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中空金属体及びその製造方法 - 特開2008−24958 | j-tokkyo
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【発明の名称】 中空金属体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】阿部 正広

【氏名】板谷 宏

【氏名】新田 稔

【氏名】小川 厚

【氏名】福田 泰隆

【要約】 【課題】爆裂痕の無い良好な外表面を有する中空金属体の製造方法を提供する。

【構成】焼結金属からなる中空金属体の製造方法であって、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結金属からなる中空金属体の製造方法であって、
中心核物質の外表面に、金属酸化物の粉末原料と、結合剤とを含有する溶液を塗布した後、乾燥させることにより、前記中心核物質の外表面に、前記粉末原料の被覆層を形成する被覆工程と、該粉末原料の被覆層を有する中心核物質を、大気中または還元性ガスを含有しない不活性ガス雰囲気中で、250〜400℃の温度範囲で加熱し、前記中心核物質を熱分解・気化により消失させ、残存した前記被覆層による中空状の殻体を得る中心核物質の熱分解・気化工程と、該熱分解・気化工程で得られた殻体に、大気中または酸化性ガス雰囲気中で、800〜1100℃の温度範囲で加熱する焙焼工程と、該焙焼工程を経た殻体を、水素および/または炭素を含んだ還元性ガス雰囲気中で、1000〜1300℃の温度範囲で加熱して還元・焼結する還元・焼結工程を有することを特徴とする中空金属体の製造方法。
【請求項2】
焼結金属からなる中空金属体の製造方法であって、
中心核物質の外表面に、金属酸化物の粉末原料と、結合剤とを含有する溶液を塗布した後、乾燥させることにより、前記中心核物質の外表面に、前記粉末原料の被覆層を形成する被覆工程と、該粉末原料の被覆層を有する中心核物質を、大気中または還元性ガスを含有しない不活性ガス雰囲気中で、250〜400℃の温度範囲で加熱し、前記中心核物質を熱分解・気化により消失させ、残存した前記被覆層による中空状の殻体を得る中心核物質の熱分解・気化工程と、該熱分解・気化工程で得られた殻体に、大気中または酸化性ガス雰囲気中で、800〜1100℃の温度範囲で加熱する焙焼工程と、該焙焼工程で得られた殻体を、0.1〜1mol/リットルのリン酸イオンを含有する水溶液に浸漬した後、乾燥する浸漬・乾燥工程と、該浸漬・乾燥工程で得られた殻体を水素および/または炭素を含んだ還元性ガス雰囲気中で、1000〜1300℃の温度範囲で加熱して還元・焼結する還元・焼結工程を有することを特徴とする中空金属体の製造方法。
【請求項3】
前記粉末原料が、FeあるいはFe34の一つ以上からなって、その合計の含有量が98mass%以上の酸化鉄粉、または、Feと合金成分の酸化物粉の合計が98mass%以上の合金鋼酸化物粉から選ばれる一種または二種以上の粉末からなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の中空金属体の製造方法。
【請求項4】
前記粉末原料の比表面積径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空金属体の製造方法。
【請求項5】
前記粉末原料が、酸化鉄粉および/または合金鋼酸化物粉と、銅粉末、ニッケル粉末、リン粉末、酸化銅粉末、酸化ニッケル粉末、五酸化リン粉末、フェロカッパー粉末、フェロニッケル粉末、フェロリン粉末、モリブデン粉末および三酸化モリブデン粉末から選ばれる一種または二種以上の粉末とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空金属体の製造方法。
【請求項6】
