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【発明の名称】 金属銀微粒子の製造方法
【発明者】 【氏名】細谷 一雄

【氏名】上田 雅行

【氏名】松葉 頼重

【要約】 【課題】酸化銀を原料とし、液相中における還元反応によって、ナノサイズの粒子径を有する金属銀微粒子を調製する方法の提供。

【構成】粉末状の酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、炭素数14以上の長鎖脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量となる量と、液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が0.12〜0.35モル量となる量とを添加し、酸化銀分散混合物とした上で、撹拌、加熱することにより、脂肪酸とアミン化合物を含む液相中において、還元により生成する銀原子からなる、平均粒子径3〜20nmの金属銀微粒子を形成させる。該金属銀微粒子の表面は、前記アミン化合物がそのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化銀を原料とし、液相中における還元反応によって、平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子を調製する方法であって、
粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、
飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量となる量と、
液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が0.12〜0.35モル量となる量とを添加し、
非極性溶媒を加えて、混合液中における、銀の含有率を、25質量%〜40質量%の範囲に選択して、
前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物中に、前記粉末状酸化銀(I)が分散されてなる酸化銀分散混合物を調製する工程と、
80℃〜140℃の範囲に選択される液温に、該酸化銀分散混合物を加熱、攪拌し、前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物からなる液相中において、前記アミノ化合物の存在下、該酸化銀(I)に前記脂肪酸を作用させ、対応する脂肪酸銀(I)とした後、還元により生成する銀原子からなる平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子を析出させる工程とを有し、
析出される平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子は、その表面の銀原子に対して、少なくとも、前記アミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態である
ことを特徴とする金属銀微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記脂肪酸は、炭素数14〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜22の直鎖アルケン酸から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液状のアミン化合物は、沸点が80℃以上である、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)からなる群から選択される一種のアミンまたは、二種以上のアミンである
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記液状のアミン化合物は、アミノ窒素原子上を置換する炭化水素基がアルキル基である、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)からなる群から選択される一種のアミンまたは、二種以上のアミンである
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記液状のアミン化合物は、沸点が140℃を超えるトリアルキルアミンである
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化銀分散混合物の加熱攪拌において、液相の加熱温度は、少なくとも80℃以上であり、かつ、前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物が均一な混合液を形成可能な温度を超え、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸化銀分散混合物の加熱攪拌において、液相の加熱温度は、少なくとも100℃以上であって、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記非極性溶媒は、液相の加熱温度において、前記液状のアミン化合物と均一な混合液を形成可能な非極性溶媒である
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記非極性溶媒は、トルエン、キシレン、沸点90℃以上の炭化水素溶媒から選択される
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銀を原料として、液相での還元反応によって、微細な平均粒子径の金属銀微粒子を製造する方法に関する。特には、導電性金属ペースト、触媒など、種々の分野において、金属粉末原料として利用可能な、平均粒子径がナノメートル・サイズの金属銀微粒子を、酸化銀(I)を原料として液相での還元反応によって製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の微粒子は、それを構成する金属元素の特性を利用して、例えば、配線材料、磁気材料、センサ材料、触媒など、各種の技術分野において、幅広い用途開発がなされている。近年、これらの金属微粒子の用途開発・研究の成果として、その粒子径が、金属微粒子を利用する最終製品の性能に対しても、大きな影響を与えることが見出されてきた。例えば、最終製品の高機能化ならびに小型化を図る目的として、粒子径の極めて細かい金属微粒子の利用が検討されている。その目的に併せて、多数種の金属元素について、粒子径の極めて細かな微粒子、より具体的には、平均粒子径がサブミクロン、さらには、ナノメートルのスケールである、金属ナノ粒子を作製する様々の方法が報告されている。
【0003】
平均粒子径が、サブミクロンあるいは、ナノメートルのスケールである金属微粒子においては、微粒子の球状表面は、微細なステップ状の格子段差で構成されている。平面状の表面に存在する金属原子と比較すると、この微細なステップ状の格子段差上に表出する金属原子は、例えば、表面上における移動能が格段に大きくなるなどの、金属ナノ粒子に特有な性質(ナノサイズ効果)を示す。この様な金属ナノ粒子に特有の性質を応用することで、派生する製品の高性能化、あるいは、新しい機能の付与の可能性が検討され、近年、金属ナノ粒子の新たな用途開発が益々盛んになってきている。例えば、電子機器の小型化に対応する、配線の微細化に対して、大きな技術的寄与を期待して、熱伝導率や電気伝導度の高い銀の微粒子化、ならびに、銀微粒子の利用法に関して、多くの検討がなされている。
【0004】
平均粒子径がナノメートル・スケールの微細な銀微粒子の製造方法として、ガス中蒸発法(気相法)により銀微粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1等を参照)。このガス中蒸発法(気相法)を利用すると、銀の蒸気圧を制御することによって、目的とする平均粒子径がナノメートル・スケールの微細な銀微粒子を高い制御性、再現性で調製することが可能である。但し、気相法による金属ナノ粒子の作製には、特別な装置が必要であり、大量生産に適用する上では、設備的な観点、またエネルギー効率の観点でも、経済性に難点を内在している。
【0005】
更には、脂肪族モノカルボン酸銀(Cn2n+1COOAg:n=4〜17)の微粒子は、融解温度を超えるが、完全熱分解温度よりも十分に低い、例えば、250℃程度の温度で加熱処理を施すと、一部が液状化し、引き続き、脂肪族モノカルボン酸残基(Cn2n+1COO−)部分から脱炭酸を伴う、熱分解が進行する。その結果、例えば、平均粒子径が5nm程度の単分散に類する粒子径分布を有する銀ナノ粒子が生成されることが報告されている(非特許文献1)。その際、生成する銀ナノ粒子の表面には、前記脱炭酸過程により派生する長鎖アルキル基(Cn2n+1−)が残余し、表面の保護基として機能する形態となっていると報告されている。この固相の脂肪族モノカルボン酸銀に対して、高温で加熱処理を施して、熱分解する手法は、例えば、CH3(CH212COOAg、CH3(CH216COOAg、CH3(CH27CH=CH(CH27COOAgに適用できることも報告されている(特許文献2)。
【0006】
加えて、ミリスチン酸銀(CH3(CH212COOAg)の微粉末をトリエチルアミン中において、80℃に加熱すると、トリエチルアミンに対しては不溶性のミリスチン酸銀微粉末表面において、アミン還元反応が進行し、平均粒子径数nmの単分散に類する粒子径分布を有する銀ナノ粒子が生成されることが報告されている(非特許文献2)。
【特許文献1】特許第2561537号公報
【特許文献2】特許第3205793号公報
【非特許文献1】K. Abe et al., Thin Solid Films, Vol.327, 524−527(1998)
【非特許文献2】M. Yamanoto and M. Nakamoto, J. Mater. Chem., vol.13, 2064−2065 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
平均粒子径がナノメートル・サイズ、例えば、数nm〜十数nm程度の均一な金属銀微粒子を作製する際、脂肪酸モノカルボン酸銀を出発原料とする、液相法による銀微粒子の製造方法は、有用な手段である。出発原料となる、精製済みの脂肪酸モノカルボン酸銀が、安価に入手可能である場合、例えば、トリエチルアミンを利用するアミン還元反応によって、作製される銀ナノ粒子は、原料の脂肪酸モノカルボン酸銀に対して、ほぼ等量的に生成し、大量合成に適合する方法ではある。
