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【発明の名称】 メニスカス部にヒートクラックを生じ難い鉄鋼連続鋳造鋳型
【発明者】 【氏名】仲井 啓治

【要約】 【課題】

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートクラックが発生した経歴がなく銅合金からなる電磁攪拌装置付き鉄鋼連続鋳造鋳型の溶鋼と直接的に接触する鋳型内部の上部を、鋳型の上端から下方に向けてすくなくとも300mmの範囲において純度99.5%以上の銅めっきでめっきの厚さが1〜7mmとなるよう被覆することを特徴とする連続鋳造鋳型のヒートクラック発生を抑制する方法。
【請求項2】
銅めっき表面の全面又はその一部分を更にクロム、ニッケル若しくはコバルト又はそれら金属からなる合金で被覆することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造鋳型のヒートクラック発生を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼の連続鋳造用の鋳型に関するものであり、更に詳しくは電磁攪拌方式を採用した鉄鋼連続鋳造鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
主として凝固しつつある溶鋼(鋳造片)が鋳造鋳型内表面を連続して擦る為に、鋳型銅材の下部の摩損対策として、従来から銅及び銅合金製の鉄鋼連続鋳造鋳型に何らかの被覆材料を被覆する手段が用いられている。そして鋳型銅材への各種表面被覆材料の適用は、銅材の保護と寿命延長に効果的であり、表面被覆材料の耐摩耗性や耐食性の良否が鋳型の補修サイクルを律速しているのが実情である。そして今日に至っても、鋳型に被覆する材料の耐熱性・耐食性・耐摩耗性の要求は止まるところがない。例えば、鋳型への被覆材料として、過去の一時期にはクロムめっきが用いられた経緯があるが、これが意外に短寿命で、クロムめっきよりも長寿命を達成しうる3〜5mmの厚いニッケルめっき(例えば特許文献1参照)に転換された経緯がある。以降はさらに長寿命を求めて、各種諸々の表面被覆材料、例えばニッケル−鉄合金めっき(例えば特許文献2参照)、合金比率の異なるコバルトとニッケルとの合金めっき(例えば特許文献3又は4参照)、めっきとは根本的に手法は異なるが、ニッケル−クロム自溶性合金溶射皮膜(例えば特許文献5又は6参照)、更にはニッケル−ホウ素合金めっき(例えば特許文献7参照)等が出現した。
【0003】
また要求目的に応じて、これらの皮膜を組み合わせて多層構成、例えば下層から上層に向かって、ニッケルめっき/ニッケル−りん合金めっき/クロムめっきの仕様や、同一表面上に、例えば上部ニッケルめっき、下部ニッケル−クロム自溶性合金溶射の組合せとしたものもある。これらの一部は、現在においても被覆材料の主流として採用されている。しかしながら鉄鋼連続鋳造鋳型においては、溶鋼の注入される鋳型上部と凝固殻(セル)が成長しつつある鋳造片の出口側(下半分)とでは根本的に要求される特性が異なっており、上述の被覆材料を鋳造鋳型内壁の全てに適用すると、鋳型上部では抜熱効果を阻害する結果、熱疲労により鋳型の表面にヒートクラックを発生し、鋳型銅材にまでクラックの伝播を生じる。
【0004】
銅合金へのヒートクラックの伝播は、鋳型銅材の表面の再生加工時に切削・除去する銅材の量の増加をもたらし、銅材自体の再生可能回数の減少に繋がる。よって、結局耐食性、耐摩耗性を必要とする鋳造鋳型の下半分に、上述の被覆材料を適用することが主体となっている例も多い。つまり鋳型の上半分においては、溶鋼の凝固も未だ進行しておらず、耐摩耗性よりもむしろ抜熱効果を期待して鋳型を構成する銅ないし銅合金が露出したままの状態で使用したり、公知の被覆材料を適用するときには、ヒートクラックの発生を回避するために、鋳造鋳型の上部と下部とで被覆材料の厚みを意図的に違えることもある。過去には、また鋳造鋳型の下半分に被覆する耐食・耐摩耗皮膜の厚みに合わせて鋳型上部を銅めっきで被覆した事例もあるが、鋳造時に銅めっき層の層間膨れのトラブルが解消されず、実用には至っていないという経緯がある(例えば非特許文献1、特許文献8又は特許文献9参照)。
【0005】
ところで、近年の鉄鋼連続鋳造の問題点がかなり明確となっており、鋳造片品質向上の為に溶鋼中に必然的に混入するガスや不純物によるブローホール、非金属介在物の偏析を抑制し、鋳造片の均一凝固を目的として、電磁攪拌方式の鋳造鋳型の導入例が多くなりつつある。一方、電磁攪拌装置は鋳造鋳型の外側に配置されるが、透磁力を向上させて溶鋼の攪拌効果を高めるために、鋳型銅材の薄肉化を図ると同時に熱伝導度を意図的に低下させた銅合金を利用する傾向にある。しかしながら鋳型銅材の熱伝導度の低下は、鋳型上部の表面温度の上昇を招き、鋳型のヒートクラックの発生等に繋がるため、短期間の使用で鋳型の再生を余儀なくされる。即ち、電磁攪拌装置の積極的な利用が、この技術分野に新たな課題をもたらした。
【0006】
更に詳しくは、電磁攪拌を実施しつつ溶鋼の鋳造を行うと、熱伝導度の低い銅合金と電磁攪拌に伴う溶鋼の流動運動の作用で、鋳型の被る熱量が相対的に高くなり、熱影響はメニスカス部近傍において顕著に現れる。つまり電磁攪拌によるかき混ぜ効果によって、溶鋼中のガス成分や不純物は強制的に上部へと浮上して行くが、不純物中には溶鋼由来の亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛、カドミウム等の融点700℃以下の低融点の不純物金属元素も微量混入しており、鋳造鋳型には新たな溶鋼が四六時中注ぎ込まれるので、結局メニスカス近傍において、これらの不純物金属元素が濃縮されることになる。そしてこれらの低融点の不純物金属元素は、電磁攪拌力で鋳型表面に半ば強制的に吹き付けられるので、メニスカス近傍の特定部位の鋳型銅材の表面が、あるいは銅以外の保護皮膜が被覆している時にはその表面が、これら低融点の不純物金属元素のアタックを受けて合金層を形成し、鋳込み回数の増加に伴い、その合金層の成長が促進される。この状態に至ると、抜熱効果が一層損なわれるので、メニスカス部近傍の温度は更に上昇することとなる。
【0007】
低融点の不純物金属元素は伸びが低く、銅よりも融点の低い合金層を形成するので、耐熱疲労性を悪化させる方向に作用する。これらの複合要因が合わさって、早期に鋳造鋳型にヒートクラックが発生する。一旦クラックが発生すると、銅材の内部にむかってどんどん銅材を合金化し、侵食して行くこととなる。このように電磁攪拌用鋳型のヒートクラック発生のメカニズムは、何点もの使用済み鋳型の詳細調査を通じて分かったことであるが、ヒートクラックの発生は、鋳造鋳型の使用チャージ数の低減と再生可能回数の低減に繋がり、新規銅板の製作回数の増加の原因となって、鉄鋼鋳造コストが大幅に増加する。
【0008】
【特許文献1】特公昭48−28255
【特許文献2】特公昭60−34639
【特許文献3】特公昭61−17581
【特許文献4】特公昭60−59999
【特許文献5】特公昭61−15782
【特許文献6】特開昭60−206552
【特許文献7】特公平4−59064
【特許文献8】特公平1−44425
【特許文献9】特公昭58−13257
【特許文献10】特公平4−2337
【非特許文献1】日本鉄鋼協会第96回公演大会公演概要集160ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
