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【発明の名称】 タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法
【発明者】 【氏名】原 周一

【氏名】続木 哲生

【氏名】高野 一寿

【氏名】天野 次朗

【氏名】福永 新一

【要約】 【課題】タンディッシュキャスト毎に水冷による冷却過程を経て補修・整備されるタンディッシュに装着して使用されるポーラスプラグを、タンディッシュキャスト毎に交換せずに複数のタンディッシュキャストに連続して使用する方法を提供すること。

【構成】タンディッシュ10内への溶鋼の充填開始から溶鋼の排出を終了するまでのタンディッシュキャスト毎に、水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、前記水冷により濡れた使用後のポーラスプラグ2を装着したままの状態で、タンディッシュ10の乾燥ないし予熱のためにタンディッシュ10内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガス6をタンディッシュ10内部からポーラスプラグ2内に供給し流通させることによってポーラスプラグ2内の水分を蒸発させて除去し、その後、ポーラスプラグ2を次のタンディッシュキャストに供して連続使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンディッシュ内への溶鋼の充填開始から溶鋼の排出を終了するまでの連続して溶鋼を保持する1工程であるタンディッシュキャスト毎に、水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、タンディッシュに装着されたポーラスプラグを連続使用するためのタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法であって、前記水冷の間及び水冷後にタンディッシュ内から液状の貯留水分が消失するまでの間、ポーラスプラグをタンディッシュに装着したままでそのポーラスプラグ内部の温度を100℃以上に保ち続けるか、またはポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュが保有する熱により100℃以上に回復させてタンディッシュ内から液状の貯留水分を除去し、その後、ポーラスプラグをタンディッシュに装着したままの状態で、当該ポーラスプラグを次のタンディッシュキャストに供して連続使用する、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法。
【請求項2】
タンディッシュ内への溶鋼の充填開始から溶鋼の排出を終了するまでの連続して溶鋼を保持する1工程であるタンディッシュキャスト毎に、水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、タンディッシュに装着されたポーラスプラグを連続使用するためのタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法であって、前記水冷により濡れた使用後のポーラスプラグを装着したままの状態で、タンディッシュの乾燥ないし予熱のためにタンディッシュ内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガスをタンディッシュ内部からポーラスプラグ内に供給し流通させることによってポーラスプラグ内の水分を蒸発させて除去し、その後、当該ポーラスプラグを次のタンディッシュキャストに供して連続使用する、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法。
【請求項3】
タンディッシュ内の耐火物の表面温度が150℃以上となった時点を、タンディッシュ内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガスをポーラスプラグ内へ供給する開始点とし、ポーラスプラグの内部の温度が100℃を超えた時点以降を乾燥の終点とする、請求項2に記載のタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法。
【請求項4】
