、これらの全ての条件を満たす材料を開発するのは非常に困難である。
【0009】
さらに、特許文献2に開示される如き従来の水素吸蔵媒体は、多孔質であるという構造上、十分な機械的強度を示すものではなく、各種素材への応用において限界を有するものであった。
【0010】
特許文献3に開示される如き従来の水素発生触媒は、多孔質体に金属粒子を付着させた形態を有するものであり、金属粒子の脱落や酸化による劣化を防止しうるものではなく、有機物の水素化において十分な効率を示すものではなかった。
【0011】
本発明は、上記した如き課題に鑑みてなされたものであって、炭水化物系高分子である多糖類と金属微粒子の複合体を用いることにより、簡便な合成プロセスを用いて、室温下で高い水素イオン伝導性をもちながら、低コストかつ低環境負荷で、十分な機械的強度を示す、炭水化物系高分子と金属微粒子の複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、請求項1に係る発明は、金属微粒子を多糖類により包接してなる複合体に関する。
請求項2に係る発明は、前記金属微粒子が白金(Pt)の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の複合体に関する。
請求項3に係る発明は、前記金属微粒子がパラジウム(Pd)の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の複合体に関する。
請求項4に係る発明は、前記金属微粒子の平均粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合体に関する。
請求項5に係る発明は、前記金属微粒子の平均粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする請求項3記載の複合体に関する。
請求項6に係る発明は、前記金属微粒子が、Ni、Cu、Ag、Auから選択されるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1記載の複合体に関する。
請求項7に係る発明は、前記多糖類が、酸性多糖類、塩基性多糖類、及び酸性多糖類と塩基性多糖類の会合体から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合体に関する。
請求項8に係る発明は、前記酸性多糖類が、カラジーナン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース及びグリコサミノグリカンから選択される一種以上であることを特徴とする請求項7に記載の複合体に関する。
請求項9に係る発明は、前記塩基性多糖類がキトサンであることを特徴とする請求項7に記載の複合体に関する。
【0013】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池用固体電解質に関する。
請求項11に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池用膜・電極接合体に関する。
請求項12に係る発明は、請求項3又は5に記載の複合体を含有することを特徴とする水素吸蔵媒体に関する。
請求項13に係る発明は、請求項3又は5に記載の複合体を含有することを特徴とする二次電池用水素化物電極に関する。
請求項14に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする湿度センサーに関する。
請求項15に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の複合体を含有することを特徴とする光応答型水素発生触媒に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、低コスト・低環境負荷で資源が無尽蔵な多糖類により、高い触媒活性を示す金属微粒子を包接してなる複合体及びその応用物に関するものであるところ、室温付近の低温度領域で使用する燃料電池の固体電解質膜および膜・電極接合体への応用が可能となる。
又、雰囲気中の水分量に応じて電気伝導性が変化するため、湿度センサーへの応用も可能である。
【0015】
本発明は、光エネルギーによる水分解を行う際に使用する水素発生触媒として、応用可能であり、又、パラジウム微粒子を含む複合体については、水素吸蔵媒体および二次電池の水素化物電極として応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明にかかる複合体、即ち、多糖類により金属微粒子を包接してなる複合体について説明する。
【0017】
本発明において用いられる多糖類とは、単糖の構造内にスルホン酸基(-SO3H)やカルボキシル基(-COOH)などの酸性基を持つ酸性多糖類、およびアミノ基などの塩基性基をもつ塩基性多糖類、さらには酸性多糖類と塩基性多糖類の会合体を総称していう。
