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【発明の名称】 ニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペースト
【発明者】 【氏名】森 建作

【氏名】中田 寛子

【要約】 【課題】微細で粒径の均一性が極めて高く、かつ分散性に優れた銅微粒子であって、しかも耐酸化性が高く、特に導電性ペーストフィラーとして或いは金属光沢性インク用の顔料として好適なニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストを提供する。

【構成】表面に有機化合物成分を吸着したニッケル被膜により被覆された単分散性の銅微粒子であって、下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に有機化合物成分を吸着したニッケル被膜により被覆された単分散性の銅微粒子であって、
下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とするニッケル被覆銅微粒子。
(イ)上記ニッケルの被覆量は、質量比率でNi:Cu=1:100〜50:100である。
(ロ)上記銅微粒子の平均粒径は、10〜100nmである。
(ハ)上記銅微粒子の粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は、10〜30%である。
【請求項2】
前記有機化合物成分は、製造時に用いられるポリオール類及び水溶性高分子分散剤、又はそれらの化合物及び有機アルカリ性化合物からなることを特徴とする請求項1に記載のニッケル被覆銅微粒子。
【請求項3】
前記有機化合物成分は、ニッケル被覆銅微粒子の最外層中に、銅とニッケルの合計量に対して、質量比率で、有機化合物:(銅+ニッケル)=1:1000〜100:1000の割合で吸着していることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル被覆銅微粒子。
【請求項4】
エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物、ニッケル化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B)、及び最後に、さらに温度を高めて、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C)、を含むことを特徴とする請求項1に記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項5】
エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A’)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B’)、及び最後に、ニッケル化合物を添加し、その後、さらに温度を高め、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C’)、を含むことを特徴とする請求項1に記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)、(B’)において、貴金属イオン又は貴金属コロイドの添加に先だって、又は添加と同時に、アルカリ性化合物を添加することを特徴とする請求項4又は5に記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記貴金属イオン又は貴金属コロイドは、金、白金、銀、又はパラジウムから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ニッケル化合物は、水酸化ニッケル、酢酸ニッケル、又はギ酸ニッケルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記銅化合物は、亜酸化銅、酸化銅、水酸化銅、又は酢酸銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記水溶性高分子分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、又は水溶性櫛型高分子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン類、又はポリエチレンイミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記工程(B)、(B’)の温度は、120〜200℃であり、一方、工程(C)、(C’)は、160℃を超える温度からポリオール溶液の沸点の範囲であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル被覆銅微粒子を用いてなるニッケル被覆銅微粒子分散液。
【請求項14】
請求項4〜6に記載の製造方法により得られたニッケル被覆銅微粒子を含む溶液を、極性溶媒で溶媒置換後、濃縮することを特徴とするニッケル被覆銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載のニッケル被覆銅微粒子分散液を用いてなるニッケル被覆銅微粒子ペースト。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストに関し、さらに詳しくは、微細で粒径の均一性が極めて高く、かつ分散性に優れた銅微粒子であって、しかも耐酸化性が高く、特に導電性ペーストフィラーとして或いは金属光沢性インク用の顔料として好適なニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストに関する。ここで得られた分散液又はペーストは、耐酸化性に優れた電子材料の配線又は導電膜形成用として、或いは金属光沢塗料用の顔料として用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化と集積化はますます進む傾向にあり、電子機器を構成する電子部品でも同様に小型化と集積化が求められている。このため、電子部品の構成要素として重要な機能を担う配線基板、積層セラミックスコンデンサー等に代表される受動部品において、導電膜及び配線パターン形成用として用いられている金属微粒子をフィラーとする導電性ペースト材料において、より微細な配線の構築或いは薄膜化による積層構造の多層化を目的として、単分散性に優れた金属微粒子材料が求められている。
