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【発明の名称】 金属ガラス化促進治具、及びその治具を用いた製造方法及び装置
【発明者】 【氏名】田村 卓也

【氏名】三輪 謙治

【氏名】上木原 大介

【要約】 【課題】金属ガラス連続体を製造するための金属ガラス化促進治具、それを用いた金属ガラス連続体の製造方法及び装置を提供する。

【構成】金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部分において、溶湯に当接して該溶湯を上記溶湯冷却部分に密着させるように保持して金属ガラス化を促進するための保持手段であって、溶湯の金属ガラス化を促進する作用を有する金属ガラス化促進治具、該治具を用いた金属ガラス連続体の製造方法及び装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部分において、溶湯に当接して該溶湯を上記溶湯冷却部分に密着させるように保持して金属ガラス化を促進するための保持手段であって、溶湯の金属ガラス化を促進する作用を有することを特徴とする金属ガラス化促進治具。
【請求項2】
上記金属ガラス化促進治具が、溶湯から熱を奪い、それを冷却する熱伝導性の材料からなる手段を有する請求項1に記載の金属ガラス化促進治具。
【請求項3】
上記金属ガラス化促進治具が、溶湯冷却部分との組み合わせにより溶湯に形状を付与する鋳型を形成している請求項1に記載の金属ガラス化促進治具。
【請求項4】
上記金属ガラス化促進治具が、ブロック式、ベルト式、又はキャタピラ式の部材からなる請求項1に記載の金属ガラス化促進治具。
【請求項5】
金属ガラス連続体を製造する装置の冷却部分において、請求項1から4のいずれかに記載の金属ガラス化促進治具を配設したことを特徴とする金属ガラス連続体の製造装置。
【請求項6】
溶湯冷却部及び/又は金属ガラス化促進治具に設けた凹溝を組み合わせることで溶湯に形状を付与する鋳型を形成している請求項5に記載の金属ガラス連続体の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の金属ガラス連続体を製造する装置を用いて金属ガラス連続体を製造することを特徴とする金属ガラス連続体の製造方法。
【請求項8】
水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を製造する請求項7に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
【請求項9】
棒材、板材、又は線材の形状を有する金属ガラス連続体を製造する請求項7に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
【請求項10】
金属ガラス化促進治具を用いて溶湯の冷却条件を制御することにより、結晶を有する金属ガラス連続体、又は準結晶を有する金属ガラス連続体を製造する請求項7に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガラス体の連続製造における金属ガラス化促進のための金属ガラス化促進治具、その治具を用いた金属ガラス連続体の製造方法、及び装置に関するものであり、更に詳しくは、金属ガラス化促進治具を用いて溶融金属(溶湯)を鋳型に密着させ、冷却及び形状を付与することにより、金属ガラス連続体の大型化を可能とする金属ガラス化促進治具、該治具を用いた金属ガラス連続体の製造方法、及び装置に関するものである。従来、金属ガラス連続体の製造技術の分野においては、非常に大きな急冷速度が得られる水冷銅鋳型で作製できる最大断面積の1/10程度の断面積を持つ金属ガラス連続体しか製造できなかったが、本発明は、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体の量産化を実現する金属ガラス連続体の製造方法及び製造装置に関する新技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属ガラスは、例えば、マイクロマシン用の超精密部材や精密機械部品、コリオリ流量計、圧力センサー、リニア・アクチュエーター等の高精度測定機器の機能部材等への応用が期待され、その他、例えば、飛行機や自動車等に対して、軽量で高強度な構造材料として高度な機能を発揮する材料としても大きく期待されている。従来、金属ガラスを製造するためには、合金溶湯をある臨界の冷却速度以上で急冷することが必須である。合金溶湯が急冷されない場合には、金属ガラスにならず、金属結晶になってしまう。金属ガラス連続体を製造する場合においても急冷が必要となるため、種々の方法が提案されている。
【0003】
