トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金

【発明の名称】 金属射出成形装置および金属射出成形方法
【発明者】 【氏名】田中 達也

【氏名】山口 和郎

【要約】 【課題】ストローク量を有効利用するとともに初期圧力を昇圧させることにより平均圧力を増加させることができる射出成形装置および金属射出成形方法を提供する。

【構成】本発明に係る射出成形装置においては、金型に射出される半凝固スラリーを保持するシリンダと、半凝固スラリーを金型に射出するプランジャと、プランジャ射出装置とを含む。プランジャにより半凝固スラリーを金型に射出させる前に、プランジャの進行側圧油室330aおよび後退側圧油室330bの圧力を所定の射出圧力まで互いに釣り合いを保たせながら昇圧させる。そして、プランジャにより半凝固スラリーを金型に射出させる際に、プランジャの後退側圧油室330bの圧力を減圧する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダにおいて、プランジャを進行させる側の進行側圧油室および前記プランジャを後退させる側の後退側圧油室の圧力差を変化させることにより、射出シリンダ内の前記プランジャを進行させて当該射出シリンダ内から金型内へ溶融金属を射出する金属射出成形方法において、
射出前から射出時に亘って前記進行側圧油室に対して油圧源からの圧油の圧力を付与しておくとともに、射出前において前記プランジャが進行しないように前記後退側圧油室に対して前記油圧源からの圧油の圧力を付与しておき、射出時に前記後退側圧油室から圧油を排出して当該後退側圧油室内を減圧することにより射出を開始することを特徴とする金属射出成形方法。
【請求項2】
金型に射出される溶融金属を内部に保持する射出シリンダ、射出時に前記射出シリンダ内を進行するプランジャ、および前記プランジャを駆動する駆動装置を備えた金属射出成形装置において、
前記駆動装置は、
前記プランジャを進行させる側の進行側圧油室、および前記プランジャを後退させる側の後退側圧油室を有する油圧シリンダと、
前記進行側圧油室に対して油圧源からの圧油を供給する第1電磁弁と、
前記後退側圧油室に対して前記油圧源からの圧油を供給する第2電磁弁と、
前記後退側圧油室からタンクへ圧油を排出するバルブ装置と、
前記第1電磁弁、前記第2電磁弁および前記バルブ装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、射出前から射出時に亘って前記進行側圧油室に対して圧油を供給するべく第1電磁弁を開放させ、かつ射出前から射出時に亘って前記後退側圧油室に対して圧油を供給するべく第2電磁弁を開放させるとともに、射出前に前記バルブ装置を閉塞させ、射出時において前記バルブ装置を開放させて前記プランジャにより射出動作を開始させるように制御することを特徴とする金属射出成形装置。
【請求項3】
前記バルブ装置は、
前記第2電磁弁を介することなく前記後退側圧油室に対して接続された絞り弁であることを特徴とする請求項2記載の金属射出成形装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、軽合金等の金属材料を用いて射出成形を行なう金属射出成形装置および金属射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽合金を成形材料とする金属射出成形装置に対して種々の開発がなされている。例えば、特許文献1には、精度の良い計量が可能である軽合金の金属射出成形装置について開示されている。
【0003】
特許文献1記載の金属射出成形装置によれば、初期段階でのガスの混入を抑制し、チクソモールド法のような剪断履歴等の熱履歴のばらつきを防止することができる。その結果、品質の良い半凝固スラリーの生成およびその精度の良い計量が可能であり、バリやヒケ巣の少ない高精度な軽合金の射出成形を行なうことができる。
