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【発明の名称】 焼結希土類磁石合金製造用粉末
【発明者】 【氏名】鎌田 雅美

【氏名】小笠原 知泰

【要約】 【課題】磁気特性の優れた焼結希土類磁石合金を安定して製造する。

【構成】粗合金の溶湯を溶製し,この溶湯を合金塊に鋳造し,この合金塊を粗粉砕したあと更に微粉砕し,得られた粉末を用いて圧粉成形し,この成形品を焼結して,焼結希土類磁石合金を製造する方法において,前記の微粉砕を2回以上実施することを特徴とする焼結希土類磁石合金の製造法である。2回以上の微粉砕のうち少なくとも1回は振動ボールミルを用いて行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分組成を有し且つ平均粒径が2〜3μmで且つ粒径が7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%以下であって、各粒子表面が脂肪族炭化水素系潤滑剤、高級脂肪族アルコール系潤滑剤、高級脂肪酸系潤滑剤、脂肪酸アマイド系潤滑剤、金属石鹸および脂肪族エステルの群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤で被着された粉体からなる焼結希土類磁石合金製造用粉末。
〔粉末の成分組成〕
C:0.5〜20 at.%以下、
B:2 at.%未満(0 at.%を含まず)、
R:10〜30 at.%、
ただし、Rは希土類元素の少なくとも一種を表す、
Co:40 at.%以下(0 at.%を含む)、
残部:Feおよび不可避的不純物。
【請求項2】
下記の成分組成を有し且つ平均粒径が2〜3μmで且つ粒径が7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%以下であって、各粒子表面がパラフィン、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンモノステアレート、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアマイド、オレフィンアマイドの群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤で被着された粉体からなる焼結希土類磁石合金製造用粉末。
〔粉末の成分組成〕
C:0.5〜20 at.%以下、
B:2 at.%未満(0 at.%を含まず)、
R:10〜30 at.%、
ただし、Rは希土類元素の少なくとも一種を表す、
Co:40 at.%以下(0 at.%を含む)、
残部:Feおよび不可避的不純物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気特性の優れた焼結希土類磁石合金を安定して製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R−B−(Co)−Fe系の焼結希土類磁石合金(Rは希土類元素の1種または2種以上を表す)や特許第2789364号等に提案されたR−B−C−(Co)−Fe系の焼結希土類磁石合金が汎用されている。このような焼結希土類磁石合金は,一般に,粗合金の溶製,鋳造,粉砕(破砕,粗粉砕,微粉砕),粉体の成形,焼結の各工程を経て製造されている。
【特許文献1】特許第2789364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の製造工程のうち,焼結に供される粉体の諸特性が焼結製品の磁気特性に大きく影響を与えることがわかった。すなわち,鋳塊を破砕し,粗粉砕し,さらに微粉砕して焼結用の粉体を製造する場合,その粉体特性によって得られる焼結製品の磁気特性が変化することがわかった。
【0004】
したがって,本発明の課題は,かかる焼結希土類磁石合金の製造にさいして,鋳造品から焼結用粉体を製造するさいに最も適切な製造条件を見いだし,磁気特性の優れた焼結希土類磁石合金を安定して製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば,粗合金の溶湯を溶製し,この溶湯を合金塊に鋳造し,この合金塊を粗粉砕したあと更に微粉砕し,得られた粉末を用いて圧粉成形し,この成形品を焼結して,下記の成分組成を有する焼結希土類磁石合金を製造する方法において,前記の微粉砕を2回以上実施することを特徴とする焼結希土類磁石合金の製造法を提供する。
〔焼結希土類磁石合金の成分組成〕
C:20 at.%以下(0 at.%を含む)
B:0.5〜15 at.%,
Co:40 at.%以下(0 at.%を含む),
R:10〜30 at.%,
ただし,Rは希土類元素の少なくとも一種を表す,