【0008】
なお、原料の脂肪酸モノカルボン酸銀は、例えば、脂肪酸モノカルボン酸ナトリウムと硝酸銀から、アニオン種の交換に伴って、不溶性の脂肪酸モノカルボン酸銀を析出する手法などで製造されている。更に、反応系内に混在する硝酸アニオン種などを除去し、析出する不溶性の脂肪酸モノカルボン酸銀に精製を施している。
【0009】
予め、不溶性の脂肪酸モノカルボン酸銀を調製することなく、容易に入手可能な酸化銀(I)を出発原料として、液相での還元反応によって、微細な平均粒子径の金属銀微粒子を調製する手法が開発されると、全体の工程を考慮すると、大幅に簡便化がなされた製造方法となる。
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、酸化銀を出発原料として、液相法によって、平均粒子径が数nm〜十数nm程度の均一な銀微粒子の製造を可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めた。先ず、出発原料の酸化銀(I)を直接還元すると、微粉末状の酸化銀(I)表面で生成する銀原子は、元の微粉末と一体化した状態となる。結果的に、原料微粉末のサイズよりも格段に小さな、ナノメートル・サイズの粒子径を有する銀微粒子の製造は困難であることが判明した。
【0012】
従って、微粉末状の酸化銀(I)表面から、一旦、銀カチオン種(Ag+)を溶出させた後、液相中において、銀原子に還元する手法を適用することが必要であると判断した。その際、液相中において、単位体積、単位時間当たり、還元反応で生成する銀原子の密度を制御すると、生成する銀原子が集合して形成される銀微粒子の平均粒子径をナノメートル・サイズの範囲で再現性よく、制御できることを着想した。換言するならば、微粉末状の酸化銀(I)表面から、銀カチオン種(Ag+)を一旦溶出させる際、単位体積、単位時間当たり、液相中に溶出される銀カチオン種(Ag+)の密度を適正化すると、単位体積、単位時間当たり、還元反応で生成する銀原子の密度を制御することが可能となる。従って、この限られた密度の銀原子が集合して、形成される金属銀微粒子のサイズも一定の範囲に制御されたものとなる。加えて、形成される金属銀微粒子の表面を、銀原子に対して、親和性を示す分子種で被覆すると、一定の粒子径に達した時点で、更なる銀原子の付着が抑制される結果、液相中に形成される金属銀微粒子の粒子径を、ある狭い範囲内に制御することが可能となることも見出した。
【0013】
前記形成される金属銀微粒子表面の被覆に利用可能な、銀原子に対して親和性を示す分子種として、アミン化合物は、アミノ窒素原子上の孤立電子対を利用して、配位的な結合を行うことができ、好適に利用できることに想到した。一方、微粉末状の酸化銀(I)表面から、一旦、銀カチオン種(Ag+)を溶出させる過程には、脂肪族カルボン酸、特には、脂肪族モノカルボン酸が利用でき、脂肪族カルボン酸銀、特には、脂肪族モノカルボン酸銀として、液相中に銀カチオン種(Ag+)を溶出することができる。液相中において、アミン化合物存在下、この脂肪族カルボン酸銀、特には、脂肪族モノカルボン酸銀の銀カチオン種(Ag+)が還元され、銀原子が生成される。
【0014】
以上の検討結果を考慮しつつ、本発明者らは、更に研究を進め、生成する銀原子が集合して、形成される金属銀微粒子は、数ナノメートル〜十数ナノメートル程度の粒子径の範囲に保たれ、液相中に分散、浮遊した状態となることを見出した。すなわち、反応系内に存在するアミン化合物などが表面の銀原子に配位して、金属銀微粒子の表面に分散剤による被覆がなされ、溶媒中に分散される。同時に、表面の被覆層は、金属銀微粒子の凝集に対する抑制作用を発揮することを見出した。
【0015】
上述する一連の反応過程では、酸化銀(I)中の銀カチオン種(Ag+)1モル量に対して、脂肪族カルボン酸、特には、脂肪族モノカルボン酸が当量(1モル量)よりも遥かに少ない量、具体的には、0.05モル量以下添加された状態とすることで、反応温度を高く選択しても、単位体積、単位時間当たりに生成される、脂肪族カルボン酸銀、特には、脂肪族モノカルボン酸銀の量を制御することができること、一方、アミン化合物は、脂肪族カルボン酸に対しては、大過剰量、具体的には、脂肪族カルボン酸:アミン化合物の比率を、少なくとも、1モル量:3モル量以上の範囲に、但し、酸化銀(I)中の銀カチオン種(Ag+)1モル量に対して、0.35モル量以下の範囲に添加された状態とすることで、単位体積、単位時間当たりに生成される、銀原子の量を制御することができることを確認した。これらの知見に加えて、本発明者らは、上記の液相中の反応では、脂肪族カルボン酸、特には、脂肪族モノカルボン酸ならびにアミン化合物は液相中に均一に溶解した状態とするため、脂肪酸ならびにアミン化合物の蒸発・散逸を回避する状態とした上で、一般に、加熱攪拌し、反応を行うことが望ましいことも確認し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明にかかる金属銀微粒子の製造方法は、
酸化銀を原料とし、液相中における還元反応によって、平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子を調製する方法であって、
粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、
飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量となる量と、
液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が0.12〜0.35モル量となる量とを添加し、
非極性溶媒を加えて、混合液中における、銀の含有率を、25質量%〜40質量%の範囲に選択して、
前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物中に、前記粉末状酸化銀(I)が分散されてなる酸化銀分散混合物を調製する工程と、
80℃〜140℃の範囲に選択される液温に、該酸化銀分散混合物を加熱、攪拌し、前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物からなる液相中において、前記アミノ化合物の存在下、該酸化銀(I)に前記脂肪酸を作用させ、対応する脂肪酸銀(I)とした後、還元により生成する銀原子からなる平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子を析出させる工程とを有し、
析出される平均粒子径3nm〜20nmの金属銀微粒子は、その表面の銀原子に対して、少なくとも、前記アミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態である
ことを特徴とする金属銀微粒子の製造方法である。
【0017】
その際、前記脂肪酸は、炭素数14〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜22の直鎖アルケン酸から選択されることが好ましい。
【0018】
一方、前記液状のアミン化合物は、沸点が80℃以上である、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)からなる群より選択される一種のアミン、または二種以上のアミンであることが好ましい。なかでも、前記液状のアミン化合物は、アミノ窒素原子上を置換する炭化水素基がアルキル基である、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)からなる群より選択される一種のアルキルアミン、または二種以上のアミンであることがより好ましい。少なくとも、前記液状のアミン化合物は、沸点が140℃を超えるトリアルキルアミンであることが望ましい。
【0019】
なお、本発明にかかる金属銀微粒子の製造方法においては、
前記酸化銀分散混合物の加熱攪拌において、液相の加熱温度は、少なくとも80℃以上であり、かつ、前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物が均一な混合液を形成可能な温度を超え、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択されることが望ましい。例えば、前記酸化銀分散混合物の加熱攪拌において、液相の加熱温度は、少なくとも100℃以上であって、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択される。
【0020】
一方、反応液中に非極性溶媒を添加する際には、前記非極性溶媒は、液相の加熱温度において、前記液状のアミン化合物と均一な混合液を形成可能な非極性溶媒であることが好ましい。例えば、前記非極性溶媒を、トルエン、キシレン、沸点90℃以上の炭化水素溶媒から選択することがより好ましい。
【0021】
一方、還元反応工程において、反応系内の通気を行う際には、不活性ガスを利用することが望ましく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムからなる群より選択される一種類以上であることが望ましい。また、前記加熱時の液温度において、反応液中に添加される非極性溶媒の蒸散を回避する目的で、前記非極性溶媒を還流させる機能を有する、還流コンデンサーを採用する反応系を構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる金属銀微粒子の製造方法は、従来、予め調製した脂肪族モノカルボン酸銀を原料とし、大過剰量のアミン存在下、アミン還元法を適用して、所謂、液相法によって製造されていた、ナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子を、酸化銀(I)を原料として、より簡便に製造することを可能とする。また、生成されるナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子は、その表面の銀原子に対して、少なくとも、反応系内に適正な量添加されているアミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態とでき、ガス中蒸発法(気相法)で作製される、アミン類を被覆剤とする銀ナノ粒子と同等の分散安定性を有するものとすることもできる。すなわち、本発明にかかる製造方法で得られるナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子は、脂肪族モノカルボン酸銀をアミン還元する手法、あるいは、ガス中蒸発法(気相法)を適用することで製造されていた、平均粒子径がナノメートル・スケールの微細な銀微粒子と比較しても、品質的に遜色のないものである。従って、ガス中蒸発法(気相法)における製造装置コストと比較し、液相法における製造装置コストは格段に低い利点を生かし、加えて、脂肪族モノカルボン酸銀を予め調製する余分な工程を省いた上で、高い品質のナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子を、より低い製造コストで大量生産する上で、有用な製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