【0003】
この中で、特に粒径が100nm以下の金属微粒子は、通常のサブミクロン以上の粒子と異なり焼成温度が極めて低くできるという特性を有するため、低温焼成ペースト等への応用が考えられている。さらに、最近では、インクジェットプリンターを用いて金属微粒子を含有するインクにより配線パターンの印刷を行い、次いで低温焼成して配線を形成する技術が注目されており、その研究開発が進められている。このような低温焼成ペースト、又はインク用として用いる金属微粒子として、金又は銀を用いることが提案されている。しかしながら、銀はエレクトロマイグレーション発生の問題があり、本質的には電子回路形成用途には不向きである。また、金は高価であり、高コストとなるという問題がある。
【0004】
この解決策として、安価で導電性に優れるとともに、エレクトロマイグレーション発生が少ない金属である銅を材料とした微粒子が注目されている。しかしながら、銅には、耐酸化性に劣る欠点があり、特に粒径100nm以下の銅微粒子では、表面活性が高くなり酸化傾向が著しくなる。そのため、その克服が課題であった。ところで、粒径100nm以下の金属微粒子に関しては、金属光沢性顔料としてのニーズもある。すなわち、近年、印刷技術とコンピュータ技術の大幅な進化に伴い、パーソナルコンピュータとインクジェットプリンターを用いた印刷技術等により誰でも簡便に高品位の印刷物を作成することができるようになってきており、より多様な意匠性が望まれている。その中で、金属光沢を呈するインクのニーズが高まってきている。ここで、粒径の揃った100nm以下の金属微粒子は、インク及び塗料ビヒクル中に高度に分散し、塗布後の溶剤の揮発に伴い塗布面に平滑にかつ緻密に配列するため、従来にない金属光沢性の意匠性が簡単に得られる。また、様々な質感や色合いが求められる中で、銅色の意匠性も求められている。しかしながら、従来の銅微粒子の場合には、塗布・乾燥後に微粒子の酸化により意匠性が損なわれるという問題があるため、実用化には至っていない。
【0005】
以上のように、いずれの用途の場合においても、微細な銅微粒子に求められる重要な特性の1つとして、耐酸化特性が挙げられる。このため、銅粉の耐酸化特性改善についての提案がなされている。
例えば、粒径がミクロンメーター又はサブミクロンメーターレベルの銅粉において、銅粉表面を無電解メッキ法によりニッケルでコーティングすることにより耐酸化性を向上させる方法(例えば、特許文献1、又は2参照。)が開示されているが、この方法は、ナノメーターレベルの銅微粒子において適用することができない。
【0006】
また、水酸化銅をヒドラジン又はヒドラジン化合物により還元し、次いで還元された金属銅微粒子と還元剤が存在する液中にニッケル錯塩水溶液を添加することにより、粒径100nm以下のニッケル被覆銅微粒子を得る方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。しかしながら、この方法で得られるニッケル被覆銅微粒子は、粒径が揃ったものとは言い難く、薄く均一な導電膜又は意匠性に優れた金属光沢膜を形成する用途には不十分である。
【0007】
ところで、生産性の高い濃厚液系で金属微粒子を合成する方法として、ポリオール法が知られている。この方法は、酸化銅のような銅の酸化物又は塩をポリオール中に添加して加熱還元する方法である。ここで、ポリオールは、溶媒、還元剤、及び保護剤の三つの役割を担っている。その結果、濃厚液系において、サブミクロンないしミクロンオーダーの金属微粒子を得ることができるという特徴がある。しかも、ポリオール法では、ポリオールの種類、反応温度、原料等を適切に調製することによって、微細な金属微粒子を得られることが知られている。しかしながら、通常のポリオール法においては、特に銅微粒子の製造の場合には、粒径が100nm以下で、かつ分散性に優れた銅微粒子の合成は極めて困難であった。
【0008】
この解決策として、本発明者らは、ポリオール法により100nm以下の微細な銅粉を合成する方法(例えば、特許文献4、5、又は6参照。)を提案している。これらの方法により、ある程度の耐酸化性を有する単分散性の100nm以下の銅粉が得られる。しかしながら、前記銅粉の耐酸化性は、大気中での熱処理等のより厳しい環境では十分なものではない。したがって、産業上の応用範囲を広げて有効に活用するために更なる耐酸化性の向上が求められている。
【0009】
以上の状況から、安価で導電性に優れかつエレクトロマイグレーション発生が少ない金属である銅を主原料として用い、微細で粒径の均一性及び分散性に優れ、かつ耐酸化性にも優れた銅微粒子が求められている。
【0010】