タンディッシュ内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガスをポーラスプラグ内へ供給する開始点と、ポーラスプラグの乾燥の終点とをタンディッシュ予熱工程を制御するプログラムに組み込んで、前記プログラムによりタンディッシュ加熱装置及び前記燃焼排ガスの供給に用いる装置を操作して、当該ポーラスプラグの乾燥工程をタンディッシュ予熱工程と一体で制御する、請求項2または請求項3に記載のタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造用のタンディッシュに装着される溶鋼撹拌用のポーラスプラグの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の連続鋳造において、タンディッシュ内の溶鋼温度均一化や介在物除去を目的に、タンディッシュ内の溶鋼にプラズマ加熱や誘導加熱などが実施されることがある。ただし、これらの加熱により、タンディッシュ内の溶鋼は部分的に昇熱され、タンディッシュ内の溶鋼全体の温度分布が不均一(偏熱)状態になりやすい。そこで、ポーラスプラグによりタンディッシュの底部からガスを吹き込み、タンディッシュ内の溶鋼を撹拌してタンディッシュ内の溶鋼温度の均一化を促進させる方法が実施されている。また、ポーラスプラグは、吹き込んだガスによりタンディッシュ内で溶鋼中の介在物を捕集し、浮上させることで溶鋼を清浄化させるためにも使用されている。
【0003】
このポーラスプラグについては、1基のタンディッシュにつき、当該タンディッシュ内への溶鋼の充填開始から溶鋼の排出を終了するまでの連続して溶鋼を保持する1工程であるタンディッシュキャスト(以下、単に「タンディッシュキャスト」という。)毎に水冷等の冷却補修を行わない、いわゆるタンディッシュ熱間回転操業の場合や、同様に水冷等の冷却補修を行わない取鍋の場合には、タンディッシュキャスト毎や取鍋1ch毎に取り外さないで多数回の連続使用が可能である。
【0004】
これに対し、1タンディッシュキャスト毎にタンディッシュ内に残された溶鋼や残滓を水冷により凝固させてタンディッシュ内から取り除いた後にタンディッシュ構成物等を補修・整備して、当該タンディッシュを次のタンディッシュキャストに供するサイクルを繰り返すタンディッシュ操業においては、ポーラスプラグは水冷により濡れ、さらには深部にまで水が浸透してしまうため、乾燥なしに連続使用すると溶鋼中へのガスバブリング時に水蒸気爆発を発生する危険がある。したがって、このようなタンディッシュ操業においては、従来、タンディッシュの補修(1タンディッシュキャスト)毎に充分乾燥したものと交換して使用するのが基本であり、また一般的であって、複数のタンディッシュキャストに使用する、いわゆる連続使用は未だ実現されていない。
【0005】
一方で、省資源化、省コスト化等のためにこれらのポーラスプラグの再使用や再利用が求められているが、その本来の機能を活かした連続再使用はなされておらず、例えば特許文献1に示されるような、1タンディッシュキャスト後に解体した屑を耐火物の原料としてリサイクルする再利用方法が実施されているに止まっている。
【特許文献1】特開平8−188475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1タンディッシュキャスト毎に水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、タンディッシュの底部に装着されて使用されるポーラスプラグが複数のタンディッシュキャストに連続して使用することができない理由は、
(1)1タンディッシュキャスト後のタンディッシュ内の残溶鋼や残滓を早く凝固・冷却させるための散水による水冷工程により、ポーラスプラグ内へ水が浸透すること、
(2)タンディッシュの補修・整備作業中に補修材に含まれる水分がポーラスプラグ内に浸透すること、等にある。
【0007】
ポーラスプラグ内に浸透した水分が残ったまま鋳造を開始すると、ポーラスプラグ内の水分が溶鋼の熱により急激に蒸気化することで水蒸気爆発が発生し、当該ポーラスプラグ等を破壊するだけにとどまらず、鋳造の安全操業に支障をきたすという問題がある。