トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金

【発明の名称】 ナノロッド及びナノロッドの製造方法
【発明者】 【氏名】原田 琢也

【氏名】藤原 英道

【氏名】西久保 英郎

【氏名】海野 隆

【氏名】高柴 和宏

【要約】 【課題】金属微粒子、酸化物微粒子等のナノ微粒子がロッド状に形成されるナノロッドを、液相還元により非常に簡便に生成することが可能なナノロッドの製造方法を提供する。

【構成】溶性高分子と酸素とを含む水溶液中で、金属イオンの還元を行うことにより、アスペクト比が1.0より大きくかつ50.0より小さい範囲であり、かつ、短軸の平均半径が1nm〜20nmの範囲である金属または金属酸化物よりなるナノロッドを生成する。また、ナノ構造体テンプレート等を用意することなく、非常に簡便な方法により、ナノロッドを生成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ微粒子がロッド状に形成されるナノロッドを、液相還元により生成するナノロッドの製造方法であって、
水溶性高分子と酸素とを含む水溶液の中で、金属イオンを還元するという還元工程を備えていることを特徴とするナノロッドの製造方法。
【請求項2】
前記ナノ微粒子は、金属微粒子及び酸化物微粒子の中の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項3】
前記還元工程は、還元剤を前記水溶液の中に滴下するという工程を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項4】
前記還元剤は、水素化物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、及びホスヒン酸ナトリウムの中の少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項5】
前記水溶液の中の浴存酸素濃度が、0.01mg/l以上でかつ14.16mg/l以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項6】
前記水溶液の液温が、0℃以上でかつ40℃以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項7】
前記水溶性高分子は、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンオキシドの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項8】
前記金属イオンが、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、スズ、及び銀の中から選択された1種の金属のイオンであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のナノロッドの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法によって製造されることを特徴とするナノロッド。
【請求項10】
前記ナノロッドは、アスペクト比が1.0より大きくかつ50.0より小さい範囲であり、かつ、短軸の平均半径が1nm〜20nmの範囲であることを特徴とする請求項9に記載のナノロッド。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノロッド及びナノロッドの製造方法に関する。特に、金属微粒子、酸化物微粒子等のナノ微粒子がロッド状に形成されるナノロッドを、液相還元により非常に簡便に生成することが可能なナノロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズ(粒径が1μm以下)の金属微粒子は、バルク材料にはない様々な特異な特性を持つことが知られている。そしてこの特性を生かした様々な工学的応用が、現在、エレクトロニクス、バイオ、エネルギー等の各分野で、大いに期待されている。
【0003】
特に、金属微粒子がロッド状に形成されるアスペクト比が1以上であるナノロッドは、その光吸収特性を利用した光フィルタ材料、近赤外線吸収材料、着色剤、化粧品、導電性を利用した導電材料や配線材料、電磁波シールド等の広範囲な用途での利用が期待されている。また、酸化物の微粒子がロッド状に形成されるナノロッドにおいても、触媒やセンサ等でのいろいろな応用が期待されている。
【0004】
このようなナノロッドを製造する方法として、ナノ構造体テンプレートを利用する方法、電気分解を利用する方法、2層界面を利用する方法等が知られている。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含んだ水溶液中で、アルコールを還元剤として金属イオンを還元してナノロッドを生成する方法が知られている。
【0005】
特許文献1では、金属微粒子と水系分散剤を含む金属微粒子水分散液と、非水溶媒と、水系分散剤を金属微粒子から離脱させる離脱剤と、非水分散剤とを混合して、金属微粒子を非水分散剤に移行させ、金属微粒子が分散する非水溶媒層を水層から分離することにより、金属微粒子や金属ナノロッドを抽出する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−270957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような方法では、ナノ構造体テンプレートや電気分解を行うための装置を、予め用意しておかなければならず、簡単にナノロッドを製造することが難しかった。また、アルコールによる還元の場合は、反応温度を高くしなければならないという問題点もあった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、金属微粒子、酸化物微粒子等のナノ微粒子がロッド状に形成されるナノロッドを、液相還元により、非常に簡便に生成することが可能なナノロッドの製造方法、及びその方法によって生成されたナノロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は上述した従来の問題点について鋭意研究を重ねた。その結果、水溶性高分子と酸素とを含む水溶液中で、金属イオンの還元を行うことにより、アスペクト比が1.0より大きくかつ50.0より小さい範囲であり、かつ、短軸の平均半径が1nm〜20nmの範囲であるナノロッドを生成できることが判明した。また、ナノ構造体テンプレート等を用意することなく、非常に簡便な方法により、ナノロッドを生成できることが判明した。
