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【発明の名称】 貴金属ナノ材料の製造方法
【発明者】 【氏名】林 大和

【氏名】石川 大

【氏名】滝澤 博胤

【要約】 【課題】簡便な方法で貴金属ナノ材料を効率よく製造することが可能な貴金属ナノ材料の製造方法の提供。

【構成】超音波を照射して水系溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分散させて貴金属酸化物分散液を得る工程、分散液にアルコール類等の還元剤を添加し、マイクロ波を照射して前記貴金属酸化物分散液を加熱還元してナノロッド等の貴金属ナノ粒子を得る工程、あるいは溶媒中に担体を含有させ前記加熱還元によりその表面に貴金属ナノ粒子を担持させる工程よりなる製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を照射して溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分散させて貴金属酸化物分散液を得る工程と、前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程とを含むことを特徴とする貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項2】
前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程が、前記貴金属酸化物分散液にマイクロ波を照射する工程であることを特徴とする請求項1に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項3】
前記貴金属酸化物分散液における溶媒に、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、単糖類、多糖類、水酸化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、硫化水素、ボラン、ジボラン、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、クエン酸及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤がアルコール類であることを特徴とする請求項3に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項5】
前記貴金属酸化物分散液を加熱する前に、前記貴金属酸化物分散液に前記還元剤を添加する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒に貴金属担持用の担体を更に含有させることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒が水系溶媒であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の貴金属ナノ材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属ナノ材料の製造方法に関し、より詳しくは、導電性ペースト、燃料電池用触媒、材料合成用触媒等に好適に利用可能な貴金属ナノ材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、nmサイズ(ナノサイズ)の大きさの貴金属ナノ材料は燃料電池用触媒、自動車排気ガス用触媒、材料合成用触媒等に用いられてきた。そして、このような貴金属ナノ材料を製造する方法としては、種々の方法が研究されてきた。
【0003】
例えば、特開2005−125282号公報(特許文献1)においては、担体と、貴金属酸化物と、還元剤としてのアルコールとを含む溶媒に超音波を照射して、前記担体の表面に前記貴金属酸化物を還元させてナノサイズの貴金属微粒子を析出させる貴金属ナノ材料の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特開2000−256707号公報(特 許文献2)においては、貴金属塩を溶媒中に溶解あるいは分散してなる溶液に、マイクロ波を照射することによって、前記貴金属から構成されるナノサイズの微粒子を製造する貴金属ナノ材料の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−125282号公報
【特許文献2】特開2000−256707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような貴金属ナノ材料の製造方法においては、長時間に亘って超音波を照射しなければ貴金属ナノ材料が得られず、効率的に貴金属ナノ材料を製造することができなかった。また、特許文献2に記載されているような貴金属ナノ材料の製造方法においては、貴金属微粒子の分散性が十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で貴金属ナノ材料を効率よく製造することが可能な貴金属ナノ材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、超音波を照射して溶媒中に貴金属酸化物を分散させた後に、加熱することにより、強塩基等の添加剤を使用することなく、簡便な方法で貴金属微粒子や貴金属ナノチューブ等の貴金属ナノ材料を効率よく製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の貴金属ナノ材料の製造方法は、超音波を照射して溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分散させて貴金属酸化物分散液を得る工程と、前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0009】
