トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金

【発明の名称】 金属ナノ粒子生成方法および金属ナノ粒子生成装置
【発明者】 【氏名】米澤 徹

【氏名】齋藤 永宏

【氏名】高井 治

【氏名】石崎 貴裕

【氏名】小田 将智

【氏名】バロック パベル

【要約】 【課題】金属のナノ粒子を大量に迅速に生成する。

【構成】貯留槽22の100μS/cm〜5000μS/cm程度に導電率を調整した金属塩水溶液にゼラチンなどの分散溶解剤の存在下で800V〜1000Vのパルス電圧を貯留槽22に取り付けられた一対の電極24a,24bに印加してプラズマを生じさせる。すると、生じたプラズマにより水溶液中に水素ラジカルや電子が生じ、この水素ラジカルや電子が金属イオンを還元する。これにより、粒径が500nm以下の金属のナノ粒子を大量に迅速に生成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属による粒径が500nm以下の粒子であるナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成方法であって、
100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液にプラズマを生じさせることにより前記金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する、
ことを特徴とする金属ナノ粒子生成方法。
【請求項2】
前記金属塩の水溶液にプラズマを生じさせることにより該金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する請求項1記載の金属ナノ粒子生成方法。
【請求項3】
金属による粒径が500nm以下の粒子であるナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成方法であって、
100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の水溶液にプラズマを生じさせることにより水素ラジカル,水酸化物ラジカル,電子の少なくとも一つを生じさせ、該生じさせた水素ラジカル,水酸化物ラジカル,電子の少なくとも一つによって前記金属塩の水溶液中の金属イオンを還元することにより前記金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する、
ことを特徴とする金属ナノ粒子生成方法。
【請求項4】
水に分散または溶解可能な分散溶解剤を該金属塩の水溶液に分散または溶解させた状態でプラズマを生じさせることにより該金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する請求項2または3記載の金属ナノ粒子生成方法。
【請求項5】
前記分散溶解剤は、水に分散または溶解可能な高分子類,糖類,樹状高分子化合物,チオール化合物,金属配位性化合物および界面活性剤類からなる群より選ばれる一種以上の化合物である請求項4記載の金属ナノ粒子生成方法。
【請求項6】
前記分散溶解剤はゼラチンである請求項4記載の金属ナノ粒子生成方法。
【請求項7】
粒径が500nm以下の金属のナノ粒子である金属ナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成装置であって、
100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に取り付けられた一対の電極と、
前記一対の電極間にプラズマを生じさせるために該一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備える金属ナノ粒子生成装置。
【請求項8】
前記貯留部は、前記金属塩の溶液の流路の一部に形成されてなる請求項7記載の金属ナノ粒子生成装置。
【請求項9】
前記電圧印加手段は、パルス的な電圧を繰り返し印加する手段である請求項7または8記載の金属ナノ粒子生成装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子生成方法および金属ナノ粒子生成装置に関し、詳しくは、金属による粒径が500nm以下の粒子であるナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成方法およびこうしたナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の金属ナノ粒子生成方法としては、徐々に間隔が狭くなるように配置した電極にアークを発生させることによって超微粒子物質を生成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法では、アーク中で分解した雰囲気物質から発生する原子とアーク中で蒸発した反応物質のガスとを反応させて超微粒子物質を生成している。
【0003】
また、金属塩を還元性の有機溶媒に溶解させた溶液にマイクロ波を照射することによりナノサイズの超微粒子を生成するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この手法では、金属塩が溶解している意にマイクロ波を照射すると、金属塩がマイクロ波を吸収して励起することにより、金属塩が還元されて分解し、微細なコロイドを生成することにより、ナノサイズの超微粒子が生成すると考えられている。
【0004】
さらに、金属塩を含む水溶液に超音波を照射することにより金属の超微粒子を生成するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。この手法では、数μm〜数百μm径のマイクロチャンネルに金属を含む水溶液を連続的に流しながら水溶液に超音波を照射することにより、連続的に効率よく金属超微粒子を得ることができると、されている。
【特許文献1】特開2002−45684号公報
【特許文献2】特開2000−256707号公報
【特許文献3】特開2005−264199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、金属の超微粒子を生成する手法は種々提案されており、金属の超微粒子を大量に且つ迅速に生成することが望まれている。なお、「金属のナノ粒子」は、金属原子による粒径が500nm以下のコロイド粒子を意味する。
【0006】