前記中空金属体の成分組成が、mass%で、P:0.01〜1%、Cu:0.5〜5%、Ni:0.2〜10%およびMo:0.2〜10%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であり、かつ該中空金属体の焼結層の空隙率が10vol.%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空金属体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の製造方法によって製造された中空金属体であって、該中空金属体の成分組成が、mass%で、P:0.01〜1%、Cu:0.5〜5%、Ni:0.2〜10%およびMo:0.2〜10%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であり、かつ該中空金属体の焼結層の空隙率が10vol.%以下であることを特徴とする中空金属体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、中空金属体を粉末焼結法により安価に製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空金属球の製造方法としては、粉体を焼結する方法、基体に吹き付け分散処理する方法、基体にメッキする方法、溶湯から直接製造する方法、金属を発泡させる方法等がある。このうち、1つ1つの独立した中空金属球単体の製造方法として、粉体を焼結する方法がある。この製造方法による場合は、原料粉を中空金属球単体に成形するために何らかの形で基体となる中心核物質を使用する。そして、この中心核物質を、中空金属球単体の製造途中工程で除去する方法と、製造された中空金属球単体の内部に残存させる方法とがある。
本発明は、中空金属球単体の製造途中工程で中心核物質を除去する製造方法に関する。特許文献1には、酸化金属等の金属化合物を開始材として、支持要素上にその包囲層を設置し、この未加工体を1500℃以下の還元雰囲気中で加熱処理し、支持要素及び包囲層中の結合剤を熱分解し、かつ還元、焼結する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、以下の方法が開示されている。ほぼ球形状の発泡剤粒子が、流動反応器内で攪拌されながら、固体粉末/結合剤層にて被覆される。被覆された発泡剤粒子は、乾燥後400〜500℃の温度で攪拌されながら熱分解されることにより、被覆層が空洞を囲む殻になる。さらに1000〜1500℃の温度で攪拌されながら熱処理されることにより焼結層が形成される旨の中空金属球の製造方法である。
【0004】
しかしながら、実際の製造工程においては、中心核物質および被覆層中に含まれる結合剤を分解・蒸発させた後の焼結前の中間製品(以下、未焼結中空球)は、殻の厚さが非常に薄く、脆弱で、細心の注意をもって取り扱わないと、球殻が容易に破砕してしまう。そのため、健全な最終製品を得ることができず、このままの方法では、量産には適していないことが分かった。特許文献2には、粉末層を厚く被覆することによって、未焼結中空球の強度を確保する方法が開示されているが、単に被覆層を厚くするのでは、出来上がった中空金属球のかさ比重が大きくなりすぎて、軽量・低比重であるという中空金属球の利点が失われてしまう。また、同特許文献2には、中心核物質を「軽い酸化条件の下で熱分解する」ことにより、金属粉末粒子表面の強化酸化皮膜が得られ、未焼結中空球の強度を高める方法が開示されているが、本願発明が対象としているような酸化金属粉を開始材料とした場合には、そのような効果が期待できず、依然としてして、未焼結中空球の強度が十分でないという問題が残されていた。
【特許文献1】特表2003−531287号公報
【特許文献2】特開昭64−56137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたもので、割れや欠損部が少なく、良好な形状を有する中空金属体とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その課題を解決するために、以下のような構成をとる。
(1)第一の発明に係る中空金属体の製造方法は、焼結金属からなる中空金属体の製造方法であって、