一般に、多糖類とは、環状構造を持つ単糖がグリコシド結合により結合した高分子化合物である。この多糖類には、一種類の糖から構成されるホモ多糖および二種類以上の糖から構成されるヘテロ多糖が存在する。
【0018】
この酸性多糖類の構造の一例として、次式1(化1)にヘテロ多糖であるκ‐カラジーナンの構造を示す。次式1(化1)において、nはκ−カラジーナンの分子中に含まれている3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトースと、β−D−ガラクトース4硫酸が交互にβ−1,4結合とα−1,3結合した二糖からなる単位ダイマー数を示している。
【0019】
【化1】


【0020】
酸性多糖類は、化学合成によっても得ることができるが、自然界で産生されるものも多くあり、資源が無尽蔵で安全な海洋性バイオマスとして知られている。
天然由来の酸性多糖類は、主に藻類から抽出される生体に毒性のない天然高分子であり、増粘剤などの食品添加物として使用されている。また、その抽出・精製の技術は既に確立されており、現在、低コストで提供されている。
更に、酸性多糖類は藻類が光合成により大気中の炭酸ガスを固定化することで産生した高分子であるため、製造コストがほとんど不要であり、大気中の炭素の循環量を増やすことがないため、カーボンニュートラルである。
【0021】
酸性多糖類は、従来のフッ素系高分子と同様、スルホン酸基(−SOH)やカルボキシル基(−COOH)などの水素イオン解離性の置換基をもつ為、単体でもある程度の水素イオン伝導性を示す。
しかしながら、直鎖状高分子のために水に対する溶解性が非常に高く、単体で薄膜状の水素イオン伝導体として利用することはできない。
そこで、高分子に金属微粒子を添加することで、微粒子が架橋点としてはたらき、高分子単体よりも膜強度が高い薄膜を作成することができる。また、その水素イオン伝導性は高分子単体よりも高く、高効率な燃料電池の固体電解質として応用することが可能である。
【0022】
酸性多糖類の平均分子量nは製造法または原料により変化するが、一般的には1,000〜10,000,000程度である。
本発明では、平均分子量50,000〜1,000,000の酸性多糖類を用いることが好ましい。この理由は、平均分子量が1,000,000より大きいものは特殊な触媒を用いる化学合成法や遺伝子組み換え技術を用いなければ得ることができず、50,000より小さいものは化学的安定性が乏しく、また、薄膜強度が低いため、いずれも好ましくないからである。
【0023】
本発明において用いられる酸性多糖類の例として、藻類から抽出・精製することで得られるカラジーナン、アルギン酸が挙げられる。
カラジーナンには、構造が異なる8種類(κ、λ、ι、μ、ν、θ、ξ、π)が存在するが、いずれも用いることができる。
又、パルプを原料としたカルボキシメチルセルロース、生体内の結合組織から得られるグリコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)などの酸性多糖類についても、本発明において使用することができる。
上記において列挙した酸性多糖類の中では、カラジーナンを用いることが好ましい。
この理由は、水素イオン解離性の高い硫酸基を有し、かつ低コストで供給されているからである。
【0024】
塩基性多糖類の構造の一例として、次式2(化2)にホモ多糖のキトサンの構造を示す。次式2(化2)に示されるキトサンは、N−アセチル−D−グルコサミンがβ−1,4結合した直鎖状高分子で、カニや昆虫などの甲殻の成分であるキチンを、アルカリ処理により脱アセチル化することで得られる。
【0025】
【化2】


【0026】
キトサンは、生分解性、無毒性をもつことから、主に縫合糸などの医用材料、または、金属吸着剤として使用されており、その抽出・精製の技術は既に確立されており、現在、低コストで提供されている。
【0027】
塩基性多糖類が構造中にもつアミノ基(−NH)は、水素イオン受容性の置換基であるため、水素イオンの伝導サイトとして機能することが可能である。また、酸性多糖類と同様に、金属微粒子を添加することで、微粒子が架橋点としてはたらき、高分子単体よりも膜強度が向上する。
【0028】
塩基性多糖類の平均分子量nは製造法または原料により変化するが、一般的には1,000〜10,000,000程度である。
本発明では、平均分子量50,000〜1,000,000の塩基性多糖類を用いることが好ましい。この理由は、平均分子量が1,000,000より大きいものは特殊な触媒を用いる化学合成法や遺伝子組み換え技術を用いなければ得ることができず、50,000より小さいものは化学的安定性が乏しく、また、薄膜強度が低いため、いずれも好ましくないからである。
【0029】