【0009】
また、金属ナノロッドと金属微粒子とが混在している金属微粒子分散液を塗布した基板等において、金属微粒子だけのものと比較して、より焼結性が大きいことが判明した。この発明は、上述した研究成果によってなされたものである。
【0010】
本発明の第1の態様にかかるナノロッドの製造方法は、ナノ微粒子がロッド状に形成されるナノロッドを、液相還元により生成するナノロッドの製造方法であって、水溶性高分子と酸素とを含む水溶液の中で、金属イオンを還元するという還元工程を備えていることを特徴とする。
【0011】
これにより、ナノ構造体テンプレート等を用意することなく、非常に簡便な方法により、ナノロッドを生成することができる。また、金属微粒子と金属ナノロッドとが混在した、より高い焼結性のある金属微粒子分散液を生成することができる。
【0012】
本発明の第2の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1の態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記ナノ微粒子は、金属微粒子及び酸化物微粒子の中の少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
これにより、金属微粒子だけでなく、触媒やセンサ等に利用できる酸化物微粒子を非常に簡単に生成することができる。
【0014】
本発明の第3の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1または2の態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記還元工程は、還元剤を前記水溶液の中に滴下するという工程を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第3の態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記還元剤は、水素化物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、及びホスヒン酸ナトリウムの中の少なくとも1種であることを特徴とする。
【0016】
ここで、水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム等である。
【0017】
本発明の第5の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記水溶液の中の浴存酸素濃度が、0.01mg/l以上でかつ14.16mg/l以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1から5のいずれか1つの態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記水溶液の液温が、0℃以上でかつ40℃以下であることを特徴とする。
【0019】
これにより、反応温度を高くしなくとも、ナノロッドを生成することができる。
【0020】
本発明の第7の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1から6のいずれか1つの態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記水溶性高分子は、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンオキシドの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第8の態様にかかるナノロッドの製造方法は、本発明の第1から7のいずれか1つの態様にかかるナノロッドの製造方法において、前記金属イオンが、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、スズ、及び銀の中から選択された1種の金属のイオンであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第1の態様にかかるナノロッドは、本発明の第1から8のいずれか1つの態様にかかるナノロッドの製造方法によって製造されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第2の態様にかかるナノロッドは、本発明の第1の態様にかかるナノロッドにおいて、前記ナノロッドは、アスペクト比が1.0より大きくかつ50.0より小さい範囲であり、かつ、短軸の平均半径が1nm〜20nmの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ナノ構造体テンプレート等を用意することなく、非常に簡便な方法により、ナノロッドを生成することができる。また、金属微粒子と金属ナノロッドとが混在している、より高い焼結性のある金属微粒子分散液を生成することができる。
【0025】
また、金属微粒子だけでなく、触媒やセンサ等に利用できる酸化物微粒子を非常に簡単に生成することができる。また、反応温度を高くしなくとも、ナノロッドを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0027】
