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焼結用トレー - 特開2008−38228 | j-tokkyo
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【発明の名称】 焼結用トレー
【発明者】 【氏名】小池 さち子

【氏名】戸田 直大

【要約】 【課題】本発明の目的は、焼結対象物に対する反応性を可能な限り低減した焼結用トレーを提供することにある。

【構成】本発明は、基材と、該基材上に形成される1層以上の被膜とを備える焼結用トレーであって、該基材は、炭素質材からなり、該被膜は、平均粒径が1nm以上800nm以下である酸化物の結晶粒子により構成され、かつその緻密度が35%以上99%以下であり、被膜の表面から基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないことを特徴とする焼結用トレーに係る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成される1層以上の被膜とを備える焼結用トレーであって、
前記基材は、炭素質材からなり、
前記被膜は、平均粒径が1nm以上800nm以下である酸化物の結晶粒子により構成され、かつその緻密度が35%以上99%以下であり、前記被膜の表面から前記基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないことを特徴とする焼結用トレー。
【請求項2】
前記被膜は、その厚み方向において前記緻密度が均一でないことを特徴とする請求項1記載の焼結用トレー。
【請求項3】
前記酸化物は、1種または2種以上の酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結用トレー。
【請求項4】
前記酸化物は、Al23、ZrO2、Y23、TiO2、HfO2、およびCr23からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の焼結用トレー。
【請求項5】
前記被膜は、その総膜厚が20nm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の焼結用トレー。
【請求項6】
前記基材は、前記被膜と接する界面部において前記酸化物の結晶粒子が浸入していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼結用トレー。
【請求項7】
前記被膜は、微粒酸化物粉末を原料として用いるエアロゾルデポジション法により形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の焼結用トレー。
【請求項8】
前記微粒酸化物粉末は、平均粒径が1nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項7記載の焼結用トレー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体を製造するための焼結工程において用いられる焼結用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粉末冶金製品の如き焼結体は、主合金とバインダー成分とを混合し、加圧成形後それを焼結することにより製造される。そして、その焼結工程は、加圧成形された成形体(以下、このような成形体のみに限らず焼結される対象物を「焼結対象物」と記す)を焼結用トレーに載置して行なわれる。
【0003】
しかし、この焼結工程において、従来より以下のような問題が指摘されておりその改善が望まれていた。すなわち、この焼結工程において焼結対象物と焼結用トレーとが反応し、その結果焼結された焼結体の組成が所望される組成のものとは異なったものとなり、このため焼結体に要求される特性を十分に示さなくなるという問題である。そして、この問題は、焼結用トレーの基材として炭素質材を用いる場合に特に顕著に表れるものであった。
【0004】
そして、この問題を解決するための手段として、従来より焼結用トレーを構成する基材の表面に各種の被膜を形成する試みや、そのような基材の細孔にAl23を充填させる試みが提案されている(特許文献1)。しかしながら、このAl23を充填させる試みにおいては、Al23が連続した被膜を形成しないため上記のような反応を十分に防止することは困難であった。
【0005】
一方、基材の表面に各種の被膜を形成する試みとしては、たとえばZrO2とY23とからなる複合被膜を形成する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この複合被膜は、被膜内に亀裂が生じたり剥離が生じるという問題があり、その亀裂や剥離に起因して上記の反応を十分防止することができないという問題があった。
【0006】
また、そのような被膜として希土類酸化物を含有する被膜を形成するという提案もなされているが(特許文献3、4)、上記の複合被膜と同様の問題を有し、抜本的な解決策とはなっていなかった。さらに、これらの問題を解決するべく、異種セラミック混合層を基材上に形成する試みも提案されているが、被膜がさらに剥離しやすくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平07−089769号公報
【特許文献2】特表2000−509102号公報
【特許文献3】特開2003−073794号公報
