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【発明の名称】 超硬合金またはサーメットの凝集化粉末混合物の製造方法
【発明者】 【氏名】アニカ カウッピ

【氏名】ウルフ ユッテルストーム

【要約】 【課題】金属加工用切削工具、岩石穿孔用工具、及び磨耗部品の製作に有用な超硬合金、サーメット又はセラミックの凝集化粉末混合物を作る方法を提供する。

【構成】結合剤を含有する粉末混合物を湿式粉砕し、そのスラリーをスプレー乾燥させ、金属加工用切削工具、岩石穿孔用工具、及び磨耗部品の製作に有用な凝集化粉末にすることによってプレス成形可能な凝集化粉末混合物を作る。その結合剤が、硬質から軟質への圧力誘起変態を有するバロプラスチック重合体であれば、優れた流動特性と優れた塑性を持つ良く発達した凝集体が得られる。この結合剤の硬質特性がスプレー乾燥粉末の取扱いの間、及び生素地において標準圧力下で使用されるのに対し、軟質特性の方は、10〜50MPaを超える高い圧力のもとで材料のプレス成形の間に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤を含有する粉末混合物を湿式粉砕し、且つスラリーをスプレー乾燥させて凝集化粉末にすることによってプレス成形可能な凝集化粉末混合物を作る方法であって、
前記結合剤が、硬質から軟質への圧力誘起変態を有するバロプラスチック重合体であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粉末混合物が、超硬合金、サーメット又はセラミックの粉末混合物であること、及び、硬質から軟質への前記圧力誘起変態が10〜50MPaの圧力範囲内で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バロプラスチック材料が、軟質特性を示す重合体コアと硬質特性を示す重合体シェルからなる粒度範囲50〜200nmの粒子のコアシェル型重合体のブロック共重合体組成であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バロプラスチック重合体が、
該重合体の硬質成分として、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(ヘキシルメタクリレート)を含有し、且つ
該重合体の軟質成分として、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)又はポリ(カプロラクトン)を含有する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
10〜50MPaの圧力範囲内で硬質から軟質への圧力誘起変態を有するバロプラスチック重合体を含有することを特徴とする超硬合金、サーメット又はセラミックの粉末混合物を含む粉末。
【請求項6】
前記バロプラスチック材料が、軟質特性を示す重合体コアと硬質特性を示す重合体シェルからなる粒度範囲50〜200nmの粒子のコアシェル型重合体のブロック共重合体組成であることを特徴とする請求項5に記載の粉末。
【請求項7】
前記バロプラスチック重合体が、
該重合体の硬質成分として、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(ヘキシルメタクリレート)を含有し、
該重合体の軟質成分として、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)又はポリ(カプロラクトン)を含有する
ことを特徴とする請求項6に記載の粉末。
【請求項8】
10〜50MPaの圧力範囲内で硬質から軟質への圧力誘起変態を有するバロプラスチック重合体を含有することを特徴とする超硬合金、サーメット又はセラミックの粉末混合物を含むスラリー。
【請求項9】
前記バロプラスチック材料が、軟質特性を示す重合体コアと硬質特性を示す重合体シェルからなる粒度範囲50〜200nmの粒子のコアシェル型重合体のブロック共重合体組成であることを特徴とする請求項8に記載のスラリー。
【請求項10】
前記バロプラスチック重合体が、
該重合体の硬質成分として、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(ヘキシルメタクリレート)を含有し、
該重合体の軟質成分として、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)又はポリ(カプロラクトン)を含有することを特徴とする、請求項9に記載のスラリー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工用切削工具、岩石穿孔用工具、及び磨耗部品の製作に有用な超硬合金、サーメット又はセラミックの凝集化粉末混合物を作る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超硬合金又はサーメット合金は、主にCo及び/又はNiをベースにした金属結合剤相5〜20vol%の中の硬質成分から作られる。超硬合金では硬質成分が炭化物であるのに対し、サーメットではそれが窒化物及び/又は炭窒化物であり、あるいは炭化物ということもあり得る。
