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【発明の名称】 スラリー投入方法及びスラリー投入装置
【発明者】 【氏名】内田 正志

【氏名】佐々木 寛人

【氏名】前田 琢磨

【氏名】花田 和直

【要約】 【課題】射出スリーブ内に投入されたスラリーが型崩れを起こしたり破損することを防ぐ。

【構成】多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャック50で保持容器3を把持し、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70によって制限を受けたスペースを、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける接近経路で、保持容器3を射出スリーブ70に接近させる。保持容器3の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口72の真上へと移動させる。保持容器3を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器の開口が下方を向くように保持容器を傾斜させて、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ内へと滑落させることにより、スラリーSの開口側端部Sを、プランジャチップ78と対面する方向へと向けて滑落させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテン及び射出フレームに囲まれた部位に形成された窪みから水平に突出する射出スリーブの円筒壁に、上方へと開口するスラリー投入口が設けられた成形機に対し、有底円筒状の保持容器に収容されたスラリーを投入する投入方法であって、
前記保持容器の開口を上に向けて、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで前記保持容器を把持し、
前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、前記保持容器を前記射出スリーブに接近させ、前記保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢へ近づけながら、前記スラリー投入口の真上へと移動させ、
続いて、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑落させ、
更に、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、前記保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて、前記保持容器から滑落したスラリーの全体を、前記射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入した後、
前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、前記保持容器を前記射出スリーブから退避させることを特徴とするスラリー投入方法。
【請求項2】
前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑り出させる際に、
前記保持容器を前記スラリー投入口から前記射出スリーブ内部へと進入させ、前記保持容器の開口側周縁部を可能な限り前記射出スリーブの内壁底面に接近させた後、
前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させることにより、前記保持容器の開口からスラリーを滑落させて、前記スラリー上端部を前記射出スリーブの内壁底面に着地させつつ、可能な限り前記射出スリーブ内で前記保持容器を射出前方へと移動させて、前記スラリーの全体を前記射出スリーブの内壁底面へと引き出すことを特徴とする請求項1記載のスラリー投入方法。
【請求項3】
前記保持容器の開口を上に向けて、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで前記保持容器を把持する際に、前記多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられた前記チャックの回転制御に係る回転軸に対し、前記保持容器を把持した状態での前記保持容器の中心軸がオフセットするチャック形状を有するチャックにより、前記保持容器を把持することを特徴とする請求項1又は2記載のスラリー投入方法。
【請求項4】
固定プラテン及び射出フレームに囲まれた部位に形成された窪みから水平に突出する射出スリーブの円筒壁に、上方へと開口するスラリー投入口が設けられた成形機に対し、有底円筒状の保持容器に収容されたスラリーを投入する投入装置であって、
アーム先端に、チャックが設けられた多軸多関節ロボットと、
前記保持容器の開口を上に向けて、前記チャックで前記保持容器を把持し、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、前記保持容器を前記射出スリーブに接近させ、前記保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢へ近づけながら、前記スラリー投入口の真上へと移動させ、続いて、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑落させ、更に、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、前記保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させ、前記保持容器から滑落したスラリーの全体を、前記射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入した後、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、前記保持容器を前記射出スリーブから退避させる制御ロジックを含む、前記多軸多関節ロボットの制御手段とを備えることを特徴とするスラリー投入装置。
【請求項5】
前記多軸多関節ロボットの制御手段は、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑り出させる際に、
前記保持容器を前記スラリー投入口から前記射出スリーブ内部へと進入させ、前記保持容器の開口側周縁部を可能な限り前記射出スリーブの内壁底面に接近させた後、
前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させることにより、前記保持容器の開口からスラリーを滑落させて、前記スラリー上端部を前記射出スリーブの内壁底面に着地させつつ、可能な限り前記射出スリーブ内で前記保持容器を射出前方へと移動させて、前記スラリーの全体を前記射出スリーブの内壁底面へと引き出す制御ロジックを含むことを特徴とする請求項4記載のスラリー投入装置。
【請求項6】