【特許文献4】特開2003−082402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは焼結対象物に対する反応性を可能な限り低減した焼結用トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、焼結用トレーを構成する基材上に形成される被膜の材質(化学組成)を改良するよりもむしろその被膜の物理的構造を改良する方が効果的であるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねることによりついに本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、基材と、該基材上に形成される1層以上の被膜とを備える焼結用トレーであって、該基材は、炭素質材からなり、該被膜は、平均粒径が1nm以上800nm以下である酸化物の結晶粒子により構成され、かつその緻密度が35%以上99%以下であり、被膜の表面から基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないことを特徴とする焼結用トレーに係る。
【0010】
ここで、上記被膜は、その厚み方向において上記緻密度が均一でないことが好ましく、上記酸化物は、1種または2種以上の酸化物であることが好ましく、Al23、ZrO2、Y23、TiO2、HfO2、およびCr23からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、上記被膜は、その総膜厚が20nm以上100μm以下であることが好ましく、上記基材は、被膜と接する界面部において酸化物の結晶粒子が浸入していることが好ましい。
【0012】
さらに、上記被膜は、微粒酸化物粉末を原料として用いるエアロゾルデポジション法により形成されることが好ましく、その微粒酸化物粉末は、平均粒径が1nm以上1μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の焼結用トレーは、上記の通りの構成を有することにより、焼結対象物に対する反応性を可能な限り低減したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<焼結用トレー>
本発明の焼結用トレーは、焼結対象物を焼結させる際に用いられるトレーであって、その焼結対象物を載置させる等してその焼結対象物と接するものである。したがって、このような用途に適用される部材である限りその呼称を焼結用トレーのみに限るものではない。たとえば、単にトレーや焼結トレーと呼ばれたり、焼結セッター等と呼ばれるものも含まれる。
【0015】
なお、ここでいう焼結対象物とは、その組成が特に限定されるものではないが、たとえば焼結されて超硬合金やサーメット等からなる焼結体を構成するものをいう。
【0016】
このような本発明の焼結用トレーは、基材と、該基材上に形成される1層以上の被膜とを備えるものである。
【0017】
<基材>
本発明の基材は、炭素質材からなるものである。この種の用途に用いられる炭素質材である限り、特に限定することなくいかなる炭素質材を用いることも可能である。
【0018】
なお、ここで炭素質材とは、炭素を主成分とする成形体をいう。たとえば、グラファイトを主成分とする無機系成形体(グラファイトトレー)が含まれる。なお、このような成形体には、バインダー成分が含まれていても差し支えない。
【0019】
<被膜>
本発明の被膜は、基材上に1層以上形成されるものであり、平均粒径が1nm以上800nm以下である酸化物の結晶粒子により構成され、かつその緻密度が35%以上99%以下であり、この被膜の表面から基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないことを特徴としている。
【0020】
このような被膜は、その総膜厚が20nm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、その上限が50μm以下であり、その下限が1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。上記総膜厚が20nm未満の場合、焼結対象物との反応性を十分に抑制することが困難になる場合がある。一方、総膜厚が100μmを超えると被膜の自己破壊を生じる場合がある。
【0021】
なお、被膜の総膜厚とは、被膜が1層からなる場合はその被膜の厚みをいい、被膜が2層以上からなる場合は各層の厚みを合計した厚みをいうものとする。
【0022】
<酸化物の結晶粒子>
本発明の被膜は、平均粒径が1nm以上800nm以下である酸化物の結晶粒子により構成される。このように被膜を構成する酸化物の結晶粒子の平均粒径を特定の微小範囲のものに限定したことにより、本発明の被膜は加熱/冷却サイクル等によって亀裂が発生した場合であってもその進行を極めて有効に防止することができるものとなる。このため、被膜の亀裂を介した物質移動がその主な原因と考えられる焼結対象物と焼結用トレー(ここでは「基材」と表現する方が正確かもしれないが特に断りのない限り以下でも単に「焼結用トレー」と表現するものとする)間の反応を有効に抑制することができる。
【0023】
また、そのような物質移動は亀裂が発生しない場合であっても結晶の粒界に沿って移動する可能性が考えられるところ、上記のように平均粒径を特定の微小範囲のものに限定したことにより結晶粒が特定の方位に配列することもないため、物質移動に影響するような粒界が被膜中に形成されることもない。このため、焼結対象物と焼結用トレー間の反応を有効に抑制することができる。
【0024】
このような平均粒径は、より好ましくは、その上限が500nm以下である。上記平均粒径が1nm未満の場合や800nmを超える場合には上記のような有効な効果を示すことができない。