上記本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程が、前記貴金属酸化物分散液にマイクロ波を照射する工程であることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、前記貴金属酸化物分散液における溶媒に、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、単糖類、多糖類、水酸化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、硫化水素、ボラン、ジボラン、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、クエン酸及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤が含有されていることが好ましく、前記還元剤がアルコール類であることがより好ましい。
【0011】
また、上記本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、前記貴金属酸化物分散液を加熱する前に、前記貴金属酸化物分散液に前記還元剤を添加する工程を更に含むことが好ましい。
【0012】
さらに、上記本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、前記溶媒に貴金属担持用の担体を更に含有させることが好ましい。
【0013】
また、上記本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、前記溶媒が水系溶媒であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便な方法で効率よく貴金属ナノ材料を製造することが可能な貴金属ナノ材料の製造方法を提供することが可能となる。そして、例えば、製造時に担体を用いた場合には、担体の表面上において高度な分散性を持って担持された状態の貴金属ナノ材料を得ることが可能であるため、これを燃料電池用触媒、材料合成用触媒等に好適に利用することが可能となる。また、本発明の貴金属ナノ材料の製造方法は、溶媒選択性が広く、担体の種類等に応じて有機系溶媒や水系溶媒を適宜使用することができる。そして、このような溶媒として特に水系溶媒を用いた場合には、廃液処理等が不要となり、より環境負荷を小さくしながら効率よく貴金属ナノ材料を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明の本発明の貴金属ナノ材料の製造方法は、超音波を照射して溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分散させて貴金属酸化物分散液を得る工程(I)と、前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程(II)とを含むことを特徴とする方法である。
【0017】
本発明において貴金属ナノ材料とは、nmサイズ(ナノサイズ)の大きさの貴金属の材料であればよく、例えば、貴金属微粒子、貴金属ナノチューブ、貴金属ナノロッド、貴金属ナノワイヤー、貴金属ナノシート等をいう。
【0018】
先ず、工程(I)について説明する。工程(I)は、超音波を照射して溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分散させる工程である。
【0019】
本発明にかかる溶媒としては特に制限されず、貴金属ナノ材料を製造する際に用いることが可能な公知の溶媒を適宜用いることができ、水系溶媒であっても、エタノールや非還元性のトルエン等の有機系溶媒であってもよい。そして、このような溶媒は、製造される貴金属ナノ材料の用途や担体の種類等に応じ、適宜選択して使用されるものである。例えば、貴金属ナノ材料の用途が食品添加剤である場合には、安全性等の観点から水系溶媒(より好ましくは、水・エタノール系の溶媒)を好適に用いることができる。一方、貴金属ナノ材料を導電性ペースト等の用途に使用する場合には、製造時のハンドリング性等の観点から有機系溶媒を好適に用いることができる。更に、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等の水に分散し難い担体や、石膏やセメント等の潮解性を持っていて水に溶解するような担体を用いる場合においても有機系溶媒を好適に用いることができる。
【0020】
また、このような溶媒としては、貴金属ナノ材料の製造後に廃液処理が不要となるとともに、製造時の安全性がより高いものとなるという観点から、水系溶媒を用いることが好ましい。このような水系溶媒としては、水を主成分として含有するものであればよく、特に制限なく用いることができ、水のみからなる溶媒、又は、水に還元剤が含有されている溶媒を好適に用いることができる。このような水のみからなる溶媒、又は水に還元剤が含有されている溶媒を用いることで、より地球環境にやさしく、安価で、しかも安全性高く、貴金属ナノ材料を製造することが可能となる。なお、このような還元剤については後述する。