本発明の複合体においては、一種類以上の酸性多糖類、または塩基性多糖類を併用して用いることも可能である。また、酸性多糖類と塩基性多糖類を混合した会合体を用いることも可能である。一例として、酸性多糖類であるカラジーナンと塩基性多糖類であるキトサンの会合体が挙げられる。この会合体は、スルホン酸基とアミノ基間の水素結合に基づく相互架橋構造をもつため、多糖類単体と比較して、その膜強度が高い。また、これらの置換基間での水素イオンの授受は、水素イオンの伝導に寄与することが可能である。
【0030】
会合体における酸性多糖類と塩基性多糖類の組成比は、特に限定されるものではなく、多糖類の単位構造で計算したモル数を変えることで、組成が異なる会合体を得ることが可能である。
この組成比を変えることで、会合体の架橋構造、水素イオン濃度、水素イオンの伝導サイト数を制御することができる。
酸性多糖類と塩基性多糖類の組成比としては、酸性基/塩基性基のモル比において、0.001〜1000であることが好ましい。この理由は、この範囲以外では、架橋構造の機械的強度が低下するからである。
【0031】
本発明の複合体は、上記の多糖類により金属微粒子を包接し、金属微粒子の表面を被覆することによって構成される。
この被覆により、金属微粒子間の凝集を抑止することができ、また、その表面を化学的に安定化することができる。
【0032】
本発明の複合体に用いる金属微粒子を構成する金属として、10族の金属元素(Ni、Pd、Pt)及び11族の金属元素(Cu、Ag、Au)を例示することができる。
上記金属微粒子は、これらのうちのいずれか一種類、或いは2種類以上の金属元素を含有してなるものである。
特に、上記金属微粒子として、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)の微粒子を用いた場合には、(1)温和な条件下で単純なプロセスで合成できる、(2)粒径、分散性を容易に制御できる、(3)水素発生、水素吸蔵、有機物の水素化などの機能を有するなどの利点をもつため好ましい。
【0033】
本発明の複合体における水素イオン伝導性には、金属微粒子表面の化学的状態が影響しており、表面積が大きいほどその効果が顕著になる。
そのため、金属微粒子の平均粒径は、表面積が非常に大きくなる1nm〜100nmの領域が好ましい。
さらに、この領域の中で1nm〜20nmの領域において、微粒子の表面積が特に大きく、作製が容易であるため、より好ましい。
【0034】
本発明の複合体における微粒子は、上述した金属微粒子であることが好ましいが、以下の微粒子であってもよい。
例えば、水分子の吸着能力が高い酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物微粒子、環境負荷が低いハイドロキシアパタイトなどのリン酸化合物微粒子が挙げられる。
【0035】
本発明の複合体における多糖類と金属微粒子との組成比は、特に限定されるものではなく、多糖類の単位構造で計算したモル数と微粒子中の金属原子のモル数を変えることで、組成が異なる複合体を得ることが可能である。
この組成比を変えることで、金属微粒子の粒径および分散性を制御することができる。
多糖類と金属微粒子の組成比としては、多糖類/金属微粒子の重量比において、0.001〜1000であることが好ましい。
この理由は、0.001より小さいと金属微粒子が凝集しやすくなり分散性が低下し、1000より大きいと金属微粒子が多糖類の架橋点として充分に機能しなくなるため、いずれの場合も好ましくないからである。
【0036】
本発明の複合体は、液相合成法により容易に合成することができる。
液相合成法とは、金属塩と、多糖類などの高分子を混合し、エタノール等の還元溶媒中で、20〜100℃において、0.5〜24時間加熱攪拌し、その後乾燥させることによって、高分子によって被覆された金属微粒子を得る方法である。
この方法では、水溶液中で金属塩が還元され微粒子が形成される際に、多糖類がその表面に吸着するため、粒子の粒径成長、凝集および表面酸化が抑制される。
この方法により、粒径が1〜100nm程度の金属微粒子を得ることができる。
【0037】
本発明の複合体では、金属微粒子が多糖類のマトリックス中に分散しており、直鎖状高分子を相互につなぐ架橋点としてはたらくため、機械的強度の高い薄膜を容易に形成させることが可能である。
本発明の複合体を用いて前述の如く形成した薄膜は、高い水素イオン伝導性を示すため、燃料電池の固体電解質の構成成分として用いることができる。
その為、電気自動車や住宅用電源システムにおける燃料電池だけでなく、ノートパソコンや携帯電話などの携帯モバイル用の超小型燃料電池へ応用することが可能である。
さらに、上記の如く高い水素イオン伝導性を示すため、カーボン微粉末などの電極材料と混合し、任意の形態に成型することで、電解質膜と電極が一体化した膜・電極接合体を形成することが可能である。
その他、水分含量に依存して電気伝導性が変化する性質を持つことから、本発明にかかる複合体を含有した組成物の電気伝導性によって、湿度を測定することが可能であり、高感度の湿度センサーとして用いることが可能である。
【0038】