【0025】
なお、このような平均粒径は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて被膜の断面(厚み方向に平行な断面)中における基材表面と平行な所定の長さの任意の線分上に存在する酸化物の結晶粒子の個数を測定し、その所定長さをその結晶粒子の個数で除した値を酸化物の結晶粒子の粒子径とする。そして、上記の任意の線分として3本の線分について同様の測定を行なうことにより、それらの粒子径の平均値を平均粒径とする。当該線分の所定長さは、3μm〜5μm程度とすることが好ましい。
【0026】
一方、このような結晶粒子を構成する酸化物は、1種のもののみにより構成されていても良いし、2種以上のものを組み合せることにより構成されていても良い。また、被膜が2層以上で構成される場合は、各層を構成する酸化物の結晶粒子は同種のものであっても良いし、異種のものであっても良い。このように被膜を酸化物の結晶粒子で構成したことにより、焼結対象物と焼結用トレー間の反応を化学的にも有効に抑制することができるとともに、とりわけこのような被膜自体と焼結用トレーとが反応することを抑制することができる。
【0027】
このような酸化物としては、耐熱性部材等の被膜として用いられる従来公知の酸化物(無機系酸化物)を特に限定することなく使用することができるが、特に好適な例としては、Al23、ZrO2、Y23、TiO2、HfO2、およびCr23からなる群から選ばれる少なくとも1種のものを用いることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の酸化物の結晶粒子は、被膜を構成するものであるが、その一部が被膜と接する基材の界面部に浸入していることが好ましい。所謂アンカー効果が発現されるためであり、被膜と基材との密着性が向上しかつ被膜の剥離が効果的に抑制されるからである。なお、浸入する領域は大略基材表面から0.001μm〜0.5μmの範囲とすることが好ましい。
【0029】
なお、このように酸化物の結晶粒子が基材の界面部に浸入する場合であって、被膜と基材との界面部を明確に判断することが困難となり被膜の総膜厚の測定が困難となる場合は、TEMを用いた被膜の厚み方向の断面測定により被膜成分の面積比率が50%以上となる地点を両者の界面部とみなすものとする。
【0030】
<緻密度>
本発明の被膜は、35%以上99%以下の緻密度を有するものである。このように緻密度を特定範囲のものとしたことにより、これが上記の特徴と相乗的に作用することによって、焼結対象物と焼結用トレー間の反応を極めて有効に抑制することができる。
【0031】
緻密度が35%未満の場合、焼結対象物と焼結用トレー間の反応を十分に抑制することが困難になる一方、99%を超える場合は製造に困難を伴い極めて生産性に劣るため好ましくない。
【0032】
ここで緻密度とは、本発明の被膜の密度を、被膜を構成する酸化物の焼結体の理論密度で除した数値を百分率(%)で表したものをいう。そして、具体的測定方法は以下の通りである。
【0033】
まず、本発明の被膜の密度を以下のようにして求める。すなわち、本発明の焼結用トレーの基材と同一の基材からなる平板を準備し、その平板に対して焼結用トレー製造時の被膜形成条件と同一条件で一定厚み(たとえば50μm)の被膜を形成させる。そして、被膜形成前後の該平板の質量変化を測定し、その増加分を被膜の質量とする。そして、その被膜質量を被膜の体積(被膜を形成した該平板表面の面積に被膜の厚みを乗じたもの)で除した数値を本発明の被膜の密度とする。
【0034】
次いで、このようにして求めた本発明の被膜の密度を、被膜を構成する酸化物の焼結体または単結晶の理論密度で除することにより緻密度を算出する。理論密度は文献値を採用するものとする。なお、酸化物が2種以上のもので構成される場合は、各酸化物の焼結体の理論密度にその構成比率を乗じて得られる数値を合計したものを理論密度とする。
【0035】
またさらに、このような緻密度は、被膜の厚み方向において均一でないことが好ましい。このように緻密度を均一ではない状態とすることにより、被膜の剥離が極めて有効に防止されることになる。これは、被膜中に部分的に緻密度の低い領域が形成されるためであると考えられる。
【0036】
すなわち、被膜の剥離は、主として加熱/冷却サイクルを繰り返す際、被膜と基材間の熱膨張係数の差に起因して両者間に生じる寸法差がその主な原因と考えられ、そのような寸法差に起因する歪が緻密度の低い領域により緩和されるためではないかと考えられる。
【0037】
そして、特に被膜の表面側において緻密度が大きく、そこから基材の表面側にかけて段階的または傾斜的に変化し、基材の表面側において緻密度が小さくなるような緻密度分布とすることが好ましい。このような分布とすることにより、焼結対象物と焼結用トレー間の反応を特に有効に抑制することができるとともに、被膜の剥離も効果的に防止することができるためである。
【0038】
そして、このような緻密度の変化は、たとえば次のようにして確認することができる。まず、上記のようにして被膜全体の緻密度を測定する。次に、被膜表面から所定の厚み分をダイヤモンド砥石で研磨することにより除去した後、残存部分の被膜の緻密度を測定する。そして、この操作を繰り返すことにより、被膜の緻密度の変化を測定することができる。なお、この測定は、上記の通り同一基材による平板を用いたモデルを測定するものであるため、砥石で研磨される所定厚みは対象とする現実の被膜の厚みに相関させて決定する必要がある。
【0039】
<貫通孔>