【特許文献1】特開2004−025291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された金属射出成形装置においては、金型に高温高圧で溶融金属を射出する時間を確保するため、プランジャのストローク量を多く取らねばならず、結果的に金属射出成形装置の大きさが大きくなっていた。すなわち、金型に高温高圧で溶融金属を射出する時間は、金型に対して溶融金属を射出させるためのプランジャのストローク量によって決定されるものである。
【0005】
金属射出成形装置の大きさを限りなく大きくすることは可能であるが、フットパターンとの関係から、溶融金属を射出する時間を確保しつつ、ストローク量を短くするべきであるが、特許文献1記載の金属射出成形装置では、電磁弁の開閉特性によって射出成形開始直後から所望するプランジャ速度を用いて溶融金属の射出をすることができないという課題がある。
【0006】
すなわち、特許文献1の金属射出成形装置では、電磁弁の開閉によりプランジャの動作を制御している。ここで、一般的な電磁弁では、開閉時間に約40msec前後の開閉時間がかかる。そのため、プランジャにより溶融金属を射出する際、即座に所望の速度を発生させることができず、約40msec遅延した後に所望の速度で溶融金属を射出させる状態となっている。また、この約40msecの間に限られたストローク量の一部が使用されるとともに、射出動作の開始直後に低速で射出された溶融金属が金型に入ってしまう。そのため、低速で射出された溶融金属が、冷えてしまい鋳道不良を引き起こすという課題が生じている。
【0007】
本発明の目的は、ストローク量を有効利用するとともに初期圧力を昇圧させることにより射出開始直後より所望のプランジャ速度を得ることができる金属射出成形装置および金属射出成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
(1)
本発明に係る金属射出成形方法は、油圧シリンダにおいて、プランジャを進行させる側の進行側圧油室およびプランジャを後退させる側の後退側圧油室の圧力差を変化させることにより、射出シリンダ内にプランジャを進行させて当該射出シリンダ内から金型内へ溶融金属を射出する金属射出成形方法において、射出前から射出時に亘って進行側圧油室に対して油圧源からの圧油の圧力を付与しておくとともに、射出前においてプランジャが進行しないように後退側圧油室に対して油圧源からの圧油の圧力を付与しておき、射出時に後退側圧油室から圧油を排出して当該後退側圧油室内を減圧することにより射出を開始するものである。
【0009】
本発明に係る金属射出成形方法においては、射出前から射出時に亘って進行側圧油室に対して油圧源からの圧油の圧力を付与しておくとともに、射出前においてプランジャが進行しないように後退側圧油室に対して油圧源からの圧油の圧力を付与しておき、射出時に後退側圧油室から圧油を排出して当該後退側圧油室内を減圧することにより射出を開始するものである。
【0010】
この場合、金型に溶融金属を射出する前に、第1電磁弁および第2電磁弁を開くことにより進行側圧油室および後退側圧油室の両方の圧力を高めることができる。それにより、この時点(射出前)において、プランジャは駆動せず、射出シリンダ内を進行しないためストローク量が減少しない。そして、金型に溶融金属を射出する際に、進行側圧油室に油圧源から圧油が供給されている状態で後退側圧油室の圧力を即時に低下させることができる。それにより、プランジャが速度零の状態から素早く加速する。したがって、プランジャの動作を短時間で立ち上げることができ、高圧高速で長時間動作させることができるので、金型に溶融金属を射出させる際にストローク量を有効利用することができる。
【0011】
(2)