金属ガラス体の製造に関する先行技術として、例えば、回転駆動される冷却ロールの冷却面に向けて、ノズルから合金の溶湯を噴出して溶湯を冷却して帯状の非晶質合金を製造する際に、ノズルの吹出し口の形状、吹出し幅、ノズルと冷却ロールの間隔、冷却ロールの周速、及び溶湯の射出圧を設定することにより、厚さが厚く、幅が広い帯状の非晶質軟磁性合金帯を製造する方法(特許文献1参照)、が提案されている。
【0004】
また、他の先行技術として、溶融金属中に鋳型の柱状中空部の先端を挿入し、鋳型の柱状中空部の内部を瞬時に負圧にすることにより、鋳型の内部に溶融金属を急速に移動させ、鋳型の柱状中空部の内面に接する溶融金属を臨界冷却温度以上で急冷して固化し、管状金属ガラスを製造する方法(特許文献2参照)、原料合金の溶融室及び急冷室を減圧雰囲気で実行し、溶湯と冷却ロールとの密着性を向上させ、それによって、均一な金属ガラス状態にある急冷凝固合金を製造する方法(特許文献3参照)、が提案されている。
【0005】
また、金属ガラス体の製造に関するその他の事例として、例えば、金属不純物の混入を防ぎ、金属ガラス構造を維持したまま金属ガラスを微粉砕することが可能な金属ガラスの粉砕技術(特許文献4参照)、金属ガラスの表層領域だけを局所的に加熱して流動化することにより、エネルギー利用効率の高い金属ガラスの微細加工方法(特許文献5参照)、が提案されている。
【0006】
また、他に、溶融金属に電磁振動力を付与しながら凝固させることにより、金属ガラスを形成すること、その際に、直流磁場と交流磁場を同時に印加して電磁振動を発生させ、溶融金属に作用させて上記金属ガラス体を製造する金属ガラス体の製造方法及びその装置(特許文献6参照)、粒度の揃った、より真球に近い金属ガラス球を安定的に量産製造することが可能な金属ガラス球とその製造方法、及び装置(特許文献7参照)、が提案されている。
【0007】
また、他に、ガラス金属の溶湯を、回転体に形成された凹溝に連続的に流し込み、急冷して金属ガラス線を形成する連続した大径金属ガラス線材の製造方法(特許文献8参照)、筒状のスリーブ内の金属ガラス素材を成形型によって押圧成形する金属ガラスの成形装置において、スリーブの外周面に密着して、スリーブ内の金属ガラス素材を加熱する加熱手段と、スリーブ内の金属ガラス素材を冷却する冷却手段を具備した装置(特許文献9参照)、が提案されている。
【0008】
しかし、それらの方法を用いても、実際は、少量の金属ガラス体が作製できる水冷銅鋳型により作製した金属ガラス体の断面積の1/10以下の断面積を持つ金属ガラス連続体しか製造できないのが現状である。そのため、金属ガラス連続体が種々の部品に応用される実用材用として適用可能となるためには、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体の製造技術及び製造装置が必要であり、当技術分野においては、それらを可能とする新しい金属ガラス連続体の製造技術を開発することが強く要請されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−117399号公報
【特許文献2】特開2000−271730号公報
【特許文献3】特開2002−3979号公報
【特許文献4】特開2005-256074号公報
【特許文献5】特開2005−177843号公報
【特許文献6】特開2005−120473号公報
【特許文献7】特開2001−294907号公報
【特許文献8】特開2001−62548号公報
【特許文献9】特開平10−263739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を簡便な手法及び手段で製造することを可能とする金属ガラス連続体の新しい製造技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、既存の金属ガラス連続体の製造設備に特定の金属ガラス化促進治具を取り付けることにより所期の目的を達成し得ることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、金属ガラス連続体の製造工程における金属ガラス化促進のための金属ガラス化促進治具、既存の金属ガラス体の製造設備と金属ガラス化促進治具からなることを特徴とする金属ガラス連続体の製造装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記方法により、完全な金属ガラス連続体のみならず、結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を製造し、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部分において、溶湯に当接して該溶湯を上記溶湯冷却部分に密着させるように保持して金属ガラス化を促進するための保持手段であって、溶湯の金属ガラス化を促進する作用を有することを特徴とする金属ガラス化促進治具。