従来の液相法による、ナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子の製造方法は、予め、硝酸銀と脂肪酸ナトリウムとから、不溶性の脂肪酸銀を調製・精製した上で、大過剰量のアミン化合物の存在下、この脂肪酸銀(I)をアミン還元することで、平均粒子径数nmの銀ナノ粒子を作製する手法であった。それに対して、本発明にかかる金属銀微粒子の製造方法は、原料として酸化銀(I)を利用し、含有される銀(Ag+)の量に対して、高い反応温度を選択する際、アミン化合物の存在下、等量よりも遥かに少ない量(1/20量以下)の脂肪酸を酸化銀(I)に作用させて、脂肪酸銀(I)へと徐々に変換し、引き続き、還元を施すことで、少なくとも、平均粒子径3nm〜20nm、好ましくは、4nm〜15nmの範囲の、平均粒子径数nmの銀ナノ粒子の作製を可能としている。その際、アミン還元により生成する銀原子から形成されるナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子は、その表面の銀原子に対して、少なくとも、反応系内に過剰量添加されているアミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態となる。そのため、非極性溶媒中において、かかる銀微粒子表面を被覆する有機分子層は、銀微粒子相互の凝集を防止し、均一に分散する状態を保持する機能を発揮する結果、分散安定性に優れたものとなる。
【0024】
以下に、本発明について、より詳しく説明する。
【0025】
本発明にかかる金属銀微粒子の製造方法では、先ず、原料の微粉末状酸化銀(I)(Ag2O;分子量231.74)、脂肪酸、液状のアミン化合物を混合し、脂肪酸と液状のアミン化合物と含む混合液中に、微粉末状酸化銀(I)を分散してなる分散液を調製する。その際、非極性溶媒を加えて、分散液中における、脂肪酸、液状のアミン化合物濃度、ならびに、微粉末状酸化銀(I)の分散密度を調整する。
【0026】
この希釈溶媒として利用される、非極性溶媒には、少なくとも、過剰量が使用される液状のアミン化合物と均一な溶液を形成可能な非極性溶媒が利用される。一方、利用される脂肪酸は、脂肪族カルボン酸、特には、飽和脂肪族モノカルボン酸または不飽和脂肪族モノカルボン酸から選択され、通常、室温において、液体であるか、利用される液状のアミン化合物中に容易に溶解可能であるものが使用される。少なくとも、液温を80℃以上とする際、該脂肪酸は、液状のアミン化合物と均一な混合液を形成するものが、好適に使用される。一般的に、脂肪族モノカルボン酸(R’−COOH)は、液状のアミン化合物、例えば、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)と、例えば、R’−COOH‥NR123のような形態を形成でき、液状のアミン化合物自体の中、あるいは、液状のアミン化合物を容易に溶解可能な非極性溶媒中に、均一に溶解可能である。
【0027】
原料の微粉末状酸化銀(I)(Ag2O;分子量231.74)自体の形状は、特に制限は無いが、反応液を加熱攪拌する間、液中に均一に分散させる上では、その粒径分布は、200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものが好適に利用される。なお、酸化銀(I)の結晶格子は、体心立方格子(b.c.c.)を有するので、立方最密充填構造をとる、金属銀単体の結晶格子、面心立方格子(f.c.c.)と、X線回折によって、容易に区別される。
【0028】
本発明においては、微粉末状酸化銀(I)(Ag2O)に対して、アミン化合物の存在下において、微粉末状酸化銀(I)(Ag2O)に対して、脂肪酸(R’−COOH)を作用させて、脂肪酸銀(R’−COOAg)を反応系内で生成させる。引き続き、生成された脂肪酸銀を、アミン還元して、銀原子を生成させる。例えば、下記するようなアミン効果に因って促進可能な素反応過程を介して、酸化銀(I)(Ag2O)から、二つの銀原子が生成され、例えば、アミン化合物は、アミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]への酸化を受ける。その際、脂肪酸(R’−COOH)自体は、初段の素反応過程で利用されるが、一連の過程を経る間に、また、再生されている。
(i) Ag2O+R’−COOH → [R’−COOAg+AgOH]
(ii) R’−COOAg+R123N → [R’−COOAg‥NR123
→ [R’−COO-+Ag+R123+・]
(iii) R’−COO-+AgOH → [R’−COOH+Ag−O-
(iv) [R123+・+Ag−O-] → [R123+−O-+Ag]
(v) [R123+−O-] → [R123N→O]
一方、前記の反応過程で生成されるアミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]は、脂肪酸(R”−CH2−CH2−COOH)を酸化することで、再び、アミン化合物[R123N]が再生される。この再生過程に因って、反応系内のアミン化合物[R123N]の濃度は、一定の範囲内に保持される。
(vi) 3[R123N→O]+R”−CH2−CH2−COOH
→ [3・R123N + CO2 + R”−CH2−C(OH)3
→ 3・R123N +CO2 + H2O + R”−CH2−COOH
すなわち、脱炭酸を伴った、脂肪酸(R”−CH2−CH2−COOH)を段階的に酸化する過程(vi-1)〜(vi-3)に因って、炭素数が一つ少ない脂肪酸(R”−CH2−COOH)へと変換される。この脂肪酸(R”−CH2−COOH)は、上記の素反応過程(i)で再利用される。従って、反応系内に存在する脂肪酸の総和(濃度合計)は、一定の範囲内に保持される。
(vi-1) [R”−CH2−CH2−COOH +O]
→ CO2↑ + [R”−CH2−CH2−OH]
(vi-2) [R”−CH2−CH2−OH +O]
→ [R”−CH2−CH(OH)2
(vi-3) [R”−CH2−CH(OH)2 +O]
→ [R”−CH2−C(OH)3
→ H2O + R”−CH2−COOH
(i’-0) Ag2O+H2O → [2AgOH]
(i’-1) [2AgOH]+R”−CH2−COOH
→ [R”−CH2−COOAg+AgOH]+H2
上記の過程(vi)は、脱炭酸を伴う反応であるため、反応温度が低いと、進行しないが、本発明では、少なくとも、反応温度を80℃以上とすることで、その反応速度を増している。結果として、還元反応で使用される、アミン化合物[R123N]の再生がなされ、素反応過程(i)〜(v)と過程(vi)との間で、全体的な反応速度の均衡が達成されている。
【0029】
なお、過程(vi)において、副生される水分子(H2O)は、上記の副次的な過程(i’-0)を介して、固相の酸化銀(I):Ag2Oを、水酸化銀:AgOHの形状へ変換する過程で利用される。その結果、反応系の液相中に遊離した水分子(H2O)として、蓄積されることはないと推定される。一方、素過程(vi-3)の後段の反応において、その反応の平衡定数K(vi-3)は、K(vi-3)={[H2O]・[R”−CH2−COOH]}/[R”−CH2−C(OH)3]となるが、遊離した水分子(H2O)の蓄積によって、この反応の進行が阻害を受ける事態は回避されている。
【0030】
従って、本発明においては、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、反応液中に配合される脂肪酸の量を、等量よりも遥かに少ない、0.05モル量を下回る範囲に選択することが可能となっている。具体的には、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、脂肪族カルボン酸、特には、飽和脂肪族モノカルボン酸または不飽和脂肪族モノカルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量となる量、好ましくは、0.025〜0.045モル量の範囲、通常、0.03〜0.04モル量を使用することができる。
【0031】
上記の一連の反応:(i)〜(vi)においては、酸化銀(I)(Ag2O)の3分子を還元する際、脂肪族カルボン酸(R”−CH2−CH2−COOH)から、炭素一つが失われ、脂肪族カルボン酸(R”−CH2−COOH)へと変換がなされる。粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量を還元処理する際には、脂肪族カルボン酸は、延べ1/6モル量が、その炭素を一つ消費することになる。例えば、炭素数14の直鎖アルカン酸を0.02モル量利用し、炭素数4の直鎖アルカン酸となるまで、述べ10の炭素が消費されると、対象の酸化銀(I)(Ag2O)に関して、0.02×3×10=0.6モル量が還元処理される。換言するならば、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、例えば、炭素数14の直鎖アルカン酸を、0.02モル量利用することで、その還元処理を行うことが可能である。
【0032】