亜鉛を不純物として含有する溶鋼に対して、コバルトないしコバルトを10%以上含むニッケル合金を10〜1,000μm被覆すると、顕著な亜鉛拡散防止効果があるという技術が開示されている(例えば特許文献10参照)。しかし溶鋼中の不純物は、必ずしも亜鉛に限定される訳でもなく、亜鉛以外にもスズ、アルミニウム、鉛、カドミウム等の微量の低融点金属元素も含有されている。事実、使用済みの電磁攪拌用鋳型のヒートクラックを生じたメニスカス近傍から採取した試料には、鋳造鋳型を構成する元素に加えて、常に亜鉛、アルミニウム、カドミウム等の元素が検出される。なお、電磁攪拌される連続鋳造鋳型にあっては、素材よりも熱伝導度と耐熱疲労性(伸び)に劣る異種金属を被覆するという従来からの公知技術をそのまま適用すると、抜熱効果が低減し、湯面(メニスカス)近傍の温度上昇に結びつく。加えて亜鉛のみならず上述の低融点の不純物金属元素との合金化が起こるので、亜鉛拡散防止機能よりも伸びの低下が律速となり、ヒートクラックの発生が優先することも分かってきた。そしてまた、一旦クラックを生ずるとそれを起点として鋳型銅材内部に向かって諸々の低融点の不純物金属元素の侵食(合金化)が進行して行くので、単純にコバルトないしコバルト−ニッケル合金を被覆して、亜鉛を含む低融点の不純物金属元素の拡散を防止すれば良いと言うものでもないことを見出した。
【0010】
即ち上述したように、連続鋳造鋳型における電磁攪拌装置の採用によって、メニスカス部における温度上昇が増大し、それとともに溶鋼に含まれる亜鉛、スズ、アルミニウム、鉛、カドミウム等の微量の低融点の不純物金属元素が、鋳型銅材の表面のみならず内部を攻撃し、その結果鋳型の寿命が短くなっている。この課題に対して本発明者は、鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のように電磁攪拌方式の鋳型においては、透磁率改善の為に薄肉で熱伝導度のやや劣る銅合金を利用する傾向があり、不純物・ガス等を除去して均一凝固を目的とする強制的な溶鋼のかき混ぜによって、通常の鋳型と異なってメニスカス近傍の温度上昇を伴うこと、特に、メニスカス近傍の鋳型上部表面には攪拌された溶鋼熱流が直接当り、温度上昇の著しい特異点を生じ、この特異点にヒートクラックが集中して発生することを本発明者は発見した。更に本発明者は、例えば下記する試験例及び実施例を含む膨大なトライアンドエラーによる研究の結果、下記する手段によって従来技術の課題が一挙に解決されることを見出した。
【0012】
即ち本発明は、
(1) 銅合金からなる電磁攪拌装置付き鉄鋼連続鋳造鋳型において、溶鋼と直接的に接触する鋳型内部の上部全面若しくはその一部分が銅めっきで被覆されていることを特徴とする連続鋳造鋳型、
(2) 鋳型内部の上部が、鋳型の上端から下方に向けて少なくとも300mmの範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の連続鋳造鋳型、
(3) 銅めっきの純度が99.5%以上であって、銅めっきの厚みが0.3〜10mmの範囲であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の連続鋳造鋳型、
(4) 銅めっき表面の全面又はその一部分が、更にクロム、ニッケル若しくはコバルト又はそれら金属からなる合金で被覆されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の連続鋳造鋳型、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
以上、言及した如く、高純度銅めっきをヒートクラックの発生しやすい電磁攪拌用の連続鋳造鋳型内面上部に適用すれば、その高い熱伝導度、伸びの作用により、溶鋼中の低融点金属元素のアタックが著しく緩慢となり、従来の鋳型と比べると3倍以上の寿命を示し、鉄鋼鋳造コストの大幅なコストダウンを示すという多大な経済効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の鋳型に用いられる銅合金は、特に限定されず、従来この技術分野で使用されているものが適宜使用される。例えばクロム・ジルコニウム添加析出硬化型鋳型用銅材(好ましくはCr:0.5〜1.5重量%、Zr:0.08〜0.30重量%)、電磁攪拌用クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加鋳型用銅材(好ましくはCr:0.50〜1.50重量%、Zr:0.08〜0.30重量%、Al:0.7〜1.1重量%)等が挙げられる。
【0015】
上記の銅合金からなる鋳型母材の上部内面を保護する銅めっきは、この技術分野で使用される銅めっきであってよい。銅めっきにおける銅の純度は、通常のもので良いが、高純度であることが特に好ましい。高純度とは、通常99.5重量%以上、好ましくは99.9重量%以上である。また、めっきによる皮膜厚は、通常0.3〜10mm、好ましくは1〜7mmの範囲である。
【0016】
つまり高純度銅めっきの被覆は、低融点の不純物金属元素のアタックによる合金化の程度が低いと言えども、2,000チャージ以上に及ぶ連続使用に於いて、多少なりとも合金化することを回避できず、結果として熱疲労によって微細なクラックが入ることもある。また、その高い熱伝導特性も、膜厚が薄すぎると低熱伝導度の鋳型母材の熱伝導度の影響が支配的となり、抜熱効果が低減する。かような理由で0.3mm以下の厚みは不適当であり、反対に厚すぎれば、鋳型強度、透磁性の低下を招き、別な意味で好ましいものではない。
【0017】
また高純度銅めっきの被覆範囲は、鋳造鋳型が上下にオッシレーションするのでメニスカス部が変動すること、低融点金属元素を含む溶鋼中の不純物、ガス等がメニスカス部の特異点に集中することなどを勘案すれば、鋳型の上部上端から引き抜き側に向かって約300mm以下の範囲であれば十分であるが、耐摩耗性等に支障が無ければ鋳型の全高の1/2程度(約半分)としても良い。また溶鋼熱流の集中する特異点が明確となっていれば、局所的に被覆しても良い。
【0018】
鋳型の上部内面表面を銅めっきするためのめっき液としては、公知のもの、例えば硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、シアン化銅浴が全て利用できるが、加熱が不要で低公害性の硫酸銅浴が特に好ましい。ただいずれの浴でも平滑面、光沢面を得ることを目的として、平滑効果の得られる有機系添加剤を併用するのが一般的である。しかしながら添加剤を併用することで、銅めっき皮膜にこれらの分解生成物が取り込まれ熱伝導度と伸びの低下に繋がることもあり、斯かる場合は添加剤の併用は好ましくない。
添加剤は、銅めっきに用いられる添加剤が適宜使用できるが、例えばポリアクリルアミド、ニカワ、ゼラチン、チオ尿素、トリエタノールアミン等、市販品ではエパックH(奥野製薬工業株式会社製)、カパランド300(日本シェリング株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
めっきの為の電解方式は、通常の電解方式であっても良いが、周期的に陽極と陰極とが切り替わるPR電解が、特にめっき皮膜の銅の高純度性と表面平滑性を得るには好ましいことも分かった。表1に、本発明の高純度銅めっき被覆鋳型を得るのに特に好ましい銅めっきの条件を示すが、高純度、高熱伝導度、良好な伸びを得られる浴やめっき条件であれば、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0020】
【表1】