(2)上記金属ガラス化促進治具が、溶湯から熱を奪い、それを冷却する熱伝導性の材料からなる手段を有する上記(1)に記載の金属ガラス化促進治具。
(3)上記金属ガラス化促進治具が、溶湯冷却部分との組み合わせにより溶湯に形状を付与する鋳型を形成している上記(1)に記載の金属ガラス化促進治具。
(4)上記金属ガラス化促進治具が、ブロック式、ベルト式、又はキャタピラ式の部材からなる上記(1)に記載の金属ガラス化促進治具。
(5)金属ガラス連続体を製造する装置の冷却部分において、上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属ガラス化促進治具を配設したことを特徴とする金属ガラス連続体の製造装置。
(6)溶湯冷却部及び/又は金属ガラス化促進治具に設けた凹溝を組み合わせることで溶湯に形状を付与する鋳型を形成している上記(5)に記載の金属ガラス連続体の製造装置。
(7)上記(5)又は(6)に記載の金属ガラス連続体を製造する装置を用いて金属ガラス連続体を製造することを特徴とする金属ガラス連続体の製造方法。
(8)水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を製造する上記(7)に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
(9)棒材、板材、又は線材の形状を有する金属ガラス連続体を製造する上記(7)に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
(10)金属ガラス化促進治具を用いて溶湯の冷却条件を制御することにより、結晶を有する金属ガラス連続体、又は準結晶を有する金属ガラス連続体を製造する上記(7)に記載の金属ガラス連続体の製造方法。
【0013】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、金属ガラス化促進治具であって、金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部分において、溶湯に当接して該溶湯を上記溶湯冷却部分に密着させるように保持して金属ガラス化を促進するための保持手段であって、溶湯の金属ガラス化を促進する作用を有することを特徴とするものである。また、本発明は、金属ガラス連続体の製造装置であって、金属ガラス連続体を製造する装置の冷却部分において、上記金属ガラス化促進治具を配設したことを特徴とするものである。更に、本発明は、金属ガラス体の製造方法であって、上記金属ガラス連続体を製造する装置を用いて金属ガラス連続体を製造することを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、金属ガラス体の連続製造において使用される、金属ガラス化促進のための金属ガラス化促進治具を提供するものである。本発明の金属ガラス化促進治具は、(1)従来の金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部に金属ガラスが安定になるまで溶湯を密着させることができる、(2)金属ガラス化促進治具自体も溶湯から熱を奪い冷却できる、(3)溶湯に形状を付与できる、という機能を有している。
【0015】
また、本発明は、上記金属ガラス化促進治具と既存の金属ガラス連続体の製造設備からなることを特徴とする金属ガラス連続体の製造装置を提供するものである。本発明の金属ガラス連続体の製造装置は、既存の金属ガラス連続体の製造設備と上記金属ガラス化促進治具を組み合わせて構築される。
【0016】
更に、本発明は、上記金属ガラス連続体の製造装置を用いた金属ガラス連続体の製造方法を提供するものである。本発明の金属ガラス連続体の製造方法は、(1)上記金属ガラス化促進治具を用い、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を製造すること、(2)棒材、板材、線材の形状を有する金属ガラス連続体を製造すること、(3)金属ガラス連続体のみならず、金属ガラス化促進治具を用いて、結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を製造すること、を好ましい態様としている。
【0017】
本発明では、上記金属ガラス化促進治具から金属ガラス連続体が離れるときに、目的とした形状を付与した連続体が安定な状態で得られる、上記金属ガラス化促進治具自体も溶湯から熱を奪い冷却することができる、上記金属ガラス化促進治具により、金属ガラス連続体の製造装置の溶湯冷却部分に密着される溶湯量を制御できる、という金属ガラス化促進に著効を発揮する利点が得られる。