【0021】
また、本発明にかかる貴金属酸化物としては、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Cu等の貴金属の酸化物が挙げられる。また、このような貴金属酸化物は、得られる貴金属ナノ材料の用途等に応じて、その種類を適宜選択して使用されるものであり、特に制限されるものではない。
【0022】
さらに、このような貴金属酸化物は、溶媒に分散させるものであることから、粉末状のものを用いることが好ましい。このような粉末状の貴金属酸化物としては、その粒子径が0.01〜200μmの範囲にあるものが好ましく、0.1〜20μmの範囲にあることがより好ましい。このような貴金属酸化物の粒子径が前記下限未満では、酸化物粉末が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶液中に分散せず、沈殿し凝集する傾向にある。なお、このような貴金属酸化物としては特に制限されず、市販のものを用いてもよい。
【0023】
また、工程(I)においては、前記水系溶媒中に前記貴金属酸化物を分散させるために超音波を照射する。このような超音波とは、周波数が20kHzを超える音波だけではなく、可聴周波数である1kHz程度からそれ以上の周波数領域をいう。なお、本発明においては、このようにして照射する超音波の条件(周波数等)や、加熱の条件、溶媒の条件等を適宜制御することで、得られる貴金属ナノ材料の形態を変更させることができる。
【0024】
このような超音波の周波数としては、目的とする貴金属ナノ材料の設計に応じて適宜変更することが可能なものであり、特に制限されないが、1kHz〜2MHzの範囲であることが好ましく、10kHz〜1MHzの範囲にあることがより好ましい。このような周波数が前記下限未満では、貴金属酸化物を効率よく且つ十分に分散させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると超音波の効果が低下する傾向にある。
【0025】
また、このような超音波の出力(強度)としては0.01〜10W/dmであることが好ましく、0.1〜1W/dmであることがより好ましい。前記出力が前記下限未満では、貴金属酸化物を短時間で効率よく分散させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、分散効率が低下する傾向にある。また、超音波を照射する時間としては、5分〜10時間(より好ましくは10分〜2時間)であることが好ましい。
【0026】
さらに、超音波を照射する際の温度条件としては特に制限されず、5℃以上であって溶媒の沸点温度以下であることが好ましい。また、このような超音波を照射するための装置としては特に制限されず、超音波を照射して溶媒中に貴金属酸化物を分散させることが可能な装置を適宜用いることができ、例えば、市販の超音波発生装置等を用いてもよい。
【0027】
また、工程(I)において得られる貴金属酸化物分散液中の貴金属酸化物の濃度としては特に制限されないが0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。前記分散液中の貴金属酸化物の濃度が前記下限未満では、効率よく貴金属ナノ材料を製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応効率が低下するとともに、溶媒に分散させることが困難となる傾向にある。なお、貴金属酸化物を溶媒中に効率良く分散させるためには、界面活性剤や保護ポリマーを用いてもよい。
【0028】
このように、本発明においては、工程(I)において超音波を照射して溶媒中に貴金属を分散させるため、貴金属酸化物を水系溶媒に短時間で効率よく分散させることが可能となる。
【0029】
次に、工程(II)について説明する。工程(II)は、前記貴金属酸化物分散液を加熱する工程である。
【0030】
このような貴金属酸化物分散液は、前述の工程(I)によって得られるものである。また、このような貴金属酸化物分散液における溶媒においては、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、単糖類、多糖類、水酸化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、硫化水素、ボラン、ジボラン、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、クエン酸及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤が含有されていることが好ましい。従って、前記溶媒が前記還元剤を含有する溶媒ではない場合(例えば、前記溶媒が水のみからなる溶媒である場合等)においては、工程(II)において前記貴金属酸化物分散液を加熱する前に、前記貴金属酸化物分散液に還元剤を添加することが好ましい。貴金属酸化物分散液における溶媒に還元剤を含有させることで、貴金属酸化物を効率よく還元することが可能となる。
【0031】