本発明の被膜は、被膜の表面から基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないことを特徴とするものである。これにより、焼結対象物と焼結用トレーとの反応を有効に抑制することができる。このような優れた効果は、上記で既に説明した他の特徴と本特徴とが相乗的に作用することによりもたらされるものに他ならないが、35%という比較的低い緻密度であっても被膜中に貫通孔が存在しないという状態を提供できるのは、酸化物の結晶粒子の平均粒径を1nm以上800nm以下という極めて微小範囲のものに限定したためである。
【0040】
そして、このような貫通孔の有無は、被膜の表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認することができる。すなわち、観察倍率を10000倍程度とし、観察視野を50μm×50μm程度とすることにより、被膜の表面5箇所および断面5箇所を観察することによって、貫通孔が確認されない場合に被膜の表面から基材の表面に通ずる貫通孔が存在しないものとみなすものとする。
【0041】
なお、ここでいう貫通孔とは、上記のような物質移動に影響する孔をいうため、被膜表面および断面で観察される孔の径(最大径)が300nm以上のものをいうものとする。
【0042】
<製造方法>
本発明の被膜は、基材上に従来公知の任意の方法で形成することができる。しかし、本発明の被膜は、微粒酸化物粉末を原料として用いるエアロゾルデポジション法により形成することが特に好ましい。上記のような特徴を有する本発明の被膜を最も効率良く製造することができるからである。また、被膜を2種以上の酸化物で構成する場合にその複合化を容易に行なうことができるからである。以下、被膜をこのエアロゾルデポジション法により形成する場合について説明する。
【0043】
図1は、本発明で用いるエアロゾルデポジション法を実行するための成膜装置の概念図である。この成膜装置には、搬送ガスボンベ1の先にガス搬送ライン2を介してエアロゾル発生器としてのエアロゾル化室4が設置されている。ガス搬送ライン2を通る搬送ガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウム、乾燥空気などを用いることができる。
【0044】
エアロゾル化室4の内部には原料3として微粒酸化物粉末が適量充填されている。エアロゾル化室4は振動を加えるための加振機5上に載置される。エアロゾル化室4はエアロゾル搬送ライン6によりノズル7に接続されており、ノズル7は成膜室を構成するチャンバ13内において基材9と向かい合う。
【0045】
基材9は基板ステージ10によって保持されている。基材9とノズル7との間にはマスク8を設けることができる。ノズル7からはエアロゾル粒12が基材9に向かって噴出する。基板ステージ10は矢印14で示す方向に移動可能であり、これに伴い、基材9も基板ステージ10とともに移動する。チャンバ13は真空ポンプ11に接続されており、真空ポンプ11がチャンバ13内の圧力を調整することができる。
【0046】
このような成膜装置において、真空ポンプ11を稼働させ、成膜室としてのチャンバ13およびエアロゾル化室4の圧力を1Pa程度となるまで減圧する。搬送ガスボンベ1をあけて、ガスを流量0.1slm(標準状態(25℃)での1分間当たりの流量が0.1l)から15slm(標準状態(25℃)において1分間当たりの流量が15l)でエアロゾル化室4にガスを送り込み、原料3である微粒酸化物粉末とガスとが適当な比率で混合されたエアロゾルを発生させる。
【0047】
この際、エアロゾルは微小開口を有するノズル7を通じてチャンバ13に流れ込むため、エアロゾル化室4とチャンバ13との間には103Pa程度の圧力差が生じる。このエアロゾルをエアロゾル搬送ライン6を通じて加速させ、ノズル7により基材9に向けて噴射する。
【0048】
基板ステージ10を駆動させることによりエアロゾルの衝突位置を変化させながら微粒酸化物粉末の衝突により基材9上に本発明の被膜が焼結状態で形成される。ノズル7と基材9を相対的に移動させることにより、必要部位に成膜する。また、必要であれば基材9上に適当なパターンを持つマスク8を固定することで、基材9の被膜形成位置を指定することができる。
【0049】
上記において、被膜形成用の原料として用いる微粒酸化物粉末としては、平均粒径が1nm以上1μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは、その上限が500nm以下であり、その下限が10nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。上記平均粒径が1nm未満の場合、上記範囲内の緻密度を得られない場合がある一方、1μmを超えると被膜の成長速度が遅くなり生産性が劣る場合がある。一般的に、比較的大きな平均粒径を有する微粒酸化物粉末を用いると、比較的低い緻密度が得られる傾向にある。
【0050】
なお、このような微粒酸化物粉末としては、平均粒径が異なる2種以上の粉末を用いることが特に好ましい。緻密度を好適に制御することができるからである。なお、ここでいう微粒酸化物粉末の平均粒径とは、累積質量50質量%(一般にD50で表される)の粒径をいう。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<原料>
炭素質材からなる基材としてグラファイトを主成分とする所定形状(外郭寸法:たて230mm×横265mm×高さ5mm)のグラファイトトレーを用いた。そして、下記の表1および表2に記載した原料を用いてこの基材上に被膜を形成することにより本発明の焼結用トレーならびに比較例の焼結用トレーを製造した。なお、被膜の形成条件は後述の通りである。
【0053】
【表1】