【0018】
本発明では、溶融金属を鋳型に密着させ、冷却及び形状を付与する機能を有する上記金属ガラス化促進治具を用いることにより、金属ガラス連続体の大型化を可能とする金属ガラス連続体の製造方法及び装置を提供することができる。尚、本発明において、結晶を有する金属ガラス連続体とは、結晶化した金属結晶を有する金属ガラス連続体であり、準結晶を有する金属ガラス連続体とは、準結晶化した金属結晶を有する金属ガラス連続体であり、これらは、完全な金属ガラス連続体とは組織構造の点で相違している。
【0019】
本発明では、好適には、金属ガラス化が容易な金属及び合金が対象とされる。本発明は、ガラス形成能を有する合金系の全てに適用されるが、これらに限定されるものではなく、金属ガラス化、結晶を有する金属ガラス化、及び準結晶を有する金属ガラス化が可能なものであれば、その種類は特に制限されるものではない。金属ガラス化が可能な合金組成としては、好適には、例えば、鉄系では、(Fe0.6Co0.472Si20Nbが、また、マグネシウム系では、Mg6510Cu25(Y:0〜30、Cu:0〜40)が例示される。
【0020】
その他の具体例として、鉄系では、(Fe0.8Co0.274Si20Nb、Fe−Al−P、Fe−Al−C、Fe−Al−B、Fe−Si−B−Nb、Fe−Si−B−Zr、(Fe0.775Si0.100.12598Nb、(Fe0.7Si0.100.1599Zr、(Fe0.75Si0.100.1596Nb、Fe−Co−Ni−P−C−B、Fe−Si−B、Fe−P−C、Fe−Co−Si−B、Fe75Si1015、Fe72Si18Nb、Fe70SiNb、Fe68Si20Nb、Fe70Si20Nb、Fe68Si20Nb等が例示される。
【0021】
また、マグネシウム系では、Mg−Ca、Mg−Ni、Mg−Cu、Mg−Zn、Mg−Y、Mg−Ca−Al、Mg−Ca−Li、Mg−Ni−La、Mg−Cu−La、Mg−Cu−Y、Mg−Ni−Y、Mg−Cu−Ce、Mg−Cu−Nd、Mg−Zn−Si、Mg−Al−Zn、Mg−Ni−Si、Mg−Cu−Si、Mg−Ni−Si、Mg−Ca−Si、Mg−Ni−Ge、Mg−Cu−Ge、Mg−Zn−Geが例示される。
【0022】
更に、鉄系、マグネシウム系以外の合金系として、La(ランタン)系、Zr(ジルコニウム)系、Pd(パラジウム)系、Co(コバルト)系、Ni(ニッケル)系、Ti(チタン)系、Al(アルミニウム)系、Cu(銅)系、Nd(ネオジウム)系、Pr(プラセオジウム)系、Pt(白金)系が例示される。
【0023】
本発明において、上記金属ガラス化促進治具は、従来の金属ガラス連続体を製造する装置の溶湯冷却部分に金属ガラスが安定になるまで溶湯を密着させる機能を有することを特徴としている。従来の金属ガラス連続体の製造装置では、溶湯を臨界冷却速度以上で急冷するための溶湯冷却部分が回転又は移動できるようになっている。それらの装置として、例えば、回転ロール外周面又は内周面に設けた凹溝を鋳型として、これに溶湯を供給して急冷し、金属ガラス連続体を製造する装置、また、水平回転するディスクの回転平面上に設けた凹溝を鋳型として、あるいは、回転ベルト上に連続して配設した凹溝を鋳型として、これらに溶湯を供給して急冷する装置、等が例示される。
【0024】
このように、従来の金属ガラス連続体の製造装置では、溶湯は、凹溝を有する溶湯冷却部分との接触により急冷されて金属ガラスとなる。そのため、溶湯は、金属ガラスが安定になるまで溶湯冷却部分と接触している必要がある。本発明の金属ガラス化促進治具は、溶湯冷却部分に溶湯を密着させるために、回転又は移動している溶湯冷却部分の溶湯に該治具を当接させて該溶湯を保持する機能を有する。
【0025】
本発明の金属ガラス化促進治具は、溶湯冷却部分の溶湯に当接して該溶湯冷却部分に密着させるように保持して、臨界冷却速度以上の速度で冷却させることができるものであれば、その形状、構造、材質は問わないが、好適には、例えば、ベルト式、キャタピラ式、及び潤滑性を有する材質でできたブロック式で、溶湯を溶湯冷却部分に密着させるように保持する作用を有するものが例示される。
【0026】
図1に、溶湯冷却部分が回転ロール状である場合の金属ガラス化促進治具の形式の例を示す。例えば、図1に示すように、回転ロールの溶湯冷却部分に対して、ブロック式、ベルト式、及びキャタピラ式の金属ガラス化促進治具を配設することができる。本発明では、溶湯冷却部分の形状、構造に対応して、溶湯冷却部分に溶湯を密着させるための金属ガラス化促進治具の形状、構造を、適宜設計することができる。
【0027】