中心核物質の外表面に、金属酸化物の粉末原料と、結合剤とを含有する溶液を塗布した後、乾燥させることにより、前記中心核物質の外表面に、前記粉末原料の被覆層を形成する被覆工程と、該粉末原料の被覆層を有する中心核物質を、大気中または還元性ガスを含有しない不活性ガス雰囲気中で、250〜400℃の温度範囲で加熱し、前記中心核物質を熱分解・気化により消失させ、残存した前記被覆層による中空状の殻体を得る中心核物質の熱分解・気化工程と、該熱分解・気化工程で得られた殻体に、大気中または酸化性ガス雰囲気中で、800〜1100℃の温度範囲で加熱する焙焼工程と、該焙焼工程を経た殻体を、水素および/または炭素を含んだ還元性ガス雰囲気中で、1000〜1300℃の温度範囲で加熱して還元・焼結する還元・焼結工程を有することを特徴とする中空金属体の製造方法である。
(2)第二の発明に係る中空金属体の製造方法は、焼結金属からなる中空金属体の製造方法であって、
中心核物質の外表面に、金属酸化物の粉末原料と、結合剤とを含有する溶液を塗布した後、乾燥させることにより、前記中心核物質の外表面に、前記粉末原料の被覆層を形成する被覆工程と、該粉末原料の被覆層を有する中心核物質を、大気中または還元性ガスを含有しない不活性ガス雰囲気中で、250〜400℃の温度範囲で加熱し、前記中心核物質を熱分解・気化により消失させ、残存した前記被覆層による中空状の殻体を得る中心核物質の熱分解・気化工程と、該熱分解・気化工程で得られた殻体に、大気中または酸化性ガス雰囲気中で、800〜1100℃の温度範囲で加熱する焙焼工程と、該焙焼工程で得られた殻体を、0.1〜1mol/リットルのリン酸イオンを含有する水溶液に浸漬した後、乾燥する浸漬・乾燥工程と、該浸漬・乾燥工程で得られた殻体を水素および/または炭素を含んだ還元性ガス雰囲気中で、1000〜1300℃の温度範囲で加熱して還元・焼結する還元・焼結工程を有することを特徴とする中空金属体の製造方法である。
【0007】
(3)第三の発明に係る中空金属体の製造方法は、粉末原料が、FeあるいはFe34の一つ以上からなって、その合計の含有量が98mass%以上の酸化鉄粉、または、Feと合金成分の酸化物粉の合計が98mass%以上の合金鋼酸化物粉から選ばれる一種または二種以上の粉末からなることを特徴とする第一の発明あるいは第二の発明に記載の中空金属体の製造方法である。
【0008】
(4)第四の発明に係る中空金属体の製造方法は、原料粉末の比表面積径が1.0μm以下であることを特徴とする第一〜第三の発明のいずれかに記載の中空金属体の製造方法である。
【0009】
(5)第五の発明に係る中空金属体の製造方法は、粉末原料が、酸化鉄粉および/または合金鋼酸化物粉と、銅粉末、ニッケル粉末、リン粉末、酸化銅粉末、酸化ニッケル粉末、五酸化リン粉末、フェロカッパー粉末、フェロニッケル粉末、フェロリン粉末、モリブデン粉末および三酸化モリブデン粉末から選ばれる一種または二種以上の粉末とからなることを特徴とする第一〜第五の発明のいずれかに記載の中空金属体の製造方法である。
【0010】
(6)第六の発明に係る中空金属体の製造方法は、中空金属体の成分組成が、mass%で、P:0.01〜1%、Cu:0.5〜5%、Ni:0.2〜10%およびMo:0.2〜10%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であり、かつ該中空金属体の焼結層の空隙率が10vol.%以下であることを特徴とする第一〜第五の発明のいずれかに記載の中空金属体の製造方法である。
【0011】
(7)第七の発明は、第一〜第六の発明のいずれかに記載の製造方法によって製造された中空金属体であって、該中空金属体の成分組成が、mass%で、P:0.01〜1%、Cu:0.5〜5%、Ni:0.2〜10%およびMo:0.2〜10%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であり、かつ該中空金属体の焼結層の空隙率が10vol.%以下であることを特徴とする中空金属体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、球殻に割れ等の欠陥の少ない、形状の良好な中空金属体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、中空金属体の製造方法は、中心核への粉末原料の被覆、所定の温度、雰囲気でその後の中心核物質の熱分解・気化、焙焼、還元・焼結の各工程を処理することにより、割れや欠損部が少なく、良好な形状を有する中空金属体が製造できることを見出し、本発明を完成させたものである。さらに、上記焙焼処理工程と還元・焼結工程の間において、リン酸イオンを含有する溶液に当該殻体を浸漬することによって、より強度の高い優れた球殻を製造できることを見出し、第二の発明を完成させたものである。
