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【発明の名称】 中空金属体
【発明者】 【氏名】福田 泰隆

【氏名】小川 厚

【氏名】阿部 正広

【氏名】板谷 宏

【氏名】小倉 邦明

【要約】 【課題】自動車の車体軽量化等に活用できる強度が高くかつ耐食性に優れた中空金属体を提供する。

【構成】内部に空孔を有する中空金属体の外表面に、Al23,CaO,MgO,ZrO2,SiCおよびSiO2から選ばれる1種または2種以上のセラミックスを付着させる。中空金属体の組成は、Feからなることが好ましく、あるいはMo:0.2〜10質量%,Cu:0.5〜5質量%,Ni:0.2〜10質量%およびP:0.01〜1質量%から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeからなることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空孔を有する金属体の外表面に、Al23、CaO、MgO、ZrO2、SiCおよびSiO2から選ばれる1種または2種以上のセラミックスが付着していることを特徴とする中空金属体。
【請求項2】
前記金属体がFeからなることを特徴とする請求項1に記載の中空金属体。
【請求項3】
前記金属体がMo:0.2〜10質量%、Cu:0.5〜5質量%、Ni:0.2〜10質量%およびP:0.01〜1質量%から選ばれる1種または2種以上を含有し、前記金属体の残部がFeからなることを特徴とする請求項1に記載の中空金属体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空孔を有する金属体(以下、中空金属体という)に関するものであり、特に強度が高くかつ耐食性に優れた中空金属体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化を防止するために、石油系燃料の消費量を削減する取り組みが様々な分野でなされている。その一環として自動車の車体を軽量化する技術が種々検討されている。
自動車の車体には、衝突時の衝撃を吸収して車体の損傷を軽減するために、バンパーと車体との間にクラッシュボックスが設けられている。このクラッシュボックスの軽量化を図るために、発泡アルミニウムや中空金属体を所定の形状に成形したクラッシュボックス(たとえば特許文献1,2参照)が検討されている。これらは、内部に気泡あるいは空孔を有する素材を使用することによって、クラッシュボックスを軽量化する技術である。
【0003】
発泡アルミニウムからなるクラッシュボックスは、内部に気孔を有するアルミニウムを成形したものである。ところが、発泡アルミニウムの内部に発生させる気孔の寸法や分布を制御することは困難であり、その成形体(すなわちクラッシュボックス)の強度は大きく変動する。したがって、衝撃を吸収する作用が安定しない。
中空金属体からなるクラッシュボックスは、内部が中空になっている金属体を所定の形状に加圧成形して焼結したものである。したがって、一定の寸法を有する中空金属体を選択して使用すれば、発泡アルミニウムに比べて強度の変動を抑制でき、かつ複雑な形状に成形することも可能である。ところが、中空金属体は金属粉末を水素雰囲気中で焼結して製造するので、外表面が水素で活性化され、中空金属体同士が凝集し易い。中空金属体を加圧成形する際には凝集した中空金属体を引き剥がさなければならず、その過程で外表面に疵が発生し、中空金属体の強度が低下するという問題がある。また、中空金属体の素材となる金属粉末は鉄粉が一般的に使用されるので、自動車が走行する環境によってはクラッシュボックスに腐食が生じるという問題もある。
【特許文献1】特開昭64-56137号公報
【特許文献2】特表2003-531287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題を解消し、強度が高くかつ耐食性に優れた中空金属体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内部に空孔を有する金属体の外表面に、Al23,CaO,MgO,ZrO2,SiCおよびSiO2から選ばれる1種または2種以上のセラミックスが付着している中空金属体である。
本発明の中空金属体はFeからなることが好ましい。あるいはMo:0.2〜10質量%,Cu:0.5〜5質量%,Ni:0.2〜10質量%およびP:0.01〜1質量%から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、強度が高くかつ耐食性に優れた中空金属体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の中空金属体の外表面に付着させる粉状のセラミックスは、Al23,CaO,MgO,ZrO2,SiCおよびSiO2から選ばれる1種または2種以上とする。これらのセラミックスはいずれも化学的に安定であるから、中空金属体を製造する工程で行なう焼結(水素雰囲気,1000〜1300℃)や中空金属体をクラッシュボックスの形状に加圧成形した後で行なう焼結(水素雰囲気,1000℃以上)で還元されず、中空金属体の外表面に残留する。そのため、これらのセラミックスは、中空金属体の製造からクラッシュボックスの製造に到る工程で焼結を行なっても中空金属体中に拡散し難いという利点を有する。
【0008】
一般にセラミックスが付着した原料を焼結する場合には、セラミックスを構成する元素が母材に拡散すると、焼結体の強度が低下する。
これに対して本発明の中空金属体は、外表面に付着させる粉状のセラミックスの成分をAl23,CaO,MgO,ZrO2,SiC,SiO2に限定することによって、焼結によるセラミックスの拡散を防止し、中空金属体やクラッシュボックスの強度低下を防止する。また、セラミックスで中空金属体を被覆することによって、水分(たとえば雨水,露等)と中空金属体との接触が抑制され、中空金属体にて形成されるクラッシュボックスの耐食性が向上する。これらのセラミックスは、いずれか1種を単独で使用しても良いし、あるいは2種以上を併用しても良い。
【0009】
粉状のセラミックスの平均粒径が0.02μm未満では、中空金属体の外表面に均一に付着させることが困難である。一方、10μmを超えると、中空金属体の外表面から剥離し易くなる。したがって、粉状のセラミックスの平均粒径は0.02〜10μmの範囲内が好ましい。
粉状のセラミックスによる中空金属体の外表面被覆率が50%未満では、耐食性向上の効果が得られない。したがって、外表面被覆率は50%以上が好ましい。ここで外表面被覆率は、表面の写真を画像解析して得られたセラミックス面積率を指す。
【0010】
中空金属体の外径は約3mmであり、内部に直径2.5mm程度の空孔を有する。中空金属体を製造するにあたって、たとえば
(1)水に約30質量%の酸化鉄と数質量%のポリビニルアルコール(いわゆるPVA)とを混合してスラリーとする、
(2)そのスラリーを流動化した平均粒径5mmの発泡スチロール球の表面にスプレー塗布,乾燥する(厚み約200μm)、
(3)酸化鉄が塗布された発泡スチロール球を約1000℃大気中で焼結する、
(4)その酸化鉄焼結体に粉状のセラミックスと水とのスラリーを塗布して乾燥する、
(5)セラミックスが付着した酸化鉄焼結体を水素雰囲気中(1000〜1300℃)で還元焼結する
という手順で製造できる。ただし、この手順は中空金属体の製造技術の一例であり、本発明はこの手順に限定するものではない。
【0011】
中空金属体の組成はFeであることが好ましい。Feは安価で容易に入手でき、かつ上記の(1)〜(5)の手順を支障なく適用できるので、大量に製造されるクラッシュボックスの素材として好適である。Feからなる中空金属体の外表面に粉状のAl23,CaO,MgO,ZrO2,SiC,SiO2等を付着させることによって、中空金属体の強度と耐食性を高めることができる。その中空金属体を用いて製造したクラッシュボックスは、軽量化と同時に強度向上,耐食性向上を達成できる。
【0012】
あるいは中空金属体の組成は、Mo:0.2〜10質量%,Cu:0.5〜5質量%,Ni:0.2〜10質量%およびP:0.01〜1質量%から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeであっても良い。Mo,Cu,Ni,Pは、いずれも焼結した成形体(すなわちクラッシュボックス)の密度を高めたり、粒成長を促進して強度を向上させる元素である。これらの元素の含有量が下限値に満たない場合は、中空金属体やクラッシュボックスの強度向上の効果が得られない。一方、上限値を超えると、中空金属体やクラッシュボックスが脆くなる。
【実施例】
【0013】
<実施例1>
平均粒子径0.7μmの酸化鉄(Fe23)30質量%,PVA2質量%を水に混合したスラリーを作製し、ミキサー中で平均粒径5mmの発泡スチロール球にそのスラリーを塗布した後、120℃で乾燥して、発泡スチロール球の表面に酸化鉄の皮膜(厚み200μm)を形成した後、大気中1000℃で焼結して中空の酸化鉄焼結体とした。
【0014】
次いで、表1に示す粉状のセラミックスを水に分散させた液(すなわちスラリー)を作製し、流動化した酸化鉄焼結体の表面にスプレーで塗布し、さらに120℃で乾燥した。
【0015】
【表1】