本発明にかかる複合体は、光応答型の水素発生触媒として用いることが可能である。
これは、複合体を均一に分散した水溶液中に、色素分子および酸化還元助剤を添加することで、水の光分解により水素を発生させるものである。
本発明の複合体は、水素発生反応に対して触媒活性な金属微粒子を含んでいるため、このようなシステムへの応用が可能である。
【0039】
前述した如き、電解質、膜・電極接合体、湿度センサー、水素発生触媒への応用に際しては、本発明の複合体における金属微粒子が白金(Pt)の微粒子であることが好ましい。
この理由は、金属微粒子として白金(Pt)の微粒子を用いた場合は、σp〜1×10−2Scm−1程度の高い水素イオン伝導率を示すからである。
これは、白金(Pt)の微粒子の表面の化学的状態(濡れ性、および触媒活性等)によるものであり、多糖類単体での水素イオン伝導性が白金(Pt)の微粒子の添加により増強される為である。
さらに、本発明の複合体における金属微粒子としてパラジウム(Pd)の微粒子を用いた場合は、可逆的に水素を吸蔵・放出することが可能となるため、水素吸蔵媒体の構成成分および二次電池の水素化物電極の構成成分として用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を記載することにより、本発明の効果をより明確なものとする。尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
(複合体の合成)
0.1mM塩化白金酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に、還元剤として過剰量のエタノール(和光純薬工業株式会社製)、及び1.2mM κ-カラジーナン水溶液と1.2mM キトサン水溶液(和光純薬工業株式会社製)のうちのいずれか一方、または両方を加え、3時間かけて攪拌しながら100℃で還流した。
ここで、κ-カラジーナンの濃度は、3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトースとβ−D−ガラクトース4硫酸の結合した二糖からなる単位ダイマーを基準に計算した。
また、白金イオン/ダイマーのモル比は、0.025、0.25、2.5とし、それぞれ複合体1(0.025)、複合体2(0.25)、複合体3(2.5)とした。
また、キトサンの濃度は、単位モノマーを基準に計算し、白金イオン/モノマーのモル比を0.25とし、複合体4(0.25)とした。
また、会合体におけるκ-カラジーナン/キトサンのモル比を1、白金イオン/キトサンのモル比を0.25とし、複合体5(0.25)とした。
この操作により、溶液の色が淡黄色から黒色に変化したことから、白金(IV)イオンが白金(0)に還元されたことを確認した。
得られた黒色の白金コロイド懸濁液から水を蒸発させ真空乾燥することで、黒色のフィルム状をした複合体が得られた。この操作により得られた複合体の一例の模式図を図1に示す。
【0042】
(複合体における微粒子の同定)
前述の操作により得られた複合体3を用いて、室温下で粉末X線回折(XRD)測定を行った(測定装置:株式会社リガク製 Miniflex)。
得られた回折パターンを図2に示す。
バルク固体の白金の回折パターンとピーク位置がよく一致することから、上記の合成法により、バルク固体と同一の結晶構造をもつ白金微粒子が生成していることを確認した。
また、回折ピークの半値幅から、シェラー式により複合体中の白金微粒子の粒径を計算したところ、41Åという値が得られた。
【0043】
(複合体のTEM観察)
前述の操作により得られた複合体を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ(測定装置:日本電子株式会社製 JEM−3010)、30〜40Å程度の粒径をもつ球形の白金微粒子が凝集しているのが確認された。TEM写真の一例を図3(複合体1)及び図4(複合体4)に示す。
白金微粒子のまわりに膜状の影が観察されたことから、多糖類が微粒子に吸着し、その表面を被覆していることが分かる。
【0044】
(複合体の水素イオン伝導性評価)
前述の操作により得られた複合体1〜5を微粉末に粉砕し、ペレット(2.5mmΦ、厚さ0.3mm)に加圧成型した。このペレットの両面に金ペーストを用いて金線(50μmΦ)を貼りつけ、擬似四端子法により交流電気伝導率測定を行った(測定装置:日置電機株式会社製 LCRハイテスタ3532−50)。
測定条件は、掃引周波数0.1Hz〜10MHz、電圧0.05V〜0.5Vとした。
また、測定は室温20±3℃下で、試料容器内の相対湿度(RH)を段階的に変えながら行った。RHは金属塩の飽和水溶液を用いて変化させ、温湿度計でその値を計測した。測定値は複素インピーダンス法によりプロットし、複合体の抵抗値から電気伝導率を求めた。
この結果を図5に示す。
【0045】
複合体1〜3の交流電気伝導率は、図5に示されるようにRHに依存して向上することから、複合体が水素イオン伝導性を有することが分かる。