また、ポーラスプラグ中に水分が残ることで、溶鋼中へのガス吹き性能が損なわれたり、溶鋼に水素が付加されて溶鋼品質の劣化を惹き起こす可能性もある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、タンディッシュキャスト毎に水冷による冷却過程を経て補修・整備されるタンディッシュに装着して使用されるポーラスプラグを、タンディッシュキャスト毎に交換せずに複数のタンディッシュキャストに連続して使用する方法を提供すること、ひいては省資源化、省力化及び省コスト化に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、タンディッシュキャスト毎に、水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、タンディッシュに装着されたポーラスプラグを連続使用するためのタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法であって、前記水冷の間及び水冷後にタンディッシュ内から液状の貯留水分が消失するまでの間、ポーラスプラグをタンディッシュに装着したままでそのポーラスプラグ内部の温度を100℃以上に保ち続けるか、またはポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュが保有する熱により100℃以上に回復させてタンディッシュ内から液状の貯留水分を除去し、その後、ポーラスプラグをタンディッシュに装着したままの状態で、当該ポーラスプラグを次のタンディッシュキャストに供して連続使用する、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法である。
【0010】
本発明においてタンディッシュは、1タンディッシュキャスト終了後の限られた時間内に残溶鋼や残滓を固化させて当該タンディッシュから除去するため、また整備作業が可能な温度域にまで当該タンディッシュ内を冷却するために水冷される。この一般的な水冷工程ではタンディッシュの内部に直接大量の水を供給するので、タンディッシュ内壁を構成する耐火物やその一部を成すポーラスプラグには大量の水分が浸透する。
【0011】
タンディッシュ内の水分は次のタンディッシュキャストでタンディッシュが溶鋼に接する前に除去する必要がある。このタンディッシュ内の水分のうち、タンディッシュ内壁付近の水分については、次のタンディッシュキャスト前に実施されるタンディッシュ内面の乾燥ないし予熱工程により除去することが可能であるが、ポーラスプラグ内の水分については、前記の乾燥ないし予熱工程では完全に除去することは困難である。そのおもな理由は、ポーラスプラグ内のポーラス質部分の組織が粗く気孔が多いために水分を大量に吸収し易く、かつポーラスプラグの長さがタンディッシュ背面まで達する等比較的長いのでタンディッシュ内面からの熱が短時間内には十分に伝わり難いということ等にある。
【0012】
すなわち、ポーラスプラグ内に多量の水分を残したままの状態でタンディッシュの温度を常温近くにまで冷却してタンディッシュの整備作業を行った後、単にタンディッシュ内部からその乾燥ないし予熱用の熱源等によってタンディッシュ内面側のポーラスプラグの表面のみから熱を供給する、一般的な通常のタンディッシュの加熱方法では、ポーラスプラグの内部までを例えば100℃以上の十分な温度に昇温させることは困難であり、またポーラスプラグの内部までを十分に昇温させるためには次のタンディッシュキャストに間に合わないほどの長時間を要する等、操業に支障を来すこともあり、現実的ではない。
【0013】
このようなことから、従来の通常のタンディッシュ操業においては、上述のとおり、一度使用したポーラスプラグをタンディッシュに装着したままで繰り返し使用することはできずに1タンディッシュキャスト毎に取り外して廃却せざるを得なかった。
【0014】
これに対し、前記の第1の本発明では、ポーラスプラグ内に水分を残留させないか、または残留してもその残留する水分を早期に除去する方法の一つとして、タンディッシュキャスト終了後にポーラスプラグ内の温度が100℃未満に低下しないように水冷操作を制御し、ポーラスプラグ内の温度を100℃以上に保ったままでタンディッシュの整備を完了するようにした。ポーラスプラグ内の温度を100℃以上すなわち水の気化温度以上に保ったままであれば、液状の水分はポーラスプラグ内に浸透し難い。
【0015】
また、水冷工程中にポーラスプラグの内部温度が一時的に100℃未満に低下した場合には、装着したポーラスプラグ内部の温度を当該タンディッシュの保有する熱により100℃以上に回復させること、すなわち当該ポーラスプラグ内部に浸透した水分を気化させて除去することで、当該ポーラスプラグ内に水分が残留することを防止するようにした。このようなポーラスプラグの一時的な100℃未満への温度低下は、ポーラスプラグの組織がタンディッシュの内張耐火物に比較して粗であることから、とくにポーラスプラグ内に集中的に水分が流入し易いためである。このように水冷用の水分の流入によって一時的にポーラスプラグ内の温度が100℃未満へ温度低下しても、タンディッシュ、とくにポーラスプラグ周囲の例えば羽口その他のタンディッシュ内張り用耐火物はポーラスプラグよりも高い温度を保って、高い熱量を保有している。したがって、水冷後に、その水分が浸透したポーラスプラグをタンディッシュに装着したまま置くことで、ポーラスプラグ内部の温度を、タンディッシュの保有する熱により100℃以上に回復させ、ポーラスプラグ内部の水分を除去することが可能である。