利用する脂肪酸としては、飽和脂肪族モノカルボン酸または不飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくは、炭素数14〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜22の直鎖アルケン酸を選択する。特には、炭素数14〜18の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜18の直鎖アルケン酸を選択することが、より好ましい。一般に、脂肪族モノカルボン酸では、その炭素数が減少するとともに、酸解離が起こり易くなり、換言すると、上記の素過程(i)の反応速度が増す。その結果、単位時間、単位体積あたりに生成する銀原子の量が増加すると、形成される金属銀微粒子の平均粒子径も増大する。目的とする金属銀微粒子の平均粒子径数nm、例えば、3〜20nmの好適な範囲、さらには、4〜15nmのより好適な範囲に留める上では、素過程(i)の反応速度を制御する必要がある。具体的には、素過程(i)の反応速度を不必要に大きくしないことが必要であり、用いる脂肪族カルボン酸、特には、脂肪族モノカルボン酸の炭素数をある範囲以上に選択することが好ましい。
【0033】
また、過程(vi)を介して、副生するアミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]を、アミン化合物[R123N]に再生するため、本発明においては、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、反応液中に配合されるアミン化合物の量を、等量よりも遥かに少ない、0.35モル量を下回る範囲に選択することが可能となっている。具体的には、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、アミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が、0.12〜0.35モル量となる量、好ましくは、0.15〜0.30モル量の範囲、より好ましくは、0.2〜0.3モル量を使用することができる。
【0034】
その際、使用されている脂肪酸(R”−CH2−CH2−COOH)1分子あたり、アミン化合物[R123N]が、少なくとも、3分子以上、好ましくは、4分子以上が存在する状態を達成することができる。
【0035】
また、実用上、全体の反応時間を合理的な範囲とする上では、反応液温度をある程度高く設定する必要がある。その際、素過程(i)の反応速度は、反応液温度が高くなるとともに、加速度的に促進される。そのため、反応液温度を高くし、同時に、用いる脂肪族カルボン酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸自体の反応性が高いものを使用すると、素過程(i)の反応速度が、不必要に大きくなり、結果として、形成される金属銀微粒子の平均粒子径は、目的とする範囲の100nm未満、例えば、好適な範囲の3〜20nmを大きく超えたものとなる。用いる脂肪族カルボン酸、特には、脂肪族モノカルボン酸として、炭素数14〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜22の直鎖アルケン酸、より好ましくは、炭素数14〜18の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜18の直鎖アルケン酸を選択すると、その濃度を低くしているので、反応液温度を140℃程度まで上昇させた条件においても、素過程(i)の反応速度は、目標とする制御範囲内に留めることがより容易となる。なお、直鎖アルカン酸や直鎖アルケン酸においては、炭素数が増すとともに、その融点が上昇するため、反応液中において、用いるアミン化合物とともに均一な液相を形成する際、溶媒として、非極性溶媒を使用することが不可欠となる。加えて、直鎖アルカン酸や直鎖アルケン酸においては、炭素数が増すとともに、その反応性が低下するが、反応温度を高くすることによって、脂肪酸の使用量を抑えた条件でも、十分な反応速度が達成することが可能となる。
【0036】
その際、炭素数14〜18の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜18の直鎖アルケン酸を選択すると、液温が60℃程度に達すると、液体となるので、非極性溶媒中に均一に溶解した状態となる。すなわち、非極性溶媒中に、アミン化合物と脂肪酸とが均一に溶解している液相とすることが可能である。また、反応温度を相当に高くする条件では、濃度は低くとも、全体として、反応性も適正な範囲となる。少なくとも反応温度を、80℃以上、100℃以下とする際には、脂肪酸に関する、より好ましい選択範囲となる。
【0037】
加えて、上述の素過程(i)において、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)は、酸化銀(I)の表面に対しては、対応する長鎖のモノカルボン酸(CH3−(CH2m−COOH)と同様に、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)の一端のカルボキシ基(−COOH)のみしか作用できない。従って、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)を、対応する長鎖のモノカルボン酸(CH3−(CH2m−COOH)に代えて、使用することもできる。その際、該長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)については、含まれる二つのカルボキシ基(−COOH)の合計に代えて、反応に関与する一方のカルボキシ基(−COOH)の合計に換算する。
【0038】
具体的には、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)は、上記の素過程(vi-1)において、
(vi-1) [HOOC−(CH2m−COOH +O]
→ CO2↑ + [HO−(CH2m-1−COOH]
と、ω−ヒドロキシアルカン酸(HO−(CH2m-1−COOH)へと変換される。従って、それ以降は、上述の素過程(i)においては、長鎖のω−ヒドロキシアルカン酸(HO−(CH2m-1−COOH)として、寄与するため、カルボキシ基(−COOH)の合計を行う際には、実質的にモノカルボン酸として取り扱う。
【0039】
一方、分岐を有する脂肪酸、特に、カルボン酸のα位の炭素原子上に分岐鎖が存在する:R4−CH(R5)−COOHの形状の脂肪酸は、対応する分岐鎖のない脂肪酸:R4−CH2−COOHとは異なり、上述の過程(vi)の反応は進行しない。その点を考慮すると、分岐を有する脂肪酸を利用する際には、少なくとも、カルボキシ基側から炭素数10以上の直鎖アルキレン鎖(−(CH2m−)を具えるものを選択することが好ましい。
【0040】
一方、反応液温度は、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応において利用される、アミン化合物の沸点を超えない範囲に設定することが望ましい。反応自体は、還流下で実施するので、アミン化合物が蒸散して、散逸することは防止されているが、反応容器内の気相に蒸気として存在するアミン化合物の比率が必要以上に高くなると、反応液中のアミン化合物濃度が相対的に低減する。また、一旦形成された金属銀微粒子の表面の被覆に利用される、アミン化合物の離脱も顕著となり、その結果、生成された銀原子が、形成された金属銀微粒子に更に集積し、最終的に得られる金属銀微粒子の平均粒子径は、目的とする3〜20nmの範囲、例えば、4〜15nmの範囲を大きく超えたものとなる。この点を考慮すると、反応液温度は、一般に、利用されるアミン化合物の沸点を超えない範囲に設定する。
【0041】
酸化銀分散混合物において、仮に、脂肪酸とアミン化合物が高い濃度で溶解している場合には、室温においても、酸化銀(I)表面に脂肪酸が作用でき、上述の素過程(i)は進行する。その際、アミン化合物が高い濃度で溶解していると、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応が、室温でも、素過程(i)の反応速度に見合った速度で進行する。しかしながら、一般に、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応は、室温では、その進行は遅いため、アミン化合物の濃度を低く設定する本発明の条件では、液温を80℃以上に加熱し、攪拌を行うことで、初めて、反応を進めることが可能となる。なお、脂肪酸とアミン化合物が均一に混和されている液相中に含まれる、アミン化合物や脂肪酸が、加熱温度において、高い蒸気圧を有する場合、加熱に伴う蒸散によって、液相から散逸することを防止する必要がある。同じく、液相に添加される溶媒に関しても、加熱温度において、高い蒸気圧を有する場合、加熱に伴う蒸散によって、液相から散逸することを防止する必要がある。
【0042】
酸化銀分散混合物の加熱攪拌を行う際、還流下における液相の加熱温度は、利用される液状のアミン化合物自体の沸点を超えないが、少なくとも、脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物が均一な混合液を形成可能な温度を超える範囲を選択することが必要である。具体的には、仮に、室温(25℃)では、脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されて、付加塩型の複合体を形成する際には、この付加塩型の複合体を解離させ、脂肪酸とアミン化合物と遊離した状態で存在する温度に、加熱攪拌を行う形態を採用する。少なくとも、その還流下における液相の加熱温度は、80℃以上とする。通常、脂肪酸として、炭素数14〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜22の直鎖アルケン酸、特には、炭素数14〜18の直鎖アルカン酸、または炭素数14〜18の直鎖アルケン酸を選択する際、素過程(i)で生成される脂肪酸銀をアミン化合物の存在下、還元を行う反応を適度に促進する上では、少なくとも、還流下における液相の加熱温度を、80℃以上であって、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択することが好ましい。但し、酸化銀(I)から脂肪酸銀を生成する反応速度が過度とならない範囲に制御する上では、前記加熱時の液温度は、脂肪酸銀自体の分解に因るラジカル還元反応が大きな寄与を示す温度に達しない範囲を選択することが好ましい。例えば、140℃を超えない範囲とすることが好ましい。
【0043】