前記チャックは、前記多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられた前記チャックの回転制御に係る回転軸に対し、前記保持容器を把持した状態での前記保持容器の中心軸がオフセットするチャック形状を有していることを特徴とする請求項4又は5記載のスラリー投入装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機に対するスラリー(半凝固成形用金属)の投入方法及び投入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、固液共存状態の金属、即ち、状態図において液相線と固相線との間で液相と固相とが共存する状態の半凝固金属(以下、スラリーと称する)を材料に用いる成形技術が注目されている。例えば、レオキャスト法においては、キャビティに充填されるスラリーの温度が溶融金属と比較して低いことから金型の寿命が延び、製造コストが削減される。また、鋳造時にキャビティ内のガスがスラリーに巻き込まれる可能性が低く、さらに、キャビティに充填された後のスラリーは、凝固収縮量が溶融金属と比較して少なくなることから、エア巻き込みによる気泡や引け巣等の鋳造欠陥が発生することがなく、高い品質の製品を安定して得ることができる。ところで、このような技術を開示する特許文献1に記載のスラリー処理供給装置においては、保持炉から汲み上げられた溶融金属は、スラリー製造装置によって電磁攪拌されながらスラリー製造装置に配したステンレス製の、有底円筒状の保持容器に給湯され、さらに一定時間冷却保持された後、スラリーが得られる。そして、該保持容器を多関節ロボットアームによって操作して、該保持容器に生成されたスラリーが成形機に供給される。
【0003】
【特許文献1】特開2006―51518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成形機の固定金型を保持する固定プラテンには、射出シリンダーやアキュムレータにより構成される射出ユニットを連結するための射出フレームが固定されており、射出フレームは、型締めの際の荷重や射出時の衝撃に十分耐え得るように強固な構造を有している。そして、固定プラテン及び射出フレームに囲まれた部位には、射出エリア(スラリーの投入スペース)を確保するために球面状の窪みが形成され、該窪みから水平に円筒状の射出スリーブが突出している。このような装置構成上、保持容器内のスラリーをスラリー投入口へと投入する際に、保持容器を移動させるスペースは、固定プラテン、射出フレーム及びスラリーが投入される射出スリーブ自身によって大きく制限を受けることとなる。
【0005】
一方、保持容器からスラリーを射出スリーブ内へと投入する際に、保持容器内でスラリーが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部を、プランジャチップと対面するようにすることで、スラリーの酸化部分をいわゆるビスケットに留めキャビティ内に流入することを防ぐ必要がある。この点からも、保持容器のスラリー投入口への接近経路及び接近姿勢に制限を受けることとなる。しかも、保持容器からスラリーを射出スリーブ内へと投入する際に、スラリーに大きな型崩れや破壊が生じると、スラリーの屈曲部や破損部空間に存在する空気がスラリーと共にキャビティに流入して巣を形成したり、あるいは、スラリー破損部が製品中で不連続部分を形成し、いわゆる湯境欠陥の原因となり得る。よって、射出スリーブ内に投入されたスラリーの形状が、可能な限り保持容器によって型取りされた形状を維持するように、保持容器を巧みに操作してスラリーを投入する必要があり、この点においても、保持容器を移動させるスペースは、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブによって大きく制限を受けることが障害となっている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブによって保持容器の移動スペースが制限された成形機の射出エリアにおいて、射出スリーブ内に投入されたスラリーの形状が、可能な限り保持容器によって型取りされた形状を維持するように、スラリーを投入することを可能とし、高品質の成形品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明に係るスラリー投入方法は、固定プラテン及び射出フレームに囲まれた部位に形成された窪みから水平に突出する射出スリーブの円筒壁に、上方へと開口するスラリー投入口が設けられた成形機に対し、有底円筒状の保持容器に収容されたスラリーを投入する投入方法であって、
前記保持容器の開口を上に向けて、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで前記保持容器を把持し、
前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、前記保持容器を前記射出スリーブに接近させ、前記保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢へ近づけながら、前記スラリー投入口の真上へと移動させ、
続いて、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑落させ、
更に、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、前記保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて、前記保持容器から滑落したスラリーの全体を、前記射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入した後、
前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、前記保持容器を前記射出スリーブから退避させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで保持容器を把持し、多軸多関節ロボットにより、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、保持容器を前記射出スリーブに接近させ、保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させることにより、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器内でスラリーが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部を、プランジャチップと対面する方向へと向けることができる。
続いて、保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器の開口が下方を向くように保持容器を傾斜させて、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させることにより、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器内でスラリーが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部を、プランジャチップと対面する方向へと向けて滑落させることができる。