【0016】
粉状セラミックスのスラリーを乾燥した後、水素雰囲気中で還元焼結(1200℃,2時間)して中空金属体を製造した。
発明例2〜12は表1に示すセラミックスを用いて、発明例1と同様にして中空金属体を製造した。また比較例1では、発明例1と同様にして発泡スチロールの表面に酸化鉄の皮膜(厚み200μm)を形成した後、水素雰囲気中1200℃で還元焼結して中空金属体を製造した。
【0017】
こうして得られた中空金属体の圧縮試験と腐食試験を行なった。その結果を表1に併せて示す。表1中の圧縮強度は降伏点の荷重を示す。表1中の腐食性評価は、腐食試験(70℃,95%RH,1000時間)を行ない、外表面の発錆面積率が10%以下を良(○),10%超え20%以下を可(△),20%超えを不可(×)として示す。ここで発錆面積率は、表面写真を画像解析して算出された錆の面積率を指す。
【0018】
表1から明らかなように発明例1〜12は、比較例1に比べて、いずれも強度と耐食性に優れていることが分かる。しかも発明例1〜12では、中空金属体の製造工程にて焼結を行なう際に中空金属体の凝集は認められなかったが、比較例1では中空金属体の凝集が発生した。
<実施例2>
Fe−P粉,CuO粉,Ni粉,Fe−Mo粉を酸化鉄に添加して、実施例1と同様に中空金属体を製造した。得られた中空金属体のP,Cu,Ni,Mo含有量は表2に示す通りである。ただし、セラミックスとして平均粒径1μmのZrO2 を使用し、スラリー中のZrO2 濃度は10質量%とした。
【0019】
【表2】


【0020】
こうして得られた中空金属体の圧縮試験と腐食試験の結果を表2に併せて示す。本発明の好ましい範囲である発明例15,18,21,24は、発明例1〜13に比べて強度と耐食性が一層向上していることが分かる。なお発明例13〜25では、中空金属体の製造工程にて還元焼結を行なう際に中空金属体の凝集は認められなかった。
【出願人】 【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一


【公開番号】 特開2008−25015(P2008−25015A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−202354(P2006−202354)