残部:Feおよび不可避的不純物。
【0006】
この製法に従って2回以上の微粉砕で得られる粉末としては,平均粒径が2〜3μmで且つ粒径が7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%以下であるのがよい。また,2回以上の微粉砕のうち少なくとも1回は振動ボールミルを用い,振動ボールミルだけで微粉砕を行う場合には,各回とも条件を変えて行うのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造法によると,磁気特性の優れた焼結希土類磁石合金を安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が対象とする焼結希土類磁石合金は,原子比百分率(at.%)で,C:20 at.%以下(0 at.%を含む),好ましくは0.5〜20 at.%以下,B:0.5〜15at.%,好ましくは2 at.%未満,Co:40at.%以下(0at.%を含む),R:8〜30 at.%,好ましくは10〜20at.%(Rは希土類元素の少なくとも一種),残部:Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものである。
【0009】
この焼結希土類磁石合金は,溶解,鋳造,粉砕,成形,焼結という一連の工程で焼結磁石とする。具体的には,合金組成となるように秤量した各成分の原料(Cの一部または全部は除く)を真空溶解炉で1600℃以上で溶解し,水冷鋳型に急冷鋳造する。得られた鋳塊を好ましくは600℃以上でAr雰囲気中で熱処理したあと,ジョークラッシャー等で粗粉砕する。得られた粗粉を微粉砕する。これらの粉砕工程は好ましくはAr雰囲気中で行う。ついで,得られた粉体を所定の形状に圧粉成形し,これを焼結する。
【0010】
微粉砕の工程では,振動ボールミル,ジェットミルなどを使用して少なくとも2回以上実施するが,少なくとも1回は振動ボールミルを用いて行う。微粉砕を行う前に,C原料の一部または全部として,カーボンブラックまたは潤滑剤(脂肪族炭化水素系潤滑剤,高級脂肪族アルコール系潤滑剤,高級脂肪酸系潤滑剤,脂肪酸アマイド系潤滑剤,金属石鹸および脂肪族エステルの群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤)を粗粉に配合しておくのがよい。すなわち,このような潤滑剤を,微粉砕工程の前の合金,または微粉砕工程の途中の合金,とくに振動ボールミルを用いた微粉砕では振動ボールミルによる微粉砕を行う前の合金に対して,C原料の一部または全部として配合して微粉砕するのがよい。なぜなら,振動ボールミルは,ドラム内に装填された合金粉に振動を付与しながら内装されたボールによって合金粉の粉砕が行われるものであり,ここに潤滑剤が存在すると,合金粉が潤滑効果で粒度分布の狭い均一粒径のものに粉砕されながら各粒子表面には均一に潤滑剤が被着した状態のものが得られる。潤滑剤のうち,特に好ましいのは,パラフィン,ポリアクリル酸塩系ポリマー,ポリエチレンオキサイド,ポリオキシエチレンモノステアレート,ステアリン酸,エチレンビスステアリルアマイド,オレフィンアマイドなどが挙げられる。
【0011】
本発明者らの数多くの試験によると,微粉砕工程に振動ボールミルのみを用いた場合は,一回の処理では,安定した品質の粉体が得られないことがわかった。すなわち,振動ボールミルによる制御可能な粉砕条件として,振幅,振動数,粉砕時間などの運転条件と,ボール径,ボール充填率,ボール/粉体の重量比(B/Pと呼ばれる)などの装填条件が代表的なものであるが,これらの条件を如何様に設定して粉砕しても,一回の粉砕処理では所望の粉体特性を得るには限界があり,必ずしも磁石製品としての磁気特性を最良にする粉体特性を持つ粉体が得られるとは限らないことがわかった。
【0012】
これは,粉砕過程において,粉末の状態は粉砕の進行に従って変化してゆくのに対し,振動ボールミルの場合には,ボール径,ボール充填率,B/Pなどは固定されたままであるため,その時々の粉末の状態に対して常に適正な条件を維持することが出来ないためであると考えられる。
【0013】
本発明によれば,微粉砕工程において,条件を変えて少なくとも2回の微粉砕を行うと,そして少なくともその1回は振動ボールミルで行うと,適正な粉体特性を有する希土類磁石合金粉末が得られることが明らかとなった。
【0014】