【0009】
更に、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて、保持容器から滑落したスラリーの全体を、射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入することで、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、スラリーを変形させる力がスラリーに加えられることを防ぎ、射出スリーブ内に投入されたスラリーの形状が、可能な限り保持容器によって型取りされた形状を維持するように、スラリーの投入を行うことができる。
その後、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、保持容器を射出スリーブから退避させることで、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器を射出スリーブから退避させ、射出工程へと移行することができる。
【0010】
又、本発明において、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑り出させる際に、前記保持容器を前記スラリー投入口から前記射出スリーブ内部へと進入させ、前記保持容器の開口側周縁部を可能な限り前記射出スリーブの内壁底面に接近させた後、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させることにより、前記保持容器の開口からスラリーを滑落させて、前記スラリー上端部を前記射出スリーブの内壁底面に着地させつつ、可能な限り前記射出スリーブ内で前記保持容器を射出前方へと移動させて、前記スラリーの全体を前記射出スリーブの内壁底面へと引き出すことが望ましい。
本発明によれば、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させて、スラリーの開口側端部が射出スリーブの内壁底面に接触する際の、保持容器と射出スリーブとの高低差を可能な限り少なくすることができるので、スラリーの開口側端部が射出スリーブの内壁底面に接触する際の、スラリーが受ける衝撃を可能な限り減少させることができる。又、可能な限り射出スリーブ内で保持容器を射出前方へと移動させることで、射出スリーブの内壁底面に一部を接触させたスラリーを、射出スリーブ内で射出前方へと移動する保持容器から、保持容器によって型取りされた形状を維持するように引き出し、スラリーの変形を可能な限り防ぎつつ、スラリーの全体を射出スリーブ内において射出前方へと寝かせることができる。
【0011】
又、本発明において、前記保持容器の開口を上に向けて、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで前記保持容器を把持する際に、前記多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられた前記チャックの回転制御に係る回転軸に対し、前記保持容器を把持した状態での前記保持容器の中心軸がオフセットするチャック形状を有するチャックにより、前記保持容器を把持することが望ましい。
この構成によれば、保持容器を射出スリーブに接近させ、保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させ、更に、保持容器を傾斜させて、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させる際に、射出スリーブの軸上からオフセットした位置に、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャック開閉用シリンダーユニットが位置することとなり、保持容器の開口を下方に傾斜させてスラリーを滑落させる動きをする際に、チャック開閉用シリンダーユニットと射出スリーブとの干渉を回避しつつスリーブに接近させることが可能となる。
【0012】
又、上記課題を解決するための、本発明に係るスラリー投入装置は、固定プラテン及び射出フレームに囲まれた部位に形成された窪みから水平に突出する射出スリーブの円筒壁に、上方へと開口するスラリー投入口が設けられた成形機に対し、有底円筒状の保持容器に収容されたスラリーを投入する投入装置であって、アーム先端に、チャックが設けられた多軸多関節ロボットと、前記保持容器の開口を上に向けて、前記チャックで前記保持容器を把持し、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、前記保持容器を前記射出スリーブに接近させ、前記保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢へ近づけながら、前記スラリー投入口の真上へと移動させ、続いて、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑落させ、更に、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、前記保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させ、前記保持容器から滑落したスラリーの全体を、前記射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入した後、前記固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、前記保持容器を前記射出スリーブから退避させる制御ロジックを含む、前記多軸多関節ロボットの制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックで保持容器を把持し、多軸多関節ロボットにより、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブによって制限を受けたスペースを、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける接近経路で、保持容器を前記射出スリーブに接近させ、保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させることにより、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器内でスラリーが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部を、プランジャチップと対面する方向へと向けることができる。