【0054】
【表2】


【0055】
表1および表2中、第1層〜第3層が被膜の各層を示し、そこに記載されている化合物が原料である。なお、第1層が基材上に形成されるものとし、第2層および第3層が記載されているものについては、第1層上に第2層が形成され、その第2層上に第3層が形成されることを示す。また、数値は原料の平均粒径(nm)と配合割合(質量%)を示す(カッコ内の数値が配合割合である)。すなわち、数値が2種以上の組み合せで記載されている場合は、複数の原料粉末が使用されたことを示す。たとえば、実施例1では原料の微粒酸化物粉末として平均粒径の異なるY23粉末が2種(平均粒径800nmのものが80質量%、平均粒径55nmのものが20質量%)用いられたことを示す。
【0056】
<被膜形成条件>
図1の成膜装置を用いて上記で説明したエアロゾルデポジション法により基材上に被膜を焼結状態で形成した。本発明の実施例の被膜形成条件の具体的条件は以下の通りである。
【0057】
すなわち、エアロゾル化室4に上記表1および表2に記載した原料をそれぞれ充填した。搬送ガスとしてはヘリウムを用い、その流量を0.1slm〜15slmの範囲で調節した。また、エアロゾル化室4の圧力が10〜20kPaとなり、チャンバ13の圧力が5〜3000Paとなるように真空ポンプ11で圧力を調整した。
【0058】
また、基板ステージ10に上記基材9をセットし、ノズル7の開口サイズは2〜4mm2の範囲で調整し、ノズル7と基材9との距離は4〜15mmの範囲で調整した。さらに基板ステージ10の移動速度を0.1〜3mm/sの範囲で調整した。
【0059】
このようにして、下記の表3および表4に記載した被膜を基材上に形成した。なお、被膜を構成する酸化物の平均粒径を小さくする場合は上記条件の範囲内でガス流量を大きくすれば良く、緻密度を低める場合は上記条件の範囲内で原料粉末の粒径を調整すれば良い。すなわち、平均粒径の異なる粉末を混合し、原料粉末全体の粒径が大きくなるようにすれば良い。なお、各層内で緻密度を変化させる場合は上記条件を途中で適宜変化させれば良い。また、比較例の被膜の形成条件は、上記の範囲を超えて調節したものである。
【0060】
【表3】