【0021】
尚、鋳型上部以外の残余の部分である下部の内面表面については、従来通り耐食性・耐摩耗性のある公知の皮膜、例えばニッケル−鉄合金めっき、コバルト−ニッケル合金めっき、ニッケル−クロム自溶性合金溶射皮膜等を適宜選択すれば良い。
【0022】
本発明の連続鋳造鋳型の高純度銅めっきによる被覆形態の例を、図2の(a)〜(e)に示すが、必ずしもこれに限定されるものではない。さらに本発明の鋳造鋳型は、必ずしも電磁攪拌用の鋳造鋳型に限定される訳でもなく、低融点金属元素の付着とその侵食によるヒートクラック発生の多発する鋳造鋳型全般に適用し得ることは言うまでもない。
【0023】
(試験例1) 本発明者は、鋳型銅材の透磁率と高温強度を損なうことなく、熱伝導性と耐熱疲労性に優れ、尚且つ低融点金属との合金化を生じ難い被覆材料について、まず手始めに主要材料の抜熱効果に関与する熱伝導度や耐熱疲労性に影響する材料を見出すべく主要材料の熱伝導度と伸びを調査した。その予備試験−1の結果を表2に示すが、熱伝導度は銀添加鋳型銅材、添加剤添加銅めっき、高純度銅めっきが、また耐熱疲労に関与する伸びの特性は、銀添加鋳型銅材、高純度銅めっき等が特に優れていることが分かった。
【0024】
【表2】