【特許文献1】特開2004−162164号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】特開2006−28630号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】特開2004−217991号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献4】特開2005−240088号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献5】特開2005−307335号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献6】特開2005−330552号公報(第1頁、第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、微細で粒径の均一性が極めて高く、かつ分散性に優れた銅微粒子であって、しかも耐酸化性が高く、特に導電性ペーストフィラーとして或いは金属光沢性インク用の顔料として好適なニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために、大量生産に適した液相法で単分散性の銅微粒子を製造することができるポリオール法の応用について、鋭意研究を重ねた結果、特定の要件を満足するニッケル被覆銅微粒子により、耐酸化性が高く、特に導電性ペーストフィラーとして或いは金属光沢性インク用の顔料として好適な銅微粒子が得られること、銅化合物とニッケル化合物を特定の条件で還元することにより、該ニッケル被覆銅微粒子が得られること、またそれらを用いて、導電性ペースト、インクジェットプリンター用インク又は一般塗料用の金属光沢性顔料の原料として好適なニッケル被覆銅微粒子分散液及びペーストが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面に有機化合物成分を吸着したニッケル被膜により被覆された単分散性の銅微粒子であって、
下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とするニッケル被覆銅微粒子が提供される。
(イ)上記ニッケルの被覆量は、質量比率でNi:Cu=1:100〜50:100である。
(ロ)上記銅微粒子の平均粒径は、10〜100nmである。
(ハ)上記銅微粒子の粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は、10〜30%である。
【0014】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記有機化合物成分は、製造時に用いられるポリオール類及び水溶性高分子分散剤、又はそれらの化合物及び有機アルカリ性化合物からなることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子が提供される。
【0015】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記有機化合物成分は、ニッケル被覆銅微粒子の最外層中に、銅とニッケルの合計量に対して、質量比率で、有機化合物:(銅+ニッケル)=1:1000〜100:1000の割合で吸着していることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子が提供される。
【0016】
また、本発明の第4の発明によれば、エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物、ニッケル化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B)、及び最後に、さらに温度を高めて、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C)、を含むことを特徴とする、第1の発明のニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第5の発明によれば、エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A’)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B’)、及び最後に、ニッケル化合物を添加し、その後、さらに温度を高め、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C’)、を含むことを特徴とする、第1の発明のニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第6の発明によれば、第4又は5の発明において、前記工程(B)、(B’)において、貴金属イオン又は貴金属コロイドの添加に先だって、又は添加と同時に、アルカリ性化合物を添加することを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第7の発明によれば、第4〜6いずれかの発明において、前記貴金属イオン又は貴金属コロイドは、金、白金、銀、又はパラジウムから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第8の発明によれば、第4〜6いずれかの発明において、前記ニッケル化合物は、水酸化ニッケル、酢酸ニッケル、又はギ酸ニッケルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第9の発明によれば、第4〜6いずれかの発明において、前記銅化合物は、亜酸化銅、酸化銅、水酸化銅、又は酢酸銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第10の発明によれば、第4〜6いずれかの発明において、前記水溶性高分子分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、又は水溶性櫛型高分子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第11の発明によれば、第6の発明において、前記アルカリ性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン類、又はポリエチレンイミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第12の発明によれば、第4〜6いずれかの発明において、前記工程(B)、(B’)の温度は、120〜200℃であり、一方、工程(C)、(C’)は、160℃を超える温度からポリオール溶液の沸点の範囲であることを特徴とするニッケル被覆銅微粒子の製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜3いずれかの発明のニッケル被覆銅微粒子を用いてなるニッケル被覆銅微粒子分散液が提供される。