図2に、溶湯冷却部分が、水平回転ディスク状、又はキャタピラ状である場合のブロック式の金属ガラス化促進治具の形状の例を示す。例えば、ブロック式の金属ガラス化促進治具は、回転ディスクに刻設された鋳型に接して覆うように配設されている。本発明の金属ガラス化促進治具は、該治具自体も溶湯から熱を奪い冷却できるものが好適である。そのため、該治具のベルト、キャタピラ、ブロック等の素材として、例えば、銅、カーボン等の熱伝導性の良好なものが好適である。また、場合によっては、治具自体に水冷機構等による冷却機能を具備させることも可能である。
【0028】
また、本発明の金属ガラス化促進治具は、溶湯を冷却する機能を有する他に、溶湯に形状を付与できることを特徴としている。そのために、金属ガラス化促進治具、及び既存の装置の溶湯冷却部分の一方もしくは両方に凹溝があることが必要である。この凹溝の断面形状を変えることにより、丸棒、角材、線材、板材等、種々の形状を金属ガラス連続体に付与することができる。図3は、金属ガラス連続体に角材の形状を付与する場合の凹溝の一例であり、溶湯冷却部分及び/又は金属ガラス化促進治具に設けた凹溝を組み合わせることにより、断面形状が四角形形状、その他適宜の形状の鋳型を構成することができる。
【0029】
本発明の金属ガラス化促進治具と既存の設備からなる金属ガラス連続体の製造装置は、既存の設備に上記金属ガラス化促進治具を組み合わせたことを特徴とするものであり、該金属ガラス連続体の製造装置は、具体的には、例えば、金属材料を溶融させる高温加熱源、この熱源により溶融された溶湯を貯留すると共に、溶湯を鋳型内に連続して供給するための溶湯供給部分、鋳込まれた溶湯を冷却するための鋳型が配設された溶湯冷却部分、溶湯冷却部分の鋳型面に接して配設された、溶湯を溶湯冷却部分に密着させるための金属化ガラス化促進治具、及び鋳型から金属ガラス成形体を取り出す取出部から構成される。
【0030】
本発明において、上記溶湯冷却部分は、例えば、回転ロール、キャタピラ式の回転ベルト、回転ディスクにより、回転又は移動可能に構成され、その表面には連続した凹溝からなる鋳型が形成される。該鋳型は、例えば、回転ディスクの平面に刻設された、連続した凹溝からなり、その断面は、所望の成形体の形状に応じて、四角形、円形、半円形等から選ばれた形状を有する。溶湯冷却部分に形成される鋳型は、溶湯冷却部分と金属ガラス化促進治具を組み合わせて形成することも可能であり、その一実施例を、図3に示す。本発明の溶湯冷却部分は、溶湯を、その臨界冷却速度よりも早く冷却して、ガラス相化し、金属ガラス体を連続して成形できるものであれば、その具体的な構成は、特に制限されるものではない。
【0031】
本発明において、上記金属ガラス化促進治具は、溶湯を溶湯冷却部分に、金属ガラスが冷却されて安定状態になるまで密着させる作用を発揮するものであり、その具体的な形状、構造は、溶湯冷却部分、及び成形する連続体の形状、構造、溶湯の性質等に応じて適宜構成され、例えば、ブロック式、ベルト式、キャタピラ式等が例示される。該治具と溶湯冷却部分の接触の程度は、溶湯が急冷されてガラス相として安定化するように適宜調整される。上記金属ガラス促進治具を溶湯冷却部分の溶湯に当接するための具体的な方法及び手段は、特に制限されるものではなく、それらについては任意に設計することができる。
【0032】
上記高温加熱源、及び溶湯供給部については、所定の金属材料を所定の温度に加熱して溶融し、所定の供給量で連続して鋳型内に鋳込むことができるものであれば、従来使用されている装置を適宜選択して使用することができる。また、金属ガラス成形体取出部についても、同様に従来の装置を適宜使用することができる。
【0033】
本発明において、上記金属ガラス連続体の製造装置を用いた金属ガラス連続体の製造方法では、上記金属ガラス化促進治具を用いることで、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有し、棒材、板材、線材等の様々な形状をした金属ガラスを連続的に製造することができる。
【0034】
そのためには、金属ガラス化促進治具から金属ガラス連続体が離れるときには、目的とする形状を付与した連続体が安定な状態であること、及び上記金属ガラス化促進治具により、金属ガラス連続体の製造装置の溶湯冷却部分に密着される溶湯量を制御できることが重要である。それにより、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有し、棒材、板材、線材の形状をした金属ガラス連続体を製造することが可能となる。
【0035】