本発明に係る金属射出成形装置は、金型に射出される溶融金属を内部に保持する射出シリンダ、射出時に射出シリンダ内を進行するプランジャ、およびプランジャを駆動する駆動装置を備えた金属射出成形装置において、駆動装置は、プランジャを進行させる側の進行側圧油室、およびプランジャを後退させる側の後退側圧油室を有する油圧シリンダと、進行側圧油室に対して油圧源からの圧油を供給する第1電磁弁と、後退側圧油室に対して油圧源からの圧油を供給する第2電磁弁と、後退側圧油室からタンクへ圧油を排出するバルブ装置と、第1電磁弁、第2電磁弁およびバルブ装置を制御する制御装置とを備え、制御装置は、射出前から射出時に亘って進行側圧油室に対して圧油を供給するべく第1電磁弁を開放させ、かつ射出前から射出時に亘って後退側圧油室に対して圧油を供給するべく第2電磁弁を開放させるとともに、射出前にバルブ装置を閉塞させ、射出時においてバルブ装置を開放させてプランジャにより射出動作を開始させるよう制御するものである。
【0012】
本発明に係る金属射出成形装置においては、制御装置が、射出前から射出時に亘って進行側圧油室に対して圧油を供給するべく第1電磁弁を開放させ、かつ射出前から射出時に亘って後退側圧油室に対して圧油を供給するべく第2電磁弁を開放させるとともに、射出前にバルブ装置を閉塞させ、射出時においてバルブ装置を開放させてプランジャにより射出動作を開始させるよう制御する。
【0013】
この場合、金型に溶融金属を射出する前に、第1電磁弁および第2電磁弁を開くことにより進行側圧油室および後退側圧油室の両方の圧力を高めることができる。それにより、この時点(射出前)において、プランジャは駆動せず、射出シリンダ内を進行しないためストローク量が減少しない。そして、金型に溶融金属を射出する際に、進行側圧油室に油圧源から圧油が供給されている状態で後退側圧油室の圧力を即時に低下させることができる。それにより、プランジャが速度零の状態から素早く加速する。したがって、プランジャの動作を短時間で立ち上げることができ、高圧高速で長時間動作させることができるので、金型に溶融金属を射出させる際にストローク量を有効利用することができる。
【0014】
(3)
バルブ装置は、第2電磁弁を介することなく後退側圧油室に対して接続された絞り弁であることが好ましい。
【0015】
この場合、バルブ装置は、第2電磁弁を介することなく後退側圧油室に対して接続された絞り弁であるので、第2電磁弁の開閉動作と射出時の絞り弁の動作とを分けて行なうことができる。その結果、絞り弁を開いて射出を開始すると同時に第2電磁弁を閉じるようにすれば、プランジャを高圧高速でより長時間動作させることができるので、金型に溶融金属を射出させる際に射出シリンダ内のストローク量をより有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。
(一実施の形態)
図1は、本発明に係る一実施の形態の金属射出成形装置の一例を示す模式図である。
【0017】
図1に示す射出成形装置100は、主に成形材料投入部10、垂直型配置バレル部20、シリンダ部30および型締め部40を含む。
【0018】
成形材料投入部10は、溶解炉11に接続されるホッパー12を含む。垂直型配置バレル部20は、バレル21、スクリュー22、貯留部23、冷却手段24(複数の温度制御ジャケット24a)、連通流路25、駆動モーター26、スクリュー用油圧シリンダ27、供給口28、シリンダロッド29を含む。シリンダ部30は、シリンダ31、プランジャ32、プランジャ射出装置33、計量部34、ノズル部35、バルブ装置36およびプランジャ用油圧シリンダ37を含む。
【0019】
型締め部40は、基台41、リンクハウジング42、タイバー43、固定板44、可動盤45、型締めシリンダ46、シリンダロッド47、複数のリンク48、押出しシリンダ49aおよび押出しロッド49bを含む。金型60は、固定金型61および移動金型62からなる。
【0020】
以下、本実施の形態にかかる金属射出成形装置100について説明する。本実施の形態に係る金属射出成形装置100は、成形材料投入部10に垂直配置バレル部20が接続されている。垂直配置バレル部20の下方にシリンダ部30が設けられ、シリンダ部30に型締め部40が連通可能に設けられている。また、型締め部40には、金型60が設けられている。
【0021】