【0026】
また、本発明の第14の発明によれば、第4〜6いずれかの発明により得られたニッケル被覆銅微粒子を含む溶液を、極性溶媒で溶媒置換後、濃縮することを特徴とするニッケル被覆銅微粒子分散液の製造方法が提供される。
【0027】
また、本発明の第15の発明によれば、第13の発明のニッケル被覆銅微粒子分散液を用いてなるニッケル被覆銅微粒子ペーストが提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストは、微細で粒径の均一性が極めて高く、かつ分散性に優れた銅微粒子であって、しかも耐酸化性が高く、特に導電性ペーストフィラーとして或いは金属光沢性インク用の顔料として好適なニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストを得ることができるので、その工業的価値は極めて大きい。
【0029】
すなわち、本発明のニッケル被覆銅微粒子は、極めて微細であるので、低温焼成による均質な導電膜の製造に好適であり、特に配線密度のファインピッチ化に対応可能なものである。特に、最近のインクジェットプリンターを用いた微細な配線パターンの形成において、インクジェットプリンター用インクに分散させる金属微粒子として有効である。また、耐酸化性に優れる特長を活かし、インクジェットプリンター用インク又は一般塗料用の金属光沢性顔料としても好適である。しかも、表面を被覆するニッケル膜厚を制御することにより、色合い及び質感の調整も可能である。さらに、ニッケル被覆銅微粒子の製造方法においては、高圧容器等の特別な装置を必要としないうえ、使用する原料、有機溶媒、分散剤などのいずれもが一般の工業材料を使用することができるので、低コストを達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストを詳細に説明する。
1.ニッケル被覆銅微粒子
本発明のニッケル被覆銅微粒子は、表面に有機化合物成分を吸着したニッケル被膜により被覆された単分散性の銅微粒子であって、
下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする。
(イ)上記ニッケルの被覆量は、質量比率でNi:Cu=1:100〜50:100である。
(ロ)上記銅微粒子の平均粒径は、10〜100nmである。
(ハ)上記銅微粒子の粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は、10〜30%である。
【0031】
上記ニッケル被覆銅微粒子おいて、質量比率でNi:Cu=1:100〜50:100の被覆量を有するように、ニッケル被膜で被覆されていることが重要であり、これにより、耐酸化性が著しく向上する。すなわち、ニッケルの被覆量が、質量比率でNi:Cu=1:100未満では、耐酸化性の改善効果が十分でなく、一方、ニッケルの被覆量が、質量比率でNi:Cu=50:100を超えると、低温焼成した際の電気抵抗値が高くなりすぎるばかりでなく、意匠性が低下してしまう。
【0032】
ここで、ニッケルの被覆量としては、合成する粒子の粒径と用途により調節することができる。例えば、導電用途であれば、ニッケルの被覆量が多すぎると電気抵抗値が上昇するので、質量比率でNi:Cu=1:100〜30:100程度が好ましい。また、顔料用途であれば、強固な耐酸化性を要求されると同時に意匠性の兼ね合いもあるため、質量比率でNi:Cu=10:100〜50:100の範囲で選択される。
【0033】
また、上記ニッケル被覆銅微粒子において、その平均粒径が10〜100nmである。すなわち、平均粒径が10nm未満では、粒子の凝集が激しいばかりでなく、耐酸化性も低下してしまう。一方、平均粒径が100nmを超えると、低温焼成効果が得られない。
【0034】
また、上記ニッケル被覆銅微粒子において、その粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は、10〜30%であり、好ましくは10〜25%である。すなわち、粒径の標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比は、粒径の均一性を示すものであり、粒径の標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比は小さい値ほど粒径が均一で好ましいが、本発明の製造方法によって得られるニッケル被覆銅微粒子では、(σ/d)×100は10%程度が限度である。また、(σ/d)×100を30%以下とすることで、低温焼成効果が得られるとともに、塗料として用いた場合には、ニッケル被覆銅微粒子が塗布面に平滑に緻密に配列し、金属光沢性の意匠性が得られる。なお、(σ/d)×100が30%を超えると、ファインピッチ化への対応が不十分となるとともに、インクジェットプリンター用インクに用いた場合には、詰り等の不具合が生じる場合がある。また、塗料として用いた場合には、塗布面の平滑性が失われ金属光沢が得られない。
【0035】
また、上記ニッケル被覆銅微粒子において、前記ニッケル被膜の表面に有機化合物を吸着していること、言い換えれば、ニッケル被覆銅微粒子の最外層に、銅とニッケルの合計に対して、質量比率で有機化合物:(銅とニッケル)=1:1000〜100:1000の吸着量を有するように水溶性高分子分散剤の成分、又はエチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール溶液の成分からなる有機化合物が吸着されていることが重要な意義を持つ。すなわち、前記有機化合物による被覆層を有することにより、分散性に優れたニッケル被覆銅微粒子が得られる。さらに、前記有機化合物による被覆層は、耐酸化性の改善にも寄与している。ここで、有機化合物の吸着量が質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=1:1000未満では、分散性と耐酸化性の改善効果が十分でなく、一方、有機化合物の吸着量が質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=100:1000を超えると、低温焼成の際の電気抵抗値が上昇してしまう。