このようなアルコール類としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールや、エチレングリコールに代表されるようなポリオール類等が挙げられる。また、前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられる。前記アミン類としては、としては、例えば、アミノ酸、ヒドロキシルアミン、エチルアミン、モルホリン等が挙げられる。更に、前記単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、サッカロース等が挙げられる。前記多糖類としては、例えば、デンプン、セルロース、ペクチン、ヒアルロン酸等が挙げられる。また、このような還元剤の中でも、アルコール類が特に好ましい。アルコール類を用いることで、貴金属酸化物を、より効率よく還元することが可能となる。
【0032】
また、溶媒中において、このような還元剤の含有割合は特に制限されず、任意の割合とすることができ、用いる還元剤の種類等に応じて、その含有割合を適宜変更することができる。また、このような還元剤の溶媒中への含有割合としては、目的とする貴金属ナノ材料が貴金属微粒子である場合には、そのモル分率([還元剤]/[還元剤+溶媒])が0.05〜0.9程度であることが好ましく、目的とする貴金属ナノ材料が貴金属ナノチューブである場合には前記モル分率が0〜0.1程度であることが好ましく、目的とする貴金属ナノ材料が貴金属ナノロッドである場合には前記モル分率が0〜0.1程度であることが好ましく、目的とする貴金属ナノ材料が貴金属ナノワイヤーである場合には前記モル分率が0〜0.1程度であることが好ましく、目的とする貴金属ナノ材料が貴金属ナノシートである場合には前記モル分率が0〜0.1程度であることが好ましい。
【0033】
また、前記貴金属酸化物分散液を加熱する方法は特に制限されず、貴金属酸化物分散液を加熱することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、マイクロ波を照射して加熱する方法、ヒータ等で加熱する方法、レーザー等で加熱する方法等が挙げられる。また、このような加熱の条件としては特に制限されないが、40℃以上であって沸点以下の範囲(より好ましくは60℃以上であって沸点よりも10℃低い温度(沸点−10℃)以下の範囲)の温度に加熱することが好ましい。加熱温度が前記下限未満では、還元しないか、若しくは著しく反応が遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生成した粒子が凝集し焼結する傾向にある。
【0034】
また、このような加熱の方法の中でも、前記貴金属酸化物分散液にマイクロ波を照射する方法を採用することが好ましい。このようにして前記貴金属酸化物分散液にマイクロ波を照射して加熱することで、より短時間(数分)で貴金属ナノ材料を製造できる傾向にある。ここで、マイクロ波とは、波長が1〜100mm、周波数が0.3〜300GHzの電磁波をいう。また、前記貴金属酸化物分散液に照射するマイクロ波の周波数としては特に制限されないが、0.5〜28GHzの範囲にあることが好ましく、1〜10GHzの範囲にあることがより好ましい。さらに、このようなマイクロ波を照射する際の出力(強度)としては特に制限されないが、0.1〜100W/dmであることが好ましく、0.5〜2.5W/dmであることがより好ましい。
【0035】
また、このようなマイクロ波を照射するための装置としては特に制限されず、マイクロ波を照射することが可能な装置を適宜用いることができ、例えば、市販のマイクロ波発生装置等を用いてもよい。
【0036】
なお、本発明においては、加熱方法や加熱時間を変更することによって得られる貴金属ナノ材料の形態を変更させることができる。例えば、加熱方法としてマイクロ波を照射する方法を採用した場合には、得られる貴金属ナノ材料の形態をナノ微粒子、ナノチューブ又はナノロッド等の形態にすることが可能であり、ヒータ等を利用した通常の加熱方法を採用した場合には、得られる貴金属ナノ材料の形態をナノシート及びナノワイヤーの形態にすることが可能である。
【0037】
本発明においては、前記水系溶媒に貴金属担持用の担体を更に含有させ、前記担体に担持させた状態で貴金属ナノ材料を得てもよい。このような担体としては特に制限されず、本発明により得られる貴金属ナノ材料の用途に応じて適宜選択することが可能であり、例えば、排ガス浄化用の触媒として用いる場合にはアルミナ等を担体として用いることが挙げられ、燃料電池用の触媒として用いる場合にはカーボン等を担体として用いることが挙げられる。
【0038】
なお、本発明においては、前記水系溶媒に予め前記担体を含有させておき、かかる水系溶媒を用いて前記工程(I)及び工程(II)を施すことで、前記担体に高度に分散された状態で貴金属ナノ材料を担持させることができる。また、本発明においては、加熱により、担体自体も熱を吸収して発熱し、担体に貴金属が付着しやすい状態となるため、超音波のみで貴金属ナノ材料を形成させる従来の製造方法よりも、担体の表面に強固な付着状態で貴金属ナノ材料を担持させることができる。更に、本発明の貴金属ナノ材料の製造方法においては、得られる貴金属ナノ材料を、担体の表面上に高度に分散させた状態とすることが可能である。このように得られる貴金属ナノ材料を、担体の表面上に高度に分散された状態とすることが可能な理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。本発明においては、先ず、超音波を用いることで、水系溶媒中において貴金属酸化物が高度に分散された状態にされる。その分散液を加熱すると、貴金属酸化物は熱を吸収して貴金属に還元され、担体も熱を吸収する。バルクな貴金属は高融点を示す(例えばPtでは1769℃)が、貴金属は微細化されるとその表面効果によって融点降下が起こり、数百度の融点を示すようになる。そのため、貴金属ナノ材料は加熱による自身の熱の吸収による発熱と担体の発熱とによって溶融し、担体に担持される。また、超音波のみを照射して貴金属ナノ材料を形成した場合と比べて、本発明においては、完全に熱的な効果によって貴金属ナノ材料が担体に担持された状態で得られるため、その担持状態は強固で且つ均一となり、更には、高度に分散された状態となるものと推察される。