一方、例えば、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応も、反応液温度が高くなるとともに、加速度的に促進される。但し、全体の反応速度は、素過程(i)の反応速度、すなわち、脂肪酸銀の生成速度と、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応の速度、すなわち、脂肪酸銀の消失速度とのバランスによって決定される。本発明においては、素過程(i)の反応速度を支配する、反応液中の脂肪酸濃度:C[R’−COOH]と用いる脂肪酸の反応性:k1を調整するとともに、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応の速度を支配する、反応液中のアミン化合物濃度:C[R123N]と用いるアミン化合物の反応性:k2を調整することで、反応系内の存在する脂肪酸銀の濃度:C[R’−COOAg]を所望の範囲に制御する。
【0044】
すなわち、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、脂肪族カルボン酸、特には、飽和脂肪族モノカルボン酸または不飽和脂肪族モノカルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量、好ましくは、0.025〜0.045モル量、通常、0.03〜0.04モル量となる量に選択することに伴って、液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が、0.12〜0.35モル量、好ましくは、0.15〜0.30モル量の範囲、通常、0.2〜0.3モル量となる量としている。
【0045】
素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応過程に基づくと、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子0.04モル量の還元を行う際、アミン化合物(R123N)は、0.02モル量が消費される。一方、高い温度で進行する、過程(vi)を介して、一旦消費されたアミン化合物(R123N)を再生することで、反応系内のアミン化合物(R123N)の濃度低下を回避している。この過程(vi)では、脂肪酸(R”−CH2−CH2−COOH)は、炭素(CH2)を一つ消費するが、脂肪酸(R”−CH2−COOH)へと変換されるため、実質的に、反応系内の脂肪酸の濃度の総和の減少も回避されている。
【0046】
従って、液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が0.12〜0.35モル量、好ましくは、0.15〜0.30モル量、通常、0.2〜0.3モル量となる量を用いることで、過渡的には、アミン化合物(R123N)の消費に付随して、反応系内のアミン化合物濃度:C[R123N]は減少するものの、前記の過程を介して、その再生がなされるので、減少比率を相対的に僅かな範囲とすることができる。加えて、反応系内のアミン化合物濃度:C[R123N]は、一定の水準以上に保たれるため、生成する銀微粒子表面に対して、利用しているアミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態が達成される。一方、素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応過程に基づくと、素過程(i)で使用される脂肪酸は、素過程(ii)〜(iv)の進行に伴い、再生される結果、反応液中の脂肪酸濃度:C[R’−COOH]の総和も、全体の反応が進行する間、実質的に一定の濃度に維持される。
【0047】
なお、素過程(i)の反応は、粉末状酸化銀(I)の表面に対する反応であり、その表面に露呈している酸化銀(I)の面密度;Cs[Ag2O]にも依存する。従って、反応系内の存在する脂肪酸銀の濃度:C[R’−COOAg]の時間的変化は、近似的に下記のように表記される。
【0048】
dC[R'-COOAg]/dt
=k1×C[R'-COOH]・Cs[Ag2O]−k2×C[R1R2R3N]・C[R'-COOAg]
粉末状酸化銀(I)自体は、固形物であり、その表面に露呈している酸化銀(I)の面密度;Cs[Ag2O]は、実質的に変化しない。すなわち、本発明の反応形態を選択すると、全体の反応が進行する際、反応液温度が一定に保たれると、反応液中の脂肪酸濃度:C[R’−COOH]と用いる脂肪酸の反応性:k1、反応液中のアミン化合物濃度:C[R123N]と用いるアミン化合物の反応性:k2、分散されている粉末状酸化銀(I)の表面に露呈している酸化銀(I)の面密度;Cs[Ag2O]は、実質的に一定に保持されるため、結果として、反応系全体は、平衡条件:dC[R'-COOAg]/dt=0を満足する状態と見なせる。従って、反応液中に分散されている、粉末状酸化銀(I)を原料として、金属銀微粒子を形成する反応が進行する間、反応系内の存在する脂肪酸銀の濃度C[R’−COOAg]も、実質的に一定の濃度に維持される。具体的には、反応系内の存在する脂肪酸銀の濃度C[R’−COOAg]は、下記のように近似的に表現される。
C[R'-COOAg]=(k1×C[R'-COOH]/k2×C[R1R2R3N])・Cs[Ag2O]
その際、上記素過程単位時間、単位体積あたりに生成する銀原子の量は、単位時間、単位体積あたりに反応で消費される脂肪酸銀の量:k2×C[R1R2R3N]・C[R'-COOAg]あるいは反応で消費される粉末状酸化銀(I)の量:k1×C[R'-COOH]・Cs[Ag2O]に、対応するものとなる。換言するならば、単位時間、単位体積あたりに生成する銀原子の量も、実質的に一定に維持されることにより、形成される金属銀微粒子の平均粒子径も、高い均質性を示すものとなる。
【0049】
一方、用いる脂肪酸の反応性:k1は、脂肪酸の種類と反応液温度に依存し、また、用いるアミン化合物の反応性:k2も、アミン化合物の種類と反応液温度に依存している。生成する金属銀微粒子の平均粒子径を所望の範囲に制御する上では、上記の係数比(k1×C[R'-COOH]/k2×C[R1R2R3N])のバランスを所望の範囲に調整することが必要となる。反応液温度を高く選択し、用いる脂肪酸の反応性:k1、ならびに用いるアミン化合物の反応性:k2が格段に上昇している利点を生かし、それに対応させて、使用量を少なくし、反応液中に、希釈用の非極性溶媒を加え、反応液中における両者の濃度を抑えることで適正な反応速度に調整している。
【0050】
本発明では、反応温度を高めているため、分散されている粉末状酸化銀(I)の表面に露呈している酸化銀(I)の面密度;Cs[Ag2O]を過度に高くすると、反応系内に存在している脂肪酸濃度:C[R”−CH2−CH2−COOH]が過度に低くなる。その場合、過程(vi)を介する、アミン化合物の再生速度が相対的に低下する。結果的に、全体として、粉末状酸化銀(I)を還元処理して、金属銀微粒子を形成する反応の速度は、寧ろ、低下してしまう。すなわち、分散されている粉末状酸化銀(I)の表面に露呈している酸化銀(I)の面密度;Cs[Ag2O]に関しても、適正な範囲が存在している。この面密度;Cs[Ag2O]は、反応液中に分散されている粉末状酸化銀(I)の含有比率と、粉末状酸化銀(I)の平均粒子サイズに依存している。本発明では、粉末状酸化銀(I)の平均粒子サイズを、その粒径分布は、200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に選択し、それに対応させて、粉末状酸化銀(I)の含有比率に関しては、反応開始時の混合液中における、銀の含有比率として、25質量%〜40質量%の範囲、一般的に、30質量%〜40質量%の範囲に選択することが好ましい。
【0051】
なお、反応液中に添加する非極性溶媒は、少なくとも、還流下における液相の加熱温度において、前記液状のアミン化合物と均一な混合液を形成可能な非極性溶媒であることが好ましい。例えば、前記非極性溶媒を、トルエン、キシレン、沸点90℃以上の炭化水素溶媒から選択することがより好ましい。これらの非極性溶媒は、液状のアミン化合物(R123N)中の炭化水素基との疎水的な相互作用を介して、均一な混合液を構成可能であるため、生成する銀微粒子表面に対して、前記アミン化合物が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態をとる際、該非極性溶媒中における、良好な分散性を発揮させる。
【0052】
なお、本発明において、利用される脂肪酸、特には、炭素数14〜18の直鎖アルカン酸のより好適な例として、ミリスチン酸(テトラデカン酸、C1327COOH;分子量228.38、複融点53.8℃&57.5〜58℃、沸点248.7℃(100mmHg))など、または、炭素数14〜18の直鎖アルケン酸のより好適な例として、オレイン酸((Z)−9−オクタデセン酸、C1733COOH;分子量282.46、融点13.4℃、沸点286℃)などを挙げることができる。また、利用される脂肪酸の使用量を、相対的に高い比率に選択する際、例えば、粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、そのカルボキシ基の総和が0.03〜0.05モル量、通常、0.03〜0.04モル量の範囲となる量に選択する際には、炭素数12以上の直鎖アルカン酸、例えば、ラウリン酸(ドデカン酸、C1123COOH;分子量200.32、融点44℃、沸点225℃(100mmHg))も、好適に利用することもできる。
【0053】
なお、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)を使用した際には、反応系内に過剰量存在するアミン化合物(R123N)と、R123N‥HOOC−(CH2m−COOHの形態の複合体を形成する結果、素過程(i)において、一方のカルボキシ基のみがその反応に関与できる。また、R123N‥HOOC−(CH2m−COOHの形態の複合体の反応性を考慮すると、アルキレン鎖(−(CH2m−)の炭素数が13以上の範囲であれば、好適な反応性の範囲となる。上限は、炭素数18程度がより好ましい。勿論、長鎖のジカルボン酸(HOOC−(CH2m−COOH)から生成される、ω−ヒドロキシアルカン酸(HO−(CH2m-1−COOH)の反応性は、対応する長鎖のモノカルボン酸と実質的な差異は無いものである。さらには、上述の直鎖アルカン酸のアルキル鎖(あるいは、直鎖アルケン酸のアルケニル鎖)に対して、カルボキシ基より遠い位置で分岐鎖が付加された、分岐のアルカン酸(あるいは分岐のアルケン酸)の反応性は、元の直鎖アルカン酸(直鎖アルケン酸)と僅かな差違を示すのみである。従って、分岐のアルカン酸(あるいは分岐のアルケン酸)に関しても、最長の分岐のない炭素鎖部分が、炭素数10〜17程度のものは、同様に好適に利用可能である。