本発明において、例えば、回転ディスク方式の溶湯冷却部分を有する金属ガラス連続体の製造装置を使用して、断面が四角形の線材を製造するには、まず、金属ガラス化が容易な金属又は合金原料を加熱溶融して得られる溶湯を、回転ディスク方式の溶湯冷却部分の平面端部付近に刻設された凹溝の鋳型中に供給する。このとき、金属ガラス化促進治具は、上記溶湯冷却部分の溶湯表面に当接して、上記凹溝からなる鋳型と金属ガラス化治具により、連続体の断面形状は四角形に形成される(図3参照)。
【0036】
溶湯は、金属ガラス化促進治具の上流側から凹溝に連続して供給され、ディスクの回転に伴い、該治具と溶湯冷却部分により挟持された箇所を通過する間に、溶湯は急冷されて固体状態となり、金属ガラス化された後に、該治具の下流側に到達する。次いで、連続体は、回転ディスクの水平面に沿って配設された取出部により、凹溝から取出されて、断面形状が四角形の線材が連続して製造される。
【0037】
本発明において、上記金属ガラス連続体の製造装置を用いた金属ガラス連続体の製造方法では、金属ガラス連続体のみならず、結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を製造することができる。この場合、合金組成を選択し、更に、溶湯冷却部分に密着される溶湯量、連続製造速度、及び製造する連続体の断面積を調整することにより、結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を選択的に製造することが可能となる。これらのことは、例えば、図4から6に記載の実験結果に示される。
【0038】
図4に、金属ガラス化促進治具を使用して、又は金属ガラス化促進治具なしで製造された金属ガラス連続体を、それらの断面組織写真により対比して示す。これにより、金属ガラス化促進治具を使用すると金属ガラス化が完全に進行することが分かる。また、図5に、金属ガラス化促進治具の材質(カーボン、ステンレスベルト、離型剤塗布ステンレスベルト)の金属ガラス化への影響を示す。これにより、熱伝導性及び潤滑性の高いカーボンを用いたブロック式金属ガラス化促進治具を用いると、金属ガラス化が促進され、完全に金属ガラス化した連続体が得られることが分かる。図6に、鋳造装置のロール回転速度を変えて、生成した金属ガラス連続体の組織構造を比較した透過電子顕微鏡写真(TEM)を示す。これにより、ロール回転速度が20rpmの場合には、数nmのナノ結晶が分散した金属ガラスが製造できることが分かる。
【0039】
本発明は、上述のように、上記金属ガラス化促進治具を使用することを特徴とするものであり、該金属ガラス化促進治具、該治具を用いた金属ガラス連続体の製造方法及び装置を提供するものであり、本発明により、水冷銅鋳型で作製できる最大面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を製造し、提供することが可能であり、更に、結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を製造し、提供することが可能である。
【発明の効果】
【0040】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体を製造することができる。
(2)棒状、板状、線状等、任意の形状を付与した金属ガラス連続体を製造することができる。
(3)結晶を有する金属ガラス連続体、及び準結晶を有する金属ガラス連続体を製造することができる。
(4)これにより、今までは、小さな形状の製品、即ち、マイクロマシンの部品やセンサー類の微小部品等としての利用しかできなかった金属ガラスが、一般的な構造材料として利用可能になる。
(5)本発明の金属ガラス体は、具体的には、例えば、輸送機器においては、自動車の足回り部品(アッパーアーム、ロアーアーム等)、エンジン周りの動弁系のスプリング等の可動部品、飛行機のストラットカバー等の部品、情報電子機器においては、例えば、収納ケース、ヒートシンク等へ利用可能である。
(6)本発明の金属ガラス体は、通常の金属材料では対応できない耐食性、耐久性を有する部品、構造材料として利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、既存の設備である単ロール鋳造装置における金属ガラス化促進治具の有効性について説明する。
1)方法
金属ガラス化促進治具を具備した直径100mmφの単ロール鋳造装置において、深さ2mm、幅(上部)3mm、幅(下部)2mmの凹溝をロール側に施し、組成が(Fe.6Co0.472Si20Nbである合金溶湯(1400℃)を、回転速度10rpmにて連続鋳造した場合の金属ガラス化促進治具の有効性を調べた。
【0043】
2)結果
