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【発明の名称】 電磁波吸収体用扁平粉末および電磁波吸収体
【発明者】 【氏名】柳谷 彰彦

【氏名】相川 芳和

【要約】 【課題】従来にない高固有抵抗、低保磁力を有する電磁波吸収体用扁平粉末および電磁波吸収体を提供する。

【構成】質量%で、Si:9〜12%、Al:1〜5%、Cr:1〜5%、残部Feおよび不純物からなり、かつ該不純物としてのNi、Co、Ti、Mn、Cuの何れも2%以下とすることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末。また、上記粉末のアスペクト比が10以上であることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末および電磁波吸収体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
Si:9〜12%、
Al:1〜5%、
Cr:1〜5%、
残部Feおよび不純物からなり、かつ該不純物としてのNi、Co、Ti、Mn、Cuの何れも2%以下とすることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末のアスペクト比が10以上であることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末。
【請求項3】
質量%で、
Si:9〜12%、
Al:1〜5%、
Cr:1〜5%、
残部Feおよび不純物からなり、かつ該不純物としてのNi、Co、Ti、Mn、Cuの何れも2%以下とする電磁波吸収体用扁平粉末を柔軟な絶縁材中に分散させて混練してなることを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の絶縁材が、ゴムまたはプラスチックであることを特徴とする電磁波吸収体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体用扁平粉末および電磁波吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話などの電子機器、情報機器が急速に発達、普及して来ており、これに伴ってそれから発生する電磁波が誤動作の原因になったり、人体に悪影響を及ぼすなどの電磁波による障害が問題視されている。これらパソコンや携帯電話などのノイズ対策部品として軟磁性粉末による電磁波吸収体が使用されている。しかも、これらの製品は、近年の情報処理の増加に伴い、高周波化が進んでいる。
【0003】
このような状況化で粉末に求められ特性としては、(1)高い固有抵抗(製品の高周波化に対応するため)、(2)低い保磁力(ノズル対策性の向上)、(3)高耐候性(耐環境性)である。従来から使用されている軟磁性材料としては、FeSiAl系、FeNi系等が主流であり、特にセンダスト(登録商標名)は保磁力が0.2Oe程度と低く磁気特性に優れているが、固有抵抗が80μΩ・cm程度で十分な高周波特性を有するとは言いがたい。そこで、さらに製品の高周波化・高吸収量化を達成するためには固有抵抗を増加させ、保磁力(Hc)を低減した材料が望まれている。
【0004】
上述した特性を改良するために、例えば特開平11−87117号公報(特許文献1)に開示されているように、絶縁性の基材中に粉末厚みが3μm以下の厚みの軟磁性扁平粉末を分散させてなる高周波電磁波吸収体が提案されている。
【特許文献1】特開平11−87117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した絶縁性の基材であるゴムまたはプラスチックを基材として、その内部に軟磁性扁平粉末を分散含有させて電磁波吸収体を構成することができ、パソコン等の電子機器の電磁波発生源を電磁波吸収体にて容易に包み込みこむことが出来るものであるが、未だ十分は固有抵抗を増加させ、Hcを低減した材料には至っていないのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進め、組成が固有抵抗・磁気特性に及ぼす影響を調査した結果、質量%で、Si:9〜12%、Al:1〜5%、Cr:1〜5%、残部Feからなる成分組成範囲内で、従来にない高固有抵抗、低保磁力を達成することを見出したものである。その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、Si:9〜12%、Al:1〜5%、Cr:1〜5%、残部Feおよび不純物からなり、かつ該不純物としてのNi、Co、Ti、Mn、Cuの何れも2%以下とすることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末。
(2)前記(1)に記載の粉末のアスペクト比が10以上であることを特徴とする電磁波吸収体用扁平粉末。
(3)質量%で、Si:9〜12%、Al:1〜5%、Cr:1〜5%、残部Feおよび不純物からなり、かつ該不純物としてのNi、Co、Ti、Mn、Cuの何れも2%以下とする電磁波吸収体用扁平粉末を柔軟な絶縁材中に分散させて混練してなることを特徴とする電磁波吸収体。
(4)前記(3)に記載の絶縁材が、ゴムまたはプラスチックであることを特徴とする電磁波吸収体にある。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、本発明により、極めて優れた電磁波吸収特性に優れた電磁波吸収体用扁平粉末およびこれを用いた電磁波吸収体を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明についての成分組成の限定理由について説明する。
Si:9〜12%
Siは、固有抵抗を高くするために添加する元素で、そのためには9%以上必要である。しかし、9%未満では固有抵抗が不十分であり、12%を超えると保磁力が増大することから、その範囲を9〜12%とした。好ましくは10〜11%とする。
【0009】
Al:1〜5%
Alは、固有抵抗および耐食性を高めるとともに、保磁力低減に効果のある元素で、1%未満では、その効果がなく、保磁力Hcが増大する。また、5%を超えると保磁力Hcが増大することから、その範囲を1〜5%とした。好ましくは2〜4%とする。
【0010】
Cr:1〜5%
Crは、耐食性および固有抵抗を改善するために添加する元素で、1%未満ではその効果が改善されず、また、5%を超えると保磁力Hcが増大する。従って、その範囲を1〜5%とする。好ましくは2〜4%とする。
【0011】
次に、本発明の電磁波吸収体用扁平粉末の不純物について説明する。
Mn、Ni、Cu、Co、Tiは、一般的に少量の添加で保磁力を低減させる効果のある元素として知られており、本発明においてもこれらの元素を加えることは問題ない。ただし、2%を超えると飽和磁束密度が低下し、保磁力Hcが増大することから、2%以下とした。
【0012】
上記電磁波吸収体用扁平粉末の作製方法は、粉砕法、ガスアトマイズ、水アトマイズ法等製法は問わない。さらに扁平化の方法はボールミル、アトライター等いずれも可能である。
【0013】
本発明の電磁波吸収体用扁平粉末は、アスペクト比が10以上、好ましくは20以上とする。本発明の軟磁性粉末のアスペクト比を10以上としたのは、アスペクト比が大きい程遮蔽効果が高くなるからである。
【0014】
本発明の電磁波吸収体に適した柔軟若しくは硬質の絶縁材としては、例えば天然ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴム、フエノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン等の柔軟若しくは硬質のプラスチック等を用いる。
本発明の電磁波吸収体は、上記のような柔軟若しくは硬質の絶縁材に電磁波吸収体用扁平粉末を混練し、この混練物をロールでシート状にするなどの成形をして電磁波吸収体とする。
【実施例】
【0015】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示す組成からなる金属軟磁性粉末をArガスアトマイズ法により、各種組成範囲の粉末を作製した。篩により分級(−100μm)粒度以下の粉末を得る。この粉末を2時間、処理量2kg、ボール重量10kgなるアトライターなどの高エネルギーボールミルなどの手段で扁平化し、粉末厚みを段階的に変化させた。得られた粉末の各種厚みの軟磁性扁平粉末をそれぞれ磁気焼鈍処理して磁気特性を安定化した後、ゴムシートに混錬して電磁波吸収材として使用する。
【0016】
その時の測定項目としての、固有抵抗は、同組成のインゴット材を作製した後、5×5×20mmの試料を切り出し、ケルビンダブルブリッジ法にて測定した。また、耐食性は、343K、95%湿度にて96時間放置して発錆の有無を確認した。さらに、保磁力Hcについては、Hcメーターにより測定(飽和磁界:144KA/m)した。得られた扁平粉末をシリコンゴム(10mass%)と混合し、2ロール成形法により、厚み1mmのシート材を得る。このシート材から外径7mm、内径5mmのリング試験片を得る。ネットワークアナライザーにより、周波数10MHzのときの複素透過率(μ〃)を求めた。μ〃はノイズの吸収量を評価する方法でこの値が大きいほど、ノイズの吸収量が大きくなることを示す。
【0017】
【表1】