【0016】
このように、ポーラスプラグ内の温度を100℃以上に保ち続けるか、または水冷後のタンディッシュ内から液状の貯留水分が消失した後に、装着したポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュの保有する熱により100℃以上に回復させるためには、タンディッシュ、すなわち羽口その他のポーラスプラグ周囲のタンディッシュ内張耐火物温度を100℃以上、好ましくは150℃以上に保つことが望ましい。
【0017】
このような条件を満たすための操業上の手段としては、タンディッシュキャスト終了後の水冷工程において、前記各部の温度を監視しながら前記のポーラスプラグの内部温度条件を得ることができるように、水冷時の水の供給量、供給位置及び供給時間等の、ポーラスプラグやタンディッシュ内張耐火物の温度に影響を及ぼす要素を管理しながら操作を行うこと等がある。
【0018】
なかでも、供給する水を一部に集中させず、タンディッシュ内壁面の広範囲にスプレー状若しくは細い水柱状で分散させながら供給し、タンディッシュ底部に液状の水の貯留部(水浴)が生じないように供給量を管理することが有効である。とくにタンディッシュ内壁面の上部を中心に前記状態の水を供給することで、その水はタンディッシュ内壁面を下降する間に気化し、タンディッシュ内壁面を冷却しながらポーラスプラグ内に液状の水分が貯留するような過度な水の供給を避けつつ、羽口その他のポーラスプラグ周囲のタンディッシュ内張耐火物及びポーラスプラグ内部の温度を100℃以上、若しくは150℃以上に保つことができる。
【0019】
また、タンディッシュ内に液状の貯留水分が残存した場合には、装着したポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュが保有する熱により100℃以上に回復させることで、前記貯留水分を消失させることができる。
【0020】
前記のポーラスプラグ内部の温度及びタンディッシュ内張耐火物の温度を測定及び管理する手段としては、ポーラスプラグの内部及びそれに近接するタンディッシュ内張耐火物の内部やタンディッシュ底部に熱電対等の測温装置を設置して測温し、それらの温度が100℃以下にならないように監視し、その温度に応じて供給水量等を調整する方法を採りうる。また、タンディッシュ内に水浴が存在すれば100℃を超えないので、水浴の存在を監視するようにしてもよい。
【0021】
このように第1の本発明によって、ポーラスプラグ内への水分の浸透を抑制するか残留水分を除去すれば、その後に一般的なタンディッシュの乾燥ないし予熱のための加熱方法を採っても、使用後の水冷工程を経たポーラスプラグを装着したままの状態で当該ポーラスプラグを次のタンディッシュキャストに供して連続使用することが可能になる。
【0022】
第2の本発明は、タンディッシュ内への溶鋼の充填開始から溶鋼の排出を終了するまでの連続して溶鋼を保持する1工程であるタンディッシュキャスト毎に、水冷並びに前記水冷後にタンディッシュの補修及び整備を行うタンディッシュの連続鋳造操業において、タンディッシュに装着されたポーラスプラグを連続使用するためのタンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法であって、前記水冷により濡れた使用後のポーラスプラグを装着したままの状態で、タンディッシュの乾燥ないし予熱のためにタンディッシュ内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガスをタンディッシュ内部からポーラスプラグ内に供給し流通させることによってポーラスプラグ内の水分を蒸発させて除去し、その後、当該ポーラスプラグを次のタンディッシュキャストに供して連続使用する、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法である。
【0023】
現実の鋳造操業においては、操業条件の変動要素が多いことから、前記の第1の本発明のように、ポーラスプラグ内部の温度を100℃以上に保ち続けるか、またはポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュが保有する熱により100℃以上に回復させることができない場合が起こり得る。
【0024】