本発明の金属ナノ粒子生成方法および金属ナノ粒子生成装置は、金属のナノ粒子を大量に迅速に生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属ナノ粒子生成方法および金属ナノ粒子生成装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の金属ナノ粒子生成方法は、
金属による粒径が500nm以下の粒子であるナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成方法であって、
100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液にプラズマを生じさせることにより前記金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する、
ことを特徴とする。
【0009】
この本発明の金属ナノ粒子生成方法では、500(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液にプラズマを生じさせることにより、溶媒を構成する元素や化合物のラジカルや電子を生じさせ、生じた元素や化合物のラジカルや電子によって溶液中の金属イオンを還元することにより金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成する。このように導電率を調整した金属塩の溶液にプラズマを生じさせるだけで金属のナノ粒子を生成することができるから、金属のナノ粒子を大量に迅速に生成することができる。
【0010】
本発明の金属ナノ粒子生成装置は、
粒径が500nm以下の金属のナノ粒子である金属ナノ粒子を生成する金属ナノ粒子生成装置であって、
100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に取り付けられた一対の電極と、
前記一対の電極間にプラズマを生じさせるために該一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えることを要旨とする。
【0011】
この本発明の金属ナノ粒子生成装置では、貯留部に貯留している100(μS/cm)ないし5000(μS/cm)の導電率に調整された金属塩の溶液に一対の電極からプラズマを生じさせることにより、溶媒を構成する元素や化合物のラジカルや電子を生じさせ、この生じた元素や化合物のラジカルや電子によって溶液中の金属イオンを還元することにより金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成することができる。
【0012】
こうした本発明の金属ナノ粒子生成装置において、前記貯留部は、前記金属塩の溶液の流路の一部に形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、連続的に金属のナノ粒子を生成することができる。
【0013】
また、本発明の金属ナノ粒子生成装置において、前記電圧印加手段は、パルス的な電圧を繰り返し印加する手段であるものとすることもできる。こうすれば、溶媒中に繰り返しプラズマを生じさせることができるから、金属のナノ粒子を迅速に大量に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
本発明の金属ナノ粒子生成方法では、金属としては如何なる金属を用いてもよいが、遷移金属が有効であり、特に金、銀、銅の同族元素や白金、パラジウムなどの白金族元素に属する金属が有効である。
【0016】
本発明の金属ナノ粒子生成方法では、金属塩の溶液に用いる溶媒としては如何なる溶媒をも用いることができ、水も有効である。溶媒として水を用いる場合には、溶媒を構成する元素や化合物のラジカルとしては水素ラジカルや水酸化物ラジカルとなる。
【0017】
溶媒として水を用いた場合の金属イオン(M+)の還元は主に次式(1)および式(2)に示される反応により行なわれる。なお、式(1),(2)中の「M0」は0価の金属(金属原子)を意味し、「H・」は、水素ラジカルを意味する。
【0018】
n++ne- → M0 (1)
n++nH・ → M0+nH+ (2)
【0019】
本発明の金属ナノ粒子生成方法では、水に分散または溶解可能な分散溶解剤を該金属塩の水溶液に分散または溶解させた状態でプラズマを生じさせることにより該金属塩を構成する金属のナノ粒子を生成するものとすることも有効である。こうすれば、生成した金属ナノ粒子の凝集を抑制することができる。ここで、分散溶解剤としては、水に分散または溶解可能な高分子類,糖類,樹状高分子化合物,チオール化合物,金属配位性化合物および界面活性剤類からなる群より選ばれる一種以上の化合物であるものとすることもできる。即ち、分散溶解剤としては、ゼラチン,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコール,アラビアゴム,高分子シクロデキストリン,アクリロニトリルなどの高分子類、オリゴ糖,環状オリゴ糖などの糖類、デンドリマー類などの樹状高分子化合物、アルキルチオール,メルカプト酢酸やメルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸,メルカプトアルキルアミン類,ハロゲン化チオコリン,チオフェノール,ベンゼンチオールなどのチオール化合物、イソシアニド類,ニトリル類,アミン類,タウリンなどの金属配位性化合物、セチルトリメチルアンモニウムブロミド,ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド,オクチルトリメチルアンモニウムブロミドやα−スルホ脂肪酸エステルナトリウムなどのベンザルコニウム塩等のカチオン性界面活性剤、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム),α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩などのアニオン性界面活性剤、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキサイドなどの両性イオン界面活性剤、アエロゾル−OTなどの非イオン性界面活性剤などの界面活性剤類が有効である。
【0020】
次に、本発明の金属ナノ粒子の生成方法に用いられる金属ナノ粒子生成装置について説明する。図1は、本発明の金属ナノ粒子の生成方法に好適に用いられる金属ナノ粒子生成装置20の構成の概略を示す構成図である。図示するように、金属ナノ粒子生成装置20は、金属塩の水溶液を貯留する貯留槽22と、タングステンにより形成され貯留槽22にホルダ25a,25bによって0.1mm〜1mmの間隔をもって対向するよう取り付けられた一対の電極24a,24bと、この一対の電極24a,24bにパルス電圧を印加するパルス電圧供給部26と、を備える。