金属射出成形装置100の成形材料投入部10に接続される溶解炉11は、特に種類は問わず、高周波誘導炉あるいは電磁誘導加熱炉等からなる。溶解炉11は、金属溶湯を送るためのポンプ等の装置によりホッパー12に連通されている。なお、溶解炉11をホッパー12よりも高い位置に設置する場合には、ポンプ等を用いることなく、大気圧や重力を利用して溶解炉11に内部の湯面より下方の位置からホッパー12の上部ないし中部に連通する流路を介して溶湯を送るようにしてもよい。ホッパー12は、溶解炉11で溶解された溶融金属を受け入れてこれを溶融状態で貯溜するものである。また、ホッパー12には、加熱ヒータ等の温度制御装置が設けられている。さらにホッパー12内には、アルゴン等の不活性ガスが充満されており、溶融金属の湯面を不活性ガスでシールするようにしている。なお、必要によりホッパー12内の溶融金属を攪拌する攪拌装置を設けて、攪拌作用を付与してもよい。このホッパー12の開口部はバレル21の供給口28に連通されている。
【0022】
また、実質的に縦向きに配置された垂直配置バレル部20のバレル21の上部には、溶融金属が供給される供給口28が設けられる。バレル21の内部には、回転自在で、かつバレル21軸方向に進退自在のスクリュー22が設けられる。このスクリュー22が後退することによってバレル21内下部に貯留部23が形成される。このスクリュー22は、その下端がバレル21内で自由端となるように片持ち状に配置されている。
【0023】
また、バレル21の上端にはホローシャフトタイプの駆動モーター26が固定され、この駆動モーター26には上下方向に出退するシリンダロッド29を有するスクリュー用油圧シリンダ27が固定されている。
【0024】
スクリュー22の上端の軸部とスクリュー用油圧シリンダ27のシリンダロッド29とは連結されており、この連結された軸が、ホローシャフトタイプの駆動モーター26の駆動軸の穴を貫通するように設けられている。この連結された軸は、モーター駆動軸に対して回転方向に不動で且つ軸方向に移動自在に係合している。このため、本実施形態のスクリュー押出し機では、スクリュー用油圧シリンダ27のシリンダロッド29を下方に突出することにより駆動モーター26を介してスクリュー22を軸方向下方に移動させ、これにより、バレル21内の下端部(貯留部23)に溜まっている成形材料を外部に押し出すことができるようになっている。
【0025】
バレル21の外周面は冷却手段24で覆われている。この冷却手段24は、上下方向に分離された複数の温度制御ジャケット24aよりなる。そして、この温度制御ジャケット24a内に成形材料である金属溶湯の温度よりも低い油等の熱媒体を流通させることにより、バレル21内の溶融金属が液相温度以下でかつ固相温度以上の温度範囲になるように冷却できるようになっている。例えば、金属溶湯がマグネシウムを主体とする場合、温度範囲は560℃以上650℃以下で、また、溶融金属における固相率が0%以上で50%以下となる温度範囲であることが好ましく、0%以上30%以下となる温度範囲であることがより好ましい。
【0026】
なお、バレル21内の溶融金属を高精度に温度制御するために、冷却手段24の各温度制御ジャケット24aは加熱機能も兼ね備えている。
【0027】
また、スクリュー用油圧シリンダ27は、軸方向上方に移動した際に、バレル21内下部に少なくも成形品体積よりも大きな容積の貯留部23が形成できるように構成されている。さらに、この貯留部23を形成する位置から連通流路25を閉止可能な位置まで移動するのに十分なストロークを有している。バレル21の下端に設けられた連通流路25を介してシリンダ部30が接続される。
【0028】
シリンダ部30には、前方(下流)にバルブ装置36を備えたノズル部35を有するシリンダ31と、シリンダ31内部でシリンダ31の軸に沿って進退移動自在なプランジャ32とが設けられる。このプランジャ32が後退することによってシリンダ31内部前方に計量部34が形成され、プランジャ32が前進することによって半凝固スラリーHSがノズル部35から射出される。この計量部34の容積は、成形品を得るのに必要な容量となるようプランジャ32の後退量により適宜設定することができる。
【0029】