続いて、保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器の開口が下方を向くように保持容器を傾斜させて、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させることにより、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器内でスラリーが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部を、プランジャチップと対面する方向へと向けて滑落させることができる。
【0014】
更に、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの接触を避けつつ、保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて、保持容器から滑落したスラリーの全体を、射出スリーブ内に射出前方へと寝かせて投入することで、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、スラリーを変形させる力がスラリーに加えられることを防ぎ、射出スリーブ内に投入されたスラリーの形状が、可能な限り保持容器によって型取りされた形状を維持するように、スラリーの投入を行うことができる。
その後、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブを避ける退避経路で、保持容器を射出スリーブから退避させることで、保持容器と固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブとの干渉を防ぎつつ、保持容器を射出スリーブから退避させ、射出工程へと移行することができる。
【0015】
又、本発明において、前記多軸多関節ロボットの制御手段は、前記保持容器を射出前方へと移動させ、かつ、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させて、前記保持容器の開口からスラリーを前記射出スリーブ内へと滑り出させる際に、前記保持容器を前記スラリー投入口から前記射出スリーブ内部へと進入させ、前記保持容器の開口側周縁部を可能な限り前記射出スリーブの内壁底面に接近させた後、前記保持容器の開口が下方を向くように前記保持容器を傾斜させることにより、前記保持容器の開口からスラリーを滑落させて、前記スラリー上端部を前記射出スリーブの内壁底面に着地させつつ、可能な限り前記射出スリーブ内で前記保持容器を射出前方へと移動させて、前記スラリーの全体を前記射出スリーブの内壁底面へと引き出す制御ロジックを含むことが望ましい。
本発明によれば、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させて、スラリーの開口側端部が射出スリーブの内壁に接触する際の、保持容器と射出スリーブとの高低差を可能な限り少なくすることができるので、スラリーの開口側端部が射出スリーブの内壁に接触する際の、スラリーが受ける衝撃を可能な限り減少させることができる。又、可能な限り射出スリーブ内で保持容器を射出前方へと移動させることで、射出スリーブの内壁に一部を接触させたスラリーを、射出スリーブ内で射出前方へと移動する保持容器から、保持容器によって型取りされた形状を維持するように引き出し、スラリーの変形を可能な限り防ぎつつ、スラリーの全体を射出スリーブ内において射出前方へと寝かせることができる。
【0016】
又、本発明において、前記チャックは、前記多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられた前記チャックの回転制御に係る回転軸に対し、前記保持容器を把持した状態での前記保持容器の中心軸がオフセットするチャック形状を有していることが望ましい。
この構成によれば、保持容器を射出スリーブに接近させ、保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させ、更に、保持容器を傾斜させて、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させる際に、射出スリーブの軸上からオフセットした位置に、多軸多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャック開閉用シリンダーユニットが位置することとなり、保持容器の開口を下方に傾斜させてスラリーを滑落させる動きをする際に、チャック開閉用シリンダーユニットと射出スリーブとの干渉を回避しながら移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように構成したので、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブによって保持容器の移動スペースが制限された成形機の射出エリアにおいて、射出スリーブ内に投入されたスラリーの形状が、可能な限り保持容器によって型取りされた形状を維持するように、スラリーを投入することが可能となる。よって、高品質の成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1は、図1に示されるスラリー製造装置に用いることが可能である。スラリー製造装置は、保持炉2によって所定温度に保持された溶融金属を、ラドル11によって、ステンレス製の有底円筒状の保持容器3に給湯する給湯装置4と、保持容器3に給湯された溶融金属を固液共存状態のスラリーに生成するスラリー生成装置5と、保持容器3の操作(ハンドリング)を行う多軸多関節ロボット6と、スラリーが排出されて空になった保持容器3を、水槽に貯留された水に浸漬して冷却する保持容器冷却装置9と、保持容器冷却装置9によって冷却された保持容器3の内側面を洗浄すると共に該洗浄された保持容器3の内側面に離型剤を塗布する保持容器洗浄スプレー装置10と、スラリー製造装置の主制御手段19と、保持容器バッファー32と、多軸多関節ロボット6に所定のハンドリングを指令する制御ロジックを含む制御手段56とを具備するものである。そして、本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1は、図1に示されるスラリー製造装置の一部を成す、多軸多関節ロボット6及び制御手段56により構成されるものである。
なお、保持炉2は、使用状況に応じて様々な形態を採るものであり、図1に示されているが、スラリー製造装置には含まれない。又、成形機7とその制御盤及び操作盤についても、同様の理由から、スラリー製造装置には含まれない。
【0019】
多軸多関節ロボット6は、後述する保持容器3から成形機7の射出スリーブ70に対するスラリーの投入作業を円滑に行うために、図2に示されるように、6軸以上の可動軸を備える多関節ロボットであることが望ましい。又、多軸多関節ロボット6のアーム先端には、保持容器3を把持するチャック50が設けられている。チャック50は、多軸多関節ロボット6のアーム先端に対し、図3に示されるように、チャック50の回転制御に係る回転軸52を介して軸着されている。チャック50は、チャック開閉用シリンダーユニット54によって開閉駆動されるものである。又、チャック50は、後述する理由から、保持容器3を把持した状態での保持容器3の中心軸Cが、回転軸52の軸線C52と一直線上に並ぶことなく、オフセットするようなチャック形状を有している。この、保持容器3の中心軸Cと、回転軸52の軸線C52とのオフセット量は、成形機7の固定プラテン60、射出フレーム74、射出スリーブ70によってスペースに制限を受ける射出エリア内で、とりわけチャック開閉用シリンダーユニット54と射出スリーブ72との干渉を回避しながら保持容器3を適切にハンドリング可能なオフセット量とされる。