【0014】
本発明の製造工程について図1を参照して具体的に説明する。
【0015】
1.製造工程について
(1)中心核物質への粉末原料の被覆工程
中心核物質となる材料は、250〜400℃の温度範囲で熱分解し、気化する機能を有すればよく、例えば、樹脂では、発泡ポリマー、プラスチック等が好適であり、廃プラスチックを使うこともできる。また、その形状は、最終製品の形状と類似していればよく、球状に限定されるものでもなく、ラグビーボール状、円筒形、サイコロ形状であってもよい。寸法は、1〜20mmが好適である。さらに、衝撃吸収材への適用する場合、あるいは、比重を1以下とする軽量用途においては、球の外殻厚さに依存するが、寸法は少なくとも2mm以上が必要で、また、製造時の殻の破損を回避するためには、球の直径相当で8mm以下が好ましい。
【0016】
粉末原料は、酸化鉄粉が主に使用されるが、金属鉄粉と酸化鉄粉の混合粉を用いても良い。また、酸化鉄粉の代わりに合金鋼の酸化物粉、金属鉄粉の代わりに合金鋼粉を用いた組合せも可能である。粉末中の鉄の純度(酸化物においては、総重量に対する酸化鉄の比率)は98mass%以上、好ましくは99mass%以上であれば、焼結後の強度が高い中空鉄球を得ることができる。また、これら粉末原料の比表面積径は1.0μm以下、より好ましくは、0.8μm以下とすることも、より高い強度を有する中空鉄球を得る上で大切な条件である。
【0017】
更に、酸化鉄粉および/または合金鋼酸化物粉に、銅粉末、ニッケル粉末、リン粉末、酸化銅粉末、酸化ニッケル粉末、五酸化リン粉末、フェロカッパー粉末、フェロニッケル粉末、フェロリン粉末、モリブデン粉末および三酸化モリブデン粉末の中から選ばれる一種または二種以上の粉末を焼結助剤として添加することにより、より強度の高い中空鉄球を得ることができる。酸化鉄粉等への具体的添加量としては、リンは1mass%以下、銅は5mass%以下、ニッケルは10mass%以下、モリブデンは10mass%以下とするのがよい。金属原料粉末としては、鉄をベースに記述したが、製品の用途によりNi、Cu、Cr、Mo、Al、Ti等の金属粉末を適宜使用することができる。
【0018】
粉末を中心核物質の表面に被覆する際には、バインダーとなる結合剤も重要な役割を担っている。結合剤としては、ポリビニルアルコールなどのビニールアルコール共重合体、デキストリン、糊、コンスターチなどの澱粉糊類、アラビアガム、カゼイン、膠などの水溶性樹脂が使用される。
【0019】
上記の原材料を用いて、中心核物質の外表面に粉末原料と結合剤を分散させた分散溶液をドラムや流動層を用いて均一に被覆する。被覆層の乾燥時の厚さは、0.01mm〜1mm、好ましくは、0.04mm〜0.2mmであるのが良い。結合剤の比率は1〜1.5mass%を含有するのが良い。
【0020】
次に、上記の被覆層は、中心核物質の熱収縮が開始しない温度以下で乾燥を行うのがよい。乾燥は、流動層を用いて行ってもよく、乾燥炉内に静置してもよい。また、外殻被覆層が生乾きのままで昇温すると、中心核物質が急速に収縮し、外殻にひび割れ等を生じるので、十分に乾燥することが大切である。
【0021】
(2)中心核物質の熱分解・気化工程
次に、250〜400℃の温度範囲で、中心核物質を熱分解・気化して、中心核物質を消失させる。この温度域では被覆層である外殻の還元・焼結が生じないように加熱炉の雰囲気は、大気中または還元性ガスを含有しない不活性ガス雰囲気とする。外殻の還元・焼結が、中心核の熱分解と同時進行すると、中心核物質の熱分解ガスが殻に閉じ込められ、その圧力で殻が爆裂する恐れがあるので、加熱温度はなるべく低温の方がよい。本工程では、被覆層である外殻にひび割れ等を生じたり、外殻が爆裂したりしないように、また、中心に残渣を残さないように、外殻の外表面が焼結を開始する前にガスを放散させる必要がある。
【0022】
従って、乾燥後、250℃まで昇熱した後、400℃までは、たとえば30℃刻みで昇温を中断し、10分以上その温度に保持することによって、極力均熱状態を維持するか、昇温速度を0.5℃/分〜10℃/分程度と十分遅くして、中心核物質の熱分解・気化を徐々に進行させるのがよい。
【0023】