【0025】
しかし銅の熱伝導の改善が、結果的に亜鉛、アルミニウムを始めとする低融点金属元素に対してどのように振舞うのかは予測が付かない。そこで亜鉛の付着性や侵食性を比較評価する為に、80mm角×15mm板厚のクロム・ジルコニウム添加鋳型銅材、銀添加鋳型銅材、電磁攪拌用クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加銅材を準備して試験片とした。また、クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加銅材については、板厚を14mmとしたものを別途準備し、この片側面にニッケルめっき、コバルト−10%ニッケル合金めっき、ニッケル−5%鉄合金めっき、添加剤併用銅めっき、高純度銅めっきをそれぞれ1mm厚に被覆して、合計板厚を15mmとしたものを試験片とした。
【0026】
これらの試験片を予備試験―2として、図1の要領で通水冷却しつつ、低融点金属として亜鉛を選定し、600℃までルツボで加熱溶融させたもの約500mlを試験面に注入し、室温に冷却するまで放置した後、凝固した後の亜鉛の試験面に対する剥離性の良否を定性的に評価すると同時に、試験片の断面から亜鉛との合金層の形成程度をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer:電子線マイクロアナライザー)で確認した。なおいずれの試験片についても、溶融亜鉛注入面は、表面粗さを1〜2μmに揃えると同時にアルカリ脱脂、電解清浄化してクリーンな状態として置いた。結果を表3に示すが、素材単体では熱伝導度の優れる銀添加鋳型銅材が、また電磁攪拌用クロム・ジルコニウム・アルミニウム添加銅材に高純度銅めっきを被覆したものが、亜鉛付着性と合金層の形成程度のいずれを取っても良好な結果を示した。この結果は、熱伝導度に優れるものがヒートクラック発生防止にも有効であることを実験的に示唆している。
【0027】
【表3】