そして、多軸多関節ロボット6と、多軸多関節ロボット6に所定のハンドリングを指令する制御ロジックを含む制御手段56と合わせて、本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1が構成されている。図1の例では、制御装置56はスラリー製造装置の主制御手段19に入出力通信(インターフェース)ケーブルを介して接続されており、パーソナルコンピュータ等の電子計算機により構成することができる。
【0020】
図1に示されるように、スラリー生成装置5は、ロボットアーム6aの操作によって保持容器3が開口を上向きに装着される保持容器収容部12を備え、保持容器収容部12に装着された保持容器3に、ラドル11によって溶融金属が給湯される。そして、スラリー生成装置5は、ラドル11によって保持容器3に溶融金属が給湯されると同時に給湯された溶融金属の電磁攪拌が開始され、給湯完了後、溶融金属の電磁攪拌が停止される。これにより、保持容器3内の溶融金属が固液共存状態のスラリーに生成される構造になっている。そして、本スラリー製造装置では、ロボットアーム6aの操作によって保持容器3がスラリー生成装置5から取り出され、保持容器3から成形機7の射出スリーブへスラリーが直接投入(供給)される構成になっている。なお、図1に示される符号23は、成形機7がトラブル等で停止している間に順次製造されるスラリーを廃棄するための排出バケットである。
【0021】
図1に示されるように、保持容器洗浄スプレー装置10は、洗浄ポジションP1(洗浄手段)、加熱ポジションP2、スプレーポジションP3(塗布手段)を備える。また、保持容器洗浄スプレー装置10は、円盤状に形成されて軸心回りに旋回且つ位置決めされる旋回テーブル24を備える。旋回テーブル24は、円筒状に形成されて軸心(旋回軸)の回りに120°の角度位相で等配された3個の保持容器台を備える。そして、保持容器洗浄スプレー装置10では、保持容器冷却装置9によって冷却された保持容器3が、ロボットアーム6aの操作によって、洗浄ポジションP1に位置決めされた保持容器台に開口を下向きに装着され、この状態で、旋回テーブル24を軸心回りに120°の角度位相づつ旋回させることにより、洗浄ポジションP1に位置する保持容器3が、加熱ポジションP2、スプレーポジションP3に順次位置決めされる構造になっている。
【0022】
なお、保持容器洗浄スプレー装置10において、まず、所定時間のエアブロー後、水スプレー及びエアブローによって所定時間だけ保持容器3が洗浄され、該洗浄後、保持容器3の温度を監視しながら、保持容器3の温度が所定温度に達するまで、エアブローによって保持容器3が冷却される。これにより、洗浄ポジションP1において処理(洗浄及び冷却)が完了した保持容器3、即ち、加熱ポジションP2によって加熱(予熱)する保持容器3の温度を安定させることができる構造になっている。そして、加熱ポジションP2では、洗浄ポジションP1によって洗浄及び冷却された保持容器3が、次のスプレーポジションP3に向けて離型剤が定着し易いように、ヒータによって所定時間だけ加熱(予熱)される。スプレーポジションP3では、加熱ポジションP2によって予熱された保持容器3の内側面に、ノズルから噴射されたBN(ボロンナイトライド)等の離型剤が塗布される。ここで、スプレーポジションP3では、保持容器3の温度が温度センサによって監視され、主制御装置19が、保持容器3の温度(温度センサの測定値)が設定温度の範囲外であると判定した場合に、該主制御装置19によってアラームが発せられる構造になっている。
【0023】
なお、図1に示される符号32は、空の保持容器3が装着される保持容器バッファ装置であって、保持容器バッファ装置32に載置された保持容器3が、ロボットアーム6aによって、順次、スラリー製造装置1に順次供給される。また、P0は、スラリー生成装置5において内部にスラリーが生成された保持容器3が、ロボットアーム6aによって移送されてホルダに装着される保持ステーションである。保持ステーションP0では、保持容器3を所定時間保持することで保持容器3内のスラリーが冷却保持され、これにより、スラリー生成装置5によって生成されたスラリーの固相率がさらに高められる。なお、保持ステーションPOは、溶融金属の種類、スラリーのサイズ、運転サイクル等によって使用の有無が選択される。また、保持容器3(保持容器)は、凹形状の底部を有する円筒形に形成され、開口周縁部や底部の板厚が、他の部分の板厚よりも薄く形成される。これにより、冷却速度が相対的に大きい保持容器3の開口周縁部や底部の熱容量が軽減され、冷却時に保持容器3全体が均一な冷却速度で冷却されて当該保持容器3の温度が均一化される構造になっている。
【0024】
次に、スラリー製造方法を説明する。なお、ここでは、AC4C合金による3kgスラリー用保持容器を50秒のサイクルで運転した例を説明する。まず、スプレーポジションP3において内側面にBN(ボロンナイトライド)等の離型剤が塗布された保持容器3が、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器洗浄スプレー装置10から取り出されて開口を上向きにスラリー生成装置5の保持容器収容部12に装着される。次に、給湯装置4のラドル11によって、保持炉2の溶融金属が所定量だけ汲み上げられて保持容器3に給湯される(給湯工程)。そして、スラリー生成装置5において、保持容器3の溶融金属が給湯と同時に電磁攪拌され、給湯完了後の冷却保持によって、保持容器3内に固液共存状態のスラリーが生成される(スラリー生成工程)。次に、保持容器3は、ロボットアーム6aの操作によって、スラリー生成装置5からスラリー保持ステーションP0に移動され、スラリー保持ステーションP0において保持容器3内のスラリーの固相率が高められる。
【0025】
なお、スラリー保持ステーションP0における冷却保持の間に、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器冷却装置9における冷却が完了した保持容器3が、保持容器洗浄スプレー装置10の洗浄ポジションP1(洗浄手段)に位置決めされた保持容器台に開口を下向きに載置され、さらに、ロボットアーム6aの操作によって、スプレーポジションP3において内側面に離型剤が塗布された保持容器3が、保持容器洗浄スプレー装置10から取り出されて開口を上向きにスラリー生成装置5の保持容器収容部12に装着される。次に、スラリー保持ステーションP0において冷却保持されたスラリーは、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器3から成形機7の射出スリーブに供給される(スラリー供給工程)。そして、スラリーが排出されて空になった保持容器3は、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器冷却装置9(冷却手段)の保持容器ホルダ18に開口を上向きに装着される。