本工程により、図2の(b)に示すように、残存した被覆層による中空状の殻体が得られる。また、図3に発泡ポリマーを単独で用いた場合の各加熱温度に保持したときの直径変化、重量変化を示す。これによると、100℃以上になると発泡ポリマーの溶融が始まり、200℃前後でほぼ全量溶融する。そして、250℃前後以上で気化がはじまり、400℃前後で気化が完了する。従って、中心核材を選択することにより、400℃以下で被覆層に覆われた中空状の殻体を得ることができる。
【0024】
(3)焙焼工程
次に、前記工程で得られた殻体を、大気中または酸化性ガス雰囲気中で800〜1100℃の温度範囲に加熱し、さらに必要により保持すること(焙焼処理)により、殻体の強度を高め、形状保形力を向上させる。前記熱分解・気化工程により中心核が消失した殻体は、金属酸化物の薄い被膜からなり、形状保持力が非常に弱い。従って、この球殻を次工程である還元・焼結工程の作業用加熱炉に搬送・装荷する作業時に、疵が付いて損壊したり、破砕したりして、健全な金属球を得ることができず、歩留まり(全ての金属球数に占める健全な金属球数の比率)が低くなる。
【0025】
(4)還元・焼結工程
前記焙焼工程を終了した殻体を、水素および/または炭素を含んだ還元性ガス雰囲気中で、1000〜1300℃の温度範囲に昇温して、酸化された金属の還元を行う。同時に、金属粒同士の焼結も進行し、中空金属体としての強度が付与されるとともに、衝撃力吸収性に優れた中空金属体が得られる。
【0026】
還元性ガスは、一般的に知られるH、CO、CH等が考えられる。また、製鉄プロセスで副成される「コークス炉ガス」中には、Hが50vol.%、CHが30vol.%程度含まれており、また、燃料として知られる天然ガス中には、CHが90vol.%、Hが5vol.%程度含まれ、プロパン、ブタンなども還元性ガスとして使用される。鉄粉表面には分解した炭素が被覆し、内部へ浸炭することにより還元も進む。さらに、分解したHが還元を更に加速させる。実用上はあえて純粋メタンを使用する必要も無く、コークス炉ガス、あるいはコークス炉ガス中のCOなどの不要成分を除いて、CH濃度を高めたものを還元性ガスとして使用することが出来る。また、還元性ガス中に水分などが含まれると、還元直後に再酸化される懸念があり、露点が−20℃以下のガスを供給するのが好ましい。
【0027】
還元・焼結温度の下限を1000℃とした理由は、その温度以下では十分な焼結強度が得られず、また、上限温度を1300℃とした理由は、1300℃を超えると、焼結後の結晶粒径が粗大になりすぎて、焼結金属球の強度、特に衝撃吸収能力が損なわれるためである。
【0028】
(5)リン酸水溶液浸漬工程
前記第3項に記載の焙焼工程の後、乾燥した球殻を0.1〜1mol/リットルのリン酸イオンを含有する水溶液(例えばリン酸水溶液)に浸漬し、未焼結中空球にリンを浸透させ、これを乾燥の後、還元・焼結することにより、より強固な中空鉄球を得ることができる。これは、還元後の焼結過程において、リンが鉄と反応することによって低融点の化合物を生成し、出現した液相により焼結を促進することによるものである。
【0029】
特に、焙焼工程と組み合わせることにより、未焼結中空球内へのリンの浸透を促すことができ、非常に効率的である。焙焼を行っていない未焼結中空球では、濡れ性が悪く、リン酸イオン含有水溶液の浸透がほとんど起こらず、均一なリンの添加が難しい。リン酸イオンの濃度が0.1mol/リットル未満では、リンの濃度が小さ過ぎ、リン添加の効果が無い。また、リン酸イオンの濃度が1mol/リットルを超えると、リンの濃度が大きくなり過ぎて、還元中空鉄球の強度が高くなり過ぎ、脆くなるため、実用的でない。リン酸水溶液の変わりに、リン酸カリウムあるいはリン酸ナトリウムの水溶液を用いてもよい。
【0030】
2.原料鉄粉の純度、粒径について
原料鉄粉中のFe含有量98mass%以上、酸化鉄粉中のFe23あるいはFe34の合計含有量が98mass%以上、合金鋼酸化粉中のFeと合金成分の酸化物粉の合計が98mass%以上あると、不純物成分が少ないので、焼結がより強固なものとなり、高い中空金属球強度が得られる。また、比表面積径を1.0μmとしたのも、より高い燒結強度が得られるようにするためで、より好ましくは、0.8μm以下とするのが良い。
【0031】
3.成分組成の限定理由
