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【発明の名称】 ニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法およびニッケル−鉄合金ナノ粒子
【発明者】 【氏名】石塚 雅之

【氏名】日高 宣浩

【要約】 【課題】磁気特性を付与するためのフィラーとして好適な、粒子同士の融着や粗大粒子化がないニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法、および、このニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって製造された平均一次粒子径が200nm以下のニッケル−鉄合金ナノ粒子を提供する。

【構成】本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記混合水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成することを特徴とするニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記還元剤は、水酸化アルカリおよびヒドラジンを含有してなることを特徴とする請求項1に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化アルカリの添加量は、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下、前記ヒドラジンの添加量は、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水溶液に還元剤を添加した後、この水溶液を50℃以上かつ80℃以下に加熱することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子であって、平均一次粒子径が200nm以下であることを特徴とするニッケル−鉄合金ナノ粒子。
【請求項6】
結晶構造が面心立方であり、その格子定数が0.353nm以上かつ0.363nm以下であることを特徴とする請求項5記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法およびニッケル−鉄合金ナノ粒子に関し、さらに詳しくは、樹脂など他の材料中にフィラーとして分散させて、この材料に磁性を付与するために好適であるとともに、粒子間に融着がなく、分散性に優れたニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法、および、このニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって製造された、平均一次粒子径が200nm以下のニッケル−鉄合金ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンや携帯電話などの電子機器においては、その性能を向上させるために、使用周波数帯がMHz帯からGHz帯へと移る高周波化が進展している。
このような高周波数帯を使用する電子機器に用いられる高周波デバイスの基板では、高周波デバイスの電磁場特性を制御するために、基板に磁性特性を付与する目的で、ニッケル、鉄、コバルトなどのような磁性を有する金属粒子が、エポキシ樹脂などの基板材料中に、フィラーとして分散されて用いられている。
【0003】
ところが、エポキシ樹脂などの基板材料中に、上記の金属粒子をフィラーとして単独で分散させると、個々の金属粒子の磁力線が独立して周りの空間に対して作用するから、この金属粒子をフィラーとして含む基板は、金属バルク体と比べて、磁気特性が極めて弱い。そのため、より磁気特性が強い金属粒子のフィラーが望まれている。さらに、この金属粒子のフィラーとしては、高周波のような極端な交流磁場に対応する必要性があるため、ヒステリシス損失が少ない、すなわち、保持力が小さくかつ最大磁化が大きく、軟磁性を有するものが望まれている。
【0004】
また、このような使われ方をする金属粒子としては、渦電流損失をなるべく小さくするために、GHz帯に用いる場合、平均一次粒子径が200nm以下のものが好ましい。しかしながら、従来の金属粒子は、例えば、アトマイズ法により製造したものは、微粒子と言われるものでも平均一次粒子径が10μm以上であり、気相還元法により製造したものは、平均一次粒子径が500nm〜2μm程度であり、渦電流損失を低減するためには平均一次粒子径が大き過ぎた。
さらに、実験室レベルでは、特殊な装置を用いた金属粒子の製造方法により、平均一次粒子径が20nm〜100nm程度の金属粒子が得られることも報告されている。しかし、この金属粒子の製造方法は、800℃以上の高温にて熱的に気相還元を行う方法であり、得られた金属粒子には、粒子同士の融着や焼結による結合が見られる。このように結合した金属粒子は、エポキシ樹脂などの基板材料中に分散させた場合にも分離しないので、実際には粒子径が200nm以上の粒子として振る舞うから、渦電流損失を低減させる働きを示さない。
【0005】
一方、ニッケル−鉄合金は、結晶構造が面心立方であり、一般にパーマロイと呼ばれ、そのバルク体は軟磁性材料として主要な材料の1つである。このニッケル−鉄合金は、例えば、鉄心、チョークコイル、ノイズフィルタ、インダクタおよび磁気ヘッドなどの電子回路部品や電波吸収体に用いられている。
そこで、このニッケル−鉄合金のように磁気特性の強い合金であり、平均一次粒子径が200nm以下、かつ、粒子同士の融着や焼結による結合がないナノ粒子が、上述のような金属粒子フィラーとして望まれている。
ニッケル−鉄合金粒子の製造方法としては、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法などのアトマイズ法が良く知られている。これらの方法は、高温にて溶融したニッケル−鉄合金を、水あるいはガスによって粉砕する方法であり、通常得られる粒子は、平均一次粒子径が1μm以上、かつ、粒度分布が大きなものであるから、このニッケル−鉄合金粒子は、GHz帯に用いた場合、渦電流損失が大きくなり不適である。
また、平均一次粒子径が比較的小さなニッケル−鉄合金粒子の製造方法としては、気相還元法を用いた製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この気相還元法を用いた製造方法は、ニッケルおよび鉄の単体、合金、あるいは化合物を蒸発させて気化した後、これらの気化したものを、水素中で還元しながら冷却することによって、粒子を生成させる方法である。
【特許文献1】特開2003−49203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、気相還元法を用いたニッケル−鉄合金粒子の製造方法は、微細な粒子を製造するためには、気化したニッケルおよび鉄の単体、合金、あるいは化合物の濃度を希薄にして還元、冷却をする必要があるため生産性に劣っていた。また、この製造方法では、気化したニッケルおよび鉄の単体、合金、あるいは化合物を冷却する際に、粒子同士の接触による融着や、粗大粒子の生成を防ぐことが困難であった。そのため、この製造方法により得られたニッケル−鉄合金粒子をフィラーとして基板材料中に分散させても、粒子間で電気的に接続している部分が多く発生するから、渦電流損失が大きくなり不適であった。