また、このプランジャ用油圧シリンダ37は、計量部34を形成する位置からプランジャ32が前進することによりシリンダ31の先端部近傍に接続された連通流路25を閉止可能な位置まで移動するのに十分なストロークを有している。
【0030】
プランジャ32は、プランジャ用油圧シリンダ37の油圧力で駆動する。なお、プランジャ用油圧シリンダ37には、後述する油圧制御装置が連通される。なお、ノズル部35近傍に設けられたバルブ装置36は、射出時以外では閉じた状態となっている。
【0031】
型締め部40には、基台41上に立設されたリンクハウジング42と、このリンクハウジング42に水平方向のタイバー43を介して固定された固定板44と、この固定板44に固定された固定金型61と、タイバー43に対して摺動自在に貫通支持された可動盤45と、固定金型61に対して水平方向に開閉自在となるよう可動盤45に固定された移動金型62とが設けられている。
【0032】
リンクハウジング42の外面中央部には型締めシリンダ46が固定され、この型締めシリンダ46のシリンダロッド47の先端は可動盤45の中央部に連結されている。このリンクハウジング42と可動盤45とは、接近したときに折り畳まれ、かつ離反したときに水平方向にほぼ一直線に並ぶ複数のリンク48で連結されている。
【0033】
可動盤45のリンクハウジング42側の側面には押出しシリンダ49aが設けられ、この押出しシリンダ49aの押出しロッド49bは可動盤45を貫通して移動金型62の製品突出し機構に連結されている。
【0034】
したがって、この型締め部40では、型締めシリンダ46のシリンダロッド47を突出させて複数のリンク48を一直線上に伸びた状態にし、この複数のリンク48の突っ張り状態とすることにより、移動金型62を固定金型61に対して強力に押圧できるようになっている。また、製品の離型は、押出しシリンダ49aの押出しロッド49bを突出させて製品突出し機構を作動させることにより行なう。
【0035】
次いで、この金属射出成形装置100の動作および軽合金の金属射出成形方法について軽合金が半凝固スラリーである場合を例に挙げて説明する。
【0036】
まず、溶解炉11で溶解された軽合金からなる金属(成形材料)の溶湯がホッパー12内に送られる。ホッパー12内の溶融金属は、ホッパー12に設けられた加熱ヒータ等の温度制御装置によって、均一の温度に保たれている。溶湯は、ガスシールされた状態でバレル21の供給口28に供給され、各温度制御ジャケット24aによって液相温度以下でかつ固相温度以上に冷却されて樹枝状晶に成長する。この樹枝状晶は回転するスクリュー22の剪断作用によって攪拌破砕し、均一で微細な結晶粒が生成されて半凝固スラリーに遷移する。
【0037】
この場合、プランジャ射出装置33のプランジャ32は、連通流路25を閉止する位置まで前進している。そして、スクリュー押出し機のスクリュー22が後退することによって、スクリュー22と連通流路25との間に貯留部23が形成され、半凝固スラリーが、この貯留部23に貯留される。
【0038】
スクリュー22は、回転を止めて後退するものであっても、回転しながら後退するもののいずれであってもよい。なお、このとき、スクリュー22の先端部にはチェックリング等の逆流防止手段を設けることが好ましく、逆流防止手段を設けることによって、後退時はスムーズに半凝固スラリーを下方に流動させながら成形品体積よりも大きな容積の貯留部23において1次計量が行われる。
【0039】
次いで、プランジャ32を後退させると同時に、スクリュー22を前進させる。そして、プランジャ32が成形品体積に応じて設定された所定の位置になるまで後退する間、スクリュー22による加圧力を作用させながら半凝固スラリーHSをシリンダ31の前方に形成される計量部34に正圧をかけながら圧入することによって2次計量される。
【0040】
圧入による計量が完了すると、スクリュー22により連通流路25が閉止され、計量部34からの半凝固スラリーの逆流が制限される。なお、計量の際、プランジャ射出装置33のシリンダ31の先端のノズル部35は、バルブ装置36によって閉止されている。