このように第1の本発明を実施できなくて、ポーラスプラグ内部に液状の水分が貯留しているような場合に、単にタンディッシュ内部からその乾燥ないし予熱用の熱源等によってタンディッシュ内面側のポーラスプラグの表面のみから熱を供給する、一般的な通常のタンディッシュの加熱方法では、ポーラスプラグの内部までを例えば100℃以上の十分な温度に昇温させることは困難であり、仮にポーラスプラグ内部の水分をほぼ完全に除去する程度に昇温させようとしても極めて長時間を要して操業に支障を来し、現実的ではない。
【0025】
これらの状況下でもポーラスプラグ内部の水分を確実に除去するために、第2の本発明では、タンディッシュ内部からポーラスプラグ内に、タンディッシュの乾燥ないし予熱のためにタンディッシュに供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガス(以下、単に「燃焼排ガス」という。)を供給し、流通させる。これにより、短時間にかつ確実にポーラスプラグ内部の温度を上昇させ、ポーラスプラグ内部の水分を確実に除去することができる。
【0026】
ポーラスプラグの内部に熱源となるガスを供給し、流通させる方法としては、タンディッシュ外部、すなわちポーラスプラグの金属製の不活性ガス供給管側から熱源ガスを供給し、流通させることも可能ではある。しかし、第2の本発明のように、タンディッシュ内部からポーラスプラグ内に燃焼排ガスを供給し、ポーラスプラグの金属製の不活性ガス供給管側に向かって流通させる方法の方が好ましい。すなわち、第2の本発明の方法であれば、ポーラスプラグの耐火物部分から高温の燃焼排ガスが供給されて、金属製の不活性ガス供給管側には温度が下がった状態で燃焼排ガスが流通するので、金属製の不活性ガス供給管が高温になること、及びそれによる変形や損傷を生ずることを抑制することができる。また、ポーラスプラグ内に残留する水分を定量的に評価するための温度管理が容易である。
【0027】
これに対し、前者の方法であれば、金属製の不活性ガス供給管側に高温の熱源ガスを供給する必要があることから、金属製のガス供給管に熱的な負担がかかってその変形や損傷を来す虞があり、また、ポーラスプラグ内に残留する水分を定量的に評価するための温度管理が困難である。
【0028】
なお、前記の第1の本発明における、ポーラスプラグ内部の温度を100℃以上に保ち続けるか、またはポーラスプラグ内部の温度をタンディッシュが保有する熱により100℃以上に回復させる方法は、タンディッシュが鋳造中に溶鋼から得た熱を、放熱により消失する前に利用して各部の温度を管理することを前提とする。ただし、現実の鋳造操業においては、工程の他の要因によりタンディッシュが得る熱の程度は大きく変動して、その熱を利用する温度管理方法には困難を伴うこともある。さらにはポーラスプラグ内の温度を100℃以上に保ち続けるかまたは回復させるためにタンディッシュ内壁や敷等の耐火物の温度は高温状態を保つことになり、そのような高温のタンディシュ内に人が入って補修する作業、例えば堰や羽口のセット作業等は労働環境面や安全面からも好ましくない場合もある。これらの場合には、第2の本発明の方法を採ることが好ましい。
【0029】
第3の本発明は、前記第2の本発明において、タンディッシュ内の耐火物の表面温度が150℃以上となった時点を、前記の燃焼排ガスをポーラスプラグ内へ供給する開始点とし、ポーラスプラグの内部の温度が100℃を超えた時点以降を乾燥の終点とする、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法である。
【0030】
タンディッシュ内の耐火物の表面温度が150℃未満の段階では、タンディッシュ内壁付近の耐火物には依然水分が多く残留していて、この段階では前記の燃焼排ガスにも多量の水蒸気が含まれている可能性が高い。このような多量の水蒸気を含む燃焼排ガスをポーラスプラグ内に流通させると、その水蒸気がポーラスプラグ内で凝結してポーラスプラグ内にさらに水分を供給することになる。
【0031】
そこで、タンディッシュ内壁付近の耐火物の水分がほぼ除去され、前記の燃焼排ガス中にもほとんど水蒸気が含まれていないと判断できる、タンディッシュ内の耐火物の表面温度が150℃以上となった時点を、前記の燃焼排ガスをポーラスプラグ内へ供給する開始点とすることが好ましい。そして、ポーラスプラグの内部の温度が100℃に到達した時点以降ではポーラスプラグ内に残留する水分がほぼ除去されたと判断できるので、その時点をポーラスプラグの乾燥を終了することができる時点とすることができる。したがって、第3の本発明では、ポーラスプラグの内部の温度が100℃に到達した時点以降を、ポーラスプラグ内に供給する熱源としての燃焼排ガスの供給を停止する時点とする。