【0021】
貯留槽22は、下記の実施例では150mlの金属塩水溶液を貯留する大きさに形成されており、底部には貯留している溶液を攪拌する攪拌フィンが設けられている。パルス電圧供給部26は、図2に示すように、時間の経過に対して大きさが800〜1000Vの正電圧パルスと負電圧パルスを交互に一対の電極24a,24bに印加する。下記の実施例では、パルス電圧供給部26からのパルス電圧の印加は、正電圧パルスや負電圧パルスのパルスオン時間も正電圧パルスと負電圧パルスとの間のパルスオフ時間も20μsとして印加した。導電率が5000μS/cm以下で上述の一対の電極24a,24bに上述したパルス電圧を印加すると、水溶液中でスパークしてプラズマを生じさせる。
【実施例1】
【0022】
金属塩水溶液として濃度が0.58mmol/Lの塩化金酸水溶液、分散溶解剤として6.25g/Lのゼラチンを用い、塩化カリウムを用いて水溶液の導電率を500μS/cm,1500μS/cm,2500μS/cmに調整し、パルス電圧供給部26から2分間に亘ってパルス電圧を印加した。比較例として、導電率を500μS/cmに調整した同様の水溶液にゼラチンを分散溶解しないものを用いた。実施例の結果を図3ないし図5に、比較例の結果を図6に示す。図示するように、実施例では500nm以下の粒子(ナノ粒子)が良好に生成されている。比較例でも500nm程度の粒子が形成されているものの、実施例に比して粒子が凝集するために粒子径が大きくなっている。実施例のナノ粒子が生成された溶液を紫外可視吸光分析したところ、520nm〜540nmにピークが観測されたことから、ナノ粒子が0価の金により形成されていることを確認した。図7に紫外可視吸光分析の結果の一例を示す。図示するように、分散溶解剤としてゼラチンを用いた実施例では520nm〜540nmに明確なピークが観測されるが、分散溶解剤を用いなかった比較例では520nm〜540nmのピークは明確にはならない。なお、実施例の金のナノ粒子の生成量は、4g〜7g程度であった。
【実施例2】
【0023】
金属塩水溶液として濃度が0.62mmol/Lの硝酸銀水溶液、分散溶解剤として24.8mmol/Lのポリビニルピロリドン(PVP)を用い、塩化カリウムを用いて水溶液の導電率を500μS/cm程度に調整し、パルス電圧供給部26から2分間に亘ってパルス電圧を印加した。実施例の結果を図8に示す。図示するように、数nm程度の銀のナノ粒子が生成されている。
【実施例3】
【0024】
金属塩水溶液として濃度が0.62mmol/Lの塩化ロジウム水溶液、分散溶解剤として24.8mmol/Lのポリビニルピロリドン(PVP)を用い、塩化カリウムを用いて水溶液の導電率を500μS/cm程度に調整し、パルス電圧供給部26から2分間に亘ってパルス電圧を印加した。実施例の結果を図9に示す。図示するように、数nm程度のロジウムのナノ粒子が生成されている。
【実施例4】
【0025】
金属塩水溶液として濃度が0.62mmol/Lの塩化白金酸水溶液、分散溶解剤として24.8mmol/Lのポリビニルピロリドン(PVP)を用い、塩化カリウムを用いて水溶液の導電率を500μS/cm程度に調整し、パルス電圧供給部26から2分間に亘ってパルス電圧を印加した。実施例の結果を図10に示す。図示するように、数〜数十nm程度の白金のナノ粒子が生成されている。
【0026】
上述した金属ナノ粒子生成装置20は、上述の実施例を実行するためのものであるために溶液150mlを貯留する貯留槽22と、この貯留槽22に取り付けられた一対の電極24a,24bとを備えるものとしたが、連続的に金属ナノ粒子を生成するためには、導電率を調整した金属塩水溶液の流路の一部を貯留槽として用い、この流路に複数の一対の電極を設ければよい。なお、一対の電極の数は、金属ナノ粒子の時間当たりの生成量から決定することができる。このように、金属塩水溶液の流路の一部を貯留槽として用いる場合には、金属ナノ粒子を迅速に大量に生成することができる。また、この場合のパルス電圧は、プラズマを生じさせればよいから、電圧も800V〜1000Vに限定されるものではなく、パルスオン時間もパルスオフ時間も20μsに限定されるものでもない。
【0027】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、金属ナノ粒子の生成産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の金属ナノ粒子の生成方法に好適に用いられる金属ナノ粒子生成装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】パルス電圧の波形の一例を示す説明図である。
【図3】導電率が500μS/cmに調整された塩化金酸水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【図4】導電率が1500μS/cmに調整された塩化金酸水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【図5】導電率が2500μS/cmに調整された塩化金酸水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【図6】導電率が500μS/cmに調整された塩化金酸水溶液を用いた比較例の結果を示す説明図である。
【図7】実施例と比較例の紫外可視吸光分析の結果の一例を示す説明図である。
【図8】導電率が500μS/cmに調整された硝酸銀水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【図9】導電率が500μS/cmに調整された塩化ロジウム水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【図10】導電率が500μS/cmに調整された塩化白金酸水溶液を用いた実施例の結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
20 金属ナノ粒子生成装置、22 貯留槽、24a,24b 一対の電極、25a,25b ホルダ、26 パルス電圧供給部。
【出願人】 【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−13810(P2008−13810A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186042(P2006−186042)