【0041】
こうして、2次計量が完了した後、ノズル部35のバルブ装置36を開放するとともにプランジャ32を前進させることにより成形材料である半凝固スラリーを金型60内に射出し一定形状の成形体の成形が行なわれる。
【0042】
次に、プランジャ射出装置33における詳細について図面を用いて説明する。図2は、プランジャ射出装置33における詳細構造の一例を示す模式図である。
【0043】
図2に示すように、プランジャ射出装置33は、油圧シリンダにおけるシリンダ圧力室330、第1ポンプ331(油圧源)、第1電磁弁332、第2ポンプ333(油圧源)、第2電磁弁334、逃がし弁335およびタンク336を含む。
【0044】
シリンダ圧力室330は、プランジャを射出方向に進行させるための進行側圧油室330aおよびプランジャを後退させるための後退側圧油室330bからなる。
【0045】
図2に示すように、シリンダ31内のプランジャ32の後端部には、プランジャ用油圧シリンダのロッド37が接続され、ロッド37の後端に設けられたピストン部材37aにより進行側圧油室330aおよび後退側圧油室330bが分割される。すなわち、進行側圧油室330aおよび後退側圧油室330bの空間体積は、ピストン部材37aの動作により変動するものである。
【0046】
次に図3は、図2のプランジャ射出装置33の詳細を説明するための拡大図である。
【0047】
図3に示す第2ポンプ333により圧油が第2電磁弁334に与えられる。第2電磁弁334により内部の弁が開放され、圧油がシリンダ圧力室330の後退側圧油室330bに流入し、ピストン部材37aを矢印P1の方向に押圧する。この場合、逃がし弁335は閉塞されている。
【0048】
また、第1ポンプ331により圧油が第1電磁弁332に与えられる。第1電磁弁332により内部の弁が開放され、圧油がシリンダ圧力室330の進行側圧油室330aに流入し、ピストン部材37aを矢印P2の方向に押圧する。
【0049】
この場合、ピストン部材37aの両面に付与される圧力の関係は、矢印P1の方向の圧力が、矢印P2の方向の圧力よりも大きいまたは等しい関係にある。したがって、この場合の後退側圧油室330bの空間体積は、進行側圧油室330aの空間体積よりも大きくなっている。そして、進行側圧油室330aの空間体積が最小になった場合、矢印P1および矢印P2の圧力が等しい関係になり、ピストン部材37aは停止状態を維持する。以下、プランジャ32の動作について比較例を挙げて説明する。
【0050】
図4は図3のプランジャ射出装置33と比較するためのプランジャ射出装置33aにおける詳細構造の一例を示す模式図である。
【0051】
図4に示すプランジャ射出装置33aがプランジャ射出装置33と異なるのは以下の点である。例えば、プランジャ射出装置33aにおいては、プランジャ射出装置33と異なり、第2ポンプ333および第2電磁弁334が設けられていない。
【0052】
したがって、金型60に半凝固スラリーHSを射出する際、第1ポンプ331により与えられた圧油が第1電磁弁332に与えられる。逃がし弁335および第1電磁弁332内部の弁が開放されて圧油がシリンダ進行側圧油室330aに流入し、ピストン部材37aを射出方向へ押圧するため、ピストン部材37aが移動する。すなわち、比較例であるプランジャ射出装置33aにおいては、プランジャ射出装置33のように、金型60に半凝固スラリーHSを射出する前に後退側圧油室330b内の昇圧を行なっていない。そのため、第1電磁弁332を射出前に開放させておくことができず、第1電磁弁332の内部の弁の開放時間がそのままピストン部材37aの動作に影響を及ぼすこととなる。以下、詳細を説明する。
【0053】
図5は、プランジャ射出装置33,33aのシリンダ圧力室330内のピストン部材37aの動作を説明するための模式的拡大図である。
【0054】
図5(a)はプランジャ射出装置33aのシリンダ圧力室330内のピストン部材37aの状態を示し、図5(b)はプランジャ射出装置33のシリンダ圧力室330内のピストン部材37aの状態を示す。