【0026】
そして、保持容器ホルダ18に装着された保持容器3は、保持容器冷却装置9にて、570〜590℃から100〜120℃まで冷却される(冷却工程)。次に、保持容器冷却装置9における冷却が完了した保持容器3は、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器洗浄スプレー装置10の洗浄ポジションP1(洗浄手段)に位置決めされた保持容器台に開口を下向きに載置される。
【0027】
そして、洗浄ポジションP1における処理が完了すると、旋回テーブル24が所定方向(図1における時計回り方向)に120°だけ旋回され、保持容器3が洗浄ポジションP1から加熱ポジションP2へ移動される。そして、加熱ポジションP2においては、次のスプレーポジションP3(塗布手段)において保持容器の内周面に離型剤が定着し易いように、保持容器3がヒータによって所定時間だけ加熱(予熱)される。
【0028】
そして、保持容器3の予熱が完了(洗浄ポジションP1における次の保持容器3の処理が完了)すると、旋回テーブル24が所定方向(図1における時計回り方向)に120°だけ旋回され、最初の保持容器3が加熱ポジションP2からスプレーポジションP3へ移動される。該スプレーポジションP3においては、予熱された保持容器3の内側面にノズルから噴射された離型剤が塗布される(塗布工程)。そして、離型剤が塗布された保持容器3は、ロボットアーム6aの操作によって、保持容器洗浄スプレー装置10から取り出されてスラリー生成装置5の保持容器収容部12に開口を上に向けて装着される。
【0029】
続いて、本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1を包含するスラリー製造装置において、成形機7の射出スリーブ70にスラリーを投入する手順を説明する。
図1に示される成形機7の固定金型58を保持する固定プラテン60には、射出シリンダーやアキュムレータにより構成される射出ユニットを連結するための、射出フレーム74が固定されており、射出フレーム74は、型締めの際の荷重に十分耐えるように強固な構造を有している。そして、固定プラテンと射出フレーム74に囲まれた部位には、射出エリア(スラリーや溶湯等の材料を投入するためのスペース)を確保するために球面状の窪み68が形成され、該窪みから水平に円筒状の射出スリーブ70が突出している。そして、射出スリーブ70の円筒壁に、上方へと開口するスラリー投入口72が設けられている。かかる射出エリアの構造上、保持容器3内のスラリーをスラリー投入口72へと投入する際に、保持容器3を移動させるスペースは、固定プラテン60の窪み68と固定プラテン60、射出フレーム74及びスラリーが投入される射出スリーブ70自身とによって大きく制限を受ける。なお、図2には、ロボットチャック50、チャック開閉用シリンダーユニット54、及び保持容器3の移動スペースを制限する原因となっている、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70の各位置を、射出方向に対して横方向から見た状態を示している。
【0030】
本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1を包含するスラリー製造装置は、射出スリーブ70にスラリーを投入するに際し、制御手段56によって多軸多関節ロボット6を制御し、保持容器3を以下のようにハンドリングすることができる。
まず、図1のスラリー保持ステーションP0において、内部のスラリーが適切な温度まで冷却された保持容器3を、その開口を上に向けて、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられたチャック50で把持する。この際、チャック50により、保持容器3の開口側周端部を把持してもよく、こうすることによって、保持容器を可能な限り射出前方に移動させる動作において、ロボットアーム6aと固定プラテン60が干渉しない範囲内で保持容器3を固定プラテン60に形成された窪み68に最大限進入させることができる。
【0031】
続いて、図5(a)に示されるように、保持容器3の開口を上に向けたまま、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける接近経路を通りながら、保持容器3を射出スリーブ70に接近させる。そして、図5(b)、(c)に示されるように、保持容器3の底を射出前方へと振り上げて、図6(d)に示されるように、保持容器3を水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口72の真上へと、保持容器3を移動させる。
【0032】
続いて、図6(e)に示されるように、保持容器3を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器3の開口が下方を向くように保持容器3を傾斜させて、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ70内へと滑落させる。この際、必要に応じ、図6(e)に示されるように、スラリーSの開口側端部Sを、プランジャチップ78の表面に当てた状態で、図6(f)に示されるように、保持容器3をスラリーSに対して後退(射出前方斜め前方へと上昇)させることで、スラリーSの傾斜姿勢を維持したまま、保持容器3からのスラリーSの滑落を促進させることも可能である。こうすることで、スラリーSの全体が保持容器3から排出された後、スラリーSが射出前方に自重で倒れ、射出スリーブ70内でスラリーSが寝かされた状態とすることができる。
【0033】
更に、図7(g)、(h)に示されるように、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70と、保持容器3及び多軸多関節ロボット6のアーム6aとの接触を避けつつ、保持容器3の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器3を斜め上方へと移動させて、保持容器3からスラリーSの全体を滑落させ、図7(i)に示されるように、保持容器3から滑落したスラリーSの全体を、射出スリーブ70内に,射出前方F(スリーブ70の軸方向前方)へと寝かせて投入する。
【0034】
その後、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける退避経路を通りながら、保持容器3を射出スリーブから退避70させる。そして、プランジャチップ78を前進させ、スラリーSを金型キャビティへと充填する。