【0032】
しかし、ポーラスプラグの元管部分の温度が約260℃を超えると、金属製のガス供給管に負担がかかってその変形や損傷を来す虞があるので、ポーラスプラグの元管部分の温度を約260℃以下の温度に維持する必要がある。この温度維持には、元管部分に外部から強風を当てて空冷する等、適宜な方法を採り得る。
【0033】
第4の本発明は、前記第2の本発明または前記第3の本発明において、前記の燃焼排ガスをポーラスプラグ内へ供給する開始点と、ポーラスプラグの乾燥の終点とをタンディッシュ予熱工程を制御するプログラムに組み込んで、前記プログラムによりタンディッシュ加熱装置及び前記排気の供給に用いる装置を操作して、当該ポーラスプラグの乾燥工程をタンディッシュ予熱工程と一体で制御する、タンディッシュ用ポーラスプラグの使用方法である。
【0034】
タンディッシュ予熱工程を制御するプログラムとは、ガスバーナー、ガス供給及び供給量管理装置、これら装置等を制御するコンピュータ等の、タンディッシュ予熱工程を制御するために機能する装置等一連のシステムの動作を、当該タンディッシュの特定部位の温度測定及びそのフィードバックにより当該システムの予め規定された乾燥ないし予熱パターンに調整・制御する動作基準及びその時系列の制御命令をいい、これはコンピュータ制御による自動であると手動であるとにかかわらない。
【0035】
ポーラスプラグ内への燃焼排ガスの供給開始点とポーラスプラグの乾燥の終点とにおける前記燃焼排ガスの管理動作(以下、単に「ポーラスプラグ乾燥プログラム」という。)を前記のタンディッシュ予熱工程を制御するプログラムに組み込むことで、タンディッシュ予熱工程の一部として一体的にポーラスプラグの乾燥を行うことができる。
【0036】
具体的なポーラスプラグ乾燥プログラムとしては、タンディッシュ内のポーラスプラグに近い部分の耐火物表面、ポーラスプラグ内、ポーラスプラグの元管等の温度測定を行い、その値をリアルタイムでフィードバックし、各部が所定の温度に達した時点で、ポーラスプラグ内への燃焼排ガスの供給を開始し、停止する等、さらにはポーラスプラグの元管の空冷等の開始若しくは停止、または空冷等の程度の調整等の動作を行う、等である。
【0037】
このポーラスプラグ乾燥プログラムは、タンディッシュ予熱工程を制御するプログラムをコンピュータによって自動的に制御する方法を採る場合にはより一体的にかつ正確に動作させ、管理することができ、とくに有効である。すなわち、このような一体的なプログラムによる方法を採ることで、ポーラスプラグ内に残留する水分量を定量的にかつ確実に把握し、完全な乾燥を行うことが可能となる。
【0038】
なお、前記のポーラスプラグの乾燥工程の前または後の受鋼前の段階において、当該ポーラスプラグの通気特性等の検査を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、次のような効果を得ることができる。
【0040】
1.タンディッシュキャスト毎に水冷による冷却過程を経て補修・整備されるタンディッシュに装着して使用されるポーラスプラグを、タンディッシュキャスト毎に交換せずに複数のタンディッシュキャストに連続して使用することができる。
【0041】
2.ポーラスプラグ内に残留する水分を除去することができ、しかもその水分の残留量ないし乾燥状態を定量的に推定し把握することができ、ポーラスプラグ内に水分が残留することに起因する水蒸気爆発等の事故を未然に防止することができ、安全な操業に寄与することができる。
【0042】
3.単に使用済みのポーラスプラグを原料としてリサイクルするだけにとどまらず、繰り返し使用することで省資源化に寄与することができる。
【0043】
4.燃焼排ガスすなわち排熱を利用することで、省エネルギーに寄与することができ、地球環境保全にも寄与することができる。
【0044】
5.ポーラスプラグの交換の頻度が減少する等により省力化が可能となり、また労働環境の改善にも寄与することができる。
【0045】
6.作業者の個人差を排除して、精度の高い安定した、かつ安全な操業が可能となる。
【0046】
7.耐火物原単価の低減、作業費の削減等により、省コスト化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1では、タンディッシュとポーラスプラグとの配置、及びポーラスプラグ内に燃焼排ガスを流通させる方法の例を示す。
図1にポーラスプラグを装着したタンディッシュの縦断面(水冷中)を示す。また、図2にポーラスプラグの縦断面を示す。