【0054】
一方、反応温度を高く設定しているため、用いる脂肪酸(R’−COOH)自体の反応性が高くなっており、反応液中の脂肪酸濃度:C[R’−COOH]が高い場合には、下記のような副次的な反応経路が生じる。
(i) Ag2O+R’−COOH → [R’−COOAg+AgOH]
(i') [AgOH]+R’−COOH → R’−COOAg+H2
その結果、反応系内に存在する脂肪酸銀の濃度:C[R’−COOAg]が不必要に高くなると、生成される銀微粒子の粒子径の制御性を損なう要因となる。この副次的な反応経路を抑制する上でも、脂肪酸の添加量を適正な範囲に選択し、また、希釈用の非極性溶媒を加えて、反応液中の脂肪酸濃度:C[R’−COOH]を低くすることで、前記の副次的な反応の進行を抑制することが好ましい。
【0055】
一方、アミン化合物が関与する還元反応過程で利用される、前記液状のアミン化合物は、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)のいずれかより選択されることが好ましい。なかでも、前記液状のアミン化合物は、アミノ窒素原子上を置換する炭化水素基がアルキル基である、第一アミン(R1NH2)、第二アミン(R12NH)、第三アミン(R123N)のいずれかより選択されるアルキルアミンであることがより好ましい。その際、反応液温度を80℃以上とする上では、前記液状のアミン化合物は、少なくとも、沸点が100℃を超える範囲、より好ましくは、沸点が140℃を超える範囲のアルキルアミンであることが望ましい。具体的には、好適に利用可能なアルキルアミンの一例として、第三アミン(R123N)としては、トリブチルアミン(分子量185.36、沸点213.5℃)、トリヘキシルアミン(分子量269.51、沸点264℃)、ジメチルオクチルアミン(分子量157.3、沸点195℃)など、第二アミン(R12NH)としては、ジブチルアミン(分子量129.25、沸点159℃(761mmHg))、ジ−2−エチルヘキシルアミン(分子量241.46、沸点123℃/5mmHg)など、第一アミン(R1NH2)としては、ドデシルアミン(分子量185.35、融点28.3℃、沸点247℃〜249℃)、2−エチルヘキシルアミン(分子量129.24、沸点169℃)などが挙げられる。
【0056】
なお、中間生成物のアミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]では、例えば、第二アミン(R12NH)に由来するアミンオキシド型化合物[R12HN→O]や第一アミン(R1NH2)に由来するアミンオキシド型化合物[R12N→O]は、反応温度が高くなるとともに、ヒドロキシアミン[R12N−OH、R1HN−OH]への転移反応を起こし易い。この点を考慮すると、反応温度を相対的に高く選択する際には、第三アミン(R123N)、特には、沸点が140℃を超える範囲のトリアルキルアミンを利用することが、より好ましい。
【0057】
さらには、上述するようなアミン効果に因って促進可能な素反応過程を介して、酸化銀(I)(Ag2O)から、二つの銀原子が生成され、例えば、アミン化合物は、アミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]への酸化を受ける際、反応中間体として、カチオン・ラジカル種[R123+・]が生成する。この種のアミン効果を発揮する過程では、[R’−COOAg‥NR123]の錯体型中間体形成が容易に進むことが必要である。その観点からは、窒素原子上を置換する炭化水素基がアルキル基である、第三アミン(R123N)がより好ましい。加えて、アミンオキシド型化合物[R123+−O-またはR123N→O]から、分子内において、アルキル基β炭素上の水素原子の転位により、アルケン(R−CH=CH2)とヒドロキシアミン[R12N−OH]とに不均化分解へ進行する場合もある。かかる反応をも考慮すると、窒素原子上を置換する炭化水素基が、少なくとも、炭素数2以上のアルキル基、好ましくは、炭素数3以上のアルキル基である、第三アミン(R123N)は、より好ましいものとなる。
【0058】
本発明においては、上記の過程(vi)を利用しており、この過程(vi)は、脱炭酸を伴う反応であるため、反応温度が低いと、進行しないため、少なくとも、反応温度を80℃以上とすることで、その反応速度を増している。上記の過程(vi)が繰り返される結果、最終的には、直鎖アルカン酸の炭素鎖が減少した、プロパン酸(CH3CH2COOH;沸点140.8℃)やブタン酸(CH3CH2CH2COOH;沸点164.05℃)が生成される。反応時の液温を、80℃〜140℃の範囲に選択しており、通常、反応系外への溶媒の蒸散を防止する目的で、還流コンデンサーを利用しているため、これらの炭素数の小さな直鎖アルカン酸の系外への蒸散も回避されている。
【0059】
なお、反応系の液相中には、脂肪酸と、液状のアミン化合物とが、溶媒中に均一に溶解した状態で存在している。この反応系の液相では、溶媒中に溶解している、これら溶質に起因して、沸点上昇が起こっており、この混合液中における溶媒の沸点は、該溶媒単体の沸点よりも、若干高い温度となっている。一般に、混合液を加熱する際、その混合液の溶媒の蒸散を防止する目的で、還流コンデンサーを利用しているが、用いている溶媒の還流温度よりも、液温を高くすることはできない。換言するならば、目的とする反応時の液温に対して、使用する溶媒の還流温度が高くなるように、利用する溶媒の種類を、その沸点に基づき選択する必要がある。
【0060】
例えば、トルエン(沸点110.6℃)は、反応時の液温が、110℃以下の系において、好適に利用可能である。キシレン(p−キシレン;沸点138.3℃)は、沸点上昇を考慮すると、反応時の液温が、140℃以下の系において、好適に利用可能である。その他、沸点90℃以上の炭化水素溶媒を溶媒に利用できるが、その際、該炭化水素溶媒を好適に利用可能である、反応時の液温は、該炭化水素溶媒自体の沸点以下の範囲である。
【0061】
なお、利用する脂肪酸の沸点は、一般に、140℃を超えているが、使用される液状のアミン化合物の沸点は、その種類によっては、140℃以下の範囲となる場合もある。通常、使用される液状のアミン化合物の沸点は、用いられている溶媒の沸点よりも高いが、その種類によっては、液状のアミン化合物の沸点は、用いられている溶媒の沸点よりも低くなることも、極く稀に生じる。この稀な場合においては、液状のアミン化合物の沸点が、用いられている溶媒の沸点よりも低いため、還流コンデンサーを利用して、溶解されている液状のアミン化合物の蒸散を防止する必要がある。一方、還流コンデンサーを利用しているため、反応系の液相と気相の間では、この液状のアミン化合物が還流している状態となり、混合液の液温は、かかる液状のアミン化合物の還流温度以上に上昇させることはできない。例えば、液状のアミン化合物として、複数種のアミン化合物の混合物を併用する際、利用しているアミン化合物の一種が、偶々、溶媒よりも、低い沸点を有する際には、この低い沸点を示すアミン化合物が、反応系の液相と気相の間において、還流している状態、すなわち、その還流温度以上に、混合液の液温を高くすることはできない。
【0062】
換言するならば、本発明においては、液相の加熱温度は、少なくとも80℃以上であり、かつ、前記脂肪酸とアミン化合物とが均一に混和されてなる混合物が均一な混合液を形成可能な温度を超え、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択されることになる。液状のアミン化合物自体の沸点が100℃以上である際には、液相の加熱温度は、少なくとも100℃以上であって、前記液状のアミン化合物自体の沸点を超えない温度の範囲に選択されることになる。
【0063】
従って、本発明において、液相の加熱温度を、80℃〜140℃の範囲に任意に選択するためには、少なくとも、利用される溶媒の沸点、ならびに、利用される液状のアミン化合物の沸点は、その選択される液相の加熱温度以上であることが、一般に必要となる。更には、液相の加熱温度を、80℃〜140℃の範囲に任意に選択するためには、少なくとも、利用される液状のアミン化合物の沸点は、140℃以上であることが望ましい。
【0064】
なお、本発明においては、分散されている粉末状酸化銀(I)から、銀ナノ粒子を生成する過程において、酸化銀(I)を構成する酸素原子は、水分子(H2O)ではなく、二酸化炭素(CO2)の形態として、反応系外へ取り除かれる。更には、還流コンデンサーを利用している際、素過程(vi)における副生成物として、水分子(H2O)は生成するが、反応系内に遊離の水分子(H2O)が蓄積されないため、反応時の液相の加熱温度を、100℃を超える温度に設定することが可能となっている。
【0065】
本発明では、粉末状酸化銀(I)を原料とし、液相中における還元反応を介して、金属銀微粒子が形成されるが、その形成された金属銀微粒子相互が接触して、複数の微粒子が融着した集塊体となる現象を回避するため、反応系内に存在している有機分子により、生成した金属銀微粒子表面が緻密に被覆された形態としている。その際、反応系内には、アミン化合物が過剰量存在しているため、生成する銀微粒子の表面に対して、少なくとも、前記アミン化合物;[R123N]が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態をとることが可能となる。
【0066】
なお、反応系内では、脂肪酸銀[R’−COOAg]が、生成する銀微粒子の表面に吸着した後、アミン化合物を利用する還元反応を起こす場合も多い。その際、還元反応が完了すると、脂肪酸(R’−COOH)が遊離するが、部分的には、かかる脂肪酸(R’−COOH)が、金属銀微粒子の表面に残留して、配位子として、存在する形態を示すことも可能である。
【0067】
通常、生成する銀微粒子の表面に対して、少なくとも、前記アミン化合物;[R123N]が、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態をとる段階では、使用しているアミン化合物;[R123N]が複数存在する際には、その沸点と反応時の液温との差違がより大きなものが被覆層形成により大きな貢献を示す。換言するならば、上述する素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応過程自体では、高い沸点を示す第三アミン(R123N)を利用すると、より好ましい形態であり、同時に、被覆層形成の用途にも、適するものとなっている。