より具体的には,前記のように粗粉砕された粗粉に対し,本発明の一つの態様として,振動ボールミルだけで複数回の微粉砕を行う場合には,前記のようにカーボンブラックおよび/または潤滑剤をC原料の一部または全部となるように適量配合したうえ,振動ボールミルで第1回目の粉砕を行う。そのさい,粉砕条件として,振幅,振動数,粉砕時間,ボール径,ボール充填率,B/Pを設定し(粉砕対象の合金組成や粗粉の特性に応じた値に設定する),所望の粉体特性が得られるようにする。第1回目の粉砕条件と得られる粉体特性の関係は,合金組成や粗粉の状態に応じて行った数多くの経験値(メモリ値)から予測することができ,このメモリ値を参考にして第1回目の粉砕条件を設定する。ついで,第1回目の粉砕で得られた粉体を,同じく振動ボールミルを用いて,新たに粉砕条件を設定して,第2回目の粉砕を行って,所望の粉体特性が得られるようにする。この場合も,予め行った経験値を参考にして粉砕条件を設定する。第2回目の粉砕で所望特性を得ることが困難な場合には,第3回目の粉砕,さらには第4回目の粉砕と繰り返しながら所望の粉体特性が得られるまで振動ボールミルによる粉砕を実施する。
【0015】
また,本発明の他の態様として,振動ボールミルと他の粉砕機例えばジェットミルとを組み合わせて複数回の微粉砕を行う場合には,どちらを先行させてもよいが,実際には,他の粉砕機で第1回目の微粉砕を行ない,次いで振動ボールミルによる第2回目若しくはそれ以降の微粉砕を行うのが好ましい。潤滑剤の配合については,各微粉砕ごとに分配して各微粉砕の前に添加することができ,最終の粉砕までに全量が配合されるようにすればよい。
【0016】
焼結希土類磁石合金は,特定組成の比較的大きな磁性結晶粒が各種の成分からなる非磁性相を介して接合した特殊な金属組織を有するものであるが,このような特殊な金属組織を有する焼結希土類磁石合金の磁気特性は,焼結前の粉体特性に大きく影響を受ける。本発明者らの経験よると,焼結前の粉末が,平均粒径2〜3μmで且つ粒径が7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%以下である場合に,最も良好な磁気特性を示すことを見い出した。
【0017】
したがって,微粉砕工程での粉砕のさいに,各段階での粉砕条件を適正に設定して,最終的に平均粒径2〜3μmで且つ粒径が7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%以下の粉体が得られるように粉砕処理するのがよい。平均粒径が2μm未満になると,粉末の活性化が著しくなって酸化の影響を受けやすくなり,磁気特性の低下を招く原因となる。他方,平均粒径が3μmを超えると,磁気製品において高い保磁力が得られなくなる。また,粗粒の割合が少ないことも肝要であり,7μm以上の粒子が存在する体積割合が7容積%を超えると,平均粒径が適正であっても,保磁力が低下するようになるので好ましくはない。
【0018】
なお,この粉砕時に前記のような潤滑剤を使用すると,潤滑剤で粒子表面が被覆されて流動性が良好となり,所望の形状(例えばロッド状)に磁場中で圧粉成形するさいの配向性および成形性が良くなる。粉体の成形にあたっては,成形圧1〜5t/cm2,外部磁場10KOe 以上が適切である。
【0019】
ついで,この成形体を焼結処理に供するが,焼結条件としては例えば真空中または不活性ガス中1000〜1200℃の温度で焼結処理する。そのさい該潤滑剤は分解・蒸発し,焼成残渣としてのC(炭素)が,磁性結晶粒やその周囲の非磁性相に合金成分として含有されることになる。焼結温度から急冷,もしくは急冷と徐冷を組合せて,焼結終了後は10℃/分以上の温度で冷却することにより,さらには,徐冷と急冷を組み合わせて,焼結終了後 0.5〜20℃/ 分の速度で冷却し温度が600から1050に達した後,直ちに急冷することにより, 磁性結晶粒の周囲の非磁性相を均質且つ強固なものとすることができる。
【0020】
得られた焼結体は,さらに400〜1100℃,好ましくは500〜1050℃の温度で0 .5〜24時間の後熱処理を施すことにより,磁気特性を改善できることがある。その場合は最終熱処理温度が400℃未満では磁気特性を改善する効果は小さく,また1100℃を超えると焼結を伴うようになり,磁性結晶粒が粗大化してBrおよびiHc が低下する。また該温度域での保持時間は0.5 時間未満では磁気特性を改善する効果は小さくまた24時間を超えてもその効果は小さい。
【0021】
このようにして耐酸化性に優れたR−B−C−(Co)−Fe系の焼結希土類磁石合金を製造できるが,本発明で対象とする合金の成分組成を限定する理由の概要は次のとおりである。
まず本発明合金を構成する必須元素のRは希土類元素であって,これらは,Y,La, Ce, Nd, Pr, Tb, Dy, Ho, Er, Sm, Gd, Eu, Pm, Tm, Yb 及び Lu のうちの一種または二種以上である。二種以上の混合物であるミッシュメタル,ジジム等も原料とすることができる。ここでRを10〜30at.%とするのは,この範囲内でBrが実用上非常に優れるためである。