【0003】
超硬合金物体又はサーメット物体は、硬質成分と結合剤相ならびに結合剤と往々にして特異な性質を持つ他の添加剤を形成する粉末を含有する粉末混合物を湿式粉砕し、この粉砕された混合物を流動特性に優れたプレス成形可能な粉末に乾燥させ、その粉末をプレス工具でプレス成形し、又は所望の形状の物体に押出し成形し、最終的に焼結する粉末冶金法によって作られる。
【0004】
粉砕操作は、次に続く乾燥に適したスラリーを作り出す。乾燥は、スプレー乾燥又は冷凍粒状化とその後に続く冷凍乾燥によって実行できる。乾燥プロセスの結果として、直径約0.1mmの球状凝集体が得られ、結合剤、一般にポリエチレン、グリコール、PEGによって一緒に保たれる。このPEG結合剤は、プレス成形の間存在するが、最終的に焼結の間に除去される。
【0005】
重要であるのは、凝集が、プレス工具の均一な充填を許容し、圧密化の初期段階におけるその再分配を許容する優れた流動特性を持つことである。これは一般に、硬質の凝集を選ぶことによって得られる。このような凝集体は、分子量の大きいPEGを使うことによって得られる。これは往々にして、最終の焼結物体における有孔度の問題につながる。圧密化操作のある一定のポイントにおいて、プレス成形物体で一様かつ均一な密度を確保するために軟質の凝集体が望まれる。これは、分子量の小さいPEGを使うことによって得られる。これは、プレス成形物体に低い有孔度を与えるが、流動特性に劣るために均一な密度分布を与えない。分子量の大きいPEG重合体と分子量の小さいPEG重合体を混合すると、折衷物を得ることはできるが、生素地の流動特性の点でも密度変化の点でも最適でない。最適と思われるのは、粒状での取扱いの間、型の充填の間、及び生素地において硬質特性を示し、材料のプレス成形の間に軟質特性を示す結合剤である。
【0006】
バロプラスチックは、圧力を加えることによって処理できるブロック共重合体組成の新しいクラスの材料である。これは、軟質特性を示す重合体コアと硬質特性を示す重合体シェルからなる粒度50〜200nmの粒子のコアシェル型重合体である。標準圧力の間、コア重合体とシェル重合体は混和可能でなく、それゆえ、これらはコアとシェルとして別々のまま留まる。しかしながら、重合体の混和性は圧力が増すにつれて高まり、高温下で重合体は混合され、軟質コアと硬質シェルの中間の特性を獲得する。高温下の高められた混和性は可逆的で、圧力を下げると、重合体は再びコアシェル構造を形成する。
【0007】
J.A. Gonzalez-Leon、M.H. Acar、S.-W. Ryu、A.-V. G. Ruzette及びA. Mayesによる“Low-temperature processing of“baroplastics”by pressure-induced flow”(Nature vol. 426、424-428、2003)に、バロプラスチック重合体を製造するプロセスが開示されている。このバロプラスチック重合体は、周囲温度下で低温成形性を獲得し、劣化なしで再成形することができた。
【0008】
J.A. Gonzalez-Leon、S.-W. Ryu、S. A. Hewlett、S. H.Ibrahim及びA. Mayesによる“Core-shell polymer nanoparticles for baroplastic processing”(Macromolecules, vol. 38、8036-8044、2005)に、バロプラスチック重合体の特性は更に論究されている。特に、組成、粒度及び構造が機械的挙動に及ぼす影響が論究された。
【0009】
米国特許第6,632,883号公報は、圧力を加えることによって処理できるブロック共重合体組成を開示している。また、重合体混和物及びブロック共重合体の位相図を予測する方法も開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れた流動特性と優れた塑性を持つ超硬合金又はサーメットの凝集体を製造する改良法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、優れた流動特性と優れた塑性を持つ凝集体からなるプレス成形可能な超硬合金粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで意外にも、優れた流動特性と優れた塑性を持つ良く発達した凝集体を有するスプレー乾燥した超硬合金粉末又はサーメット粉末が、バロプラスチック重合体を結合剤として使用することによって得られることが見出された。この結合剤の硬質特性がスプレー乾燥粉末の取扱いの間、及び生素地において標準圧力下で使用されるのに対し、軟質特性の方は、10MPaを超える高い圧力のもとで材料のプレス成形の間に使用される。
【発明の効果】
【0013】
バロプラスチック材料は、軟質特性を示す重合体コアと硬質特性を示す重合体シェルからなる粒度範囲50〜200nmの粒子のコアシェル型重合体のブロック共重合体組成である。
【0014】