【0049】
図1において、タンディッシュ10の内壁面(タンディッシュ内耐火物1)全体に上部の冷却水噴射装置4から水冷用の水が供給されている。また、タンディッシュ10の底部にはポーラスプラグ2が装着されている。このポーラスプラグ2のタンディッシュ内側方向の面はタンディッシュの底部にてその内部に露出している。このタンディッシュ内面に露出した面は、溶鋼中にガスを吹き出す面であるが、水冷時にはこの面から冷却用の水がポーラスプラグ2の内部に浸透する。
【0050】
図3に図1により水冷工程を経たタンディッシュの乾燥ないし予熱工程における加熱時の状態を示す。
【0051】
この工程において、加熱装置としてのバーナー5からタンディッシュ10内に供給された加熱用ガスの燃焼後の燃焼排ガス6の一部を、ポーラスプラグ2のタンディッシュ内面側の開放面からその内部(下方)へ供給する。この燃焼排ガスのポーラスプラグ2内への供給は、ポーラスプラグ2の元管9に接続したイジェクター7によって行う。
【0052】
イジェクター7の基本的な構造の概念図を図4に示す。このイジェクター7では、高速の空気の供給管7aをポーラスプラグの元管9に90度を下まわる角度(図4中のθ度)で接続し、この供給管7aから高速の空気を流通させる。この高速の空気流によりポーラスプラグの元管9側の内部が負圧となる。タンディッシュ内圧力はそのポーラスプラグの元管9の圧力よりも高いため、タンディッシュ内の燃焼排ガスがポーラスプラグの元管9側に流入する。
【0053】
このようなイジェクター方式以外にも、例えば吸引機等のポーラスプラグの元管内を負圧にすることが可能な装置を使用することによって、前記イジェクター方式と同様にタンディッシュ内から燃焼排ガスをポーラスプラグ内に流通させることは可能である。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、前記実施例1のイジェクターによって燃焼排ガスをポーラスプラグ内に流通させた場合の温度上昇の効果を、イジェクターへの高速の空気の供給条件を変動させて調査したものである。
【0055】
表1にその結果を示す。
【表1】


【0056】
表1に示す各実施例及び比較例の試験は、それぞれ通常の1タンディッシュキャストによる溶鋼の鋳造を終えたタンディッシュを、通常の水冷により冷却し、タンディッシュ整備(待機)場のバーナーを使用して乾燥ないし予熱工程に供することによって行った。
【0057】
ポーラスプラグの形状は、図2に示す緻密質耐火物層8Dの外径D=140mm、ポーラス組織部8Pの外径d=30mm、耐火物部全長L=120mmであり、測温位置は、タンディッシュ内底部のポーラスプラグに近接した耐火物表面のA点(図3参照)、ポーラスプラグ内部のポーラス組織部下端付近のB点(図2参照)とし、熱電対を設置して各部の温度測定を行った。
【0058】
各ポーラスプラグの試料は、加熱開始から170分を経過した後タンディッシュから取り外し、直ちにその重量を測定し、さらに110℃の乾燥炉内にて24時間乾燥させた後その重量を測定し、その重量差を残留水分量とした。表1中の値はイジェクターを使用していない試料(表1中比較例1)の残留水分量を100とした指数である。
【0059】
表1に示すように、ポーラスプラグ内に燃焼排ガスを流通させてポーラスプラグ内部の乾燥を試みた実施例1〜5のうち、加熱開始から80分後でB点が100℃を超え、加熱開始から170分後には168℃を超えた実施例2〜5では、残留水分量は0、すなわち完全な乾燥が行えた。
【0060】
一方、ポーラスプラグ内に燃焼ガスを流通させたものの、加熱開始から80分後でB点が83℃しかなく、加熱開始から170分後にも約125℃に止まった実施例1では、残留水分量は8と、乾燥が完全ではなかった。この程度の残留水分量であれば実使用では問題を生じないが、より完全で安全な乾燥状態を得るためには、加熱開始から170分後にB点においては150℃以上の温度にすることが好ましい。
【0061】
なお、B点の温度が170分後に300℃を超えた実施例4及び実施例5では肉眼による元管の変形が観られた。元管の機能を損なう程の変形や損傷ではないものの、操業中のポーラスプラグ使用時の不活性ガスの漏れを防止するためには、乾燥時の元管の冷却等により、その温度をさらに降下させる等の処置を行うことが好ましい。
【0062】
これら実施例ではポーラスプラグ内部の水分は完全に除去できたのに対し、170分後でもB点の温度が73℃に止まった比較例1では、下端からの水滴の滴下が観察できる程度にポーラスプラグ内部に水分が残留した。
【実施例3】