原料粉末に添加する、焼結助剤の添加量の限定理由を以下に述べる。なお、mass%は、出来上がった中空金属体中の各元素のmass%を表す。
【0032】
P:0.01〜1mass%
下限を0.01mass%とした理由は、0.01mass%未満では、焼結を促進する効果が得られないためであり、上限を1mass%とした理由は、1mass%を超えて添加しても、焼結促進の効果が飽和するだけでなく、焼結体が硬くなりすぎ、脆くなるためである。なお、請求項2に記載されているような、リン酸イオンを含有する水溶液に浸漬する工程を経た中空金属球中のリン濃度は、粉末に添加したリンとリン酸イオン水溶液から吸収されたリンの合計の濃度を指していることは、言うまでもない。
【0033】
Cu:0.5〜5mass%
下限を0.05mass%とした理由は、0.5mass%未満では、焼結を促進する効果が得られないためであり、上限を5mass%とした理由は、5mass%を超えて添加しても焼結促進効果が飽和するためである。
【0034】
Ni:0.2〜10mass%
下限を0.05mass%とした理由は、0.2mass%未満では、焼結を促進する効果が得られないためであり、上限を10mass%とした理由は、10mass%を超えて添加しても焼結促進効果が飽和するためである。
【0035】
Mo:0.2〜10mass%
下限を0.2mass%とした理由は、0.2mass%未満では、焼結を促進する効果が得られないためであり、上限を10mass%とした理由は、10mass%を超えて添加しても焼結促進効果が飽和するためである。
【0036】
4.焼結層の空隙率について
焼結層の空隙率を10vol.%以下とする理由を以下に述べる。
【0037】
空隙率は、成形体の機械的性質、特に強度や衝撃吸収能に影響を及ぼし、空隙率が10%を超えると、強度や衝撃吸収能の劣化が大きくなるので、空隙率の下限を10%以下とした。なお、より好ましくは5%以下とするのが良く、この範囲では、機械的性質は更に向上し、空隙率2%以下ではほぼ飽和する。
【実施例1】
【0038】
純度99.5mass%で、比表面積径が0.7μmの酸化鉄(Fe)200gを原料として用い、5mass%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液50gにその1mass%程度市販洗剤を界面活性剤として使用し、ヘンシェル式ミキサー中で、直径5mmの発泡スチロール(中心核物質)を混合し、発泡スチロールの表面に酸化鉄粉を被覆した。これを、まず大気中にて60℃で予備乾燥し、さらに120℃まで加熱して本乾燥を行った。こうすることにより、外殻に形成された酸化鉄紛層から、結合剤中の水分の急速加熱による突沸を防止し、外殻のひび割れを防止した。
【0039】
続いて、大気中で5℃/分で昇熱し、280℃、330℃、360℃、400℃で、各30分均熱保持し、内部の発泡スチロールの熱分解・気化を行った。引き続き、同じ炉内にて、大気中で5℃/分の昇温速度にて表1に示す所定の焙焼温度(700℃、850℃、1000℃)に昇温し、1時間保持後、冷却した。本発明の温度範囲である850℃、1000℃にて加熱して得られた殻体(未還元中空体)は、爆裂を起こすことなく、また、割れや欠損がほとんど認められない状態で、処理を終了することができた。因みに、常温から一気に5℃/分で700℃まで加熱したケースでは、ひび割れや爆裂が起き、良好な形状の中空体を得ることはできなかった。
【0040】
次に、この殻体をNに50vol.%のHを加え、表1に示す所定の還元・焼結温度(850℃、1100℃、1450℃)まで加熱し、その温度で1時間保持し、その後、Hを停止しNのみを供給して炉冷を行った。室温に下がったところで、炉から取り出し、以下の評価試験を行った。ランダムに30球を選び、破損したもの、割れが認められるもの、健全な球に分けてそれぞれの個数を測定し、良品率=(健全な球の数)÷30により良品率を計算した。中心核物質の熱分解・気化処理後、焙焼処理を施さなかったものは、ひび割れや破損が著しく、良品率が低かった。
【0041】
また、各条件とも、別途ランダムに選んだ5球について、光学顕微鏡に付設された画像解析装置を用いて、面積法により焼結層の空隙率を測定した。更に、別途ランダムに選んだ10球の粒単体の押潰荷重を圧縮試験機により測定した。製造条件が本発明範囲であるものは、空隙率が低く、しかも押潰荷重が高いことが分かる。