その結果、図4の断面組織写真に示すように、金属ガラス化促進治具を使用しない場合は、ロールに接触した付近のみ単調な白色の金属ガラス相が僅かに出現しただけで、その他の部分には結晶が出現したが、金属ガラス化促進治具を使用した場合は、全体が単調な白色の金属ガラス相のみである。また、金属ガラス化促進治具を使用することにより、金属ガラス連続体に凹溝と同じ形状を付与できていることが分かる。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、既存の設備である単ロール鋳造装置における金属ガラス化促進治具の材質の影響について説明する。
1)方法
金属ガラス化促進治具を用いた直径100mmφの単ロール鋳造装置において、深さ2mm、幅(上部)3mm、幅(下部)2mmの凹溝をロール側に施し、組成が(Fe0.Co0.472Si20Nbである合金溶湯(1400℃)を、回転速度10rpmにて連続鋳造した場合の金属ガラス化促進治具の材質の影響について調べた。金属ガラス化促進治具として、厚さ40mmのカーボンブロック、厚さ0.2mmのステンレス無端ベルト、又は離型剤を塗布した厚さ0.1mmのステンレス無端ベルトを使用した。
【0045】
2)結果
その結果、図5の断面組織写真に示すように、ブロック式の金属ガラス化促進治具として厚さ40mmのカーボンを用いた場合は、完全に金属ガラス化した連続体が得られたが、ロール式の金属ガラス化促進治具として厚さ0.2mmのステンレスベルトを用いた場合は、中央に結晶相が点在していることが分かる。このことから、治具による冷却効果が得られずに結晶相が出現したことが分かる。次にロール式の金属ガラス化促進治具として離型材を塗布した厚さ0.1mmのステンレスベルトを用いた場合は、更に治具による冷却効果が得られずに、半分以上が結晶相となり、金属ガラス連続体を得ることができなかった。
【実施例3】
【0046】
本実施例では、連続製造速度の影響について説明する。
1)方法
厚さ40mmのカーボンを用いたブロック式の金属ガラス化促進治具を具備した直径100mmφの単ロール鋳造装置において、深さ2mm、幅(上部)3mm、幅(下部)2mmの凹溝をロール側に施し、組成が(Fe0.6Co0.472Si20Nbである合金溶湯(1400℃)を、10rpmと20rpmの異なるロール回転速度にて連続鋳造した場合の影響について調べた。
【0047】
2)結果
その結果、回転速度が10rpmの場合と20rpmの場合の金属ガラス連続体の組織構造について、TEM(透過電子顕微鏡)で調査すると、図6に示すように、回転速度が10rpmの場合では、原子配列を示す白黒のコントラストが完全にランダムであり、金属ガラス連続体であることが分かるが、回転速度が20rpmの場合では、ランダムな中に縞模様を呈した数nmのナノ結晶相が分散していることが分かる。このことより、20rpmの回転速度で連続体を製造すると、ナノ結晶が分散した金属ガラス連続体を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上詳述したように、本発明は、金属ガラス連続体の製造における金属ガラス化促進のための金属ガラス化促進治具、その治具を用いた金属ガラス連続体の製造方法、及び装置に係るものであり、本発明により、金属ガラス化促進治具を使用することにより、簡便な手段で、溶融金属を鋳型に密着させ、冷却及び形状を付与して、金属ガラス連続体の大型製品を製造することが可能となる。従来、金属ガラス体の製造技術の分野においては、非常に大きな急冷速度が得られる水冷銅鋳型で作製できる最大断面積の1/10程度の断面積を持つ金属ガラス連続体しか製造できなかったが、本発明により、水冷銅鋳型で作製できる最大断面積と同程度の断面積を有する金属ガラス連続体の量産化を実現することが可能となる。本発明は、マイクロマシン用の超精密部材やセンサー類の精密部品の他に、飛行機や自動車等に対して、軽量で高強度な構造材料として、高度な機能を発揮する材料として期待されている金属ガラス連続体の新しい量産化技術を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】金属ガラス化促進治具の形式の例を示す。
【図2】金属ガラス化促進治具の形状の例を示す。
【図3】金属ガラス連続体に角材の形状を付与する場合の凹溝の一例を示す。
【図4】金属ガラス化促進治具の有効性(Fe系金属ガラス、光学顕微鏡写真)を示す。
【図5】金属ガラス化促進治具の材質の影響(Fe系金属ガラス、光学顕微鏡写真)を示す。
【図6】金属ガラス化促進治具を用いた連続製造法における連続製造速度の影響(Fe系金属ガラス、TEM写真)を示す。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−18454(P2008−18454A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192648(P2006−192648)