【0039】
また、本発明においては、界面活性剤や保護ポリマーを用いないで単分散の貴金属ナノ材料(特にナノ粒子)を製造することが可能であるが、界面活性剤や保護ポリマーを用いた場合には、得られる貴金属ナノ材料を導電性ペーストに好適に応用することができる。また、本発明において、前記溶媒として、水・エタノール系の水系溶媒を用いた場合においては、安全な材料系で作製されるので、得られる貴金属ナノ材料(特にナノ粒子)を食品添加剤に好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜2及び比較例1〜2において、超音波の照射方法及びマイクロ波の照射方法としては、以下のような方法を採用した。また、実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた貴金属ナノ材料の特性を評価するための方法としては、以下のような方法を採用した。
【0041】
<実施例1〜2及び比較例1〜2で採用された超音波並びにマイクロ波の照射方法>
[超音波の照射方法]
超音波の照射は、本田電子株式会社製のソノリアクター HSR−01超音波発生装置を用いて行った。なお、かかる装置において超音波は、振動板で発生し、ソノリアクター内の水を媒質として設置されたビーカー内に伝わる。また、その際にシンセサイザーで出力と周波数を調節することが可能であり、アンプを通してその出力は増幅される。なお、超音波を照射し続けるとキャビテーションの効果によってソノリアクター内の水温が上昇するが、常温の条件を保つために、冷却循環装置とソノリアクターを冷却ホースでつなぎ、一定温度の水を循環させた。
【0042】
[マイクロ波の照射方法]
マイクロ波照射は、四国計測工業株式会社製の簡易型マイクロ波反応装置SMW−086を用いて行った。なお、かかる装置は一般の電子レンジ型をしており、マグネトロンから発生したマイクロ波を装置内の試料に照射可能のものである。また、その際、コントロールボックスにより、出力を制御することが可能である。更に、反応装置上部には熱電対を挿入するための穴が開いており、熱電対で温度変化を測定できる。また、かかる装置に接続されたコンピューターで、この温度変化とマイクロ波照射時間を出力、記録することを可能とした。また、実施例1及び比較例2においては、熱電対を直接試料の入ったビーカーに侵入させることで溶媒の温度変化を測定し、溶媒が沸騰するまでのマイクロ波照射時間を測定した。
【0043】
<実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた貴金属ナノ材料の特性の評価方法>
[粒子径観察]
実施例1及び比較例1で得られた貴金属ナノ材料に関して、日立Filips社製のFEI TECNAI−20型デジタル電子顕微鏡による粒子径の観察を行った(図1(a)〜(b)及び図2(a)〜(b))。また、比較例1〜2で得られた貴金属ナノ材料に関して、LEO Electron Microscopy Ltd.製のLEO 912 OMEGA型透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて貴金属ナノ材料の粒子経の観察を行った(図6及び図7)。なお、観察用の試料は、貴金属ナノ材料の超音波分散を行い、その懸濁液15μlをコロジオン貼り付けメッシュに滴下し、乾燥したものを準備した。
【0044】
[相同定]
理学電機株式会社製のRINT−2000PC型X線回折装置(XRD)を用い、CuKα線を線源とし、グラファイトモノクロメータにより単色光化し、回折パターンの測定を行った。
【0045】
(実施例1)
超音波を照射した後、マイクロ波を照射して球状カーボンに担持された状態の貴金属ナノ材料(貴金属ナノ微粒子)を得た。すなわち、先ず、容積1dmのビーカーに0.15gのPtO(貴金属酸化物:高純度化学研究所)と、2.0gの球状カーボン(担体:Engineered Carbons Inc製の商品名「エンジニアドカーボンN990」)と、500mLのHO(溶媒)とを加えて、周波数43.3kHz、出力200Wで1時間、超音波照射し、貴金属酸化物が分散化した固液系(貴金属酸化物分散液)を得た。
【0046】
次に、前記貴金属酸化物分散液における溶媒に、モル分率([COH]/[COH]+[HO])が0.2となるようにCOH(還元剤:和光純薬工業株式会社製[濃度99.5%])を加え、周波数2.45GHz、出力約500Wで前記溶媒が沸騰するまで8分間マイクロ波を照射し、カーボン(担体)に担持された状態の貴金属ナノ材料を得た。
【0047】
(比較例1)
超音波のみを照射して球状カーボンに担持された状態の貴金属ナノ材料(貴金属ナノ微粒子)を得た。すなわち、容積1dmのビーカーに0.15gのPtO(貴金属酸化物:高純度化学研究所)と、2.0gの球状カーボン(担体:Engineered Carbons Inc製の商品名「エンジニアドカーボンN990」)と、500mLのHO(溶媒)及びCOH(還元剤:和光純薬工業株式会社製[濃度99.5%])とで調製された水系溶媒とを混合した固液系(混合液)を用い、この混合液に対して周波数43.3kHz、出力200Wで1〜24時間、超音波を照射し、カーボン(担体)に担持された状態の貴金属ナノ材料を得た。なお、COHのモル分率([COH]/[COH]+[HO])は0、0.01、0.05、0.1、0.25、1.0となるようにして、それぞれ貴金属ナノ材料を製造した。