【0022】
B(ボロン)は,この系統の希土類磁石合金において磁性結晶粒を形成するための必須の元素であり,B=0.5〜15at.%の範囲で含有させる。Bを2at.%より多く含有する合金であっても,Cを適切に含有する結果,その合金組織は耐酸化性に優れたものとなるが,場合によってはC量を増加することによって,Bを2 at.%未満の範囲で含有させることもできる。磁石合金中のC含有量は20at.%以下とする。20at.%を超えるとBrの低下が著しくなる。
【0023】
Coは,この系統の焼結磁石合金のキュリー点を上昇させ,また耐酸化性の向上にも寄与する。本発明の対象とする磁石合金においてもCoを含有させることができ,この場合には40at.%までとする。これ以上を配合してもコスト高になる割にはその効果は飽和する。
【実施例】
【0024】
〔実施例1〕
原料として純度99.9%の電解鉄,ボロン含有量19.3%のフェロボロン合金,純度99.5% のカーボンブラック, および純度 98.5% (不純物として他の希土類金属を含有する) のネオジム金属を使用し,組成比として 13Nd-2.5Dy-72.5Fe-9Co-2B-1Cとなるように計量,配合し,高周波誘導炉で真空中で溶解した後,水冷銅鋳型中に鋳込み,合金塊を得た。
【0025】
この合金塊をジョークラッシャーで破砕し,さらにアルゴンガス中でディスクミルを用いて粗砕した。得られた粗砕粉にC原料として潤滑剤(ステアリン酸を使用)を混合添加した。潤滑剤の添加量は,その潤滑剤中に含まれるC量によって,粗砕粉の組成比が 12.6Nd-2.4Dy-70.3Fe-8.7Co-1.9B-4.1Cとなるような量とした。
【0026】
潤滑剤を混合添加した粗砕粉を振動ボールミルを用いて, 表1に示す粉砕条件で第1回目の粉砕を行い,得られた粉体を同じく振動ボールミルを用いて,表1に示す粉砕条件で第2回目の粉砕を行った。第2回目の粉砕によって,平均粒径2.42μm,7μm以上の粒子が存在する体積割合が3.15容積%の粉体が得られた。粒度分布の測定はレーザー回折式粒度分布計によった。
【0027】
この合金微粉末を10kOe の磁界中1ton/cm2 の圧力で成形し,その成形体を,真空中1050℃に2時間保持した後,急冷し焼結希土類磁石合金を得た。得られた焼結希土類磁石合金についてVSMにより測定した磁気特性を表1に併記した。
【0028】
〔実施例2〕
振動ボールミルでの第2回目の粉砕時間を変えた以外は,実施例1を繰り返した。表1にそれらの粉砕条件と,得られた粉体の粉体特性,および得られた焼結希土類磁石合金の磁気特性を併記した。
【0029】
〔比較例1〕
振動ボールミルでの粉砕を1回だけで行った以外は,実施例1を繰り返した。表1にその粉砕条件と,得られた粉体の粉体特性,および得られた焼結希土類磁石合金の磁気特性を併記した。
【0030】
〔比較例2〕
振動ボールミルでの粉砕時間を変えた以外は比較例1を繰り返した。表1にその粉砕条件と,得られた粉体の粉体特性,および得られた焼結希土類磁石合金の磁気特性を併記した。
【0031】
〔実施例3〕
ジェットミル(栗本鐵工所製のKJ−50型)を用いて表2に示す条件で第1回目の粉砕を行い,得られた粉砕を実施例1と同じ振動ボールミルを用いて表2に示す条件で第2回目の粉砕を行った以外は,実施例1を繰り返した。得られた粉体の粉体特性,および得られた焼結希土類磁石合金の磁気特性を表2に併記した。
【0032】
【表1】


【0033】
【表2】


【0034】
表1の結果から明らかのように,粉砕工程で1回だけの粉砕を行った比較例のものに比べ,複数回の粉砕を行った実施例の焼結希土類磁石合金では,保磁力が高くなっており,BHmaxも高くなっていることがわかる。また,表2の結果から,他の粉砕機と振動ボールミルとを組み合わせて複数回の微粉砕を行った場合でも保磁力とBHmax が高くなっていることがわかる。
【出願人】 【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
【出願日】 平成19年9月10日(2007.9.10)
【代理人】 【識別番号】100076130
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 憲治

【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高


【公開番号】 特開2008−45214(P2008−45214A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2007−233605(P2007−233605)