【0055】
図5(a)に示すように、プランジャ射出装置33aにおいては、金型60に半凝固スラリーHSを射出する際に、進行側圧油室330aに圧油が流入する。この場合、第1電磁弁332の内部の弁が完全に開くまでに40msecの時間がかかるため、その間にピストン部材37aが矢印Xの方向に徐々に速度を増しながら移動し、ピストン部材37aが所定の圧力で移動可能なストロークは距離Ls(L>Ls)となる。したがって、第1電磁弁332が開放された後、すなわち距離Lsをプランジャ32が移動する時間しか、所定の圧力を与えることができない。なお、ここで逃がし弁335の開放速度は、第1電磁弁332よりも速く、射出動作開始と同時に弁を開き始めるものである。
【0056】
一方、図5(b)に示すように、プランジャ射出装置33においては、金型60に半凝固スラリーHSを射出する前に、第2電磁弁334の内部の弁が開放されて後退側圧油室330bに圧油が流入する。そして、第1電磁弁332の内部の弁が開放されて進行側圧油室330aに圧油が流入する。この場合、所望の圧力で後退側圧油室330bおよび進行側圧油室330a内の圧力バランスが取れているため、第1電磁弁332が開放されていても、ピストン部材37aが図5(a)のように矢印Xの方向に移動しない。その結果、射出動作開始(逃がし弁335の開放)と同時に所望速度まで急速にピストン速度が上昇し、ピストン部材37aが移動可能なストローク距離はL(L>Ls)となる。したがって、距離Lをプランジャ32が移動する間、所定の圧力を付与することができることとなる。
【0057】
ここで、シリンダ圧力室330内におけるピストン部材37aの移動距離には、制限がある。仮にピストン部材37aの移動距離に制限がない場合には、圧力を所定圧にまで昇圧させるための助走距離を確保することができる。しかし、現実の射出成形装置においては、機器自体の大きさを制限してフットパターンを少なくすることが求められているため、シリンダ圧力室330の大きさをピストン部材37aの最小限必要な移動距離にすることが必須条件となる。よって、シリンダ圧力室330内を移動するピストン部材37aのストロークLを最大限に有効利用する必要がある。
【0058】
図6はプランジャ射出装置33,33aのプランジャの移動速度および時間の関係を示す図である。図6の縦軸は速度Vを示し、横軸は時間t(msec)を示す。
【0059】
図6に示すように、プランジャ射出装置33aにおいては、第1電磁弁332の内部の弁を完全に開放するまでに40msec必要なことから、所定の速度V1に到達するのに40msecかかり、その間にピストン部材37aが移動することとなる。したがって、40msec後から所定の速度V1で所定の圧力を半凝固スラリーHSに付与することができ、プランジャ32により半凝固スラリーHSを有効に射出するための射出時間も短くなる。
【0060】
一方、プランジャ射出装置33においては、プランジャ射出装置44aと同様に、第1電磁弁332の内部の弁を完全に開放するまでに40msec必要であるが、金型60に半凝固スラリーHSを射出する前に、第1電磁弁332の内部の弁を予め完全に開放している。
【0061】
すなわち、プランジャ射出装置33においては、第2電磁弁334を設けて後退側圧油室330bの内部を昇圧させることにより、第1電磁弁332の内部の弁を予め開放できる構成となっている。
【0062】
したがって、金型60に半凝固スラリーHSを射出する場合、進行側圧油室330aに与える圧力は維持したまま、後退側圧油室330bの圧力を一気に低下させるべく、逃がし弁335を開放する。それにより、後退側圧油室330b内の油圧が逃がし弁335を介してタンク336に排出され、高い圧力を維持したままピストン部材37aを移動させることができる。ここで、逃がし弁335の開閉時間は、第1電磁弁、第2電磁弁よりも短いものであり、図6に示すように、約10msecである。
【0063】