【0063】
実施例3は、ポーラスプラグ内への燃焼排ガスの供給開始点とポーラスプラグの乾燥の終点、及びこの乾燥工程のプログラムを決定するために、タンディッシュ予熱工程とポーラスプラグ内部等の昇温の関係を調査したものである。
【0064】
タンディッシュ、ポーラスプラグの形状、測温位置、加熱装置、燃焼排ガスのポーラスプラグ内への供給手段としてのイジェクター方式等の条件は、実施例2と同じである。
【0065】
図5に加熱時間に伴うタンディッシュ内耐火物表面及びポーラスプラグ内部の温度推移の例を示す。
【0066】
加熱開始初期にはタンディッシュ内面の耐火物には水分が多量に含まれており、初期の燃焼排ガス中にはこの水分に起因する水蒸気が多量に含まれる。加熱開始後30分(図5中の領域1終点)近く頃にはタンディッシュ内表面の温度が150℃を超え、急激に温度が上昇し始める。これは、ほぼ大気圧である当該加熱条件下では、耐火物の表面温度がほぼ100℃を維持している間に耐火物に含まれていた水分は蒸発を続け、その温度が100℃を超えて上昇し始めた頃にはその水分がほぼ消失したことを示す。さらに水蒸気が燃焼排ガス中に入らないようにするために、タンディッシュ内耐火物表面の温度が150℃に達した時点以降、すなわち加熱開始から30分経過時点を燃焼排ガスのポーラスプラグ内への供給開始点とした。
【0067】
タンディッシュの加熱は、加熱経過時間に伴って加熱用ガスの流量を増加させ、その燃焼排ガスの温度を上昇させるパターンのプログラムをコンピュータ制御で実行して行っている。図6にそのプログラム例を示す。
【0068】
ポーラスプラグ内に供給される燃焼排ガス温度もこのプログラム制御にしたがって変動する。このタンディッシュ加熱のプログラム制御においては、加熱開始から70分経過時点以降にポーラスプラグ内部の温度が100℃を超える。したがって、この加熱開始から70分経過時点以降をポーラスプラグ内に供給する燃焼排ガスを停止する、すなわち乾燥の終了点とすることが可能である。
【0069】
さらにタンディッシュ加熱時間経過に伴う、ポーラスプラグ内部温度と残留水分量の推移を調査した結果を図7に示す。この試験方法は前記実施例2における残留水分量の測定試験と同様である。
【0070】
この結果から、ポーラスプラグ内部の温度が100℃を超えた直後に、その残留水分量は当初の約10%を下まわっており、ほぼ完全に除去されるのはポーラスプラグ内部の温度が150℃を超えた時点以降であることがわかる。
【0071】
このような結果から、本実施例では、ポーラスプラグ内に燃焼排ガスを供給する開始時点をタンディッシュ加熱開始30分後とし、前記供給を停止する時点をタンディッシュ加熱開始120分後とするプログラムを作成し、前記タンディッシュ加熱のプログラムに組み込み、一体として制御するプログラムとし、実操業に供した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ポーラスプラグを装着したタンディッシュの縦断面(水冷中)を示す。
【図2】ポーラスプラグの縦断面を示す。
【図3】図1により水冷工程を経たタンディッシュの乾燥ないし予熱工程における加熱時の状態を示す。
【図4】ポーラスプラグ内部へ燃焼排ガスを供給するためのイジェクターの概念図を示す。
【図5】加熱時間に伴うタンディッシュ内耐火物表面及びポーラスプラグ内部の温度推移の例を示す。
【図6】タンディッシュの加熱プログラム(加熱時間に伴う加熱用ガス供給量設定)の例を示す。
【図7】加熱時間に伴うポーラスプラグ内部の温度推移及びポーラスプラグ内の残留水分量の推移の例を示す。
【符号の説明】
【0073】
1 タンディッシュ内耐火物
2 ポーラスプラグ
3 冷却水
4 冷却水噴射装置
5 加熱用装置(バーナー)
6 燃焼排ガス
7 イジェクター
7a 空気の供給管
8P ポーラスプラグのポーラス組織部
8D ポーラスプラグの緻密質耐火物層
9 ポーラスプラグの元管(ガス供給管)
10 タンディッシュ
【出願人】 【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】 【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益

【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人


【公開番号】 特開2008−23574(P2008−23574A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−201446(P2006−201446)