まず、本発明を適用可能なナノロッドの製造方法を説明する。図1は、本発明を適用可能なナノロッドの製造方法の概念図である。図1に示すように、まず、金属微粒子の原料である金属イオン原料10と、還元剤11と、還元制御剤12とを、溶媒である蒸留水13に混合した水溶液の中に入れて、酸素ガスと不活性ガス(窒素ガス等)とを混合した混合ガスでバブリングした後に攪拌して、液相還元させる。これにより、金属ナノロッドが生成される。
【0028】
このとき、金属微粒子も生成され、金属微粒子分散溶液の中では、金属微粒子と金属ナノロッドとが混在した状態となっている。また、生成条件や生成後の保持条件によっては、酸化物のナノロッドが生成される。
【0029】
ここで、金属微粒子は、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、スズ、銀等の中から選択された1種の金属、または、これらの2種類以上の金属からなる合金である。例えば、金属イオン原料10として酢酸銅などがある。
【0030】
また、還元剤11は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム等の水素化物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、ホスヒン酸ナトリウム等の中の少なくとも1種である。
【0031】
また、還元制御剤12は、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等の中から選択された少なくとも1種である。
【0032】
上述したような方法で、ナノロッドを生成することにより、非常に簡便にナノロッドを生成することができる。また、金属微粒子と金属ナノロッドとが混在した、より高い焼結性のある金属微粒子分散液を生成することができる。
【0033】
また、金属微粒子だけでなく、触媒やセンサ等に利用できる酸化物微粒子を非常に簡単に生成することができる。また、反応温度を高くしなくとも、ナノロッドを生成することができる。
【0034】
次に、本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例】
【0035】
(金属ナノロッドの作成方法)
本発明の金属ナノロッドの作成方法として、銅ナノロッドの作成方法の一例を示す。なお、本発明は必ずしもこの方法のみに限定されるものではない。
【0036】
始めに、銅ナノロッドの原料として酢酸銅0.2gを蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/lとなるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水を混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlと、を作成した。上記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に水溶性高分子のポリビニルピロリドン(PVP)0.5gを添加して攪拌溶解させた。
【0037】
続いてこの還元性水溶液に、窒素と酸素の比率が3:1となるように調整した混合ガスを約60分間バブリングした後、水温を20℃に設定して上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。この混合液を水温20℃に保持したまま約60分間よく攪拌した。生成した黒色の反応液を回収し、所望の金属ナノロッドが分散した水溶液を得た。
【0038】
得られた銅ナノロッド分散液をカーボン蒸着された銅メッシュ上に塗布乾燥し、日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行ったところ、得られた銅微粒子の大部分は、アスベクト比が1.0よりも大きくかつ50.0よりも小さい範囲であり、短軸の平均サイズが5nmのナノサイズの棒状粒子であることが確認された(図2)。
【0039】
<比較例1>
(バブリングガスの影響)
本発明の比較例として、上記バブリングガスを100%窒素に変え、それ以外の条件は上記実施例と全く同様に設定した微粒子製造実験を行った。
【0040】
上記と同様、得られた銅微粒子分散液をカーボン蒸着された銅メッシュ上に塗布乾燥し、日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行ったところ、得られた銅微粒子は、その大部分において、平均サイズが10nmのナノサイズの球状の粒子であり、上記実施例で見られた棒状の粒子はほとんど存在していないことが確認された。
【0041】
<比較例2>
(水溶性高分子添加量の影響)
本発明の比較例として、水溶性高分子(ポリビニルピロリドン)の添加量を、それぞれ0.1gと2.0gに変え、それ以外の条件は上記実施例と全く同様に設定した微粒子製造実験を行った。
【0042】
上記と同様、得られた銅微粒子分散液をカーボン蒸着された銅メッシュ上に塗布乾燥し、日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行ったところ、得られた銅微粒子の大部分は、平均サイズが2nm〜30nmの球状もしくは四角状の粒子であり、上記実施例で見られた棒状の粒子はほとんど存在していないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用可能なナノロッドの製造方法の概念図である。
【図2】銅微粒子分散液をカーボン蒸着された銅メッシュ上に塗布乾燥したものをTEMで観察した写真である。
【符号の説明】
【0044】
10 金属イオン原料
11 還元剤
12 還元制御剤
13 蒸留水



【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮


【公開番号】 特開2008−31518(P2008−31518A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205985(P2006−205985)