【0048】
(比較例2)
マイクロ波のみを照射してカーボン(担体)に担持された状態の貴金属ナノ材料(貴金属ナノ微粒子)を得た。すなわち、容積1dmのビーカーに0.15gのPtO(貴金属酸化物:高純度化学研究所)と、2.0gの球状カーボン(担体:Engineered Carbons Inc製の商品名「エンジニアドカーボンN990」)と、500mLのHO(溶媒)及びCOH(還元剤:和光純薬工業株式会社製[濃度99.5%])とで調製された水系溶媒とを混合した固液系(混合液)を用い、この混合液に対して周波数2.45GHz、出力約500Wで溶媒が沸騰するまでマイクロ波を照射し、カーボン(担体)に担持された状態の貴金属ナノ材料を得た。なお、COHのモル分率([COH]/[COH]+[HO])は0、0.01、0.05、0.1、0.25、1.0となるようにして、それぞれ貴金属ナノ材料を製造した。
【0049】
<実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた貴金属ナノ材料の特性の評価>
[実施例1及び比較例1で得られた貴金属ナノ材料のTEM像の比較]
図1に、実施例1で得られた貴金属ナノ材料の電子顕微鏡写真(TEM像)を示し、図2に、COHのモル分率が1.0、超音波照射時間12時間の場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料のTEM像を示す。
【0050】
図1に示す結果からも明らかなように、超音波を照射した後、マイクロ波を照射して得られた貴金属ナノ材料(実施例1)においては、非常に短時間で、Pt微粒子をカーボン(担体)に担持された状態で得ることが可能であるということが確認された。また、実施例1で得られた貴金属ナノ材料は、超音波のみを照射して得られた貴金属ナノ材料(比較例1)と比べて、担体上での担持状態がより均一で微細となっており、Pt微粒子(貴金属ナノ材料)が高度に分散された状態で得られることが確認された。
【0051】
一方、図2に示す結果からも明らかなように、超音波を照射した場合には、その長時間の照射によりPt微粒子がカーボンに担持されていることが確認された。また、比較例1で得られた貴金属ナノ材料の担体の表面の担持状態に着目するとPt微粒子が凝集して担持されている箇所と、ほとんど担持されていない箇所が観察され、実施例1で得られた貴金属ナノ材料と比べてPt微粒子の担持状態が不均一であることが確認された。このような結果は、比較例1で得られた貴金属ナノ材料においては、Pt微粒子は凝集した方が表面エネルギーを放出して安定になるという性質をもつということ、並びに、カーボンが貴金属を担持し難い担体であるため新たな表面サイトにPt微粒子を担持するよりもPt微粒子の凝集の方が起こり易いことに起因するものと推察される。
【0052】
[比較例1及び比較例2で得られた貴金属ナノ材料について]
〈比較例1で得られた貴金属ナノ材料〉
OHのモル分率が1.0とした場合において比較例1で得られた貴金属ナノ材料に関して、超音波照射時間を変化させた際のXRDパターンを図3に示す。また、超音波照射時間を5時間とした場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料に関して、COHのモル分率ごとのXRDパターンを図4に示す。
【0053】
図3に示す結果からも明らかなように、超音波を1時間照射した場合においては、PtOの回折ピークとPtの回折ピークの両方が確認された。一方、超音波を5時間又は24時間照射した場合においては、Ptの回折ピークのみが観察され、PtOが完全に還元していることが確認された。また、図4に示す結果からも明らかなように、COHのモル分率が0.1以上であれば、PtOはPtまで還元されることが確認され、その濃度が高い程、十分に還元されることが確認された。このような結果から、超音波の照射のみによって貴金属ナノ材料を製造する場合においては、還元剤の濃度を非常に高くしても(COHのモル分率が1.0とした場合)、混合液中のPtOを完全にPt微粒子とするのに長時間を要することが分かった。従って、超音波の照射のみによって貴金属ナノ材料を製造する場合においては、効率的に貴金属ナノ材料を製造できないことが分かった。
【0054】
〈比較例2で得られた貴金属ナノ材料〉
比較例2で得られた貴金属ナノ材料に関して、COHのモル分率ごとのXRDパターン(マイクロ波の照射時間はそれぞれの溶媒が沸騰するまでの時間である)を図5に示す。図5に示すXRDパターンの結果から、COHのモル分率が0.05以上であれば、PtOはPtまで還元されることが確認された。
【0055】
〈比較例1及び比較例2で得られた貴金属ナノ材料〉
OHのモル分率を1.0とし、超音波の照射時間を10時間とした場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料のTEM像を図6に示し、COHのモル分率を1.0とした場合の比較例2で得られた貴金属ナノ材料のTEM像を図7に示す。
【0056】