【0068】
本発明では、アミン化合物の添加量の総量を少なくしており、上述する素過程(ii)〜(iv)のような、アミン化合物が関与する還元反応過程で利用されるアミン化合物と、生成する銀微粒子の表面に対して、その被覆層の形成過程で利用されるアミン化合物とに、同じアミン化合物を利用する形態となっている。
【0069】
その他、一旦生成した銀原子が、反応混合液中に溶存する酸素分子によって、再酸化されないように、反応系に、不活性ガスを通気しながら、撹拌、加熱還流を行い、反応混合液中への酸素分子の溶解を防止することが好ましい。なお、液状のアミン化合物、あるいは、希釈用に利用される非極性溶媒自体は、酸素分子の溶解性は乏しいため、元来、反応溶液中に溶存する酸素濃度は低いものとなっている。また、加熱還流を行う際、反応混合液中に溶存していた酸素分子は、蒸散する結果、反応混合液中に酸素分子が混入する可能性は極めて低い。従って、反応系に外部から、新鮮な大気が侵入することのない状態を維持するならば、不活性ガスを通気して、反応系を不活性ガスにより置換することは必ずしも必要ではない。なお、反応系に、不活性ガスを通気しながら、撹拌、加熱還流を行う場合、その不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムからなる群より選択される一種類以上を用いることが好ましい。なお、不活性ガスを通気しながら、撹拌、加熱還流を行う場合、通気される不活性ガスとともに、脂肪酸、アミン化合物、ならびに、非極性溶媒が蒸散することを防止することが必要である。
【0070】
なお、一連の反応が完了した時点で、液温を下げた後、反応混合液中に分散されている金属銀微粒子と、残余しているアミン化合物、脂肪酸とを分離する操作として、アミン化合物、脂肪酸を溶解可能な極性溶媒を加えて、前記表面に疎水性の炭化水素基を表出する被覆分子層を有する金属銀微粒子を、沈降させて、液相を分離する。具体的には、低沸点の極性溶媒、炭素数3以下のアルコール類、例えば、メタノール、アルキルケトン類、例えば、アセトンを反応混合液に添加すると、残余しているアミン化合物、脂肪酸は、この低沸点の極性溶媒中に溶解する。一方、表面に疎水性の炭化水素基を表出する被覆分子層を有する金属銀微粒子は、かかる低沸点の極性溶媒中では、十分な分散特性を発揮できないため、沈降する。この沈降した、被覆分子層を有する金属銀微粒子を固液分離により回収する。僅かに残余する極性溶媒を蒸散させ、再び、非極性溶媒中に再分散させることで、目的とする平均粒子径3nm〜20nmの範囲、より好ましい4nm〜15nmの範囲の金属銀微粒子の分散液を調製することができる。
【0071】
以上に説明したように、反応混合液中には、原料の微粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.02〜0.05モル量、好ましくは、0.025〜0.045モル量、通常、0.03〜0.04モル量の範囲となる量と、液状のアミン化合物を、アミノ窒素原子の総和が、0.12〜0.35モル量、好ましくは、0.15〜0.30モル量、通常、0.2〜0.3モル量の範囲となる量とを添加する。生成する金属銀微粒子の分散状態を維持する目的で、反応液の体積を適正化するため、希釈用溶媒を利用する。但し、脂肪酸、液状のアミン化合物の使用量合計も多くないため、相対的に反応混合液中に含有される原料の微粉末状酸化銀(I)の含有比率は高いものとなる。換言するならば、一定の容量を有する反応容器を使用して、相対的に多量の微粉末状酸化銀(I)に対する還元反応が可能であり、金属銀微粒子の大量生産に適合する方法ともなる。
【0072】
なお、反応時間は、原料の微粉末状酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたりに、使用される脂肪酸の量比率、用いる脂肪酸の種類、反応液温度に依存して、適宜選択されるものである。その際、原料の微粉末状酸化銀(I)の粒径が大きくなると、その表面において起こる、脂肪酸との反応によって、原料の微粉末状酸化銀(I)が消失するに要する時間は長くなるので、粒径を細かくし、反応液を加熱攪拌する間、液中に均一に分散させることが好ましい。特には、その粒径分布は、200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものを用いることがより好適である。
【0073】
本発明では、原料の微粉末状酸化銀(I)から、金属銀微粒子が形成される、還元反応のプロセスは、酸化銀(I)を全量脂肪酸銀に変換した後、アミン還元するものではなく、酸化銀(I)から徐々に脂肪酸銀を生成しつつ、同時に、アミン化合物の存在下、還元する手法を採用することで、高い均質性を有する粒子径分布を示す、ナノレベルの微細粒子径を有する銀微粒子とできる。
【0074】
また、微粉末状酸化銀から脂肪酸銀を生成させる速度と、その後、還元により銀原子を生成させる速度は、脂肪酸の種類と添加量(反応液中の濃度)、還元反応で利用されるアミン化合物の種類と添加量(反応液中の濃度)、液温を、上記の範囲で適正に制御・調整することで、均衡された範囲にコントロールでき、結果として、所望の粒子径の金属銀微粒子を、高い再現性で得ることができる。
【実施例】
【0075】
以下に、具体例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら具体例により限定を受けるものではない。
【0076】
(実施例1)
100mL丸底フラスコに、粉末状の酸化銀(I)(Ag2O:分子量231.74、
純度99%)30mmol、オレイン酸((Z)−9−オクタデセン酸、C1733COOH;分子量282.46、融点13.4℃、沸点286℃)1.8mmol、トリブチルアミン(分子量185.36、沸点213.5℃、純度99%)8.4mmolを投入し、溶媒として、トルエン(沸点110.6℃)を加えて、液中に含まれる銀の含有率を35質量%に調整する。この反応液を、攪拌しつつ、約40分間を掛けて、液温を110℃まで上昇させる。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒トルエンの蒸散を防止している。
【0077】
この昇温過程において、液温が70℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を110℃に保ち、10分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)の粉末は全て消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し
、反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が70℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約25分間(15分間+10分間)であった。
【0078】
その後、暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去し、80℃で乾燥して、粉末を回収した。乾燥済み粉末中に含まれる金属成分について、粉末X線回折を行ったところ、fcc構造の金属銀であることが確認された。粉末中の銀含有率は、熱分析より85質量%と算出された。この粉末をトルエンに再分散させた分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0079】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、7nmであった。
【0080】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、98%であった。
【0081】
(実施例1−1)
本実施例では、実施例1の反応条件に対して、昇温速度を変更して、
100mL丸底フラスコに、粉末状の酸化銀(I)(Ag2O:分子量231.74、
純度99%)30mmol、オレイン酸((Z)−9−オクタデセン酸、C1733COOH;分子量282.46、融点13.4℃、沸点286℃)1.8mmol、トリブチルアミン(分子量185.36、沸点213.5℃、純度99%)8.4mmolを投入し、溶媒として、トルエン(沸点110.6℃)を加えて、液中に含まれる銀の含有率を35質量%に調整する。この反応液を、攪拌しつつ、約20分間を掛けて、液温を110℃まで上昇させる。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒トルエンの蒸散を防止している。
【0082】
この昇温過程において、液温が70℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を110℃に保ち、10分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)の粉末は全て消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し
、反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が70℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約15分間(5分間+10分間)であった。
【0083】
その後、暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去した。次いで、凝集沈澱している疎水性コロイドに、ヘプタン(沸点98.4℃)50mLを加えて、再分散させるとともに、80℃に加熱しながら攪拌し、残留メタノールを蒸発させた。放冷後、未反応の粉末状酸化銀(I)等の粒子径が大きな固形成分を除去す
るため、得られた分散溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、分散溶液を回収した。この分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン、ヘプタン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0084】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、7nmであった。