表1に示すように、No.1〜18は本発明例であり、No.19〜30は比較例である。比較例No.19はSi含有量が低いために、固有抵抗が低く複素透過率(μ〃)も低い。比較例No.20はSi含有量が高いために、Hcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.21はAl含有量が低いために、固有抵抗が小さく、かつHcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.22はAl含有量が高いために、固有抵抗およびHcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.23はCr含有量が低いために、固有抵抗が小さく、μ〃が小さい。また、発錆が発生した。
【0018】
比較例No.24はCr含有量が高いために、固有抵抗およびHcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.25は不純物としてのNi含有量が3%と高いために、Hcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.26は不純物としてのCo含有量が3%と高いために、Hcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.27は不純物としてのTi含有量が3%と高いために、Hcが大きく、μ〃が小さい。比較例No.28は不純物としてのCu含有量が3%と高いために、Hcは大きく、μ〃が小さい。
【0019】
比較例No.29は通常のFe−9.6Si−5.4Al、比較例No.30はFe−78Ni(パーマロイ)を成分組成とするもので、比較例No.29の場合は固有抵抗およびHcが小さく、かつ、μ〃も小さい。また、比較例No.30の場合は、固有抵抗およびμ〃が小さく、かつ、Hcが大きい。これに対し、本発明例であるNo.1〜18はいずれも本発明の条件を満足しており、その結果、固有抵抗、Hcおよびμ〃に優れていることが分かる。
【0020】
以上のように、本発明により従来にない高固有抵抗および低保磁力を得ることが可能となり、電磁波吸収特性に優れた電磁波吸収体用粉末および電磁波吸収体を得ることが出来る極めて優れたものである。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊


【公開番号】 特開2008−50644(P2008−50644A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−226749(P2006−226749)