なお、図5〜図7において、符号76で示される点は、参考として、多軸多関節ロボット6の、チャック50の仮想の回転中心軸を示すものであるが、上記一連の動作におけるロボットアーム6aのチャック50の傾斜角度の動作制御は、仮想の回転中心軸76のみに依存するものではなく、全ての軸あるいは少なくとも幾つかの軸の回転動作を適宜組合わせることによって実現されている。そして、保持容器3の傾斜動作、スラリーSの排出動作中の保持容器3の移動は、カップの縁3a、例えば図3における保持容器円周のスリーブ70に面する最底位置を中心に制御される。その理由は、保持容器3の位置の軌跡こそが、スラリーSの排出動作のポイントを掴む上で最も重要であり、仮想の回転中心軸76を中心とする回転制御プログラムを構築すると、動作主体であるカップ3の縁との距離的ギャップが大きいことから、教示作業(プログラミング)も困難となってしまうことによるものである。よって、通常は、カップ3の縁3aを中心とした座標系(ツール系座標)に変換して、図5〜図7の作動制御を行っている。
【0035】
上記構成を有する、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられたチャック50で保持容器3を把持し、多軸多関節ロボット6により、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70によって制限を受けたスペースを固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける接近経路で、保持容器3を射出スリーブ70に接近させ(図5(a))、保持容器3の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口72の真上へと移動させることにより(図5(b)〜図6(d))、保持容器3と、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との干渉を防ぎつつ、保持容器3内でスラリーSが空気に接触して酸化が進んだスラリーの開口側端部Sを、プランジャチップ78と対面する方向へと向けることができる。
【0036】
続いて、保持容器3を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器の開口が下方を向くように保持容器を傾斜させて(図6(e)、(f))、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ内へと滑落させることにより、保持容器3と、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との干渉を防ぎつつ、スラリーSの開口側端部Sを、プランジャチップ78と対面する方向へと向けて滑落させることができる。
【0037】
更に、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との接触を避けつつ、保持容器の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて(図7(g)、(h))、保持容器3から滑落したスラリーSの全体を、射出スリーブ3内に射出前方Fへと寝かせて投入することで(図7(i))、保持容器3と、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との干渉を防ぎつつ、スラリーSを変形させる力がスラリーSに加えられることを防ぎ、射出スリーブ70内に投入されたスラリーSの形状が、可能な限り保持容器3によって型取りされた形状を維持するように、スラリーSの投入を行うことができる。
【0038】
その後、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける退避経路で、保持容器3を射出スリーブ70から退避させることで、保持容器3と、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との干渉を防ぎつつ、保持容器3を射出スリーブ70から退避させ、射出工程へと移行することができる。従って、本発明の実施の形態によれば、スラリーSに大きな型崩れ、折れ曲がりや破壊が生じることで、スラリーSの屈曲部や破損部空間に存在する空気がスラリーと共にキャビティに流入して巣を形成したり、あるいは、スラリー破損部が製品中で不連続部分を形成し、いわゆる湯境欠陥の原因となることを防ぐことができ、高品質の成形品を得ることが可能となる。
【0039】
又、本発明の実施の形態では、保持容器3の開口を上に向けて、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられたチャック50で保持容器3を把持する際に、保持容器3の開口側周端部を把持することにより、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける接近経路で、保持容器3を射出スリーブ70に接近させ(図5(a))、保持容器3の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させる際(図5(b)〜図6(d))の、保持容器3を可能な限り射出前方に移動させる動作において、ロボットアーム6aと固定プラテン60が干渉しない範囲で、保持容器3を固定プラテン60に形成された窪み68に最大限進入させることが可能となる。よって、保持容器3を固定プラテン60の窪みにより深く移動させるための距離を、十分に稼ぐことができる。
【0040】
又、本発明の実施の形態では、保持容器3の開口を上に向けて、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられたチャック50で保持容器3を把持する際に、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられた、チャック50の回転制御に係る回転軸(チャック50の回転軸)52(図3)に対し、保持容器3を把持した状態での保持容器3の中心軸がオフセットするチャック形状を有するチャック50により、保持容器3を把持している。よって、保持容器3を射出スリーブ70に接近させ(図5(a))、射出スリーブ70の保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させ(図5(b)〜図6(d))、更に、保持容器3を傾斜させて、保持容器の開口からスラリーを射出スリーブ内へと滑落させる際に(図7(g)、(h))、射出スリーブ70の軸上からオフセットした位置に、多軸多関節ロボット6のアーム6a先端に設けられたチャック開閉用シリンダーユニット54が位置することとなり、保持容器3の開口を下方に傾斜させてスラリーSを滑落させる動きをさせる際に、チャック開閉用シリンダーユニット54と射出スリーブ70との干渉を回避しつつスリーブ70に接近させることが可能となる。
【0041】
さて、図8、図9には、本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置1において、スラリーSの液相比率がより高いものを投入するに適した投入手順が示されている。なお、説明の便宜上、図8、図9は、図5〜図7に対し射出エリアをより簡略化して示している。