以上の状況から、高周波デバイスなどに用いられる基板材料に磁気特性を付与するためのフィラーとしてのニッケル−鉄合金粒子の製造方法として、平均一次粒子径が200nm以下であり、粒子同士の融着や粗大粒子の生成の原因となる高温プロセスを用いない製造方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、磁気特性を付与するためのフィラーとして好適な、粒子同士の融着や粗大粒子化がないニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法、および、このニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって製造された平均一次粒子径が200nm以下のニッケル−鉄合金ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記混合水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、粒子同士の融着や粒子の粗大化がないニッケル−鉄合金ナノ粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、前記還元剤が、水酸化アルカリおよびヒドラジンを含有してなることが好ましい。
【0011】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、前記水酸化アルカリの添加量が、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下、前記ヒドラジンの添加量が、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下であることが好ましい。
【0012】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、前記水溶液に還元剤を添加した後、この水溶液を50℃以上かつ80℃以下に加熱することが好ましい。
【0013】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子であって、平均一次粒子径が200nm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、結晶構造が面心立方であり、その格子定数が0.353nm以上かつ0.363nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によれば、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成するので、磁気特性を付与するためのフィラーとして好適な、結晶構造が面心立方であり、格子定数が0.353nm以上かつ0.363nm以下であり、平均一次粒子径が200nm以下のニッケル−鉄合金ナノ粒子を、工業的規模にて低製造コストで、効率的に製造することができる。
また、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加した後、高温に加熱することがないため、得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子は、粒子同士の融着や焼結がなく、磁気特性を付与するためのフィラーとして好適であり、また、水系溶媒中でも安定なことから汎用性に優れ、塗料やペーストにも用いることができる。
【0016】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子であって、平均一次粒子径が200nm以下であるので、粒子同士の融着や焼結がなく、磁気特性を付与するためのフィラーとして好適であり、また、水系溶媒中でも安定なことから汎用性に優れ、塗料やペーストにも用いることができる。
このような本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子を含む塗料やペーストは、磁性流体としての利用や、印刷技術を適用してチョークコイル、ノイズフィルタ、インダクタおよび磁気ヘッドなどの電子回路部品や電波吸収体に適用することができる。さらに、平均一次粒子径が微細なため、成形性にすぐれ圧粉磁心の原料として使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法、および、このニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって製造されたニッケル−鉄合金ナノ粒子の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、この水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成する方法である。
【0019】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法に用いられるニッケル塩としては、水溶性のものであれば特に限定されないが、例えば、塩化ニッケル(NiCl)、硝酸ニッケル(Ni(NO)、酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))、硫酸ニッケル(NiSO)などが挙げられる。
【0020】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法に用いられる鉄塩としては、水溶性のものであれば鉄の価数は2価でも3価でもよく、例えば、塩化第一鉄(FeCl)、塩化第二鉄(FeCl)、硝酸第一鉄(Fe(NO)、硝酸第二鉄(Fe(NO)、酢酸第一鉄(Fe(CHCO)、酢酸第二鉄(Fe(CHCO)、硫酸第一鉄(FeSO)、硫酸第二鉄(Fe(SO)などが挙げられる。
【0021】
このようなニッケル塩および鉄塩の水溶液を調製する際、ニッケル塩および鉄塩を溶解する純水の量は、金属イオン(ニッケルイオン(Ni)および鉄イオン(Fe))0.1molに対して、0.1L以上かつ2L以下が好ましい。
ニッケル塩および鉄塩を溶解する純水の量を、金属イオン(ニッケルイオン(Ni)および鉄イオン(Fe))0.1molに対して、0.1L以上かつ2L以下とするのが好ましい理由は、純水の量が0.1L未満では、還元剤によりこのニッケル塩−鉄塩水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを還元した際、ニッケル−鉄合金粒子の生成する量が少なく、粗大粒子化し易くなるからであり、一方、純水の量が2Lを超えると、ニッケル−鉄合金の結晶核の量が多くなり過ぎて、ニッケル−鉄合金粒子同士が近付き過ぎて成長するため、凝集が起こり易くなるからである。
【0022】
ニッケル塩と鉄塩との混合比率は、目的とするニッケル−鉄合金ナノ粒子の磁気特性に応じて適宜調節されるが、ニッケル−鉄合金ナノ粒子は、ニッケルの割合が多くなると保持力がより小さくなり、鉄の割合が多くなると飽和磁化がより大きくなる傾向にある。
【0023】
さらに、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法では、ニッケル塩および鉄塩を溶解する純水中に、メタノールやエタノールなどの水溶性のアルコールを10〜30体積%程度添加することが好ましい。このようにニッケル塩および鉄塩を溶解する純水中に水溶性のアルコールを所定量添加すると、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応の際、ニッケル−鉄合金の結晶核が生成し易くなるので好ましい。