実施例1における試験結果を表1に示す。
【0042】
【表1】


【0043】
熱分解・気化工程において、本発明の範囲外である500℃×1Hrに保持したNo.1−7では、被覆層がひび割れたり、爆裂が発生したりして、球状の殻体を得ることが難しかった。一方、本発明の温度範囲で熱分解を行ったNo.1−1〜No.1−6では、外観形状が良好な殻体が得られた。
【0044】
次に、外観形状が良好な殻体が得られたNo.1−2〜No.1−6について、表1に示す700℃、850℃、1000℃の各温度で焙焼処理を行い、引き続き、850℃、1100℃、1450℃の各温度にて還元・焼結処理を行った。焙焼処理の効果や還元・焼結温度の効果を確認するために、焙焼処理を行わなかったもの(No.1−1)、1450℃にて還元・焼結処理を行ったもの(No.1−6)を比較材とした。
【0045】
No.1−1は、焙焼処理を行わず、還元・焼結処理を行ったもので、健全な中空金属球の押潰荷重は、焙焼処理を行ったものと差異は認められなかったが、良品率が本発明例に比べて極端に低かった。本発明の範囲を外れた700℃で焙焼処理を行ったNo.1−2は、No.1−1と同様に本発明例と同等の押潰荷重が得られているものの、良品率がNo.1−1と同様に低く、実用上、問題がある。
【0046】
本発明の条件で熱分解・気化処理、焙焼処理、および還元・焼結処理を行ったNo.1−4、No.1−5は、良品率、押潰荷重とも良好な値が得られており、本発明の有効性が実証されている。還元・焼結温度が本発明範囲の下限未満の850℃であるNo.1−3、および、本発明範囲の上限を超えた1450℃であるNo.1−6は、いずれも良品率は本発明例と変わらないものの、押潰荷重が本発明例に比べ低くなっている。ミクロ組織観察の結果、前者は、焼結が未完了で空隙が多数残存していること、また、後者は、高温焼結によるミクロ組織の粗大化が原因であると考えられた。焼結温度が800℃から1100℃の本発明の範囲であるNo.1−4およびNo.1−5は、良品率が97%で、かつ押潰荷重も88〜98N(9〜10kgf)の範囲にあり、衝撃吸収材として十分な強度が得られた。
【実施例2】
【0047】
実施例2では、酸化鉄(FeとFe34の混合物)の純度が99mass%、98mass%、97mass%、95mass%の4種類の粉末原料を用いて、実施例1に示した試験方法により、酸化鉄粉の純度の影響を調べた。比表面積径は、いずれも0.7μmであった。焙焼温度は900℃、還元・焼結温度は1100℃で一定として、これらの処理温度の影響を除外するようにし、他の試験条件は実施例1と同じである。
【0048】
押潰荷重の測定の結果は、実施例1で使用した純度99.5mass%では93N(9.5kgf)であったのに対して、純度99mass%では89N(9.1kgf)、純度98mass%では84N(8.6kgf)、純度97mass%では75N(7.6kgf)、純度95mass%では60N(6.1kgf)であった。
【0049】
すなわち、不純物成分が多いと焼結性が悪くなり、焼結体の強度が低下する傾向にあることがわかった。本発明が目標とする衝撃吸収材としては、少なくとも78N(8kgf)以上の押潰荷重が必要と考えられ、純度は98mass%以上であることが好ましい。
【実施例3】
【0050】
実施例3では、酸化鉄(Fe)粉の比表面積径が、0.7μm 、0.9μm、1.0μm、1.2μm、1.5μm、2.0μmの6種類の粉末を用いて粉末粒径の影響を調べた。酸化鉄(Fe)粉の純度は99.5mass%のものを用いて、950℃で焙焼処理、1100℃で還元・焼結処理した中空金属体で比較した。評価指標として、焼結が十分行われているかを見るため、単球の押潰荷重を測定した。比表面積径0.7μmでは押潰荷重は93N(9.5kgf)、比表面積径0.9μmでは押潰荷重は83N(8.5kgf)、比表面積径1.0μmでは押潰荷重は79N(8.1kgf)、比表面積径1.2μmでは押潰荷重は74N(7.5kgf)、比表面積径1.5μmでは押潰荷重は68N(6.9kgf)、比表面積径2.0μmでは押潰荷重は60N(6.1kgf)であった。粉末粒径が大きい程、焼結が進んでいないことがわかる。実施例2で述べたように、本発明が目標とする衝撃吸収材としては、少なくとも78N(8kgf)以上の押潰荷重が必要と考えられることから、比表面積径は1.0μm以下が好ましい。