ここで、RH=30%では水素イオン伝導率はσ〜1×10-5.5 Scm-1程度であるが、RH=95%ではσ〜1×10−2 Scm−1程度に達し、4桁程度向上するのが分かる。RH=95%でのσの値は、燃料電池の高分子電解質として用いられているNafion(登録商標)膜に匹敵するほどである。
また、複合体のσpはκ‐カラジーナンのσよりも2桁程度高い値を示している。
このことから、酸性多糖類と白金微粒子の複合化が、水素イオン伝導性の向上に有効な方法であることが分かる。
【0046】
また、図6に示されるように、複合体4、5の交流電気伝導率についてもRH依存性が確認できることから、水素イオンが伝導することが分かる。詳細には、「塩基性多糖類」および「塩基性多糖類と酸性多糖類の会合体」を「酸性多糖類」と比較すると、前者を含む複合体の方が後者を含む複合体よりも、水素イオン伝導率の最大値が1.5桁程度高い点で優れることが分かる。
【0047】
上記において説明した如く、本発明の複合体は、高い電気伝導率および水素イオン伝導率を示すため、燃料電池用固体電解質および燃料電池用膜・電極接合体に応用可能である。
【0048】
さらに、図5、6において明らかな如く、本発明の複合体の電気伝導率は、湿度に良好な相関性を示すことから、本発明の複合体は高感度な湿度センサーとして利用可能であることが分かる。
【0049】
複合体1における伝導イオンが水素イオンであることを確認するために、交流電気伝導率の同位体効果を検証した。測定では、試料容器内に交互に軽水蒸気、重水蒸気を導入し、その際の伝導率の経時変化を調べた。図7に示されるように、軽水の導入により伝導率が向上し、逆に重水の導入により伝導率が低下する傾向が見られた。この結果は、軽水素イオンと重水素イオンの移動度の違いを反映したものであり、複合体1における伝導イオンが水素イオンであることを表している。
水素イオン伝導の活性化エネルギーを評価するために、交流電気伝導率の温度依存性を調べた(測定装置:Solartron社製/SI・1260・IMPEDANCE/GAIN−PHASE・ANALYZER、SI・1296 DIELECTRIC・INTERFACE、Agilent・Technologies社製/Agilent・4294A PRECISION・IMPEDANCE・ANALYZER)。測定は、恒温恒湿槽(エスペック社製/小型環境試験器SH−221)を用いて、相対湿度80%、温度範囲10〜50℃の条件で実施した。図8は、複合体1とカラギーナンの水素イオン伝導率のアレニウス・プロットであり、傾きから活性化エネルギーは、それぞれE=0.32, 0.34eVと見積もられた。この結果は、複合体1においてより容易に水素イオンが移動できることを示唆する。
複合体1の吸水性について、示差熱天秤/質量分析同時測定装置により調べた(測定装置:Bruker社製/TG−DTA/M59610)。図9は昇温時における発生気体分析の結果であり、水分子のイオン強度のピークが観測されたことから、複合体1に水分子が吸収されていることが分かる。室温付近の温度領域においては、このように吸収された水分子を介して水素イオンが伝導することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の金属微粒子を多糖類により包接してなる複合体は機械的強度の高い薄膜を提供するものであり、尚かつ高い電気伝導率および水素イオン伝導率を示すことから、水素イオン伝導性材料および水素吸蔵体に応用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかる複合体の構造の一例についての模式図である。
【図2】本発明にかかる複合体の粉末X線回折パターンについての一例を示すグラフである。
【図3】本発明にかかる複合体の電子顕微鏡写真についての一例を示す写真である。
【図4】本発明にかかる複合体の電子顕微鏡写真についての一例を示す写真である。
【図5】本発明にかかる複合体の水素イオン伝導率の一例を示すグラフである。ここで、複合体1、2、3では、高分子と金属微粒子の組成比が異なる。
【図6】本発明にかかる複合体の水素イオン伝導率の一例を示すグラフである。ここで、複合体4、5では、高分子の種類、および高分子と金属微粒子の組成比が異なる。
【図7】本発明にかかる複合体1の電気伝導率に対する同位体効果の一例を示すグラフである。
【図8】本発明にかかる複合体1およびカラギーナンの水素イオン伝導率の温度依存性の一例を示すグラフである。
【図9】本発明にかかる複合体1の昇温時における発生気体分析の一例を示すグラフである。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博


【公開番号】 特開2008−81750(P2008−81750A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−236827(P2006−236827)