【0024】
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法に用いられる還元剤としては、ニッケル塩−鉄塩水溶液中で還元力を発揮するものが用いられるが、例えば、ヒドラジン(N)と水酸化アルカリ、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩などが挙げられる。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法では、比較的強い還元力を得られることから、還元剤として、水酸化アルカリとヒドラジンを併用してなるものが好ましい。
【0025】
水酸化アルカリとヒドラジンを還元剤として使用した場合、水酸化アルカリの添加量が、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下が好ましく、5.5倍量以上かつ7倍量以下がより好ましい。
水酸化アルカリの添加量を、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下とした理由は、水酸化アルカリの添加量が5倍量未満では、ヒドラジンが十分に還元性を発揮するpH12以上の強アルカリ性に達しないからであり、一方、水酸化アルカリの添加量が10倍量を超えても、pHがあまり変わらないからである。
【0026】
また、水酸化アルカリとヒドラジンを還元剤として使用した場合、ヒドラジンの添加量が、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下が好ましく、5倍量以上かつ30倍量以下がより好ましい。
ヒドラジンの添加量を、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下とした理由は、ヒドラジンの添加量が2倍量未満では、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応が十分に進行しないからであり、一方、ヒドラジンの添加量が50倍量を超えても、未反応のヒドラジンが残るだけで生成するニッケル−鉄合金ナノ粒子に変化がないからである。
【0027】
また、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法では、ニッケル塩−鉄塩水溶液において、還元剤によるニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応の反応速度を高め、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を効率よく生成するためには、ニッケル塩−鉄塩水溶液に所定量の還元剤を添加した後、このニッケル塩−鉄塩水溶液を50℃以上かつ80℃以下に加熱することが好ましく、55℃以上かつ65℃以下に加熱することがより好ましい。
還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を加熱する温度が50℃未満では、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応の進行が緩慢となるため、ニッケル−鉄合金ナノ粒子の生成効率が悪くなる。一方、還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を加熱する温度が80℃を超えると、生成したニッケル−鉄合金ナノ粒子が酸化するおそれがある。
【0028】
また、ニッケル塩−鉄塩水溶液に所定量の還元剤を添加した後、このニッケル塩−鉄塩水溶液を50℃以上かつ80℃以下に加熱する時間を、1時間以上かつ3時間以下とすることが好ましく、1時間以上かつ2時間以下とすることがより好ましい。
【0029】
このように、ニッケル塩−鉄塩水溶液に所定量の還元剤を添加した後、このニッケル塩−鉄塩水溶液を50℃以上かつ80℃以下の温度範囲にて、1時間以上かつ3時間以下、加熱することにより、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応が開始すると、黒色の粒子が生成する。
また、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応が均一に進行するようにするために、還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を、攪拌しながら加熱することが好ましい。
【0030】
このようにして生成した黒色の粒子から、必要に応じて、不純物イオンを除去した後、乾燥してニッケル−鉄合金ナノ粒子が得られる。
ニッケル−鉄合金ナノ粒子から不純物イオンを除去する方法としては、例えば、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を純水中に分散させた後、ろ過する工程を繰り返す方法が挙げられる。
【0031】
このような本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によれば、還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を加熱する温度が最高でも80℃であるので、粒子同士の融着や焼結による結合が生じることがなく、平均一次粒子径が200nm以下の微細なニッケル−鉄合金ナノ粒子を、工業的規模にて低製造コストで、安全かつ効率よく製造することができる。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られた、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、粒子同士の融着や焼結による結合が生じることがなく、平均一次粒子径が200nm以下であることから、エポキシ樹脂などの基板材料中にフィラーとして分散した際、GHz帯の表皮厚み以下の粒子径で分散するため、高周波がフィラー内に侵入して損失する渦電流損失が小さくなる。
【0032】
また、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によれば、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を、ニッケル塩−鉄塩水溶液中に均一に溶解しているニッケルイオンと鉄イオンから生成するので、得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子には、ニッケル原子と鉄原子が、面心立方(face−centered cubic structure)構造の同一の結晶構造内に含まれている。そして、このニッケル−鉄合金ナノ粒子の結晶の格子定数は、0.353nm以上かつ0.363nm以下である。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られた、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、上記のような結晶構造をなしているから、ニッケルや鉄のような金属単体よりも、結晶異方性や磁歪が小さく、保持力が小さく、最大磁化が大きな軟磁性を示す。したがって、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、エポキシ樹脂などの基板材料中にフィラーとして分散した際、ヒステリシス損失が小さく、優れた磁気特性を示す。