好ましくは、この重合体の硬質成分は、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(ヘキシルメタクリレート)であり、軟質成分は、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)又はポリ(カプロラクトン)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一態様は、バロプラスチック結合剤を含有する粉末混合物を湿式粉砕し、そのスラリーをスプレー乾燥させて凝集化粉末にすることによってプレス成形可能な凝集化粉末混合物を作る方法に関するものである。
【0016】
好ましくは、この粉末混合物は超硬合金、サーメット又はセラミックの粉末混合物であり、硬質から軟質への圧力誘起変態が10〜50MPaの圧力範囲内で行われる。
【0017】
より好ましくは、粉末混合物は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及び/又はWの炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物をベースにした硬質成分粉末、Co及び/又はNiの金属結合剤相粉末5〜15wt%、ならびに、バロプラスチック重合体の凝集化結合剤を含有する。
【0018】
本発明の別の態様は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及び/又はWの炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物をベースにした硬質成分粉末、及び、Co及び/又はNiの金属結合剤相粉末を含有する凝集化粉末に関するものである。
【0019】
本発明の第3の態様は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及び/又はWの炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物をベースにした硬質成分粉末、及び、Co及び/又はNiの結合剤相粉末、ならびに、結合剤を含有するスラリーに関するものである。
【0020】
以上、本発明を超硬合金物体又はサーメット物体に則して説明した。本発明が一般に粉末冶金法によるセラミックなどの物体の製造に適用できることは明白である。
【実施例】
【0021】
実施例1
プレス成形可能な超硬合金粉末を製造した。先ず、スラリーを、WC93wt%、Co5wt%、結合剤としてのバロプラスチック重合体2wt%及び粉砕用液0.3l/kgをベースにして製造した。バロプラスチック重合体は、ポリスチレンのシェルとポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)のコアを有する約100nmの大きい粒子のエマルションとして添加した。粉末を平均粒度3μmになるように粉砕した。スラリーを実地標準に従って乾燥させ、図1に示す良く発達した凝集体を含む凝集化粉末混合物にした。この粉末をプレス成形して物体にした。破砕された生素地は、図4に示す通りの残留凝集構造を見せなかった。生素地を真空において1410℃で焼結した。
【0022】
実施例2
PEG4000を結合剤として実施例1を繰返した。凝集体の外見を図3に示し、破砕された生素地の構造を図5に示す。
【0023】
実施例3
60%のPEG4000と40%のPEG300を結合剤として実施例1を繰返した。凝集体の外見を図2に示し、破砕された生素地の構造を図6に示す。
【0024】
実施例4
実施例1、2及び3からの粉末についてISO4490に定める流動時間の測定を行った。焼結物体のつや出し横断面においてISO4505に定める有孔度を評価した。下記の結果が得られた。
【0025】
有孔度
流動時間 A B 25〜75μm孔
[s] [孔数/cm
実施例1 31 00 00 0
実施例2 32 02 04 4
実施例3 37 00 00 0
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に従って生産された粉末のスプレー乾燥粒の150倍拡大SEM画像である。
【図2】図2は、先行技術に従って生産された粉末のスプレー乾燥粒の150倍拡大SEM画像である。
【図3】図3は、先行技術に従って生産された粉末のスプレー乾燥粒の150倍拡大SEM画像である。
【図4】図4は、本発明に従って生産された破砕状態の生素地の表面の画像である。
【図5】図5は、先行技術に従って生産された破砕状態の生素地の表面の画像である。
【図6】図6は、先行技術に従って生産された破砕状態の生素地の表面の画像である。
【出願人】 【識別番号】505277521
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
【出願日】 平成19年5月30日(2007.5.30)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏

【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康


【公開番号】 特開2008−31552(P2008−31552A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−143450(P2007−143450)