【0036】
このような本発明のニッケル被覆銅微粒子は、微細な銅微粒子であり、スクリーン印刷及び最近研究開発が進んでいるインクジェットプリンターを用いた微細な配線パターンの印刷形成技術において、そのインク又はペーストを構成する金属微粒子として優れたものである。しかも、耐酸化性に優れる特長を活かし、インクジェットプリンター用インク又は一般塗料用の金属光沢性顔料としても好適であり、優れた意匠性を呈し、インク又はペースト中で長期間良好な分散性を保つことができる。さらに、表面を被覆するニッケル膜厚を制御することにより、色合いや質感の調整も可能である。
【0037】
2.ニッケル被覆銅微粒子の製造方法
本発明のニッケル被覆銅微粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記(1)又は(2)の製造方法が好ましい。
(1)エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物、ニッケル化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B)、及び最後に、さらに温度を高めて、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C)、を含むことを特徴とする。
【0038】
(2)エチレングリコール又はジエチレングリコールの少なくとも1種を含むポリオール溶液中に、銅化合物及び水溶性高分子分散剤を添加し、加熱する工程(A’)、次いで、加熱下に、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、銅微粒子を生成させる工程(B’)、及び最後に、ニッケル化合物を添加し、その後、さらに温度を高め、ニッケルを還元析出させることにより、銅微粒子の表面をニッケルで被覆する工程(C’)、含むことを特徴とする。
【0039】
本発明の(1)又は(2)の製造方法において、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコールを含むポリオール溶液中で、まず、加熱下に銅化合物を還元し、銅微粒子を生成させた後、次いで、溶液の温度をさらに上昇させることによりニッケル化合物を還元し、銅微粒子表面にニッケルを析出させて被覆する。
【0040】
上記(1)又は(2)の製造方法の工程(B)、(B’)で用いる温度としては、特に限定されるものではないが、銅がポリオール溶液により還元され、一方ニッケルが還元されない反応温度を選択することにより行なわれる。この反応温度としては、ポリオール溶液の種類によるが、120〜200℃の範囲が可能である。すなわち、この反応温度が120℃未満では、銅の還元反応速度が低く、一方200℃を超えると、析出した銅の粒子径が大きく成長してしまうため好ましくない。例えば、溶媒にエチレングリコールを用いる場合には、ニッケルの還元を抑制するため、ニッケル還元反応のほとんど進行しない120〜160℃がより好ましい。溶媒にジエチレングリコールを用いる場合には、同様に160〜200℃がより好ましい。
【0041】
一方、上記(1)又は(2)の製造方法の工程(C)、(C’)で用いる温度としては、特に限定されるものではなく、ポリオール溶液の種類により、160℃を超える温度からポリオール溶液の沸点の範囲の温度であることがより好ましい。これにより、ニッケル化合物を還元し、銅微粒子表面にニッケルを析出させて被覆する。すなわち、反応温度が160℃以下では、ニッケルの還元反応の進行が遅くなってしまう。一方、ポリオール溶液の沸点を超える温度では、加圧容器が必要になるので経済的でない。
【0042】
このような温度制御を行うことにより、ニッケル被覆された銅微粒子を得ることができる。しかしながら、銅微粒子の生成時にニッケルの一部も還元されてしまう場合には、貴金属イオン又は貴金属コロイドを添加し、まず比較的低温度で銅微粒子を生成させた後に、ニッケル化合物を添加する上記(2)の製造方法が用いられる。この際、ニッケル化合物のポリオール溶液への添加においては、単体で添加してもよいが、同種類のポリオール溶液と混合しスラリー化して添加することが好ましい。
【0043】
上記(1)又は(2)の製造方法において、銅化合物は、エチレングリコール又はあジエチレングリコール中で加熱されることにより還元され、ポリオール溶液中に銅微粒子が生成されるが、さらに、微細で均一な銅微粒子を得るため、貴金属イオン又は貴金属コロイドをポリオール溶液中に添加し、粒子生成の核を得る。すなわち、ポリオール溶液中において、貴金属イオンは、還元反応の初期の段階で還元されて極めて微細で均一な貴金属粒子を生成し、これにより銅微粒子生成の核が得られる。また、予め合成した貴金属微粒子を含む貴金属コロイド溶液を添加してもよい。この極めて微細な貴金属粒子を核として、銅化合物から還元された金属銅が堆積し、粒径100nm以下の微細で均一な銅微粒子が生成される。
【0044】
上記貴金属イオン又は貴金属コロイドは、特に限定されるものではなく、金、白金、銀、又はパラジウムから選ばれる少なくとも1種の貴金属であることが好ましく、銀、又はパラジウムがより好ましい。例えば、パラジウムの場合、塩化パラジウムアンモニウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩の水溶液又はパラジウムコロイド液として添加することが好ましく、また銀の場合は、硝酸銀等の水溶液又は銀コロイド液として添加することが好ましい。
【0045】