すなわち、初期圧力を零から徐々に上昇させるのではなく、目標圧力を開放させることによりプランジャ32を動かすことができるので、プランジャ速度を急速に立ち上げることができると共に初動圧力を高く維持することができる。本実施の形態においては、プランジャの加速度が70Gを達成し、比較例の10Gに対して大幅に上昇した。さらに、初期移動がないためストロークの距離Lを有効に使用することができるため、金型60に対して有効に圧力を加える時間を長くすることができる。
【0064】
以上のように、本発明に係る射出成形装置100においては、金型60に半凝固スラリーHSを射出する前に、第1電磁弁332および第2電磁弁334を開放することにより進行側圧油室330aおよび後退側圧油室330bの両方の圧力P1、P2を高めることができる。
【0065】
そして、金型60に半凝固スラリーHSを射出する際に、後退側圧油室330bの圧力を急激に減圧させることができる。その結果、進行側圧油室330aが昇圧する時間よりも後退側圧油室330bの減圧する時間の方が短くなるので、例えば、第1電磁弁332を介して進行側圧油室330aに供給される単位時間当りの圧油量よりも、逃がし弁335を介して後退側圧油室330bから排出し得る単位時間当たりの排出量を多く許容できるようにしたり、または、逃がし弁335の開放動作と同時に第2電磁弁334を閉止動作するようにしたりする場合、プランジャ32の動作をより短時間の立ち上がりで、かつ高圧高速で長い時間動作させることができるので、金型60に半凝固スラリーHSを最適に射出させることができる。
【0066】
上記一実施の形態においては、金型60が金型に相当し、半凝固スラリーHSまたは溶融金属が溶融金属に相当し、金属射出成形装置100が金属射出成形装置に相当し、シリンダ部30がシリンダに相当し、プランジャ32がプランジャに相当し、プランジャ射出装置33が駆動装置に相当し、進行側圧油室330aが進行側圧油室に相当し、後退側圧油室330bが後退側圧油室に相当し、ポンプ331,333が油圧源に相当し、タンク336がタンクに相当し、第1電磁弁332が第1電磁弁に相当し、第2電磁弁334が第2電磁弁に相当し、逃がし弁335がバルブ装置に相当する。
【0067】
なお、本実施の形態においては、第2電磁弁334を介することなく後退側圧油室330bに対して、逃がし弁335が、接続されることとしたが、これに限定されず、第2電磁弁334を介して後退側圧油室330bに対して逃がし弁335を設けることとしてもよい。特に、第2電磁弁334が、約10msecで開閉可能な場合に適用することができる。
【0068】
本発明は、上記の好ましい一実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。例えば、プランジャにより軽合金の半凝固スラリーを射出するものだけではなく、軽合金の金属溶湯を射出するものにも適用することができるなど、本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る一実施の形態の射出成形装置の一例を示す模式図
【図2】プランジャ射出装置における詳細構造の一例を示す模式図
【図3】図2のプランジャ射出装置の詳細を説明するための拡大図
【図4】図3のプランジャ射出装置と比較するためのプランジャ射出装置における詳細構造の一例を示す模式図
【図5】プランジャ射出装置のシリンダ圧力室内のピストン部材の動作を説明するための模式的拡大図
【図6】プランジャ射出装置の圧力および時間の関係を示す図
【符号の説明】
【0070】
30 シリンダ部
32 プランジャ
33 プランジャ射出装置
60 金型
100 金属射出成形装置
330a 進行側圧油室
330b 後退側圧油室
331,333 ポンプ
332 第1電磁弁
334 第2電磁弁
335 逃がし弁
336 タンク
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠


【公開番号】 特開2008−23539(P2008−23539A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196842(P2006−196842)