【0028】
表3の結果より、銀添加鋳型用銅材の結果の良好なことは、実際の鋳造鋳型銅材をこれに転換すれば良いことになるけれども、電磁攪拌効果のためには透磁率の問題が控えており、熱伝導度つまり電気伝導度も良いことになり、透磁率にとっては好ましくない。さらにメニスカス近傍の温度上昇は、高温強度が低く、熱変形しやすいという点でも当材料は、好ましいものではない。掛かる観点から、低融点の不純物金属元素のアタックによる合金化防止、電磁攪拌効率、通常よりも薄肉化された鋳型での高温熱間強度の確保が必須要件となり、鋳型として高温強度を保持しつつ、ヒートクラック発生防止という目的を達成するためには高純度銅めっきの被覆がもっとも好ましいという本発明の結論となる。
【0029】
(試験例2)またスラブ用の鋳造鋳型では、長辺2枚が短辺2枚の側面を挟み込む形となり、スラブ幅に応じて鋳込中に短辺を前後(内外)に移動させている。つまり、短辺の側面が長辺の表面を摺動するので、しばしば短辺移動量に相応する範囲に摺動疵を発生し、鋳造片の噛み込みが起こりブレークアウトに繋がることがある。そこで、摺動疵発生の防止を目的として、時に鋳型上部も素材のままの状態ではなく、銅以外の異種金属、例えばニッケルやニッケル合金、クロムめっき等で薄肉被覆することも多い。本発明の鋳造鋳型の場合でも同じように適用可能である。つまり、短辺の摺動範囲は限定的で、電磁攪拌方式の鋳型であっても、通常溶鋼の熱流束の影響を直接被る範囲を外れているので、低融点の不純物金属元素のアタックによる合金化・侵食が比較的起こり難く、ヒートクラックの発生も殆ど見られない。その一方で、本発明の高純度銅めっきを被覆した鋳型の銅被覆部は、基本的に銅が露出したままの状態の方が好ましいが、高純度銅めっきの抜熱効果を阻害しない程度の薄膜仕様とすれば、銅以外の異種金属、例えばコバルトないしコバルトを主成分とする亜鉛拡散防止用皮膜を被覆してもそれなりに機能させ得る。
【実施例】
【0030】
高純度銅めっきの効能を実際の連続鋳造鋳型で試すべく、電磁攪拌鋳造鋳型用のクロム・ジルコニウム・アルミニウム添加銅材(Cr:1.0%、Zr:0.2%、Al:0.8%)からなる長辺サイズ銅板、2,000mm幅×900mm高さ×約30mm板厚を都合4セット準備し、下記条件でめっきを行い、得られた表4の仕様のめっき品を連続鋳造機に搭載した。結果を表5に示したが、本発明による高純度銅めっきを被覆した電磁攪拌用鋳型の耐ヒートクラック効果は絶大で、従来の鋳型の3倍以上の耐久性を示すことが分かった。めっき条件を表6に示す。
【0031】
【表4】


*1)高純度銅めっきが被覆されていない部分は、鋳型銅材が露出している。
*2)高純度銅以外のめっきは、公知方法に従って行った。
【0032】
【表5】


【0033】
【表6】


【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】予備試験で用いた試験片及び注入した溶融亜鉛を横側面から見た図である。
【図2】本発明の連続鋳造鋳型内面の銅めっきによる被覆パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1. 注入した溶融亜鉛
2. SUS304製溶融亜鉛流出防止枠
3. 通水路
4. 冷却水
5. 試験片
6. 高純度銅めっき被覆部
7. 公知の耐食・耐摩耗性皮膜被覆部
8. 母材銅露出部
9. ニッケルめっき被覆部
【出願人】 【識別番号】000155470
【氏名又は名称】株式会社野村鍍金
【出願日】 平成19年10月19日(2007.10.19)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍


【公開番号】 特開2008−30123(P2008−30123A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−271888(P2007−271888)