上記(1)又は(2)の製造方法において、貴金属イオン又は貴金属コロイドのポリオール溶液中への添加は、銅微粒子が還元生成する温度以上にポリオール溶液を加熱昇温した後に行うことが望ましい。このようにすることにより、銅微粒子の生成が一度に起こり、銅微粒子の粒径がより均一となる。
【0046】
上記(1)又は(2)の製造方法において、貴金属イオン又は貴金属コロイドの添加量としては、特に限定されるものではなく、銅に対する貴金属の質量比(貴金属/銅)で、0.0001〜0.1が好ましく、0.0004〜0.1がより好ましい。
すなわち、銅に対する貴金属の質量比が0.0001未満では、生成する貴金属超微粒子の量が不足するため、銅の還元反応ないし銅微粒子の生成が十分に進まないからである。また、銅微粒子生成に至った場合においても、核となる貴金属超粒子数が不足しているため、銅微粒子の粒径が100nmを超えてしまう。一方、銅に対する貴金属の質量比が0.1を超えると、貴金属粒子のみが単独で析出してしまうため、銅の還元が十分に進まず目的とする銅微粒子が得られない。例えば、貴金属として、パラジウムを用いた場合、質量比で(パラジウム/銅)を0.0006〜0.005の範囲とすることによって、平均粒径が50nm以下で粒径の均一性に優れた銅微粒子を得ることができる。また、貴金属に銀を用いる場合は、質量比で(銀/銅)を0.002〜0.05の範囲とすることにより、粒径が100nm以下で粒径の均一性に優れた銅微粒子を得ることができる。
【0047】
上記(1)又は(2)の製造方法において、前記工程(B)、(B’)において、必要に応じて、貴金属イオン又は貴金属コロイドの添加に先だって、又は添加と同時に、還元反応制御剤としてアルカリ性化合物を添加することができる。
【0048】
上記アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機化合物、エタノールアミン等のアルカノールアミン類、ポリエチレンイミン等有機化合物等が用いられるが、この中で還元温度において分解蒸発してしまうものは好ましくない。上記アルカリ性無機化合物の添加量としては、特に限定されるものではなく、0.01〜2g/リットルが好ましく、また、アミン系有機化合物の添加量としては、0.1〜20g/リットルであることが好ましい。なお、ポリエチレンイミン等のアルカリ性高分子は、還元反応制御剤と分散剤の両方の働きをするので、還元を促進すると同時に反応初期に発生する貴金属粒子核と銅微粒子の微細化に寄与する。
【0049】
上記(1)又は(2)の製造方法で用いる銅化合物としては、特に限定されるものではなく、酸化銅、亜酸化銅等の銅の酸化物、水酸化銅等の銅の水酸化物、酢酸銅の銅の塩を用いることができる。なお、塩化銅等、還元後に残留すると好ましくない元素を含む化合物は好ましくない。上記銅化合物は、粉末状態で使用することが好ましい。
【0050】
上記(1)又は(2)の製造方法で用いるニッケル化合物としては、特に限定されるものではなく、水酸化ニッケル、蟻酸ニッケル、酢酸ニッケルを用いることができるが、この中で、水酸化ニッケルが好ましい。さらに反応を効率よく行わせるために、粒径10μm以下の水酸化ニッケル粉末を用いることがより好ましい。
【0051】
上記(1)又は(2)の製造方法において、水溶性高分子分散剤を添加する。ここで、水溶性高分子は、還元析出した銅微粒子の表面を被覆し、立体障害により銅微粒子同士の接触を防止して凝集がほとんどない分散性に優れた銅微粒子の生成を促進する。ここで用いる水溶性高分子分散剤としては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール溶液中に溶解し、かつ生成した銅微粒子に吸着して立体障害を形成し得るものであればよいが、この中で、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ゼラチン、又は水溶性櫛型高分子から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、又は水溶性櫛型高分子から選ばれた少なくとも1種がより好ましい。また、高分子のもつ官能基によって銅とニッケルに対する吸着能が異なるため、複数の高分子を添加することにより、ニッケル被覆の前後の粒径又は分散性を制御することができる。
【0052】
上記水溶性高分子分散剤の添加量としては、特に限定されるものではないが、質量比で(水溶性高分子/銅とニッケル合計)が0.01〜2.0であることが好ましい。すなわち、(水溶性高分子/銅とニッケル合計)の比が0.01未満では、分散効果が小さい。一方、(水溶性高分子/銅とニッケル合計)の比が2.0を超えると、液の粘性が高くなり過ぎ、後工程で分散液を製造する際に、極性溶媒との溶媒置換と濃縮に時間がかかる。
【0053】
3.ニッケル被覆銅微粒子分散液、その製造方法及びニッケル被覆銅微粒子ペースト
本発明のニッケル被覆銅微粒子分散液は、上記ニッケル被覆銅微粒子を用いて得られる。また、ニッケル被覆銅微粒子分散液の製造方法は、上記ニッケル被覆銅微粒子の製造方法により得られたニッケル被覆銅微粒子を含む溶液を、極性溶媒で溶媒置換後、濃縮することを特徴とする。
【0054】
上記(1)又は(2)の製造方法により合成されたニッケル被覆銅微粒子は、エチレングリコール又はジエチレングリコール中に分散した状態で得られる。この溶液中には、ニッケル被覆銅微粒子以外に、水溶性高分子分散剤及び還元反応制御剤が含まれている。これら有機溶剤が、最終的に使用される配線材料用導電性ペースト製品中に過剰に含まれると、電気抵抗上昇、構造欠陥等の不具合をもたらす原因となる。また、反応溶媒は変色するため、残留が多い場合、意匠性を悪化させる。したがって、得られたニッケル被覆銅微粒子を含むポリオール溶液を用いて、適切な溶媒で溶媒置換後、濃縮することによって、水溶性高分子分散剤、還元反応制御剤等をできるだけ除去し、ニッケル被覆銅微粒子が溶媒中に分散した分散液とすることが望ましい。
【0055】