図6及び7に示す結果からも明らかように、超音波で合成されたPt微粒子(比較例1)よりもマイクロ波で合成したPt微粒子(比較例2)の方が凝集された状態となっていることが確認された。このような結果から、マイクロ波の照射のみによって貴金属ナノ材料を製造する場合においては、高度な分散状態となるようにして貴金属ナノ材料を製造できないことが分かった。
【0057】
以上の結果から、超音波を照射した後に加熱する本発明の貴金属ナノ材料の製造方法を採用することで、COHの濃度が希薄であっても、短時間で貴金属微粒子を合成することが可能であるとともに、球状カーボンに、より均一な状態で、しかも高度に分散させて担持された状態で貴金属微粒子を得ることが可能であることが確認された。
【0058】
(実施例2)
超音波を照射した後、マイクロ波を照射して貴金属ナノ材料(貴金属ナノチューブ)を得た。すなわち、先ず、容積1dmのビーカーに、0.15gのPtO(貴金属酸化物:高純度化学研究所)と、500mLのHO(溶媒)で調製された溶媒とを混合した固液系(混合液)を加えて、周波数22.9kHz、出力100Wで1時間、超音波を照射して、貴金属酸化物が分散化した固液系(貴金属酸化物分散液)を得た。
【0059】
次に、前記貴金属酸化物分散に周波数2.45GHz、出力500Wでマイクロ波を3分間照射し、貴金属ナノ材料(貴金属ナノチューブ)を得た。
【0060】
実施例2で得られた貴金属ナノチューブを、日立Filips社製のFEI TECNAI−20型デジタル電子顕微鏡で観察した。実施例2で得られた貴金属ナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM像)を図8〜11に示す。図8〜11に示す結果からも明らかなように、本発明においては、簡便な方法で効率よく貴金属ナノチューブを製造できることが確認され、超音波の照射条件やマイクロ波の照射条件を変更することで、様々な形態の貴金属ナノ材料を製造することが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、高い安全性を備え、廃液処理を不要とすることができ、簡便な方法で貴金属微粒子や貴金属ナノチューブ等の貴金属ナノ材料を効率よく製造することが可能な貴金属ナノ材料の製造方法を提供することが可能となる。従って、本発明の貴金属ナノ材料の製造方法は、例えば、燃料電池用触媒、材料合成用触媒等に好適に利用することが可能な貴金属ナノ材料の製造方法として特に有用である。
【0062】
そして、本発明の貴金属ナノ材料の製造方法は、溶媒選択性が広く、例えば、水とエタノールとを組み合わせた水系溶媒を用いて貴金属ナノ材料を製造した場合には、安全な材料系で製造されており、残留イオンや有害な有機溶媒が混入されていないため、得られる貴金属ナノ材料を医療や食品添加剤等の用途に好適に使用できる。また、トルエン等の有機系溶媒を用いて貴金属ナノ材料を製造した場合には、貴金属ナノ材料を製造した状態で、そのまま導電性ペーストとして使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1で得られた貴金属ナノ材料の電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図2】COHのモル分率が1.0、超音波照射時間12時間の場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料の電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図3】COHのモル分率が1.0とした場合において比較例1で得られた貴金属ナノ材料に関して、超音波照射時間を変化させた際のXRDパターンを示すグラフである。
【図4】超音波照射時間を5時間とした場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料に関して、COHのモル分率ごとのXRDパターンを示すグラフである。
【図5】比較例2で得られた貴金属ナノ材料に関して、COHのモル分率ごとのXRDパターンを示すグラフである。
【図6】COHのモル分率を1.0とし、超音波の照射時間を10時間とした場合の比較例1で得られた貴金属ナノ材料の電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図7】COHのモル分率を1.0とした場合の比較例2で得られた貴金属ナノ材料の電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図8】実施例2で得られた貴金属ナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図9】実施例2で得られた貴金属ナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図10】実施例2で得られた貴金属ナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【図11】実施例2で得られた貴金属ナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM像)である。
【出願人】 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100107191
【弁理士】
【氏名又は名称】長濱 範明


【公開番号】 特開2008−24968(P2008−24968A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196596(P2006−196596)