【0061】
【表4】


【0062】
表3および表4中、第1層〜第3層は表1および表2の第1層〜第3層に各々対応する。材質の項のカッコ内の数値は、構成比率(質量%)を示す。平均粒径(nm)は、上記で説明した方法により測定した被膜を構成する酸化物結晶粒子の平均粒径を示す。緻密度の項の数値は、緻密度(%)と膜厚(μm)を示す(カッコ内の数値が膜厚である)。すなわち、緻密度の項に数値が2種以上の組み合せで記載されている場合は、被膜の厚み方向において緻密度が異なっていること(すなわち緻密度が均一でないこと)を示す。たとえば、実施例6では基材表面側に緻密度42%の領域が20μm形成され、被膜表面側に緻密度83%の領域が65μm形成されていることを示す(各層内で左側に記載されているものが基材側に形成されることを示す)。なお、緻密度は、上記で説明した方法により求めた。
【0063】
また、貫通孔についても上記の方法でその有無を確認し、その結果を表3および表4に示した。なお、本実施例のものについて被膜の厚み方向の断面をTEMにより観察したところ、酸化物の結晶粒子が基材と被膜との界面部において基材側に浸入していることを確認した。
【0064】
<反応性試験>
上記で得られた各焼結用トレーを用いて、焼結対象物と各焼結用トレーとの反応性を確認する試験を行なった。具体的試験条件は次の通りである。
【0065】
まず、焼結対象物(形状:ISO規格 SNMN120408)としては、下記の4種のものを用いた。
焼結対象物A:10質量%Coおよび残部WCの粉末混合成形体(K20)
焼結対象物B:20質量%Coおよび残部WCの粉末混合成形体(K40)
焼結対象物C:30質量%Coおよび残部WCの粉末混合成形体
焼結対象物D:20質量%WC、5質量%Mo2C、10質量%Co、5質量%Niおよび残部Ti(C、N)の粉末混合成形体(P30)
そして、各焼結対象物を上記各焼結用トレーに載置し、1500℃まで加熱することにより焼結を行なった後、室温まで冷却した。この操作(焼結対象物を焼結用トレーに載置し加熱焼結後冷却して焼結対象物を焼結用トレーから離脱させるまでを1回とする)を繰り返すことにより、焼結対象物と焼結用トレー(の被膜)とが溶着するまでの焼結回数を求めた。その結果を以下の表5および表6に示す。回数が多いもの程焼結対象物と焼結用トレー間の反応性が抑制されていることを示す。なお、焼結回数の上限は300回とし、その時点において溶着していないものについては「300以上」と表記した。
【0066】
また、最初に焼結を行なった際に、焼結用トレーの被膜に亀裂が発生したか否かも観察し、同じく表5および表6(亀裂の有無の項)に示す。
【0067】
【表5】


【0068】
【表6】


【0069】
表6中、比較例5は基材上に被膜を形成しなかった焼結用トレーを示し、比較例6は基材上に被膜(ZrO220質量%、Y2380質量%)を溶射法により形成したものを示し、比較例7は基材上に被膜(Y2360質量%、Al2340%)を塗布法により形成したものを示す。なお、比較例6および比較例7について上記と同様にして貫通孔を確認したところ、複数の貫通孔が確認された。
【0070】
表5および表6より明らかなように、本発明の実施例の焼結用トレーは比較例の焼結用トレーに比し、最初の焼結時に亀裂が発生しないとともに、焼結対象物との反応性が極めて抑制されていた。
【0071】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0072】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明で用いるエアロゾルデポジション法を実行するための成膜装置の概念図である。
【符号の説明】
【0074】
1 搬送ガスボンベ、2 ガス搬送ライン、3 原料、4 エアロゾル化室、5 加振機、6 エアロゾル搬送ライン、7 ノズル、8 マスク、9 基材、10 基板ステージ、11 真空ポンプ、12 エアロゾル粒、13 チャンバ、14 矢印。
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎

【識別番号】100085132
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 俊雄

【識別番号】100083703
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 義平

【識別番号】100096781
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 豊

【識別番号】100098316
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 久登

【識別番号】100109162
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 將行


【公開番号】 特開2008−38228(P2008−38228A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−217191(P2006−217191)