上記ニッケル被覆銅微粒子分散液の製造方法としては、特に限定されるものではないが、上記ニッケル被覆銅微粒子の製造方法により得られた微粒子を含むポリオール溶液を、水、アルコール類のいずれか1種、若しくはこれらの2種以上の混合物からなる溶媒で希釈した後、限外濾過等により溶媒置換後、濃縮を行う。その後、必要に応じて、更に溶媒による希釈と、溶媒置換及び濃縮を繰り返して、所望の銅濃度と不純物品位に調整したニッケル被覆銅微粒子分散液を得る。
【0056】
本発明のニッケル被覆銅微粒子ペーストは、上記ニッケル被覆銅微粒子分散液を用いて得られる。例えば、上記ニッケル被覆銅微粒子分散液をエバポレーションにより濃縮し、次いでターピネオール等の溶媒又は樹脂を添加することによりペースト状に調製する。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた銅化合物としては、亜酸化銅(CuO)(日進ケムコ(株)製)、ニッケル化合物としては、水酸化ニッケル(Ni(OH))(住友金属鉱山(株)製)、Pdイオンとしては、塩化パラジウムアンモニウム(住友金属鉱山(株)製)にアンモニア水を加えて溶解したPd溶液、Agイオンとしては、硝酸銀(和光純薬工業(株)製、試薬)に水を加えて溶解したAg溶液、ポリオール溶液としては、エチレングリコール(EG)(日本触媒(株)製)又はジエチレングリコール(DEG)(日本触媒(株)製)、及び分散剤としては、分子量10,000のポリビニルピロリドン(PVP)(アイエスピー・ジャパン(株)製)又は分子量1,800のポリエチレンイミン(PEI)(日本触媒(株)製)であった。また、還元反応制御剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)(和光純薬工業(株)製、試薬)、又は水酸化カリウム(KOH)(和光純薬工業(株)製、試薬)を必要に応じて添加した。
【0058】
(実施例1)
まず、エチレングリコール(EG)0.5リットル中に、CuO粉40gと、ポリビニルピロリドン(PVP)15gを加えて、窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、同時に加熱した。次いで、ポリエチレンイミン(PEI)0.25g、及びパラジウム(Pd)量で0.1gのPd溶液を加えて、150℃に1時間保持して銅微粒子を還元析出させた。その後、銅微粒子が析出した反応槽に、予めEG中にニッケル濃度で10%に調整した水酸化ニッケルスラリー35gを添加し、温度を190℃に上昇させ2時間保持することにより、銅微粒子表面にニッケルを還元析出させて被覆した。ここで、銅に対するニッケルの質量比率は、Ni:Cu=10:100に相当する。
【0059】
その後、得られた微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子であった。また、SEM観察像から無作為に200個の粒子の粒径測定を行い統計処理したところ、平均粒径(d)が30.3nmであり、また粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は18%であった。また、X線回折法により、金属相のみが検出され、また、SEM−EDX分析により、ニッケルが均一に被覆された銅微粒子と確認できた。
また、得られた微粒子を含む分散液を洗浄し真空中で乾燥させ溶媒分を除去した後に不活性雰囲気での熱重量分析を行うことでニッケル被膜の表面に吸着している有機化合物量を求めたところ、質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=92:1000であった。
【0060】
(実施例2)
まず、エチレングリコール(EG)0.5リットル中に、CuO粉40gと、ポリビニルピロリドン(PVP)20gを加えて、窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、同時に加熱した。次いで、ポリエチレンイミン(PEI)0.75g、NaOH0.06g、及び銀(Ag)量で0.3gのAg溶液を加えて、160℃に1時間保持して銅微粒子を還元析出させた。その後、銅微粒子が析出した反応槽に、予めEG中にニッケル濃度で10%に調整した水酸化ニッケルスラリー35gを添加し、温度を190℃に上昇させ2時間保持することにより、銅微粒子表面にニッケルを還元析出させて被覆した。ここで、銅に対するニッケルの質量比率は、Ni:Cu=10:100に相当する。
【0061】
その後、得られた微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、図1に示すように、略球状の凝集のない単分散性の微粒子であった。また、SEM観察像から無作為に200個の粒子の粒径測定を行い統計処理したところ、平均粒径(d)が74.7nmであり、また、粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は11%であった。また、X線回折法により金属相のみが検出され、また、SEM−EDX分析により、ニッケルが均一に被覆された銅微粒子と確認できた。
また、実施例1と同様にしてニッケル被膜の表面に吸着している有機化合物量を求めたところ、質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=87:1000であった。
【0062】
(実施例3)
ニッケル添加量を10%に調整した水酸化ニッケルスラリー105gを、CuO粉とともに最初から反応系内に投入したこと以外は、実施例2と同様に反応させ、銅微粒子を還元析出した後にニッケル層を還元析出させた。こで、銅に対するニッケルの質量比率は、Ni:Cu=30:100に相当する。