【0033】
また、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、塗料やペーストに添加し、磁性流体として利用することもできる。また、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子を添加した塗料やペーストは、印刷技術を用いてしてチョークコイル、ノイズフィルタ、インダクタおよび磁気ヘッドなどの電子回路部品や電波吸収体に適用することができる。さらに、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、平均一次粒子径が小さいので成形性に優れるから、圧粉磁心の原料として用いることもできる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
「実施例1」
塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO、特級試薬、関東化学社製)16.6gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl・4HO、特級試薬、関東化学社製)4.0gとを、純水165mLとメタノール100mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N・HO、特級試薬、関東化学社製)135gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて1時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
【0036】
得られた微粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、ニッケルと鉄の合金粒子であることが分かった。この微粒子は、結晶構造が面心立方をなすことも確認された。また、(111)面のピーク角度より格子定数を算出したところ、0.3551nmであった。
また、このニッケルと鉄の合金粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の飽和磁化を測定したところ93emu/gであった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の電子顕微鏡像(図1参照)を得、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径は160nmであった。
また、図1に示す電子顕微鏡像から、このニッケルと鉄の合金粒子は、粒子同士の融着や焼結による結合がないことが確認された。
【0037】
「実施例2」
塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO、特級試薬、関東化学社製)9.6gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl・4HO、特級試薬、関東化学社製)9.8gとを、純水265mLに溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N・HO、特級試薬、関東化学社製)135gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて1時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
【0038】
得られた微粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、ニッケルと鉄の合金粒子であることが分かった。この微粒子は、結晶構造が面心立方をなすことも確認された。また、(111)面のピーク角度より格子定数を算出したところ、0.359nmであった。
また、このニッケルと鉄の合金粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の飽和磁化を測定したところ104emu/gであった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の電子顕微鏡像(図1参照)を撮影し、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径は180nmであった。
【0039】
「比較例1」
塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO、特級試薬、関東化学社製)21.4gを、純水165mLとメタノール100mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、微粒子を生成した。
得られた微粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、ニッケル粒子であることが分かった。この微粒子は、結晶構造が面心立方をなすことも確認された。また、(111)面のピーク角度より格子定数を算出したところ、0.352nmであった。
また、このニッケル粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケル粒子の飽和磁化を測定したところ48emu/gであり、上記の実施例1および2よりもはるかに低い値であった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケル粒子の電子顕微鏡像を撮影し、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケル粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケル粒子の平均一次粒子径は160nmであった。
【0040】
「比較例2」
気相還元法により生成した、市販の鉄粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、この微粒子は、結晶構造が体心立方をなすことが確認された。
また、この鉄粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、この鉄粒子の飽和磁化を測定したところ70emu/gであり、上記の実施例1および2よりもはるかに低い値であった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、この鉄粒子の電子顕微鏡像(図2参照)を撮影した結果、この鉄粒子は、粒子同士が融着して結合して繋がっており、球状の粒子形状を維持していないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1で得られた微粉末の透過型電子顕微鏡像である。
【図2】本発明の比較例2で得られた微粉末を透過型電子顕微鏡像である。
【出願人】 【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−24961(P2008−24961A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195583(P2006−195583)