【0085】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、90%であった。
【0086】
この実施例1−1では、実施例1と比較し、70℃以上に加熱されている延べ時間が短くなっている。前記の銀ナノ粒子の回収収率の差異は、この延べ加熱時間の差異に起因している。
【0087】
(実施例2)
本実施例では、実施例1の反応条件で使用しているオレイン酸に代えて、ミリスチン酸(テトラデカン酸、C1327COOH;分子量228.38、複融点53.8℃&57.5〜58℃、沸点248.7℃(100mmHg))を使用し、それ以外は、同じ条件を選択し、反応を行った。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒トルエンの蒸散を防止している。
【0088】
同じく、昇温過程において、液温が70℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を110℃に保ち、10分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)の粉末が消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し
、反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が70℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約25分間(15分間+10分間)であった。
【0089】
その後、得られた暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去した。次いで、凝集沈澱している疎水性コロイドに、ヘプタン(沸点98.4℃)50mLを加えて、再分散させるとともに、80℃に加熱しながら攪拌し、残留メタノールを蒸発させた。放冷後、未反応の粉末状酸化銀(I)等の粒子径が大きな固形成分
を除去するため、得られた分散溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、分散溶液を回収した。この分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン、ヘプタン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0090】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、12nmであった。
【0091】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、92%であった。
【0092】
(実施例3)
本実施例では、実施例1の反応条件で使用しているトリブチルアミンに代えて、トリヘキシルアミン(分子量269.51、沸点264℃)を使用し、それ以外は、同じ条件を選択し、反応を行った。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒トルエンの蒸散を防止している。
【0093】
同じく、昇温過程において、液温が70℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を110℃に保ち、10分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)の粉末が消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し
、反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が70℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約25分間(15分間+10分間)であった。
【0094】
その後、得られた暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去した。次いで、凝集沈澱している疎水性コロイドに、ヘプタン(沸点98.4℃)50mlを加えて、再分散させるとともに、80℃に加熱しながら攪拌し、残留メタノールを蒸発させた。放冷後、得られた分散溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、分散溶液を回収した。この分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン、ヘプタン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0095】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、9nmであった。
【0096】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、97%であった。
【0097】
(実施例4)
本実施例では、実施例1の反応条件で使用しているトリブチルアミンに代えて、ドデシルアミン(分子量185.35、沸点247℃〜249℃)を使用し、それ以外は、同じ条件を選択し、反応を行った。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒トルエンの蒸散を防止している。
【0098】
昇温過程において、液温が80℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を110℃に保ち、20分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)
の粉末が消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し、反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が80℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約35分間(15分間+20分間)であった。
【0099】
その後、得られた暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去した。次いで、凝集沈澱している疎水性コロイドに、ヘプタン(沸点98.4℃)50mlを加えて、再分散させるとともに、80℃に加熱しながら攪拌し、残留メタノールを蒸発させた。放冷後、未反応の粉末状酸化銀(I)等の粒子径が大きな固形成分
を除去するため、得られた分散溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、分散溶液を回収した。この分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン、ヘプタン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0100】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、13nmであった。
【0101】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、89%であった。
【0102】
(実施例5)
本実施例では、実施例1で使用しているトルエンに代えて、キシレン(p−キシレン;沸点138.3℃)を溶媒に用いて、反応を行った。加熱・反応時は、還流コンデンサーを用いて、溶媒キシレンの蒸散を防止している。
【0103】
同じく、昇温過程において、液温が70℃を超えた時点で、反応液は、徐々に暗褐色を呈し始めた。昇温後、液温を125℃に保ち、5分間攪拌を継続する。その間に、酸化銀(I)の粉末が消失し、反応液は、暗褐色を示す、均一な液状となった。加熱を停止し、
反応液を攪拌しつつ、室温(20℃)まで冷却した。なお、液温が70℃を超えた時点から、加熱を停止するまでの時間は、約25分間(20分間+5分間)であった。
【0104】
その後、得られた暗褐色の液をビーカーに移し、メタノール200gを添加して、疎水性コロイドを凝集沈澱させた。
【0105】
次いで、デカンテーションで、上澄み(メタノール溶液)を吸引除去した。次いで、凝集沈澱している疎水性コロイドに、ヘプタン(沸点98.4℃)50mlを加えて、再分散させるとともに、80℃に加熱しながら攪拌し、残留メタノールを蒸発させた。放冷後、得られた分散溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、分散溶液を回収した。この分散溶液は、380〜450nmに銀ナノ粒子特有のプラズモン吸収を示した。また、かかる銀ナノ粒子の表面は、有機分子種により、均一な被覆層が形成されている点も確認された。この有機分子種による被覆層は、非極性溶媒トルエン、ヘプタン中での分散性を付与する機能を果している。銀ナノ粒子表面の有機分子種による被覆層には、少なくとも、トリブチルアミンが含まれることも確認された。
【0106】
なお、生成された銀ナノ粒子の平均粒子径を評価した結果、前記有機分子種による被覆層を有する銀ナノ粒子の平均粒子径は、10nmであった。
【0107】
また、最終的に銀ナノ粒子として、回収された銀は、原料の粉末状の酸化銀(I)中に
含まれる銀に対して、98%であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、導電性金属ペースト、触媒など、各種分野において、金属フィラー微粒子として利用可能な、微細な粒子径を有する金属銀微粒子について、原料に安価な酸化銀を使用して、経済的に製造する技術を提供している。すなわち、従来、ガス中蒸発法(気相法)を適用することで製造されていた、平均粒子径がナノメートル・スケールの微細な銀微粒子と比較し、品質的に遜色のない銀微粒子を、原料に酸化銀を使用する液相法によって、商業的な規模の大量生産を可能とする。
【出願人】 【識別番号】000233860
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
【出願日】 平成18年7月24日(2006.7.24)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−25005(P2008−25005A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−200976(P2006−200976)