かかる投入手順において、図1の保持ステーションP0は用いられず、保持容器収容部12から直接的に、多軸多関節ロボット6のアーム先端に設けられたチャック50で保持容器3を把持して、投入作業を開始する。そして、多軸多関節ロボット6により、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70によって制限を受けたスペースを、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける接近経路で、保持容器3を射出スリーブ70に接近させる手順(図5(a))、及び、射出スリーブ70の保持容器の底を射出前方へと振り上げて水平姿勢に近づけながら、スラリー投入口の真上へと移動させる手順は(図5(b)〜図6(d))、前述の手順と同様である。
【0042】
かかる後に、保持容器3を射出前方へと移動させ、かつ、スラリーSが滑落可能となる範囲で出来るだけ水平に近い角度で保持容器3の開口が下方を向くように保持容器を傾斜させて、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ70内へと滑り出させる際に、図8(a)に符号(i)、(ii)、 (iii)で示されるように、保持容器3をスラリー投入口72から射出スリーブ内部へと進入させ、保持容器3の開口側周縁部を可能な限り射出スリーブ70の内壁底面70aに接近させた後、図8(b)に符号(iv)、(v)で示されるように、可能な限り(すなわち、射出スリーブ70の内壁及びスラリー投入口72に保持容器3及びチャック50が干渉しない範囲内で)射出スリーブ70内で保持容器3を射出前方へと移動させ、かつ、保持容器3の開口が下方を向くように保持容器3を傾斜させて、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ70内へと滑落させることとする。
【0043】
そして、図9(c)に符号(vi)で示されるように、保持容器3からスラリーSの全体が滑落した後、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との接触を避けつつ、保持容器3の開口が下方を向く傾斜角度を増加させながら、若しくは、傾斜角度を維持したまま保持容器を斜め上方へと移動させて、図9(d)に符号(vii)、(viii)で示されるように、保持容器3を射出スリーブ70から上昇させる。その後は、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70を避ける退避経路で、保持容器3を射出スリーブ70から退避させることで、保持容器3と、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70との干渉を防ぎつつ、保持容器3を射出スリーブ70から退避させ、射出工程へと移行する。
【0044】
この手順によれば、保持容器3の開口からスラリーSを射出スリーブ70内へと滑落させて、スラリーSの開口側端部Sが射出スリーブ70の内壁底面70aに接触する際の、保持容器3と射出スリーブ70との高低差を可能な限り少なくすることができるので、スラリーSの開口側端部Sが射出スリーブ70の内壁底面70aに接触する際の、スラリーが受ける衝撃を可能な限り減少させることができる。
又、可能な限り射出スリーブ70内で保持容器3を射出前方へと移動させることで、射出スリーブ70の内壁に一部を接触させたスラリーSを、射出スリーブ70内で射出前方へと移動する保持容器3から、保持容器3によって型取りされた形状を維持するように引き出し、スラリーSの変形を可能な限り防ぎつつ、スラリーSの全体を射出スリーブ70内において射出前方Fへと寝かせることができる。よって、液層リッチの軟弱なスラリーであっても、スラリーSに大きな型崩れ、折れ曲がりや破損が生じることにより、スラリーSの屈曲部や破損部空間に存在する空気がスラリーSと共にキャビティに流入して巣を形成したり、あるいは、スラリー破損部が製品中で不連続部分を形成し、いわゆる湯境欠陥の原因となることを防ぐことができ、高品質の成形品を得ることが可能となる。
【0045】
なお、以上のごとく図5〜図7、図8及び図9で説明した射出スリーブ70へスラリーSを投入する際の、保持容器3のハンドリング手順を実現するための、多軸多関節ロボット6の制御ロジックは、制御手段56に格納されている。また、かかる制御ロジックは、固定プラテン60、射出フレーム74及び射出スリーブ70に対して保持容器3が干渉せず、かつ、スラリーSが型崩れを起こすことなく保持容器3から射出スリーブ70内へと投入されるように、作業者が、多軸多関節ロボット6のマニュアル作動ボタンを適宜操作しながら、動作工程をプログラミングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置を備えるスラリー製造装置と成形機と熔解炉の模式平面図である。
【図2】図1の成形機において、スラリー投入装置のロボットチャック、チャック開閉用シリンダーユニット、及び保持容器の移動スペースを制限する原因となっている、固定プラテン、射出フレーム及び射出スリーブの各位置を、射出方向に対して横方向から見た状態を示した模式図である。
【図3】図2に示された多軸多関節ロボットの、アーム先端に設けられたチャックを示す模式図である。
【図4】図1に示されたスラリー投入装置と、成形機の固定プラテン近傍部分とを抽出して示した平面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置によって、成形機の射出スリーブにスラリーを投入する手順を示す説明図である。
【図6】図5に続き、成形機の射出スリーブにスラリーを投入する手順を示す説明図である。
【図7】図6に続き、成形機の射出スリーブにスラリーを投入する手順を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るスラリー投入装置において、液相比率の高いスラリーを、成形機の射出スリーブに投入するに適した投入手順を示す説明図である。
【図9】図8に続き、液相比率の高いスラリーを、成形機の射出スリーブに投入するに適した投入手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1:スラリー投入装置、3:保持容器、6:多軸多関節ロボット、7:成形機、19:主制御装置、50:チャック、52:回転軸、56:制御手段、60:固定プラテン、68:窪み、70:射出スリーブ、72:スラリー投入口、74:射出フレーム、78:プランジャチップ、S:スラリー
【出願人】 【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
【識別番号】505164977
【氏名又は名称】株式会社ナノキャスト
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100080908
【弁理士】
【氏名又は名称】舘石 光雄

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫


【公開番号】 特開2008−30056(P2008−30056A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−203390(P2006−203390)