その後、得られた微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子であった。また、SEM観察像から無作為に200個の粒子の粒径測定を行い統計処理したところ、平均粒径(d)が90.4nmであり、また、粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は15.8%であった。また、X線回折法により金属相のみが検出され、また、SEM−EDX分析により、ニッケルが均一に被覆された銅微粒子と確認できた。
また、実施例1と同様にしてニッケル被膜の表面に吸着している有機化合物量を求めたところ、質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=66:1000であった。
【0063】
(実施例4)
実施例3で得られたニッケル被覆銅微粒子を含む溶液を用いて、以下のように、エチレングリコール(EG)の一部をエタノールで置換したニッケル被覆銅微粒子分散液を調整した。
まず、ニッケル被覆銅微粒子を含む溶液0.5リットルを、限外濾過により約1/5になるまで濃縮した後に、1リットルになるまでエタノールとエチレングリコールの混合溶媒を追加し、限外濾過によりエチレングリコールとエタノールの混合濾液を系外へ排出し、ニッケル被覆銅微粒子を含む溶液を100mLまで濃縮した。次いで、この濃縮液に、再びエタノールとエチレングリコールを1リットルになるまで追加し、限外濾過により濾液を系外へ排出して、元液を1/10に希釈した。この工程を更に1度繰り返すことによって、反応溶媒を元の1/1000の濃度にした。その後、この溶媒置換/濃縮後の液を回収して、80mLのニッケル被覆銅微粒子分散液を得た。
【0064】
得られたニッケル被覆銅微粒子分散液は、ICP発光分析法により、Cu:58重量%、Ni:16.5重量%であり、残部がエタノールとエチレングリコールであった。このニッケル被覆銅微粒子分散液を真空中にて溶媒を除去した後に、固形分に対しての炭素を分析したところ、C:2.5重量%であった。
【0065】
上記ニッケル被覆銅微粒子分散液を用いて、スピンコーターによりガラス基板上に塗布して、金属メッキ調の塗布膜が得られた。この塗布膜を大気中150℃で1時間乾燥させて溶媒を除去したが変色は全く見られず、X線回折法によっても酸化物に起因する回折パターンは全く見られなかった。さらに、乾燥後の塗布膜を窒素雰囲気中300℃で1時間熱処理したところ、抵抗率が4×10−5Ω・cmである微細な銅とニッケルからなる導電膜を形成することができた。なお、150℃乾燥後の塗布膜を1ヶ月間室内に置いたが、変色等の意匠性の変化は認められなかった。
【0066】
(比較例1)
まず、エチレングリコール(EG)0.5リットル中に、CuO粉40gと、ポリビニルピロリドン(PVP)20gを加えて、窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、同時に加熱した。次いで、ポリエチレンイミン(PEI)0.75g、NaOH0.06g、及び銀(Ag)量で0.3gのAg溶液を加えて、160℃に1時間保持して銅微粒子を還元析出させた。
その後、得られた微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない単分散性の微粒子であった。また、SEM観察像から無作為に200個の粒子の粒径測定を行い統計処理したところ、平均粒径dが73.0nmであり、また、粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100は19%であった。また、X線回折法により金属銅相のみが検出された。
【0067】
得られた銅微粒子を含む溶液を用いて、実施例4と同様にして銅微粒子分散液を得た。
その後、得られた銅微粒子分散液を用いて、スピンコーターによりガラス基板上に塗布し金属メッキ調の塗布膜を得たが、この塗布膜を大気中150℃で1時間乾燥させて溶媒を除去したところ、酸化により濃青色に変色した。ここで、X線回折法によっても、亜酸化銅に起因する回折パターンが認められた。さらに、乾燥後の塗布膜を窒素雰囲気中300℃で1時間熱処理したが、導電膜は得られなかった。
【0068】
以上より、実施例1〜4では、本発明のニッケル被覆銅微粒子の製造法により行なわれたので、凝集のない単分散性の、平均粒径(d)が10〜100nmであり、粒径における標準偏差(σ)と平均粒径(d)の比を表す(σ/d)×100が10〜30%であり、ニッケルの被覆量が質量比率でNi:Cu=1:100〜50:100であり、かつ。有機化合物の吸着量が質量比率で有機化合物:銅とニッケルの合計=1:1000〜100:1000であるニッケル被覆銅微粒子が得られ、これを用いて得られたニッケル被覆銅微粒子分散液により、優れた電気抵抗率を示す微細な銅とニッケルからなる導電膜を形成することができることが分かった。これに対して、比較例1では、ニッケル被覆のない銅微粒子であるため、これを用いて得られた銅微粒子分散液により導電膜が得られないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上より明らかなように、本発明のニッケル被覆銅微粒子とその製造方法、それを用いた分散液とその製造方法、及びそれを用いたペーストは、特に金属微粒子を用いるインク、導電体、及び金属光沢性顔料分野で利用される。本発明のニッケル被覆銅微粒子は、極めて微細であるので、特に配線密度のファインピッチ化に対応可能なものであり、インクジェットプリンター用インク又は一般塗料用の金属光沢性顔料としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例2で得られたニッケル被覆銅微粒子のSEM像を表す図である(撮影倍率10万倍)。
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100106596
【弁理士】
【氏名又は名称】河備 健二


【公開番号】 特開2008−24969(P2008−24969A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196698(P2006−196698)