【実施例4】
【0051】
実施例4では、比表面積径が0.9μmである酸化鉄(Fe)粉を用いて、粉末原料に添加する焼結助剤の影響を調べた。Feの純度は、99.4mass%であった。
【0052】
添加した焼結助剤はフェロリン粉末で、添加量を5種類にわたって変化させ、得られた中空金属体のリンの濃度を分析した結果、それぞれ0.005mass%、0.05mass%、0.3mass%、0.8mass%、1.2mass%であった。なお、焙焼温度は900℃、還元・焼結温度は1050℃で一定とし、他の試験条件は実施例1と同じである。
【0053】
押潰荷重の測定の結果は、リンの濃度が0.005mass%の場合は、81N(8.3kgf)であったのに対し、リンの濃度が0.05mass%、0.3mass%、0.8mass %の場合は、それぞれ86N(8.8kgf)、93N(9.5kgf)、100N(10.2kgf)とより大きな値が得られ、焼結性が向上したのが確認された。リン濃度が1.2mass%の場合は、押潰荷重が99N(10.1kgf)とリン添加の効果が飽和した。この結果、リンの添加量は、0.005mass%以上、1mass%以下であることが好ましいことがわかる。同様に、酸化銅粉、ニッケル金属粉、フェロモリブデンを所定量添加した焼結体でも、押潰荷重の向上が認められた。
【実施例5】
【0054】
実施例5では、リン酸水溶液に浸漬することによるリン添加の影響を調べた。純度99.5mass%で、比表面積径が0.7μmの酸化鉄(Fe)200gを原料として用い、大気中にて60℃で予備乾燥し、さらに120℃まで加熱して本乾燥を行った。続いて、大気中で5℃/分の昇温速度で加熱し、280℃、330℃、360℃、400℃で、各30分均熱保持し、内部の発泡スチロールの熱分解・気化を行った。同じ炉内にて、大気中で5℃/分の昇温速度にて900℃に昇温し、1時間保持後、冷却した。この中空体を5mass%リン酸水溶液に1分間浸漬し、速やかに引き上げ、60℃にて乾燥させた。
【0055】
次に、未焼結中空体をNに50vol.%のHを加え所定の焼結温度である1100℃まで加熱し、その温度で1時間保持し、その後Hを停止し,Nのみ供給して炉冷を行った。室温に下がったところで、炉から取り出し、押し潰し荷重を測定した。
実施例5における試験結果を表2に示す。
【0056】
【表2】


【0057】
本発明例である焙焼処理を施した後、リン酸水溶液に浸漬し、還元・焼結処理を施したNo.5−3は、リン酸水溶液に浸漬しなかったNo.5−4より更に優れた押潰荷重が得られた。一方、焙焼処理を行わなかったNo.5−1、No.5−2では、リン酸水溶液に浸漬(No.5−2)しても押潰荷重は、焙焼処理を施したNo.5−4よりも低い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法により種々の金属粉、粉末外形の中空金属体を製造出来るようになり、得られた中空金属体は、自動車等の衝撃吸収材として利用できる。また、ゴルフクラブやソフトボールバット等の各種スポーツ用品の振動吸収材、鉄道車輌等の吸音材としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】製造工程を説明するフロー図である。
【図2】中空金属体の生成過程を示す説明図で、(a)は、中心核の外面に金属粉末を被覆した状態を示す図、(b)は、中心核の熱分解後の外殻を示す図、(c)は、本焼結後の中空金属体を示す図である。
【図3】発泡ポリマーを加熱したときの直径変化、重量変化を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1 中心核材
2 金属粉末/結合剤層
3 予備焼結層
4 空洞
5 焼結層
【出願人】 【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎


【公開番号】 特開2008−24958(P2008−24958A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195279(P2006−195279)